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特許6227646硬質カプセル製造用水性組成物及びその製造方法、硬質カプセル、並びに硬質カプセルスクラップの再活用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227646
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】硬質カプセル製造用水性組成物及びその製造方法、硬質カプセル、並びに硬質カプセルスクラップの再活用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20171030BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171030BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A61K9/48
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/36
   A61K47/02
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-524168(P2015-524168)
(86)(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公表番号】特表2015-524425(P2015-524425A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】KR2013005927
(87)【国際公開番号】WO2014017756
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0080258
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0131947
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508130188
【氏名又は名称】ロッテ精密化學株式会社
【氏名又は名称原語表記】LOTTE Fine Chemical Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジン リョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チュン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ソン ファン
(72)【発明者】
【氏名】シン、チュ ヒ
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−187412(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101167705(CN,A)
【文献】 特表2012−500230(JP,A)
【文献】 米国特許第3493407(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/36
A61K 47/38
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性セルロースエーテルと、
エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはそれらのうち2以上の混合物を含むアルコール類と、
ゲル化剤と、
水と、を含み、
前記水溶性セルロースエーテルの含有量が10〜25重量%、前記アルコール類の含有量が5〜30重量%、及び前記ゲル化剤の含有量が0.05〜5.0重量%であり、未溶解物を含まない、硬質カプセル製造用水性組成物。
【請求項2】
前記水溶性セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルセルロース(MC)、またはそれらのうち2以上の混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬質カプセル製造用水性組成物。
【請求項3】
記ゲル化剤として、カラギーナン(carrageenan)、ゲランガム(gellan gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、ペクチン(pectin)、またはそれらのうち2以上の水溶性ガム類を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬質カプセル製造用水性組成物。
【請求項4】
前記硬質カプセル製造用水性組成物は、ゲル化補助剤として、塩化カリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム、またはそれらのうち2以上の混合物を、0重量%を超えて1.0重量%以下の含量比で追加して含むことを特徴とする請求項に記載の硬質カプセル製造用水性組成物。
【請求項5】
水、アルコール類及び水溶性セルロースエーテルを含み、大気温度より高い40〜70℃の温度に維持されるセルロースエーテル溶液を製造する段階を含み、
前記アルコール類が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはそれらのうち2以上の混合物を含み、
前記硬質カプセル製造用水性組成物は、前記水溶性セルロースエーテル10〜25重量%、及び前記アルコール類が5〜30重量%を含み、未溶解物を含まない、硬質カプセル製造用水性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記セルロースエーテル溶液に、ゲル化剤を添加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の硬質カプセル製造用水性組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないしのうち、いずれか1項に記載の硬質カプセル製造用水性組成物を使用して製造された硬質カプセル。
【請求項8】
水溶性セルロースエーテルを含む硬質カプセルスクラップを、水及びアルコール類の混合液に溶解させ、再生硬質カプセル製造用水性組成物を製造する段階を含み、
前記アルコール類が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはそれらのうち2以上の混合物を含む硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項9】
前記硬質カプセルスクラップは、水溶性セルロースエーテル90〜95重量部、ゲル化剤0.05〜5.0重量部、ゲル化補助剤0〜1.0重量部、及び水分1.0〜7.0重量部を含むことを特徴とする請求項に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項10】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法の再生硬質カプセル製造用水性組成物を製造する段階は、追加水溶性セルロースエーテルを、前記硬質カプセルスクラップと共に、水及びアルコール類の混合液に溶解させる方式で遂行されることを特徴とする請求項に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項11】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物を、40〜70℃の温度で、2〜12時間維持させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項または10に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項12】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物に、追加ゲル化剤及び追加ゲル化補助剤のうち少なくとも一つを添加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項13】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物を基材に塗布して乾燥させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項14】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物は、前記水溶性セルロースエーテル10〜25重量%、及び前記アルコール類5〜30重量%を含むことを特徴とする請求項または10に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項15】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物は、0.05〜5.0重量%のゲル化剤を含むことを特徴とする請求項または10に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【請求項16】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物は、0重量%を超えて1.0重量%以下のゲル化補助剤をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の硬質カプセルスクラップ再活用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質カプセル製造用水性組成物及びその製造方法、硬質カプセル、並びに硬質カプセルスクラップの再活用方法に係り、さらに詳細には、水溶性セルロースエーテル及びアルコール類を含む硬質カプセル製造用水性組成物及びその製造方法、前記水性組成物を使用して製造された硬質カプセル、並びに前記硬質カプセルの製造過程で発生する硬質カプセルスクラップの再活用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に硬質カプセルは、牛や豚から由来したゼラチンを使用して製造されてきた。ゼラチン硬質カプセルの製造過程で発生するスクラップは、それを高温の水に溶解させた後、常温に冷却したとき、ゼラチンと同一のゲル特性を有するために、硬質カプセルに再活用される。従って、ゼラチンを使用して硬質カプセルを製造すれば、カプセル製造原価を節減することができ、そのために、ほとんどのカプセルメーカーは、いまだにゼラチン硬質カプセルの製造を好んでいる。
【0003】
ゼラチンを含む水性組成物は、ゼラチンを高温(例えば、60℃)の熱湯に直接溶解させることができ、水性組成物の製造時間が短く、水性組成物にモールドピンを浸漬した後で取り出し、前記モールドピンに塗布された水性組成物を乾燥させる場合、乾燥時間が短く、弾性、光沢性及び崩壊性にすぐれる高品質の硬質カプセルを得ることができ、前記硬質カプセルの生産収率も非常に高い。しかし、最近、ゼラチンの使用が、狂牛病などの問題によって制限を受けており、ゼラチンを使用しない植物性素材であるセルロースエーテルを使用して製造されたカプセルが関心を集めている。
【0004】
しかし、セルロースエーテルは、常温(25℃)の水に溶解されはするが、水に投入されるや否や、ほとんどが凝集されて凝集体を形成するので、完全溶解までは、長時間がかかるという問題点がある。それを防止するために、硬質カプセル製造用水性組成物を製造する場合、凝集が起こらないように、セルロースエーテルを高温(例えば、80℃以上)の熱湯に投入した後、良好に分散させて分散液を製造し、次に、前記分散液を第1温度(例えば、40〜50℃)に放冷し、前記分散されたセルロースエーテルを水に溶解させる。その後、前記結果物を第2温度(例えば、55〜65℃)に昇温させた後、前記結果物に、ゲル化剤、及び選択的にゲル化補助剤を添加する。そのとき、前記結果物を前記第2温度に昇温させる理由は、前記ゲル化剤及びゲル化補助剤が固まることを防止するためである。ところで、前記第2温度では、セルロースエーテルが水に完全に溶解されず、セルロースエーテルを含む水性組成物及び最終硬質カプセルは、下記のような短所を有する:
(1)水性組成物は、位置によって粘度が不均一であるだけではなく、長期間保管する場合、層分離が起こる。
(2)水性組成物において、セルロースエーテルとゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)との混合度(degree of mixing)が低下し、ゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)の添加量が増加されなければならない。
(3)水性組成物は、それからの異物(例えば、纎維)を除去するための後続濾過工程において濾過効率が低い。
(4)濾過工程を経た後にも、水性組成物に異物が残留し、カプセル化剤及び/またはカプセル補助剤の機能を弱化させるので、カプセル成形性が落ちる。
(5)カプセル成形工程において、基材(例えば、モールドピン)に塗布された水性組成物中の水分を蒸発させるための乾燥工程を遂行する場合、乾燥速度が遅い。
(6)水性組成物の製造時間及び乾燥時間が長く、硬質カプセルの生産収率が低い。
(7)水性組成物に残留する異物が最終製品である硬質カプセルに混入され、かように混入された異物によって、硬質カプセルの品質(弾性、光沢度、崩壊性など)が低下し、硬質カプセルの製造単位ごとに、品質が一定に維持されにくい。
【0005】
また、セルロースエーテルを使用して硬質カプセルを製造する場合、カプセルの製造過程で発生するスクラップは、水に溶解される場合、高粘度の溶液を形成するために、高濃度に溶解され難く、前記高粘度の溶液は、ゲル特性を有さないので、硬質カプセルに再活用されにくいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、水溶性セルロースエーテル及びアルコール類を含む硬質カプセル製造用水性組成物を提供する。
【0007】
本発明の他の具現例は、前記水性組成物の製造方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の具現例は、前記水性組成物を使用して製造された硬質カプセルを提供する。
【0009】
本発明のさらに他の具現例は、水溶性セルロースエーテルを含む硬質カプセルスクラップの再活用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、水溶性セルロースエーテルと、アルコール類と、水と、を含む硬質カプセル製造用水性組成物を提供する。
【0011】
前記硬質カプセル製造用水性組成物において、前記水溶性セルロースエーテルの含量比は、10〜25重量%であり、前記アルコール類の含量比は、5〜30重量%でもある。
【0012】
前記水溶性セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルセルロース(MC)、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0013】
前記アルコール類は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0014】
前記硬質カプセル製造用水性組成物は、0.05〜5.0重量%の含量比を有するゲル化剤を追加して含んでもよい。
【0015】
前記ゲル化剤は、水溶性ガム類を含み、前記水溶性ガム類は、カラギーナン(carrageenan)、ゲランガム(gellan gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、ペクチン(pectin)、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0016】
前記硬質カプセル製造用水性組成物は、0重量%を超えて1.0重量%以下の含量比を有するゲル化補助剤を追加して含んでもよい。
【0017】
前記ゲル化補助剤は、塩化カリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0018】
本発明の他の側面は、水、アルコール類及び水溶性セルロースエーテルを含み、大気温度より高い第1温度に維持されるセルロースエーテル溶液を製造する段階を含む硬質カプセル製造用水性組成物の製造方法を提供する。
【0019】
前記第1温度は、40〜70℃でもある。
【0020】
前記硬質カプセル製造用水性組成物の製造方法は、前記セルロースエーテル溶液を熟成させる段階、及び前記結果物にゲル化剤を添加する段階をさらに含んでもよい。
【0021】
前記セルロースエーテル溶液の熟成段階は、40〜70℃の温度で、2〜12時間遂行されもする。
【0022】
本発明のさらに他の側面は、前記硬質カプセル製造用水性組成物を使用して製造された硬質カプセルを提供する。
【0023】
本発明のさらに他の側面は、水溶性セルロースエーテルを含む硬質カプセルスクラップ(hard capsule scrap)を、水及びアルコール類の混合液に溶解させ、再生硬質カプセル製造用水性組成物を製造する段階を含む硬質カプセルスクラップの再活用方法を提供する。
【0024】
前記硬質カプセルスクラップは、水溶性セルロースエーテル90〜95重量部、ゲル化剤0.05〜5.0重量部、ゲル化補助剤0〜1.0重量部及び水分1.0〜7.0重量部を含んでもよい。
【0025】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法の再生硬質カプセル製造用水性組成物を製造する段階は、追加水溶性セルロースエーテルを、前記硬質カプセルスクラップと共に、水及びアルコール類の混合液に溶解させる方式で遂行されもする。
【0026】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法は、前記再生硬質カプセル製造用水性組成物を40〜70℃の温度で2〜12時間維持させる段階をさらに含んでもよい。
【0027】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法は、前記再生硬質カプセル製造用水性組成物に追加ゲル化剤及び追加ゲル化補助剤のうち少なくとも一つを添加する段階をさらに含んでもよい。
【0028】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法は、前記再生硬質カプセル製造用水性組成物を基材に塗布して乾燥させる段階をさらに含んでもよい。
【0029】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物は、前記水溶性セルロースエーテル10〜25重量%、及び前記アルコール類5〜30重量%を含んでもよい。
【0030】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物は、0.05〜5.0重量%のゲル化剤を含んでもよい。
【0031】
前記再生硬質カプセル製造用水性組成物は、0重量%を超えて1.0重量%以下のゲル化補助剤をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一具現例による硬質カプセル製造用水性組成物は、水溶性セルロースエーテル及びアルコール類を含むことにより、低温(例えば、0〜40℃)だけではなく、高温(例えば、40〜70℃)の水でも、セルロースエーテルの直接的な溶解が可能であり、水性組成物の製造時間が短縮され、カプセル成形時、乾燥工程において乾燥時間が短縮され、最終製品である硬質カプセルの生産収率も向上する。また、セルロースエーテルとゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)との混合度が改善され、ゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)の少量添加によっても、高品質の硬質カプセルを得ることができる。
【0033】
本発明の他の具現例による硬質カプセルスクラップ再活用方法によれば、硬質カプセルの製造コストと、硬質カプセルスクラップの廃棄コストとを節減することができ、環境汚染を低減させ、高品質の硬質カプセルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施例2−5及び比較例2−4で製造された水性組成物の経時的な乾燥率変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一具現例による硬質カプセル製造用水性組成物について詳細に説明する。
【0036】
本発明の一具現例による硬質カプセル製造用水性組成物(以下、「第1組成物」とする)は、水溶性セルロースエーテル、アルコール類及び水を含む。
【0037】
前記水溶性セルロースエーテルは、前記第1組成物の主成分である。かような水溶性セルロースエーテルは、植物性素材であるセルロースから由来したものであり、人体に無害であるという利点を有する。本明細書で、「セルロースエーテル」は、セルロースのヒドロキシ基を、エーテル化剤を使用してエーテル化したセルロース誘導体を意味する。
【0038】
前記第1組成物において、前記水溶性セルロースエーテルの含量比は、10〜25重量%でもある。前記水溶性セルロースエーテルの含量比が前記範囲以内であるならば、粘度が適当であり、気泡除去が容易であり、適当な厚みのカプセルを得ることができる。
【0039】
前記水溶性セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルセルロース(MC)、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0040】
前記アルコール類は、前記水溶性エーテルが、前記第1組成物内で液化(すなわち、溶解)されるように一助となる役割を行う。それについて具体的に述べれば、次の通りである。
【0041】
すなわち、前記水溶性セルロースエーテルは、低温(20〜30℃)の水に投入される場合、水と直接接触する部分は、溶解されるが、水と直接接触しない残りの部分は、凝集されて塊を形成し、高温(40〜70℃)の水に投入される場合には、水と直接接触する部分であるとしても、良好に溶解されないという性質を有する。ところで、前記アルコール類は、水と混合されてアルコール水溶液を形成し、前記水溶性セルロースエーテルは、低温(20〜30℃)のアルコール水溶液だけではなく、高温(40〜70℃)のアルコール水溶液でも良好に溶解される。
【0042】
前記アルコール類の含量比は、5〜30重量%でもある。前記アルコール類の含量比が前記範囲以内であるならば、セルロースエーテルの溶解性が高くなり、カプセル製造時、アルコール類の蒸発速度が適当になり、しわのない滑らかなカプセル膜を得ることができる。
【0043】
前記アルコール類は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0044】
前記第1組成物は、0.05〜5.0重量%の含量比を有するゲル化剤を追加して含んでもよい。前記ゲル化剤の含量比が、前記範囲以内であるならば、前記第1組成物の粘度が適当に上昇し、それを使用して形成された硬質カプセルの破断伸び率が高くなり、脆性(brittleness)が低くなる。
【0045】
前記ゲル化剤は、水溶性ガム類を含んでもよい。
【0046】
前記水溶性ガム類は、カラギーナン(carrageenan)、ゲランガム(gellan gum)、キサンタンガム(xanthan gum)、ペクチン(pectin)、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0047】
前記第1組成物は、0重量%を超えて1.0重量%以下の含量比を有するゲル化補助剤を追加して含んでもよい。前記ゲル化補助剤の含量比が、前記範囲以内であるならば、前記ゲル化剤のゲル化能を向上させ、カプセル成形性にすぐれる第1組成物を得ることができ、ヘイズの発生がない硬質カプセルを得ることができる。
【0048】
前記ゲル化補助剤は、塩化カリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0049】
前記第1組成物は、0.05〜5.0重量%の含量比を有する可塑剤を追加して含んでもよい。前記可塑剤の含量比が、前記範囲以内であるならば、破断伸び率の高い硬質カプセルを得ることができる。
【0050】
前記可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはそれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0051】
前記第1組成物は、カプセル成形温度(40〜70℃)に加熱される場合、水溶性セルロースエーテルの完全溶解がなされ、次のような利点を有する。
第一に、製造時間が短縮される。
第二に、均質度が高くて粘度が均一であり、長期間保管しても層分離が起こらない。
第三に、製造単位ごとに粘度が一定に維持される。
第四に、ゲル化剤及び選択的なゲル化補助剤の機能を抑制する未溶解物(例えば、セルロースエーテル)が存在せず、カプセル成形性が高い。
第五に、セルロースエーテルとゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)との混合度が高く、ゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)の添加量が減少する。
第六に、前記第1組成物から異物を除去するための後続濾過工程において、濾過効率が高い。
第七に、カプセル成形工程において、基材(例えば、モールドピン)に塗布された水性組成物中の溶媒成分を除去するための乾燥工程を遂行する場合、乾燥速度が速い。
第八に、前記第1組成物の製造時間及び乾燥時間が短く、硬質カプセルの生産収率が高い。
【0052】
本発明の他の側面は、前記第1組成物を使用して製造された硬質カプセルを提供する。例えば、前記硬質カプセルは、高温(40〜70℃)に加熱された前記第1組成物に、常温(20〜30℃)のモールドピンを浸漬した後、前記モールドピンを前記第1組成物から取り出し、乾燥させることによって製造される(それを「cold pin process」という)。
【0053】
前記硬質カプセルは、前記第1組成物が纎維のような異物を含まず、高品質(弾性、光沢度、崩壊性など)を有し、製造単位ごとに品質が一定に維持される。
【0054】
前記硬質カプセルは、胃溶性(gastric juice soluble)でもある。
【0055】
以下、前記第1組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0056】
前記第1組成物の製造方法は、水、アルコール類及び水溶性セルロースエーテルを含み、大気温度(0〜39℃)より高い第1温度(40〜70℃)に維持されるセルロースエーテル溶液を製造する段階を含む。具体的には、前記第1組成物の製造方法は、水とアルコール類とを混合し、アルコール水溶液を製造する段階(S1)、前記アルコール水溶液を加熱する段階(S2)、前記加熱されたアルコール水溶液に水溶性セルロースエーテルを溶解させ、セルロースエーテル溶液を製造する段階(S3)、前記セルロースエーテル溶液を熟成させる段階(S4)、及び前記結果物にゲル化剤を添加する段階(S5)を含んむ。
【0057】
前記段階(S2)において、前記アルコール水溶液の加熱は、常温(20〜30℃)から40〜70℃の温度までで行われる。該段階(S2)は、段階(S3)において、水溶性セルロースエーテルがアルコール水溶液に良好に分散され、凝集されていない状態で良好に溶解されるようにするためである。前記加熱温度が、前記範囲以内であるならば、後述するゲル化剤(及び選択的なゲル化補助剤)が固まらずに、高いカプセル成形性を有し、不要な加熱によるエネルギーコストの増加を最小化する第1組成物を得ることができる。
【0058】
前記段階(S3)は、撹拌(例えば、300rpm)下で、前記加熱されたアルコール水溶液に、前記水溶性セルロースエーテルを徐々に(例えば、1〜2時間)投入することによって遂行される。
【0059】
しかし、本発明は、それに限定されるものではなく、前記段階(S1〜S3)の代わりに、水(またはアルコール類)に水溶性セルロースエーテルを溶解させ、第1セルロースエーテル溶液を製造した後、前記セルロースエーテル溶液にアルコール類(または水)を添加し、第2セルロースエーテル溶液を製造することもできる。また、その場合、(i)第1セルロースエーテル溶液及び第2セルロースエーテル溶液を製造する過程において、あらかじめ加熱された水及び/またはアルコール類を使用するか、あるいは(ii)常温(約25℃)の水(またはアルコール類)に、前記水溶性セルロースエーテルを溶解させ、第1セルロースエーテル溶液を製造した後、前記第1セルロースエーテル溶液を加熱した後、前記第1セルロースエーテル溶液に、常温のアルコール類(または水)を添加し、第2セルロースエーテル溶液を製造することができる。
【0060】
前記セルロースエーテル溶液の熟成段階(S4)は、40〜70℃の温度で、2〜12時間遂行される。前記段階(S4)の遂行時間(すなわち、熟成時間)が前記範囲以内であるならば、前記結果物から気泡が十分に除去され、その組成が均一になる。
【0061】
前記段階(S4)では、前記結果物に、ゲル化剤以外に、ゲル化補助剤及び/または可塑剤をさらに添加することができる。
【0062】
前記段階(S1〜S5)のうち少なくとも1段階は、撹拌下で遂行される。
【0063】
前記段階(S5)後、前記第1組成物から気泡を除去する段階を追加して含んでもよい。該段階(S5)は、撹拌によって遂行される。
【0064】
前記アルコール類、水溶性セルロースエーテル、ゲル化剤、ゲル化補助剤及び可塑剤の機能、種類及び含量比は、前述のところと同一であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
以下では、本発明の一具現例による硬質カプセルスクラップ(hard capsule scrap)再活用方法について詳細に説明する。
【0066】
本発明の一具現例による硬質カプセルスクラップ再活用方法は、水溶性セルロースエーテルを含む硬質カプセルスクラップを、水及びアルコール類の混合液(それを「アルコール水溶液」ともいう)に溶解させ、再生(recycled)硬質カプセル製造用水性組成物(以下、「第2組成物」とする)を製造する段階を含む。本明細書で、「硬質カプセルスクラップ」とは、硬質カプセルの製造過程で廃棄された物質(すなわち、切断して残った副産物)であり、硬質カプセルと同一材質の物質を意味する。具体的には、一次的に成形された硬質カプセルは、二次的に仕上げられ(すなわち、硬質カプセルの不要な部分を切断)、目標形状を有する硬質カプセルとして完成されるが、前記切断した部分を硬質カプセルスクラップという。
【0067】
前記水溶性セルロースエーテル及び前記アルコール類の種類及び機能は、それぞれ前述の第1組成物に含まれた水溶性セルロースエーテル及びアルコール類と同一であるか、あるいは類似しているので、ここでは、それらに係わる詳細な説明を省略する。
【0068】
前記硬質カプセルスクラップは、水溶性セルロースエーテル90〜95重量部、ゲル化剤0.05〜5.0重量部、ゲル化補助剤0〜1.0重量部、及び水分1.0〜5.0重量部を含む。
【0069】
前記ゲル化剤並びに前記ゲル化補助剤の種類及び機能は、それぞれ前述の第1組成物に含まれたゲル化剤及びゲル化補助剤と同一であるか、あるいは類似しているので、ここでは、それらに係わる詳細な説明を省略する。
【0070】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法の前記第2組成物を製造する段階は、追加水溶性セルロースエーテルを、前記硬質カプセルスクラップと共に、アルコール水溶液に溶解させる方式で進められる。
【0071】
または、前記第2組成物を製造する段階は、前記硬質カプセルスクラップをアルコール水溶液に溶解させて得た溶液に、追加水溶性セルロースエーテルをアルコール水溶液に溶解させて得た溶液を混合する方式で進められもする。
【0072】
また、前記第2組成物を製造する段階は、前記硬質カプセルスクラップをアルコール水溶液に溶解させ、2以上の溶液を製造した後、前記2以上の溶液を、互いに比率に合うように混合する方式で進められもする。
【0073】
前記追加水溶性セルロースエーテルは、前記硬質カプセルスクラップに含まれた水溶性セルロースエーテルと同一であるか、あるいは類似している。前記追加水溶性セルロースエーテルも、常温(20〜30℃)及び高温(40〜70℃)のアルコール水溶液に良好に溶解される。
【0074】
具体的には、前記第2組成物を製造する段階は、水とアルコール類とを混合し、アルコール水溶液を製造する段階(S10)、前記アルコール水溶液を加熱する段階(S20)、及び前記加熱されたアルコール水溶液に、前記硬質カプセルスクラップ及び前記選択的な追加水溶性セルロースエーテルを溶解させ、セルロースエーテル含有溶液を製造する段階(S30)を含む。
【0075】
具体的には、前記第2組成物を製造する段階は、前述の前記第1組成物を製造する方法と類似するため、以下では、前記2つの方法の差異を主として説明する。
【0076】
まず、前記第2組成物を製造する段階は、別途の水溶性セルロースエーテルではない前記硬質カプセルスクラップを原料として使用して、前記追加水溶性セルロースエーテルを補助原料として使用することができる。その理由は、前記硬質カプセルスクラップに水溶性セルロースエーテルがすでに含まれているからである。
【0077】
前記第2組成物を製造する段階は、前記段階(S30)で製造されたセルロースエーテル含有溶液を、40〜70℃の温度で2〜12時間維持させる段階(S40)(それを「熟成段階」という)をさらに含む。
【0078】
前記熟成段階(S40)には、ゲル化剤及びゲル化補助剤が添加されもしない。その理由は、前記硬質カプセルスクラップにゲル化剤及びゲル化補助剤がすでに含まれているからである。
【0079】
ただし、前記第2組成物を製造する段階は、前記熟成段階(S40)後、前記熟成段階(S40)の結果物に、追加ゲル化剤及び追加ゲル化補助剤のうち少なくとも一つ(例えば、追加ゲル化剤、及び選択的な追加ゲル化補助剤)を添加する段階をさらに含む。前記追加ゲル化剤及び追加ゲル化補助剤は、前記硬質カプセルスクラップに含まれたゲル化剤及びゲル化補助剤とそれぞれ同一であるか、あるいは類似している。
【0080】
前記第2組成物を製造する段階に含まれた全てのサブ段階のうち少なくとも1段階には、前記追加ゲル化剤及び/または前記追加ゲル化補助剤が添加される。
【0081】
前記硬質カプセルスクラップは、可塑剤をさらに含む。前記可塑剤は、前記第1組成物に含まれた可塑剤と同一であるか、あるいは類似している。
【0082】
また、前記第2組成物を製造する段階に含まれた全てのサブ段階のうち少なくとも1段階には、追加可塑剤がさらに添加される。前記追加可塑剤は、前記硬質カプセルスクラップに含まれた可塑剤と同一であるか、あるいは類似している。
【0083】
前記第2組成物の構成成分の種類、各構成成分の含量、及び前記第2組成物の製造上の長所と物性の長所は、前述の前記第1組成物と同一であるか、あるいは類似しているので、ここでは、それに係わる詳細な説明を省略する。
【0084】
前記硬質カプセルスクラップ再活用方法は、前記第2組成物を基材に塗布して乾燥させる段階をさらに含む。前記塗布段階及び乾燥段階は、前記第1組成物を基材に塗布して乾燥させ、硬質カプセルを製造する方法と同一であるので、ここでは、それに係わる詳細な説明を省略する。
【0085】
以下、実施例を挙げ、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は、かような実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0086】
〔実施例1−1〜1−4及び比較例1−1:セルロースエーテルの高温溶解性評価〕
エタノールと水(精製水)とを下記表1の比率で混合し、エタノール水溶液を製造した。その後、前記エタノール水溶液を、下記表1の温度で加熱した後、前記エタノール水溶液にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(三星精密化学(株)、AW4)を、下記表1の比率で添加して溶解させた。前記溶解が完了して4時間経過後、結果物の性状を肉眼で観察し、下記のように4段階で評価した。また、前記評価結果を下記表1に示した。
(結果物の性状評価方法)
◎:HPMCが非常に迅速に溶解され、結果物の性状が清くて透明である
○:HPMCが比較的迅速に溶解され、結果物の性状が清くて透明である
△:HPMCがややゆっくりと溶解され、結果物の性状がやや白濁して見える
×:HPMCが溶解されず、結果物の性状が非常に白濁して見える
【0087】
【表1】
【0088】
前記表1を参照すれば、実施例1−1〜1−4で製造された結果物は、HPMCが良好に溶解されており、性状及び粘性が良好である一方、比較例1−1で製造された結果物は、HPMCが溶解されていない状態で存在し、性状に劣るということが分かる。
【0089】
〔実施例2−1〜2−5:水性組成物のゲル化度及び乾燥速度の評価〕
実施例1−2で製造された結果物に、ゲル化剤であるK−カラギーナン((株)韓国カラゲーン、HG404)、及びゲル化補助剤である塩化カリウムを、下記表2の比率で添加し、水性組成物を得た。その後、前記各水性組成物のゲル化度を次のような方法で測定し、その結果を下記表2に示した。また、実施例2−5で製造された水性組成物の乾燥速度を次のような方法で測定し、その結果を下記表3に示した。
【0090】
(ゲル化度評価方法)
前記各水性組成物を、2ml容量の注射器にサンプリングした後、垂直に立てられたガラス板に一時に噴射した。前記噴射後、前記ガラス板に沿って流れる前記各水性組成物の流れが止まったとき、前記各水性組成物が前記ガラス板に沿って流れる長さを測定した。ここで、前記長さが短いほど、ゲル化度が高いということを意味する。
【0091】
(乾燥速度評価方法)
前記実施例2−5で製造された水性組成物にモールドピンを浸漬した。その後、前記モールドピンを前記水性組成物から取り出し、25℃及び55%RH(相対湿度)の条件下に放置した状態で、経時的なモールドピンの重量変化を測定した。その後、前記モールドピンの重量変化から、前記水性組成物の乾燥率を計算した。ここで、経時的な乾燥率変化が大きいほど、乾燥速度が速いということを意味する。経時的なモールドピンの重量変化及び乾燥率変化を下記表3に示した。また、経時的な前記水性組成物の乾燥率変化を図1にグラフで示した。
【0092】
〔比較例2−1〜2−3:水性組成物のゲル化度及び乾燥速度の評価〕
実施例1−2で製造された結果物の代わりに、比較例1−1で製造された結果物を使用して、K−カラギーナン、及び選択的な塩化カリウムの使用量を変更したことを除いては、前記実施例2−1〜2−5と同一の方法で水性組成物を製造し、前記製造された水性組成物のゲル化度を評価し、その結果を下記表2に示した。また、実施例2−5で製造された水性組成物の代わりに、比較例2−4で製造された水性組成物を使用したことを除いては、前記実施例2−5と同一の方法で、水性組成物の経時的な乾燥率を評価し、その結果を下記表3に示した。また、経時的な前記水性組成物の乾燥率変化を図1にグラフで示した。
【0093】
【表2】
【0094】
前記表2を参照すれば、実施例2−1〜2−5で製造された水性組成物は、比較例2−1〜2−3で製造された水性組成物に比べ、ゲル化剤(K−カラギーナン)及びゲル化補助剤(塩化カリウム)の含量比が同一であるか、あるいは類似した場合、ゲル化度にすぐれるということが分かる。従って、本発明の一具現例によって水性組成物を製造する場合には、従来技術によって水性組成物を製造する場合に比べ、ゲル化剤及びゲル化補助剤の使用量を減らすことができる。また、水性組成物のゲル化度を上昇させることができるゲル化剤とゲル化補助剤との適当な含量比及び混合比率が存在するということが分かる。一方、比較例2−4で製造された水性組成物は、ゲル化度は高いが、前記表1から分かるように、HPMCが未溶解状態で存在し、カプセル成形性に劣るだけではなく、低品質の硬質カプセルを得ることになる。
【0095】
【表3】
【0096】
前記表3及び図1を参照すれば、実施例2−5で製造された水性組成物は、比較例2−4で製造された水性組成物に比べ、乾燥速度が速いということが分かる。
【0097】
〔実施例3−1及び比較例3−1:硬質カプセルの溶解度及びヘイズ評価〕
前記実施例2−5及び比較例2−4で製造された水性組成物(温度:60℃)にモールドピンを浸漬した。その後、前記モールドピンを前記水性組成物から取り出し、25℃及び55%RH(相対湿度)の条件下で1時間放置し、前記水性組成物中の溶媒成分を乾燥させることによって硬質カプセルを得た。その後、次のような方法で、前記各硬質カプセルの溶解度及びヘイズを評価し、その結果を下記表4及び表5にそれぞれ示した。
【0098】
(硬質カプセルの溶解速度評価)
100mlの三角フラスコに水(精製水)50mlを入れた後、前記水の温度を37℃に維持した。その後、前記各硬質カプセルを前記三角フラスコ内に投入した後、三角フラスコを間欠的に振りながら、前記各硬質カプセルの溶解状態を確認した。前記各硬質カプセルを三角フラスコに投入した時点から、前記各硬質カプセルが完全に溶解された時点まで経過した時間(すなわち、溶解時間)を記録し、下記表4に示した。ここで、溶解時間が短いほど、溶解速度が速いということを意味する。
【0099】
【表4】
【0100】
前記表4を参照すれば、実施例3−1で製造された硬質カプセルは、比較例3−1で製造された硬質カプセルに比べ、溶解速度が速いということが分かる。
【0101】
(硬質カプセルのヘイズ評価)
前記各硬質カプセルを40mlバイアルに入れた後、前記各バイアルを、40℃及び75%RH(相対湿度)の条件の恒温恒湿器に投入した。その後、前記各硬質カプセルを毎週肉眼で観察し、ヘイズ発生程度を下記のように3段階で評価し、その結果を下記表5に示した。
◎:変化なし(すなわち、透明)
○:部分的に白濁に変わる
△:全般的に白濁に変わる
【0102】
【表5】
【0103】
前記表5を参照すれば、実施例3−1で製造された硬質カプセルは、長期間保管してもヘイズが発生しないということが分かる一方、比較例3−1で製造された硬質カプセルは、3週経過後からヘイズが発生しているということが分かる。
【0104】
〔実施例4−1,4−2及び参考例1−1:硬質カプセル製造用水性組成物の製造〕
エタノールと水(精製水)とを下記表6の比率で混合し、エタノール水溶液を製造した。その後、前記エタノール水溶液を、下記表6の温度で加熱した後、前記エタノール水溶液に、硬質カプセルスクラップ及び/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(三星精密化学(株)、AW4)を下記表6の比率で添加して溶解させた。ただし、実施例4−1,4−2及び参考例1−1では、1.5重量%のK−カラギーナンを含む硬質カプセル製造用水性組成物を得るために、前記エタノール水溶液に、適量のK−カラギーナン((株)韓国カラゲーン、HG404)をさらに添加した。結果として、実施例4−1,4−2及び参考例1−1で、共に約20重量%のHPMC、及び1.5重量%のK−カラギーナンを含む硬質カプセル製造用水性組成物をそれぞれ得た。
【0105】
【表6】
*1:硬質カプセルスクラップ:HPMC(三星精密化学(株)のAW4)92重量%、K−カラギーナン((株)韓国カラゲーン、HG404)1.2重量%、KCl 0.08重量%、グリセロール1.72重量%及び水分5重量%を含む
【0106】
〔評価例〕
実施例4−1,4−2及び参考例1−1で、前記硬質カプセルスクラップ及び/またはHPMCの溶解が完了して4時間経過後、結果物(すなわち、硬質カプセル製造用水性組成物)の性状を肉眼で観察し、前記実施例1−1〜1−4及び比較例1−1のような方法で評価した後、その結果を下記表7に示した。また、実施例4−1,4−2及び参考例1−1で製造された各硬質カプセル製造用水性組成物から形成されたゲルの強度、及び前記組成物から製造されたフィルムの物性を次のような方法で測定し、その結果を下記表7に示した。
【0107】
(ゲル強度評価方法)
60℃に維持される前記各硬質カプセル製造用水性組成物を、常温(約25℃)に冷却してゲル化させた。その後、Texture Analyzer(Brookfield,CT3−4500,Probe No:TA10)を使用して、前記各硬質カプセル製造用水性組成物から形成されたゲルの強度を測定し、その結果を下記表7に示した。
【0108】
(フィルム物性評価方法)
60℃に維持される前記各硬質カプセル製造用水性組成物を、フィルムキャスタ(三星精密化学(株)で自体製造)を利用して、ガラス基板上に塗布した。その後、前記硬質カプセル製造用水性組成物が塗布されたガラス基板を、常温(25℃)で24時間乾燥させ、100μm厚のフィルムを得た。その後、前記各フィルムを1cm*10cmサイズに切断した後、LLOYD Instrument testing machine(LRX plus、LLOYD Instrument,UK)を利用して、フィルムの引っ張り強度を測定した。また、前記各フィルムを4cm*5cmサイズに切断した後、Texture Analyzer(Brookfield,CT3−4500,Probe No.TA−39)を利用して、フィルム硬度を測定し、その結果を下記表7に示した。
【0109】
【表7】
【0110】
前記表7を参照すれば、硬質カプセルスクラップ、及び選択的なHPMCを使用して製造した実施例4−1,4−2で製造された硬質カプセル製造用水性組成物は、HPMCのみを使用して製造した参考例1−1で製造された硬質カプセル製造用水性組成物と同様に、硬質カプセルスクラップ、及び選択的なHPMCが良好に溶解されており、性状が良好であるいうことが分かる。また、実施例4−1,4−2で製造された硬質カプセル製造用水性組成物から製造されたゲルは、参考例1−1で製造された硬質カプセル製造用水性組成物から製造されたゲルに比べ、ゲル化剤(K−カラギーナン)の含量が同一である場合、ゲル強度が若干低くはあるが、硬質カプセル製造用として使用するには適当なゲル強度(≧100g)を有するということが分かる。また、硬質カプセルスクラップ、及び選択的なHPMCを使用して製造した実施例4−1,4−2で製造された硬質カプセル製造用水性組成物から製造されたフィルムは、HPMCのみを使用して製造した参考例1−1で製造された硬質カプセル製造用水性組成物から製造されたフィルムと同様に、引っ張り強度及びフィルム硬度が良好であるということが分かる。
【0111】
本発明は、図面及び実施例を参照して説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決められるものである。
図1