(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電源側から供給された交流電力を直流電力に変換する順変換器と、前記順変換器の直流側である直流リンクに設けられ、互いに並列接続された少なくとも2つの直流コンデンサと、各前記直流コンデンサにそれぞれ並列接続され、前記直流リンクにおける直流電力をモータの駆動電力である交流電力に変換する少なくとも2つの逆変換器とを備えるモータ駆動装置であって、
各前記直流コンデンサごとの電圧を検出する電圧検出手段と、
前記逆変換器へ入力もしくは前記逆変換器から出力される電流を、各前記逆変換器ごとに検出する電流検出手段と、
各前記直流コンデンサが充電されかつ交流電源側から前記順変換器への直流電力の供給が遮断された後に、各前記直流コンデンサ間で電荷が移動しないように同時に各前記逆変換器に対し、前記直流リンクにおける直流電力を交流電力に変換させる電力変換指令を出力する指令手段と、
前記指令手段による前記電力変換指令の出力中に前記電流検出手段が検出した各前記逆変換器ごとの電流を積分し、これらを各前記逆変換器ごとの電流積分値として出力する電流積分手段と、
各前記直流コンデンサごとの推定容量を、当該直流コンデンサに対応する前記逆変換器に対応する前記電流積分値と、前記順変換器への直流電力の供給が遮断された後であって前記指令手段による前記電力変換指令の出力前に前記電圧検出手段により検出された当該直流コンデンサの電圧と、に基づいて算出する容量推定手段と、
各前記直流コンデンサごとに、予め測定された未使用時の当該直流コンデンサの初期容量値と前記容量推定手段により算出された当該直流コンデンサの前記推定容量とに基づいて、当該直流コンデンサが寿命であるか否かを判定する寿命判定手段と、
を備えることを特徴とするモータ駆動装置。
前記寿命判定手段は、前記初期容量に対する前記推定容量の割合が、予め設定された基準割合以下の場合、前記直流コンデンサは寿命であると判定する請求項1に記載のモータ駆動装置。
前記寿命判定手段は、前記推定容量が、前記初期容量と予め設定された基準割合とを乗じて得られた値以下の場合、前記直流コンデンサは寿命であると判定する請求項1に記載のモータ駆動装置。
前記直流コンデンサは寿命であると前記寿命判定手段が判定したとき、アラーム信号を出力するアラーム信号出力手段をさらに備える請求項2または3に記載のモータ駆動装置。
【背景技術】
【0002】
工作機械、産業機械、鍛圧機械、射出成形機、あるいは各種ロボット内のモータを駆動するモータ駆動装置においては、交流電源側から入力された交流電力を順変換器により直流電力に一旦変換したのち、さらにこの直流電力を逆変換器により交流電力に変換し、この交流電力をモータの駆動電力として用いている。
【0003】
図4は、一般的なモータ駆動装置の構成を示す図である。モータ駆動装置100は、商用三相交流電源(以下、単に「交流電源」と称する。)103からの交流電力を直流電力に変換する順変換器101と、順変換器101から出力された直流電力をモータ104の駆動電力として供給される所望の周波数の交流電力に変換しまたはモータ104から回生される交流電力を直流電力に変換する逆変換器102と、を備え、当該逆変換器102の交流側に接続されたモータ104の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御する。順変換器101と逆変換器102とは直流リンク(DCリンク)を介して接続される。直流リンクには、順変換器101の直流出力を平滑化するために直流コンデンサ(DCリンクコンデンサ)105が設けられる。
【0004】
一般に、駆動軸(送り軸および主軸)が複数ある場合は、各駆動軸を駆動するためにモータも複数設けられる。逆変換器は、複数の駆動軸に対応してそれぞれ設けられる各モータに個別に駆動電力を供給してモータを駆動制御するために、モータの個数と同数個、並列接続される。各逆変換器の直流入力側には直流コンデンサがそれぞれ設けられる。一方、順変換器については、モータ駆動装置のコストや占有スペースを低減する目的で、複数の逆変換器に対して1個が設けられることが多い。なお、
図4では、図面を簡明なものとするために、モータ104の個数を1個としており、したがって逆変換器102は1個である。
【0005】
順変換器と逆変換器との間の直流リンクに設けられる直流コンデンサは、充放電の繰り返しによりその静電容量(以下、単に「容量」と称する。)が減少する有限寿命の部品であることが一般的に知られている。直流コンデンサの容量が低下すると、直流リンクに流れるリプル電流が増加し、直流電圧の変動が大きくなるという問題が生じる。寿命が到来したと判定された直流コンデンサについては、交換することが必要である。このようなことから、直流コンデンサの容量を正確に把握して寿命到来の有無を判定することが重要である。
【0006】
初期充電時における直流コンデンサの充電電流の時間積分値と直流コンデンサの電圧値とを用いて直流コンデンサの寿命判定を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図5は、特許文献1(特開2000−152643号公報)に記載された発明を説明する概略図である。ここでは、n個の駆動軸(nは2以上の自然数)を駆動するためにモータが複数設けられる場合を例にとり説明する。n個のモータに駆動電力を供給するために逆変換器がn個設けられ、各逆変換器に対応して直流コンデンサもn個設けられる。モータとこのモータに接続される逆変換器とこの逆変換器に接続される直流コンデンサとからなる組を機器120−1、120−2、・・・、120−nとして表すと、
図5に示すように、n個の機器120−1、120−2、・・・、120−nが並列接続された状態となる。なお、
図5では、図面を簡明なものとするために、機器120−1、120−2、・・・、120−nについて、モータおよび逆変換器は図示を省略し、直流コンデンサ105−1、105−2、・・・、105−nのみ図示している。特許文献1に記載された発明では、直流コンデンサの寿命を判定するために、交流電源103からの交流電流を順変換器101によって直流に変換して得られた電流Iで直流コンデンサを初期充電するためにスイッチSW1、充電抵抗107、直流コンデンサ充電制御回路115が設けられる。そして、直流コンデンサ105の初期充電期間中に検出された充電電流Iを、充電電流積分回路116によって時間積分し、直流コンデンサ
容量推定回路117は、得られた電流積分値と直流コンデンサの電圧Vとから直流コンデンサの推定容量を算出する。直流コンデンサ105−1、105−2、・・・、105−nの容量をC
1、C
2、・・・、C
nとしたとき、式1が成り立つ。
【0008】
【数1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、モータ駆動装置内の順変換器と逆変換器との間の直流リンクに設けられた直流コンデンサの容量が充放電の繰り返しにより減少すると、直流リンクに流れるリプル電流が増加し、直流電圧の変動が大きくなるという問題が生じるので、直流コンデンサの容量を正確に測定することは重要である。直流コンデンサの容量を正確に測定できなければ、直流コンデンサの交換のタイミングを逸して直流リンクに大きなリプル電流や直流電圧変動を発生させてしまうことになりかねない。またあるいは、まだ寿命のある直流コンデンサを不必要に早く交換してしまう事態にもなりかねない。したがって、直流コンデンサの容量を正確に把握し寿命が到来したか否かを的確に判断することが重要である。
【0011】
また、上述のように、モータ駆動装置で駆動する駆動軸が複数ある場合は、各駆動軸に対応して、モータと逆変換器と直流コンデンサとからなる組も複数設けられる。このような場合に特許文献1(特開2000−152643号公報)に記載された発明に基づいて直流コンデンサの寿命判定を行おうとすると、初期充電時における直流コンデンサの充電電流の時間積分値と直流コンデンサの電圧値とを用いて式1に基づいて推定できるのは、複数の直流コンデンサの合成容量「C
1+C
2+・・・+C
n」であり、個々の直流コンデンサの容量については推定できない。つまり、複数の直流コンデンサの中から寿命の到来した直流コンデンサを特定することができず、利便性に欠ける問題がある。
【0012】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、順変換器と逆変換器との間の直流リンクにおいて並列接続された複数の直流コンデンサのそれぞれの寿命を正確に判定することができるモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するために、本発明においては、交流電源側から供給された交流電力を直流電力に変換する順変換器と、順変換器の直流側である直流リンクに設けられ、互いに並列接続された少なくとも2つの直流コンデンサと、各直流コンデンサにそれぞれ並列接続され、直流リンクにおける直流電力をモータの駆動電力である交流電力に変換する少なくとも2つの逆変換器とを備えるモータ駆動装置は、各直流コンデンサごとの電圧を検出する電圧検出手段と、逆変換器へ入力もしくは逆変換器から出力される電流を、各逆変換器ごとに検出する電流検出手段と、各直流コンデンサが充電されかつ交流電源側から順変換器への直流電力の供給が遮断された後に、各逆変換器に対し、直流リンクにおける直流電力を交流電力に変換させる電力変換指令を出力する指令手段と、指令手段による電力変換指令の出力中に電流検出手段が検出した各逆変換器ごとの電流を積分し、これらを各変換器ごとの電流積分値として出力する電流積分手段と、各直流コンデンサごとの推定容量を、当該直流コンデンサに対応する逆変換器に対応する電流積分値と、順変換器への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段による電力変換指令の出力前に電圧検出手段により検出された当該直流コンデンサの電圧と、に基づいて算出する容量推定手段と、各直流コンデンサごとに、予め測定された未使用時の当該直流コンデンサの初期容量値と容量推定手段により算出された当該直流コンデンサの推定容量とに基づいて、当該直流コンデンサが寿命であるか否かを判定する寿命判定手段と、を備える。
【0014】
寿命判定手段は、初期容量に対する推定容量の割合が、予め設定された基準割合以下の場合、直流コンデンサは寿命であると判定するようにしてもよい。
【0015】
寿命判定手段は、推定容量が、初期容量と予め設定された基準割合とを乗じて得られた値以下の場合、直流コンデンサは寿命であると判定するようにしてもよい。
【0016】
電流検出手段は、逆変換器から出力される電流を各逆変換器ごとに検出し、指令手段が出力する電力変換指令は、直流リンクにおける直流電力を無効電力に変換する指令としてもよい。
【0017】
また、モータ駆動装置は、基準割合を設定する基準割合設定手段をさらに備えてもよい。
【0018】
また、モータ駆動装置は、直流コンデンサは寿命であると寿命判定手段が判定したとき、アラーム信号を出力するアラーム信号出力手段をさらに備えてもよい。
【0019】
また、モータ駆動装置は、予め測定された未使用時の直流コンデンサの初期容量値を記憶した初期容量記憶手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、順変換器と逆変換器との間の直流リンクにおいて並列接続された複数の直流コンデンサのそれぞれの寿命を正確に判定することができるモータ駆動装置を実現することができる。
【0021】
例えば特許文献1(特開2000−152643号公報)に記載された発明は、複数の駆動軸に対応してモータと逆変換器と直流コンデンサとからなる組が複数設けられるモータ駆動装置に適用した場合、個々の直流コンデンサの容量を推定できず、複数の直流コンデンサの中から寿命の到来した直流コンデンサを特定することができなかった。これに対し、本発明によれば、各直流コンデンサが充電されかつ交流電源側から順変換器への直流電力の供給が遮断された状態で、各逆変換器に対し直流リンクにおける直流電力を交流電力に変換させる電力変換指令を同時に与えることで、各直流コンデンサ間で電荷が移動するのを防ぎつつ各直流コンデンサ容量を推定するので、複数の直流コンデンサのそれぞれの寿命を正確に判定することができ、また、複数の直流コンデンサの中から寿命の到来した直流コンデンサを速やかに特定することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明によるモータ駆動装置に設けられる直流コンデンサは、直流リンク上に少なくとも2個あればよい。以下で説明する実施例では、一例として2個のモータをモータ駆動装置にて駆動する場合について説明する。また、モータ駆動装置によって駆動されるモータの種類についても本発明を特に限定するものではなく、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。
【0024】
まず、本発明の第1の実施例によるモータ駆動装置の回路構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施例によるモータ駆動装置を示す原理ブロック図である。これ以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0025】
本発明の第1の実施例によるモータ駆動装置1は、順変換器2と、直流コンデンサ5と、逆変換器4と、電圧検出手段11と、電流検出手段12と、指令手段13と、電流積分手段14と、容量推定手段15と、寿命判定手段16と、
基準割合設定手段17とを備える。モータ駆動装置1内の順変換器2の交流入力側には交流電源3が接続され、モータ駆動装置1内の
逆変換器4の交流出力側にはモータ6が接続される。逆変換器4は、複数の駆動軸(図示せず)に対応してそれぞれ設けられる各モータ6に個別に駆動電力を供給するために、モータ6の個数と同数個、並列接続される。各逆変換器4の直流入力側には直流コンデンサ5がそれぞれ設けられる。したがって、直流コンデンサ5、逆変換器4、電圧検出手段11、電流検出手段12、電流積分手段14、容量推定手段15、寿命判定手段16、および基準割合設定手段17は、モータ6ごとに設けられることになる。以下、モータ6ごとに設けられるこれら構成要素をまとめて第1の機器20−1および第2の機器20−2として表す。すなわち、第1の機器20−1と第2の機器20−2とは並設接続された関係となる。
【0026】
順変換器2については、モータ駆動装置のコストや占有スペースを低減する目的で、複数の逆変換器4に対して1個が設けられる。順変換器2は、商用三相の交流電源3のある交流入力側から供給された交流電力を整流し、順変換器2の直流出力側である直流リンクに直流電力を出力する。本発明では、用いられる順変換器2の実施形態は特に限定されず、例えば120度通電回生機能付き三相全波ダイオード整流回路、あるいはPWM制御方式の整流回路などがある。なお、順変換器2の交流入力側には電磁接触器7が接続される。
【0027】
順変換器2と逆変換器4とは、直流リンクを介して接続される。逆変換器4は、直流リンクにおける直流電力とモータ6の駆動電力もしくは回生電力である交流電力とを相互電力変換する。
図1に示すように、第1の機器20−1に設けられる逆変換器4と第2の機器20−2に設けられる逆変換器4とは並列接続の関係にある。逆変換器4は、例えばPWMインバータなどのような、内部にスイッチング素子を有する変換回路として構成される。逆変換器4は、通常のモータ駆動の際には、直流リンク側から供給される直流電力を、上位の数値制御装置(図示せず)から受信したモータ駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、モータ6を駆動するための所望の電圧および所望の周波数の三相交流電力に変換する。これによりモータ6は、供給された電圧可変および周波数可変の三相交流電力に基づいて動作することになる。また、モータ6の制動時には回生電力が発生するが、上位制御装置から受信したモータ駆動指令に基づき、モータ6で発生した回生電力である交流電力を、直流電力へ変換して直流リンクへ戻す。また、逆変換器4は、後述する指令手段13から電力変換指令を受信した場合には、当該電力変換指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、直流リンクにおける直流電力を交流電力に変換して出力する。
【0028】
直流コンデンサ5は、順変換器2の直流出力側と逆変換器4の直流入力側とを接続する直流リンク上に設けられる。直流コンデンサ5は、順変換器2もしくは逆変換器4の直流出力の脈動分を抑える機能ともに、順変換器2もしくは逆変換器4から出力される直流電力を一時的に蓄積する機能も有する。
図1に示すように、第1の機器20−1に設けられる直流コンデンサ5と第2の機器20−2に設けられる直流コンデンサ5とは並列接続の関係にある。直流コンデンサ5は、順変換器2から出力された直流電力で初期充電される。
【0029】
電圧検出手段11は、直流コンデンサに印加される電圧を検出する。上述のように直流コンデンサ5は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられるので、当該直流コンデンサ5に印加される電圧を検出するために、電圧検出手段11も第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。
【0030】
電流検出手段12は、本実施例では、逆変換器4から出力される電流を検出する。上述のように逆変換器4は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられるので、当該逆変換器4から出力される電流を検出するために、電流検出手段12も第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。なお、電流検出手段12については、逆変換器4へ入力される電流を検出するために直流コンデンサ5と逆変換器4との間に設けてもよく、これについては後述の第2の実施例で説明する。
【0031】
指令手段13は、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各直流コンデンサ5が充電されかつ交流電源3側から順変換器2への直流電力の供給が電磁接触器7によって遮断された後に、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各逆変換器4に対し、直流リンク5における直流電力を交流電力に変換させる電力変換指令を同時に出力する。各逆変換器4に対して電力変換指令を同時に与えることにより、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の直流コンデンサ5間で電荷が移動することを防止することができる。なお、指令手段13は、例えば上記の数値制御装置(図示せず)内の1つの機能と
して実現してもよく、あるいは数値制御装置とは別個独立したコンピュータで構成してもよい。また、指令手段13が逆変換器4に対して出力する電力変換指令を、直流リンクにおける直流電力を無効電力に変換する指令としてもよい。
【0032】
電流積分手段14は、指令手段13による電力変換指令の出力中に電流検出手段12が検出した逆変換器4からの出力電流を積分し、これを当該変換器4に係る電流積分値として出力する。上述のように逆変換器4およびこの出力電流を検出する電流検出手段12は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられるので、当該電流検出手段12が検出した逆変換器4からの出力電流を積分するために、電流積分手段14もまた第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。したがって、電流積分手段14は、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各変換器4ごとの電流積分値を出力する。
【0033】
容量推定手段15は、電流積分手段14から出力された電流積分値と、順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段13による電力変換指令の出力前に電圧検出手段11により検出された当該直流コンデンサ5の電圧と、に基づいて直流コンデンサ5の推定容量を算出する。上述のように電流積分手段14および電圧検出手段11は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられるので、当該電流積分手段14から出力された電流積分値および当該電圧検出手段11が検出した当該直流コンデンサ5の電圧に基づいて、当該直流コンデンサ4の推定容量を算出するために、容量推定手段15も第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。したがって、容量推定手段15は、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各直流コンデンサ5ごとの推定容量を出力する。容量推定手段15による直流コンデンサ5の推定容量の具体的な算出方法については後述する。
【0034】
寿命判定手段16は、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5の初期容量値と容量推定手段15により算出された直流コンデンサ5の推定容量とに基づいて、直流コンデンサ5が寿命であるか否かを判定する。上述のように容量推定手段15は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられて各直流コンデンサ5ごとの推定容量が算出されるので、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各直流コンデンサ5の寿命判定を行うために、寿命判定手段16も第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。したがって、寿命判定手段16は、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各直流コンデンサ5ごとに、予め測定された未使用時の当該直流コンデンサ5の初期容量値と推定容量とに基づいて、当該直流コンデンサ5が寿命であるか否かを判定する。なお、ここでは図示しないが、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5の初期容量値を記憶した初期容量記憶手段をさらに設けてもよく、例えばEE
PROMに一括して記憶させておいてもよい。寿命判定手段16による直流コンデンサ5の寿命の具体的な判定方法については後述する。
【0035】
基準割合設定手段17は、寿命判定手段16による寿命判定処理に用いられる基準割合を設定する。上述のように寿命判定手段16は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられて各直流コンデンサ5ごとに寿命判定を行うので、基準割合設定手段17もまた第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。基準割合設定手段17は、ユーザが外部から任意に基準割合を書き換え可能であるようにするパソコン、キーボード、タッチパネル、マウスなどのユーザインタフェースの機能を有するものである。またあるいは、基準割合設定手段17を、可変抵抗器およびこの抵抗値を変更するための機械式ボリュームで構成してもよい。基準割合設定手段17により設定された基準割合は、記憶部(図示せず)に記憶される。基準割合は、寿命判定手段16により記憶部から読み出されて寿命判定処理に用いられる。
【0036】
アラーム信号出力手段18は、直流コンデンサ5は寿命である(すなわち寿命が到来した)と寿命判定手段が判定したとき、アラーム信号を出力する。上述のように寿命判定手段16は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられて各直流コンデンサ5ごとに寿命判定を行うので、アラーム信号出力手段18もまた第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられる。
【0037】
続いて、本発明の第1の実施例によるモータ駆動装置1における寿命判定処理の動作について説明する。
図2は、本発明の第1の実施例によるモータ駆動装置における寿命判定処理を示すフローチャートである。
【0038】
寿命判定処理の実行に先立ち、電磁接触器7をオンして交流電源3から交流電力を順変換器2へ取り込み、この交流電力を順変換器2により直流電力に変換し、この直流電力により第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各直流コンデンサ5を予め充電しておく。そして、ステップS101において
、電磁接触器7をオフする。電磁接触器7をオフすることにより、交流電源3側から順変換器2への直流電力の供給が遮断され、各直流コンデンサ5に電荷が蓄積された状態が維持される。
【0039】
続いて、ステップS102において、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の電圧検出手段11により、各直流コンデンサ5の電圧をそれぞれ検出する。ここで検出された直流コンデンサ5の電圧は、ステップS101において順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって、次のステップS103で指令手段13により電力変換指令を出力する前の、各直流コンデンサ5に電荷が蓄積された状態の電圧である。
【0040】
ステップS103では、指令手段13は、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各逆変換器4に対し、直流リンク5における直流電力を交流電力に変換させる電力変換指令を同時に出力する。指令手段13が各逆変換器4に対して同時に電力変換指令を出力することにより、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の直流コンデンサ5間で電荷が移動することを防止することができ、後述する直流コンデンサ5の寿命判定の精度が向上する。指令手段13による電力変換指令の出力期間中は、各逆変換器4は、受信した電力変換指令にしたがって直流リンク5における直流電力を交流電力に変換し、出力する。これにより、第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれにおいて、逆変換器4からモータ6へ電流が供給され、供給された電流はモータ6で消費される。すなわち、各逆変換器4に対して同時に電力変換指令を与えることにより、直流コンデンサ5が放電したエネルギーは逆変換器4を介してモータ6へ供給され、モータ6の回転動作により消費されることになる。なお、指令手段13が逆変換器4に対して出力する電力変換指令を「直流リンクにおける直流電力を無効電力に変換する指令」に設定すれば、当該無効電力変換指令により、各逆変換器4は直流リンクにおける直流電力を無効電力に変換してこれをモータ6へ供給することができ、この無効電力によりモータ6は回転せずにエネルギー消費をすることになる。
【0041】
なお、指令手段13による電力変換指令の出力期間中は、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各電流検出手段12は、各逆変換器4から出力される電流をそれぞれ検出する。検出された電流値は、各電流積分手段14へ送られる。
【0042】
ステップS104では、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の電流積分手段14は、各電流検出手段12が検出した逆変換器4からの出力電流を積分し、これを当該変換器4に係る電流積分値として出力する。
【0043】
直流コンデンサ5の放電が完了するのに十分時間が経過した後、ステップS105において、容量推定手段15は、電流積分手段14から出力された電流積分値と、順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段13による電力変換指令の出力前に電圧検出手段11により検出された当該直流コンデンサ5の電圧と、に基づいて直流コンデンサ5の推定容量を算出する。
【0044】
直流コンデンサ5が放電したエネルギーはモータ6で消費されることを考慮して、容量推定手段15による直流コンデンサ5の推定容量は次のように算出する。
【0045】
第1の機器20−1について、指令手段13による電力変換指令の出力期間中に電流検出手段12によって検出される逆変換器4からの出力電流をI
1とし、順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段13による電力変換指令の出力前に電圧検出手段11により検出された直流コンデンサ5の電圧をV
1としたとき、直流コンデンサ5の推定容量C
1は式2で表せる。ここで、逆変換器4からの出力電流I
1の積分期間は、指令手段13による電力変換指令の出力開始時点(すなわち直流コンデンサ5の放電開始時点)から直流コンデンサ5の放電が完了するのに十分時間が経過するまでの期間である。
【0047】
同様に、第2の機器20−2について、指令手段13による電力変換指令の出力期間中に電流検出手段12によって検出される逆変換器4からの出力電流をI
2とし、順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段13による電力変換指令の出力前に電圧検出手段11により検出された直流コンデンサ5の電圧をV
2としたとき、直流コンデンサ5の推定容量C
2は式3で表せる。ここで、逆変換器4からの出力電流I
2の積分期間は、指令手段13による電力変換指令の出力開始時点(すなわち直流コンデンサ5の放電開始時点)から直流コンデンサ5の放電が完了するのに十分時間が経過するまでの期間である。
【0049】
各逆変換器4に対して同時に電力変換指令を与えることにより、各直流コンデンサ5が放電したエネルギーは、対応するモータ6へそれぞれ供給される。このとき、式4が成り立つ。
【0051】
よって、本実施例では、第1の機器20−1内の容量推定手段15は、逆変換器4からの出力電流I
1の電流積分値と、順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段13による電力変換指令の出力前に電圧検出手段11により検出された当該直流コンデンサ5の電圧V
1から、式2に基づいて直流コンデンサ5の推定容量C
1を算出する。また、第2の機器20−1内の容量推定手段15は、逆変換器4からの出力電流I
2の電流積分値と、順変換器2への直流電力の供給が遮断された後であって指令手段13による電力変換指令の出力前に電圧検出手段11により検出された当該直流コンデンサ5の電圧V
2から、式3に基づいて直流コンデンサ5の推定容量C
2を算出する。
【0052】
なお、容量推定手段15による算出結果については、例えばディスプレイ(図示せず)に表示したりあるいは記憶手段(図示せず)に保存するにしてもよい。これにより、作業従事者は、各直流コンデンサ5の推定容量を知ることができる。
【0053】
図2に戻り、ステップS106では、第1の機器20−1内の寿命判定手段16は、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5の初期容量値C
01と容量推定手段15により算出された推定容量C
1とに基づいて、第1の機器20−1内の直流コンデンサ5が寿命であるか否かを判定する。また、第2の機器20−2内の寿命判定手段16は、予め測定された未使用時の直流コンデンサ5の初期容量値C
02と容量推定手段15により算出された推定容量C
2とに基づいて、第
2の機器20−
2内の直流コンデンサ5が寿命であるか否かを判定する。直流コンデンサ5が寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定された機器については、後述するステップS107の処理を実行する。
【0054】
ここで、寿命判定手段16による直流コンデンサ5の寿命の判定方法について説明するが、以下の方法は第1の機器20−1および第2の機器20−2のいずれの直流コンデンサ5についても適用可能であるので、ここでは、代表して第1の機器20−1内の直流コンデンサ5の場合について説明する。
【0055】
一般に直流コンデンサ5は充放電の繰り返しによりその容量が減少することから、本発明の実施例では、直流コンデンサ5の初期容量C
01に対する推定容量C
1の割合である「
C1/C01」を、直流コンデンサ5が寿命であるか否かの判断材料に用いる。具体的には次の2つの方法がある。まず、第1の方法として、寿命判定手段16は、初期容量C
01に対する推定容量C
1の割合「
C1/C01」が、基準割合設定手段17により予め設定された基準割合以下の場合、直流コンデンサは寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定する。また、第2の方法として、寿命判定手段16は、推定容量C
1が、初期容量C
01と予め設定された基準割合とを乗じて得られた値以下の場合、直流コンデンサ5は寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定する。第1の方法と第2の方法は実質的には同じであり、すなわち、第1の方法は直流コンデンサの容量の比率を比較するものであり、第2の方法は直流コンデンサの容量自体を比較するものである。
【0056】
図2に戻り、ステップS107では、アラーム信号出力手段18は、直流コンデンサ5は寿命である(すなわち寿命が到来した)ことを示すアラーム信号を出力する。ステップS107の処理は、ステップS106において直流コンデンサ5が寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定された機器について実行される。
【0057】
アラーム信号出力手段
18が出力するアラーム信号は、次のように活用することができる。例えば、直流コンデンサが設けられた直流リンクを介して順変換器と逆変換器とが接続されるシステムにおいて、当該システムの動作を統括制御するメイン制御部がアラーム信号出力手段18からアラーム信号を受信したとき、当該システムの全体の動作を停止させるようにしてもよい。また例えば、音を発するスピーカやブザーがアラーム信号を受信したときにユーザに通知するための音を発するようにしてもよい。また例えば、パソコンや携帯端末がアラーム信号を受信したときにこれら機器のディスプレイに直流コンデンサが寿命であることを文字や絵柄にて表示させるようにしてもよい。また例えば、アラーム信号が発せられた日時を記憶装置に記憶させ、後のメンテナンス作業の際に利用できるようにしてもよい。いずれの場合も、アラーム信号は、ステップS106において直流コンデンサ5が寿命である(すなわち寿命が到来した)と判定された機器について実行されるので、第1の機器20−1および第2の機器20−2のうち、どの機器の直流コンデンサの容量が低下し交換する必要があるかをユーザは明確に把握することができるので、ユーザの保守の負担が軽減される。
【0058】
なお、基準割合は基準割合設定手段17を介してユーザが任意に設定できるが、例えば、基準割合を複数設け、これに対応してアラーム信号を複数設けて、寿命判定の結果を例えば「ワーニングレベル」や「アラームレベル」といったように複数レベルに分けてもよい。
【0059】
また、本実施例では、各逆変換器4に対して電力変換指令を同時に与えることにより、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の直流コンデンサ5間で電荷が移動することを防止して直流コンデンサ5の寿命判定の精度が向上させたが、これに加えて、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の各直流コンデンサ5間の干渉を避けるために第1の機器20−1と第2の機器20−2との間にインダクタンスを設ければ、直流コンデンサ5の寿命判定の精度をより一層向上させることができる。
【0060】
続いて、本発明の第2の実施例について説明する。
図3は、本発明の第2の実施例によるモータ駆動装置を示す原理ブロック図である。上述の第1の実施例は電流検出手段12は逆変換器4から出力される電流を検出するものであったが、本発明の第2の実施例は、電流検出手段12を逆変換器4へ入力される電流を検出するために直流コンデンサ5と逆変換器4との間に設けたものである。
【0061】
電流検出手段12は、本実施例では、逆変換器4へ入力される電流を検出する。上述のように逆変換器4は第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれに設けられるので、当該逆変換器4へ入力される電流を検出するために、電流検出手段12も第1の機器20−1および第2の機器20−2それぞれにおいて、直流コンデンサ5と逆変換器4との間に設けられる。これに伴い、第1の機器20−1および第2の機器20−2内の電流積分手段14は、指令手段13による電力変換指令の出力中に電流検出手段12が検出した逆変換器4への入力電流を積分し、これを当該変換器4に係る電流積分値として各容量推定手段15へ出力する。交流電流を検出する本発明の第1の実施例では、各機器において三相交流電流のうち二相分の電流を検出するために電流検出手段12を2つのセンサで構成する必要があったが、本発明の第2の実施例では直流電流を検出するので、各機器において電流検出手段12を構成するセンサが1つで済み、部品点数を第1の実施例の場合に比べて削減することができる。
【0062】
なお、第2の実施例ついて上述した以外の回路構成要素については
図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。また、本発明の第2の実施例によるモータ駆動装置1における寿命判定処理の動作原理も、
図2を参照して説明した本発明の第1の実施例のものが適用可能である。
【0063】
以上の通り、第1および第2の実施例では、容量C
1の直流コンデンサ5と容量C
2の直流コンデンサ5の2並列の場合について説明したが、直流コンデンサが3並列以上の場合も合成容量の推定処理および寿命判定処理は同様の原理である。
【0064】
また、上述した指令手段13、電流積分手段14、容量推定手段15、寿命判定手段16、基準割合設定手段17、およびアラーム信号出力手段18は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらの手段および回路をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ駆動装置1内にある演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで上述の各部の機能が実現される。また、既存のシステムにこれら手段および回路に係るソフトウェアプログラムを当該モータ駆動装置内の演算処理装置に追加的にインストールすることで本発明を適用することも可能である。