(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カム機構(50)は、前記操作ハンドル(10−1、10−2)内に一体化されており、前記把持部(11)に対する前記操作部(12)の回転運動を、前記把持部(11)に対する前記少なくとも1つのスライド部材(30、40)の直線運動に変換するように構成されている、請求項1に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記操作部(12)は、ユーザによってその一方の手を用いて把持されるように設計されている回転ホイールであり、一方で、他方の手は前記把持部(11)を保持し、前記回転ホイールは、前記カム機構(50)の前記円筒部材(51)の直径よりも大きい直径を有する、請求項1又は2に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記本体部材(52)は、前記中空の円筒部材(51)の内径よりも小さい直径を有する円筒部(52a)を備え、前記円筒部(52a)は、前記中空の円筒部材(51)が前記本体部材(52)に対して相対的に回転可能であるように、前記中空の円筒部材(51)の内部に少なくとも部分的に受け入れられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記本体部材(52)は、前記把持部(11)に固定されている部分(52b)をさらに備え、前記把持部(11)に固定されている部分(52b)は円筒形であり、前記中空の円筒部材(51)の外径に等しいまたは実質的に等しい直径を有し、
前記把持部(11)は少なくとも部分的に、前記円筒部と同心円上かつ同軸上になるように、前記本体部材(52)の前記円筒部(52b)の周囲に配置される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記ロック機構(70)は、前記係合片(72)が前記少なくとも1つのロック凹部(71−1、71−2)と係合しているときに前記係合片(72)を解放するための操作手段を備え、
前記係合片(72)はバネ荷重され、
前記操作手段は、前記係合片(72)と動作可能に接続されているバネ荷重押しボタン(73)を備え、前記押しボタン(73)は、前記ユーザによって前記係合片(72)を解放するために押されるように設計されており、
前記操作手段は、前記押しボタン(73)が前記ユーザによって押下されるときに前記係合片(72)を押し下げるための、前記押しボタン(73)と接続されているレバー(74)をさらに備え、
前記操作手段は、前記押しボタン(73)を押す方向に垂直な面内で枢動可能であるようにピン(76)によって前記レバー(74)に結合されている第1の端部分を有し、前記押しボタン(73)が前記ユーザによって押下されるときに前記係合片(72)を押し下げるための第2の端部分をさらに有する駆動片(75)をさらに備え、
前記駆動片(75)は前記レバー(74)に結合されており、それによって、前記押しボタン(73)が前記ユーザによって押下されるとき、および、前記円筒部材(51)が前記本体部材(52)に対して相対的に同時に回転されるときに、前記駆動片(75)は前記レバー(74)に対して相対的に外方に振れ、前記駆動片(75)が前記レバー(74)に対して相対的に外方に振れるとき、前記駆動片(75)の前記第2の端部分は前記係合片(72)と接触しなくなり、
前記操作手段は、前記押しボタン(73)が解放されるときに前記駆動片(75)を戻すためのセンタリング手段(77)をさらに備える、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記ロック機構(70)は、前記操作部(12)の利用可能な最大旋回運動を、前記操作部(12)の複数の連続的な間欠旋回運動に細分化するように、前記カム機構(50)の前記円筒部材(51)内に設けられている複数のロック凹部(71−1、71−2)を備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記ロック機構(70)は、前記円筒部材(51)内に設けられる第1のロック凹部(71−1)を備え、それによって、前記ロック機構(70)の前記係合片(72)が前記第1のロック凹部(71−1)と係合するときに、前記カム機構(50)の前記少なくとも1つのピン部材(32、42)が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)の始部にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記ロック機構(70)は、前記円筒部材(51)内に設けられる少なくとも1つの第2のロック凹部(71−2)を備え、それによって、前記ロック機構(70)の前記係合片(72)が前記少なくとも1つの第2のロック凹部(71−2)と係合するときに、前記カム機構(50)の前記少なくとも1つのピン部材(32、42)が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)の中央部にある、請求項1〜12のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記ロック機構(70)は、前記円筒部材(51)内に設けられる第3のロック凹部を備え、それによって、前記ロック機構(70)の前記係合片(72)が前記第3のロック凹部と係合するときに、前記カム機構(50)の前記少なくとも1つのピン部材(32、42)が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)の終部にある、請求項1〜13のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記操作ハンドル(10−1、10−2)は、前記少なくとも1つのスライド部材(30、40)と前記操作部(12)との間の動作可能な連結を選択的に分離するための分離手段(20)をさらに備え、
前記カム機構(50)は、前記操作部(12)と接続されている円筒部材(51)を備え、前記円筒部材(51)は少なくとも1つのカム溝(31、41)を備え、
前記カム機構(50)は、前記少なくとも1つのスライド部材(30、40)と接続されている第1の端部を有し、前記第1の端部の反対側の第2の端部をさらに有する少なくとも1つのピン部材(32、42)をさらに備え、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)の前記第2の端部は前記少なくとも1つのカム溝(31、41)と係合しており、それによって、前記操作部(12)が前記把持部(11)に対して回転するとき、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)は前記少なくとも1つのカム溝(31、41)によって規定されるカムプロファイルに従い、
前記分離手段(20)は、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)と動作可能に接続されている少なくとも1つのピン部材操作要素(21)を備え、前記少なくとも1つのピン部材操作要素(21)は、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)と係合する第1の位置から、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)から解放される第2の位置へと駆動可能である、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記少なくとも1つのピン部材(32、42)の前記第1の端部は、前記少なくとも1つのスライド部材(30、40)内に設けられている凹部(22)内に少なくとも部分的に受け入れられ、それによって、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)は、前記凹部(22)によって規定される長手方向において前記スライド部材(30、40)に対して相対的に移動可能である、請求項15に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記本体部材(52)は、前記少なくとも部分的に中空の円筒部材(51)の内径よりも小さい直径を有する円筒部を備え、前記円筒部は、前記少なくとも部分的に中空の円筒部材(51)の内部に少なくとも部分的に受け入れられており、それによって、前記少なくとも部分的に中空の円筒部材(51)は、前記本体部材(52)に対して相対的に回転可能であり、
前記少なくとも1つのピン部材(32、42)は、前記操作バー(24)およびそれと接続されている前記レバーアーム(23)によって、前記少なくとも1つのピン部材(32、42)の前記第2の端部が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)と係合する結合状態から、前記ピン部材(32、42)の前記第2の端部が前記少なくとも1つのカム溝(31、41)を解放し、前記レバーアーム(23)が、前記カム機構(50)の前記本体部材(52)内に設けられている凹部(49)と係合し、それによって、前記操作ハンドル(10−1、10−2)の前記操作部(12)が前記把持部(11)に対して回転するとき、前記本体部材(52)に対する前記少なくとも1つのスライド部材(30、40)の回転を阻害する、非結合状態へと移行可能である、
請求項15〜18のいずれか一項に記載の操作ハンドル(10−1、10−2)。
前記カテーテル送達システムは、前記少なくとも1つのスリーブ形状部材(81、82)と接続されている遠位端を有し、前記少なくとも1つのスライド部材(30、40)と接続されている近位端をさらに有する少なくとも1つのカテーテルチューブ(91、92)をさらに備える、請求項20に記載のカテーテル送達システム。
前記操作ハンドル(10−1、10−2)の前記カム機構(50)は、前記操作ハンドル(10−1、10−2)の前記操作部(12)と接続されている円筒部材(51)を備え、前記円筒部材(51)は第1のカム溝(31、41)および第2のカム溝(31、41)を備え、
前記カム機構(50)は前記第1のスライド部材(30、40)と接続されている第1の端部を有し、前記第1の端部の反対側の第2の端部をさらに有する第1のピン部材(32、42)をさらに備え、前記第1のピン部材(32、42)の前記第2の端部は前記第1のカム溝(31、41)に係合し、それによって、前記操作部(12)が前記把持部(11)に対して回転するとき、前記第1のピン部材(32、42)は前記第1のカム溝(31、41)によって規定されるカムプロファイルに従い、
前記カム機構(50)は前記第2のスライド部材(30、40)と接続されている第1の端部を有し、前記第1の端部の反対側の第2の端部をさらに有する第2のピン部材(32、42)をさらに備え、前記第2のピン部材(32、42)の前記第2の端部は前記第2のカム溝(31、41)に係合し、それによって、前記操作部(12)が前記把持部(11)に対して回転するとき、前記第2のピン部材(32、42)は前記第2のカム溝(31、41)によって規定されるカムプロファイルに従い、
前記第1のカム溝および第2のカム溝(31、41)によって規定される前記カムプロファイルはそれぞれ、前記把持部(11)に対する前記操作部(12)の回転運動が、前記第1のスライド部材(30、40)の直線移動に、および、それから独立して、前記第2のスライド部材(30、40)の直線移動に変換され、それによって、前記カテーテルチップ(80−1、80−2)の前記第1のスリーブ形状部材および第2のスリーブ形状部材(81、82)の互いに対する所定の一連の軸方向移動が可能になる、
請求項22に記載のカテーテル送達システム。
前記カテーテルチップ(80−1、80−2)の前記第1のスリーブ形状部材(81)および前記第2のスリーブ形状部材(82)は、心臓代用弁(150)を受け入れるように適合されている座部を構成し、
前記カテーテルチップ(80−1、80−2)は、前記座部内に受け入れられている心臓代用弁(150)を解放可能に固定することが可能なステントホルダ(85)をさらに備える、請求項22又は23に記載のカテーテル送達システム。
前記第1のスリーブ形状部材(81)および前記第2のスリーブ形状部材(82)は、互いに対して相対的に、かつ前記ステントホルダ(85)に対して相対的に、軸方向に移動可能である、請求項24に記載のカテーテル送達システム。
前記ステントホルダ(85)は、前記カテーテル送達システムによって前記患者の身体内に導入されるべき心臓代用弁(150)に設けられているカテーテル保持手段(123)と解放可能に接続するためのステント保持手段(86)を有するクローンを備える、請求項24又は25に記載のカテーテル送達システム。
前記ステントホルダ(85)は、前記操作ハンドル(10−1、10−2)の固定具(45)と動作可能に接続されており、前記操作ハンドル(10−1、10−2)の前記固定具(45)は、前記カム機構(50)の前記本体部材(52)に固定されている、請求項24〜26のいずれか一項に記載のカテーテル送達システム。
前記拡張可能心臓弁ステント(100)は、前記拡張可能心臓弁ステント(100)を前記カテーテルチップ(80−1、80−2)と解放可能に接続するために、前記カテーテルチップ(80−1、80−2)のステント保持手段(123)と係合するように構成されているカテーテル保持手段(85、86)を備える、請求項28又は29に記載の医療デバイス。
【発明の概要】
【0021】
本開示の目的は、使用するのが比較的容易であり、拡張可能心臓弁ステントまたは心臓代用弁の危険性を低下させ、その移植を最適化することを可能にするカテーテル送達システムを提供することである。一態様は、拡張可能心臓弁ステントまたは心臓代用弁の移植中にカテーテル送達システムの取り扱いを単純にすることにある。したがって、カテーテル送達システムのカテーテルチップを操作するための最適化された操作ハンドル、および、拡張可能心臓代用弁を患者の身体内に導入し、心臓代用弁を所望の移植サイドに位置決めするためのカテーテル送達システムが必要とされており、操作ハンドルおよびカテーテル送達システムは、導入の前に定義されている一連の事象において心臓代用弁を最適な移植箇所に移植することを可能にするように設計されている。
【0022】
さらなる目的は、カテーテル送達システムおよびカテーテル送達システムのカテーテルチップ内に取り付けられている拡張可能心臓弁ステントを備える、心臓弁狭窄および/または心臓弁不全の治療のための医療用デバイスを提案することであり、この医療用デバイスは、患者に対する心臓代用弁の移植に関する危険性を低減するように設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本開示の一態様によれば、本発明は、カテーテル送達システムのカテーテルチップを操作するための操作ハンドルに関し、この操作ハンドルは、カム機構と、プリセットのステップシーケンスを、先行するステップが完了するまで各後続のステップが抑制されるように規定する手段とを備える。理想的には、操作ハンドルは、カテーテル送達システムのカテーテルチップ内に収容されている心臓弁ステントまたは心臓代用弁を段階的に解放するためのプリセットのステップシーケンスを規定または執行する手段を含む。
【0024】
「プリセット」という用語は、カテーテル送達システム、特にカテーテル送達システムの操作ハンドルの操作より前に固定して設定されているステップを指す。動作のステップは、次のステップが達成され得る前にあるステップが完了されなければならないというように事前調整されている。所定の一連のステップが、位置決めが不正確になる危険性を低減し、誰がその手技を実行するとしても、その者に必要とされる技量および専門知識を少なくする。したがって、事前に決定することができる一連の事象は、カテーテル送達システムの操作ハンドルに依存し、たとえば、操作ハンドルによって制御することができる事象または動作のステップに関する。
【0025】
このように、カテーテル送達システムのカテーテルチップは、操作ハンドルを用いて特に信頼可能に操作することができ、カテーテル送達システムのカテーテルチップ内に収容されている心臓弁ステントまたは心臓代用弁は、特に単純に、しかしそれにもかかわらず信頼可能に、患者の身体内に導入され、心臓の移植部位に最適に位置決めされ得る。
【0026】
そのような操作ハンドルは、医療デバイスの送達、正確な位置決めおよび/または制御が必要とされる任意のカテーテル送達システムに適用されてもよいことが理解されるであろうが、本発明の目的のために、操作ハンドルは、心臓弁ステントまたは心臓代用弁を患者の身体内に導入し、当該ステントまたはプロテーゼを所望の移植部位に位置決めするためのカテーテル送達システムとともに使用される。
【0027】
特に、カテーテル送達システムは、カテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの遠位端領域にあるカテーテルチップとを備える。カテーテルシャフトの近位端領域は、操作ハンドルに取り付けられている。本明細書に開示されているいくつかの態様によれば、カテーテルチップは、患者の身体内に導入されるべき心臓弁ステントまたは心臓代用弁を収容する。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、カテーテル送達システムのカテーテルチップを操作するための操作ハンドルに関し、この操作ハンドルは、ユーザによって保持されるように設計されている把持部を備え、把持部と軸方向に整列されている操作部をさらに備える。操作ハンドルの操作部は、操作ハンドルによって規定される長手方向軸を中心として把持部に対して回転可能である。操作ハンドルは、少なくとも1つのスライド部材をさらに備え、少なくとも1つのスライド部材は、操作部が把持部に対して回転すると、少なくとも1つのスライド部材が長手方向軸の方向において軸方向に動くように、カム機構によって操作ハンドルの操作部と動作可能に連結されている。
【0029】
好ましくは、カム機構は、操作ハンドル内に一体化されており、把持部に対する操作部の回転運動を、把持部に対する少なくとも1つのスライド部材の直線運動に変換する。
【0030】
より好ましくは、操作ハンドルのカム機構には、把持部に対する操作部の回転運動を、把持部に対する少なくとも1つのスライド部材の直線(軸方向)運動のプリセットのステップシーケンスに変換する手段が設けられる。
【0031】
本明細書に開示されている好ましい実施形態において、少なくとも1つのスライド部材は、カテーテル送達システムのカテーテルチップの少なくとも1つの操作可能部材と動作可能に接続されており、それによって、操作部が把持部に対して回転すると、操作ハンドルの少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されているカテーテルチップの少なくとも1つの操作可能部材は、事前に決定されている軸方向運動(ストローク)のステップシーケンスを実行する。
【0032】
より好ましくは、カテーテルチップの少なくとも1つの操作可能部材は、操作ハンドルのカム機構を特性化する変位線図に従って操作される。カム機構の変位線図は、操作ハンドルの操作部が、操作ハンドルによって規定される長手方向軸を中心として把持部に対して相対的に回転するときに少なくとも1つのスライド部材(および、少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されているカテーテルチップの少なくとも1つの操作可能部材)が行うことになる位置の変化を反映する。この線図は、角度位置を、その位置で受ける半径方向変位に関係付けることができる。
【0033】
カム機構の変位線図を事前に決定することによって、カテーテル送達システムのカテーテルチップは、操作ハンドルを用いて特に信頼可能に操作することができ、カテーテル送達システムのカテーテルチップ内に収容されている心臓弁ステントまたは心臓代用弁は、特に単純に、しかしそれにもかかわらず信頼可能に、患者の身体内に導入され、心臓の移植部位に最適に位置決めされ得る。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態の一態様は、拡張可能心臓代用弁を患者の身体内に導入するための医療用カテーテル送達システムに関する。医療用カテーテル送達システムは、好ましくは、その遠位端にあるカテーテルチップと、その近位端にある操作ハンドルと、カテーテルチップおよび操作ハンドルを相互接続するカテーテルシャフトとを備えるカテーテルシステムとして形成される。医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップは、カテーテル送達システムの遠位端部にある少なくとも1つのスリーブ形状部材を備え、少なくとも1つのスリーブ形状部材は、密に圧縮された心臓代用弁を少なくとも部分的に受け入れることが可能であり、それによって、カテーテルチップの一部を形成する。
【0035】
少なくとも1つのスリーブ形状部材を操作するために、医療用カテーテル送達システムの操作ハンドルには、医療用カテーテル送達システムの近位端部に少なくとも1つのスライド部材がさらに設けられ、少なくとも1つのスライド部材は、少なくとも1つのスリーブ形状部材と動作可能に接続されている。医療用カテーテル送達システムの近位端部に配置されている医療用カテーテル送達システムの操作ハンドルは、ユーザによって保持されるように設計されている把持部と、好ましくは把持部と軸方向に整列されている操作部とを備える。操作部は、操作ハンドルによって規定される長手方向軸を中心として操作ハンドルの把持部に対して回転可能である。少なくとも1つのスリーブ形状部材と動作可能に接続されている少なくとも1つのスライド部材は、操作ハンドルの操作部が操作ハンドルの把持部に対して回転すると、少なくとも1つのスライド部材が、少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されている少なくとも1つのスリーブ形状部材とともに、長手方向軸の方向において軸方向に動くように、カム機構によって操作ハンドルの操作部と動作可能に連結されている。
【0036】
好ましくは、カム機構は、医療用カテーテル送達システムの操作ハンドルと一体化されている。より好ましくは、カム機構は、把持部に対する操作ハンドルの操作部の回転運動を、少なくともスライド部材および少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されている少なくとも1つのスリーブ形状部材の直線運動に変換する。
【0037】
本開示のいくつかの態様によれば、操作ハンドルの操作部は、ユーザによって一方の手を用いて把持されるように設計されている回転ホイールであり、一方で、ユーザの他方の手は、操作ハンドルの把持部を保持する。これに関して、医療用カテーテル送達システムのカム機構は、好ましくは、操作ハンドルの操作部と接続されている円筒部材を備え、円筒部材は、少なくとも1つのカム溝を備える。
【0038】
また、カム機構は、少なくとも1つのスライド部材と接続されている第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを有する少なくとも1つのピン部材をさらに備えてもよい。少なくとも1つのピン部材の第2の端部は、好ましくは、操作ハンドルの操作部が把持部に対して回転するとき、少なくとも1つのピン部材が、カム機構の円筒部材の少なくとも1つのカム溝によって規定されるカムプロファイルに従うように、カム機構の円筒部材の少なくとも1つのカム溝と係合する。
【0039】
カム機構の機能信頼性を確保するために、カム機構には、操作ハンドルに対する少なくとも1つのスライド部材の回転を防止するための手段が設けられる。本開示のいくつかの実施形態において、操作ハンドルに対する少なくとも1つのスライド部材の回転を防止するための手段は、少なくとも1つのスライド部材に割り当てられる少なくとも1つの細長い孔を含む。少なくとも1つの細長い孔は、操作ハンドルによって規定される長手方向軸に平行に延伸している。少なくとも1つの細長い孔を通じて、少なくとも1つのスライド部材と接続されている少なくとも1つのピン部材は延伸している。
【0040】
本開示の実施形態において、操作ハンドルの操作部は、カム機構の円筒部材の直径よりも大きい直径を有する回転ホイールである。
【0041】
実施形態によれば、操作ハンドルの把持部は、ある種の被覆として形成される。カム機構の円筒部材は、少なくとも部分的に把持部と同心円上かつ同軸上に配置され、カム機構の円筒部材は把持部に対して回転可能である。
【0042】
本開示の実施形態において、カム機構の円筒部材は中空の円筒部材である。カム機構は、好ましくは、中空の円筒部材と同心円上かつ同軸上に配置されている本体部材をさらに備える。本体部材は、中空の円筒部材の内径よりも小さい直径を有する円筒部を備えてもよく、本体部材の円筒部は、中空の円筒部材が本体部材に対して回転可能であるように、少なくとも部分的に中空の円筒部材の内部に受け入れられる。
【0043】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態において、カム機構の本体部材には、本体部材に対する操作ハンドルの操作部の軸方向移動を防止するための少なくとも1つのフランジが設けられてもよい。
【0044】
医療用カテーテル送達システムの操作ハンドルの実施形態によれば、カム機構の本体部材は少なくとも部分的に中空であり、少なくとも1つのスライド部材が、少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されている少なくとも1つのスリーブ形状部材とともに、本体部材に対して軸方向に移動可能であるように、少なくとも1つのスライド部材は本体部材内に受け入れられる。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態において、操作ハンドルは、操作ハンドルの操作部の回転運動を、少なくとも1つのスリーブ形状部材および少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されている少なくとも1つのスリーブ形状部材の直線運動に変換するためのカム機構を備え、カム機構は操作ハンドルの操作部と接続されている円筒部材を備え、円筒部材は少なくとも1つのカム溝を備える。カム機構は、少なくとも1つのスライド部材と接続されている第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを有する少なくとも1つのピン部材をさらに備えてもよい。少なくとも1つのピン部材の第2の端部は、操作ハンドルの操作部が把持部に対して回転するとき、少なくとも1つのピン部材が、カム機構の円筒部材の少なくとも1つのカム溝によって規定されるカムプロファイルに従うように、少なくとも1つのカム溝と係合する。
【0046】
好ましくは、カム機構の円筒部材は中空の円筒部材であり、カム機構は、中空の円筒部材と同心円上かつ同軸上に配置されている本体部材をさらに備える。いくつかの好ましい実施形態において、本体部材は少なくとも部分的に中空であり、少なくとも1つのスライド部材が、少なくとも1つのスライド部材と動作可能に接続されている少なくとも1つのスリーブ形状部材とともに、カム機構の本体部材に対して軸方向に移動可能であるように、少なくとも1つのスライド部材は本体部材内に受け入れられる。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態において、本体部材には、好ましくは、操作ハンドルの長手方向軸に平行に伸びる少なくとも1つの細長い孔が設けられている。少なくとも1つのピン部材は、少なくとも1つの細長い孔を通じて延伸している。少なくとも1つの細長い孔は、少なくとも1つのピン部材が本体部材に対してもはや回転することができないように、少なくとも1つのピン部材の自由度を制限する。
【0048】
いくつかの実施形態において、本体部材は、操作ハンドルの把持部に固定される。この理由から、本体部材は、把持部に固定されている部分を備えてもよい。たとえば、本体部材の、把持部に固定されている部分は、カム機構の中空の円筒部材の外径に等しいか、または実質的に等しい直径を有する円筒部であってもよい。好ましくは、操作ハンドルの把持部は、本体部材の円筒部と同心円上かつ同軸上であるように、少なくとも部分的に本体部材の円筒部の周囲に配置される。
【0049】
本開示の実施形態において、操作ハンドルには、操作部が把持部に対して回転するときに操作ハンドルの操作部の利用可能な最大旋回運動を細分化するためのロック機構が設けられる。操作部の利用可能な最大旋回運動は、カム機構の円筒部材の少なくとも1つのカム溝および/またはカム機構の中空本体部材内に設けられている細長い孔によって規定される。好ましくは、ロック機構は、カム機構の円筒部材内に設けられている少なくとも1つのロック凹部と、カム機構の本体部材と動作可能に接続されている少なくとも1つの係合片とを備え、少なくとも1つの係合片は、少なくとも1つのロック凹部と解放可能に係合するように適合されているおり、それによって、本体部材に対するカム機構の回転または連続的な回転を防止する。
【0050】
いくつかの実施形態において、ロック機構は、係合片が少なくとも1つのロック凹部と係合するときに係合片を解放することができる。たとえば、係合片は、係合片と動作可能に接続されるバネ荷重押しボタンを含んでバネ荷重されてもよく、押しボタンは、ユーザによって係合片を解放するために押されるように設計される
【0051】
より好ましくは、押しボタンがユーザによって押下されるときに係合片を押し下げるためのレバーが押しボタンと接続されてもよい。これに関して、押しボタンを押す方向に垂直な面内で枢動可能であるようにピンによってレバーに結合されている第1の端領域を駆動片が有し、押しボタンがユーザによって押下されるときに係合片を押し下げるための第2の端領域を駆動片がさらに有することが好ましい。
【0052】
ロック機構のいくつかの実施形態において、駆動片は、押しボタンがユーザによって押下されるときで、かつ同時にカム機構の円筒部材が本体部材に対して相対的に回転されるときに、駆動片がレバーに対して相対的に外方に振れるように、レバーに結合されている。このとき、駆動片の第2の端領域は、駆動片がレバーアームに対して相対的に外方に振れるときに、係合片と接触しなくなる。いくつかの実施形態は、押しボタンが解放されるときに駆動片が戻るためのセンタリングバイアスをさらに備えてもよい。
【0053】
本明細書に開示されているような種類のロック機構は、カテーテルの段階的な操作を保証する。より詳細には、ロック機構は、押しボタンが連続的に押されるときに、操作ハンドルの操作部がユーザによって、利用可能な最大旋回角度範囲を通じて把持部に対して相対的に回転され得ることを防止する。
【0054】
ロック機構の実施形態によれば、ロック機構は、操作ハンドルの操作部の利用可能な最大旋回運動を、操作部の複数の連続的な間欠旋回運動に細分化するように、カム機構の円筒部材内に設けられている複数のロック凹部を備える。これに関して、ロック機構が、カム機構の円筒部材内に設けられている第1のロック凹部を備え、それによって、カム機構の少なくとも1つのピン部材が、ロック機構の係合片が第1のロック凹部と係合するときに円筒部材の少なくとも1つのカム溝の始部にある場合が考えられる。
【0055】
また、ロック機構が、円筒部材内に設けられている少なくとも1つの第2のロック凹部を備え、それによって、カム機構の少なくとも1つのピン部材が、ロック機構の係合片が少なくとも1つの第2のロック凹部と係合するときに円筒部材の少なくとも1つのカム溝の中央部にある場合が考えられる。また、ロック機構が、円筒部材内に設けられている第3のロック凹部を備え、それによって、カム機構の少なくとも1つのピン部材が、ロック機構の係合片が第3のロック凹部と係合するときに少なくとも1つのカム溝の終端にある場合が考えられる。
【0056】
本開示のさらなる一態様によれば、医療用カテーテル送達システムの操作ハンドルは、スライド部材と操作部とを選択的に分離するための、少なくとも1つのスライド部材と操作ハンドルの操作部との間の動作可能な連結部をさらに含む。
【0057】
少なくとも1つのピン部材操作要素が少なくとも1つのピン部材と動作可能に接続されてもよく、少なくとも1つのピン部材操作要素は、少なくとも1つのピン部材がカム機構の円筒部材の少なくとも1つのカム溝を係合する第1の位置から、少なくとも1つのピン部材が少なくとも1つのカム溝から解放される第2の位置へと駆動可能である。
【0058】
操作ハンドルの一実施形態において、カム機構の少なくとも1つのピン部材の第1の端部は、少なくとも1つのスライド部材内に設けられている凹部内に少なくとも部分的に受け入れられ、それによって、少なくとも1つのピン部材は、この凹部をスライドすることによって規定される長手方向においてスライド部材に対して移動可能である。
【0059】
操作ハンドルの一実施形態によれば、少なくとも1つのピン部材操作要素は、カム機構の少なくとも1つのピン部材、特に、少なくとも1つのピン部材の第1の端部と動作可能に接続されている第1の端領域を有するレバーアームを備える。少なくとも1つのピン部材操作要素のレバーアームは、第1の端領域の反対側の第2の端領域をさらに有し、レバーアームの第2の端領域は、少なくとも1つのスライド部材がその上に接続されているレバーアームを動かすための操作バーと動作可能に接続されている。
【0060】
少なくとも1つのピン部材は、操作バーおよびそれと接続されているレバーアームによって、少なくとも1つのピン部材の第2の端部が、カム機構の円筒部材の少なくとも1つのカム溝を係合する結合状態から、ピン部材の第2の端部がカム溝を解放し、ピン部材操作要素が、カム機構の本体部材内に設けられているさらなる凹部と少なくとも部分的に係合し、それによって、把持部に対する操作ハンドルの操作部が回転するとき、本体部材に対するスライド部材の軸方向運動が防止される、非結合状態へと移行可能である。
【0061】
医療用カテーテル送達システムのいくつかの実施形態において、医療用カテーテル送達システムは、少なくとも1つのスリーブ形状部材と接続されている遠位端を有し、少なくとも1つのスライド部材と接続されている近位端をさらに有する少なくとも1つのカテーテルチューブをさらに備える。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、医療用カテーテル送達システムは、第1のスリーブ形状部材と、第1のスリーブ形状部材と動作可能に接続されている第1のスライド部材とを備え、第2のスリーブ形状部材と、第2のスリーブ形状部材と動作可能に接続されている第2のスライド部材とをさらに備える。第1のスライド部材および第2のスライド部材は両方とも、カム機構によって操作ハンドルの操作部と動作可能に連結され、それによって、操作ハンドルの操作部が把持部に対して回転すると、第1のスライド部材および第2のスライド部材は、それらに動作可能に接続されている第1のスリーブ形状部材および第2のスリーブ形状部材とともに、長手方向軸の方向において軸方向に互いから独立して動く。
【0063】
好ましくは、カム機構は、操作部と接続されている円筒部材を備え、円筒部材は、第1のカム溝と第2のカム溝とを備える。
【0064】
カム機構は、好ましくは、第1のスライド部材と接続されている第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第1のピン部材をさらに備え、第1のピン部材の第2の端部は第1のカム溝と係合し、それによって、操作ハンドルの操作部が把持部に対して回転するとき、第1のピン部材は第1のカム溝によって規定されるカムプロファイルに従う。
【0065】
カム機構は、好ましくは、第2のスライド部材と接続されている第1の端部を有し、第1の端部の反対側の第2の端部をさらに有する第2のピン部材をさらに備え、第2のピン部材の第2の端部は第2のカム溝と係合し、それによって、操作部が把持部に対して回転するとき、第2のピン部材は第2のカム溝によって規定されるカムプロファイルに従う。
【0066】
好ましくは、第1のスリーブ形状部材および第2のスリーブ形状部材は、少なくとも部分的に密に圧縮されている心臓代用弁を受け入れるように適合されている座部を提供する。より好ましくは、医療用カテーテル送達システムは、カテーテル送達システムの遠位端部にあるステント保持システムをさらに備えてもよく、ステント保持システムは、座部に受け入れられている心臓代用弁を解放可能に固定することが可能である。第1のスリーブ形状部材および第2のスリーブ形状部材によって構成される座部によって受け入れられている心臓代用弁を解放するために、第1のスリーブ形状部材および第2のスリーブ形状部材は、互いに対して相対的に、かつ心臓代用弁が解放可能に固定されているステント保持機構に対して相対的に、軸方向に移動可能である。
【0067】
特に、医療用カテーテル送達システムが開示され、それによって、心臓代用弁が取り付けられている拡張可能心臓弁ステントが特に単純な方法で、たとえば、治療されている患者の大動脈を介して(経動脈的または経大腿的に)移植部位に進められ得る。好ましくは、医療用カテーテル送達システムによる経動脈的または経大腿的アクセスの間、大動脈内の利用可能な自由断面全体が完全に満たされるのではない。これは、心臓代用弁が収容され得る、医療用カテーテル送達システムの遠位端領域に設けられているカテーテルチップが、その外径に対して十分に小さくされ得るからである。
【0068】
人工心臓弁が取り付けられている拡張可能心臓弁ステントは、医療用カテーテル送達システムの遠位端領域に設けられているカテーテル送達システムのカテーテルチップ内で折り畳まれた状態で、移植されている間、一時的に収容され得る。医療用カテーテル送達システムは、カテーテルシステムの遠位端領域に設けられているカテーテルチップが、患者の鼠径部における挿入によって、大動脈を通じて患者の心臓へと誘導されることを可能にするのに十分な長さであってもよい。
【0069】
経動脈的または経大腿的アクセスのために設計されている医療用カテーテル送達システムは、それゆえ、人工心臓弁が取り付けられている心臓弁ステントを患者の身体内に、経動脈的または経大腿的に挿入するのに適しており、たとえば、医療用カテーテル送達システムは、ア フェモリス コミュニイ(A.femoris communis)(鼠径動脈)の穿刺によって医療用カテーテル送達システムの遠位端に位置するカテーテルチップを用いて挿入される。
【0070】
特に、医療用カテーテル送達システムが経動脈的または経大腿的アクセスのために設計されている場合、医療用カテーテル送達システムは、少なくとも医療用カテーテル送達システムの遠位端領域において最大4cm、好ましくは最大3cmの曲げ半径を達成することができるように、ねじれ耐性および柔軟性の両方があるように設計されてもよい。
【0071】
患者における心臓弁狭窄および/または心臓弁不全を治療するために、医療デバイスがさらに開示される。
【0072】
医療デバイスは、医療用カテーテル送達システムと、人工心臓弁が同時に固定されている拡張可能心臓弁ステントとを備える。拡張可能心臓弁ステントは、人工心臓弁とともに心臓代用弁を形成し、医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ内に収容される。医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ内に収容されている間、ステントは、第1の事前に規定可能な構成を採用する。しかしながら、カテーテルチップの外側または移植状態では、ステントは第2の事前に規定可能な構成において存在する。ステントの第1の構成は折り畳まれた状態に対応し、一方、第2の構成においてステントはその拡張された状態で存在する。
【0073】
心臓代用弁は、たとえば、欧州特許出願第07110318号明細書および欧州特許出願第08151963号明細書に記載されているように、医療用カテーテル送達システムとともに使用され、これらの特許出願の両方の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。医療デバイスの一実施形態において、以下のもの、すなわち、
心臓代用弁を取り付けることができる第1の保持領域と、
たとえば、保持アイ(retaining eyes)の形態にあるか、または保持ヘッドの形態にあるカテーテル保持機構を有する、反対側の第2の保持領域であって、それによって、ステントの少なくとも1つの保持機構が、カテーテル送達システムの一部を形成するカテーテルチップのステントホルダ(ステント保持機構)と解放可能な係合状態に置かれ得る、第2の保持領域と、
心臓代用弁を固定することができる少なくとも1つの保持アーチと、
ステントの移植状態において元々の心臓弁のポケット内に係合し、よって、患者の大動脈におけるステントの自動的な位置決めを可能にするように設計されている少なくとも1つ、好ましくは3つの位置決めアーチと
を有する、心臓弁ステントを備える心臓代用弁がそれに従って使用される。
【0074】
以下、本開示の好ましい実施形態のより明確な詳細を提供するにあたって図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0076】
ヒトの心臓の右半部および左半部の両方は、心室と心房とから構成される。これらの空洞は、心房中隔(septum interatriale)と心室中隔(septum interventriculare)とに分割される、心臓の中隔によって分離されている。
【0077】
機械弁のように機能する、心房と心室との間、および、心室に接続されている動脈内に位置している心臓弁に起因して、血液は、心臓の部屋を通じて1方向にしか流れることができない。上大静脈および下大静脈(vena cava superiorおよびvena cava inferior)が右心房に流入する。それらは、酸素を使い果たした血液(静脈血)を体循環から心臓へと供給する。機械弁のように、心室収縮(心収縮)を受けて血液が心房に逆流するのを防止する三尖弁が、右心房と右心室との間に位置している。これは、靭帯によって心室筋組織にフラップのように固定されている(それゆえ、「フラップ弁」とも称される)3つの区分を含む。2つの肺動脈が、共通の主幹部(肺動脈幹(truncus pulmonalis))を介して心臓の右心室を発している。心室と肺動脈幹との間にも弁、いわゆる肺動脈弁がある。このタイプの弁は、その形状に起因して半月弁とも称される。肺動脈は、酸素を使い果たした血液を、肺循環に供給する。
【0078】
その後、酸素を豊富に含む血液(動脈血)が、通常、肺循環から4つの肺静脈を通じて左心房へと流れる。そこから、血液はさらなるフラップ弁、すなわち、僧帽弁を通じて左心室に達する。流出は、肺動脈のような、半月弁(大動脈弁)を有する大動脈によって行われる。
【0079】
心臓の拍動の1サイクルの間、最初に心房が充填される一方、同時に心室が血液を動脈へと流出させる。心室筋組織が弛緩しているとき、心室内の圧力の降下および心房からの血液の流入に起因してフラップ弁が開く(心房性収縮(auricular systole))。これは、心房の収縮によって支持される。その後、心室が収縮する、すなわち、心室筋組織が収縮し、圧力が上昇し、フラップ弁が閉じて初めて、血液がこの時点で開く半月弁を通じて動脈内へと流れることができる。弛緩期(心臓拡張期)中の動脈からの血液の逆流は、流れの方向が弁のみによって規定されるように半月弁を閉じることによって防止される。
【0080】
4つの心臓弁は、心臓内で機械弁のように動作し、誤った方向への血液の逆流を防止する。心臓の各半部はフラップ弁(房室弁)と半月弁とを有する。房室弁は心房と心室との間に位置し、二尖弁/僧帽弁および三尖弁と称される。半月弁は心室と血管流出との間に位置し、それぞれ肺動脈弁および大動脈弁と称される。
【0081】
弁の欠陥、すなわち心臓弁の機能障害は、4つの心臓弁のいずれにも影響を与える可能性があり、ただし、心臓の左側にある弁(大動脈弁および僧帽弁)は、心臓の右側にある弁(肺動脈弁および三尖弁)よりも顕著に影響を受けることが多い。機能障害は、狭窄(stenosis)、不全症またはこれら2つの組み合わせ(組み合わせ欠陥)を含み得る。
【0082】
医学において、「大動脈弁閉鎖不全症(aortic valve insufficiency)」または略して「大動脈弁不全(aortic insufficiency)」という用語は、心臓の大動脈弁の閉鎖の欠陥およびその結果としての大動脈から左心室への血液の拡張期逆流を指す。大動脈弁不全の重症度および大動脈の枯渇に対する抵抗の程度に応じて、逆流の量は左心室の排出量(通常の心拍出量は40〜70ml)の最大3分の2になり得る。その結果、血圧振幅が特徴的に高くなる。この逆流血液は左心室の拡張期充満を増大させ、心臓のこの部分の血液量が過剰となり、結果として遠心性肥大となる。
【0083】
大動脈弁狭窄は、大動脈弁の開きが不完全であることによって引き起こされる心臓弁膜疾患である。大動脈弁が狭窄になると、左心室と大動脈との間に圧較差が生じる。弁がより狭窄すると、左心室と大動脈の間の圧較差がさらに高くなる。たとえば、軽度の大動脈弁狭窄では、圧較差は20mmHgになり得る。これは、収縮期のピークにおいて、左心室が140mmHgの圧力を生成しえても、大動脈に伝わる圧力が120mmHgにすぎないことを意味する。
【0084】
大動脈弁狭窄を起こした個体では、狭窄した大動脈弁によって引き起こされる負荷の増大を克服して左心室から血液を排出するために、左心室は生成する圧力を増大させなければならない。大動脈弁狭窄が深刻になるほど、左心室収縮期圧と動脈収縮期圧との間の圧較差が高くなる。左心室によって生成される圧力の増大に起因して、左心室の心筋(筋肉)は肥大化する(筋肉量が増大する)。
【0085】
大動脈弁狭窄の状況における狭心症は、大動脈弁狭窄によって生じた圧較差を克服するための増大した圧力の持続生成によって生じる左心室肥大に続発するものである。左心室の心筋(すなわち、心臓の筋肉)が厚くなる一方で、筋肉に血液を供給する動脈が有意に長くなるかまたは大きくなることはないため、心筋は虚血性になり得る(すなわち、適切な血液供給を受けられなくなる)。虚血は、最初は運動中、すなわち、増大した負荷を補償するために心筋が血液供給の増大を必要とするときに明らかになる場合がある。個人は、労作性狭心症を訴える場合がある。この段階では、画像を用いた負荷試験が虚血を示唆する場合がある。
【0086】
僧帽弁閉鎖不全症(「僧帽弁不全」とも称される)は、人間医学および少なくとも一部の動物種においてもよく見られる心臓弁欠陥である。これは、閉鎖の欠陥、すなわち、心臓の僧帽弁の「漏れ」を引き起こし、この「漏れ」は駆出期(心臓収縮期)中の左心室から左心房への血液の逆流をもたらす。
【0087】
僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間で機械弁のように機能する。僧帽弁は心室の充満期(心臓拡張期)中に開き、これにより心房からの血液の流入を可能にする。駆出期(心臓収縮期)の始まりにおいて、心室内の急激な圧力増加によって僧帽弁が閉鎖され、心房が「封止」される。その際、約8mmHgのみの圧力が心房内に広がり、一方、同時に心室内の約120mmHgの収縮期圧によって血液はその通常経路に沿って大動脈(aorta)内に送られる。
【0088】
しかしながら、深刻な僧帽弁不全の場合、逆流時の開口は40mm
2よりも大きくなり、逆流量は60mlよりも大きくなり、これは、深刻かつ時として生死にかかわる変化となる可能性がある。
【0089】
急性期には、左心室および左心房が通常のサイズの場合、心房内で顕著な圧力増加が生じ、これにより肺静脈内でも顕著な圧力増加が生じる。これは最大100mmHgになる可能性があり、肺血管が正常の状態であると仮定すると、急性の肺水腫をもたらす。このとき、圧倒的な血液の逆流の結果として動脈内への流出が不十分になり、結果として、全ての器官への血流量が低減する可能性がある。
【0090】
深刻な狭窄した心臓弁または心臓弁不全を治療するためには、狭窄し病変したまたは病変した心臓弁の弁機能に補綴弁(以降、「心臓代用弁」とも称する)を施す必要がある。このことの本質は、心臓内の移植部位、すなわち置換すべき(病変した)心臓弁の面内に、補綴弁を確実に位置決めおよび固定して、時としてかなり大きくなる力が補綴弁に作用した場合にも、補綴弁が変位したりずれたりしないようにすることである。心臓収縮期中の効果的な封止も重要である。
【0091】
過去数年にわたって、深刻な狭窄した心臓弁または心臓弁不全の治療のための低侵襲介入手技が、「従来の」切開外科的手技に対する確立された代替的治療法となってきている。しかしながら、特定の手技は、相対的に大きいデバイスを組織構造内の目標箇所に配置することを伴う。大動脈弁置換術のような手技は、従来、侵襲性が高い切開外科的手技によって対処されてきた。より最近では、そのような手技は、自然管腔アクセスおよびカテーテル送達システムを使用して試行されている。
【0092】
図1におけるヒトの心臓の生体構造を参照すると、そのような自然管腔アクセスおよび送達システムは、一般的に、たとえば、順行性アプローチから心臓202の内側の大動脈弁位置212に達するように構成される、すなわち、通常の血流方向において実行される。しかしながら、順行性アプローチは概して、僧帽弁210によって、拍動している心臓202の右心室222、左心房、および左心室220を通る誘導器具の使用を必要とする。
【0093】
逆行性アプローチ、すなわち、通常の血流方向に逆行する、または反対方向において実行されるアクセスは、心臓202の内側の大動脈位置212に達するための代替形態である。逆行性アプローチは、概して、下行大動脈204から上行大動脈206および隣接する大動脈弁212までの、大動脈弓に沿った誘導器具の使用を必要とする。
【0094】
逆行性アプローチの一例として、患者の心臓202に対する経動脈的アクセスが、
図2aに模式的に示されている。
図2aによる例示において、心臓弁ステント100が、大腿動脈を介して大動脈弁212へと、医療用カテーテル送達システム(模式的にしか示されていない)を用いて進められる。
【0095】
場合によっては、逆行性アプローチは、大動脈両側大腿動脈移植を行った患者のような、大腿血管もしくは腸骨血管が小さいもしくは蛇行しているか、または、深刻な末梢血管疾患を患う患者には使用することができない。むしろ、そのような患者には、順行性アプローチ、たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下アプローチが好ましく、それによって、外科医は、外科的開胸術を用いて拍動している心臓202の心尖部224の周囲の領域に対する経皮アクセスを行い、その後、左室心尖部224の周囲で左心室220にアクセスすることを目的とした針または他の穿刺デバイスを使用して左心室220への直接のアクセスを行う。
【0096】
順行性(経心尖的(transapical))アクセス手技の態様が
図2bに示されており、左室心尖部224の箇所の周囲で左心室220へのアクセスを得るために、心筋壁を穿刺するための針デバイスを使用することによって心膜が切開されている。手技の診断的および介入的態様を補助するために、ガイドワイヤ180が大動脈弁212に向けておよび大動脈弁を通じて進められてもよい。心臓202の治療の後、心尖部224は、たとえば巾着縫合技法を使用することによって閉じられる。巾着縫合は、閉じられる必要がある円形創傷または穿刺の周囲に円形に行われる連続縫合である。切開部は、縫合の端をともに緊密に引き寄せることによって閉じられる。
【0097】
心臓弁ステント100とそれに固定されている人工心臓弁200とを備える心臓代用弁150の例示的な実施形態が
図3に示されている。
【0098】
図3に模式的に示されている心臓代用弁150の例示的な実施形態は、狭窄した心臓弁または心臓弁不全の治療に適合されている。
【0099】
以下の説明は、心臓代用弁150の例示的な実施形態の構造および機能を簡潔に説明するために、
図3を参照する。心臓代用弁150は、ステント100がつぶれた状態にある第1の事前規定可能な形状から、ステント100が拡張された状態にある第2の事前規定可能な形状に変形することができる拡張可能構造を有する心臓弁ステント100を備える。心臓弁ステント100はそれに固定されている人工心臓弁200とともに、カテーテル送達システムを使用してその第1の形状において患者の身体内に低侵襲様式で導入される。カテーテル送達システムによる(順行性または逆行性)挿入の間、ステント100に固定されている人工心臓弁200も同様につぶれた状態にある。
【0100】
図3に示されている心臓代用弁150の例示的な実施形態は、後述するカテーテル送達システムによって逆行性アプローチまたは順行性アプローチによって導入されるように適合されている。
【0101】
患者の心臓内の移植部位に達すると、ステント100は、その第2の(拡張した)形状へと変形し、ステント100に固定されている補綴弁200も展開して拡張する。第2の拡張した形状は、プログラミングによって設定されている持続的な形状である。
図3は、心臓代用弁150の例示的な実施形態を完全に拡張した状態で示している。
【0102】
図3に示されている心臓代用弁150の例示的な実施形態によるステント100は、ステント100を元々の肺動脈弁(valva trunci pulmonalis)または元々の大動脈弁(valva aortae)の面内に自己位置決めする機能を担う合計3つの位置決めアーチ115a、115b、115cを有する。位置決めアーチ115a、115b、115cの各々は、心臓内の移植部位にステント100を位置決めする間に治療されるべき(病変した)元々の心臓弁のポケットT内に係合するように設計されている丸みを帯びた頭部120を有する。
【0103】
図3に示されているような種類の心臓代用弁150の移植手技に関するさらなる詳細は、カテーテルチップ内に収容されている心臓代用弁の移植手技を説明するための、複数の異なる機能状態にある拡張可能心臓代用弁の逆行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップの例示的な実施形態を模式的に示す
図7a〜
図7cを参照して下記に説明されている。
【0104】
元々の弁膜の対称性に一致する対称性をもたらすとともに、合計3つの位置決めアーチ115a、115b、115cを提供することによって、回転正確性、対称性および安定性ももたらされる。ステント100は無論、合計3つの位置決めアーチ115a、115b、115cを使用することには限定されない。
【0105】
それぞれステント100の流入端領域を指している位置決めアーチ115a、115b、115cの頭部120は丸みを帯びており、それによって、位置決めアーチ115a、115b、115cが、置換されるべき元々の心臓弁のポケットT内に係合するときに、血管壁が損傷を受けなくなる。ステント100の移植中の動きおよび位置の分析を改善するために、基準マーカが位置決めアーチ115a、115b、115cの頭部120上またはその中に設けられてもよい。放射線不透過性マーカ、または、赤外線もしくは超音波によって起動することができるマーカが、特にこれに有用である。
【0106】
図3に示されているように、心臓弁ステント100の位置決めアーチ115a、115b、115cはそれぞれ、基本的に、ステント100の流入端に対して閉じているU字状またはV字状構造を有する。したがって、各位置決めアーチ115a、115b、115cは、それぞれ関連付けられる位置決めアーチ115a、115b、115cの頭部120からステント100の流出端に向けて延伸する合計2つのアームを有する。そうすることによって、2つの隣接する位置決めアーチ115a、115b、115cの各2つの隣り合うアームが、接続部を介して互いに接続される。
【0107】
適切なカテーテル送達システムを用いてステント100を移植および外植するために、ステント100は、好ましくはその流出端領域にカテーテル保持要素123を備える。カテーテル保持要素123は、各々が対応する楕円形状小孔124を備えてもよい楕円形状ヘッドを備えてもよい。カテーテル保持要素123の形状は、ステント100を移植/外植するのに使用されるカテーテル送達システムのカテーテルチップ上の冠部のステント保持要素を補完する。
【0108】
ステント保持要素を有するカテーテル送達システムのカテーテルチップの例示的な実施形態は、
図4および
図24を参照して下記に説明されている。より詳細には、
図4は、拡張可能心臓代用弁の逆行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップの例示的な実施形態を一部断面側面図において模式的に示しており、一方、拡張可能心臓代用弁の順行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップの例示的な実施形態は、一部断面側面図において
図24に模式的に示されている。
【0109】
特に、カテーテル送達システムのカテーテルチップのステント保持要素(以下「ステントホルダ」とも称する)は、好ましくはステント100の流出端領域に設けられているカテーテル保持要素123の逆型として構成される突出要素を有してもよい。
【0110】
代替的に、カテーテルチップのステント保持要素の突出要素は、好ましくはステント100の流出端領域に設けられており、カテーテル保持ヘッドとして構成されているカテーテル保持要素123の小孔124に対して相補的であるような形状にされてもよい。これを実現することによって、冠部の突出要素が、ステント100の流出領域との解放可能な係合を形成することが可能となり、カテーテルチップに対するステント100の解放可能な取り付けが可能になる。
【0111】
図3に戻って参照すると、心臓代用弁150の例示的な実施形態の心臓弁ステント100には、特に糸または細いワイヤによって人工心臓弁200が固定されている保持アーチ116a、116b、116cが設けられる。人工心臓弁200が配置されるステント100の中心領域および流入端領域が広くなることによって、人工心臓弁200の展開が達成されることが容易に認識される。
【0112】
心臓代用弁、たとえば、
図3に示されているような種類の人工心臓弁150を患者の身体内に導入するのに適した医療用カテーテル送達システムの例示的な実施形態が、以下に説明される。
【0113】
本開示のいくつかの実施形態によれば、拡張可能心臓代用弁150を患者の身体内に導入するための医療用カテーテル送達システムは、カテーテル送達システムの遠位端部にカテーテルチップ80−1、80−2を有するカテーテルシステムとして構成される。カテーテルチップ80−1、80−2は、好ましくは密に圧縮されている心臓代用弁150または心臓弁ステント100を少なくとも部分的に収容することが可能である。
【0114】
本開示のいくつかの態様によれば、カテーテルシステムは、カテーテルシステムの近位端部に操作ハンドル10−1、10−2をさらに備える。操作ハンドル10−1、10−2は、たとえば、患者の身体の内側の移植サイドにおいてカテーテルチップ80−1、80−2内に収容されている心臓代用弁150を解放するのに必要になるカテーテルチップ80−1、80−2を操作するように構成されている。
【0115】
本開示のいくつかの実施形態において、カテーテルシステムの操作ハンドル10−1、10−2は、カテーテルシャフト90によってカテーテルチップ80−1、80−2と動作可能に接続されている。カテーテルシステムが逆行性アクセスのために設計される場合、好ましくはカテーテルシャフト90の少なくとも遠位端部は、特に患者の大動脈を通じた挿入の間に、カテーテルチップ80−1およびカテーテルシャフト90の遠位端部が大動脈弓を通過することができるほど十分に柔軟である。
【0116】
拡張可能心臓代用弁150または拡張可能心臓弁ステント100の逆行(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態が、
図4を参照して以下に説明される。
【0117】
より詳細には、
図4は、拡張可能心臓代用弁(
図4には示されていない)の逆行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態を一部断面側面図において模式的に示している。たとえば、
図3に示されているような種類の心臓代用弁150は、
図4に示されているカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態によって患者の身体内に挿入され得る。
【0118】
図4に示されている例示的な実施形態において、カテーテルチップ80−1は、挿入される心臓代用弁150または心臓弁ステント100をそのつぶれた状態で収容するための座部を有する。さらに、カテーテルチップ80−1には、心臓代用弁150または心臓弁ステント100をカテーテルチップ80−1の座部内に解放可能に固定するためのステント保持要素85が設けられる。
図4に示されている実施形態において、ステント保持要素85は、移植されるべき心臓代用弁150または心臓弁ステント100のカテーテル保持要素123と解放可能に接続するための取り付け要素86を有する冠部を備える。したがって、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85は機能的には、「ステントホルダ」としての役割を果たす。
【0119】
本開示のいくつかの態様によれば、カテーテルチップ80−1の座部は、少なくとも1つのスリーブ形状部材によって構成される。
図4に示されている例示的な実施形態において、カテーテルチップ80−1の座部は、第1のスリーブ形状部材81と、第2のスリーブ形状部材82との、合計2つのスリーブ形状部材を備える。図示されているように、2つのスリーブ形状部材81、82のそれぞれの断面は好ましくは互いに同一であり、それによって、第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82は、カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓弁ステント100または心臓代用弁150を完全に封入することができる。
【0120】
カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓弁ステント100または心臓代用弁150を解放するために、第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82は、互いに対して相対的に、および、心臓弁ステント100または心臓代用弁150をカテーテルチップ80−1に解放可能に固定するのに使用されるステント保持要素85(ステントホルダ)に対しても相対的に移動可能である。
【0121】
この目的のために、第1のスリーブ形状部材81に接続されている遠位端部を有する第1の力伝達部材が提供される。第1の力伝達部材はカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に割り当てられ、遠位端部の反対側の近位端部を有し、第1の力伝達部材の近位端部は、カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1、10−2の対応する(第1の)スライド部材30に動作可能に接続されている。
図4に示されているカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81を操作するための対応する(第1の)スライド部材30を有する操作ハンドル10−1の例示的な実施形態は、
図8〜
図23を参照して下記に説明されている。
【0122】
加えて、第2のスリーブ形状部材82に接続されている遠位端部を有する第2の力伝達部材が提供される。第2の力伝達部材はカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82に割り当てられ、遠位端部の反対側の近位端部を有し、近位端部は、カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1の対応する(第2の)スライド部材40に動作可能に接続されている。
図4に示されているカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82を操作するための対応する(第2の)スライド部材40を有する操作ハンドル10−1の例示的な実施形態は、
図8〜
図23を参照して下記に説明されている。
【0123】
操作ハンドル10−1のそれぞれのスライド部材30、40を操作すると、第1のスリーブ形状部材81および/または第2のスリーブ形状部材82は、互いに対して相対的に、および、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に移動し得る。
【0124】
図5は、心臓代用弁150の逆行(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)挿入のために適合されている医療用カテーテル送達システムのカテーテルシャフト90の例示的な実施形態を模式的に示す。
【0125】
図5から分かるように、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に割り当てられており、操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30と動作可能に接続されている第1の力伝達部材は、第1の空洞を画定する第1のカテーテルチューブ91によって構成されてもよい。カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82に割り当てられており、操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40と動作可能に接続されている第2の力伝達部材は、さらなる(第2の)空洞を画定するさらなる(第2の)カテーテルチューブ92によって構成されてもよい。
図5に示されている例示的な実施形態において、第2のカテーテルチューブ92は、第1のカテーテルチューブ91の断面直径よりも小さい断面直径を有する。第1のカテーテルチューブ91は第2のカテーテルチューブ92と同心円上かつ同軸上に配置され、第2のカテーテルチューブ92は、第1のカテーテルチューブ91によって画定される第1の空洞内に受け入れられる。
【0126】
しかしながら、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82とは対照的に、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)は、好ましくはカテーテルシステムの操作ハンドル10−1に対して相対的に軸方向に移動可能でない。むしろ、ステント保持要素85は、ステント保持要素85に接続されている遠位端部を有し、操作ハンドル10−1の固定具45に接続されている近位端部をさらに有するさらなるカテーテルチューブ93を使用することによって、操作ハンドル10−1の固定具45に接続されている。以後、このさらなるカテーテルチューブ93を「ステント・ホルダ・チューブ」とも称する。
【0127】
再び
図5に示されている例示的な実施形態を参照すると、ステント・ホルダ・チューブ93は、第1のカテーテルチューブ91の断面直径よりも小さい断面直径を有してもよい。特に、第1のカテーテルチューブ91は、一方におけるステント・ホルダ・チューブ93と、他方における第2のカテーテルチューブ92の両方と同心円上かつ同軸上に配置されてもよい。好ましくは、ステント・ホルダ・チューブ93は、第1のカテーテルチューブ91の断面直径よりも小さく、第2のカテーテルチューブ92の断面直径よりも大きい断面直径を有し、それによって、ステント・ホルダ・チューブ93は、第1のカテーテルチューブ91によって画定される第1の空洞内に受け入れられる。第2のカテーテルチューブ92は、好ましくは、ステント・ホルダ・チューブ93によって画定される通路内に受け入れられる。
【0128】
図5に模式的に示されている例示的な実施形態において、ステント・ホルダ・チューブ93によって画定される通路は、第2のカテーテルチューブ92を収容するのに十分な直径を有し、それによって、第2のカテーテルチューブ92は、ステント・ホルダ・チューブ93に対して相対的に移動可能である。
【0129】
第2のカテーテルチューブ92によって画定される第2の空洞は、好ましくは、ガイドワイヤ180を収容するのに十分な直径を有する。第2のカテーテルチューブ92は、たとえば、ニチノール、ステンレス鋼または剛性プラスチック材料を含む剛性材料から作製されてもよい。第2のカテーテルチューブ92の遠位端部の材料は、カテーテルシャフト90の遠位端部がカテーテルチップ80−1の挿入中に大動脈弓を通過することを可能にするために、近位端部の材料と比較して増大した柔軟性を有してもよい。たとえば、第1のカテーテルチューブ91は、12Fカテーテルチューブであってもよい。これは、逆行性(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)アクセスのために設計されているカテーテル送達システムに特にあてはまる。
【0130】
再び、
図4に模式的に示されている拡張可能心臓代用弁の逆行挿入のための例示的なカテーテルチップ80−1を参照する。
【0131】
図4に示されているカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態から分かるように、第2のカテーテルチューブ92の遠位端部は、好ましくは非外傷性の形状を有するソフトカテーテル先端94において終端する。ソフトカテーテル先端94には、第2のカテーテルチューブ92によって画定される第2の空洞と整列されているチャネルが設けられており、それによって、第2のカテーテルチューブ92によって画定される第2の空洞内に収容されているガイドワイヤ180が、ソフトカテーテル先端94のチャネルを通ることができる。
【0132】
カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82はソフトカテーテル先端94に接続されており、それによって、第2のスリーブ形状部材82の開端が、ソフトカテーテル先端94の方向と反対の近位方向、すなわち、カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1の方向に面する。
【0133】
図5に示されている例示的な実施形態によれば、ステント・ホルダ・チューブ93は、好ましくは、剛性材料、たとえば、剛性プラスチック材料、ステンレス鋼またはニチノールから作製される。ステント・ホルダ・チューブ93の遠位端部は、ステント保持要素85において、より詳細には、ステント保持要素85の冠部(ステントホルダ)において終端する。好ましくは、冠部も剛性材料、たとえば、剛性プラスチック材料またはステンレス鋼から作製される。ステント・ホルダ・チューブ93によって画定される通路は、ステント保持要素85の冠部(ステントホルダ)を通るチャネルと整列される。このように、第2のカテーテルチューブ92は、ステント保持要素85のステント・ホルダ・チューブ93および冠部(ステントホルダ)に対して相対的に移動可能であるように、ステント・ホルダ・チューブ93の通路内に、および、ステント保持要素85の冠部のチャネル内に収容される。
【0134】
図5に示されている例示的な実施形態において、第1のカテーテルチューブ91は好ましくは、屈曲可能であるが非弾性の材料から作製される。たとえば、第1のカテーテルチューブ91は、少なくとも部分的に編組または非編組カテーテルチューブから作製されてもよい。より詳細には、第1のカテーテルチューブ91は、好ましくは、カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1の対応する操作機構(第1のスライド部材30)からの圧縮力および張力を、その全長を過度に変化させることなくカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に伝達するように適合されている。
【0135】
第1のカテーテルチューブ91の遠位端部は、好ましくは、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81を画定する部分への移行部としての拡大部分83において終端する。
【0136】
図4から分かるように、拡大部分83および第1のスリーブ形状部材81は、一体的に形成されてもよく、第1のカテーテルチューブ91の遠位端部に接続されてもよい。加えて、拡大部分83は、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81を構成してもよい。第1のスリーブ形状部材81および第1のカテーテルチューブ91の拡大部分83は、すべて同じ材料から成り、広げる工程の前の同じ未加工チューブに由来してもよく、それによって、拡大部分83および第1のスリーブ形状部材81が同じ要素になることができる。
【0137】
本開示のいくつかの態様によれば、逆行性(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)アクセスのために設計されているカテーテル送達システムは、心臓代用弁150が固定されている心臓弁ステント100を収容するためのカテーテルチップ80−1を備える。たとえば、
図4に示されている例示的な実施形態において、カテーテルチップ80−1は、特に心臓弁ステント100の位置決めアーチ115a、115b、115cを収容するための第1のスリーブ形状部材81と、特に保持アーチ116a、116b、116cおよびそれに固定されている心臓代用弁150を収容するための第2のスリーブ形状部材82とから構成される。
【0138】
本開示のいくつかの実施形態に係るカテーテル送達システムは、複数段階における事前規定可能な一連の事象において、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1内に収容されている拡張可能心臓代用弁150を解放するように適合されている。この理由から、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82は、互いに対して相対的に、および、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に移動可能である。カテーテルチップ80−1のそれぞれのスリーブ形状部材81、82の操作は、カテーテルチップ80−1のスリーブ形状部材81、82が動作可能に接続されている操作ハンドル10−1のそれぞれのスライド部材30、40の作動に影響され得る。
【0139】
より詳細には、本開示のいくつかの実施形態によれば、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81は、第1の力伝達機構、たとえば、第1のカテーテルチューブ91によって対応する操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30と動作可能に接続される。他方、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82は、第2の力伝達機構、たとえば、さらなる(第2の)カテーテルチューブ92によって、対応する操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40と動作可能に接続されている。すでに示したように、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)は、好ましくは、長手方向において操作ハンドル10−1に対して相対的に移動可能でない。したがって、ステント保持要素85は、好ましくは、操作ハンドル10−1の対応する(操作可能な)スライド部材と動作可能に接続されない。そうではなく、本開示の好ましい実施形態によれば、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85は、たとえば、ステント・ホルダ・チューブ93によって、操作ハンドル10−1の固定具45と接続される。
【0140】
図4に示されている例示的な実施形態において、カテーテルチップ80−1は、カテーテルチップ80−1、および、たとえば、チップ内に収容されている心臓代用弁150が経動脈的、経大腿的または経鎖骨下的に挿入され、大動脈を介して移植サイド内に進められ得る第1の機能状態において示されている。したがって、第1の機能状態において、カテーテルチップ80−1は完全に閉じており、それによって、カテーテルチップ80−1の2つのスリーブ形状部材81、82のそれぞれの開端部は互いに対して当接している。
【0141】
代替的に、カテーテルチップ80−1の2つのスリーブ形状部材81、82はまた、少なくとも部分的に伸縮自在に重なりあっていてもよい。したがって、カテーテルチップ80−1の第1の機能状態において、2つのスリーブ形状部材81、82は、少なくとも部分的に好ましくは密に圧縮された心臓代用弁150を収容するように適合されている座部を備える。
【0142】
患者の身体内の移植箇所に達すると、カテーテルチップ80−1は、操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30を第1の位置から第2の位置へと移行させることによって、その第1の機能状態から第2の機能状態へ移行する。カテーテルチップ80−1の動作可能に接続されている第1のスリーブ形状部材81に対する第1のスライド部材30の作動によって伝達される長手方向(軸方向)変位ストロークは、近位方向において(したがって操作ハンドル10−1に向けて)、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)および第2のスリーブ形状部材82に対する第1のスリーブ形状部材81の軸方向変位に影響を与える。
【0143】
対応する第1の力伝達機構(たとえば、第1のカテーテルチューブ91)を介した第1のスライド部材30による、第1の機能状態から第2の機能状態への移行の間にカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に対して発揮される長手方向(軸方向)変位ストロークは、近位方向において第1のスリーブ形状部材81がカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に変位され、そのためただ、カテーテルチップ80−1内に収納されている心臓代用弁150の所定部しか解放されていないように、事前に規定される。より詳細には、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81の遠位端部は依然としてカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆しており、それによって、カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓代用弁150に設けられているカテーテル保持要素123と、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が保証される。
【0144】
カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82は、第1の機能状態から第2の機能状態への移行中は操作されないため、人工心臓弁200が固定されているカテーテルチップ80−1内に収納されている心臓弁ステント100の保持アーチ116a、116b、116cは、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82内でその折り畳まれた状態において収納され続けることになる。
【0145】
しかしながら、カテーテルチップ80−1内に収納されている心臓弁ステント100の位置決めアーチ115a、115b、115cは、挿入システムの第2の機能状態においては解放される。より詳細には、位置決めアーチ115a、115b、115cは、その後に作用する半径方向力の結果として半径方向に拡張し、これにより、元々の心臓弁のポケットT内に位置決めされ得る。
【0146】
元々の心臓弁のポケットT内にステント100の位置決めアーチ115a、115b、115cが適切に位置決めされた後、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1は、第2の機能状態から第3の機能状態へと移行する。これは、たとえば、第2のカテーテルチューブ92によって、カテーテルチューブ80−1の第2のスリーブ形状部材82と動作可能に接続されている操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40の操作によって行われる。
【0147】
操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40の作動を受けて、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82は、遠位方向に、したがって操作ハンドル10−1から外方に、事前に確立されている長手方向(軸方向)変位ストロークによって、軸方向においてカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に動かされる。第2のスリーブ形状部材82に対して作用する長手方向(軸方向)変位ストロークは、第2のスリーブ形状部材82がもはやカテーテルチップ80−1内に収納されている心臓代用弁150の流入領域を被覆せず、心臓代用弁150の流入領域を解放するように選択される。半径方向力の作用に起因して、心臓代用弁150の流入領域は完全に開く。
【0148】
操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30およびカテーテルチップ80−1の関連付けられる第1のスリーブ形状部材81は、第2の機能状態から第3の機能状態への移行中は操作されないため、第1のスリーブ形状部材81の遠位端領域は、心臓代用弁150の流出端領域、および、特に、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆し続け、それによって、カテーテルチップ80−1内に収納されている心臓代用弁150のカテーテル保持要素123と、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が保証され、心臓代用弁150の流出端領域は依然としてその折り畳まれた状態にある。
【0149】
カテーテルチップ80−1に対する心臓代用弁150の維持されている固定も、操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30および第2のスライド部材40の適切な操作によってカテーテルチップ80−1が第3の機能状態から第2の機能状態に戻ることによって、ならびに、その後、第1の機能状態に移行された第1のスライド部材の適切な作動によって、すでに部分的に展開されている心臓代用弁150の外植を可能にする。
【0150】
心臓代用弁150の外植が不要である場合、カテーテルチップ80−1は、操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30を第2の位置からさらに第3の位置へと動かすことによって、第3の機能状態から第4の機能状態へと移行する。第1のスライド部材30の操作の結果として、近位方向における、すなわち、操作ハンドル10−1に向けてのカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対する相対的な、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81のさらなる規定された動きがもたらされる。第1のスリーブ形状部材81に対して発揮される長手方向(軸方向)変位ストロークは、第1のスリーブ形状部材81の遠位端がもはや、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆せず、その結果として、カテーテルチップ80−1内に収納されている心臓代用弁150のカテーテル保持要素123と、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が解放され、またそれによって、心臓代用弁150の流出端領域の完全な解放、および、カテーテルチップ80−1からの心臓代用弁150の完全な分離、ならびに、それに応じて心臓代用弁150の完全な展開ももたらされるように選択される。
【0151】
拡張可能心臓代用弁150の逆行(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)挿入のためのカテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1のさらなる例示的な実施形態が、
図6a〜
図6fにおいて複数の異なる機能状態で示されている。
【0152】
詳細には、カテーテルチップ80−1の例示的な実施形態は
図6aにおいては、カテーテルチップ80−1、および、カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓代用弁150を有するカテーテルシャフト90が経動脈的または経大腿的に、たとえば、大動脈を介して心臓にある移植サイドまで患者の中へと挿入され得る第1の機能状態が示されている。
【0153】
図6aによるカテーテルチップ80−1の第1の機能状態において、カテーテルチップ80−1は完全に閉じており、それによって、カテーテルチップ80−1の2つのスリーブ形状部材81、82は当接している。
図6a〜
図6fに示されているカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態によれば、カテーテルチップ80−1の2つのスリーブ形状部材81、82は等しい断面外径を有し、そのため、
図6aに示されている状態においては段差を形成しない。スリーブ形状部材81、82のそれぞれの内径は、心臓弁ステント100の圧縮された保持アーチ116a、116b、116cが、第2のスリーブ形状部材82内に収納され得るように選択される。カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓弁ステント100の圧縮された位置決めアーチ115a、115b、115cは、第2のスリーブ形状部材82と第1のスリーブ形状部材81との間に収納されることになり、ともに圧縮された形態で保持されることになる。
【0154】
図6aに示されているようなカテーテルチップ80−1の第1の機能状態において、ステントの流出端にあるステント100の保持領域は、カテーテルチップ80−1の近位端領域に設けられているステント保持要素85(ステントホルダ)によって固定されている。この目的のために、心臓弁ステント100の対応する保持領域に設けられているカテーテル保持要素123(たとえば、保持リングなど)は、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)と係合される。
【0155】
カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)は、
図6aに示されている第1の機能状態においてカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81によって被覆されており、それによって、カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓弁ステント100に設けられているカテーテル保持要素123と、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が可能になる。
【0156】
図6aに示されているカテーテルチップ80−1の第1の機能状態は、逆行(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)挿入手技の間維持される。患者の心臓にある移植箇所に達すると、カテーテルチップ80−1は、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81と動作可能に接続されている操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30を第1の位置から第2の位置へと移行させることによって、
図6aに示されている第1の機能状態から
図6bに示されている第2の機能状態へと移行する。カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に対する第1のスライド部材30の作動によって伝達される長手方向(軸方向)変位ストロークが、近位方向において(したがって操作ハンドル10−1に向けて)、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対する第1のスリーブ形状部材81の変位に影響を与える。
【0157】
対応する第1の力伝達機構を介した第1のスライド部材30による、第1の機能状態(
図6a参照)から第2の機能状態(
図6b参照)への移行の間にカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に対して発揮される長手方向(軸方向)変位ストロークは、近位方向において第1のスリーブ形状部材81がカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に変位され、そのため、カテーテルチップ80−1内に収納されている心臓弁ステント100の位置決めアーチ115a、115b、115cが解放されるように、事前に規定される。しかしながら、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81の遠位端は依然としてカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆しており、それによって心臓弁ステント100の保持領域に設けられているカテーテル保持要素123と、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が保証される。
【0158】
図6bに示されているカテーテルチップ80−1の第2の機能状態において、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81は、近位端方向に、したがってカテーテル送達システムの操作ハンドル10−1に向けて第1の所定移動量だけすでに動かされており、結果としてカテーテルチップ80−1内に収容されているステント100の位置決めアーチ115a、115b、115cが解放される。ステント100のこれらの位置決めアーチ115a、115b、115cは、必要に応じてカテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を適切に回転させることによって、元々の心臓弁のポケットT内に位置決めされる。元々の心臓弁のポケットT内への位置決めアーチ115の位置決めが完了した後、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1は、その第2の機能状態(
図6b参照)からその第3の機能状態(
図6c参照)へと移行する。
【0159】
操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30およびカテーテルチップ80−1の関連付けられる第1のスリーブ形状部材81は、
図6bによる第2の機能状態から
図6cによる第3の機能状態への移行中は操作されないため、第1のスリーブ形状部材81の遠位端領域は、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆し続け、それによって、カテーテルチップ80−1内に収納されているステント100のカテーテル保持要素123と、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が保証され、ステント100の流出領域は依然としてその折り畳まれた状態にある。カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1に対するステント100のこの固定が、操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40の適切な操作によってカテーテルチップ80−1が第3の機能状態から第2の機能状態に戻ることによって、ならびに、その後、第1のスライド部材30が第1の機能状態に移行する適切な作動によって、すでに部分的に展開されているステント100の外植を可能にする。
【0160】
人工心臓弁200が取り付けられているステント100の外植が不要である場合、カテーテルチップ80−1は、操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30を第2の位置からさらに第3の位置へと旋回させることによって、
図6cに示されている第3の機能状態から
図6dに示されている第4の機能状態へと移行する。第1のスライド部材30のこの操作の結果として、近位方向において、すなわち、操作ハンドル10−1に向けて、のカテーテルチップ80−1のステント保持要素85に対する相対的な、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81のさらなる規定された動きがもたらされる。カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に対して発揮される長手方向(軸方向)変位ストロークは、スリーブ形状部材81の遠位端がもはや、ステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆せず、その結果として、カテーテルチップ80−1内に収納されているステント100のカテーテル保持要素123と、ステント保持要素85(ステントホルダ)との間の係合が解放され得、またそれによって、ステント100の流出端領域の完全な解放、および、カテーテルチップ80−1からのステント100の完全な分離、ならびに、それに応じて人工心臓弁200が取り付けられているステント100の完全な展開ももたらされるように選択される。
【0161】
図6a〜
図6fに示されているカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態において、ステント・ホルダ・チューブ93は、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)を、操作ハンドル10−1の本体部に固定されている固定具45に接続するのに使用される。ステント・ホルダ・チューブ93は、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)に接続されている遠位端と、操作ハンドル10−1の本体部に接続されている近位端と、ステント・ホルダ・チューブ93を通じて延伸する通路とを有する。加えて、ステント・ホルダ・チューブ93の延伸部93’が設けられ、当該延伸部93’は、ステント保持要素85(ステントホルダ)の遠位端から支持部分94まで延伸する。支持部分94は、カテーテルチップ80−1がその第1の機能状態および第2の機能状態(
図6aおよび
図6b参照)にあるときは、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82内に完全に収容されている、先細になった部分であってもよい。
【0162】
好ましくは、ステント・ホルダ・チューブ93およびその延伸部93’は、第1のカテーテルチューブ91の断面よりも小さく、第2のカテーテルチューブ92(
図6a〜
図6fには示されていない)の断面よりも大きい断面を有し、第1のカテーテルチューブ91はステント・ホルダ・チューブ93と同心円上かつ同軸上に配置され、それによって、第1のカテーテルチューブ91がステント・ホルダ・チューブ93に対して移動可能であるように、ステント・ホルダ・チューブ93を収容する。ステント・ホルダ・チューブ93の通路は、第2のカテーテルチューブ92を収容するのに十分な直径を有してもよく、それによって、第2のカテーテルチューブ92は、ステント・ホルダ・チューブ93に対して相対的に移動可能である。
【0163】
図6eは、
図6a〜
図6dによるカテーテルチップ80−1の実施形態の側面図を示しており、これによれば、カテーテルチップ80−1はその、カテーテルチップ80−1内に収容されていたステント100が解放された後の状態にある。カテーテルチップ80−1のこの状態において、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82は、操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40の操作によって、近位に、すなわち、操作ハンドル10−1の方向に動かされる。
【0164】
図6fは、
図6eによるカテーテルチップ80−1の実施形態の側面図を示しており、これによれば、カテーテルチップ80−1はその、患者の身体から再び取り除かれる準備ができた状態にある。カテーテルチップ80−1のこの状態において、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81は、操作ハンドル10−1の第1のスライド部材30の操作によって押され、それによって、第1のスリーブ形状部材81はその最遠位位置になり、その位置において、第1のスリーブ形状部材81の遠位端は、第2のスリーブ形状部材82の近位端と、それらの間に一切の間隙も段差もなく、当接する。この間隙も段差もない状態を保証するために、第1のスリーブ形状部材81の遠位端および第2のスリーブ形状部材82の近位端は、すでに言及した支持部分94によって支持される。
【0165】
本開示による医療デバイスの例示的な実施形態が、以下に説明される。医療デバイスは、患者における心臓弁欠陥、特に心臓弁機能不全または心臓弁狭窄を治療するように適合されている。
【0166】
本開示のいくつかの実施形態によれば、心臓弁欠陥を治療するための医療デバイスは、拡張可能心臓代用弁を患者の身体内に導入するためのカテーテル送達システムを備える。カテーテル送達システムは、カテーテル送達システムの遠位端部にある少なくとも1つのスリーブ形状部材を備え、少なくとも1つのスリーブ形状部材はカテーテル送達システムのカテーテルチップの一部であり、密に圧縮された心臓代用弁を少なくとも部分的に受け入れることが可能である。好ましくは、カテーテル送達システムのカテーテルチップには、
図7a〜
図7cを参照して下記に詳細に説明されるように、合計2つのスリーブ形状部材が設けられる。
【0167】
本開示のいくつかの実施形態によれば、カテーテル送達システムは、操作ハンドル、たとえば、
図8に示されているような種類の操作ハンドル10−1をさらに備える。操作ハンドル10−1は、カテーテル送達システムの近位端部に配置され、カテーテルチップの少なくとも1つのスリーブ形状部材を操作するように適合される。下記により詳細に説明されるように、操作ハンドルは、ユーザによって保持されるように設計されている把持部と、把持部と軸方向に整列されている操作部とを備えてもよい。
【0168】
本開示のいくつかの好ましい実施形態によれば、操作ハンドルの操作部は、操作ハンドルによって規定される長手方向軸を中心として把持部に対して相対的に回転可能である。本開示の一態様によれば、操作ハンドルは、少なくとも1つのスライド部材を備え、少なくとも1つのスライド部材は、操作部が把持部に対して回転すると、少なくとも1つのスライド部材が長手方向軸の方向において軸方向に動くように、カム機構によって操作ハンドルの操作部と動作可能に連結されている。
【0169】
以下において、カテーテルチップ80−1内に収容されている心臓代用弁150の移植手技を説明するための、複数の異なる機能状態にある拡張可能心臓代用弁150の逆行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1の例示的な実施形態を模式的に示す
図7a〜
図7cを参照する。
【0170】
図7a〜
図7cに示されている医療デバイスの例示的な実施形態において、操作ハンドル(
図7a〜
図7cには示されていない)が、カテーテル送達システムのカテーテルシャフト90の近位端領域に設けられている。操作ハンドルは、好ましくは、合計2つのスライド部材、すなわち、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に動作可能に接続されている第1のスライド部材と、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82に動作可能に接続されている第2のスライド部材とを備える。
【0171】
本開示のいくつかの態様によれば、また
図7a〜
図7cに示されているように、心臓弁欠陥を治療するための医療デバイスは、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1内に収容されている拡張可能心臓弁ステント100をさらに備える。
【0172】
図7a〜
図7cに模式的に示されているように、人工心臓弁200が拡張可能心臓弁ステント100に取り付けられてもよく、それによって、心臓代用弁150が形成される。
【0173】
図7a〜
図7cを参照すると、医療デバイスの例示的な実施形態は、逆行性(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)アクセスのために設計されているカテーテル送達システムである。しかしながら、医療デバイスは、
図25a〜
図25dを参照して後述されるように、順行性アクセスのために設計されているカテーテル送達システムとなる可能性もある。
【0174】
カテーテル送達システムに加えて、医療デバイスは、人工心臓弁200が固定されている、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1内に載置される自己拡張可能心臓弁ステント100を備える。
図7a〜
図7cには示されていない第1の機能状態において、心臓弁ステント100は第1の事前規定可能な構成を有し、この構成において、ステントは、ともに折り畳まれた状態にある。他方、心臓弁ステント100は、移植された状態において第2の事前規定可能な構成を採用するように設計されており、この構成において、ステントは拡張された状態において存在している。
【0175】
本明細書に開示されているような種類のカテーテル送達システムを使用することによって、移植手技の間、心臓弁ステント100は、複数段階における事前規定可能な一連の事象に従って、その第1の事前に規定される構成からその第2の事前に規定される構成へと順次移行する。
【0176】
詳細には、
図7a〜
図7cによる医療デバイスによって使用される心臓弁ステント100は、人工心臓弁200が取り付けられている第1の保持領域を有する。さらに、ステント100は、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85(ステントホルダ)との解放可能な係合状態にすることができる、たとえば、保持リングの状態にあるカテーテル保持要素123を備える。
【0177】
加えて、心臓弁ステント100は、人工心臓弁200を収容するための複数の保持アーチ116(
図7a〜
図7cに示されている実施形態において、心臓弁ステント100には、合計3つの保持アーチ160が設けられている)と、ステント100を移植部位に自動的に位置決めするための複数の位置決めアーチ115(
図7a〜
図7cに示されている実施形態において、心臓弁ステント100には、合計3つの位置決めアーチが設けられている)とを有してもよく、これによれば、ステント100のそれぞれの位置決めアーチ115は機能的および構造的観点において、移植手技の間、および、特に、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1の第2の機能状態からのステント100の移植状態において、元々の心臓弁のポケットTに係合するように設計される。詳細には、各位置決めアーチ115およびその関連付けられる保持アーチ116は、ステント100の流入端に向かって閉じている、基本的にUまたはV字状の構造を有してもよい。
【0178】
カテーテル送達システムとともに本開示による医療デバイスの基礎を形成するステント100およびそれに取り付けられている人工心臓弁200は、低侵襲で患者の身体内に挿入するのに特に適している。心臓弁ステント100の際立った特徴は、ステント100の位置決めアーチ115が、人工心臓弁200が取り付けられているステント100を、患者の大動脈内に自動的な位置決めする機能を請け負うことである。位置決めアーチ115は、移植部位におけるステント100の位置決め中に心臓代用弁150によって置換されるべき機能不全のある心臓弁のポケットT内に係合する、丸みを帯びたヘッド部分を有する。少なくとも合計3つの位置決めアーチ115を設けることによって、回転方向において必要な位置決め精度が対処される。
【0179】
図7aに示されている状態において、カテーテルチップ80−1およびカテーテル送達システムの遠位部は、患者の鼠径動脈の穿刺によって挿入されており、カテーテルチップ80−1はガイドワイヤ180を用いて移植部位まで進められている。詳細には、使用されるカテーテルチップ80−1は、
図7aにおいてすでにその第2の機能状態において示されている。
【0180】
たとえば、
図6a〜
図6fを参照してすでに説明されたように、カテーテルチップ80−1の第2の機能状態において、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状要素81は、近位端方向に、したがってカテーテル送達システムの操作ハンドル10−1に向けて、第1の所定移動量だけすでに動かされており、結果としてカテーテルチップ80−1内に収容されている心臓弁ステント100の位置決めアーチ115が解放される。
図7aに示されているステント100のすでに拡張されている位置決めアーチ115は、必要に応じてカテーテルチップ80−1を適切に回転させることによって、元々の心臓弁のポケットT内に位置決めされる。
【0181】
元々の心臓弁のポケットT内への位置決めアーチ115の位置決めが完了した後、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1は、その第2の機能状態(たとえば、
図6b参照)からその第3の機能状態(たとえば、
図6c参照)へと移行する。
【0182】
カテーテルチップ80−1がその第2の機能状態からその第3の機能状態に移行する様態は、たとえば、
図6cを参照してすでに説明されている。
【0183】
図7bは、
図7aによるカテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1を示しており、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82が遠位方向に変位されており、それによって、保持アーチ116を有するステント100の第1の保持領域およびそれらに取り付けられている人工心臓弁200が解放される。これらの構成要素(保持アーチ116およびそれらに取り付けられている人工心臓弁200)は、それらに加わる半径方向力の結果として開かれ、これによって、元々の心臓弁の小葉Vが、心臓弁ステント100の位置決めアーチ115と保持アーチ116との間でクランプ固定される。
【0184】
(部分的に解放されている)心臓弁ステント100に固定されている人工心臓弁200の機能が検査された後、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1が、たとえば
図6dを参照してすでに説明されたように、その第3の機能状態からその第4の機能状態へと移行する。
【0185】
図7cは、人工心臓弁200および心臓弁ステント100に対する、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1のその第4の機能状態への移行の効果を示す。
【0186】
詳細には、カテーテルチップ80−1の第4の機能状態において、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81が近位方向にさらに変位されており、その結果として、ステント100の流出端領域におけるカテーテル保持要素123の固定が解放されていることが分かる。この結果として、このステント100の保持領域(=流出領域)も拡張し、血管壁を圧迫することができる。
【0187】
最後に、カテーテルチップ80−1およびカテーテル送達システムの遠位部が、患者の身体から再び取り除かれる。
【0188】
心臓弁ステント100が移植されると、特に
図7cから分かるように、ステント100の自己拡張特性に起因して、同時に元々の(機能不全のある)心臓弁の小葉Vが血管壁を圧迫する。より詳細には、元々の心臓弁の半月小葉Vが、ステント100が拡張するために心臓弁ステント100の位置決めアーチ115と保持アーチ116との間でクランプ固定され、それに加えて、人工心臓弁200が最適に位置決めされて、安定して固定される。
【0189】
本開示による医療用カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1の例示的な実施形態が、
図8〜
図23を参照して以下に説明される。
【0190】
本開示のいくつかの実施形態によれば、操作ハンドル10−1は、ユーザによって保持されるように設計されている把持部11と、把持部11と軸方向に整列されている操作部12とを備える。好ましくは、操作ハンドル10−1の操作部12は、操作ハンドル10−1によって規定される長手方向軸Lを中心として把持部11に対して相対的に回転可能である。
【0191】
本開示のいくつかの実施態様において、操作ハンドル10−1は、少なくとも1つのスライド部材30、40を備え、少なくとも1つのスライド部材は、操作部12が把持部11に対して回転すると、少なくとも1つのスライド部材30、40が長手方向軸Lの方向において軸方向に動くように、カム機構50によって操作ハンドル10−1の操作部12と動作可能に連結されている。
【0192】
好ましくは、カム機構50は、操作ハンドル10−1内に一体化されており、把持部11に対する操作部12の回転運動を、把持部11に対する少なくとも1つのスライド部材30、40の直線運動に変換するように構成されている。
【0193】
本開示のいくつかの態様によれば、操作ハンドル10−1の操作部12は、ユーザによって一方の手を用いて把持されるように設計されている回転ホイールであり、一方で、他方の手は、把持部11を保持する。
【0194】
本明細書に開示されている操作ハンドル10−1のいくつかの実施形態によれば、カム機構50は、操作ハンドル10−1の操作部12と接続されている円筒部材51を備え、円筒部材51は少なくとも1つのカム溝31、41を備える。本開示のいくつかの好ましい実施形態において、カム機構50は、少なくとも1つのスライド部材30、40と接続されている第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを有する少なくとも1つのピン部材32、42をさらに備え、少なくとも1つのピン部材32、42の第2の端部は少なくとも1つのカム溝31、41に係合し、それによって、操作部12が把持部11に対して回転するとき、少なくとも1つのピン部材32、42は、少なくとも1つのカム溝31、41によって規定されるカムプロファイルに従う。
【0195】
好ましくは、操作ハンドルの把持部11は、ジャケットとして形成される。また、本開示のいくつかの実施形態によれば、カム機構50の円筒部材51は、少なくとも部分的に把持部11と同心円上かつ同軸上に配置され、カム機構50の円筒部材51は把持部11に対して相対的に回転可能である。
【0196】
本開示のいくつかの好ましい実施形態によれば、カム機構50の円筒部材51は、少なくとも部分的に中空である。さらに、本開示のいくつかの実施形態において、操作ハンドル10−1のカム機構50は、中空の円筒部材51と同心円上かつ同軸上に配置されている本体部材52を備え、本体部材52は、中空の円筒部材51の内径よりも小さい直径を有する円筒部52aを備え、円筒部52aは、中空の円筒部材51が本体部材52に対して相対的に回転可能であるように、中空の円筒部材51の内部に少なくとも部分的に受け入れられる。好ましくは、本体部材52には、本体部材52に対する操作部12の軸方向移動を防止するための少なくとも1つのフランジ53が設けられている。
【0197】
拡張可能心臓代用弁150の逆行(たとえば、経動脈、経大腿または経鎖骨下)挿入のための医療用カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1の例示的な実施形態を説明するために、以下において特に
図8〜
図23を参照する。
【0198】
詳細には、
図8は、拡張可能心臓代用弁の逆行挿入のための医療用カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1の例示的な実施形態を示す図である。
図8に示されている例示的な実施形態によれば、操作ハンドル10−1はカテーテル送達システム(図示せず)の近位端部に設けられ、ユーザによって保持されるように設計されている把持部11を備える。さらに、操作ハンドル10−1は、把持部11と軸方向に整列されている操作部12を備える。操作部12は、操作ハンドル10−1によって規定される長手方向軸Lを中心として把持部11に対して相対的に回転可能である。
【0199】
好ましくは、操作部12は、ユーザによってその一方の手を用いて把持されるように設計されている回転ホイールであり、一方で、他方の手は把持部11を保持する。
【0200】
図8〜
図23に示されている例示的な実施形態による操作ハンドル10−1は、操作ハンドル10−1の操作部12と動作可能に連結されている少なくとも1つのスライド部材30、40をさらに備える。少なくとも1つのスライド部材30、40は、操作ハンドル10−1と接続されているカテーテルチップ80−1のスリーブ形状部材81、82(
図8〜
図23には示されていない)と動作可能に接続される。
【0201】
図8〜
図23に示されている例示的な実施形態において、操作ハンドル10−1には、操作ハンドル10−1の操作部12と動作可能に連結されており、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81と動作可能に接続される第1のスライド部材30と、操作ハンドル10−1の操作部12と動作可能に連結されており、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82と動作可能に接続される第2のスライド部材40との合計2つのスライド部材が設けられている。
【0202】
図17a、bは、
図8による操作ハンドル10−1の例示的な実施形態に利用されるように適合されているスライド部材30、40の例示的な実施形態を示す。
【0203】
図17aを参照すると、第1のスライド部材30は、好ましくは第1の円筒部30’および第2の円筒部30’’を有する本体を備える。
【0204】
図16は、スライド部材30、40が操作ハンドル10−1内にどのように受け入れられるかを示す。
図16から分かるように、第1のスライド部材30の第1の円筒部30’は、力伝達機構として作用する第1のカテーテルチューブ91の近位端部と(ネジ2を用いて)接続されている。第1のカテーテルチューブ91の遠位端部は好ましくは、カテーテルチップ80−1(
図16には示されていない)の第1のスリーブ形状部材81と接続される。
【0205】
本開示のいくつかの実施形態による操作ハンドル10−1の第2のスライド部材40の例示的な実施形態が、
図17bに示されている。したがって、第2のスライド部材40も、第1の円筒部40’および第2の円筒部40’’を有する本体を備えてもよい。
図16を参照すると、第2のスライド部材40の第1の円筒部40’は、力伝達機構として作用する第2のカテーテルチューブ92の近位端部と(ネジ3を用いて)接続されている。第2のカテーテルチューブ92の遠位端部は好ましくは、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82(
図16には示されていない)と接続される。
【0206】
図16を参照すると、第1のスライド部材30および第2のスライド部材40にはそれぞれ、対応するピン部材32、42が設けられる。2つのピン部材32、42の各々は、2つのスライド部材30、40のうちの対応するものと接続される第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを有する。
【0207】
第1のスライド部材30および第2のスライド部材40は、カム機構50によって操作ハンドル10−1の操作部12と動作可能に連結されている。カム機構50は、把持部11に対する操作ハンドル10−1の操作部12の回転運動を、把持部11に対する第1のスライド部材30および/または第2のスライド部材40の直線運動に変換するように適合されている。
【0208】
より詳細には、
図8〜
図23に示されている操作ハンドル10−1の例示的な実施形態において、カム機構50は操作ハンドル10−1に一体化され、回転運動を直線運動に変換するように構成される。
【0209】
図8〜
図23に示されている例示的な実施形態において、カム機構50は、円筒部材51と本体部材52とを備える。カム機構50の円筒部材51の例示的な実施形態が
図13および
図14に示されており、一方で
図15は、カム機構50の本体部材52の例示的な実施形態を示す。
【0210】
ここで、
図13および
図14に示されている例示的な実施形態によれば、カム機構50は、操作ハンドル10−1の操作部12と接続されている少なくとも部分的に中空の円筒部材51を備えてもよい。好ましくは、少なくとも部分的に中空の円筒部材51および操作ハンドル10−1の操作部12は、一体的に形成される、すなわち、1つの材料片から作製される。
図8に示されている操作ハンドルの組み立てられた状態において、カム機構50の円筒部材51は、少なくとも部分的に(ジャケット状の)把持部11と同心円上かつ同軸上に配置され、円筒部材51は把持部11に対して相対的に回転可能である。
【0211】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態によれば、カム機構50は、
図15に示されている種類の本体部材52をさらに備える。
図15に示されているように、本体部材52は、少なくとも部分的に中空であってもよく、それによって、操作ハンドル10−1のスライド部材30、40は、スライド部材30、40が本体部材52に対して相対的に軸方向に移動可能であるように本体部材52内に収容される。それぞれのスライド部材30、40は好ましくは、中空の本体部材52の内面によって誘導されるように設計される。
【0212】
図8に示されている操作ハンドル10−1の組み立てられた状態において、本体部材52は、中空の円筒部材51と同心円上かつ同軸上に配置される。これに関連して、把持部11のない
図8による操作ハンドル10−1の例示的な実施形態を示す
図10も参照される。
【0213】
図8による操作ハンドル10−1の例示的な実施形態に利用されるカム機構50の本体部材53を斜視図において示す
図15が参照される。ここで、例示的な実施形態において、本体部材52は、中空の円筒部材51の内径よりも小さい直径を有する円筒部52aを備える。
【0214】
図11および
図12を参照すると、操作ハンドル10−1の組み立てられた状態において、本体部材52の円筒部52aは、中空の円筒部材51の内部に少なくとも部分的に受け入れられ、それによって、中空の円筒部材51は本体部材52に対して相対的に回転可能である。
【0215】
図15から分かるように、本体部材52は、操作ハンドル10−1の把持部11に固定されるように意図されている部分52bをさらに備える。より詳細には、本体部材52の、操作ハンドル10−1の組み立てられた状態において把持部11に固定されている部分52bは、円筒形であり、中空の円筒部材51の外径に等しいか、または実質的に等しい直径を有する少なくとも1つの部分を有する。
図8の描写から分かるように、(ジャケット状の)把持部11は、円筒部52bと同心円上かつ同軸上であるように、少なくとも部分的に本体部材52の円筒部52bの周囲に配置される。
【0216】
図10〜
図14を参照すると、操作ハンドル10−1の例示的な実施形態において、円筒部材51は、操作ハンドル10−1の各スライド部材30、40について、対応するカム溝31、41を備える。
図11および
図12に模式的に示されているように、スライド部材30、40の対応するピン部材32、42の第2の端部は、カム機構50の円筒部材51内に設けられている対応するカム溝31、41と係合する。操作ハンドル10−1の操作部12が把持部11に対して回転するとき、それぞれのピン部材32、42は、対応するカム溝31、41によって規定されるカムプロファイルに従う。
【0217】
特に
図11から分かるように、操作ハンドル10−1の例示的な実施形態において、操作ハンドル10−1の操作部12は、カム機構50の円筒部材51の直径よりも大きい直径を有する回転ホイールとして形成されてもよい。他方、操作ハンドル10−1の把持部11はジャケットとして形成されてもよく(
図10aおよび
図10b)、カム機構50の円筒部材51は、少なくとも部分的に把持部11と同心円上かつ同軸上に配置され、カム機構50の円筒部材51は把持部11に対して相対的に回転可能である。
【0218】
より詳細には、カム機構50の円筒部材51は好ましくは、少なくとも部分的に中空である。カム機構50は好ましくは、操作ハンドルの固定具としての役割を果たす本体部材52をさらに備える。
図16から分かるように、ステント・ホルダ・チューブ93の近位端部分は、操作ハンドルの本体部材52と接続され、ステント・ホルダ・チューブの遠位端部分は、カテーテルチップ80−1のステント保持要素85に固定されている。操作ハンドル10−1の組み立てられた状態において、本体部材52は、中空の円筒部材51と同心円上かつ同軸上に配置される。
【0219】
本体部材52に対する操作ハンドル10−1の操作部12の軸方向移動を防止するために、
図8〜
図23に示されている操作ハンドル10−1には、少なくとも1つのフランジ53が設けられる。これに関連して、
図11および
図12が参照される。少なくとも1つのフランジ53は、本体部材52と接続され、操作部12の後側54に当接する。その上、本体部材52は少なくとも部分的に中空であり、対応するスライド部材30、40は本体部材52内に受け入れられ、それによって、対応するスライド部材30、40は本体部材52に対して相対的に軸方向に移動可能である。
【0220】
図8〜
図23に示されている操作ハンドル10−1は、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−1を操作するように適合されている。より詳細には、操作ハンドル10−1は、密に圧縮された心臓代用弁150を収容するための座部を有するカテーテルチップ80−1の少なくとも1つのスリーブ形状部材81、82を操作するように設計されている。
【0221】
カム機構50の機能信頼性を確保するために、カム機構には、本体部材52に対するスライド部材30、40の回転を防止するための手段が設けられる。
【0222】
図8〜
図23に示されている例示的な実施形態において、本体部材52に対するスライド部材30、40の回転を防止するための手段は、スライド部材30、40に割り当てられている少なくとも1つの細長い孔33、43を含む。より詳細には、例示的な実施形態において、本体部材52には、各々が操作ハンドル10−1の長手方向軸Lに対して平行に延伸している合計2つの細長い孔33、43が設けられる。2つの細長い孔33、43の各々を通じて、2つのスライド部材30、40のうちの1つと接続されている1つのピン部材32、42は延伸している(
図11および
図12参照)。
【0223】
図8〜
図23に示されている操作ハンドル10−1の例示的な実施形態には、スライド部材30、40のうちの少なくとも1つ(好ましくは第2のスライド部材40)と操作ハンドル10−1の操作部12との間の動作可能な連結部を選択的に分離するための分離機構がさらに設けられる。
【0224】
分離機構20の例示的な実施形態が、
図18a、
図18b、
図19および
図20a〜
図20cを参照して以下に説明される。後述されるように、
図20a〜
図20cは、操作ハンドル10−1の操作部12が把持部11に対して回転するときに、本体部材52に対する少なくとも1つのスライド部材30、40の回転を阻害するためのブロック機構をも示す。
【0225】
より詳細には、
図18aおよび
図18bは、操作ハンドル10−1のカム機構50のスライド部材30、40と操作ハンドル10−1の操作部12との間の動作可能な連結部を選択的に分離するための分離機構の例示的な実施形態を説明するため、
図8による操作ハンドルの断面図を示す。
【0226】
図19は、
図8による操作ハンドル10−1の例示的な実施形態の後側(閉じている)を斜視図で示し、
図20a〜
図20cは、操作ハンドル10−1の操作部12が把持部11に対して回転するときに、本体部材52に対する少なくとも1つのスライド部材30、40の回転を阻害するためのブロック機構を説明するための、
図19による操作ハンドル10−1の(開いた)後側を示す。
【0227】
よって、分離機構20は、カム機構50の2つのピン部材32、42のうちの1つと動作可能に接続されているピン部材操作要素21を備える。ピン部材操作要素21は、対応するピン部材32、42が対応するカム溝31、41と係合する第1の位置から、対応するピン部材32、42が対応するカム溝31、41から解放される第2の位置へと駆動可能である。
【0228】
図18aおよび
図18bに示されている実施形態において、分離機構20は、第2のスライド部材40(
図16参照)と接続されており、通常、中空の円筒部材51(
図11〜
図14参照)内に設けられている第2のカム溝41と係合しており、それによって、操作部12が把持部11に対して回転するとき、第2のピン部材42が第2のカム溝41によって規定されるカムプロファイルに従うカム機構50の第2のピン部材42と、相互作用するように適合されている。
【0229】
図18aおよび
図18bにおける描画から、第2のピン部材42と、中空の円筒部材51内に設けられている第2のカム溝41との間の係合は認識可能である。したがって、
図18aに示されている通常操作の間、第2のピン部材42の第1の端部は、第2のスライド部材40内に設けられている凹部22内に少なくとも部分的に受け入れられ、それによって、第2のピン部材42は、凹部22によって規定される長手方向において、すなわち、中空の円筒部材51に対する半径方向において、第2のスライド部材40に対して相対的に移動可能である。
【0230】
ピン部材操作要素21は、第2のピン部材42、特に第2のピン部材42の第1の端部分と動作可能に接続されている第1の端部分を有するレバーアーム23を備える。ピン部材操作要素21のレバーアーム23は、第1の端部分の反対側の第2の端部分をさらに有する。レバーアーム23の第2の端部分は、レバーアーム23をそれに接続されている第2のピン部材42を用いて動かすために、操作バー24と動作可能に接続されている。
【0231】
図16に示されているように、分離機構20の操作バー24は、スライド部材30、40が操作バー24に対して相対的に移動可能であるように、操作ハンドル10−1の内部を通じて、より詳細には、少なくとも部分的に中空の本体部材52内に受け入れられている第1のスライド部材30および第2のスライド部材40を通じて、また、操作ハンドル12の遠位正面を通じて延伸する棒状要素であってもよい。操作ハンドル12の遠位正面に、操作バー24、そして分離機構20を操作するための操作ノブ25が設けられている。操作バー24は好ましくは、レバーアーム23の第2の端部分との対応する相互作用を可能にする断面、たとえば、矩形断面を有する。操作ノブ25を旋回させると、操作バー24が旋回され、レバーアーム23が
図18aに示されている位置から
図18bに示されている位置へと移行する。
【0232】
図18aおよび
図18bに示されている例示的な実施形態において、第2のピン部材42は、操作バー24および操作バー24と動作可能に接続されているレバーアーム23によって、ピン部材42の第2の端部が、対応するカム溝41と係合する結合状態(
図18a参照)から、ピン部材40の第2の端部がカム溝41を解放し、ピン部材操作要素21が、カム機構50の本体部材52内に設けられているさらなる凹部49と少なくとも部分的に係合し、それによって、把持部11に対する操作ハンドル10−1の操作部12が回転するとき、本体部材52に対するスライド部材40の軸方向移動が阻害される、非結合状態へと移行可能である。
【0233】
図20a〜
図20cに示されているように、操作バー24には、ブロック部材26がさらに設けられる。第2のピン部材42をその結合状態からその非結合状態に動かすために操作バー24を回転させるとき、操作バー24は、ブロック部材26も操作する。より詳細には、ブロック部材26は止めピン27を半径方向外側に動かし、それによって、止めピン27は、操作部12が円筒部材51とともに把持部11に対して相対的に回転されるときに、円筒部材51に設けられている本体止め28に当接する。
【0234】
図20a〜
図20cに示されている例示的な実施形態において、本体止め28は、ディスク部材29から軸方向に延伸するピンとして形成される。操作ハンドル10−1の操作部12の一部であるディスク部材29は、操作ハンドル10−1の長手方向軸L上の中心ピン13を中心として回動可能であるように、フランジ53に配置されている。
【0235】
図16または
図20a〜
図20cから分かるように、ディスク部材29は、2つの引張バネ14を介して付勢される。操作部の内部で半径方向に延伸するように操作部12と接続されているネジ4が、把持部11に対して操作部12が回転するとき、本体止め28と相互作用する。したがって、操作部12が把持部11に対して回転し続けることが、分離機構20が起動されると即座に阻害される。
【0236】
2つの引張バネ14によって構成されるバネ機構が、操作部12が把持部11に対して相対的に回転されるときに、操作部12をリセットする役割を果たす。より詳細には、ネジ4が本体止め28に当接し(
図20b参照)、操作部12が把持部11に対してさらに相対的に回転される(
図20c参照)とき、操作部12と接続されているネジ4によって引張荷重が加えられると、2つの引張バネ14は伸張される。2つの引張バネ14は、ネジ4によって加えられる引張荷重によって動作するように設計されている。ネジ4によって引張バネ14に引張荷重が加えられた後、伸張した引張バネ14が、操作ハンドルの操作部12を、
図20bに示されている状態に、すなわち、ネジ4が本体止め28に接し始める状態にリセットする。
【0237】
操作ハンドル10−1の操作部12を把持部11に対して相対的に旋回させると、操作ハンドル10−1内に受け入れられているスライド部材30、40が、操作ハンドル10−1の長手方向Lの方向において軸方向に動かされる。同時に、カテーテルシャフト90によって操作ハンドル10−1に動作可能に接続されているカテーテルチップ80−1の対応するスリーブ形状部材81、82が、これらのスリーブ形状部材81、82が力伝達機構によって操作ハンドル10−1の対応するスライド部材30、40と動作可能に接続されているために、軸方向に動かされる。
【0238】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態において、第1のスライド部材30は、第1のカテーテルチューブ91によってカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81と動作可能に接続され、第2のスライド部材40は、第2のカテーテルチューブ92によってカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82と動作可能に接続される。したがって、操作ハンドル10−1の操作部12が操作ハンドル10−1の把持部11に対して回転するとき、第1のスライド部材30は、カテーテルチップ80−1の動作可能に接続されている第1のスリーブ形状部材81とともに、軸方向に動かされ得る。この軸方向移動から独立して、第2のスライド部材40も、カテーテルチップ80−1の動作可能に接続されている第2のスリーブ形状部材82とともに、軸方向に動かされ得る。
【0239】
操作ハンドル10−1の操作部12を把持部11に対して旋回させるときに、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークは、第1のスライド部材30の第1のピン部材32が係合している第1のカム溝31のカムプロファイルによって規定される。同様に、操作ハンドル10−1の操作部12を把持部11に対して旋回させるときに、カテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークは、第2のスライド部材40の第2のピン部材42が係合している第2のカム溝41のカムプロファイルによって規定される。
【0240】
したがって、第1のカム溝31および第2のカム溝41に対応するカムプロファイルを選択することによって、操作ハンドル10−1の操作部12を把持部11に対して旋回させるときに、カテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82の事前規定可能な一連の軸方向移動を得ることができる。
【0241】
逆行性心臓弁移植のためのカテーテル送達システムのために適合されている操作ハンドル10−1の好ましい実施形態において、第1のカム溝31および第2のカム溝41のそれぞれのカムプロファイルは、カテーテルチップ80−1が以下のように操作されるように選択される、すなわち、
・操作ハンドル10−1の操作部12を第1の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるとき、第1のスライド部材30はカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81とともに、近位方向において操作ハンドル10−1に対して軸方向に動かされ、一方で、第2のスライド部材40はカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82とともに、操作ハンドル10−1に対して相対的に動かされない、
・操作ハンドル10−1の操作部12を第1の角度範囲に続く第2の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるとき、第2のスライド部材40はカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82とともに、遠位方向において操作ハンドル10−1に対して相対的に軸方向に動かされ、一方で、第1のスライド部材30はカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81とともに、操作ハンドル10−1に対して相対的に動かされない、
・操作ハンドル10−1の操作部12を第2の角度範囲に続く第3の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるとき、第1のスライド部材30はカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81とともに、再び、近位方向において操作ハンドル10−1に対して相対的に軸方向に動かされ、一方で、第2のスライド部材40はカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82とともに、操作ハンドル10−1に対して相対的に動かされない。
【0242】
したがって、カテーテルチップ80−1が、操作ハンドル10−1の操作部12を第1の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させることによって、第1の機能状態(たとえば、
図6a参照)から第2の機能状態(たとえば、
図6b参照)へ、その後、操作ハンドル10−1の操作部12を第1の角度範囲に続く第2の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させることによって、第2の機能状態(たとえば、
図6b参照)から第3の機能状態(たとえば、
図6c参照)へ、その後、操作ハンドル10−1の操作部12を第2の角度範囲に続く第3の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させることによって、第3の機能状態(たとえば、
図6c参照)から第4の機能状態(たとえば、
図6d参照)へと段階的に移行するように、操作ハンドル10−1は、操作ハンドル10−1と動作可能に接続されているカテーテルチップ80−1を操作することを可能にする。
【0243】
操作ハンドル10のいくつかの実施形態によれば、第1のカム溝31および第2のカム溝41のカムプロファイルは、操作ハンドル10−1の操作部12を第1の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるときにカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークが、近位方向において20mm〜34mm、好ましくは近位方向において24mm〜30mm、より好ましくは近位方向において26mm〜28mmであるように選択される。
【0244】
また、第1のカム溝31および第2のカム溝41のカムプロファイルは好ましくは、操作ハンドル10−1の操作部12を第1の角度範囲に続く第2の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるときにカテーテルチップ80−1の第2のスリーブ形状部材82に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークが、遠位方向において6mm〜18mm、好ましくは遠位方向において9mm〜15mm、より好ましくは遠位方向において11mm〜13mmであるように選択される。
【0245】
加えて、第1のカム溝31および第2のカム溝41のカムプロファイルは好ましくは、操作ハンドル10−1の操作部12を第2の角度範囲に続く第3の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるときにカテーテルチップ80−1の第1のスリーブ形状部材81に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークが、近位方向において6mm〜18mm、好ましくは近位方向において9mm〜15mm、より好ましくは近位方向において11mm〜13mmであるように選択される。
【0246】
把持部11に対して回転されるときの操作ハンドル10−1の操作部12の利用可能な最大旋回運動を細分化するために、また、操作部12が把持部11に対して旋回可能であるそれぞれの角度範囲を分離するために、いくつかの実施形態による操作ハンドル10−1には、対応するロック機構70が設けられる。
【0247】
いくつかの実施形態によれば、ロック機構70は、カム機構50の円筒部材51内に設けられる少なくとも1つのロック凹部71−1、71−2を備える。さらに、ロック機構70には、本体部材52と動作可能に接続されている少なくとも1つの係合片72が設けられる。係合片72は、少なくとも1つのロック凹部71−1、71−2と解放可能に係合するように適合されており、それによって、操作ハンドル10の本体部材52に対する円筒部材51の連続的な回転を防止する。
【0248】
図21は、ロック機構70の例示的な実施形態を斜視図において示し、
図22は、
図21によるロック機構70を側断面図において示す。
【0249】
本開示のいくつかの態様によれば、ロック機構70は、係合片72が少なくとも1つのロック凹部71−1、71−2と係合しているときに係合片72を解放するための操作要素を備える。
【0250】
図23a〜
図23cは、
図21によるロック機構の操作要素の例示的な実施形態を示す。
【0251】
この実施形態において、係合片72はバネ荷重され、操作要素は、係合片72と動作可能に接続されているバネ荷重押しボタン73を備える。押しボタン73は、ユーザによって、係合片72を解放するために押されるように設計されている。
【0252】
操作要素は、押しボタン73がユーザによって押下されるときに係合片72を押し下げるための、押しボタン73と接続されているレバー74をさらに備える。さらに、操作要素は、押しボタン73を押す方向に垂直な面内で枢動可能であるようにピン76の要素によってレバー74に結合されている第1の端部分を有し、押しボタン73がユーザによって押下されるときに係合片72を押し下げるための第2の端部分をさらに有する駆動片75を備える。
【0253】
駆動片75は、押しボタン73がユーザによって押下されるときで、かつ、操作ハンドル10−1の円筒部材51が本体部材52に対して相対的に同時に回転されるときに、駆動片75がレバー74に対してレバーに対して相対的に外方に振れるように、レバー74に結合されている。駆動片75の第2の端領域は、駆動片75がレバー74に対して相対的に外方に振れるときに、係合片72と接触しなくなる。
【0254】
操作要素は、押しボタン73が解放されるときに駆動片75を戻すためのセンタリング要素77をさらに備えてもよい。好ましい実施形態において、センタリング要素76は、少なくとも1つのバネ部材を備えてもよい。
【0255】
本明細書に開示されているような種類のロック機構70は、カテーテルチップ80−1の段階的な操作を保証する。より詳細には、ロック機構70は、押しボタン73が連続的に押されるときに、操作ハンドル10−1の操作部12がユーザによって、利用可能な最大旋回角度範囲を通じて把持部11に対して相対的に回転され得ることを防止する。
【0256】
図21に示されている例示的な実施形態において、ロック機構70は、操作部12の利用可能な最大旋回運動を、操作部12の複数の連続的な間欠旋回運動に細分化するように、カム機構50の円筒部材51内に設けられている複数のロック凹部71−1、71−2を備える。
【0257】
より詳細には、
図21に示されている例示的な実施形態において、ロック機構70は、円筒部材51内に設けられる第1のロック凹部71−1を備え、それによって、ロック機構70の係合片72が第1のロック凹部71−1と係合するときに、カム機構50のピン部材32、42がそれらの対応するカム溝31、41の始部にある。
【0258】
さらに、ロック機構70は、円筒部材51内に設けられる少なくとも1つの第2のロック凹部71−2を備え、それによって、ロック機構70の係合片72が少なくとも1つの第2のロック凹部71−2と係合するときに、カム機構50のピン部材32、42がそれらの対応するカム溝31、41の中央部にある。
【0259】
また、ロック機構70は、円筒部材51内に設けられる第3のロック凹部を備え、それによって、ロック機構70の係合片72が第3のロック凹部と係合するときに、カム機構のピン部材32、42が両方共それらの対応するカム溝31、41の終部にある。
【0260】
拡張可能心臓代用弁の順行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−2の例示的な実施形態を部分断面側面図において例示的に示す
図24を以下に参照する。
【0261】
図24に示されているカテーテルチップ80−2には、心臓代用弁150、たとえば、
図3を参照して説明されたような種類の心臓代用弁を収容するための、カテーテルチップ80−2の座部を画定する第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82が設けられる。
【0262】
カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81は、第1のカテーテルチューブ91によって、
図24には示されていない操作ハンドル10−2の第1のスライド部材30−2と接続される。第2のスリーブ形状部材82は、第2のカテーテルチューブ92によって、操作ハンドル10−2の第2のスライド部材40−2と接続される。第2のカテーテルチューブ92は第1のカテーテルチューブ91によって画定される空洞内に配置される。
【0263】
また、心臓代用弁150の少なくとも1つのカテーテル保持要素123と解放可能に接続するための取り付け要素86を有する冠部を備えるステント保持要素85が提供される。ステント保持要素85は、ステント・ホルダ・チューブ93によって操作ハンドル10−2の固定具45と接続される。
【0264】
順行性アクセスのために設計されている、
図24に示されているカテーテルチップ80−2において、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81は漏斗状ステントの形態にあり、その開口はカテーテルチップ80−2の遠位端の方向を指す。心臓弁ステント100の保持アーチ116は、第1のスリーブ形状部材81の内部に載置され得る。漏斗状ステントの形態にある第1のスリーブ形状部材81は、カテーテルチップ80−2が閉じた状態(
図24参照)にあるときは、好ましくはステントシースの形態にある第2のスリーブ形状部材82によって伸縮自在に収容され得る。このように、心臓弁ステント150がカテーテルチップ80−2内に取り付けられるとき、カテーテルチップ80−2内に収容されている心臓弁ステント100の位置決めアーチ115が、漏斗状ステントの外周面と、ステントシースの内周面との間に位置する。
【0265】
順行挿入システムの操作ハンドル10−2に関して、これは、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81と関連付けられる第1のスライド部材30と、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82と関連付けられる第2のスライド部材40とを有する。第1のスライド部材30は、第1のスライド部材30が作動すると、第1のスリーブ形状部材81の事前規定可能な長手方向変位が、ステントホルダに対して影響を受け得るように、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81と協働する。加えて、操作ハンドルの第2のスライド部材は、第2のスライド部材が作動すると、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材の事前規定可能な長手方向変位が、カテーテルチップ80−2のステント保持要素85(ステントホルダ)に対して影響を受け得るように、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材と協働する。
【0266】
順行的に実行される心臓弁ステントを移植するための手技が、
図25a〜
図25dを参照して以下により詳細に説明される。
【0267】
詳細には、
図25a〜
図25dは、カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−2内に収容されている心臓弁ステント100の解放手技を説明するための、複数の異なる機能状態にある拡張可能心臓代用弁200の順行挿入のための医療用カテーテル送達システムのカテーテルチップ80−2の例示的な実施形態を模式的に示す。
【0268】
対応するカテーテルチップ80−2を有するカテーテル送達システムの遠位端領域が、
図25aの表現において詳細に示されており、これによれば、カテーテルチップ80−2はその第1の機能状態にある。拡張可能心臓弁ステントがカテーテルチップ80−2内に収納されている。
【0269】
図25aの描画において、カテーテルチップ80−2はその第1の機能状態にあり、この状態において、心臓弁ステント100のカテーテル保持要素123は、カテーテルチップ80−2のステント保持要素85(ステントホルダ)と係合しており、一方で、心臓弁ステント100の保持アーチ116は、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81(漏斗状ステント)内に収納されている。
【0270】
カテーテルチップ80−2の第1の機能状態における心臓弁ステント100の位置決めアーチ115は、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材とカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81との間にあり、それによって、2つのスリーブ形状部材81、82は、伸縮自在に重なり合うように配列される。特に、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82は、以下の構成要素、すなわち、心臓弁ステント100のカテーテル保持アーチ116と、心臓弁ステント100の位置決めアーチ115と、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81とを被覆する。
【0271】
ステント100のカテーテル保持要素85から遠隔している心臓弁ステント100の流入領域は、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81内に収納されている。
図25aに示されている状態にあるカテーテルチップ80−2は、たとえば、心尖からのアプローチによって順行的に元々の心臓弁に進められる。
【0272】
カテーテルチップ80−2内に収容されている心臓弁ステント100を有するカテーテルチップ80−2が所望の移植位置まで進められると、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82は、操作ハンドル10−2の第2のスライド部材40を操作することによって遠位方向に動かされる。結果として、カテーテル送達システムからの心臓弁ステント100の適切な段階的解放に従って、心臓弁ステント100の位置決めアーチ115が解放される。これは、操作ハンドル10−2の第2のスライド部材40を操作することによって、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82を遠位方向に、したがって操作ハンドル10−2から外方に、ステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に動かすことによってカテーテルチップ80−2を第1の機能状態から第2の機能状態へと移行させることによって達成される。
【0273】
ステントホルダに対して発揮される、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82の長手方向変位ストロークは、心臓弁ステント100の位置決めアーチ115がもはや、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82によって取り囲まれず、保持もされない。ステント100の位置決めアーチ115の自己拡張可能特性の結果として、これらは半径方向においてそれらに作用する半径方向力のために開かれる。開いた位置決めアーチ115はその後、元々の心臓弁のポケットT内に位置決めされる。
【0274】
カテーテルチップ80−2は、カテーテルチップ80−2の長手方向軸Lを中心としてカテーテル送達システムとともに旋回することができ、元々の心臓弁のポケットT内でステント100の展開した位置決めアーチ115を位置決めするのが容易になる。
【0275】
部分的に拡張された心臓弁ステント100が元々の心臓弁のポケットT内に位置決めされた後、カテーテルチップ80−2は、
図25bによる第2の機能状態から、
図25cによる第3の機能状態へと移行する。
【0276】
より詳細には、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81が、操作ハンドル10−2の第1のスライド部材30を操作することによって、近位方向においてステント保持要素85(ステントホルダ)に対して相対的に動かされる。その後、心臓弁ステント100の保持アーチ116が解放される。半径方向においてそれらに作用される半径方向力に起因して、ステント100の保持アーチ116に取り付けられている人工心臓弁200は、傘のように展開する。
【0277】
すでに展開した人工心臓弁200の機能が、その後、
図25cに示されている状態において検査され得る。人工心臓弁の機能が実証された後、カテーテルチップ80−2は、その後、操作ハンドル10−2の第2のスライド部材をさらに操作することによって、第3の機能状態(
図25c参照)から第4の機能状態(
図25d参照)へと移行することができる。
【0278】
より詳細には、操作ハンドル10−2の第2のスライド部材40を操作することによって、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82は、遠位に(操作ハンドル10−2から外方に)動かされる。結果として、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82はもはや、カテーテルチップ80−2のステント保持要素85(ステントホルダ)を被覆しない。このように、カテーテルチップ80−2のカテーテル先端94に向き合うステント100の(流出)領域がカテーテルチップ80−2から解放され、それによって、ステント100の流出領域も拡張し、結果として、心臓弁ステント100の完全な展開がもたらされる。
【0279】
対照的に、
図25cに従って、カテーテルチップ80−2の第3の機能状態においてすでに展開した人工心臓弁200の機能の検査中に、移植された人工心臓弁200がその機能を遂行することができない、もしくは、適切にしか遂行することができないことが分かった場合、または、心臓弁ステント100が移植サイドに最適に位置決めされていない、もしくは、最適に位置決めすることができない場合、カテーテルチップ80−2の対応するスリーブ形状部材81、82が適当な反対方向に動くことによって、カテーテルチップ80−2が第2の機能状態に、およびその後、第1の機能状態に後戻りしうる。これによって、心臓弁ステント100のすでに解放および拡張された構成要素が再びカテーテルチップ80−2のそれぞれのスリーブ形状部材81、82内に後戻りすることが可能であり、それによって、カテーテルチップ80−2内に収納されているステント100を患者の身体から取り除くことができる。
【0280】
図25dに示されているように、心臓弁ステント100が移植されると、心臓弁ステント100の保持アーチ116はそれらの半径方向において開き、これによって、保持アーチ116に作用し、心臓弁ステント100の流入領域にも作用する半径方向力の結果として、ステントは血管壁に対して圧迫される。一方では、人工心臓弁200が取り付けられている心臓弁ステント100が移植サイドに確実に固定されることが保証され、他方では、心臓弁ステント100がステント100の流入領域内に信頼可能に封止されることが保証される。
【0281】
拡張可能心臓代用弁150の順行挿入のための医療用カテーテル送達システムの操作ハンドル10−2の例示的な実施形態が、
図26〜
図29に示されている。構造的および機能的観点から、順行性カテーテル送達システムの操作ハンドル10−2は、
図8〜
図23を参照してすでに説明された経大腿的カテーテル送達システムの操作ハンドル10−1にほとんど対応するが、ここでは2つのカム溝32、42の形状が異なっている。
【0282】
図26に示されているように、順行挿入のための操作ハンドル10−2は、ユーザによって保持されるように設計されている把持部11と、把持部11と軸方向に整列されている操作部12とを備える。操作ハンドル10−2の操作部12は、操作ハンドル10−2によって規定される長手方向軸Lを中心として把持部11に対して相対的に回転可能である。より詳細には、
図26〜
図29に示されている実施形態において、操作ハンドル10−2の操作部12は、ユーザによって一方の手を用いて把持されるように設計されている回転ホイールであり、一方で、他方の手は、把持部11を保持する。
【0283】
図28および
図29に模式的に示されているように、操作ハンドル10−2は、
図17aおよび
図17bを参照してすでに説明されたような種類の第1のスライド部材30および第2のスライド部材40をさらに備える。第1のスライド部材30および第2のスライド部材40は、操作部12が把持部11に対して回転すると、少なくとも1つのスライド部材30、40が長手方向軸Lの方向において軸方向に動くように、カム機構50によって操作ハンドル10−2の操作部12と動作可能に連結されている。
【0284】
図28および
図29を参照すると、第1のスライド部材30は、第1のカテーテルチューブ91の近位端部分と動作可能に接続されており、上記第1のカテーテルチューブ91は、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81と動作可能に接続されている反対側の遠位端部分も有し、それによって、操作ハンドル10−2の第1のスライド部材30を操作すると、その結果としてカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81がそれに応じて直接操作される。また、第2のスライド部材40が、第2のカテーテルチューブ92の近位端部分と動作可能に接続されている。第2のカテーテルチューブ92は近位端部分の反対側の遠位端部分を有し、上記第2のカテーテルチューブ92の遠位端部分は、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82と動作可能に接続されており、それによって、操作ハンドル10−2の第2のスライド部材40を操作すると、その結果としてカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82がそれに応じて直接操作される。
【0285】
好ましくは、カム機構50は、操作ハンドル10−2内に一体化されており、把持部11に対する操作部12の回転運動を、把持部11に対する少なくとも1つのスライド部材30、40の直線運動に変換する。
【0286】
図27に示されているように、順行挿入のための操作ハンドル10−2のカム機構50は、操作ハンドル10−2の操作部12と接続されている少なくとも部分的に中空の円筒部材51を備える。少なくとも部分的に中空の円筒部材51には、第1のスライド部材30に割り当てられる第1のカム溝31、および、第2のスライド部材40に割り当てられる第2のカム溝41が設けられている。
【0287】
図28および
図29に模式的に示されているように、順行挿入のための操作ハンドル10−2のカム機構50は2つのピン部材32、42をさらに備え、それらの各々が、2つのスライド部材30、40のうちの対応するものと接続されている第1の端部を有する。2つのピン部材32、42の各々は、対応する第1の端部の反対側の第2の端部をも有する。2つのピン部材32、42の各々の第2の端部は、2つのカム溝31、41のうちの対応するものと係合し、それによって、操作部12が把持部11に対して回転すると、ピン部材32、42は対応するカム溝31、41によって規定されるカムプロファイルに従う。
【0288】
好ましくは、順行挿入のための操作ハンドル10−2の把持部11は、ジャケット(
図9aおよび
図9b)として形成される。また、カム機構50の円筒部材51は、少なくとも部分的に把持部11と同心円上かつ同軸上に配置され、カム機構50の円筒部材51は把持部11に対して相対的に回転可能である。
【0289】
図28および
図29に模式的に示されているように、カム機構50の円筒部材51は少なくとも部分的に中空である。さらに、操作ハンドル10−2のカム機構50は、中空の円筒部材51と同心円上かつ同軸上に配置されている本体部材52を備える。
【0290】
操作ハンドル10−2の操作部12を把持部11に対して相対的に旋回させると、操作ハンドル10−2内に受け入れられているスライド部材30、40が、操作ハンドル10−2の長手方向Lの方向において軸方向に動かされる。同時に、カテーテルシャフト90によって操作ハンドル10−2に動作可能に接続されているカテーテルチップ80−2の対応するスリーブ形状部材81、82が、これらのスリーブ形状部材81、82が力伝達部材によって操作ハンドル10−2の対応するスライド部材30、40と動作可能に接続されているために、軸方向に動かされる。
【0291】
本明細書に開示されている順行性カテーテル送達システムのいくつかの実施形態において、操作ハンドル10−2の第1のスライド部材30は、第1のカテーテルチューブ91によってカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81に動作可能に接続され、第2のスライド部材40は、第2のカテーテルチューブ92によってカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82と動作可能に接続される。したがって、操作ハンドル10−2の操作部12が操作ハンドル10−2の把持部11に対して回転するとき、第1のスライド部材30は、カテーテルチップ80−2の動作可能に接続されている第1のスリーブ形状部材81とともに、軸方向に動かされ得る。この軸方向運動から独立して、第2のスライド部材40も、カテーテルチップ80−2の動作可能に接続されている第2のスリーブ形状部材82とともに、軸方向に動かされ得る。
【0292】
操作ハンドル10−2の操作部12を把持部11に対して旋回させるときに、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークは、第1のスライド部材30の第1のピン部材32が係合している第1のカム溝31のカムプロファイルによって規定される。同様に、操作ハンドル10−2の操作部12を把持部11に対して旋回させるときに、カテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークは、第2のスライド部材40の第2のピン部材42が係合している第2のカム溝41のカムプロファイルによって規定される。
【0293】
したがって、第1のカム溝31および第2のカム溝41に対応するカムプロファイルを選択することによって、操作ハンドル10−2の操作部12を把持部11に対して旋回させるときに、カテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81および第2のスリーブ形状部材82の事前規定可能な一連の軸方向移動を得ることができる。
【0294】
順行性心臓弁移植のためのカテーテル送達システムのために適合されている操作ハンドル10−2の好ましい実施形態において、第1のカム溝31および第2のカム溝41のそれぞれのカムプロファイルは、カテーテルチップ80−2が以下のように操作されるように選択される、すなわち、
・操作ハンドル10−2の操作部12を第1の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるとき、第2のスライド部材40はカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82とともに、遠位方向において操作ハンドル10−2に対して軸方向に動かされ、一方で、第1のスライド部材30はカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81とともに、操作ハンドル10−2に対して相対的に動かされない、
・操作ハンドル10−2の操作部12を第1の角度範囲に続く第2の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるとき、第1のスライド部材30はカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81とともに、近位方向において操作ハンドル10−2に対して相対的に軸方向に動かされ、一方で、第2のスライド部材40はカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82とともに、操作ハンドル10−2に対して相対的に動かされない、
・操作ハンドル10−2の操作部12を第2の角度範囲に続く第3の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるとき、第2のスライド部材40はカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82とともに、再び、遠位方向において操作ハンドル10−2に対して相対的に軸方向に動かされ、一方で、第1のスライド部材30はカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81とともに、操作ハンドル10−2に対して相対的に動かされない。
【0295】
したがって、順行挿入のための操作ハンドル10−2は、操作ハンドル10−2の操作部12を第1の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させることによって、第1の機能状態(たとえば、
図25a参照)から第2の機能状態(たとえば、
図25b参照)へ、その後、操作ハンドル10−2の操作部12を第1の角度範囲に続く第2の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させることによって、第2の機能状態(たとえば、
図25b参照)から第3の機能状態(たとえば、
図25c参照)へ、その後、操作ハンドル10−2の操作部12を第2の角度範囲に続く第3の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させることによって、第3の機能状態(たとえば、
図25c参照)から第4の機能状態(たとえば、
図25d参照)へとカテーテルチップ80−2が段階的に移行するように、操作ハンドル10−2と動作可能に接続されているカテーテルチップ80−2を操作することを可能にする。
【0296】
操作ハンドル10−2のいくつかの実施形態によれば、第1のカム溝31および第2のカム溝41のカムプロファイルは、操作ハンドル10−2の操作部12を第1の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるときにカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークが、遠位方向において20mm〜34mm、好ましくは遠位方向において24mm〜30mm、より好ましくは遠位方向において26mm〜28mmであるように選択される。
【0297】
また、第1のカム溝31および第2のカム溝41のカムプロファイルは好ましくは、操作ハンドル10−2の操作部12を第1の角度範囲に続く第2の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるときにカテーテルチップ80−2の第1のスリーブ形状部材81に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークが、近位方向において6mm〜18mm、好ましくは近位方向において9mm〜15mm、より好ましくは近位方向において11mm〜13mmであるように選択される。
【0298】
加えて、第1のカム溝31および第2のカム溝41のカムプロファイルは好ましくは、操作ハンドル10−2の操作部12を第2の角度範囲に続く第3の角度範囲を通じて把持部11に対して旋回させるときにカテーテルチップ80−2の第2のスリーブ形状部材82に作用する長手方向(軸方向)変位ストロークが、遠位方向において6mm〜18mm、好ましくは遠位方向において9mm〜15mm、より好ましくは遠位方向において11mm〜13mmであるように選択される。
【0299】
把持部11に対して回転されるときの操作ハンドル10−2の操作部12の利用可能な最大旋回運動を細分化するために、また、操作部12が把持部11に対して旋回可能であるそれぞれの角度範囲を分離するために、順行挿入のための操作ハンドル10−2には、
図21〜
図23を参照してすでに説明されたような種類の対応するロック機構70が設けられる。
【0300】
また、順行挿入のための操作ハンドル10−2には好ましくは、
図19および
図20を参照してすでに説明されたような種類の対応する分離機構20も設けられる。
【0301】
心臓代用弁の順行または逆行挿入のためのカテーテル送達システムのいくつかの実施形態によれば、操作ハンドル10−1、10−2をカテーテルチップ80−1、80−2と接続するカテーテルシャフト90は、少なくとも部分的に伸縮自在に配置される複数のカテーテルチューブ91、92、93によって構成される。カテーテルシャフト90の複数のカテーテルチューブ91、92、93の少なくともいくつかは、好ましくは、柔軟で殺菌可能な材料から作製される。これらの材料としては、たとえば、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン、ポリイミド、PEEK、PETおよび/またはポリエーテルブロックアミド、たとえば、Pebax(登録商標)が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態において、カテーテルシャフト90の少なくとも1つの内部カテーテルチューブ92、93は、ニチノールまたはステンレス鋼または剛性プラスチック材料から作製される。
【0302】
さらに、カテーテルチューブ91、92、93は好ましくは、少なくとも部分的に編組ワイヤ構造から作製される。これに関して、カテーテルチューブ91、92、93によって構成されるカテーテルシャフト90は、操作ハンドル10−1、10−2からの、特に、操作ハンドル10−1、10−2の対応する操作機構(スライド部材30、40)からの圧縮力および張力を、その全長を過度に変化させることなくカテーテルチップ80−1、80−2に伝達するように適合されている。
【0303】
心臓代用弁の順行または逆行挿入のためのカテーテル送達システムのいくつかの実施形態において、カテーテルシャフト90は、少なくとも部分的に伸縮自在に配置されている複数のカテーテルチューブ91、92、93によって構成され、最も外側のカテーテルチューブ(第1のカテーテルチューブ91)は、少なくとも部分的に、カテーテルチップ80−1、80−2の断面直径、特に、カテーテルチップ80−1、80−2の近位スリーブ形状部材(第1のスリーブ形状部材81)の断面直径に対応する断面直径を有し、それによって、カテーテルシャフト90とカテーテルチップ80−1、80−2との間の一切の間隙または段差が回避される。
【0304】
好ましい実施形態において、心臓弁欠陥の治療のための医療デバイスは、心臓代用弁150を患者の身体内に、順行的または逆行的に導入するように適合されているカテーテル送達システムを備え、心臓代用弁は、たとえば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2010/086460号パンフレット(国際出願第PCT/EP2010/052429号明細書)に開示されているような心臓弁ステント100を備える。その上、心臓代用弁150は好ましくは、たとえば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2011/147849号パンフレット(国際出願第PCT/EP2011/058506号明細書)に開示されているような人工心臓弁200を備える。
【0305】
開示されているいくつかの実施形態によれば、操作ハンドル10−1、10−2には、少なくとも1つのカム溝31、41を有する円筒部材51を備えるカム機構50が設けられる。円筒部材51は、操作ハンドル10−1、10−2の把持部11に対して、および、把持部11と接続されている本体部材52に対しても相対的に回転可能であるように、操作ハンドル10−1、10−2の操作部12と接続されている。少なくとも1つのスライド部材30、40は本体部材52内に受け入れられ、それによって、少なくとも1つのスライド部材30、40は本体部材52に対して相対的に軸方向に移動可能である。カム機構50は、少なくとも1つのスライド部材30、40と接続されている第1の端部を有し、第1の端部の反対側の第2の端部をさらに有する少なくとも1つのピン部材32、42をさらに備え、少なくとも1つのピン部材32、42の第2の端部は少なくとも1つのカム溝31、41と係合し、それによって、操作部12が把持部11に対して回転するとき、少なくとも1つのピン部材32、42は、少なくとも1つのカム溝31、41によって規定されるカムプロファイルに従う。
【0306】
少なくとも1つのカム溝31、41によって規定されるカムプロファイルは、操作ハンドル10−1、10−2のカム機構50を特性化する変位線図が、操作ハンドル10−1、10−2の操作部12が円筒部材51とともに、操作ハンドル10−1、10−2によって規定される長手方向軸Lを中心として操作ハンドル10−1、10−2の把持部11に対して相対的に回転するときに、少なくとも1つのスライド部材30、40の軸方向位置の段階的な変化を提供するように選択される。
【0307】
好ましくは、操作ハンドル10−1、10−2には、操作部12の把持部11に対して相対的に回転されるときの利用可能な最大旋回運動を細分化するためのロック機構70も設けられる。ロック機構70は、操作部12の利用可能な最大旋回運動を、操作部12の複数の連続的な間欠旋回運動に細分化するように、カム機構50の円筒部材51内に設けられている複数のロック凹部71−1、71−2を備える。
【0308】
少なくとも1つのカム溝31、41によって規定されるカムプロファイルは好ましくは、ロック機構70によって規定される操作部12の複数の連続的な間欠旋回運動に従って、ロック機構70によって規定される操作部12の複数の連続的な間欠旋回運動の各々が、操作ハンドル10−1、10−2の操作部12が円筒部材51とともに、操作ハンドル10−1、10−2の把持部11に対して相対的に回転するときの、少なくとも1つのスライド部材30、40の軸方向位置の段階的な変化に対応するように、選択される。
【0309】
操作ハンドル10−1、10−2の好ましい実施形態において、ロック機構70は、カム機構の本体部材52と動作可能に接続されている係合片72を備え、係合片72は、カム機構50の円筒部材51内に設けられているロック凹部71−1、71−2と解放可能に係合するように適合されており、それによって、本体部材52に対する円筒部材51の連続的な回転が防止される。
【0310】
操作ハンドル10−1、10−2の好ましい実施形態によれば、ロック機構70は、円筒部材51内に設けられる第1のロック凹部71−1を備え、それによって、ロック機構70の係合片72が第1のロック凹部71−1と係合するときに、カム機構50の少なくとも1つのピン部材32、42が少なくとも1つのカム溝31、41の始部にある。さらに、ロック機構70は、円筒部材51内に設けられる第2のロック凹部71−2を備え、それによって、ロック機構70の係合片72が第2のロック凹部71−2と係合するときに、カム機構50の少なくとも1つのピン部材32、42が少なくとも1つのカム溝31、41の第1の中央部にある。少なくとも1つのピン部材32、42の、少なくとも1つのカム溝31、41の始部から少なくとも1つのカム溝31、41の第1の中央部への移行の結果として、少なくとも1つのピン部材32、42に作用する事前に規定される第1の軸方向変位ストロークがもたらされる。少なくとも1つのピン部材32、42に作用するこの事前に規定される第1の軸方向変位ストロークは、カテーテルチップ10−1、10−2内に収容されている心臓弁ステントまたは心臓代用弁を解放する第1のステップを開始してもよい(
図7aまたは
図25b参照)。
【0311】
また、ロック機構70は好ましくは、円筒部材51内に設けられるさらなる第2のロック凹部を備え、それによって、ロック機構70の係合片72がさらなる第2のロック凹部71−2と係合するときに、カム機構50の少なくとも1つのピン部材32、42が少なくとも1つのカム溝31、41の第2の中央部にある。少なくとも1つのピン部材32、42が、少なくとも1つのカム溝31、41の第1の中央部から少なくとも1つのカム溝31、41の第2の中央部へと移行するとき、少なくとも1つのピン部材32、42は、少なくとも1つのピン部材32、42に作用する事前に規定される第2の軸方向変位ストロークによって軸方向に動かされる。少なくとも1つのピン部材32、42に作用するこの事前規定可能な第2の軸方向変位ストロークは、カテーテルチップ10−1、10−2内に収容されている心臓弁ステントまたは心臓代用弁を解放する第2のステップを開始してもよい(
図7bまたは
図25c参照)。
【0312】
操作ハンドル10−1、10−2の好ましい実施形態において、ロック機構70は好ましくは、円筒部材51内に設けられる第3のロック凹部を備え、それによって、ロック機構70の係合片72が第3のロック凹部と係合するときに、カム機構50の少なくとも1つのピン部材32、42が少なくとも1つのカム溝31、41の終部にある。少なくとも1つのピン部材32、42が、少なくとも1つのカム溝31、41の第2の中央部から少なくとも1つのカム溝31、41の終部へと移行するとき、少なくとも1つのピン部材32、42は、少なくとも1つのピン部材32、42に作用する事前に規定される第3の軸方向変位ストロークによって軸方向に動かされる。少なくとも1つのピン部材32、42に作用するこの事前に規定される第3の軸方向変位ストロークは、カテーテルチップ10−1、10−2内に収容されている心臓弁ステントまたは心臓代用弁を解放する第3のステップを開始してもよい(
図7cまたは
図25d参照)。
【0313】
本開示による解決策(ソリューション)は、添付の図面に記載されている実施形態に限定されない。詳細に記載されている個々の特徴の組み合わせも可能であることが企図されている。