(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0004】
発酵槽とも呼ばれるバイオリアクタには、バイオロジカルプロセス又はバイオテクノロジカルプロセスを実施可能な反応チャンバが内側に形成されている。このようなプロセスには例えば、所定の、好ましくは最適化され制御された再現性のある条件下における細胞、微生物又は小プラントの培養が含まれる。バイオリアクタのほとんどは複数のコネクタを備える。当該コネクタを通じて、センサ等の各種器具や1次物質および2次物質が反応チャンバに導入される、あるいは、当該コネクタに対して、例えばガス処理管や排気ガス管などのガス管といった流体管を接続することができる。加えて、バイオリアクタは通常、ミキサを有する。当該ミキサのシャフトは、駆動力によって回転するように構成可能であり、シャフトが回転することによって、ミキサシャフトにねじれ固定的に接続された撹拌部材も同様に回転するため、反応チャンバ内の物質を混合することができる。ミキサシャフト上に、軸方向に間隔を空けて配置されることがほとんどである撹拌部材を2つ以上配置および接続することも可能である。撹拌部材はミキサシャフトと一体的であってもよい。
【0005】
好ましくは、バイオリアクタは、バイオリアクタシステム内、好ましくは並行バイオリアクタシステム内で用いられるとともに、細胞培養の分野だけでなく微生物学用途の分野でも用いられる。並行バイオリアクタシステムは例えば、独国特許第102011054363.5号および独国特許第102011054365.1号に記載されている。このようなバイオリアクタシステムにおいては、複数のバイオリアクタを並行して運転するとともに、高い精度にて制御することができる。運転ボリュームが小さい場合であっても、個々のバイオリアクタ内で再生可能かつ測定可能なスループットの高い実験を実施することができる。発明に関するバイオリアクタの実験スケールは、最大2000mlのボリュームを包含する、又は、より具体的には反応チャンバ全体のボリュームが約350mlであり、運転中におけるボリューム範囲が約60mlから約250mlの間である。
【0006】
細胞培養の分野では、このような並行バイオリアクタシステムは例えば、統計的計画手法に基づくプロセス最適化や、例えばチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)、ハイブリドーマ又はNSO細胞株などの異なる細胞株を培養するためのプロセスエンジニアリングとその研究開発における試験シリーズのために用いられる。本願においては、「細胞培養」との表現は特に、生体外部の培養液における動物又は植物の細胞培養と理解される。
【0007】
微生物学の分野でも、並行バイオリアクタシステムは同様に、統計的計画手法に基づくプロセス最適化や、各種微生物(特にイーストなどのバクテリアや菌類)を培養するためのプロセスエンジニアリングとその研究開発における試験シリーズのために用いられる。
【0008】
実験室のほとんどにおいてはスペース上の制約があるため、バイオリアクタシステムだけでなく、バイオリアクタ自体のスペースを最小限にすることが求められ、特にその設置面積を小さくすることが求められる。
【0009】
実験室内で用いられるバイオリアクタは、使用と使用の間に好ましくはオートクレーブを用いた蒸気殺菌によって殺菌する必要があるため、ガラスおよび/又は金属(特にステンレススチール)によって形成されることが多い。再利用可能なバイオリアクタを殺菌および洗浄するには複雑なプロセスが必要となる。殺菌および洗浄のプロセスは検証される場合があるとともに、それぞれの個々のバイオリアクタに関して正確に文書化する必要がある。バイオリアクタ内において完全に殺菌されていない残存物があれば、続くプロセスの結果が変わる又は無駄になる可能性があり、プロセスが中断する可能性がある。また、殺菌プロセスを行った場合にはバイオリアクタ内の個々のコンポーネントや材料がストレス又は負荷を受ける可能性があり、場合によってはダメージを受ける可能性がある。
【0010】
使い捨てバイオリアクタは、再利用可能バイオリアクタの代替物であるとともに、その廃棄前に1度だけバイオロジカルプロセス又はバイオテクノロジカルプロセスを実施するものとして使用される。好ましくは製造プロセス中に殺菌された、新たな使い捨てバイオリアクタを各プロセスごとに提供することによって、コンタミネーションのリスクを低減すると同時に、前回使用したバイオリアクタに対する完全な洗浄および殺菌を実施および文書化する必要性をなくすことができる。使い捨てバイオリアクタは、バッグなどの柔軟性コンテナとして設計される、又は、少なくとも部分的に柔軟性壁を有したコンテナとして設計されることが多い。そのようなバイオリアクタの例は、米国特許出願公開第2011/0003374号、米国特許出願公開第2011/00058447号、独国実用新案登録第202007005868号、米国特許出願公開第2011/00058448号、米国特許出願公開第2011/0207218号、国際公開第2008/088379号、米国特許出願公開第2012/0003733号、国際公開第2011/079180号、米国特許出願公開第2007/0253288号、米国特許出願公開第2009/0275121号、米国特許出願公開第2010/0028990号に記載されている。しかしながら、これらの柔軟性壁を有する使い捨てバイオリアクタの欠点の1つは、特に、寸法安定性を有する再利用可能バイオリアクタとして設計された並行バイオリアクタシステムに用いることができないことである。
【0011】
さらに、異なるスケールに対するプロセスのスケーラビリティの理由のために、定性比較可能かつ具体的に定められた、培養チャンバ内における(特に撹拌時の)流体ダイナミクスが重要となる。この要件は、柔軟性壁を有するバイオリアクタでは実現することができない、あるいは大規模な付加的対策を講じた場合に初めて実現することができる。
【0012】
寸法安定性を有する使い捨てバイオリアクタは例えば、欧州特許出願公開第2251407号および米国特許出願公開第2009/0311776号に記載されている。市場で利用可能な寸法安定性を有する使い捨てバイオリアクタの例には、Celligen Blu、Millipore MobiusおよびSartorius UniVesselが含まれる。しかしながら、これらの既知の寸法安定性を有する使い捨てバイオリアクタは高価である一方で、製剤プロセスエンジニアリングおよび薬剤生産プロセス用に設計されている。これらは特に細胞培養プロセス用に用いられるので、そのような細胞培養プロセスに対して特別に設計・適合されている。しかしながら、微生物学の用途においては、市場で課されうる価格だけでなく、適切な設計や使用されうる材料に関しても異なる複数の要件を満たす必要がある。これより、先行文献から知られる寸法安定性を有する使い捨てバイオリアクタは例えば、微生物学の研究やプロセスエンジニアリングでの使用には適さないといえる。
【0013】
したがって、発明の目的は、改良された使い捨てバイオリアクタおよびヘッドプレートを提供すること、および、前述した欠点のうちの1つ以上を低減又は削除する製造プロセスを特定することにある。より具体的には、発明の1つの目的は、細胞培養と微生物学の両方の用途、特に好ましくは並行バイオリアクタシステムでの用途に適した、改良された使い捨てバイオリアクタを提供することにある。発明の他の目的は、製造コストが高価でない使い捨てバイオリアクタおよびヘッドプレートを提供すること、および、使い捨てバイオリアクタおよびヘッドプレートを製造するための単純かつコスト効率の良いプロセスを特定することにある。
【発明の概要】
【0014】
発明の第1態様によれば、これらの目的は、請求項1に記載の使い捨てバイオリアクタによって達成される。冒頭で特定したようなこの使い捨てバイオリアクタは、ミキサおよび軸受が、その全体が反応チャンバ内に配置されており、ミキサシャフトは、回転駆動部に対して軸方向に磁気結合可能なように設けられた磁気部を有すること、を特徴とする。回転駆動部は、ミキサシャフトおよび撹拌部材を有するミキサを駆動するので「撹拌駆動部」とも称される。
【0015】
この使い捨てバイオリアクタは、とりわけ、ミキサが磁気駆動によって回転可能であること、を特徴とする。この実施形態の1つの利点は、ミキサおよび軸受の全体が反応チャンバ内に配置されていること、すなわち、ミキサシャフトをヘッドプレート内に通過させる必要性がないことである。これにより、ミキサシャフトをヘッドプレート内に通過させるための穴をシールする必要性がなくなる。またこれによって、ヘッドプレート内の穴のシール性が不十分であることにより反応チャンバの無菌状態を損なうことをなくすことができるという利点がある。更なる利点は、中隔コンポーネントの損傷につながりうる、シールされた通路を含む構造に生じる摩擦抵抗を完全に回避できることである。
【0016】
さらに、ミキサシャフトの磁気部は、ヘッドプレートの外側であって反応チャンバの外側に配置された駆動部に対して、軸方向すなわち回転軸の方向又は回転軸に平行な方向に磁気結合することが想定される。ミキサシャフトの磁気部と回転駆動部の磁気駆動部との間の空気ギャップは最小であることが好ましい。このようなミキサシャフトと回転駆動部との間における前端(フロントエンド)での磁気結合を行うことで、例えば米国特許出願公開第2011/0058447号に記載されるように、ミキサシャフト上の磁気部の外周の周りに回転駆動部の磁気部を配置して径方向の結合を行う場合と比較して、ヘッドプレートにおける回転駆動部のためのスペースを小さくすることができるという利点がある。前端での磁気結合を行う回転駆動部の形状は例えば、略円筒形状としてもよく、その場合、当該円筒形状の断面積を、前端での磁気結合に要する面積と略同じにしてもよい。このような形状により、ヘッドプレートにおける器具、センサ又は機能エレメントを付加的に接続するためのスペースが多く残ることとなる。
【0017】
ミキサシャフトの磁気部を受けるために、ヘッドプレートは例えば、凸部を有してもよい。反応チャンバの外側に配置された回転駆動部を当該凸部の同軸上、および、同様に同軸上に配置されることが好ましいミキサシャフトの磁気部の同軸上に配置するために、凸部の断面を例えば円形にするとともに、当該凸部が回転駆動部をリング手段によって受けるように構成することも可能である。ミキサシャフトの磁気部は、ミキサシャフトの一端に配置されることが好ましく、かつ、ミキサシャフトの残りの部分よりも直径又は円周が長いことが好ましい。
【0018】
好ましい1つの実施形態では、磁気部は、ミキサシャフトと一体的なものとして具現化される。これにより、反応チャンバ内のパーツの数を低減するとともに、異なるパーツ間に生じうるギャップやデッドスポットを低減することができる。
【0019】
特に好ましくは、磁気部は、プラスチック母材と磁気材料を備えた複合材料からなる、又は、そのような複合材料を含む。これにより、母材として例えば、適切に分類されたプラスチックを選択することにより、米国薬局方(USP)分類VI認定に従うものから材料の組合せを選択することができる。
【0020】
好ましくは、磁気部は、磁気コンポーネントを含んだ2成分材料をミキサシャフト上に射出成形することにより製造される。
【0021】
このようなプラスチック/磁石の混合物を複合材料として、ミキサシャフトの一端上に好ましくは射出成形プロセスにより射出成形することにより、前端に磁気結合部を有するミキサシャフトを、特に単純かつ安価な方法により製造することができる。同時に、一体的な形態とすることにより、反応チャンバ内のパーツの数を低減することができる。
【0022】
特に好ましい1つの実施形態では、磁気部は、ミキサシャフトに直交する断面を有し、当該断面の大部分、好ましくは断面全体にわたって磁気力を発生させることで、回転駆動部と軸方向に磁気結合を行う。
【0023】
好ましくは2次元の、このような磁力を発生させる領域の連続的な断面による構成は、より具体的には、プラスチック母材と磁気材料を含む複合材料を射出成形金型に射出成形することにより得ることが可能であり、当該複合材料は、射出成形中に磁気材料を整列させるための磁石をその一部として含んでいる。磁力を発生させる磁気部の断面は、好ましくは円形、楕円形又は長方形である。磁力を発生させる磁気部の断面中に、異なる極性のセグメントが形成されることが好ましい。当該セグメントは例えば、星形のパターン又はπ型のセグメントを伴ったパターンを形成してもよい。
【0024】
このような構成にはいくつかの利点がある。第1に、複数の棒磁石を環状に配置した実施形態と比較して、より大きなトルクが伝達可能である。このように大きなトルクは特に、1500rpmを超える速い回転速度、特に2000rpmまで又は3000rpm以上までの速い回転速度といった、特に微生物学の用途で必要とされる速度を達成する際に要求される。大きなトルクの伝達と同時に、ミキサシャフトの端部にて必要とされる断面積を小さく又は低く維持することができ、これによりヘッドプレート上で必要とされる配置スペースを小さく又は低く維持することができる。セグメントにおいて特定の極性パターンを形成することにより、セグメントの極性が適合したバイオリアクタのみを回転駆動部により駆動可能となるため、当該バイオリアクタをそれに応じて設計された回転駆動部に特別に適合させることができる。このことは、所望のトルクおよび所望の速度による駆動を確保する際に有利である。その理由は、回転駆動部に機械的に結合されたミキサに関してのみ、トルクおよび得られる速度をモニタし、ミキサと回転駆動部の磁気結合部に関しては、トルクおよび得られる速度をモニタしないためである。一方で、発散的な速度は例えば、電気定格が過度に小さい回転駆動部を使用する際に培養プロセスに対して否定的な影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
この実施形態では、磁気部は、例えば複合材料をミキサシャフトに射出成形することにより、好ましくはミキサシャフトの端部と一体的に接続される。あるいは、好ましくは射出成形プロセスにより、磁気部をミキサシャフト上に別のパーツとして配置して形成することもできる。
【0026】
発明の第2態様によれば、前述した目的は、請求項4に記載の使い捨てバイオリアクタによって達成される。この第2態様によれば、冒頭で言及した使い捨てバイオリアクタ又は発明の第1態様の使い捨てバイオリアクタにおいて、軸受をころ軸受として設計する点に特徴がある。
【0027】
細胞培養の分野に用いられる、既に知られた寸法安定性を有する使い捨てバイオリアクタ用の滑り軸受けの欠点の1つは、回転速度が速くなると、シャフトと軸受との摩擦力が強くなって排熱が生じることに起因して、ミキサの回転速度が概ね500rpm前後の範囲に限られるという点である。このような排熱が生じる場合、軸受の溶融が生じる可能性があり、これによりシャフトが停止して、培養プロセスが中断するおそれがある。滑り軸受の別の欠点は、材料が激しく摩耗すること、特にプラスチック材料の摩耗が挙げられる。このような摩耗が生じると、反応チャンバ内において細胞核の凝集(nuclei for cell agglomeration)が生じ、それを例えば軸受の筐体内で捕捉する必要性が生じる。
【0028】
ミキサシャフト用の軸受をころ軸受として設計することにより、1500rpm以上、特に2000rpmまで又は3000rpm以上までの著しく速い速度を得ることができ、微生物学の用途に必要な速度を得ることができる。
【0029】
特に好ましくは、ころ軸受は、ガラス製の玉軸受を含むポリマー製のころ軸受であり、ポリマー製のころ軸受は、好ましくは、熱可塑性プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチルエーテルケトン又はポリテトラフルオロエチレン)製のボールレースを備える。ころ軸受に関するこのような材料の組合せによれば、ガラス製の玉軸受がポリマー製のころ軸受内でスムーズかつ静かに回転可能であるため、実験室における騒音レベルを低減できるという利点がある。このような材料の組合せによれば、モル濃度の高いアルカリおよび塩基に対して耐性がある。なお、これらのアルカリおよび塩基は、特に微生物学の用途に用いられるとともに、展開される構造および材料に関して各要件を課すものである。
【0030】
発明の第3態様によれば、前述した目的は、請求項5に記載の使い捨てバイオリアクタによって達成される。本態様によれば、冒頭で言及した使い捨てバイオリアクタ、又は、前述した第1態様若しくは第2態様のバイオリアクタにおいて、ヘッドプレートおよびコンテナは、互いに恒久的に結合されている。また、ヘッドプレートは、第1の材料で形成され、コンテナは、第2の材料で形成され、ミキサシャフトおよび/又は撹拌部材は、第3の材料で形成されている。さらに、第1および第2の材料は、第3の材料よりも温度抵抗性が高い。
【0031】
この使い捨てバイオリアクタにおいては、ヘッドプレートとコンテナは、例えば溶接などの非分離式一体化接合技術により恒久的に接合される。超音波溶接による接合であれば、高いプロセスの信頼性を得ることができ、ヘッドプレートと反応チャンバの接続部分のシール性が良好になるとともに、周囲に対する反応チャンバのシール性も良好にすることができるので好ましい。超音波溶接は非常に速い接合技術であり、製造のコストや労力を低減することができる。
【0032】
ヘッドプレートとコンテナを恒久的に接合することにより、製造プロセスにおいて殺菌後には使い捨てバイオリアクタを開けられなくなるため、バイオリアクタの使用前に反応チャンバにコンタミネーションが生じるリスクを低減することができる。このような恒久的接合を行うことで、使い捨てバイオリアクタは、使用後に開けられなくなるとともに、閉じられた、寸法安定性を有する安定的な形状を保持することができる。
【0033】
発明における材料の組合せの利点は、使用済みのバイオリアクタの除染処理において明白である。温度抵抗性の低い材料で形成された使い捨てバイオリアクタであれば、除染処理時又は後工程の殺菌処理時に例えば溶けるなどのダメージを受ける可能性があるため、好ましくは温度抵抗性を有した外部コンテナに入れて殺菌を行う必要があるという不利な点がある。ヘッドプレートおよびコンテナを、温度抵抗性があることによって除染処理が許容されるすなわち除染処理時に破壊又は著しく攻撃を受けない材料から形成することにより、このような除染プロセスに耐えるようにすることができる。これにより、使い捨てバイオリアクタを例えば別のコンテナ内に付加的にパッケージング又は配置することなく、蒸気殺菌により除染することができる。
【0034】
ミキサシャフトおよび/又は撹拌部材を温度抵抗性の低い材料で形成することにより、除染処理時にミキサシャフトおよび/又は撹拌部材が破壊される、又は少なくとも使用不可能になるという利点がある。第3の材料は、この目的に対して適切な特性を有する。特に、第3の材料は、除染プロセスに耐えられないような温度抵抗性を有することが好ましい。
【0035】
このようにして、ミキサは除染処理後に使えなくなる、あるいは、ヘッドプレートとコンテナの恒久的な接合によって使い捨てバイオリアクタを開けてミキサを取り換えることができなくなるので、一度既に使用された使い捨てバイオリアクタの意図的な又は意図的でない再利用を防ぐことができる。
【0036】
別の特に好ましい実施形態によれば、ヘッドプレートの第1の材料とコンテナの第2の材料とは同じである。このことは、ヘッドプレートおよびコンテナを超音波溶接によって接合する際に特に有利となる。
【0037】
本明細書では、材料の温度抵抗性は、好ましくは材料のガラス転移温度により定義される。
【0038】
特に好ましくは、第1および第2の材料のガラス転移温度は、第3の材料のガラス転移温度よりも大きい。ガラス転移温度(Tg)は、プラスチック材料の特定の性質である。ガラス転移温度とは、非結晶性又は部分的に結晶性のポリマーが固体状態から流体状態へ移行する温度であり、硬度や弾性などの物理特性が著しく変化するときである。
【0039】
特に好ましくは、第1および第2の材料のガラス転移温度は、少なくとも121°Cであり、第3の材料のガラス転移温度は、121°Cよりも小さいことが好ましい。特に好ましくは、第3の材料のガラス転移温度は50°Cよりも大きい、特に55°Cよりも大きい、60°Cよりも大きい、65°Cよりも大きい、70°Cよりも大きい、75°Cよりも大きい、又は80°Cよりも大きい。特に好ましくは、第1および第2の材料のガラス転移温度は125°Cよりも大きい、特に130°Cよりも大きい、140°Cよりも大きい、150°Cよりも大きい、160°Cよりも大きい、170°Cよりも大きい、又は180°Cよりも大きい。
【0040】
第1および第2の材料のガラス転移温度は、好ましくは、第3の材料のガラス転移温度よりも、少なくとも5°C大きい、特に少なくとも10°C大きい、少なくとも15°C大きい、少なくとも20°C大きい、少なくとも25°C大きい、少なくとも30°C大きい、少なくとも25°C大きい、少なくとも30°C大きい、少なくとも40°C大きい、少なくとも50°C大きい、少なくとも60°C大きい、少なくとも70°C大きい、又は少なくとも80°C大きい。
【0041】
特に好ましい材料の1つの組合せにおいては、ヘッドプレートおよびコンテナは、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリメチルペンテン又はポリプロピレンで形成される一方、撹拌部材および/又はミキサシャフトは、ポリスチレンで形成される。これらの材料は、細胞培養と微生物学の両方の使用に適するという特性を持つ。同時に、ヘッドプレートおよびコンテナに関する上記材料は、撹拌部材および/又はミキサシャフトに関する上記材料と温度抵抗性が異なっている。具体的には、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリメチルペンテン又はポリプロピレンは、除染プロセス、特に蒸気殺菌に対して実質的に無傷で耐えることができる一方、ポリスチレンは、蒸気殺菌により溶解してしまい、結果的にミキサシャフトおよび撹拌部材が再利用できなくなる。
【0042】
上述した発明の態様は、単独で又は任意の組合せで適用してもよい。より具体的には、以降で説明する発明の発展形は、上述した態様のうちのいずれか1つ又はその任意の組合せによる使い捨てバイオリアクタと組み合わせてもよい。
【0043】
好ましい1つの実施形態では、ヘッドプレートおよびコンテナは互いに接合される。あるいは、好ましくは、ヘッドプレートおよびコンテナは、特に超音波溶接又は赤外線溶接によって互いに溶接される。ヘッドプレートとコンテナを接合又は溶接により互いに恒久的に結合することにより、バイオリアクタの再利用や意図的でない開封に起因するコンタミネーションのリスクを低減することができる。超音波溶接は特に製造技術として好ましい。その理由は、プロセスの高い信頼性レベルと、ヘッドプレートおよびコンテナの確実な結合とが組み合わさっているとともに、早くかつ単純な製造となり、製造コストと労力も低減されるためである。
【0044】
特に好ましくは、ヘッドプレートは一体的な構成である。このような構成により、反応チャンバ内のパーツの数を低減することができるため、デッドスポットや空隙を回避するとともに、使い捨てバイオリアクタの組立又は構築の際に付加的なステップを回避することができる。特に好ましくは、ヘッドプレートは射出成形プロセスにより製造される。
【0045】
ヘッドプレートは、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリメチルペンテン又はポリプロピレンで形成されることが好ましい。これらの材料は、細胞培養と微生物学の両方の用途での使用要件を満たすと同時に、温度抵抗性が高いという利点を有する。
【0046】
使い捨てバイオリアクタの別の好ましい実施形態によれば、ヘッドプレートは、その内側に、反応チャンバ内に突出した複数の浸漬チューブを備える。これらの浸漬チューブは、中空のスリーブの形態であることが好ましく、各種の器具、センサ又は導管を受けることが可能、特に柔軟性のチューブを受けることが可能である。浸漬チューブは、剛体のパイプであることが好ましい。ヘッドプレートの内側部分に設けられた浸漬チューブをヘッドプレートの外側部分に設けられたコネクタと適合させることで、コネクタおよび浸漬チューブを通じて、媒体又はその他のアイテムを反応チャンバ内へ導入/反応チャンバ内から取り出し可能とすることが好ましい。使い捨てバイオリアクタが意図された方法で使用されたときに、反応チャンバ内に突出する浸漬チューブ又はその一部が反応チャンバ内の内容物(例えば流体)に浸かることが好ましい。これにより、「浸漬チューブ」と称される。浸漬チューブを設けることで、ヘッドプレートの内側部分に付加的なパイプやチューブを接続する必要がなくなる;その代わりに、ヘッドプレート上に設けられた、好ましくはヘッドプレート全体と一体的に形成された浸漬チューブを使用することができる。これにより、製造プロセスに含む組立工程を少なくすることができるとともに、反応チャンバ内において、空隙やデッドスポットを生じさせうる分離した部品の数を低減することができる。
【0047】
使い捨てバイオリアクタの実施形態においては、ヘッドプレートが、軸受を受けるための凸部を有することが好ましい。このようなヘッドプレートの外向きの凸部は、反応チャンバ内に配置されたミキサシャフトの軸受を収容するとともに、軸受の配置に利用可能な反応チャンバ内のスペースを最小限まで低減するという目的において好ましい。ミキサ用の回転駆動部は、ヘッドプレートの外側に設けられた凸部上に配置されてもよい。特に好ましくは、凸部は、ヘッドプレート内の開口を含まないものである。このことは特に、磁気結合を行う場合、特に、前述した回転駆動部とミキサシャフトが前端で磁気結合を行う場合に好ましい。
【0048】
特に好ましくは、バイオリアクタは、以下で説明されるヘッドプレート又はその発展形の1つを有する。発明の特別な利点および変形例、並びにヘッドプレートおよびその発展形の詳細に関連して、ヘッドプレート又は発展形の1つのそれぞれの特徴に関する以下の説明を言及する。
【0049】
好ましくは、使い捨てバイオリアクタは、反応チャンバ内において軸受を収容するための軸受チャンバを形成する軸受筐体を有する。ここで記載される実施形態は、特に前述したヘッドプレート内の凸部と組合せることで、軸受チャンバがヘッドプレートにおける凸部の領域内において部分的に、好ましくはその大部分が配置されるという利点と、意図した方法によりバイオリアクタを使用する際に、ヘッドプレートの下方に位置する反応チャンバの一部が実質的に利用可能であるという利点がある。特に好ましくは、軸受筐体は、例えば滑り軸受などの手段により反応チャンバから軸受チャンバを画定する。
【0050】
軸受筐体は、ヘッドプレートの内側部分に着脱可能に取り付けられる、又は恒久的に結合されることが好ましい。軸受筐体は例えば、スナップ式、クリップ式又はねじ式の接続手段によって着脱自在に取り付けられることが好ましい。軸受筐体は、接合又は溶接により、特に超音波溶接によりヘッドプレートの内側部分と恒久的に取り付けてもよい。
【0051】
発明の第4態様によれば、冒頭で言及した目的は、前述した各種態様又はその発展形のいずれかによる使い捨てバイオリアクタと、ミキサシャフトの磁気部と軸方向に磁気結合可能に設けられた磁気駆動部を有する回転駆動部と、を備えるバイオテクノロジカルデバイスによって達成される。
【0052】
好ましくは、磁気部は、プラスチック母材と磁気材料を含む複合材料からなる、又は、そのような複合材料を含む。
【0053】
好ましくは、磁気成分を含む複合材料又は2成分材料は、回転駆動部における前面側の駆動部材上に射出成形される。
【0054】
特に好ましい1つの実施形態では、磁気駆動部は、回転軸に直交する断面を有し、当該断面の大部分、好ましくは断面全体にわたって磁気力を発生させることで、ミキサシャフトの磁気部と軸方向に磁気結合を行う。
【0055】
好ましくは2次元の、このような磁力を発生させる領域の連続的な断面による構成は、より具体的には、プラスチック母材と磁気材料を有する複合材料を射出成形金型に射出成形することにより得ることが可能であり、当該複合材料はその一部として、磁気材料を射出成形中に整列させるための磁石を含んでいる。磁力を発生させる磁気駆動部の断面は好ましくは、円形、楕円形又は長方形である。磁力を発生させる磁気部の断面の中に、異なる極性のセグメントが形成されることが好ましい。当該セグメントは例えば、星形のパターン又はπ型のセグメントを伴ったパターンを形成してもよい。磁気駆動部のセグメントによって形成されるパターンは、ミキサシャフトの磁気部のセグメントによって形成されるパターンと適合することが好ましい。
【0056】
このような構成にはいくつかの利点がある。第1に、複数の棒磁石を環状に配置した実施形態と比較して、より大きなトルクが伝達可能である。このように大きなトルクは特に、1500rpmを超える速い回転速度、特に2000rpmまで又は3000rpm以上までの速い回転速度といった、特に微生物学の用途で必要とされる速度を達成する際に要求される。大きなトルクの伝達と同時に、回転駆動部に必要とされる断面積を小さく又は低く維持することができ、これによりヘッドプレート上で必要とされる設置スペースを小さく又は低く維持することができる。セグメントにおいて特定の極性パターンを形成することにより、セグメントの極性が適合したバイオリアクタのみを回転駆動部により駆動可能となるため、当該バイオリアクタをそれに応じて設計された回転駆動部に特別に適合させることができ、これによりプロセスの信頼性レベルを向上させることができる。このことは、所望のトルクおよび所望の速度による駆動を確保する際に有利である。その理由は、回転駆動部に機械的に結合されたミキサに関してのみ、トルクおよび得られる速度をモニタし、ミキサと回転駆動部の磁気結合部に関しては、トルクおよび得られる速度をモニタしないためである。一方で、発散的な速度は例えば、電気定格が過度に小さい回転駆動部を使用する際に培養プロセスに対して否定的な影響を及ぼす可能性がある。
【0057】
発明の利点および変形例、並びにバイオテクノロジカルデバイスおよびその発展形の詳細に関連して、使い捨てバイオリアクタの各デバイスの特徴に関する上述の説明が言及される。
【0058】
発明の第5態様によれば、冒頭で言及した目的は、請求項10に記載のヘッドプレートによって達成される。このヘッドプレートは、前述したような使い捨てバイオリアクタにとって特に適切であるとともに、各種態様又はその発展形にとっても適切なものである。ヘッドプレートは、内側部分と、内側部分の反対側に設けられた外側部分とを備え、内側部分は複数の浸漬チューブを有し、外側部分は複数のコネクタを有し、ヘッドプレートは一体型構造である。
【0059】
このような外側部分に複数のコネクタを有すると同時に内側部分に複数の浸漬チューブを有するヘッドプレートの一体型構造によれば、特に高レベルな一体化を実現できる点で有利である。これにより、従来のヘッドプレートの内側部分に設けられたコネクタに対して取り付ける必要があるチューブなどの導管を、浸漬チューブが代用するという点で、使い捨てバイオリアクタの組立を著しく単純化することができる。このような一体型構造のおかげで、反応チャンバ内のパーツの数やそれによる空隙やデッドスポットの数を低減することができる。
【0060】
特に好ましくは、浸漬チューブの長さは、ヘッドプレートとともに用いられる使い捨てバイオリアクタが最小限の充填ボリュームまで満たされたときに、浸漬チューブが内容物又は細胞培養液に浸漬するほどの長さである。より具体的には、浸漬チューブの長さを、ヘッドプレートの直径の少なくとも85%とすることが好ましい。本明細書における直径とは例えば、断面が円形のヘッドプレートの直径として理解される。断面が楕円形又は長方形のヘッドプレートの場合の直径とは、ヘッドプレートの主要な2つの伸張方向のうちの1つにおけるヘッドプレートの伸張部分として理解される。
【0061】
特に好ましくは、浸漬チューブの長さは、ヘッドプレートの直径の50%よりも大きい、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%である。好ましくは、浸漬チューブの長さは、ヘッドプレートの直径と少なくとも等しい。好ましい浸漬チューブの長さは、ヘッドプレートの直径の1.1倍よりも大きい、1.2倍よりも大きい、1.3倍よりも大きい、1.4倍よりも大きい、1.5倍よりも大きい、1.6倍よりも大きい、1.7倍よりも大きい、1.8倍よりも大きい、1.9倍よりも大きい、又は2倍よりも大きい。
【0062】
好ましくは、ヘッドプレートは、少なくとも3つ、あるいはより具体的には少なくとも5つの浸漬チューブを有する。
【0063】
好ましくは、浸漬チューブの内径は、8mmよりも小さい、特に7mmよりも小さい、6mmよりも小さい、5mmよりも小さい、4.8mmよりも小さい、4.75mmよりも小さい、4.7mmよりも小さい、4.5mmよりも小さい、4.3mmよりも小さい、4mmよりも小さい、3.5mmよりも小さい、3mmよりも小さい、2.5mmよりも小さい、2mmよりも小さい、1.5mmよりも小さい、又は1mmよりも小さい。
【0064】
ヘッドプレートにおける少なくとも2つ、好ましくは数個の浸漬チューブが異なる内径を有することが好ましい。さらに好ましくは、ヘッドプレートにおける少なくとも2つ、好ましくは数個の浸漬チューブが異なる長さを有することが好ましい。これらの実施形態は、このようなヘッドプレートを有する使い捨てバイオリアクタを幅広くかつ柔軟な範囲の用途で使用可能できるように、浸漬チューブを異なる用途に適用する目的の場合に好ましい。
【0065】
特に好ましくは、ヘッドプレートは、射出成形プロセスにより製造される。
【0066】
好ましくは、ヘッドプレートは、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリメチルペンテン又はポリプロピレンにより形成される。これらの材料は、細胞培養と微生物学の用途で用いる際の要件を満たすと同時に、高い温度抵抗性を有するという利点がある。
【0067】
さらに、好ましくは、ヘッドプレートは、ミキサの軸受を受けるための凸部を有する。このことは特に、前述したミキサと回転駆動部が磁気結合を行う使い捨てバイオリアクタ用のヘッドプレートにおいて好ましい。
【0068】
特に好ましくは、少なくとも1つの浸漬チューブの直径は、ヘッドプレートから離れる方向に向いた端部においてテーパ状である。このようなテーパ状の浸漬チューブおよび/又はその他の浸漬チューブのうちの1つ以上は、ヘッドプレートから離れた方向を向く端部にて閉じていることが好ましく、また当該端部にオリフィスを形成することが好ましく、そのオリフィスの直径は浸漬チューブの内径よりも小さいことが好ましい。このことは特に、浸漬チューブがガス用のチューブとして設けられる場合に好ましい。
【0069】
好ましくは、浸漬チューブの壁厚は、3mmよりも小さい、特に2mmよりも小さい、1.5mmよりも小さい、又は1mmよりも小さい。
【0070】
ヘッドプレートの外側部分に配置された少なくとも1つ、好ましくは2つのコネクタは、ねじ山、好ましくは雌ねじを有する。これにより、ヘッドプレートにコネクタとの接続のための付加的な接続部材を取り付けることなく、コネクタにおいてねじ接続を形成することができる。
【0071】
発明の第6態様によれば、冒頭で言及した目的は、請求項12に記載の使い捨てバイオリアクタを製造するプロセスによって達成される。発明の第7態様又は先行する態様の1つの発展形によれば、前述した目的は、請求項13に記載の使い捨てバイオリアクタを製造するプロセスによって達成される。発明の第8態様によれば、前述した目的は、請求項14に記載の使い捨てバイオリアクタのためのヘッドプレートを製造するプロセスによって達成される。発明の利点および変形例、並びに発明の製造プロセスの態様およびその発展形の詳細に関連して、使い捨てバイオリアクタおよびヘッドプレートのそれぞれの製品特徴に関する上述の説明が言及される。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1−
図5は、発明のいくつかの実施形態とその適用方法を例示として示す。同一又は類似の要素は、図面に同じ参照符号で示される。
【0074】
図1A、1B、1C、1D、1Eおよび
図2A、2B、2C、2D、2E、2Fは、使い捨て(single-use)バイオリアクタ1と、バイオテクノロジカルデバイスとを示す。バイオテクノロジカルデバイスは、
図3に示される並列式のバイオリアクタシステム10に用いられる使い捨てバイオリアクタと、接続デバイスと、温度制御デバイスとを備える。これらは、細胞培養および/又は微生物学の用途に用いられる。
図3に示される並列式のバイオリアクタシステム10は、4つのレセプタクル12を内部に含むベースブロック11を備える。それぞれのレセプタクル12には、バイオリアクタ1を着脱可能に挿入することができる。必要に応じて、レセプタクル12内のバイオリアクタ1を加熱又は冷却する温度制御ユニットを好ましくはベースブロック11内に配置してもよい。コンテナ13を含んだ装置がベースブロック11に隣接して形成される。ベースブロック11は、積層用表面を有する。積層用表面上には、2つの機能ブロック14、15が着脱可能に積層して配置される。機能ブロック15は例えば、保管・表示ステーション又はポンプステーションとして構成されており、例えばバイオリアクタの運転に必要な流体の供給や除去を行う。このような並列式のバイオリアクタシステム10は、4つの使い捨てバイオリアクタ1をそれぞれ備えた状態にて互いに並べて配置することができるため、設置面積が小さくかつ高いスケーラビリティを有するという特徴がある。使い捨てバイオリアクタ1は、前述したような細胞培養および/又は微生物学の用途に用いられる並列式のバイオリアクタシステムにおいて、再利用可能なバイオリアクタと同じように使用可能という特徴ある。
【0075】
使い捨てバイオリアクタ1は、ヘッドプレート100と、寸法安定性を有するコンテナ200と、ミキサ300とを備える。ヘッドプレート100およびコンテナ200は、反応チャンバ400を内側に含む。ヘッドプレート100は、反応チャンバ側に向いた内側部分101を有する。内側部分101には、反応チャンバ400内に突出した複数の浸漬チューブ110が配置されている。反応チャンバ400側に向いたヘッドプレート100の外側部分102には、複数のコネクタ120が配置されている。
【0076】
ミキサ300は、回転軸を有するミキサシャフト310と、撹拌部材320とを備える。本明細書では、撹拌部材320は、45°で傾斜した羽根(例えば傾斜羽根車)により具現化されている。あるいは、撹拌部材として、少なくとも1つのラッシュトン型羽根車を用いてもよい。撹拌部材320は、ミキサシャフト310に対してねじれ固定的に(torsionally ridigly)取り付けられている。これにより、ミキサシャフト310が回転すると、撹拌部材320も同様に回転することとなる。
【0077】
ヘッドプレート100およびコンテナ200は、好ましくはポリアミドで形成されるとともに、超音波溶接によって互いに恒久的に結合される。ミキサ300、特にミキサシャフト310および/又は撹拌部材320は、好ましくはポリスチレンで形成される。ポリスチレンは、ポリアミドよりも温度抵抗性が低いため、使い捨てバイオリアクタ1に対して蒸気殺菌を行った場合にミキサ300は使えなくなる。このようにして、使い捨てバイオリアクタ1の再利用を防止する。
【0078】
ミキサシャフト310は、軸受500内にある回転軸を中心に回転可能に設置されている。軸受500は、ヘッドプレート100の凸部130内に配置されている。軸受筐体510は、反応チャンバ400内に軸受チャンバ520を内側に含む。ミキサシャフト310は、滑り軸受530を介して軸受筐体510内に通されている。軸受筐体の全体は、好ましくは滑り軸受として適切な材料からなる。これにより、単一のパーツの数を低減するとともに、高いレベルの一体化を実現することができ、製造および組立の関係を良好にすることができる。軸受500は、ころ軸受として設計されており、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン若しくはポリテトラフルオロエチレンのボールレースを含むポリマー製のころ軸受501と、ガラス製の玉軸受け502である。
【0079】
ミキサ300および軸受500は、反応チャンバ400内に完全に配置されている。
図1D、1E、2E、2Fから分かるように、ミキサシャフト310は、回転駆動部600に対して軸方向に磁気結合される磁気部311を備える。ミキサシャフト310の磁気部311、311’は、回転駆動部600と前面にて(すなわち軸方向に)磁気結合している。回転駆動部600は略円筒形であり、その断面積はヘッドプレート100上に設けられた凸部130の断面積と略同じである。駆動部材613は、磁気駆動部611、611’を駆動するものである。
図1D、1E、2E、2Fに示すような、前面側における軸方向の磁気結合を確立することにより、特に小さなスペースが要求されるヘッドプレートの駆動ユニットにとって有利なものとなる。
【0080】
図1D、2Eに示される実施形態では、好ましくは磁石312が環状に配置される磁気部311がミキサシャフト310の端部に配置される。
図1D、2Eに示される実施形態では、磁石312を内部に有する磁気部311は、六角ナット313を介してミキサシャフト310にねじれ固定的に接続されている。回転駆動部600の磁気駆動部611内に磁石を配置してもよく、その場合、ミキサシャフト310の磁気部311の磁石312の配置に合わせて磁石を並べることが好ましい。
【0081】
あるいは、
図1E、2Fに示すような特に好ましい実施形態において、磁気部311’は、ミキサシャフト310に直交する面の横断面を有するとともに、当該横断面の大部分(好ましくは横断面全体)にわたって磁力を発生させることで、回転駆動部600と軸方向に磁気結合を行う。磁力を発生させる磁気部311’の横断面は、本明細書では好ましくは円形であり、また、異なる極性を有した複数のセグメント315a、bを有することが好ましい。複数のセグメント315a、bは例えば、星形のパターンやパイ状のセグメントによるパターンを形成するものである。
【0082】
好ましくは、回転駆動部600の磁気駆動部611’も、回転軸に直交する面の横断面を有するとともに、当該横断面の大部分(好ましくは横断面全体)にわたって磁力を発生させて、ミキサシャフト310の磁気部311’と軸方向に磁気結合を行う。
【0083】
磁力を発生させる磁気駆動部611’の横断面は、本明細書では好ましくは円形であり、また、異なる極性を有した複数のセグメント615を有することが好ましい。複数のセグメント615は例えば、星形のパターン又はパイ状のセグメントによるパターンを形成するものである。磁気駆動部611’のセグメント615によって形成されるパターンは、好ましくは、回転シャフト310の磁気部311’のセグメント315a、bによって形成されるパターンに適合する。
【0084】
磁気部311’および/又は磁気駆動部611’は、好ましくは、複合材料又は2成分材料、特に磁石/ポリマーの混合物により形成され、さらに好ましくは、射出成形プロセスにより形成される。磁気部311’および/又は磁気駆動部611’は、別々のパーツとして、ミキサシャフト310又は駆動部材613に配置されてもよく、その場合、好ましくはミキサシャフト310又は駆動部材613に着脱自在に取り付けられる。
【0085】
特に好ましくは、磁気部311は、ミキサシャフト310と一体的に形成される。そのような形成は、好ましくは、複合材料又は2成分材料、特に磁石/ポリマーの混合物をミキサシャフト310の一端に射出成形することで行われる。さらに、特に好ましくは、磁気駆動部611’は、駆動部材613と一体的に形成される。そのような形成は、好ましくは、複合材料又は2成分材料、特に磁石/ポリマーの混合物を駆動部材613に射出成形することで行われる。
【0086】
図5A、5B、5Cに示されるヘッドプレート100は特に、好ましくは一体型構造であり、射出成形プロセスによってポリアミドから形成されることが好ましく、外側にコネクタ120を有し、内側に浸漬チューブ110を有する。浸漬チューブ110がコネクタ120の一部に適合することで、対応するコネクタ120と浸漬チューブ110を通じて、反応チャンバ内へ/反応チャンバ内から、器具、センサ、導管又はチューブを挿入/取り出すことができる。コネクタ120は、反応プロセスに必要な物質を提供するために、および/又は、運転中に製造されるガスなどの物質を反応チャンバ400から取り除くために使用される。コネクタ120はオーバーレイと称しても良く、浸漬チューブ110はサブマーシブルと称しても良い。
【0087】
コネクタ123は例えば、排気ガスチューブ701に接続するために使用され、排気ガスチューブ701の端部には、無菌排気ガスフィルタ702が配置されている。排気ガスチューブ701を通じて排気されたガス蒸気は、例えば別のデバイス、好ましくは温度制御デバイスによって処理される。無菌フィルタ702は、排気ガスを排気する前のフィルタとして使用される。排気ガスチューブ701用のコネクタ123の隣には、特に排気ガス冷却エレメント700を受けるのに適した2つのU形状プロファイルによって、接続スロット124が形成される。排気ガス冷却エレメント700は、本願と並行して同日に出願された「使い捨てバイオリアクタの使い捨て無菌流体管用のデバイスおよび流体ストリームを処理する方法」を発明の名称とする出願に示すような冷却エレメントにより具現化されてもよい。このような冷却エレメント700は、排気ガスチューブ701を冷却してその内部に運搬される任意の流体を凝縮させるために使用され、凝縮された流体は、好ましくは重力により反応チャンバ400に戻されて、反応チャンバ内にて再度利用可能になり無菌フィルタ702を詰まらせない。
【0088】
コネクタ120は、雌ねじを含むねじコネクタ121として具現化されてもよく、あるいは例えば、クランプコネクタ122又は円錐状コネクタ125として具現化されてもよい。
図5A、5B、5Cに示すようなコネクタ120および浸漬チューブ110の配置によれば、柔軟性を向上させることができるため、このようなヘッドプレート100を備える使い捨てリアクタを細胞培養の分野だけでなく微生物学の分野のような多くの用途に適するものとすることができる。必要とされないコネクタ120は、例えば、
図1A、4A、4Bに示される2つのねじコネクタ121で示されるように用途に応じて閉じることができる。2つのねじコネクタ121の間に配置される3つの円錐状コネクタ125は、例えば
図5A、5B、5Cに示されるとともに、
図4A、4Bではチューブが押圧された状態で示される。
図2Cに示す変形例では、2つのねじコネクタ121のうち、後方側をキャップで閉じる一方、前方側は機能エレメントを支持している。例えば、pH、溶存酸素(DO)又は温度を検出するセンサや、その他の種類のセンサをコネクタ120に接続してもよく、それらのセンサは、好ましくは浸漬チューブ110を通じて反応チャンバ内に挿入される。2つのねじコネクタ121は、好ましくはPg13.5ポートにより具現化される。
【0089】
コネクタ120とヘッドプレート100の特に好ましい1つの組合せには、Pg13.5ポートとして具現化される2つのねじコネクタ、ヘッドスペースおよび水中ガス処理(水又は媒体に対するもの)のためのガスコネクタ、排気ガス冷却用の排気ガスコネクタおよびプラグ接続、例えばスワバブルバルブなどのサンプリングバルブを有するサンプリングコネクタ、媒体コネクタ、2つの浸漬チューブ、測温抵抗体(TorRTD)用のコネクタ、並びに透過性膜を有する溶存酸素(DO)センサコネクタが含まれる。ヘッドプレート100のコネクタ120に関する特に好ましい組合せは、
図5A、5B、5Cに示される。
【0090】
使い捨てバイオリアクタ1に用いられるとともに反応媒体との接触が可能なチューブおよび接続材料は、好ましくは、ポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリアミド又はシリコンなどの米国薬局方分類VI認定物質により形成される。使用するチューブは、好ましくは、熱可塑性エラストマーで形成された柔軟性チューブである。
【0091】
上述の詳細な説明、特許請求の範囲および図面に開示された発明の特徴は、発明を実現するにあたって、各種実施形態におけるマテリアルなものとしてそれぞれ別々におよび任意の組合せで使用されてもよい。