(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホイールシリンダへ配管を介してブレーキ液を供給する液圧発生装置と、前記配管の途中に設けられ、前記複数のホイールシリンダのうち、ブレーキ液を供給するホイールシリンダを選択可能な液圧供給装置と、前記液圧発生装置を制御すると共に、前記液圧発生装置から供給するブレーキ液量を制御可能な制御装置と、を有するブレーキ装置の配管内の大気混入検出方法において、
前記制御装置は、
前記液圧発生装置からホイールシリンダへ配管を介して所定のブレーキ液量を供給するステップと、
前記液圧発生装置から前記ホイールシリンダへ向けてブレーキ液を供給する時のブレーキ液圧を検出するステップと、
前記液圧供給装置を制御して、前記各ホイールシリンダのうち1つのホイールシリンダ毎、若しくは、前記車両の左右のホイールシリンダの左右毎に、前記液圧発生装置のマスタシリンダと順次連通させるステップと、
前記液圧発生装置から供給されるブレーキ液量と前記検出されたブレーキ液圧との関係から前記配管内の大気混入の有無を検出するステップと、
を有することを特徴とするブレーキ装置の配管内の大気混入検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態によるブレーキ装置を、四輪自動車に搭載されるブレーキ装置を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
【0013】
ここで、
図1ないし
図4は第1の実施の形態に係るブレーキ装置を示している。
図1において、前輪側ホイールシリンダ1,2が左,右の前輪(FL,FR)側に設けられ、後輪側ホイールシリンダ3,4が左,右の後輪(RL,RR)側に設けられている。これらのホイールシリンダ1〜4は、液圧式のディスクブレーキまたはドラムブレーキのシリンダを構成し、車両のボディを構成する車体(図示せず)の下側に設けられる夫々の車輪(左,右の前輪および左,右の後輪)毎に制動力を付与するものである。
【0014】
液圧発生装置5は、ホイールシリンダ1〜4にブレーキ配管6,7を介してブレーキ液を供給するもので、該液圧発生装置5は、マスタシリンダ8と、後述の電動倍力装置16およびESC22を含んで構成されている。ブレーキ配管6,7は、マスタシリンダ8とESC22との間に接続して設けられたマスタ側配管6A,7Aと、ホイール側配管6B,6C,7B,7Cと、ESC22のブレーキ管路24,24′(第1管路部25,25′および第2管路部26,26′を含む)とにより構成されている。このうち、ホイール側配管6B,6Cは、ESC22とホイールシリンダ1,4との間に接続して設けられ、ホイール側配管7B,7Cは、ESC22とホイールシリンダ2,3との間に接続して設けられている。
【0015】
マスタシリンダ8は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体9と、該シリンダ本体9内にそれぞれ摺動変位可能に設けられた第1のピストン10および第2のピストン11と、これらのピストン10,11によりシリンダ本体9内に形成された第1,第2の液圧室12,13と、第1,第2の戻しばね14,15とを含んで構成されている。
【0016】
シリンダ本体9内に形成される第1の液圧室12は、第1のピストン10と第2のピストン11との間に画成されている。第2の液圧室13は、シリンダ本体9の底部と第2のピストン11との間でシリンダ本体9内に画成されている。第1の戻しばね14は、第1の液圧室12内に位置して第1のピストン10と第2のピストン11との間に配設され、第1のピストン10をシリンダ本体9の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね15は、第2の液圧室13内に位置してシリンダ本体9の底部と第2のピストン11との間に配設され、第2のピストン11を第1の液圧室12側に向けて付勢している。
【0017】
マスタシリンダ8のシリンダ本体9には、内部にブレーキ液が収容されている作動液タンクとしてのリザーバ(図示せず)が設けられ、このリザーバは、シリンダ本体9内の液圧室12,13にブレーキ液を給排する。また、これらの液圧室12,13内に発生したブレーキ液圧は、一対のマスタ側配管6A,7Aを介して後述のESC22側に送られる。
【0018】
電動倍力装置16は、アクチュエータとしての電動モータ17と、該電動モータ17の回転を減速して第1のピストン10の軸方向変位(進退移動)に変換する回転直動変換機構18とにより構成されている。電動モータ17は、後述の制御装置19により電力供給されることで回転する。電動モータ17の回転軸には、回転軸の回転位置を検出するレゾルバ17Aが設けられている。回転直動変換機構18は、例えばボールネジ機構等を用いて構成されている。この場合、回転直動変換機構18は、電動モータ17の回転を第1のピストン10の軸方向変位(進退移動)に変換できる構成であればよく、例えばラックーピニオン機構等により構成することもできる。また、電動モータ17と回転直動変換機構18との間には、必要に応じてモータの回転を減速する減速機構を設ける構成とするのがよい。
【0019】
制御装置19(以下、ECU19という)は、ブレーキペダル(図示せず)の操作に基づいて液圧発生装置5を制御するもので、ECU19は、液圧発生装置5からホイールシリンダ1〜4に供給するブレーキ液量を可変に制御する機能を有している。即ち、ECU19は、前記ブレーキペダルの操作(即ち、制動指令)に基づいて電動モータ17の回転をレゾルバ17Aや後述の液圧センサ20,21の検出値を用いて制御する。このときの電動モータ17の回転を軸方向変位に変換する回転直動変換機構18は、第1のピストン10をシリンダ本体9内で軸方向に変位させる。第1のピストン10の軸方向変位は、戻しばね14を介して第2のピストン11にも伝えられ、これと液圧室12に発生するブレーキ液圧によって、該第2のピストン11もシリンダ本体9内で軸方向に変位する。なお、ECU19は、ブレーキペダルの操作による制動指令のほか、ブレーキペダルの操作に基づかない自動ブレーキ等を実施するため、外部機器からの制動指令によっても電動モータ17の回転を制御することが可能となっている。
【0020】
このため、マスタシリンダ8のシリンダ本体9からはマスタ側配管6A,7A内に向けてブレーキ液が供給される。このときのブレーキ液量は、ピストン10,11のストローク量に比例するもので、ピストン10,11の外径寸法とストローク量とにより演算して求めることができる。ピストン10,11のストローク量は、電動モータ17の回転軸の回転位置を検出するレゾルバ17Aの検出信号により求めることができる。なお、特開2008−162482号公報に示されるような、入力部材の先端がマスタシリンダの液圧室に臨む構造の電動倍力装置の場合には、前記ブレーキペダルの操作量を検出する操作量検出センサ(図示せず)と上記レゾルバ17Aからの検出信号によってブレーキ液量を求めることができる。
【0021】
ECU19は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、液圧発生装置5の電動倍力装置16(即ち、電動モータ17)を前記ブレーキペダルの操作に基づいて電気的に駆動制御すると共に、後述するESC22へ制御指令を出力するものである。ECU19の入力側は、前記操作量検出センサ、レゾルバ17Aおよび後述の液圧センサ20,21等に接続され、出力側は電動モータ17およびESC22等に接続されている。
【0022】
また、ECU19は、例えばROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)を有している。この記憶部には、ブレーキ配管6,7内に大気としてのエアが混入しているか否かを判定するための判定処理用のプログラム(
図3参照)と、配管6,7内に供給されたブレーキ液量と液圧との関係を示す特性線図(
図4参照)等とが格納されている。これにより、ECU19は、ブレーキ液量と液圧との関係からブレーキ配管6,7内への大気混入の有無を検出する混入有無検出手段を構成するものである。
【0023】
液圧センサ20,21は液圧検出手段を構成し、ホイールシリンダ1〜4と液圧発生装置5との間でブレーキ配管6,7内に発生するブレーキ液圧を検出するものである。ここで、液圧センサ20は、マスタシリンダ8の第1の液圧室12からマスタ側配管6Aを介して後述のESC22側に供給されるブレーキ液圧を検出する。一方、液圧センサ21は、マスタシリンダ8の第2の液圧室13からマスタ側配管7Aを介して後述のESC22側に供給されるブレーキ液圧を検出する。液圧センサ20,21による検出信号は、信号線(図示せず)等を介してECU19に送られる。
【0024】
次に、車両の各車輪側に配設されたホイールシリンダ1〜4とマスタシリンダ8との間に設けられた液圧供給装置22(以下、ESC22という)について、
図2を参照して説明する。ESC22は、電動倍力装置16によりマスタシリンダ8(第1,第2の液圧室12,13)内に発生したブレーキ液圧を、車輪毎のホイールシリンダ圧として可変に制御して各車輪側のホイールシリンダ1〜4に個別に供給するホイールシリンダ圧制御装置を構成している。
【0025】
即ち、ESC22は、各種のブレーキ制御(例えば、左,右の前輪と左,右の後輪毎に制動力を配分する制動力配分制御、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御等)をそれぞれ行う場合に、必要なブレーキ液圧をホイール側配管6B,6C,7B,7Cを介してホイールシリンダ1〜4に供給する機能を有している。ESC22は、複数のホイールシリンダ1〜4のうちいずれのホイールシリンダにブレーキ液を供給するかを選択可能となっている。
【0026】
ここで、ESC22は、マスタシリンダ8(第1,第2の液圧室12,13)からマスタ側配管6A,7Aを介して出力される液圧を、ホイール側配管6B,6C,7B,7Cを介してホイールシリンダ1〜4に分配、供給する。これにより、前述の如く車輪毎にそれぞれ独立した制動力が個別に付与される。ESC22は、後述の各制御弁27,27′,29,29′,31,31′,35,35′,36,36′、開閉弁43,43′と、液圧ポンプ37,37′を駆動する電動モータ38と、これらを制御する制御基板22A(以下、ECU22Aという)等とを含んで構成されている。また、ESC22は、液圧制御用リザーバ42,42′を有している。
【0027】
ESC22は、マスタシリンダ8の一方の出力ポート(即ち、マスタ側配管6A)に接続されて左前輪(FL)側のホイールシリンダ1と右後輪(RR)側のホイールシリンダ4とに液圧を供給する第1液圧系統23と、他方の出力ポート(即ち、マスタ側配管7A)に接続されて右前輪(FR)側のホイールシリンダ2と左後輪(RL)側のホイールシリンダ3とに液圧を供給する第2液圧系統23′との2系統の液圧回路を備えている。ここで、第1液圧系統23と第2液圧系統23′とは、同様な構成を有しているため、以下の説明は第1液圧系統23についてのみ行い、第2液圧系統23′については各構成要素に符号に「′」を付し、それぞれの説明を省略する。
【0028】
ESC22の第1液圧系統23は、マスタ側配管6Aの先端側に接続されたブレーキ管路24を有し、ブレーキ管路24は、第1管路部25および第2管路部26の2つに分岐している。第1管路部25は、ホイール側配管6Bを介してホイールシリンダ1に接続され、第2管路部26は、ホイール側配管6Cを介してホイールシリンダ4に接続されている。ブレーキ管路24および第1管路部25は、ホイール側配管6Bと共にホイールシリンダ1に液圧を供給する一方の管路(配管6の一部)を構成している。また、ブレーキ管路24および第2管路部26は、ホイール側配管6Cと共にホイールシリンダ4に液圧を供給する他方の管路(配管6の一部)を構成している。
【0029】
ブレーキ管路24には、ブレーキ液圧の供給制御弁27と逆止弁28とが並列に設けられている。供給制御弁27は、ECU22Aによって制御され、ブレーキ管路24を途中部位で連通・遮断する常開の電磁切換弁により構成されている。この供給制御弁27は、ECU19からの制御信号に基づき、ECU22Aを介してブレーキ管路24の連通・遮断を制御する弁機構を構成している。逆止弁28は、マスタシリンダ8側からブレーキ管路24内に向けてブレーキ液が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
【0030】
第1管路部25には増圧制御弁29と逆止弁30とが並列に設けられている。増圧制御弁29は、ECU22Aによって制御され、第1管路部25を途中部位で連通・遮断する常開の電磁切換弁により構成されている。この増圧制御弁29は、ECU19からの制御信号に基づき、ECU22Aを介して第1管路部25の連通・遮断を制御する弁機構を構成している。逆止弁30は、ホイールシリンダ1側から第1管路部25、ブレーキ管路24側に向けてブレーキ液が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
【0031】
第2管路部26には増圧制御弁31と逆止弁32とが並列に設けられている。増圧制御弁31は、ECU22Aによって制御され、第2管路部26を途中部位で連通・遮断する常開の電磁切換弁により構成されている。この増圧制御弁31は、ECU19からの制御信号に基づき、ECU22Aを介して第2管路部26の連通・遮断を制御する弁機構を構成している。逆止弁32は、ホイールシリンダ4側から第2管路部26、ブレーキ管路24側に向けてブレーキ液が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
【0032】
一方、ESC22の第1液圧系統23は、ホイールシリンダ1,4側と液圧制御用リザーバ42とをそれぞれ接続する第1,第2の減圧管路33,34を有し、これらの減圧管路33,34には、それぞれ第1,第2の減圧制御弁35,36が設けられている。第1,第2の減圧制御弁35,36は、ECU22Aによって制御され、減圧管路33,34をそれぞれの途中部位で連通・遮断する常閉の電磁切換弁により構成されている。
【0033】
また、ESC22は、液圧源としての液圧ポンプ37を備え、該液圧ポンプ37は電動モータ38により回転駆動される。ここで、電動モータ38は、ECU22Aからの給電により駆動され、給電の停止時には液圧ポンプ37と一緒に回転停止される。液圧ポンプ37の吐出側は、逆止弁39を介してブレーキ管路24のうち供給制御弁27よりも下流側となる位置(即ち、第1管路部25と第2管路部26とが分岐する位置)に接続されている。液圧ポンプ37の吸込み側は、逆止弁40,41を介して液圧制御用リザーバ42に接続されている。
【0034】
液圧制御用リザーバ42は、余剰のブレーキ液を一時的に貯留するために設けられ、ブレーキシステム(ESC22)のABS制御時に限らず、これ以外のブレーキ制御時にもホイールシリンダ1,4から流出してくる余剰のブレーキ液を一時的に貯留するものである。また、液圧ポンプ37の吸込み側は、逆止弁40および常閉の電磁切換弁である開閉弁43を介してマスタシリンダ8のマスタ側配管6A(即ち、ブレーキ管路24のうち供給制御弁27よりも上流側となる位置)に接続されている。
【0035】
ESC22を構成する各制御弁27,27′,29,29′,31,31′,35,35′,36,36′、開閉弁43,43′および液圧ポンプ37,37′を駆動する電動モータ38は、ECU22Aによってそれぞれの動作制御が予め決められた手順で行われる。また、各制御弁27,27′,29,29′,31,31′は、ECU19から出力される制御信号に従ってECU22Aを介して制御されるようになっている。
【0036】
そして、ESC22の第1液圧系統23は、運転者のブレーキ操作による通常の動作時において、電動倍力装置16によってマスタシリンダ8で発生した液圧を、ブレーキ管路24および第1,第2管路部25,26を介してホイールシリンダ1,4に直接供給する。例えば、アンチスキッド制御等を実行する場合は、増圧制御弁29,31を閉じてホイールシリンダ1,4の液圧を保持し、ホイールシリンダ1,4の液圧を減圧するときには、減圧制御弁35,36を開いてホイールシリンダ1,4の液圧を液圧制御用リザーバ42に逃がすように排出する。
【0037】
また、車両走行時の安定化制御(横滑り防止制御)等を行うため、ホイールシリンダ1,4に供給する液圧を増圧するときには、ECU22Aは、供給制御弁27を閉弁した状態で電動モータ38により液圧ポンプ37を作動させる。これにより、ESC22は、該液圧ポンプ37から吐出したブレーキ液を第1,第2管路部25,26を介してホイールシリンダ1,4に供給する。このとき、開閉弁43が開弁されていることにより、マスタシリンダ8側から液圧ポンプ37の吸込み側へと前記リザーバ内のブレーキ液が供給される。
【0038】
このように、ECU22Aは、車両運転情報等に基づいて供給制御弁27、増圧制御弁29,31、減圧制御弁35,36、開閉弁43および電動モータ38(即ち、液圧ポンプ37)の作動を制御し、ホイールシリンダ1,4に供給する液圧を適宜に保持したり、減圧または増圧したりする。これによって、前述した制動力分配制御、車両安定化制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
【0039】
一方、電動モータ38(即ち、液圧ポンプ37)を停止した状態で行う通常の制動モードでは、供給制御弁27および増圧制御弁29,31を開弁させ、減圧制御弁35,36および開閉弁43を閉弁させる状態としている。この状態で、前記ブレーキペダルの踏込み操作に応じてマスタシリンダ8の第1のピストン10と第2のピストン11とがシリンダ本体9内を軸方向に変位するときには、第1,第2の液圧室12,13内に発生したブレーキ液圧が、マスタ側配管6A側からESC22の第1液圧系統23、ホイール側配管6B,6Cを介してホイールシリンダ1,4に供給される。第2の液圧室13内に発生したブレーキ液圧は、マスタ側配管7A側から第2液圧系統23′、ホイール側配管7B,7Cを介してホイールシリンダ2,3に供給される。
【0040】
なお、ESC22の各制御弁27,27′,29,29′,31,31′,35,35′,36,36′、開閉弁43,43′は、その特性を夫々の使用態様に応じて適宜設定することができるが、このうち供給制御弁27,27′および増圧制御弁29,29′,31,31′を常開弁とし、減圧制御弁35,35′,36,36′および開閉弁43,43′を常閉弁とすることにより、ECU22Aが起動していない場合にも、マスタシリンダ8からホイールシリンダ1〜4に液圧を供給することができる。従って、ブレーキ装置のフェイルセーフおよび制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましいものである。
【0041】
ECU19とECU22Aとは、
図1に示すようにCAN通信等を行う信号線44を用いて接続されている。そして、ECU19は、ECU22Aに制御信号を出力してESC22の各制御弁27,27′,29,29′,31,31′,35,35′,36,36′、開閉弁43,43′および電動モータ38等をそれぞれ制御することが可能となっている。
【0042】
図4中に示す特性線45,46は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9から両方のブレーキ配管6,7内に向けてブレーキ液を供給した場合における特性、即ちブレーキ液の液量Vol(cc)と液圧P(MPa)との関係を表している。このときに、ブレーキ配管6,7内に発生する液圧Pは、液圧センサ20,21で検出することにより求められる。また、ブレーキ液の液量Volは、ピストン10,11のストローク量、即ち電動モータ17の回転位置を検出することによって演算により求めることができる。
【0043】
ここで、実線で示す特性線45は、4輪全体でブレーキ配管6,7内にエアが混入していない場合の特性であり、点線で示す特性線46は、4輪のいずれかでブレーキ配管6,7内にエアが混入している場合の特性である。即ち、ブレーキ配管6,7内にエアが混入している場合には、点線で示す特性線46のように、液量Volに対する液圧Pの上昇カーブが相対的に小さくなっている。しかし、特性線45,46は、4輪全体のブレーキ配管6,7内へブレーキ液を供給した場合の特性であるため、液量Volに対する液圧Pの立上がり特性が緩やかであり、両者の特性に大きな差は出ないことがある。
【0044】
これに対し、
図4中に示す特性線47,48は、4輪全体ではなく、1つの車輪側のホイールシリンダ(例えば、FL側のホイールシリンダ1)にのみ液圧を供給し、他のホイールシリンダ2〜4への液圧供給を停止させた場合の特性である。このため、特性線47,48は、液量Volに対して液圧Pが大きく立上がる特性となり、実線で示す特性線47(エア混入なし)と点線で示す特性線48(エア混入あり)とには、大きな差が発生するようになっている。
【0045】
図4中に示す特性線45〜48は、ブレーキ配管6,7内に発生(流通)するブレーキ液量が任意の液量となるように、ECU19からの制御信号で液圧発生装置5(具体的には、電動倍力装置16)を制御してホイールシリンダ1〜4へ向けてブレーキ液を供給したときのブレーキ液量Volとブレーキ液圧Pとの関係を、車両諸元、これまでの経験値、実験データ等に基づいて作成したものである。
【0046】
第1の実施の形態によるブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0047】
例えば、車両の運転者が前記ブレーキペダルを踏込み操作した場合、ECU19は、このときのペダル操作量に対応した起動指令を電動倍力装置16の電動モータ17に出力する。これにより、電動モータ17は、起動指令に対応した回転角をもって駆動される。電動モータ17の回転は、回転直動変換機構18により第1のピストン10の軸方向変位に変換される。
【0048】
電動倍力装置16の第1のピストン10は、マスタシリンダ8のシリンダ本体9内に向けて前進し、第2のピストン11も同様に前進方向に移動される。このため、マスタシリンダ8の第1,第2の液圧室12,13内には、電動モータ17の回転角(回転位置)に応じてブレーキ液圧が発生する。また、ECU19は、液圧センサ20,21からの検出信号を受取ることによりマスタシリンダ8に発生した実液圧を監視し、この実液圧がペダル操作量に基づいた目標液圧となるように、電動倍力装置16の電動モータ17の回転をフィードバック制御する。
【0049】
ところで、液圧発生装置5のマスタシリンダ8とホイールシリンダ1〜4とを接続するブレーキ配管6,7内には、例えばブレーキ装置の組立て時、またはメンテナンス時に大気(エア)が混入することがある。ブレーキ配管6,7内にエアが混入した場合には、ブレーキ操作の開始から実際の制動の開始までに余分なタイムラグが発生し、ドライバはブレーキペダルの操作に違和感を覚える等の不具合が生じる。このため、自動車の製造工場等では、ブレーキ装置の配管作業時にエア混入の有無を検査するようにしている。しかし、このような検査は、例えば検査作業者が実際にブレーキペダルを踏込んでエア混入の有無を判別しているので、作業の効率が悪く、改善すべき課題となっていた。
【0050】
そこで、本発明者等は、ブレーキペダルの踏込み操作を行うことなく、配管内のエア混入の有無を確認できるようにするため、ECU19から電動倍力装置16の電動モータ17に制御信号(即ち、ブレーキペダルの操作時と同等な制御信号)を出力し、電動モータ17の回転によってマスタシリンダ8内に液圧を発生させることを検討して本発明に至ったものである。
【0051】
即ち、第1の実施の形態では、エア混入の有無を検出するための混入検出処理を行うために、ECU19に対して所定の操作がなされると、ECU19から液圧発生装置5の電動倍力装置16とESC22のECU22Aとに、
図3に示す混入検出処理用のプログラムに沿ってそれぞれ制御信号を出力し、ブレーキ配管6,7(具体的には、ホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管)毎に内部に大気(エア)が混入しているか否かを判定する構成としている。
【0052】
図3に示す混入検出処理がスタートすると、ステップ1ではECU19からESC22のECU22Aに動作指令を送信する。これにより、ステップ2ではESC22で選択した1輪分を除いて配管のポートを閉鎖する処理を行う。具体的には、
図2に示すESC22の増圧制御弁29,29′,31,31′のうち増圧制御弁29のみを開弁状態に保持し、他の増圧制御弁29′,31,31′は図示の開弁位置から閉弁位置に切換える。これにより、ホイールシリンダ1〜4のうちホイールシリンダ1のみがブレーキ配管6を介してマスタシリンダ8に連通し、これ以外のホイールシリンダ2,3,4はポートを閉鎖した状態となって、ブレーキ配管6,7を介したマスタシリンダ8への連通が遮断されている。
【0053】
この状態で、次のステップ3では、選択した1輪側であるホイールシリンダ1に接続された配管(即ち、マスタ側配管6A、ブレーキ管路24、第1管路部25、ホイール側配管6B)において、液量−液圧特性を計測する。即ち、ECU19から電動倍力装置16の電動モータ17に制御信号を出力して電動モータ17を回転させることにより、マスタシリンダ8からマスタ側配管6A、ブレーキ管路24、第1管路部25およびホイール側配管6Bを介してホイールシリンダ1に所定のブレーキ液量を供給するステップ(ブレーキ液供給工程)と、このときにマスタシリンダ8からホイールシリンダ1へ向かうブレーキ配管6内に発生するブレーキ液圧を液圧センサ20により検出するステップ(液圧検出工程)とを行う。
【0054】
ステップ3による計測された液量−液圧特性は、前述の如く選択した1輪側での液量−液圧特性が
図4中の特性線47,48に示すように、ブレーキ液量が液量Vaのときに液圧センサ20の検出値が、一例としては液圧Pa,Pbとして計測される。実線で示す特性線47上の液圧Paは、ブレーキ配管6(ホイールシリンダ1に接続されたホイール側配管6B側)にエア混入がない場合であり、点線で示す特性線48上の液圧Pbは、ブレーキ配管6(ホイールシリンダ1に接続されたホイール側配管6B側)にエア混入が発生している場合である。
【0055】
次のステップ4では、前述の如き液量−液圧特性の計測が全ての車輪側で完了したか否かを判定する。ステップ4で「NO」と判定する間は、ステップ1〜4の処理を繰返すように続行する。具体的には、ステップ2において、
図2に示すESC22の増圧制御弁29,29′,31,31′のうち増圧制御弁29′のみを開弁させ、他の増圧制御弁29,31,31′は閉弁位置に切換える。これにより、ホイールシリンダ1〜4のうちホイールシリンダ2のみがブレーキ配管7を介してマスタシリンダ8に連通し、これ以外のホイールシリンダ1,3,4はポートを閉鎖した状態となって、ブレーキ配管6,7を介したマスタシリンダ8への連通が遮断される。
【0056】
次のステップ3では、選択した1輪側であるホイールシリンダ2に接続された配管(即ち、マスタ側配管7A、ブレーキ管路24′、第1管路部25′、ホイール側配管7B)において、前述の如く液量−液圧特性の計測が液圧センサ21を用いて行われる。そして、次のステップ4では、全ての車輪側での計量が完了したか否かを判定し、「NO」と判定するときには、再び前記ステップ1〜4の処理に戻るようにする。
【0057】
これにより、ホイールシリンダ3に接続された配管(即ち、マスタ側配管7A、ブレーキ管路24′、第2管路部26′、ホイール側配管7C)においても、前述の如く液量−液圧特性の計測が行われる。また、ホイールシリンダ4に接続された配管(即ち、マスタ側配管6A、ブレーキ管路24、第2管路部26、ホイール側配管6C)においても、同様に液量−液圧特性の計測が行われる。
【0058】
そして、全ての車輪側で計量が完了してステップ4で「YES」と判定されたときには、次のステップ5で前述した各車輪側における液量−液圧特性をそれぞれ閾値と比較する処理を行う。ステップ5,6においては、液圧発生装置5から供給されるブレーキ液量と液圧センサ20,21を用いて検出されたブレーキ液圧との関係から前記配管内の大気の混入の有無を検出するステップ(大気混入検出工程)が行われる。なお、このステップ5の混入有無検出は、ステップ4よりも前に、ステップ3の各輪の液圧検出ができた時点でそれぞれ行うようにしてもよい。
【0059】
即ち、
図4中に示す特性線47,48のように、液圧発生装置5から供給されるブレーキ液量が液量Vaのときに液圧センサ20,21の検出値が液圧Paに近い値であるか、液圧Pbに近い値であるかを、ステップ5では比較し、次のステップ6では、選択した1輪側の配管内にエアが混入しているか否かを判定する。これにより、ホイールシリンダ1,2,3,4とマスタシリンダ8との間を接続した配管(即ち、選択した1輪側の配管)毎にエア混入の有無を個別に検出することができる。
【0060】
この場合、ステップ6では、選択した1輪側の配管内での液量−液圧特性が正常範囲内であるか否かを判定する。即ち、液圧センサ20,21の検出値が液量Vaのときに液圧Paに近い値である場合には、選択した1輪側の配管内にエアが混入していない正常範囲内として、ステップ6では「YES」と判定する。一方、液圧Pbに近い値である場合には、エア混入が発生しているので、ステップ6では「NO」と判定する。そして、次のステップ7では、選択した1輪側の配管内にエアが混入しているとして「エア混入検出後処理」として音や発光等により警報を行う。この場合、警報の行い方によって、いずれの1輪側の配管内にエアが混入しているかを報知することが可能である。
【0061】
これに対し、ステップ6で「YES」と判定したときには、次のステップ8で左,右の車輪側での液量−液圧特性を比較する。具体的には、FL側のホイールシリンダ1に接続された配管内での液量−液圧特性(即ち、液量Vaのときの液圧センサ20の検出値)と、FR側のホイールシリンダ2に接続された配管内での液量−液圧特性(同じく、液量Vaのときの液圧センサ21の検出値)とを比較し、2つの検出値の差を求める。
【0062】
また、RL側のホイールシリンダ3に接続された配管内での液量−液圧特性(即ち、液量Vaのときの液圧センサ21の検出値)と、RR側のホイールシリンダ4に接続された配管内での液量−液圧特性(同じく、液量Vaのときの液圧センサ20の検出値)とについても同様に比較し、2つの検出値の差を求める。
【0063】
そして、次のステップ9では、2つの液圧センサ20,21による検出値の差が予め決められた閾値(例えば、液圧センサ20,21の検出誤差に基づいた閾値)よりも大きいか否かを比較し、両者の差が正常範囲内にあるか否かを判定する。ステップ9で「YES」と判定したときには、次のステップ10で正常判定を行い、ブレーキ配管6,7のいずれにもエア混入は発生していない、として混入検出処理を終了させる。
【0064】
一方、ステップ9で「NO」と判定したときには、2つの液圧センサ20,21による検出値の差が前記閾値よりも大きい場合であるから、次のステップ7に移って2つの液圧センサ20,21による検出値のうち、検出値が小さい方の配管側でエア混入が発生していることを検出する。これにより、エア混入が、2本のブレーキ配管6,7のうちいずれの配管側で発生しているかを検出することができる。この検出により、ステップ7では、ブレーキ配管6,7のうちの一方、または、両方の配管内にエアが混入しているとして「エア混入検出後処理」として音や発光等により警報を行う。この場合、警報の行い方によって、2本のブレーキ配管6,7のうちいずれの配管側で発生しているかを報知することが可能である。
【0065】
かくして、第1の実施の形態によれば、ECU19から液圧発生装置5の電動倍力装置16とESC22とにそれぞれ制御信号を出力し、弁機構としての増圧制御弁29,29′,31,31′の連通・遮断を制御して各ホイールシリンダ1〜4をマスタシリンダ8と順次個別に連通させ、ホイールシリンダ1〜4毎に電動倍力装置16を制御してマスタシリンダ8のピストン10,11のストローク、即ち、ピストン10,11のストローク量に比例するブレーキ液量と液圧センサ20,21による液圧とを検出し、各ホイールシリンダ1〜4の前記液量−液圧特性を比較して各配管の大気(エア)混入の有無を検出する構成としている。
【0066】
このように、ECU19から液圧発生装置5の電動倍力装置16の電動モータ17とESC22のECU22Aとにそれぞれ制御信号を出力することにより、液圧発生装置5から供給されるブレーキ液量と液圧センサ20,21を用いて検出される液圧との液量−液圧特性の関係からブレーキ配管6,7(具体的には、ホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管)毎に内部にエアが混入しているか否かを精度よく検出することができる。
【0067】
また、左,右の前輪FL,FR側のホイールシリンダ1,2及び/又は左,右の後輪RL,RR側のホイールシリンダ3,4に接続されたブレーキ配管6,7でも、前述の如く液量−液圧特性を比較することにより、2本のブレーキ配管6,7のうちいずれか一方の配管側でエア混入が発生しているか否かを精度よく検出することができる。
【0068】
従って、第1の実施の形態によれば、液圧発生装置5から供給されるブレーキ液量と液圧センサ20,21により検出される液圧との液量−液圧特性を用いることにより、配管内へのエア混入の有無を安定して検出することができ、例えば液圧だけで判断する従来技術に較べて環境要素によるバラツキを抑えて、S/N比を向上することができる。
【0069】
また、選択した1輪分を除いて配管のポートを閉鎖し、選択した1輪側の配管内での液量−液圧特性が正常範囲内であるか否かを判定しているので、エア混入の検出精度を向上することができ、微量のエア混入も検出することができる。また、計測により得られた液量−液圧特性を、左,右のホイールシリンダ1,2(3,4)に接続された配管毎に比較することにより、ブレーキ装置(製品)毎の個体によるバラツキを除去することができる。さらに、エア混入判定の自動化が容易となるため、現行の生産設備上でエア混入の有無検出を実施できる等の利点がある。
【0070】
ここで、上記第1の実施形態においては、液圧センサ20,21が液圧発生装置5のECU19に接続されているが、これに限らず、
図5の概略構成図に示す変形例1のように、ECU22Aに液圧センサ20′,21′を接続するようにしてもよい。この場合には、液圧センサ20′,21′からの計測信号に応じてブレーキ液圧pがECU22Aで検出される。そして、ECU22Aは、検出したブレーキ液圧pを信号線44を介してECU19に送信する。ECU19は、送信されたブレーキ液圧pを用いて混入検出処理を行うことになる。
【0071】
また、上記第1の実施形態においては、ホイールシリンダ1に所定のブレーキ液量を供給するために、ECU19に接続されたレゾルバ17Aによりブレーキ液量を求めるようにしている。しかし、これに限らず、液圧発生装置5の作動によってブレーキペダルが移動する(引き込まれる)構造の場合には、
図6の概略構成図に示す変形例2のように、ブレーキペダルBPの操作量を検出するストロークセンサ(操作量センサ)49により、ブレーキ液量vを検出するようにしてもよい。この場合には、ECU19′を所定の操作により混入検出処理が始まって、液圧発生装置5からホイールシリンダへのブレーキ液の供給が、ストロークセンサ49の検出結果によってブレーキ液量vが所定の液量となったときに、液圧検出工程を行うことになる。
【0072】
上記第1の実施形態においては、混入検出処理を液圧発生装置5のECU19により行うようにしている。しかし、これに限らず、
図7の概略構成図に示す変形例3のように、ESC22のECU22A′により、混入検出処理を行うようにしてもよい。この場合、ECU22A′は、ブレーキ液圧pを変形例1と同様にECU22A′に液圧センサ20′,21′によって検出し、ECU19で検出したブレーキ液量vの検出信号を、信号線44を介して受け取って、
図3に示すような混入検出処理を行うことになる。
【0073】
また、
図8の概略構成図に示す変形例4においては、変形例3のように混入検出処理をECU22A′によって混入検出処理を行い、変形例2のようにECU19′にストロークセンサ49を接続するようにしている。この場合、ECU19′で検出したブレーキ液量vとブレーキ液圧pとの検出信号を、信号線44を介して受け取って、
図3に示すような混入検出処理を行うことになる。このように、本第1の実施の形態においては、上記した変形例1〜4の他、各変形例の変更点同士を組み合わせてブレーキ装置を構成することが可能となっている。
【0074】
次に、
図9は第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、第2の実施の形態の特徴は、ブレーキ配管内へのエア混入を検査する検査作業者が手動等で指令入力操作を行うことができる指令入力装置51を追加して設ける構成としたことにある。
【0075】
ここで、ECU52は、第1の実施の形態で述べたECU19とほぼ同様に構成され、液圧発生装置5の電動倍力装置16(即ち、電動モータ17)を前記ブレーキペダルの操作に基づいて電気的に駆動制御すると共に、後述するESC22への制御信号の出力も行うものである。しかし、この場合のECU52は、例えばROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)内に、例えば
図3に示すような判定処理用のプログラム等を格納していない。
【0076】
第2の実施の形態で採用した指令入力装置51は、CAN通信等を行う信号線53を用いてECU52とECU22Aとの両方、若しくは、いずれか一方に着脱可能に接続されるものである。具体的には、指令入力装置51は、車両製造工場の製造設備ラインの途中や検査工程ライン等に設けられる検査装置や、自動車整備工場等で用いられる故障判断ハンディリーダー等により構成される。また、接続に関しては、ECU52とECU22Aとの両方に接続する場合には、車両の自己診断を行うための診断コネクタ(DLC:データリンクコネクタ)に接続する。また、指令入力装置51をECU52とECU22Aとのいずれか一方に接続する場合には、信号線53を接続するためのコネクタの間にジャンピングして接続することになる
。また、指令入力装置51は、ROM,RAM,不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)を有している。この記憶部には、ブレーキ配管6,7内に大気としてのエアが混入しているか否かを検出するための混入検出処理用のプログラム(例えば、
図3参照)と、配管6,7内に供給されたブレーキ液量と液圧との関係を示す特性線図(例えば、
図4参照)等とが格納されている。
【0077】
これにより、指令入力装置51はECU52およびECU22Aと共に、ブレーキ液量と液圧との関係からブレーキ配管6,7内への大気混入の有無を検出する混入有無検出手段を構成するものである。そして、ECU52は、検査作業者が指令入力装置51を操作したときの動作指令に従って液圧発生装置5の電動倍力装置16に、また、ECU22Aは、例えば
図3に示す混入検出処理と同様な処理を行うための制御信号をそれぞれ出力し、ブレーキ配管6,7(具体的には、ホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管)毎に内部に大気(エア)が混入しているか否かを検出する構成としている。
【0078】
即ち、作業者は、指令入力装置51を操作することにより信号線53を介してECU52にエア混入の有無を検査するための動作指令を送信する。そして、このときの動作指令は、ECU52から、それぞれのECU52,22Aを介して液圧発生装置5の電動倍力装置16とESC22とに出力される。なお、ESC22
は、指令入力装置51から直接的に動作指令を出力できる構成としてもよい。
【0079】
動作指令を受信したESC22は、第1の実施の形態でも述べたように弁機構を構成する増圧制御弁29,29′,31,31′のいずれか1つの制御弁を順次選択的に開弁させ、これ以外の制御弁を閉弁させる。また、動作指令を受信したECU52は、この状態で電動倍力装置16の電動モータ17を駆動してマスタシリンダ8からブレーキ配管6,7内に向けて液圧を発生させ、ホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管毎にそれぞれの液量−液圧特性(
図4中の特性線47,48参照)を計測する。
【0080】
このようにして計測された液量−液圧特性は、CAN通信等を行う信号線53によって、ECU52から指令入力装置51に送信される。そして、作業者は指令入力装置51からホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管毎の液量−液圧特性を取得し、それぞれの配管毎にエア混入の有無を個別に判定することができる。
【0081】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、液圧発生装置5から供給されるブレーキ液量と液圧センサ20,21により検出される液圧との液量−液圧特性を用いることにより、ホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管毎にエア混入の有無を検出することができ、第1の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0082】
特に、第2の実施の形態によれば、遠隔操作等が可能な指令入力装置51を用いて配管内のエア混入を検出する構成としているので、第1の実施の形態で述べたECU19のように、記憶部(図示せず)内に
図3に示す判定処理用のプログラム等を予め格納しておく必要がなくなり、現行品の制御装置(例えば、ECU52)を用いることが可能となる。そして、配管内のエア混入の有無を検査するときには、指令入力装置51から信号線53を介してECU52にエア混入の有無を検出するための動作指令を送信することにより、第1の実施の形態と同様にエア混入の検出処理を実施することができる。
【0083】
なお、本第2の実施の形態においても、ブレーキ液量を検出するためのレゾルバ17Aやストロークセンサ49等の液量検出センサ及びブレーキ液圧を検出する液圧検出センサの接続先を、上述した
図5,6に示す変形例1,2のように、変更することが可能となっている。
【0084】
また、本第2の実施の形態においては、指令入力装置51を診断コネクタやECU52,22Aのコネクタに接続するようにしているが、診断コネクタに無線インターフェースを接続して、無線インターフェースと指令入力装置51との間での信号のやり取りを無線信号によって行うようにしてもよい。
【0085】
なお、前記第1,第2の実施の形態では、電動倍力装置16を用いてマスタシリンダ8からブレーキ配管6,7内に向けて液圧を発生させる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧ブースタのように、流量を計測可能なポンプを用いる構成でもよい。
【0086】
また、
図2に示すESC22の液圧ポンプ37,37′、電動モータ38等を用いてブレーキ配管(具体的には、ブレーキ管路24,24′、第1管路部25,25′、第2管路部26,26′、ホイール側配管6B,6C,7B,7C)内に液圧を発生させ、ECU22Aによってホイールシリンダ1〜4に個別に接続された配管毎にエア混入の有無を検出する構成としてもよい。この場合には、ESC22の管路途中等にブレーキ液量を計測可能な流量センサと液圧を計測可能なホイールシリンダ圧センサを設ける構成としてもよい。なお、ブレーキ液量
の計測については、液圧ポンプ37,37′を定電流で所定時間駆動することで、ホイールシリンダ1〜4へ供給するブレーキ液量を算出するようにしてもよい。このような場合には、ESC22が液圧発生装置を構成し、ECU22Aが制御装置を構成することになる。
【0087】
さらに、前記各実施の形態では、電動倍力装置16によりマスタシリンダ8内にブレーキ液圧を発生させる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブレーキバイワイヤ(BBW)型電動ブースタを、液圧発生装置として用いる構成としてもよい。
【0088】
次に、前記実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明によれば、前記配管の途中には、前記複数のホイールシリンダのうち、ブレーキ液を供給するホイールシリンダを選択可能な液圧供給装置が設けられ、前記混入有無検出手段は、1つのホイールシリンダ毎に、該1つのホイールシリンダに対応する配管内の大気混入の有無を検出することを特徴としている。
【0089】
本発明によれば、前記配管の途中には、前記複数のホイールシリンダのうち、ブレーキ液を供給するホイールシリンダを選択可能な液圧供給装置が設けられ、前記混入有無検出手段は、前記車両の左右のホイールシリンダの片側毎に、該片側のホイールシリンダに対応する配管内の大気混入の有無を検出することを特徴としている。
【0090】
本発明によれば、前記液圧発生装置は、ブレーキ液を供給するマスタシリンダと、該マスタシリンダのピストンを移動させる倍力装置とを有し、前記制御装置は、前記倍力装置を制御するものであることを特徴としている。また、前記制御装置は、前記液圧供給装置を制御するものであることを特徴としている。また、前記
指令入力装置は、前記車両の外部に設けられる検査装置からなることを特徴としている。さらに、前記液圧検出手段は、前記液圧発生装置と前記液圧供給装置との間のブレーキ液圧を検出するものであって、前記制御装置に接続される構成としている。