特許第6227626号(P6227626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227626
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】低Si含有量鋼ストリップ
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20171030BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20171030BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20171030BHJP
   C21D 9/46 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   C22C38/00 301T
   C22C38/58
   C22C18/04
   !C21D9/46 J
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-503786(P2015-503786)
(86)(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公表番号】特表2015-517033(P2015-517033A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】EP2013001017
(87)【国際公開番号】WO2013149734
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年4月4日
(31)【優先権主張番号】12002492.2
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008054
【氏名又は名称】タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL IJMUIDEN BV
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】エグベルト、ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、アントン、フレデリク、スパン
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト、モステルト
(72)【発明者】
【氏名】テオ、アルノルト、コップ
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−092126(JP,A)
【文献】 特開平11−293396(JP,A)
【文献】 特表2010−519415(JP,A)
【文献】 特開2011−219812(JP,A)
【文献】 特開2012−012703(JP,A)
【文献】 特開2009−035815(JP,A)
【文献】 特開2011−006772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
600MPaの最大引張強度Rmを有する鋼ストリップであって、質量%で以下の成分:
C 0.08〜0.11%
Mn 1.70〜2.20%
Si 最大で0.1%
Cr 0.40〜0.70%
Mo 最大で0.3%
Ni 最大で1.0%
Al 0.1〜0.5%
Nb 最大で0.005%
P 0または0.0005%以上0.05%未満
N 0.015%以下
Ti 0.1%以下
V 0.1%以下
B 0.01%以下
残部
からなり、
Cr、Mo、およびNiの合計が少なくとも0.5%であり、
前記残部がFeおよび不可避不純物である、鋼ストリップ。
【請求項2】
Siが最大で0.08%である、請求項1に記載の鋼ストリップ。
【請求項3】
以下の成分:
Mn 1.70〜1.95%
Si 0.02〜0.08
含んでなる、請求項1または2に記載の鋼ストリップ。
【請求項4】
以下の成分:
Cr 0.50〜0.60%
Mo 最大で0.01%
Ni 最大で0.05%
を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼ストリップ。
【請求項5】
Alが少なくとも0.2%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の鋼ストリップ。
【請求項6】
以下:
マルテンサイト 2〜50
ェライト 50〜98%
任意で
パーライト 3%未
含んでなる微細構造を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の鋼ストリップ。
【請求項7】
Znを含んでなるコーティングで被覆された、請求項1〜のいずれか一項に記載の鋼ストリップ。
【請求項8】
溶融亜鉛めっきされた、請求項に記載の鋼ストリップ。
【請求項9】
前記コーティングが、質量%で0.3〜4.0%のMg、0.05〜6.0%のAl、不可避不純物および残部、ならびに最大で0.2%の、Pb、Sb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr、およびBiからなる群から選択される1種以上の追加元素からなり、前記残部が亜鉛である、請求項またはに記載の鋼ストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低Si含有量鋼ストリップ、特に、溶融亜鉛めっきされた鋼ストリップ、より詳細には、溶融亜鉛めっきされた二相または複合相鋼ストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
強度および延性(成形性)の点でバランスのとれた特性を有する二相(DP)鋼ストリップは当技術分野で周知である。コスト削減および/または管理、固溶体強化、炭化物析出回避の理由で、冷間圧延DP鋼ストリップにおいてケイ素は非常に一般的な合金化元素であり、延性(伸長)を考慮すると有利である。しかしながら、ケイ素は表面に関連した問題を引き起こす。熱間圧延機およびアニーリングラインでの処理中に形成される酸化ケイ素は、外観および被覆性に影響を及ぼす、いわゆる「虎縞模様」(tiger stripes)の発生のリスクを高める。したがって、一般に、DP鋼、特に溶融亜鉛めっき(HDG)DP鋼におけるケイ素の使用が制限される。DP鋼におけるSi含有量は、概してHDGDP板において0.2〜0.3重量%および被膜のない鋼板において0.2〜0.5重量%である。
【0003】
EP2169091A1より、低降伏強度の高強度溶融亜鉛めっき鋼板が知られている。鋼組成物は、質量%で0.01〜0.12%のC、0.2%以下のSi、2%未満のMn、0.04%以下のP、0.02%以下のS、0.3%以下のAl、0.01%以下のN、0.3〜2%のCrを含んでなり、また条件2.1≦[Mneq]≦3および0.24≦[%Cr]/[%Mn]を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなる。鋼微細構造はフェライトおよび第2相からなり、第2相の面積率が2〜25%、第2相におけるパーライトまたはベイナイトの面積率が0〜20%、第2相の平均粒径が0.9〜7マイクロメータ、および第2相における粒径が0.8マイクロメータ未満の粒子の面積率が15%未満であることを特徴とする。鋼組成物は、低Siおよび低Alの合金化原理に基づいた多くの実施例により例示される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、強度、延性、また、十分な表面品質、特に虎縞模様の発生の回避、の点で望ましい微細構造特性を兼ね備える二相(DP)または複合相(CP)鋼組成物などの鋼組成物を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、良好な被覆性を有するそのような鋼組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明によれば、
600MPa鋼カテゴリーの最大引張強度Rmを有する鋼ストリップは、質量%で以下の成分:
C 0.08〜0.11%
Mn 1.70〜2.20%
Si 最大で0.1%
Cr 0.40〜0.70%
Mo 最大で0.3%
Ni 最大で1.0%
Al 0.01〜1.50%
を含み、任意で、
Nb 最大で0.07%
P 0.0005%以上
N 0.015%以下
Ti 0.1%以下
V 0.1%以下
B 0.01%以下
からなる群から選択される1種以上の元素を含んでなり、
Cr、Mo、およびNiの合計が少なくとも0.5%であり、
残部がFeおよび不可避不純物である。
【0007】
驚くべきことに、本発明による鋼組成物が、600MPaレベルの従来の(HDG)DP鋼ストリップに匹敵する強度および成形性特性の許容可能なレベルで虎縞模様を示さないことが分かってきた。
【0008】
冶金学的側面に関し、以下のガイドラインが適用されると見なされる。スポット溶接性を考慮すると、Cは0.08〜0.11%である。Cが0.08%を下回ると、DPまたはCP微細構造を作るには炭素含有量が低過ぎる。
【0009】
Siは最大で0.1%である。Siが虎縞模様に関与する主要因子であることを示してきた。これらの表面欠陥の発生のリスクを安全な方法で回避するため、量は最大で0.1%に限られる。好ましくは、Si含有量は0.02〜0.08%の範囲である。
【0010】
通常、Alの添加とSiの添加は、鋼の成形性に対し同様の有益な効果を有する。しかしながら、虎縞模様を考慮すると、Alはほとんど影響を及ぼさない。したがって、Alは0.01〜1.5%の範囲であり、例えば、0.01〜1.10%である。好ましくは、Alの最小量は0.1%超過であり、より好ましくは約0.02超過であり、Alの含有量は有利には0.5%未満であり、例えば、約0.3%である。
【0011】
Mnは1.7〜2.20%のレベル、好ましくは1.70〜1.95%のレベルであり、それにより低Si含有量に起因する強度の低減が補われる。本発明の鋼ストリップのDPまたはCP微細構造を決定する強度および硬化の理由のため、Cr、Mo、およびNiもまた存在する。本発明によれば、これらの元素の総計は少なくとも0.5%である。それぞれの元素の量は、
Cr 0.4〜0.7%、好ましくは0.5〜0.6%
Mo 最大で0.3%、好ましくは0.01%未満
Ni 0〜1.0%、好ましくは0〜0.05%
である。
【0012】
鋼ストリップ組成物は、任意で他の合金化元素を少量含んでなってもよい。不可避不純物および他の合金化元素の合計は、有利には1.25%未満である。好ましくは、付加的な合金化元素およびそれぞれの不純物の上限値は、
P 0.005%以上、有利には最大で0.05%
N 最大で0.015%
Nb 最大で0.07%、より好ましくは最大で0.005%
Ti 最大で0.1%
V 最大で0.1%
B 最大で0.01%
である。
【0013】
好ましくは、本発明による鋼ストリップは、
以下:
マルテンサイト 2〜50%、好ましくは少なくとも5%
フェライト 50〜98%
任意で
パーライト 3%未満、好ましくは約0%
を含んでなる微細構造を有する。粒径は、有利には約30マイクロメータ未満である。
【0014】
好ましい実施形態において、鋼ストリップはZnを含んでなるコーティングで被覆されている。コーティングは様々な方法で施すことができるが、標準Gl塗装浴を用いた溶融亜鉛めっきが好ましい。また、他のZnコーティングを適用してもよい。WO 2008/102009によるZn合金コーティング、特に、0.3〜4.0%のMg、および0.05〜6.0%のAl、および不可避不純物に加えて、任意で最大で0.2%の1種以上の追加元素からなり、残部が亜鉛である亜鉛合金コーティング層が例に挙げられる。追加元素は、概して0.2重量%未満の少量で加えられ、PbまたはSb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、ZrまたはBiを含んでなる群から選択されうる。通常、Pb、Sn、BiおよびSbが加えられるとスパングルを形成する。好ましくは、亜鉛合金における追加元素の総量は最大で0.2%である。これら少量の追加元素は、通常の塗布に対しかなりの程度までコーティングも浴槽の特性も変えない。1種以上の追加元素が亜鉛合金コーティング中に存在する場合、好ましくはそれぞれが<0.02重量%の量で存在する、好ましくはそれぞれが<0.01重量%の量で存在する。追加元素は通常、溶融亜鉛めっきのための溶融亜鉛合金を有する浴槽でのドロス形成を防ぐため、またはコーティング層においてスパングルを形成するためにのみ加えられる。
【実施例】
【0015】
以下の実施例によって、本発明はさらに詳細に説明される。
【0016】
実施例1〜4
表1に示される組成を有する板は、通常の冷間圧延および連続アニーリング工程により作製される。熱間圧延後、ストリップを冷間圧延して、表2に示す最終厚さとした。実施例1〜2に対し、標準の製鋼および圧延手段で冷間圧延ストリップを作る。冷間圧延後、材料を標準アニーリングラインで連続的にアニーリングする。実施例1および2の関連データは、表3に示す。温度T1へ加熱した後、T2までの徐冷(速度1〜10℃/秒)を行い、次いで、温度T3までの急冷(速度20〜60℃/秒)を行う(関連データは表3に示す)。次に、材料を亜鉛めっきする。実施例3〜4は、同様の方法で作製した。
【0017】
板はまた虎縞模様の存在を視覚的に調べられた。虎縞模様は観察されなかった。表面品質はほぼ完璧であった。また、良好な被覆性が達成された。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】