特許第6227611号(P6227611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227611
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】竪型射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/03 20060101AFI20171030BHJP
   B29C 45/66 20060101ALI20171030BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20171030BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B29C45/03
   B29C45/66
   B22D17/26 D
   B22D17/20 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-197331(P2015-197331)
(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-71058(P2017-71058A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 惟由
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−247410(JP,A)
【文献】 特開2002−172672(JP,A)
【文献】 特開2005−131819(JP,A)
【文献】 特開2008−137316(JP,A)
【文献】 特開2006−327131(JP,A)
【文献】 特開平10−291240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/03
B22D 17/20
B22D 17/26
B29C 45/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、前記固定盤の下方に配置されている下可動盤と、前記固定盤を挿通し前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構とからなる竪型射出成形機において、
前記トグル機構は、一対の上側リンクと、一対の下側リンクと、一対のクロスリンクと、クロスヘッドと、ボールねじ機構とから構成され、
前記上側リンクと前記下側リンクは、それぞれの一方の端部が前記固定盤と前記下可動盤のそれぞれに軸支されていると共に、他方の端部同士が回動可能に連結され、
前記クロスリンクは、その一方の端部が前記上側リンクまたは前記下側リンクあるいはその両方に回動可能に連結されていると共に他方の端部が前記クロスヘッドに回動可能に連結され、
前記ボールねじ機構は、該ボールねじ機構を構成するボールねじの先端が前記クロスヘッドに固定され、そして該ボールねじに螺合するボールナットが前記下可動盤に回転自在に設けられており、
前記クロスヘッドは、前記ボールねじを固定している固定部が前記クロスリンクに連結されている連結部よりも高くなっていると共に該固定部の下側に所定の大きさの収納スペースが形成され、前記トグル機構が屈曲されたときに前記収納スペースに前記ボールナットの少なくとも先端部が収納されるようになっていることを特徴とする竪型射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型射出成形機において、前記ボールナットは、その下部に筒状のスリーブ体が一体的に固定され、該スリーブ体が回転自在に前記下可動盤に設けられていることを特徴とする竪型射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグル式型締機構を備えた竪型射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
竪型射出成形機は、従来周知であり、一対の金型を上下方向に型開閉する型締装置、型締めされた金型に溶融樹脂を射出する射出装置とから概略構成されている。竪型射出成形機は金型が上下に開くので、金型にインサート品を挿入しても落下しない。従っていわゆるインサート成形に適している。また竪型射出成形機は設置面積が小さいので限られた工場のスペースにも容易に設置できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−327131号公報
【0004】
竪型射出成形機の型締装置は直圧式型締装置もあるが、トグル式型締機構からなる竪型射出成形機も周知であり、例えば特許文献1のように色々な特許文献によって提案されている。トグル式型締機構を備えた竪型射出成形機51は、図3の(ア)に示されているように、複数本の支柱によって支持されている固定盤52と、固定盤52を摺動自在に垂直に貫通している複数本のタイバー53、53と、タイバー53、53の上端部に固定されて固定盤52に対して上下に型開閉される上可動盤55と、タイバー53、53の下端部に所定の型厚調整機構によって固定されている下可動盤56と、固定盤52と下可動盤56の間に設けられているトグル機構58と、から構成されている。そして固定盤52にはその上面に下側金型59が設けられ、上可動盤55にはその下面に上側金型60が設けられている。図3の(ア)において機械中心線CLの左半分は型締状態を、右半分は型開状態を示しているが、左半分に示されているように、トグル機構58をトグルが伸張する方向に駆動すると固定盤52に対して下可動盤56が下方に駆動され、タイバー53、53によって下可動盤56と連結されている上可動盤55も下方に駆動され、それによって一対の金型59、60が型締めされる。また図3の(ア)において右半分に示されているようにトグル機構58をトグルが折り畳まれる方向に駆動すると固定盤52に対して上下可動盤55、56が上方に駆動され、型開きされる。
【0005】
図3の(ア)に示されている竪型射出成形機51は、トグル機構58を駆動するボールねじ機構62が次のように設けられている。すなわちボールねじ機構62を構成するボールねじ63は、下可動盤56に設けられている所定の軸受機構65に軸方向の移動が規制された状態で回転自在に軸受されている。このボールねじ63は図に示されていない駆動機構によって回転されるようになっている。そしてボールねじ63に螺合しているボールナット66は、トグル機構58を駆動するクロスヘッド68に固定されている。このようなトグル機構58において、ボールねじ63を正方向と逆方向とに回転して型開閉するとき、クロスヘッド68の上下動の幅は比較的小さいが、ボールねじ63は下可動盤56と共に上下するので上下動の幅は大きい。
【0006】
図3の(イ)には、図3の(ア)に示されている竪型射出成形機51と類似した竪型射出成形機51’が示されており、竪型射出成形機51と同じ部材については同じ符号が付されている。図3の(イ)においても、機械中心線CLの左半分が型締状態を、右半分が型開状態をそれぞれ示している。この竪型射出成形機51’はトグル機構58を駆動するボールねじ機構62’が次のように設けられている。すなわちボールねじ機構62’を構成しているボールねじ63’は、その先端部がクロスヘッド68に固定され回転と軸方向の移動ができない状態になっている。そしてボールねじ63’に螺合しているボールナット66’は下可動盤56に所定の軸受機構65’を介して回転自在に設けられている。このボールナット66’は図に示されていない駆動機構によって回転されるようになっている。このようなトグル機構58においてボールナット66’を正方向と逆方向とに回転して型開閉するとき、クロスヘッド68の上下動の幅は比較的小さく、このクロスヘッド68に固定されているボールねじ63’も上下動の幅は比較的小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3の(ア)に示されている竪型射出成形機51であっても、図3の(イ)に示されている竪型射出成形機51’であっても金型59、60を上下方向に型開閉できるので、例えばインサート成形を実施する上で問題はない。しかしながら、これらの竪型射出成形機51、51’のように従来の竪型射出成形機については解決すべき問題も見受けられる。具体的には固定盤52の高さhについての問題である。一般的な横型の射出成形機と同様に、竪型射出成形機においても大型の成形品を成形できることが要求されてきており、そのためには大きな型開閉ストロークを確保することが重要になっている。竪型射出成形機51、51’において型開閉ストロークは、下可動盤56の上下動の幅で決定される。下可動盤56の上下動の幅を大きくするだけであれば、単純にトグル機構58を大型化してもよい。しかしながらトグル機構58を大型化すると必然的に固定盤52の高さhが高くなってしまう。そうすると竪型射出成形機51、51’において金型59、60をメンテナンスする作業者は、作業が困難になる。従ってトグル機構58を単純に大型化する方法は採用できない。そこで例えば、トグル機構58の形状を工夫する等して屈伸率を大きくし、伸張した状態と屈曲した状態の高さの差を大きくする対応も考えられる。そうすると比較的小型のトグル機構によっても、下可動盤56の上下動の幅を大きく確保できそうである。しかしながらこのような対応も単純に採ることができない。あるいは対応を採ったとしても固定盤52の高さhは十分に低くはならない。まず、図3の(ア)に示されている竪型射出成形機51の場合を考えると、ボールねじ63は前記したように型開閉において下可動盤56と一体的に上下するので、型開時にボールねじ63の上端が固定盤52にぶつからないようにしなければならないという制約がある。このような制約があるので、トグル機構58の屈伸率を大きくすることは難しい。屈伸率を大きくすると、型開時にボールねじ63がその分だけ上方に移動して固定盤52にぶつかってしまうからである。以上からボールねじ63が下可動盤56に回転可能に設けられている竪型射出成形機51においては、屈伸率の大きいトグル機構58の採用は難しく、固定盤52の高さhは十分に低くはできないということが分かる。次に図3の(イ)に示されている竪型射出成形機51’の場合を考えると、この竪型射出成形機51’においては、前記したようにボールねじ63’の上下動の幅は型開閉において比較的小さい。つまりボールねじ63’の上端が固定盤52にぶつかる心配はない。しかしながら2点の問題がある。まず第1の問題は、ボールねじ63’の上端と固定盤52の距離70、あるいは間隔70が大きく、この間隔70が無駄であることである。一般的にクロスヘッド68はボールねじ機構62の略中央に位置するので、クロスヘッド68にボールねじ63の上端が固定されている竪型射出成形機51’では、ある程度の大きさでこの間隔70が確保されてしまう。従って、屈伸率の大きいトグル機構58を採用したとしても、間隔70の分だけ固定盤52の高さhは低くならない。第2の問題は、クロスヘッド68とボールナット66’の干渉である。型開時においてクロスヘッド68はボールナット66’に近接するが、屈伸率の大きいトグル機構58を採用する場合、これらは互いにぶつかってしまう。型開時においてクロスヘッド68とボールナット66’とがぶつからないようにするにはボールナット66’の下可動盤56における取付位置を可及的に低くするようにすればばいいが、そうするとボールナット66’が下可動盤56の下方から突き出てしまうので床面との干渉の問題が発生する。つまりボールナット66’の下可動盤56への取付位置はそれほど低くはできない。従って固定盤52の高さhは十分に低くできない。またボールナット66’は径が大きいのでこれを回転自在に軸受する軸受機構65’は必然的に大型化してしまう。大型化するとその分だけ軸受機構65’は下可動盤56から下方に突き出てしまうので、この点も固定盤52の高さhを十分に低くできない原因になっている。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決した、竪型射出成形機を提供することを目的としており、具体的には十分な型開閉ストロークを確保できるにも拘わらず、固定盤の高さを低くすることができ、それによって作業員によるメンテナンス作業が容易な竪型射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、トグル式型締装置を備えた竪型射出成形機として構成する。竪型射出成形機は、固定盤と、上可動盤と、下可動盤と、上下可動盤を連結するタイバーと、下可動盤と固定盤の間に設けられているトグル機構とからなる。そしてトグル機構は、固定盤に軸支されている一対の上側リンクと、下可動盤に軸支されている一対の下側リンクと、クロスリンクと、クロスヘッドと、ボールねじ機構とから構成する。上側リンクと下側リンクは互いに回動可能に連結し、クロスリンクはこれらの上側リンク、下側リンクのいずれか、または両方に連結すると共にクロスヘッドの連結部に連結する。ボールねじ機構のボールねじはクロスヘッドに固定するが、この固定部はクロスリンクの連結部より高くなるようにクロスヘッドを形成する。また固定部の下側に所定の大きさの収納スペースを形成し、トグル機構が屈曲されたときにボールナットの少なくとも先端部が収納されるように構成する。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、下側金型が取り付けられる固定盤と、該固定盤の上方に配置されて上側金型が取り付けられる上可動盤と、前記固定盤の下方に配置されている下可動盤と、前記固定盤を挿通し前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構とからなる竪型射出成形機において、前記トグル機構は、一対の上側リンクと、一対の下側リンクと、一対のクロスリンクと、クロスヘッドと、ボールねじ機構とから構成され、前記上側リンクと前記下側リンクは、それぞれの一方の端部が前記固定盤と前記下可動盤のそれぞれに軸支されていると共に、他方の端部同士が回動可能に連結され、前記クロスリンクは、その一方の端部が前記上側リンクまたは前記下側リンクあるいはその両方に回動可能に連結されていると共に他方の端部が前記クロスヘッドに回動可能に連結され、前記ボールねじ機構は、該ボールねじ機構を構成するボールねじの先端が前記クロスヘッドに固定され、そして該ボールねじに螺合するボールナットが前記下可動盤に回転自在に設けられており、前記クロスヘッドは、前記ボールねじを固定している固定部が前記クロスリンクに連結されている連結部よりも高くなっていると共に該固定部の下側に所定の大きさの収納スペースが形成され、前記トグル機構が屈曲されたときに前記収納スペースに前記ボールナットの少なくとも先端部が収納されるようになっていることを特徴とする竪型射出成形機として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の竪型射出成形機において、前記ボールナットは、その下部に筒状のスリーブ体が一体的に固定され、該スリーブ体が回転自在に前記下可動盤に設けられていることを特徴とする竪型射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明は、トグル機構を備えた竪型射出成形機として構成されている。そしてトグル機構を構成しているボールねじ機構は、ボールねじがクロスヘッドに固定されていると共にボールナットが回転可能に下可動盤に設けられている。このようにボールねじ機構が設けられているので、本発明に係る竪型射出成形機はボールナットを回転してトグル機構を開閉するときに、ボールねじによる上下動の幅は比較的小さい。そして本発明によると、クロスヘッドは、ボールねじを固定している固定部がクロスリンクに連結されている連結部よりも高くなっている。つまりボールねじの固定部は、トグル機構の中で比較的高い位置に位置することになる。そうするとボールねじの先端と固定盤の距離、あるいは間隔は狭い。ボールねじの上下動が比較的小さい竪型射出成形機において、固定盤の高さはボールねじの先端と固定盤の間隔の広狭が影響するが、この間隔が狭いので、その分だけ固定盤の高さを低くすることができる。そして本発明によるとクロスヘッドは、固定部の下側に所定の大きさの収納スペースが形成され、トグル機構が屈曲されたときに収納スペースにボールナットの少なくとも先端部が収納されるようになっている。そうすると屈伸率の大きいトグル機構を採用した場合に生じる問題、すなわちクロスヘッドとボールナットの干渉の問題が解決されている。これによって本発明に係る竪型射出成形機は、比較的小型でありながら屈伸率の大きいトグル機構を採用することができ、固定盤の高さを低く抑制しながら、型開閉ストロークを大きく確保することができる。他の発明によると、ボールナットは、その下部に筒状のスリーブ体が一体的に固定され、該スリーブ体が回転自在に下可動盤に設けられている。このように構成されているので、次の2点の効果が得られる。第1の効果は、ボールナットを下可動盤に対して比較的高い位置に設けることができるので、ボールねじの長さを短くできることである。これによってさらに固定盤の高さを低くすることができる。なお、スリーブ体は筒状なのでトグル機構が屈曲するときにはボールねじはその内部を貫通するようになっている。そして第2の効果は、下可動盤に回転自在に支持する軸受機構を小型化できる点である。ボールナットは転動するボールの通路を確保しなければならないので必然的にその外径は大きくなってしまうが、スリーブ体は内部にボールねじが挿通するようになっていればよいので、外径の自由度は高い。外径をボールナットより小さくすればスリーブ体を軸受する軸受機構は小型化することができる。小型の軸受機構を採用すれば軸受機構が下可動盤の下方から突き出る高さを低くすることができるので、さらに固定盤の高さを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】型締状態の本発明の実施の形態に係る竪型射出成形機を、一部断面で示す正面図である。
図2】型開状態の本発明の実施の形態に係る竪型射出成形機を、一部断面で示す正面図である。
図3】従来の竪型射出成形機を示す図で、その(ア)、(イ)はそれぞれトグル機構におけるボールねじ機構の取付け方が異なる、2種類の従来の竪型射出成形機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について説明する。本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、型締装置2と、型締装置2の上部に設けられている射出装置3とから構成されている。型締装置2は、支柱4、4に支持されている固定盤5と、この固定盤5の上方に配置されている上可動盤6と、固定盤5の下方に配置されている下可動盤7と、固定盤5を摺動自在に貫通し上可動盤6と下可動盤7とを連結している複数本のタイバー9、9、…と、固定盤5と下可動盤7の間に設けられているトグル機構10とから構成されている。固定盤5の上面には下側金型12が、上可動盤6の下面には上側金型13が設けられ、トグル機構10を駆動するとこれらの金型12、13が型締めされるようになっている。上可動盤6には中央部にくり抜き6aが明けられ、上部から射出装置3が挿入されて、上側金型13の図示されないスプルに射出装置3の射出ノズルが当接している。
【0014】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、大きな型開閉ストロークが確保されているにも拘わらず、固定盤5の高さは低く抑えられているが、このようなことが実現できるのはトグル機構10に特徴があるからである。本実施の形態に係るトグル機構10について説明する。
【0015】
トグル機構10は、一対の上側リンク15、15と、一対の下側リンク16、16と、一対のクロスリンク18、18と、クロスヘッド19と、ボールねじ機構とから構成されている。上側リンク15、15はそれぞれの一方の端部が固定盤5に軸支され、下側リンク16、16はそれぞれの一方の端部が下可動盤7に軸支されている。そして上側リンク15、15と下側リンク16、16は、それぞれの他方の端部同士がピン21、21によって回動可能に連結されている。本実施の形態に係るトグル機構10においては、クロスリンク18、18も、その一方の端部がこのピン21、21によって連結されている。このようなクロスリンク18、18はそれぞれ他方の端部が、後で詳しく説明する本実施の形態に係るクロスヘッド19に回動可能に連結されている。本実施の形態に係るトグル機構10において、上側リンク15、15は、下側リンク16、16よりも短くなっている。また固定盤5において上側リンク15、15が軸支されている位置は、下可動盤7において下側リンク16、16が軸支されている位置よりも、機械中心に、つまり内側に大きく寄っている。このように構成されているので、詳しくは説明しないが本実施の形態に係るトグル機構10は屈伸率が大きい。従って本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、比較的小型のトグル機構10が採用されているが、大きな型開閉ストロークが得られることになる。
【0016】
本実施の形態に係るトグル機構10は、ボールねじ機構によって駆動されるようになっている。クロスヘッド19の中央部にはボールねじ機構を構成するボールねじ23が、その先端部において固着されている。そしてボールねじ23に螺合しているボールナット24は、下可動盤7に回転可能に設けられている。従って図に示されていない駆動機構によってボールナット24を正方向と逆方向とに回転すると、ボールねじ23が軸方向に駆動されてトグル機構10が屈伸することになる。
【0017】
本実施の形態に係るクロスヘッド19は、その形状に特徴がある。クロスヘッド19はクロスリンク18、18が連結されている両側の連結部に比して、ボールねじ23が固定されている固定部が高い位置になるように形成されている。そして固定部の下側には円柱状のくり抜き26が明けられている。このくり抜き26は、トグル機構10が屈曲したときにボールナット24の上部が収納される収納スペース26になっている。クロスヘッド19はこのように形成されているので、2点の特徴がある。第1の特徴は、クロスヘッド19と固定盤5の間隔28、換言するとボールねじ23の上端と固定盤5の間隔28が短くなっていることである。この間隔28が短くなっているので、その分だけ無駄なスペースがなく固定盤5の高さを低くすることができる。第2の特徴は収納スペース26にボールナット24が収納されるので、十分にクロスヘッド19を下可動盤7の方に駆動できることである。つまりクロスヘッド19を駆動できる上下の距離は大きく確保できる。これによってトグル機構10の屈伸率を妨げること無く、トグル機構10を十分に伸張させたり屈曲させたりできる。
【0018】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、下可動盤7におけるボールナット24の取付方法も特徴がある。本実施の形態においてボールナット24には、その下部に筒状のスリーブ体29が一体的に設けられている。スリーブ体29は、内径がボールねじ23の径よりわずかに大きく、ボールねじ23が挿通自在になっている。下可動盤7にはこのようなスリーブ体29が軸受機構31を介して回転可能に設けられている。このように構成されているので、ボールナット24は下可動盤7の最下部ではなく、若干高い位置に設けられることになる。このようにボールナット24は若干高い位置に設けられているので、その分だけボールねじ23は短くすることができる。これによって固定盤5の高さを低くすることができる。
【0019】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1において、トグル機構10を屈曲させ、型開した状態が図2に示されている。トグル機構10を屈曲すると、ボールナット24の先端部がクロスヘッド19の収納スペース26に収納され、十分に屈曲される。そしてボールねじ23はスリーブ体29を貫通して下方に突き出ることになる。本実施の形態に係る竪型射出成形機1では、ボールねじ23はクロスヘッド19に固定されている。竪型射出成形機1においてクロスヘッド19は型開閉時の上下動の幅が比較的小さいので、ボールねじ23の上下動の幅も小さい。型開時にボールねじ23がスリーブ体29から下方に突き出ても、ボールねじ23の下端部が床面にぶつかることはない。
【0020】
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は色々な変形が可能である。例えば、トグル機構10は、上側リンク15、15が下側リンク16、16より短くなっているように説明したが、必ずしもそのようになっていなくてもよい。同等の長さであっても、あるいは上側リンク15、15の長さが長くてもよい。また本実施の形態においてクロスヘッド19に形成されている収納スペース26は円柱状のくり抜きであるように説明したが、収納スペース26の形状について限定はされない。トグル機構10が屈曲されたときにボールナット24の先端部が入り込めるようなスペースが形成されていればよい。また本実施の形態においてボールナット24はスリーブ体29を介して下可動盤7に設けられているように説明したが、スリーブ体29を設けずに、所定の軸受機構によって直接下可動盤7に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 支柱
5 固定盤 6 上可動盤
7 下可動盤 9 タイバー
10 トグル機構 12 下側金型
13 上側金型 15 上側リンク
16 下側リンク 18 クロスリンク
19 クロスヘッド 21 ピン
23 ボールねじ 24 ボールナット
26 収納スペース 28 間隔
29 スリーブ体 31 軸受機構
図1
図2
図3