【実施例】
【0047】
(1)ハニカム構造体
骨材、結合材、及び異方性粒子からなる結合助剤を所定の比率で配合し、有機バインダー、界面活性剤及び水を加えて均一に混合及び混練し、得られた成形材料を、押出成形機を利用して押出成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を切断及び乾燥後、目封止を行い、予め規定された焼成温度で焼成を行うことにより、セグメント状のハニカム構造体を得た。セグメント状のハニカム構造体を接合材を用いて接合した後、外周研削、外周コートを行うことで、本発明における実施例及び比較例のハニカム構造体を作製した。
【0048】
本実施例において、ハニカム構造体は、実施例1〜17、及び、比較例1〜
11において、いずれも骨材として炭化珪素を使用するものであり、結合材として実施例1〜8、実施例15〜17、比較例1、比較例3〜7、及び比較例10〜
11において金属珪素を使用し、実施例9〜14、比較例2、及び比較例8,9においてコージェライトを使用するものである。骨材及び結合材の比率は、いずれも75/25である。更に、結合助剤として、実施例1〜14、及び比較例6〜
11においてマイカを使用し、実施例15〜17においてAl−Siファイバーを使用し、比較例3〜5においてタルクを使用した。また、比較例1,2については、結合助剤を成形材料に添加しないものである。実施例及び比較例のハニカム構造体は、いずれも直径は144mm、長さは152mmであり、セル構造の隔壁厚さは0.3mm、セル密度は46.5セル/cm
2である。
【0049】
上記骨材及び結合材の比率(75/25)、骨材の粒径(μm)、結合助剤の粒子形状、種類、長軸側粒径(μm)、配合比率(wt.%)と、得られたハニカム構造体の表面領域及び内部領域のそれぞれの気孔率(%)、表面領域及び内部領域のそれぞれの平均細孔径(μm)、圧力損失(kPa)、PN漏れ個数(個)の測定結果をまとめたものを下記表1に示す。また、実施例及び比較例において骨材として使用した炭化珪素と、結合材として使用した金属珪素、コージェライトにおけるアルミナ、及びコージェライトにおけるタルクと、結合助剤として使用した2種類のマイカ、タルク、及びAl−Siファイバーとのそれぞれの平均粒径についてまとめたものを下記表2に示す。なお、コージェライトにおけるタルク、マイカ、結合助剤としてのタルク、及びAl−Siファイバーに介しては、長径方向及び短径方向のそれぞれの平均粒径及び短径に対する長径の平均粒径の比であるアスペクト比についても併せて示している。なお、コージェライトを結合材とする場合、成形材料としてはアルミナとタルクであり、焼成工程でこれらが反応してコージェライトを形成する。タルクは結合材の原料であるとともに、異方性粒子として結合助剤でもある。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
(2)気孔率の算出
気孔率は、隔壁の表面領域及び内部領域のそれぞれの隔壁断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、市販の画像解析ソフトを用いて算出した。更に具体的に説明すると、隔壁断面のSEM画像を画像解析ソフトを用いて、二極化処理し、それぞれの表面領域及び内部領域における隔壁の部分(細孔以外の部分に相当)と細孔の部分の面積を計測し、得られた面積の計測値に基づいて各領域における気孔率を算出した。
【0053】
(3)平均細孔径の算出
平均細孔径は、気孔率の算出と同様に、撮影された
隔壁断面のSEM画像に基づき、
画像解析ソフトを用いて、二極化処理し、それぞれの表面領域及び内部領域における各細
孔の細孔径を計測し、得られた細孔径から平均細孔径を算出した。
【0054】
(4)圧力損失の測定
実施例及び比較例のハニカム構造体からDPFを作製し、室温(25℃)の空気を10Nm
3/分の流量で流した際のDPFの入口(上流側)及び出口(下流側)のそれぞれの圧力を計測し、その圧力差を算出することにより圧力損失を求めた。求められた圧力損失の測定値が1.0kPa以下のものを「良」と判定し、1.0kPaを超えるものを「不可」と判定した。
【0055】
(5)PN漏れ個数の測定
実施例及び比較例のそれぞれのハニカム構造体から形成されたDPFを、排気量2.0リットルのディーゼルエンジンが搭載された乗用車の排気系に取り付けた。この乗用車をNEDC(New European Driving Cycle)モードで走行させた際のDPFの出口(下流側)における粒子状物質の個数累計からPN漏れ個数を測定した。なお、粒子状物質の個数の測定は、欧州経済委員会における自動車基準調和世界フォーラムの排出ガスエネルギー専門家会議による粒子測定プログラム(略称「PMP」)によって提案された手法に従って行った。ここで、PN漏れ個数の測定値が、1.0×10
8未満を「良」と判定し、1.0×10
8以上、1.0×10
9以下を「可」と判定し、1.0×10
9を超えるものを「不可」と判定した。
【0056】
(6)ハニカム構造体の評価
表1に示すとおり、本願発明の実施例1〜17のハニカム構造体に基づいて作製されたDPFは、圧力損失及びPN漏れ個数のいずれの判定結果において、良または可の評価であり、一方、比較例1〜
11のハニカム構造体に基づいて作製されたDPFは、圧力損失及びPN漏れ個数の少なくともいずれか一方が不可の判定であった。以下、各項目について詳細を説明する。
【0057】
(6−1)結合助剤の有無
骨材及び結合材に対して所定の配合比率の結合助剤を添加することにより(実施例1等参照)、圧力損失及びPN漏れ個数のいずれの項目においても「良」または「可」の判定結果が得られた。これに対し、結合助剤を添加しない場合(比較例1、2)、圧力損失の値が結合助剤を添加した場合と比べて高くなり、判定基準の1.0kPaを超えるものとなった。これにより、結合助剤の添加の有効性が示された。
【0058】
(6−2)骨材の粒径
使用する骨材(炭化珪素)の粒径を、それぞ
れ10μm、28μm
、及び60μ
mに変化させ、配合比率等のその他の条件を一定にした場合、10μm〜60μmの間で(実施例2,4,5)、各項目において良または可の判定結果を得た
。これにより、骨材の粒径は、10μm〜60μmの範囲が好適であることが確認された。
【0059】
(6−3)結合材の種類
結合材として、本実施例では金属珪素(実施例1〜3等)及びコージェライト(実施例9〜14等)をそれぞれ使用した。この場合、圧力損失及びPN個数漏れのいずれの評価項目においても、特に結合材の種類における大きな差異は認められず、金属珪素及びコージェライトを結合材として使用可能なことが確認された。
【0060】
(6−4)結合助剤の種類
使用する結合助剤(異方性粒子)として、長軸側粒径のそれぞれ異なる二種類のマイカ、Al−Siファイバー、及びタルクを用いた。これらの結果から、その他の条件を同一とした場合、結合助剤としてタルクを使用した場合、各項目について上記判定基準を満たすことができず、一方、マイカ及びAl−Siファイバーは、いずれも良または可の判定結果を得た。更に、マイカの粒径の違い(実施例1〜3及び実施例4〜6等参照)によって、圧力損失及びPN漏れ個数に大きな差異は認められなかった。これにより、結合助剤として、マイカ及びAl−Siファイバーが有効であることが確認された。
【0061】
(6−5)結合助剤の配合比率(表面気孔率及び内部気孔率)
骨材の粒径等のその他条件を同一とし、骨材及び結合材に対する結合助剤の配合比率をそれぞれ3.0wt.%、5.0wt.%、及び10.0wt.%に変化させた場合(実施例1〜3、実施例6〜8、実施例9〜11、及び、実施例12〜14)、配合比率が高くなるにつれて、表面気孔率の値が低下し、これに対して内部気孔率の値が上昇する傾向が認められた。すなわち、結合助剤を多く添加することによって、ハニカム構造体の内部領域に多くの空隙(空孔)が認められるようになり、表面領域の気孔率がそれほど高くなくなることが示された。
【0062】
一方、結合助剤の配合比率が低い場合(1.0wt.%、比較例6〜9)、圧力損失が大きくなる傾向が認められ、同様に結合助剤の配合比率が高い場合(15.0wt.%、比較例10,11)でも圧力損失が大きくなる傾向が示された。
【0063】
(6−6)結合助剤の配合比率(表面平均細孔径及び内部平均細孔径)
骨材の粒径等のその他の条件を同一とし、結合助剤の配合比率を変化させた場合(実施例1〜3、実施例6〜8、実施例9〜11、及び、実施例12〜14)、配合比率が高くなるにつれて、表面平均細孔径の値が低下し、一方、内部平均細孔径の値が上昇することが確認された。この傾向は、上記(6−5)で示した表面気孔率及び内部気孔率と配合比率との関係と同様のものである。
【0064】
(6−7)評価のまとめ
骨材の粒径等のその他の条件を同一とし、結合助剤の配合比率を変化させた場合(実施例1〜3、実施例6〜8、実施例9〜11、及び、実施例12〜14)、配合比率が5.0wt.%添加したものが、圧力損失がそれぞれ最も小さな値を示した(実施例1〜3における実施例2、実施例6〜8における実施例7、実施例9〜11における実施例10、実施例12〜14における実施例13参照。)。これにより、本実施例において、ハニカム構造体の隔壁の圧力損失の低減のためには、5.0wt.%の結合助剤を添加することが好適であると確認された。一方、PN漏れ個数は、結合助剤の配合比率に応じて比例し、配合比率が高い場合(10wt.%)、それぞれ最も小さな値を示し(実施例3、実施例8、実施例11、実施例14参照)、一方、配合比率が低い場合(3.0wt.%)、それぞれ最も大きな値を示した(実施例1、実施例6、実施例9、実施例12参照)。
これにより、結合助剤の配合比率に応じて圧力損失の低減化及びPN漏れ個数を制御することができる。
【0065】
更に、配合比率は、表面領域及び内部領域における表面気孔率及び内部気孔率、表面平均細孔径及び内部平均細孔径の値にそれぞれ寄与することが示された。すなわち、骨材として実施例1〜17において、結合助剤の配合比率が高くなるにつれて、表面気孔率及び表面平均細孔径の値は徐々に小さくなるように変化し、一方、内
部気孔率及び内部平均細孔率の値は徐々に大きくなるように変化することが確認された。そのため、表面気孔率及び内部気孔率の差、及び、表面平均細孔径及び内部平均細孔径の差は、それぞれ異方性粒子の配合比率が高いもの(10wt.%)が、最も高い値を示し、異方性粒子の配合比率が低いもの(3.0wt.%)が、最も低い値を示すこととなった。すなわち、異方性粒子を多く配合することにより、表面領域及び内部領域の気孔率及び平均細孔径の差が大きくなるように制御することができる。
【0066】
これに対し、異方性粒子を結合助剤として添加しない場合(比較例1,2)、圧力損失及びPN漏れ個数においてもいずれも良好な結果を得ることができなかった。すなわち、本発明における異方性粒子を結合材助剤として添加することの有効性が示される。結合助剤を加える場合であってもタルクでは、圧力損失の値が増大し、異方性粒子の添加による効果を得ることができなかった(比較例3〜5)。更に、結合材に対して添加する異方性粒子の配合比率が低い場合(1.0wt.%、比較例6〜9)、圧力損失及びPN漏れ個数のいずれの評価項目において良好な結果を得ることができなかった。すなわち、表面領域及び内部領域の間に1.5%超の気孔率の差を形成することができなかった。そのため、実施例に示すような効果を奏することができない。
【0067】
更に、結合材に対して添加する異方性粒子の配合比率が過剰過多の場合(比較例10,11)、いずれも圧力損失が大きくなり、実用上の使用をすることができない。しかしながら、係る場合、内部気孔率及び表面気孔率、及び、内部平均細孔径及び表面平均細孔径の値が最も大きくなることが示された。これらの結果からも異方性粒子を骨材及び結合材に添加しハニカム成形体を形成する有用性が示された。