(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227647
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ブレードプリフォームの非破壊試験方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/245 20060101AFI20171030BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
G01B11/245 H
F02C7/00 C
F02C7/00 A
F02C7/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-524838(P2015-524838)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公表番号】特表2015-526722(P2015-526722A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】FR2013051868
(87)【国際公開番号】WO2014020288
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】1257613
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マロール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルロワイエ,ベルトラン・ピエール・マルタン
(72)【発明者】
【氏名】レオネッティ,クロード
【審査官】
八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/92379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン部品を製造するための織りプリフォーム(22)であり、第2のマーカー糸(32)と交絡された複数の第1のマーカー糸(30)を備え、第1の糸および第2の糸(30、32)はプリフォームの糸とは異なる光反射特性を有し、第1の糸および第2の糸がプリフォーム(22)の所定の部位に表面格子を形成するようにプリフォームの糸と織り合わされた織りプリフォームの自動非破壊試験方法であって、連続して、
(a)第1および第2のマーカー糸(30、32)の格子が、格子に照準が合わせられ互いに角度を成す光軸(40、42)を有する少なくとも2つの画像センサ(34、36)に対向して位置するように、プリフォーム(22)を所定位置に配置するステップと、
(b)プリフォーム(22)の所定部位を照射して、それぞれの画像センサ(34、36)を使用して、第1および第2のマーカー糸(30、32)の格子の画像を取得するステップと、
(c)それぞれの画像に対して、第1および第2のマーカー糸(30、32)の交点の画像の基準フレームの座標を決定するステップと、
(d)画像センサ(34、36)を使用して得られたそれぞれの画像の対象交点の座標を使用して、かつセンサ(34、36)の実空間位置およびそれぞれの軸(40、42)の空間配向を使用して、三角測量計算によってプリフォーム(22)上の第1および第2のマーカー糸(30、32)のそれぞれの交点の実空間位置を推定するステップと、
(e)第1および第2のマーカー糸(30、32)の交点の実位置をこれらの同じ交点の三次元理論位置と比較するステップと
から成る、自動非破壊試験方法。
【請求項2】
ステップcが、
それぞれの画像において、第1および第2のマーカー糸(30、32)の可視部分に相当する部位の輪郭(57、59)を決定するステップと、
それぞれの画像に対して、第1のマーカー糸(30)に沿って並んだ上記部位を含む画像領域(64、66)および第2のマーカー糸(32)に沿って並んだ上記部位を含む画像領域を決定するステップと、
それぞれの上記画像領域(64、66)において、第1および第2のマーカー糸(30、32)の可視部分に相当するさまざまな部位の重心座標(xi,yi)を決定して、最適にこれらの座標(xi,yi)を通るNURBS曲線などの数学的曲線(70、72)を形成するステップと、
第1のマーカー糸(30)に沿って延びる数学的曲線(70)と第2のマーカー糸(32)に沿って延びる数学的曲線(72)との交点の座標を決定するステップと
から成ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2のマーカー糸の可視部分(60、62)に相当する部位の輪郭(57、59)が、部位の形状および画像の残りの部分と比較した光反射レベルに応じて、動的閾値法によって決定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1および第2のマーカー糸(30、32)のそれぞれの可視部分(60、62)の中心が、それぞれの可視部分を楕円に適合させることによって決定されることを特徴とする、請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップbおよびステップcがn回繰り返されること、および次のステップは、それぞれの交点座標の測定値の必要な精度基準を計算することによって開始されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
精度基準が、それぞれの画像内のそれぞれの交点の座標における標準偏差計算から成り、ステップbおよびステップcの後のステップは、所定の閾値未満の標準偏差に対して開始されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
数字nが10より大きいことを特徴とする、請求項5または請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プリフォーム(22)が、ファンブレードプリフォームであること、および第1および第2のマーカー糸(30、32)の格子は、ブレードの凸面もしくは凹面に形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プリフォームが炭素繊維糸で織られること、およびマーカー糸(30、32)はガラス繊維糸と炭素繊維糸との組み合わせによって作成され、ガラス繊維糸は炭素繊維糸より明るい色を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
プリフォーム(22)が、プリフォーム(22)を所定位置で支持するのに適した支持体(20)に取り付けられ、その後、光線を吸収する壁を有しプリフォームを照射する手段(44)を収容するチャンバ内部に配置された画像センサ(34、36)に対向して移動されることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
画像センサ(34、36)が、10メガピクセルの解像度および約8.5mmの焦点距離を有するCCDもしくはCMOSタイプの光検出器マトリクスを備えたカメラであることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タービンエンジンファンブレードのプリフォームなどの織りプリフォームの非破壊試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ファンブレードは、プリフォームを織った後にプリフォームに樹脂を注入することによって製造されている。樹脂を注入する前に、織りプリフォームの特定のパラメータ、例えば、繊維密度や繊維の配向などをチェックすることが重要である。
【0003】
そのためには、ブレードの圧力側もしくは吸気側などのブレードの外表面に格子を形成することが既知である。この格子は、第1および第2の交絡されたマーカー糸を使用して形成される。
【0004】
格子の交点の位置を決定するために、織りプリフォームは、プリフォームに面する水平面に平行な面内を移動することができるレーザを担持するアームに対向して配置される。操作者は、レーザが交点を照射するように格子のさまざまな交点上でレーザを連続して移動させる。したがって、レーザの位置、ひいては、交点の位置は連続して記録される。
【0005】
測定された交点の実位置から、例えば、第1および第2のトレーサ糸の格子によって画定されたプリフォームのさまざまな部位における繊維量に関する情報を導き出すことができる。その後、これらの値は理論値と比較され、織りが正確に行われているか、また織りの後の作業、例えば、プリフォームの縁部の切断、および非破壊試験作業の前の作業がプリフォームの形状に影響を及ぼしているかを判断することができる。
【0006】
しかし、この技術は、非常に長い検査時間を要し、操作者によって手動で実行されるレーザ照準に左右されるので信頼性がないことが分かった。さらに、この技術は、レーザの移動面に実質的に平行な面以外の交点位置を測定することは不可能であり、レーザの軸に沿った交点の位置を考慮することができないので、三次元空間において平坦でなく高度に湾曲した織りファンブレードプリフォームには適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のタイプのプリフォームの自動非破壊試験を可能にすることによって、上記問題に対して単純かつ経済的な解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、タービンエンジン部品を製造するための織りプリフォームであり、第2のマーカー糸と交絡された複数の第1のマーカー糸を備え、第1の糸および第2の糸はプリフォームの糸とは異なる光反射特性を有し、第1の糸および第2の糸がプリフォームの所定の部位に表面格子を形成するようにプリフォームの糸と織り合わされた織りプリフォームの自動非破壊試験方法であって、連続して
(a)第1および第2のマーカー糸の格子が、格子に照準が合わせられ互いに角度を成す光軸を有する少なくとも2つの画像センサに対向して位置するように、プリフォームを所定位置に配置するステップと、
(b)プリフォームの所定部位を照射して、それぞれの画像センサを使用して、第1および第2のマーカー糸の格子の画像を取得するステップと、
(c)それぞれの画像に対して、第1のマーカー糸と第2のマーカー糸との交点の画像の基準フレームの座標を決定するステップと、
(d)画像センサによって得られたそれぞれの画像の対象交点の座標を使用して、かつかつセンサの実空間位置およびそれぞれの軸の空間配向を使用して、三角測量計算によって、プリフォーム上の第1および第2のマーカー糸のそれぞれの交点の実空間位置を推定するステップと、
(e)第1のマーカー糸と第2のマーカー糸との交点の実位置をこれらの同じ交点の三次元理論位置と比較するステップと
から成る自動非破壊試験方法を提案する。
【0009】
本発明によれば、第1および第2のマーカー糸はプリフォームの糸とは異なる光反射特性を有し、本発明の方法のステップbで撮影された画像のコントラスト差によって第1および第2のマーカー糸をプリフォームの糸と明確に区別することができる。
【0010】
先行技術とは異なり、プリフォームは、2つの画像センサに対向して所定位置にプリフォームを位置決めするために支持体上に配置される。その後、本発明の方法は、プリフォームの格子の複数の画像を撮影するステップと、その画像から第1および第2のマーカー糸によって形成された格子の交点位置を操作者による手動の調整ではなく自動的に導き出すステップとから成り、このことにより、測定値の精度および再現性が向上する。
【0011】
最後に、互いに角度を成す光軸を有する2つの画像センサを使用することにより、三角測量法を使用してそれぞれの交点の3つの空間座標X、Y、Zを導き出すことができる。これは、先行技術では不可能なことであった。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcは、
それぞれの画像において、第1および第2のマーカー糸の可視部分に相当する部位の輪郭を決定するステップと、
それぞれの画像に対して、第1のマーカー糸に位置合わせされた上記部位を含む画像領域および第2のマーカー糸に位置合わせされた上記部位を含む画像領域をそれぞれ決定するステップと、
それぞれの上記画像領域において、第1および第2のマーカー糸の可視部分に相当するさまざまな部位の中心または重心の座標(x
i,y
i)を決定して、最適にこれらの座標(x
i,y
i)を通るNURBS曲線などの数学的曲線を生成するステップと、
第1のマーカー糸に沿って延びる数学的曲線と第2のマーカー糸に沿って延びる数学的曲線との交点の座標を決定するステップと
から成る。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、第1および第2のマーカー糸の可視部分に相当する部位の輪郭は、部位の形状および画像の残りの部分と比較した光反射レベルに応じて、動的閾値法によって決定される。
【0014】
本発明の一実施形態では、第1および第2のマーカー糸のそれぞれの可視部分の中心は、それぞれの可視部分を楕円に適合させることによって決定される。したがって、マーカー糸の可視部分は全て実質的に楕円形を有することが推測される。これは、第1および第2のマーカー糸をプリフォームの糸と織り合わせることにより、プリフォームの糸の上下にマーカー糸が交互に通過するためである。
【0015】
好ましくは、ステップbおよびステップcはn回繰り返され、次のステップ、すなわち、ステップdおよびステップeは、それぞれの交点座標の測定値の必要な精度基準を計算することによって開始される。
【0016】
本発明の一実施形態では、精度基準は、それぞれの画像内のそれぞれの交点座標における標準偏差計算から成り、ステップbおよびステップcの後のステップは、所定の閾値未満の標準偏差に対して開始される。
【0017】
本発明の一実施形態では、数字nは10以上である。
【0018】
タービンエンジンの場合、プリフォームは、ファンブレードプリフォームとしてもよく、第1および第2のマーカー糸の格子は、ブレードの凸面もしくは凹面に形成可能である。
【0019】
本発明の別の特徴によれば、プリフォームは炭素繊維糸で織られ、マーカー糸はガラス繊維糸と炭素繊維糸との組み合わせによって作成され、ガラス繊維糸は炭素繊維糸より明るい色を有する。
【0020】
有利には、プリフォームは、プリフォームを所定位置で支持するのに適した支持体に取り付けられ、その後、光線を吸収する壁を有しプリフォームを照射する手段を収容するチャンバ内部に配置された画像センサに対向して移動される。
【0021】
本発明の一実施形態では、画像センサは、10メガピクセルの解像度および約8.5mmの焦点距離を有する。
【0022】
本発明の他の利点および特徴は、非限定的な例として添付図面を参照しながら後述する以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の方法を実施するための非破壊試験装置の概略斜視図である。
【
図2】所定位置で支持体に取り付けられた織りファンブレードプリフォームの概略斜視図である。
【
図4】本発明の方法の主なステップを示した図である。
【
図5】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図6】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図7】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図8】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図9】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図10】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図11】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図12】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【
図13】プリフォームの画像に施されるさまざまな数学的処理作業を示した図であり、取得された画像の概略図であって、反射要素が黒および逆の白で現れるように見やすくするためにコントラストが意図的に反転された図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の文脈において提案されている織りファンブレードプリフォームの非破壊試験方法を実施するための装置の概略図である。装置10は、平行六面体の形状のチャンバ14と、チャンバ14の外側にある第1の位置とチャンバ14の内側にある第2の位置(
図3)との間で水平方向18に可動なプレート16とを担持するフレーム12を備える。可動プレート16は、ブレードプリフォーム22が所定位置で配置される支持体20を担持する。チャンバ14は、水平方向18に垂直な方向26に並進移動可能なパネル24であって、プレート16がチャンバ14の中に入るように移動される際に開口するパネル24を備える(
図1)。
【0025】
図2は、織りブレードプリフォームの支持体20を示した図である。この支持体は、支持体20上の所定位置にプリフォームを位置決めすることができるように寸法決めされ分布された複数の突出部28を備える。支持体の突出部は一定の可撓性を有するブレードプリフォーム22が変形するのを防ぐので、変形していない状態で三次元で適合されたブレードプリフォーム22において確実に非破壊試験が実行されることになる。
【0026】
ブレードプリフォーム22は、第2のマーカー糸32と交絡され、ファンブレードプリフォームの凸面でプリフォームの糸と織り合わされることで格子を形成する複数の第1のマーカー糸30を備える。第1および第2のマーカー糸30、32はプリフォームの糸とは異なる光反射特性を有することで、プリフォームの糸に対して第1および第2のマーカー糸の格子を明確に視認できるようにする。図示されている例では、マーカー糸30、32は白色で、プリフォームの糸は黒色である。
【0027】
図3は、互いに既知の間隔で離間されて支持体38に取り付けられた少なくとも2つの画像センサ34、36と、互いに既知の角度を成す光軸40、42とを備えた撮像手段が収容されているチャンバ14内部の支持体20およびプリフォーム22を示している。ブレードプリフォーム22は、2つの画像センサ30、38が第1および第2のマーカー糸30、32の格子に照準を合わせるように支持体20上に配置される。チャンバ14はさらに、プリフォーム22の格子を照射する手段44を収容する。
【0028】
図1に示されるように、チャンバ14は、支持体20、プリフォーム22、またはチャンバ内部の任意の他の要素、例えば、画像センサ34、36によって壁に向かって反射される光線を通さずに吸収する壁を備える。このようにして、ブレードプリフォーム22に放出される光の強度を適切に制御することができ、チャンバの壁への反射が制限される。外側から入射する光も制限される。
【0029】
以下の説明では、本発明の非破壊試験方法の一連の主な段階を示した
図4を参照しながら、さらに続いて、画像センサを使用して撮影された画像に施される処理作業の画像を示した
図5〜
図13を参照しながら本発明について説明する。
【0030】
第1のステップ46では、操作者は、プリフォームを支持体20上に画像センサ34、36に対向して既知の所定位置に位置決めする。
【0031】
第2のステップ48では、次に、本発明の方法は、照射手段を使用してプリフォームの第1および第2のマーカー糸30、32の格子を照射すること、およびそれぞれの画像センサ34、36を使用して該格子の画像を撮影することから成る。
【0032】
第3のステップ50では、本発明の方法は、それぞれの画像の基準フレーム内の第1のマーカー糸30と第2のマーカー糸32との交点を決定することから成る。そのためには、センサ34、36を使用して撮影された画像に対して複数の数学的処理作業が施される。これらの数学的処理作業について、
図5〜
図13を参照しながら後述する。
【0033】
まず、それぞれの画像に対して、画像上の基準点56から格子を含む作業領域58(
図5)が決定される。これらの画像上の基準点は、支持体20上に形成された光反射部材を使用して形成される。
【0034】
各画像のそれぞれの作業領域56に、画像のノイズおよび低周波成分を抑制するためのフィルタが適用されることにより、画像の背景に対する第1および第2のマーカー糸30、32の可視部分のコントラストを上げることができる。このタイプの数学的モルフォロジーによるフィルタリングは、当業者に周知であり、ここでは特に説明する必要がない。
【0035】
第1および第2のマーカー糸の可視部分に相当する部位の輪郭57、59は、可視部分60、62の形状および画像の残りの部分に対する可視部分60、62の光反射レベルに応じて、動的閾値法によって決定される(
図6)。当業者に既知であるこのタイプの閾値法は、所与の形状、輪郭、および画像の背景に対する階調レベルに応じて画像のピクセルを分離することから成る。さらに、このタイプのフィルタは、マーカー糸のピクセルの識別周波数およびその階調レベルに基づいている。
【0036】
特に、第1および第2のマーカー糸30、32をプリフォームの糸と織り合わせることにより、プリフォームの糸の上下にマーカー糸が交互に通過するので、第1および第2のマーカー糸30、32の可視部分60、62、すなわち、プリフォームの糸の上に位置する部分はほぼ楕円形になり、この情報は、それぞれの画像内の第1および第2のマーカー糸の可視部分を検出するための識別パラメータとして使用される。
【0037】
その後、マーカー糸30、32のそれぞれの可視部分60、62に対して、楕円の中心の座標x
i、y
iを決定することができる。
【0038】
次に、第1のマーカー糸30に位置合わせされたマーカー糸の可視部分を含む画像領域64(
図7)および第2のマーカー糸32に位置合わせされた可視部分を含む領域66(
図8)が決定される。
【0039】
次に、このようにして定められたそれぞれの領域64、66において、この領域64、66に属する可視部分の中心に相当する座標x
i、y
iを最適に通るNURBS曲線などの数学的曲線が決定される。
図9は、第1のマーカー糸30に沿って配向された領域64において得られた数学的曲線70を示しており、
図10は、第2のマーカー糸32に沿って配向された領域66において得られた数学的曲線72を示している。
【0040】
次に、数学的曲線の曲率収差を除去するために数学的曲線70、72の平滑化が行われ(
図11および
図12)、その後、第1のマーカー糸30に沿って延びる数学的曲線と第2のマーカー糸32に沿って延びる数学的曲線との交点74が決定される(
図13)。これらの交点は、第1のセンサ34を使用して得られた画像の基準フレーム内の所与の交点Iに対してI(x
センサ1、y
センサ1)で、および第2のセンサ36を使用して得られた画像の基準フレーム内の同じ交点に対してI(x
センサ2、y
センサ2)で表される。
【0041】
したがって、それぞれの画像センサを使用して得られたそれぞれの画像に対して、センサ34、36に関連する画像の基準フレーム内の第1のマーカー糸30と第2のマーカー糸32との全ての交点の座標が分かる。
【0042】
第4のステップ52では、本発明の方法は、第1のセンサを使用して得られた画像内の点の座標x
センサ1、y
センサ1、第2のセンサを使用して得られた画像内の点の座標x
センサ2、y
センサ2およびセンサ34、36の実空間位置とそれぞれの軸40、42の空間配向を使用して、三角測量計算によって、それぞれの交点Iの実空間座標X、Y、Zを推定することから成る(
図4)。
【0043】
最後に、第5のステップ54では、第1のマーカー糸30と第2のマーカー糸32の交点の実位置がデータベースに含まれるこれらの同じ交点の三次元理論位置と比較され、このことにより、プリフォーム22が正確に織られているか否かを推定することができる。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、本発明の第3のステップ50は、第1の画像センサ34を使用して得られたn枚の画像および第2の画像センサ36を使用して得られたn枚の画像において実行される。したがって、第1および第2のマーカー糸の格子の所与の交点Iに対して、2n組の点座標x
i,j、y
i,jが得られる。この場合、iはセンサjを使用して撮られたi番目の画像に相当し、iは1〜nであり、jは第1の画像センサを識別する値1および第2の画像センサを識別する値2をとる。
【0045】
第1のセットのn組の点x
i,1、y
i,1は、第1のセンサ34を使用して得られた画像の基準フレーム内の格子の点Iの座標に相当し、第2のセットのn組の点x
i,2、y
i,2は、第2のセンサ36を使用して得られた画像の基準フレーム内の格子の点Iの座標に相当する。
【0046】
第1のカメラを使用して測定されたそれぞれの点Iに対して、値x
i,1間の標準偏差が第1の所定の閾値未満であること、および値y
i,1間の標準偏差が第2の所定の閾値未満であることがチェックされる。
【0047】
同じ作業が、第2のカメラを使用して得られた点Iの座標x
i,2、y
i,2で実施される。
【0048】
第1の閾値および第2の閾値は等しく、例えば、0.75ピクセルとしてもよい。特定の実施形態の装置では、1ピクセルは約0.2mmに相当する。
【0049】
画像の枚数nは、有利には、10以上である。
【0050】
本発明の一実施形態では、照射手段44は発光ダイオードであり、その光強度は第1および第2のマーカー糸30、32とプリフォームの糸とのコントラストを最適化するように較正される。
【0051】
画像センサ34、36は、例えば、10メガピクセルの解像度および約8.5mmの焦点距離を有するCCDもしくはCMOSタイプの光検出器マトリクスを備えたカメラである。
【0052】
第1および第2のマーカー糸30、32は、例えば、ガラス繊維糸と炭素繊維糸との組み合わせによって製造される。プリフォームは、例えば、炭素繊維糸を織り合わせることによって製造される。ガラス繊維糸は、炭素繊維糸より明るい色を有する。
【0053】
本発明の変形形態では、3つ以上のいくつかの画像センサを使用することができ、それぞれのセンサの軸は他のセンサの軸と非ゼロの角度を成し、センサの軸はプリフォームの格子の方向に向けられる。複数のセンサを使用することは、画像が複数の異なる視野角で撮られることにより、プリフォーム上の第1のマーカー糸と第2のマーカー糸との交点の検出の精度を高める。
【0054】
本発明の方法は、上述したような表面格子を有する任意のタイプの織りプリフォームの非破壊試験に使用することが可能であり、ファンブレードのプリフォームに限定されない。特に、ブレード間プラットフォームもしくはケーシングを製造するのに使用されるプリフォームなどのプリフォームと共に使用することが可能である。