特許第6227603号(P6227603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227603
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】衝撃検出機能を有する電子機器
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20171030BHJP
   G01P 15/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   G05B19/18 X
   G01P15/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-178288(P2015-178288)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-54330(P2017-54330A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大内 純一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 堅一
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−80752(JP,A)
【文献】 特開2014−172107(JP,A)
【文献】 特開2009−142941(JP,A)
【文献】 特開2014−26477(JP,A)
【文献】 特開2010−205082(JP,A)
【文献】 特開2010−122035(JP,A)
【文献】 特開2014−209086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
G01P 15/00
B23Q 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動や衝撃が発生する可能性のある機械に搭載される電子機器において、
所定の時間間隔で加速度を検出する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段により検出された加速度の加速度値が予め定められた第一の閾値を超えると判定された場合、該判定後の予め定められた所定期間に渡って前記加速度検出手段により検出された複数の加速度のそれぞれの加速度値の内の最大値に基づいて第二の閾値を算出し、前記複数の加速度の内で加速度値が前記第二の閾値を超える加速度の数が予め定められた所定数以下の場合は単発的な衝撃、前記所定数を超える場合は多発的な衝撃と判別する衝撃判別手段と、
前記多発的な衝撃と判別された場合に信号を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
外部との通信手段を備え、前記多発的な衝撃と判別された回数が、予め定められた所定の数を超えた場合に、前記電子機器に格納された情報を自動的に外部に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に衝撃検出機能を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃が機械筐体を介して電子機器に繰り返し印加されることにより、電子機器に実装された電子部品あるいはその半田付け部にダメージが蓄積され、電子部品の破壊やその半田付け部の破断を引き起こし、これを原因とした電子機器の故障に至ることがある。故障発生から復旧までの間、工作機械は加工を行うことができず、稼働率が低下してユーザは不利益を被る。
【0003】
したがって、故障を引き起こすと考えられる衝撃を検出し、加工条件の変更、工作機械自体への衝撃対策、機械の操作方法の改善などを作業者や設備保全担当者に対し促すことができれば、稼働時間の延伸や、交換部品の事前手配による故障時の迅速な復旧が可能となり、工作機械の稼働率向上に寄与することができる。
【0004】
衝撃の発生要因としては、(1)ワークと工具の衝突という不適切な加工プログラムによるもの、(2)ワークに対する送り速度と工具回転速度が適していないという不適切な加工条件によるもの、(3)ユーザによる機械の操作に起因するもの、などがあげられる。(1)および(2)に関しては、実加工を行う前にパソコン等のCAMソフトを用い加工シミュレーションを実施することで改善が可能であるが、(3)に関しては事前の予見が困難である。
上記した発生要因のうち、ユーザの操作に起因する(3)は、例えば電子機器に取り付けられた押しボタンを押下する、電子機器に取り付けられたカバーを開閉する、といった電子機器自身あるいはその近傍に取り付けられた装置の操作に加え、工作機械に取り付けられた安全扉や制御装置が取り付けられた操作盤ペンダントの移動操作にともなう衝撃の発生があげられる。
【0005】
発生要因によって衝撃の種類が異なり、ドアの開閉や操作盤ペンダントの移動操作が発生要因の場合、工作機械の筐体全体が振動するため、筐体の部材同士が複数回衝突する多発的な衝撃となる。一方、ボタンや操作盤の操作が発生要因の場合、電子機器自身あるいは取り付け部のみが振動するため、筐体の部材同士が一回のみ衝突する単発的な衝撃となる。加速度の最大値が同じ二つの衝撃を考えたとき、多発的な衝撃は単発的な衝撃よりも電子機器に加わるストレスが大きい。
【0006】
電子機器に加速度センサを搭載し、自由落下や落下後の衝撃やあるいはその両方を検出し、装置を停止させる、あるいは保守情報に記録する、警告を表示するといった手法は従来から知られている。特に、携帯型電子機器においては、持ち運ばれながら使用するという形態のため、ある程度の衝撃対策機構が取られており、故障の可能性がある衝撃を検出する方法が知られている。
また、例えば特許文献1では、加速度センサを用い、自由落下時間と、自由落下後に観測される衝撃の収束時間を測定し、予め規定された自由落下時間毎の許容収束時間と比較することで、所定の衝撃が加わったか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−215184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、加速度センサを搭載して衝撃の大小をある閾値をもとに識別し警報しただけでは、前述のストレスの小さい単発的な衝撃も検出してしまい、通常操作でも頻繁にアラームとなりユーザの利便性を損なってしまう。
また、工作機械に備え付けられている数値制御装置のような据え置き型電子機器においては自由落下が起こらず、したがって衝撃を判定する基準となる自由落下時間が存在しないため、衝撃の程度や種類を識別して検出することが困難であるという課題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、工作機械に搭載された電子機器に外部から加わる衝撃の種類を判別することが可能な電子機器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、衝突の回数をもとに、筐体全体が振動するストレスの大きい多発的な衝撃と、電子機器付近のみが振動するストレスの小さい単発的な衝撃を識別し、前者のみを警報し後者は警報しないことで、ユーザの利便性を損なうことなく、工作機械の稼働率向上を図る。
【0011】
そして、本願の請求項1に係る発明は、振動や衝撃が発生する可能性のある機械に搭載される電子機器において、所定の時間間隔で加速度を検出する加速度検出手段と、前記加速度検出手段により検出された加速度の加速度値が予め定められた第一の閾値を超えると判定された場合、該判定後の予め定められた所定期間に渡って前記加速度検出手段により検出された複数の加速度のそれぞれの加速度値の内の最大値に基づいて第二の閾値を算出し、前記複数の加速度の内で加速度値が前記第二の閾値を超える加速度の数が予め定められた所定数以下の場合は単発的な衝撃、前記所定数を超える場合は多発的な衝撃と判別する衝撃判別手段と、前記多発的な衝撃と判別された場合に信号を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする電子機器である。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明は、外部との通信手段を備え、前記多発的な衝撃と判別された回数が、予め定められた所定の数を超えた場合に、前記電子機器に格納された情報を自動的に外部に送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、工作機械に搭載された数値制御装置などの電子機器に外部から加わった衝撃の種類を区別して検出することが可能となり、故障に繋がる衝撃に基づいて工作機械のユーザもしくは機械メーカに対して故障の可能性を警報したり、衝撃への対策を要求したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における電子機器を備えた工作機械の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態における工作機械を操作する状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態における工作機械に発生する衝撃を説明する図である。
図4】本発明の実施形態における電子機器の要部構成図である。
図5】本発明の実施形態における電子機器上で実行される処理のフローチャートである。
図6】本発明の実施形態における電子機器で検出される単発的な衝撃の例を示す図である。
図7】本発明の実施形態における電子機器で検出される多発的な衝撃の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、主軸に取り付けられたワークを回転させ、刃物台に取り付けられた工具によって切削加工することで所望の形状に成型する旋盤型工作機械の構成例である。工作機械1は、モータによって回転する主軸9およびワーク10、工具11を把持して加工プログラムによって制御される刃物台5、加工によって生じる切粉の排出を促しかつ摩擦による熱膨張の影響を低減するための切削液4を噴射するノズル3、各種の操作スイッチを備えた機械操作盤12と主軸9および刃物台5あるいは周辺機器を制御するための電子機器(これ以後、数値制御装置7と呼ぶ)が実装された操作盤ペンダント13から構成される。
【0016】
数値制御装置7は公知の通り、演算処理装置、入出力インタフェース、DRAMや不揮発性メモリといった記憶装置や各種情報の表示を行う表示器や、各種データの入力を行う操作部を備えている。図には記載がないが、数値制御装置7および機械操作盤12には、USBメモリといった外部機器接続用に機械外部に露出するコネクタがあり、また誤って操作すると危険が生じる可能性のある例えば運転開始ボタンなどがある。これらには、前者に対しては切削液や金属粉といった異物の付着を防ぐため、後者に対しては誤って押下することを防ぐため、保護カバーが取り付けられている。
【0017】
工作機械1は、可動部が存在する危険領域である加工エリアと人を分離するため、また、加工によって飛散する切粉や切削液を外部に漏らさないため、一般的に板金で構成された筐体(これ以後、機械筐体2と呼ぶ)で囲まれている。また、ワーク10の取り付けおよび取り外しを行うため、機械筐体2には手動もしくは自動開閉可能な扉8が設けられている。この扉8は水平(図1に示す矢印方向)にスライドして開閉可能である。あるいは、垂直方向にスライド可能であったり、手前もしくは奥行き方向に開閉可能であったりする。
【0018】
ユーザは、ワークの設計図をもとに作成した加工プログラムを数値制御装置7に入力し、あるいはCAD/CAMシステムによって自動作成した加工プログラムを数値制御装置7に入力し、あるいは外部機器に格納された加工プログラムをイーサネット(登録商標)やRS232−Cといった外部通信手段経由で数値制御装置7に随時転送しながら加工を行う。数値制御装置7は、この加工プログラムをもとに、主軸9の回転速度や刃物台5の制御を行う。また、主軸9の回転速度や刃物台5の送り速度といった加工条件の調整や、ワーク10の取り付け取り外しやそれに伴うワーク10の位置やサイズの測定および設定、工具11の寸法測定といった、種々の作業を操作盤ペンダント13に取り付けられた数値制御装置7や機械操作盤12を操作することで行う。
【0019】
図2はオペレータが数値制御装置または機械操作盤を操作する状態を示す図である。図2に示すように、オペレータは加工エリア内を目視できる位置で数値制御装置7あるいは機械操作盤12を操作することが多く、このため操作盤ペンダント13が可動式になっている場合が多い。本実施形態の工作機械1では、操作盤ペンダント13は操作盤ペンダント13の側面に取り付けられたヒンジ6を介して図中矢印方向に向きを変えることができるようになっている。
【0020】
上記の作業において、扉8の開閉操作や操作盤ペンダント13の位置操作を行う際、オペレータの力加減が適切ではない場合、図3に示すように、(a)扉8と機械筐体2の衝突、あるいは(b)操作盤ペンダント13と機械筐体2の衝突により、操作盤ペンダント13上の数値制御装置7に大きな力、つまり加速度が加わる場合がある。このような加速度の発生を抑制するため、一般的に、扉8や操作盤ペンダント13の開閉機構には例えばゴムなどの弾性部材で構成されたクッションや、エアダンパ、オイルダンパといった衝撃吸収機構が取り付けられている。この場合でも、衝撃吸収機構の定格を超えるような衝撃が加わったり、あるいは長期間の使用によって特性が劣化して衝撃吸収の用をなさなくなったりしている場合には、大きな衝撃が発生することがある。特に、ゴムなどの弾性部材は、工作機械1で使用される切削液の成分によっては硬化しクッション性を失うことがある。また、そもそも衝撃吸収機構が工作機械1に備えられていない場合もある。この要因によって発生する衝撃は、操作盤ペンダント13あるいは機械筐体2全体が振動する状態となり、加速度検出手段によって検出される加速度波形は、複数回の衝突が起きたように観測される(多発的な衝撃)。
【0021】
一方、機械操作盤12や数値制御装置7に取り付けられたボタン操作、保護カバーの開閉もオペレータの力加減によっては大きな加速度が発生する可能性があるが、これらは数値制御装置7自身あるいは、機械操作盤12近傍のみが振動する状態の為、前記手段によって観測される加速度波形は単発の衝突波形となる(単発的な衝撃)。
【0022】
上述の通り、発生要因によって加わる衝突の回数が異なるため、数値制御装置7に実装される部品へのストレスもまた異なる。同じ強さの最大値を持つ加速度を考えた場合、機械操作盤12や数値制御装置7の操作を発生要因とした単発的な衝撃は、数値制御装置7の故障要因とはならないにもかかわらず、この衝撃を検出して検出信号を出力すると、該検出信号に基づく警報が操作するたびに頻繁に発生する可能性がありユーザの利便性を損なう。そこで本発明では、扉8の開閉操作や操作盤ペンダント13の位置操作などを発生要因とした加速度に基づく検出信号と、数値制御装置7や機械操作盤12の操作を発生要因とした加速度に基づく検出信号とを区別することで、後者の操作に伴う頻繁な警報を防ぎユーザの利便性を確保する。
【0023】
本発明の一実施形態としては、扉8の開閉操作や操作盤ペンダント13の位置操作などを発生要因とした加速度に基づく検出信号にのみ基づいて警報を発するようにすることができる。この場合、警報は数値制御装置7の画面に警告文や注意喚起の記号や図形を表示する方法や、工作機械1に取り付けられたランプを点滅させるといった視覚的手段が考えられるほか、ブザーなどの警告音や音声メッセージといった音を用いた通知などが考えられる。また、別の実施形態としては、扉8の開閉操作や操作盤ペンダント13の位置操作などを発生要因とした加速度に基づく検出信号と、数値制御装置7や機械操作盤12の操作を発生要因とした加速度に基づく検出信号との、それぞれの出力回数や頻度などの統計情報を数値制御装置7のメモリ等に記憶しておき、該統計情報に基づいて警報を発したりすることも可能である。この場合、例えば1回の加工作業中に所定回数以上の多発的な衝撃が検出された場合に作業者に警告する警報を発生させたり、単発的な衝撃が検出された場合であってもその頻度があまりに多い場合には注意を促す警報を発生させたり、などといったような状況に応じた警報発生の制御をすることができる。
【0024】
それに加え、数値制御装置7がイーサネット(登録商標)や近距離無線通信Bluetooth(登録商標)といった通信手段を介して外部機器に接続されているならば、遠隔地にも検出信号や警報発生を例えば電子メールなどの情報伝達手段によって通知することも考えられる。
【0025】
また、加速度の検出時または警報の発生時に、時刻、機械状態(段取り作業中であったのかそれとも実加工中であったのか、など)、加速度検出および警報発生の累計回数などの情報も併せて記録乃至通知すれば、警報の原因特定や対策に役立つ情報を得ることが出来る。一方、度重なる警報にも関わらず、対策がとられない場合は故障の発生を防ぐことができない。この可能性を鑑みると、警報発生毎あるいは複数回の警報発生毎に、加工プログラムや設定パラメータなどの内部情報を、数値制御装置7内の不揮発性メモリやあるいは外部ネットワーク経由で外部機器に自動退避すれば、故障発生時の影響を最小限に抑えかつ以後の装置復旧に役立てることが出来る。
【0026】
以下、具体的な検出および解析方法を説明する。図4は、工作機械1に取付けられた加速度検出手段としての加速度センサ、衝撃判別手段としての演算回路を含む、衝撃を検出するための構成を示す要部ブロック図である。数値制御装置7には、加速度が加わると電気信号を発生する加速度センサ14が取り付けられている。加速度センサ14としては、圧電効果を利用したものや抵抗体の電気抵抗変化をとらえる公知の技術が使われるが、本実施形態においては、水平、垂直、奥行き方向それぞれの加速度を別々に検出および出力可能であることが望ましいため、三次元加速度センサを用いるか、あるいは複数個の単軸加速度センサを組み合わせて実現してもよい。数値制御装置7あるいは機械操作盤12の取り付け方法および構造によっては、衝撃の発生要因が与えた加速度と、その衝撃が伝搬し数値制御装置7に伝わった際に測定される加速度の向きが異なる場合があるため、三次元のそれぞれの加速度が測定できることが望ましい。
【0027】
加速度センサ14の取り付け位置は、数値制御装置7を構成するプリント基板上や筐体ケース上が考えられるが、数値制御装置7に加わった加速度が正確に検出できる箇所に取り付ける必要がある。そのため、剛性が高い位置に取り付けることが望ましく、プリント基板上であればネジ止め箇所の近傍が望ましい。
【0028】
加速度センサ14の出力値は微小であるため、センサ外部には圧電素子の出力電流を増幅するアンプ15や、抵抗体の抵抗値に応じた電圧が出力される回路が接続される。この回路から出力された信号は、ローパスフィルタ(図示せず)、A/Dコンバータ16を介し、加速度の絶対値の算出およびバッファリングおよび比較を行う演算回路17に接続される。この回路の出力は外部インタフェース18を介して数値制御装置7の内部バスに接続される。
【0029】
図5は、衝撃の検出から解析、および警報までの流れの一例を示すフローチャートである。加速度センサ14の出力は基準周波数間隔でサンプリングされる。3軸センサの場合は、加速度a=(ax,ay,az)の3次元データが取得されることになる。演算回路17は、この加速度aの絶対値|a|を以下に示す数1式を用いて算出し、レジスタに格納する(ステップSA01)。
【0030】
【数1】
【0031】
次に、演算回路17は、加速度の絶対値|a|が規定のしきい値a_thを超えるか否かを判定し、超えている場合は衝撃が加わったと判断して衝突回数判定状態に遷移する(ステップSA02)。
演算回路17は、衝突回数判定状態に遷移後に加速度センサ14で検出された衝撃に基づく加速度aから算出されて格納されたn個の加速度絶対値|a|のうちの、最大の値を|a|maxとし、この|a|maxに規定の係数k(例えば0.2)を乗じた値である|a|max_thを算出する(ステップSA03)。そして、衝突回数判定状態に遷移後に格納されたn個の加速度絶対値|a|のうち、|a|max_thを超える値をもつ|a|の個数nをカウントする(ステップSA04)。演算回路17は、nが規定のしきい値n_thを超える個数(例えば20個)存在した場合は、多発的な衝撃であると判定し、少ない場合は単発的な衝撃であると判定する(ステップSA05)。そして、多発的な衝撃であると判定された場合に警報を発する(ステップSA06)。
【0032】
図6,7は、加速度センサにより検出される波形の例を示す図である。図6は、数値制御装置7あるいは機械操作盤12を操作した際に測定された波形例で、図7は機械の扉8を強く閉めた場合に測定された波形例である。
サンプリング周波数は1.25msec、衝突回数判定状態に遷移する加速度の絶対値|a|のしきい値a_thは3G、衝突回数判定状態へ遷移後に使用する加速度の絶対値|a|の個数nは32個、衝突回数の判定に使用する|a|max_thを算出する係数kは0.2と設定し、算出された|a|max_thを点線で図示している。衝突回数の判定基準n_thは20個である。図6ではnの値が7個であるため警報されず、図7ではnの値が24個であるため警報される。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例にのみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、加速度センサ14とアンプ15とA/Dコンバータ16は独立したデバイスとしているが、これらを一体に集積した公知の電子部品、例えばMEMSデバイスを使用すれば、部品実装面積低減やコスト低減の面で有利である。
【0035】
上記実施形態においては、加速度絶対値|a|をもとに衝突回数を判定しているが、n個の測定値の中での最大値と、それを規定倍した閾値を超える測定値がいくつあるか、という単純な方法で衝突回数を判定しているため、絶対値|a|の代わりに各軸加速度の大きさの合計、例えば3軸であれば|ax|+|ay|+|az|という簡単な値を用いても同様な効果が得られる。
【0036】
上記実施形態においては、図5のフローチャートで示した衝撃判別手段としての各処理を演算回路17で実行しているようにしているが、A/Dコンバータからの出力を数値制御装置7へと出力するように構成し、数値制御装置7が備えるCPUやPMCなどの上で衝撃判別手段としての各処理を実行するようにしてもよく、このように構成した場合には演算回路17は不要となる。
【0037】
上記実施形態においては、検出された加速度を単発的な衝撃と多発的な衝撃の2つに区別して検出するようにしているが、例えば衝突回数のしきい値を複数設け、単発的な衝撃や、多発的な衝撃や、単発的な衝撃と多発的な衝撃の中間の衝撃や、多発的な衝撃を更に超える衝撃、などといったように複数の段階に分けて加速度を検出するようにして、それぞれの場合において警告のレベルや数値制御装置7の動作を変更するようにしてもよい。
【0038】
更に、本発明の電子機器は、旋盤型工作機械に搭載される形態にて説明しているが、旋盤型に限らずフライス型やその複合加工機、研削盤、ホブ盤、ギアシェーパ、板金プレス機、板金曲げ加工機といった、切削加工、研削加工、曲げ加工、打ち抜き加工を目的とした種々の加工機や、振動や衝撃が発生する可能性のある機械に搭載される電子機器に対して適用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 工作機械
2 機械筐体
3 ノズル
4 切削液
5 刃物台
6 ヒンジ
7 数値制御装置
8 扉
9 主軸
10 ワーク
11 工具
12 機械操作盤
13 操作盤ペンダント
14 加速度センサ
15 アンプ
16 A/Dコンバータ
17 演算回路
18 外部インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7