特許第6227633号(P6227633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227633車両、特に、電気自動車の乗員室用の熱調整設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227633
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】車両、特に、電気自動車の乗員室用の熱調整設備
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/03 20060101AFI20171030BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60H1/03 C
   B60H1/00 102M
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-515545(P2015-515545)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公表番号】特表2015-518797(P2015-518797A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013061860
(87)【国際公開番号】WO2013182706
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2015年1月15日
【審判番号】不服2016-15256(P2016-15256/J1)
【審判請求日】2016年10月11日
(31)【優先権主張番号】1255401
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ、マルティネル
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス、アイル
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ、ルー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、バンサン
【合議体】
【審判長】 紀本 孝
【審判官】 千壽 哲郎
【審判官】 山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−40239(JP,A)
【文献】 特開2005−14702(JP,A)
【文献】 特開平8−318725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員室(H)内に拡散される空気流を空気熱調節可能な、電気自動車用の熱調整設備(3)であって、前記空気流を熱処理可能な少なくとも1つの熱処理モジュール(8)と、前記乗員室(H)に前記空気流を分配可能な分配モジュール(9)とを備え、
電気ラジエータ(21)を備えた前記熱処理モジュール(8)は前記車両の前方室(A)に配置され、前記分配モジュール(9)のみが前記乗員室(H)に配置され、
前記熱処理モジュール(8)は、前記乗員室(H)内に拡散されるようにされた前記空気流を加熱する単一の手段(21)を備え、前記加熱手段(21)は、前記電気ラジエータ(21)によって形成され、
前記電気ラジエータ(21)の下流に位置する下流開口と、前記電気ラジエータ(21)の上流に位置する上流開口とを備えるバイパスダクト(40)を備え、
前記バイパスダクト(40)は、前記バイパスダクト(40)を循環する前記空気流の量を較正する2つの調整部材(42)を備え、
前記2つの調整部材(42)は、前記バイパスダクト(40)の前記上流開口及び前記バイパスダクト(40)の前記下流開口それぞれ配置され、
前記熱調整設備(3)は、前記電気ラジエータ(21)の下流に位置する少なくとも1つの空気分配チャンバ(48)を備え、
前記空気分配チャンバ(48)は、前記分配モジュール(9)に配設され、
前記分配モジュール(9)は、少なくとも1つの「フットウェル」分配路(26)、前記バイパスダクト(40)の前記下流開口が開口する「エアレーション」分配路(28)、及び、前記電気自動車のフロントガラスに位置する「除霜領域」に続く「除霜」分配路を備え、前記分配路は、前記空気分配チャンバ(48)の下流に位置し、
前記分配モジュール(9)は、前記「フットウェル」分配路(26)に配設される「フットウェル」フラップ(32)を備え、
前記分配モジュール(9)は、前記「エアレーション」分配路(28)に配設される「エアレーション」フラップ(34)を備え、
前記分配モジュール(9)は、前記「除霜」分配路に配設される「除霜」フラップを備える、
ことを特徴とする熱調整設備(3)。
【請求項2】
前記バイパスダクト(40)は、前記熱処理モジュール(8)および前記分配モジュール(9)に延伸することを特徴とする、請求項1に記載の熱調整設備(3)。
【請求項3】
前記熱処理モジュール(8)は、前記電気ラジエータ(21)が収容される熱処理ハウジング(17)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱調整設備(3)。
【請求項4】
前記熱処理ハウジング(17)は、前記熱調整設備(3)に前記空気流を循環させることが可能な少なくとも1つのエンジンファン(18)を備えることを特徴とする、請求項に記載の熱調整設備(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、自動車、特に、電気自動車の乗員室用の熱調整設備の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の乗員室に配設された暖房、通気および/または空調設備によって車両乗員室の熱管理を提供することが知られている。このような暖房、通気および/または空調設備は、乗員室に拡散されることが意図された空気流のための循環路の範囲を定めるハウジングを備える。車両の乗員によって決定されたコマンドに応じて、乗員室内に拡散される前に空気流の温度を変更するために、循環路に熱交換器が配置される。また、このようなハウジングは、乗員室のさまざまな領域に、特に、自動車のフロントガラスに位置する領域、および自動車の乗員室の下側領域、中間領域または上側領域に空気流を流す分配システムを備える。
【0003】
暖房、通気および/または空調設備のハウジングは、自動車のインストルメントパネルと、自動車の乗員室とエンジン室とを分離する壁との間の乗員室に設置される。
【0004】
自動車の推進力は、燃焼エンジンによって、またはハイブリッドエンジンもしくは完全電気自動車によって確保されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術において知られている暖房、通気および/または空調設備は、電気自動車の乗員室の熱管理には適したものではない。詳細には、このような電気自動車の自律性は、少なくとも部分的に、例えば、バッテリによって形成されるエネルギー源によって調整される。
【0006】
さらに、自動車の乗員が快適であるようにするために、乗員室の内部空間は可能な限り大きいことが望ましい。しかしながら、車両の全寸法は、特定の用途に対応するように規定される。特に、都会での使用の場合、車両の寸法は低減される。
【0007】
このような構成において、特に、都会での使用において、許容可能なレベルの快適性を維持するために、あるコンポーネント、例えば、インストルメントパネルのサイズを縮小することが望ましい。このようなサイズの縮小により、先行技術において知られているような暖房、通気および/または空調設備を位置付けることが不可能になる。
【0008】
また、電気自動車において、暖房機能は、電気ラジエータ、特に、高電圧電気ラジエータによって提供される。このような電気ラジエータの使用は、自動車の乗員の感電死の危険性を避けるために、人の安全確保に関する制約を伴う。
【0009】
最後に、乗員に最適な快適性を与えるために、特に、下側領域の空気出口開口と車両の乗員室の中間領域の空気出口開口との間の乗員室の2つの異なる領域に異なる温度差で空気流を拡散するように、2つの空気出口開口間に温度差を生じさせることが可能なさらなる階層化機能を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
詳細に上述した欠点および制約を考慮するために、本発明の課題は、車両の乗員室に拡散されることが意図された空気流の空気熱調節が可能な車両、特に、電気自動車の熱調整設備であって、空気流を熱処理可能な少なくとも1つの熱処理モジュールと、乗員室に空気流を分配可能な分配モジュールとを備える熱調整設備である。さらに、熱処理モジュールは、乗員室内に拡散されることが意図された空気流を加熱するための単一の手段を備え、前記加熱手段は、電気ラジエータによって形成される。
【0011】
さらに、熱調整設備は、電気ラジエータの下流に位置する下流開口と、電気ラジエータの上流に位置する上流開口とを備えるバイパスダクトを備える。
【0012】
さらに、好適には、熱調整設備は、電気ラジエータの下流に位置する少なくとも1つの空気分配チャンバを備える。
【0013】
空気分配チャンバは、分配モジュールに配設されることが好ましい。
【0014】
特に、分配モジュールは、空気分配チャンバの下流に位置する、少なくとも1つの「フットウェル」分配路および「エアレーション」分配路を備える。
【0015】
特定の実施形態によれば、バイパスダクトの下流開口は、「エアレーション」分配路内に開口する。
【0016】
あるいは、または、さらに、バイパスダクトは、バイパスダクトを循環する空気流の量を較正するための少なくとも1つの調整部材を備える。本発明によれば、このような調整部材は、バイパスダクトの下流開口および/または上流開口に配置される。
【0017】
バイパスダクトは、熱処理モジュールおよび分配モジュールに延伸することが好ましい。
【0018】
最後に、さらなる特徴によれば、熱処理モジュールは、電気ラジエータが収容される熱処理ハウジングと、好適には、熱調整設備に空気流を循環させることが可能な少なくとも1つのエンジンファンとを備える。
【0019】
なお、本発明のさまざまな特徴、変形例および/または実施形態は、相互に矛盾することなく、または排他的ではない限り、さまざまな組み合わせで互いに関連付けることができるものである。
【0020】
以下、本発明は、さらに深く理解され、さらなる特徴および利点は、実施形態を含む以下の詳細な記載を読むことにより明らかになるであろう。実施形態は、添付の図面を参照しながら例示的に与え、本発明の理解および実施方法の説明を補足し、適切であれば、本発明の規定に寄与するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による熱調整システムの部分分解斜視図。
図2図1の熱調整システムの斜視図。
図3図1の熱調整システムの側面図。
図4】正中面Pでの図3の熱調整システムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記図面において、さまざまな実施形態に共通する構造的および/または機能的要素は、同一の参照番号を有しうることに留意されたい。このため、特記しない限り、このような要素は、同一の構造特性、寸法特性および材料特性を有する。
【0023】
本発明によれば、「下流」、「上流」、「直列」および「並列」という用語は、本発明による熱調整設備における空気流の循環方向において、あるコンポーネントと別のコンポーネントとの相対位置を与える。
【0024】
図1および図2は、それぞれ、乗員室、特に、電気自動車の乗員室用の熱調整システム1の斜視図である。このような熱調整システム1は、第1に、電気自動車の乗員室Hおよび前方室Aを分離する分離壁2と、第2に、乗員室Hに拡散されることが意図された空気流を空気熱調節するための熱調整設備3とを備える。
【0025】
特に、図1は、分離壁2および熱調整設備3を取り付ける前の熱調整システム1を示す。図2は、分離壁2および熱調整設備3を取り付けた後の熱調整システム1を示す。
【0026】
分離壁2は、例えば、自動車の床とフロントガラス(これらは図示せず)との間に実質的に垂直方向に延伸する金属シートの形をとる。
【0027】
自動車の前方室Aは、例えば、自動車のドライブトレイン、例えば、電気モータ、インバータ、コンピュータなどの1つ以上のコンポーネントを保有するものであってもよい。
【0028】
また、分離壁2は、少なくとも1つの貫通通路6を備える。好ましくは、分離壁2は、貫通通路6の周りに配設された係合ストリップを備え、熱調整設備3が係合ストリップを支持する。
【0029】
本発明によれば、熱調整設備3は、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を空気熱調節するための熱処理モジュール8と、乗員室Hの異なる領域、特に、自動車のフロントガラスに位置する領域、いわゆる、「除霜領域」、乗員室Hの下部に位置する領域、いわゆる、「フットウェル領域」、自動車のインストルメントパネルの中央部に位置する領域または自動車の乗員室Hの側方領域、いわゆる、「エアレーション領域」に、熱処理モジュール8において熱処理された空気流を分配するための分配モジュール9とからなる。
【0030】
特に非限定的な例示的な実施形態によれば、熱処理モジュール8および分配モジュール9は、熱調整設備3の2つの別個の異なるサブアセンブリである。特に、熱処理モジュール8および分配モジュール9は、貫通通路6で固定手段によって接続されているのみである。しかしながら、熱処理モジュール8および分配モジュール9は、熱処理モジュール8によって空気熱調節される空気流が、乗員室H内に拡散される前に貫通通路6を通って分配モジュール9内を循環するように空気連通状態にある。
【0031】
1つの別の実施形態によれば、熱処理モジュール8は前方室Aに配置され、分配モジュール9は乗員室Hに配置される。
【0032】
好ましくは、熱調整設備3は、この目的のための固定手段を用いて分離壁2に固定される。一例として、分配モジュール9は、熱調整設備3を分離壁2に固定するための1つ以上の固定タブ15を備える。
【0033】
図3は、図1の熱調整システム1の側面図であり、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を空気熱調節可能な熱調整設備3を示す。図3において、自動車の乗員室Hと前方室Aとの間に配設された分離壁2が点線で示されている。さらに、図4は、図3の熱調整システム3の平面Pの断面図である。より詳細に言えば、平面Pは、熱調整設備3の正中面であり、乗員室Hから前方室Aへ伸びる長手方向に平行な位置にある平面である。
【0034】
熱処理モジュール8は、例えば、エンジンファン18によって乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を移動させる熱調整設備3の部品である。さらに、熱処理モジュール8は、例えば、少なくとも1つの熱交換器によって、特に、空気流を加熱および/または冷却することによって、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を熱調節する。熱処理モジュール8は、熱処理モジュール8の少なくとも1つの処理済み空気出口11を備える。
【0035】
熱処理モジュール8は、熱調整設備3において空気流を循環させるためのエンジンファン18が少なくとも配設された熱処理ハウジング17を備える。このようなエンジンファン18は、例えば、熱処理モジュール8の範囲を定める熱処理ハウジング17に配置されたラジアルタービンを回転させる電気モータを備える。
【0036】
また、熱処理ハウジング17は、少なくとも1つの空気入口、好適には、外気入口19および/または内気入口20と、処理済み空気出口11との間に空気流を通す少なくとも1つの空気循環路10を備える。
【0037】
提示した例示的な実施形態によれば、熱処理モジュール8は、外気入口19と、内気入口20とを備える。外気入口19は、乗員室Hの外部の空気流が熱処理モジュール8内に貫流する入口であり、内気入口20は、乗員室Hからの空気流が熱処理モジュール8内に貫流する入口である。
【0038】
好適には、図示していない特定の実施形態によれば、分離壁2は、熱処理モジュール8と分配モジュール9との間に空気接続をもたらすための貫通通路6とは別の相補的な開口を備える。このような相補的な開口により、乗員室Hからの空気流を熱処理モジュール8内に導入することができる。
【0039】
提示された例示的な実施形態によれば、熱処理モジュール8は、熱処理ハウジング17の両側の側方に配置された2つの外気入口19と、中央部に配設され、2つの外気入口19間に位置する単一の内気入口20とを備える。
【0040】
また、熱処理モジュール8は、外気入口19および/または内気入口20から熱処理ハウジング17内へ流入する空気流を選択するための手段22を備える。このようにして、外気流のみ、内気流のみ、または外気流および内気流の混合気を流入させることができる。このような選択手段22は、例えば、外気入口19と内気入口20との間に位置する1つ以上のフラップの形をとる。
【0041】
図4において、熱調整設備3内に流入し、熱処理モジュール8および分配モジュール9内を循環する空気流が点線で示されている。
【0042】
補足的な方法において、熱処理モジュール8は、特に、フィルタによって形成されたフィルタリング装置24を備えてもよい。好ましくは、フィルタリング装置24は、外気入口19と、内気入口20と、エンジンファン18との間に配設される。
【0043】
また、熱処理モジュール8により、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を、温度を変化させて空気熱処理することができる。このため、熱処理モジュール8は、第1の熱交換器21の形態の加熱手段21を備える。本発明によれば、このような第1の熱交換器21は、加熱要素、特に、電気抵抗器、特に、電流が供給されると、特に、例えば、150V〜500Vの高電圧電流が供給されると、電気ラジエータを流れる空気流を加熱し、この空気流との熱交換を行うことが可能な、正温度係数を有する抵抗器を備える電気ラジエータ21である。
【0044】
本発明によれば、電気ラジエータ21は、熱処理モジュール8に配設される乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を加熱するための唯一の手段21である。このように、本発明によれば、電気ラジエータ21は、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流の温度を上昇させるための唯一の手段である。
【0045】
補足的な方法において、熱処理モジュール8は、第2の熱交換器(図示せず)を保有してもよく、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流を冷却可能な冷却流体は、好適には、この第2の熱交換器を貫流する。このように、第2の熱交換器は、蒸発器として機能する。このような第2の熱交換器は、2つのパイプおよび拡張部材によって冷却流体回路に接続される。このように、本発明によれば、第2の熱交換器は、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流の温度を低下させることにのみ役立つ。第2の熱交換器は、乗員室H内に拡散されることが意図された空気流の温度を上昇させることができない。
【0046】
分配モジュール9は、少なくとも1つの空気分配路が配置される分配ハウジング16を備える。図面に提示された例示的な実施形態によれば、分配モジュール9は、複数の空気分配路、特に、「フットウェル」分配路26、「エアレーション」分配路28および「除霜」分配路(図示せず)を備え、これらの分配路は、一方では、分配モジュール9の処理済み空気入口12によって、他方では、少なくとも1つのそれぞれの空気出口開口、特に、第1の空気出口開口13a、第2の空気出口開口13bおよび第3の空気出口開口13cによってそれぞれ範囲が定められる。
【0047】
図面に提示された例示的な実施形態によれば、「フットウェル」分配路26は、「フットウェル領域」に割り当てられ、分配モジュール9の下部に形成された第1の空気出口開口13aに続く。「エアレーション」分配路28は、「エアレーション領域」に割り当てられ、分配モジュール9の上部に形成された第2の空気出口開口13bに続く。「除霜」分配路は、「除霜領域」に割り当てられ、分配モジュール9の上部に形成された第3の空気出口開口13cに続く。
【0048】
本発明によれば、好適には、分配モジュール9には熱交換器がない。空気流の温度を変化させるこのような機能は、熱処理モジュール8に割り当てられることにより、インストルメントパネルの下方において占められる空間を限定するために、分配モジュール9の外寸を大幅に低減させることができる。
【0049】
分配モジュール1は、少なくとも1つのフラップを備えてもよく、少なくとも1つのフラップは、分配ハウジング16に配設され、それぞれの空気出口開口、特に、第1の空気出口開口13a、第2の空気出口開口13bおよび第3の空気出口開口13cの一方および/または他方に送られる空気流の量を管理することができる。特に、分配モジュール9は、少なくとも、以下のものを備える。
【0050】
−第1の空気出口開口13aに送られる空気流の量を管理するために、「フットウェル」分配路26に配設される「フットウェル」フラップ32、
−第2の空気出口開口13bに送られる空気流の量を管理するために、「エアレーション」分配路28に配設される「エアレーション」フラップ34および、
−第3の空気出口開口13cに送られる空気流の量を管理するために、「除霜」分配路に配設される「除霜」フラップ(図示せず)。
【0051】
分配モジュール9は、熱処理モジュール8からの空気流を乗員室Hのさまざまな領域、特に、自動車のフロントガラスに位置する領域、いわゆる、「除霜領域」、乗員室Hの下部に位置する領域、いわゆる、「フットウェル領域」、自動車のインストルメントパネルの中央部に位置する領域または自動車の乗員室Hの側方領域、いわゆる、「エアレーション領域」に分配する熱調整設備3の部品である。
【0052】
さらに、図示していない特定の実施形態によれば、分配モジュール9は、エアダクト、特に、自動車のフロントガラスに位置する領域に続くエアダクトおよび自動車の乗員室の中央領域および/または上側領域に続くエアダクトを備えてもよい。
【0053】
分配モジュール9の処理済み空気入口12は、熱処理モジュール8の処理済み空気出口11と空気連通状態にある。
【0054】
熱処理され、乗員室H内へ拡散されることが意図された空気流のすべては、電気ラジエータ21を貫流することが好ましい。このように、空気流を熱調節するために、温度は、電気ラジエータ21の電気制御によって管理される。電気ラジエータ21の供給電圧は、電気ラジエータ21によって消散される異なる加熱パワーを規定するために変調される。
【0055】
本発明によれば、熱調整設備3は、エンジンファン18の下流および電気ラジエータ21の上流に位置する吸気チャンバ44を備える。結果的に、吸気チャンバ44は、エンジンファン18を離れる空気流を受ける。別の実施形態によれば、吸気チャンバ44は、熱処理モジュール8に配設される。
【0056】
さらに、熱処理設備3は、電気ラジエータ21の下流に位置する処理済み空気チャンバ46を備える。結果的に、処理済み空気チャンバ46は、電気ラジエータ21を貫流した後に熱処理された空気流を受ける。別の実施形態によれば、処理済み空気チャンバ46は、熱処理モジュール8および/または分配モジュール9に配設される。
【0057】
最後に、熱調整設備3は、電気ラジエータ21の下流、好ましくは、処理済み空気チャンバ46の下流、およびさまざまな分配路の上流、特に、「フットウェル」分配路26、「エアレーション」分配路28および「除霜」分配路の上流に位置する空気分配チャンバ48を備える。空気分配チャンバ48は、処理済み空気チャンバ46を離れる空気流を受ける。別の実施形態によれば、空気分配チャンバ48は、分配モジュール9に配設される。
【0058】
空気分配チャンバ48は、さまざまな空気分配路、特に、「フットウェル」分配路26、「エアレーション」分配路28および/または「除霜」分配路に空気的に接続される。
【0059】
このように、空気分配チャンバ48から、空気流は、さまざまな空気分配路、特に、「フットウェル」分配路26、「エアレーション」分配路28および/または「除霜」分配路に分配される。
【0060】
2つの空気出口開口の間、特に、第1の空気出口開口13aおよび第2の空気出口開口13bの間に温度差を生じさせることが可能なさらなる階層化機能を与えるために、熱調整設備3は、バイパスダクト40を備える。バイパスダクト40は、熱処理モジュール8および分配モジュール9に延伸することが好ましい。
【0061】
より詳細に言えば、バイパスダクト40は、吸気チャンバ44内に開口する上流開口を備える。さらに、バイパスダクト40は、空気分配チャネルの少なくとも1つに開口する下流開口を備える。
【0062】
「フットウェル領域」に開口する第1の空気出口開口13aと、「エアレーション領域」に開口する第2の空気出口開口13bとの間の温度差を確保するために、バイパスダクト40の下流開口は、「エアレーション」分配路28に配置される。
【0063】
結果的に、バイパスダクト40を循環する空気流は、電気ラジエータ21を貫流しない。このように、空気流は、バイパスダクト40を循環することによって、少なくとも電気ラジエータ21を迂回しうる。このため、バイパスダクト40の上流開口は、電気ラジエータ21の上流に配置され、バイパスダクト40の下流開口は、電気ラジエータ21の下流に配置される。
【0064】
バイパスダクト40は、空気分配チャンバ48の下流に現れることが好ましい。このように、空気流は、バイパスダクト40を循環することによって、電気ラジエータ21、処理済み空気チャンバ46および空気分配チャンバ48を迂回しうる。
【0065】
バイパスダクト40を循環する空気流は、電気ラジエータ21によって熱処理されない。このように、バイパスダクト40を循環し、「エアレーション」分配路28に到達する空気流は、空気流の熱処理が行われた空気分配チャンバ48からの空気流と混合され、「エアレーション」分配路28の方へ通される。
【0066】
結果的に、「エアレーションゾーン」に開口する第2の空気出口開口13bを通って拡散される空気流の温度は、「フットウェル領域」に開口する第1の空気出口開口13aを通って拡散される空気流の温度より低い。
【0067】
詳細には、バイパスダクト40を循環する空気流により、空気分配チャンバ48からの空気流を弱めることができる。
【0068】
バイパスダクト40を循環し、専用の空気分配路、特に、「エアレーション」分配路28に入る空気流の量を較正するために、バイパスダクト40は、例えば、1つ以上のフラップの形の少なくとも1つの調整部材42を備える。調整部材42は、バイパスダクト40の下流開口に配置されることが好ましい。あるいは、または、さらに、調整部材42は、バイパスダクト40の上流開口に配置される。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例示的にのみ与えられるものであることは言うまでもない。本発明は、当業者によって想定されうる、本発明の範囲内のさまざまな修正例、別の形態および他の変形例を含み、特に、別々に、または組み合わせとられうる上述したさまざまな動作モードの任意の組み合わせを含む。
図1
図2
図3
図4