特許第6227657号(P6227657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227657可変比変速システムが組み込まれたハブを含む自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227657
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】可変比変速システムが組み込まれたハブを含む自転車
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20171030BHJP
   B62M 6/65 20100101ALI20171030BHJP
   B60B 27/02 20060101ALI20171030BHJP
   F16H 3/44 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60B27/00 D
   B62M6/65
   B60B27/02 Z
   F16H3/44 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-537343(P2015-537343)
(86)(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公表番号】特表2016-500037(P2016-500037A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】GB2013052625
(87)【国際公開番号】WO2014064419
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】1219062.5
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511196548
【氏名又は名称】ネクストドライブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】テイト デービッド
(72)【発明者】
【氏名】ゴーン,リーナン
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−517382(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0161497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/65
B60B 27/00 − 27/02
F16H 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のペダルと、前記複数のペダルによって回転されるべくチェーンによって接続されるスプロケットホイールと、ハブと、を備え、
前記ハブは、軸線を中心に回転するべく取り付けられ、その内部に連続可変比変速システムが収容された、ほぼ円筒形の中空ハブ部材を備え、
前記連続可変比変速システムは、
フリーホイールを介してスプロケットホイールに接続され、前記軸線を中心に回転するべく取り付けられた入力部材と、
前記中空ハブ部材と共に回転するべく接続された出力部材と、
第1および第2の電動機/発電機と、を備え、
前記第1および第2の電動機/発電機のステータの電気接続部は、前記第1および第2の電動機/発電機の一方から他方への電力の伝達を制御するべく構成された制御装置に接続された、
自転車であって、
前記連続可変比変速システムは、
前記軸線を中心に前記入力部材と共に回転するべく取り付けられた共通キャリアよって担持されたそれぞれのプラネットシャフトを中心に回転するべく取り付けられた複数のプラネットギアに噛合するサンギアを含む単一の遊星歯車装置を備え、
前記複数のプラネットギアは、前記中空ハブ部材と共に回転するべく接続されたアニュラスギアに噛合し、前記アニュラスギアと前記サンギアとは、前記第1および第2の電動機/発電機のロータと共にそれぞれ回転するべく接続され、
前記ハブは、
前記共通キャリアから成る駆動部材と、前記中空ハブ部材と共に回転するべく接続された被駆動部材とを含むワンウェイクラッチを更に有し、
前記ワンウェイクラッチは、前記共通キャリアの回転速度が前記中空ハブ部材の回転速度より高速になるや否や、前記共通キャリアと共に回転するように前記中空ハブ部材を接続するべく構成される、
自転車。
【請求項2】
前記駆動部材は、複数の凹部が形成されたほぼ円形の外周を有し、前記被駆動部材は環状の形状を有し、その外周は前記アニュラスギアに噛合し、その内周は前記駆動部材の前記外周を取り囲み、前記周方向に延在する複数の凹部を前記外周と共に画成し、各凹部はジャミングボールと前記ジャミングボールを一周方向に付勢するバネとを収容し、各凹部の半径方向寸法は、前記周方向とは反対側の端部にある前記対応付けられたジャミングボールの直径より大きく、前記もう一方の端部に向かって漸減して前記対応付けられたジャミングボールの直径より小さい値になる、請求項1に記載の自転車。
【請求項3】
前記第1および第2の電動機/発電機は同軸であり、一方が他方の内側に収容される、請求項1又は2に記載の自転車。
【請求項4】
充電式電池と前記第1および第2の電動機/発電機との間の電力の流れを制御するべく更に構成された前記制御装置に接続された前記充電式電池と組み合わされる、請求項1〜3の何れか1項に記載の自転車。
【請求項5】
使用者が所望する速度より高速で自転車が移動しているときに、前記充電式電池を再充電するために、前記制御装置は、前記電動機/発電機の一方または両方を発電機として作動させ、発生した電力を前記充電式電池に向かわせるために前記電動機/発電機の一方または両方を制御するべく構成される、請求項4に記載の自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブ、特に、車両の車輪、特に自転車の車輪または単車の車輪、のための、またはこれら車輪に組み込まれる、ハブ、しかしこれだけには限定されないハブ、に関し、更に可変比変速システムを組み込んだこの種のハブに関する。
【背景技術】
【0002】
可変比変速システムを組み込んだハブを有する自転車用車輪は公知であるが、この変速システムは、不連続なギア比を比較的少数しか提供できない。連続可変比の変速システムを組み込んだハブを有する自転車用車輪を提供することが望ましいであろう。
【0003】
燃料消費が少ない、ひいては汚染物質の放出が少ない、機関を提供するように自動車の製造者にますます強い社会的および法的圧力がかかっている。これら目的を達成するための1つの方法は、車両の変速システムが常に最適なギア比を使用することを保証することである。これは、無限数のギア比を有する、連続的、すなわち無段階、可変式の変速システムを設けることによってのみ実現可能である。機関の燃料消費ひいては汚染物質の放出を減らすための上記の圧力の結果の1つとして、所謂ハイブリッド型の車両の人気が急速に高まっている。したがって、機械的入力と電気的入力とを単一の機械的入力に簡単に組み合わせることができる変速システムも必要とされている。
【0004】
欧州特許第1642820(B)号は、例えば自転車用の、可変比変速システムを組み込んだハブを開示している。この変速システムは、2つの複合遊星歯車装置を含む。各歯車装置は、対応する共通キャリアによって担持された複数のプラネットギアに噛合したサンギアを含む。一方の歯車装置の1つの要素は、変速システムの入力部材に接続され、一方の歯車装置の別の要素は、中空のハブ部材と共に回転するべく接続される。2つのサンギアは第1および第2の可逆機械、特に電動機/発電機、のロータに接続され、2つのステータの動力接続部は、一方の機械からもう一方の機械への動力の伝達を制御するべく構成された制御装置を介して、互いに接続される。
【0005】
この先行文献に開示されているハブを広範囲に進展解析した結果、いくつかの重大な問題の解決が依然として必要であることが分かった。第2の遊星歯車装置の存在により、特に配線の、組み立てが複雑かつ高価になり、時間がかかる。自転車の乗り手によって、または内燃機関によって、入力された機械的トルクを一方の電動機/発電機が発生させた電気入力トルクに効率的かつ一貫して組み合わせることができないことも見出された。この公知のハブには、所謂「ペダルの落下(pedal dropping)」シンドロームという欠点もある。これは、乗り手が自転車のペダルに力を加えたときに、ペダルクランクが殆ど、または全く、抵抗なく回転するという現象であり、乗り手を狼狽させ、乗り手にとって迷惑である。この公知のハブでは、実際に、2つの全く異なる状況でペダルの落下が起こり得る。第1に、自転車が急坂を上っているとき、乗り手はかなりの力をペダルにかけ得る。これにより生じたサンギアに対するトルクは、サンギアに接続された電動機/発電機が発生させ得る反力トルクより大きくなり得る。この結果、抵抗の低下によりペダルが突然高速で動くので、乗り手は前に突然傾き、極端な場合、自転車から落ちることもある。第2に、自転車が停止しているとき、例えば交通信号灯で待っているとき、一般に乗り手は一方のペダルを高位置に動かし、次に、交通信号灯が緑色になったときに再び走り出すために、かなりの力をそのペダルに加える準備として自身の足をそのペダルに載せる。ただし、自転車が静止状態のとき、サンギアに接続された電動機/発電機には電力が一切印加されない。これは、電動機/発電機が反力トルクを全くかけることができないことを意味する。このような条件下では、ペダルに加わる力が使用者の足の重量による弱い力であっても、ペダルを回転させる、すなわち下方へ動かす、ために十分である。これは、サイクリストが再び動きだそうとするときに、ペダルが下側の、最適には及ばない、位置にあることを意味する。最後に、この公知のハブでは、電池の故障時に完全な、またはばらつきのない、「帰宅」機能を提供することは難しいことが見出された。すなわち、一方の電動機/発電機を自転車用照明装置に電力を供給するためのダイナモとして使用しながら、乗り手によってのみ動力が供給されるときに自転車を効率的に作動させることは難しい。
【0006】
特開2008285069(A)号は、前述の一般的な種類の変速システムを有する電気自転車を開示している。ただし、この変速システムは、実際には自転車のクランクシャフトに対応付けられており、一方の車輪のハブに組み込まれていない。この文献に開示されている変速システムは、自転車のクランクシャフトから成る入力部材と、動力を後輪に伝達するためのベルトによって係合されるようにプーリなどから成る出力部材とを有する。この変速システムは、クランクシャフトに対して回転するべく取り付けられていくつかのプラネットギアに噛合するサンギアを含む。これらプラネットギアは共通キャリアよって担持され、出力部材に接続されたアニュラスギアにも噛合する。共通キャリアは、クランクシャフトと共に回転するべく接続されている。サンギアは、第1の電動機/発電機のロータと共に回転するべく接続され、アニュラスギアは、第2の電動機/発電機のロータと共に回転するべく接続されている。共通キャリアは、実際には、第1のワンウェイクラッチによってクランクシャフトに接続されている。第1のワンウェイクラッチは、基本的には、自転車に一般に設けられる種類のフリーホイール機構に過ぎず、下り坂で回転する車輪と同期して必ずしもペダルを回転させなくとも、自転車の惰行を可能にするものである。サンギアは、第2のワンウェイクラッチによって第1の電動機/発電機のロータに接続されている。第2のワンウェイクラッチは、自転車の平常動作時に第1の電動機/発電機がサンギアを駆動しているときに、変速比を調節するように噛合するが、サンギアの回転速度が第1の電動機/発電機の回転速度より高速になると係合解除され、第1の電動機/発電機の逆駆動を試みる。第2のワンウェイクラッチの用途は明らかではなく、当該文献には記載されていない。
【0007】
この従来の日本国文献の自転車が停止しており、その乗り手が自身の片足を高い位置にあるペダルに載せているとき、サンギアにかかるトルクが僅かであっても、サンギアは通常の右回り方向に回転しがちである。この結果として、第2のワンウェイクラッチは係合解除される。したがって、サンギアの回転に対して有効な抵抗がなく、上記のペダルの落下が起きることになる。この従来文献の自転車が坂を上っており、その乗り手がペダルに大きな力をかけると、乗り手によってサンギアに加えられたトルクは、サンギアを右回り方向に回転させ、第2のワンウェイクラッチを係合解除する。したがって、第1の電動機/発電機は反力トルクを加えることができない。この結果、乗り手によって加えられたトルクに逆らう反力トルクが突然かつ大幅に下がる。乗り手はこれを自身の踏み込みに対する抵抗の突然かつ大幅な低下として感知する。したがって、第2のワンウェイクラッチの存在は、坂を上っているときに上記のペダルの落下現象を著しく悪化させる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上で言及した問題の一部または全てを克服する、上で言及した種類の、特に自転車用の、小型で安価な、かつ軽量のハブを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、自転車は、複数のペダルと、複数のペダルによって回転されるべくチェーンによって接続されるスプロケットホイールと、ほぼ円筒形の中空ハブ部材を備えたハブと、を含む。中空ハブ部材は、その軸線を中心に回転するべく取り付けられ、その内部に連続可変比変速システムが収容される。連続可変比変速システムは、フリーホイールを介してスプロケットホイールに接続され、当該軸線を中心として回転するべく取り付けられた入力部材と、中空ハブ部材と共に回転するべく接続された出力部材とを有する。連続可変比変速システムは、第1および第2の電動機/発電機と、第1および第2の電動機/発電機の一方から他方への電力の伝達を制御するべく構成された制御装置に接続された、第1および第2の電動機/発電機のステータの電気接続部と、を備える。連続可変比変速システムは、単一の遊星歯車装置を備える。この遊星歯車装置は、当該軸線を中心に入力部材と共に回転するべく取り付けられた共通キャリアよって担持されたそれぞれのプラネットシャフトを中心に回転するべく取り付けられた複数のプラネットギアに噛合するサンギアを含む。これらプラネットギアは、中空ハブ部材と共に回転するべく接続されたアニュラスギアに噛合する。アニュラスギアとサンギアとは、それぞれ第1および第2の電動機/発電機のロータと共に回転するべく接続される。第1および第2の電動機/発電機のステータの電気接続部は、第1および第2の電動機/発電機の一方から他方への電力の伝達を制御するべく構成された制御装置によって接続される。ハブは、ワンウェイクラッチを更に含む。ワンウェイクラッチは、共通キャリアから成る駆動部材と、中空ハブ部材と共に回転するべく接続された被駆動部材とを含む。ワンウェイクラッチは、共通キャリアの回転速度が中空ハブ部材の回転速度より高速になるや否や、共通キャリアと共に回転するように中空ハブ部材を接続するべく構成される。
【0010】
このように、本発明によるハブは、上記の従来技術の明細書のように2つの歯車装置ではなく、単一の遊星歯車装置のみを含む。この結果、ハブがより小型化、軽量化、低価格化される。より重要な点は、本発明によるハブは、かなりのトルクが入力部材に加わるや否やキャリアの回転速度がハブ部材の回転速度より実際に高速になると、キャリアと共に回転するようにハブ部材を接続するべく構成されたワンウェイクラッチを更に含むことである。すなわち、このハブが自転車に装着されていると、乗り手が有効な圧力をペダルに加えることによってトルクが変速システムの入力部材に加わるや否や、ワンウェイクラッチが係合してキャリアをハブ部材に接続する。この結果、入力部材が直ちに接続されてハブ部材と共に回転するので、サイクリストによって加えられた推進力がハブ部材に直ちに伝達され、ひいては自転車の車輪にも伝達される。これにより、「ペダルの落下」という現象が完全に無くなる。勿論、従来の自転車は、ペダルによって駆動されるチェーンに接続された後部スプロケットホイールとハブとの間にフリーホイール機構を含むが、このフリーホイール機構の目的は、自転車が惰性走行しているときに、例えば下り坂を惰行しているときに、被駆動輪によってペダルが回転駆動されることを防ぐことである。このようなフリーホイール機構が存在しないと、例えば下り坂を惰行しているときに、被駆動輪によってペダルが回転されることになる。すなわち、サイクリストは両足を回転し続ける必要があることになるが、ペダルには力が一切加わらない。ただし、遊星歯車装置を含む変速システムを有する本発明による種類のハブにおいては、この現象は起こらないので、上記目的のためのフリーホイール機構を必要としない。本発明による種類のハブでは、下り坂で自転車が惰性走行しているとき、サイクリストは自身の両足をペダル上で静止させておくだけでよく、ペダルは被駆動輪によって回転駆動されない。この理由により、上記の従来の明細書に開示されているハブは、フリーホイール機構を含まない。ただし、本発明により含まれるワンウェイクラッチまたはフリーホイール機構は、全く異なる目的に役立つ。すなわち、サイクリストが力をペダルに加えると、この力が被駆動輪に直ちに加えられるので、「ペダルの落下」が起きないことが保証される。ただし、下り坂で自転車が惰性走行しているとき、または自転車が一方または両方の電動機/発電機によってのみ推進されている場合、ワンウェイクラッチは係合解除される、すなわち、入力部材とハブ部材との間は直接連結されない。
【0011】
ワンウェイクラッチはさまざまな形態を取り得るが、好適な実施形態において、駆動部材はほぼ円形の外周を有し、そこに複数の凹部が形成される。被駆動部材は環状の形状を有し、その外周はアニュラスギアに噛合し、その内周は駆動部材の外周を取り囲み、周方向に延在する複数の凹部を共に画成する。各凹部はジャミングボールと、このボールを一周方向に付勢するバネとを収容する。各凹部の半径方向寸法は、前記周方向とは反対側の端部にある対応付けられたボールの直径より大きく、もう一方の端部に向かう方向に漸減して対応付けられたボールの直径より小さい値になる。この実施形態において、各ジャミングボールは各バネによってボールの直径より大きい半径方向幅を有する凹部の端部に向けて付勢されるので、駆動部材と被駆動部材とは互いに対して自由に回転可能である。ただし、サイクリストがペダルに圧力を加えることによってトルクが駆動部材に加えられ、駆動部材が被駆動部材に対して回転させられると、ジャミングボールは凹部の狭い方の端部に向かって凹部内で移動せざるを得なくなり、凹部の幅がボールの直径に等しい凹部領域に達するまで、その方向に移動する。この位置に達すると、ボールは駆動部材と被駆動部材との間に押し込まれるので、この2つの部材は次に互いに回転係止される。したがって、駆動部材の連続的な回転が被駆動部材に直接伝達され、ひいてはハブ部材にも伝達される。したがって、サイクリストが力をペダルに加えると、極めて短い初期自由運動の後に、ペダルの動きがハブ部材に直接伝達され、これによりハブ部材が加速される。ただし、サイクリストが力をペダルに加えなくなるや否や、バネがジャミングボールにかける力によって、ボールを前記一周方向に移動させることができるようになる。ボールがこの方向に移動すると、駆動部材と被駆動部材との間にボールが押し込まれていたことによる回転連結が断たれ、クラッチが係合解除される。
【0012】
2つの電動機/発電機は同軸であって一方が他方の内側に収容されることが好ましい。これにより、2つの電動機/発電機を最小スペースに収容でき、本発明によるハブの小型化に寄与する。
【0013】
実際には、本発明によるハブは、制御装置に接続された充電式電池と組み合わせて使用され、制御装置は電池と2つの電動機/発電機との間の電力の流れを制御するべく更に構成される。したがって、本発明によるハブをパワーアシスト自転車に装着すると、電池によって電力が供給された一方または両方の電動機/発電機によってのみ自転車を駆動することも可能であり、あるいはサイクリストがペダルに加える回転力によってのみ自転車を駆動することも可能であり、あるいは電動機として機能する一方または両方の電動機/発電機とサイクリストとの組み合わせによって自転車を駆動することも可能である。サイクリストによってのみ自転車が駆動される場合は、サイクリストによってかけられた力がハブ部材に直接伝達されるように、ワンウェイクラッチは勿論係合される。電動機/発電機とサイクリストとの組み合わせの場合、ワンウェイクラッチは再び係合され得る。
【0014】
本発明は、上記種類のハブを含む車輪を有する自転車を更に含む。この自転車は複数のペダルと、これらペダルによって回転されるべくチェーンによって接続されて、フリーホイール機構を介して入力部材に接続されるスプロケットホイールとを含むことが好ましい。したがって、この自転車は、2つのフリーホイールまたはワンウェイクラッチ機構を含むことが好ましい。第2の機構は被駆動スプロケットホイールに設けられ、ほぼ従来どおりに動作する。すなわち、下り坂を自転車が惰行しているとき、第2の機構は係合解除されるので、スプロケットホイールより高速で共通キャリアを回転させることができる。
【0015】
使用者が所望する速度より高速で自転車が移動しているとき、または使用者が電池を再充電しようと決めたとき、制御装置は、一方または両方の電動機/発電機を発電機として作動させ、発生した電力を電池に向かわせて電池を再充電するべく構成されることが好ましい。上記状態はいくつかの方法で検出され得るが、簡単な一実施形態においては、使用者がブレーキをかけたときに検出される。その結果、所謂回生制動を開始するために、信号が制御装置に伝達される。
【0016】
本発明の更なる特徴および詳細は、本発明によるハブの単なる例として挙げられた特定の一実施形態についての添付の図面を参照した以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自転車のハブの上半分の軸方向断面図である。
図2図1の右側から見たワンウェイクラッチの図である。
図3】当該ワンウェイクラッチの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ハブは、中心シャフト2に取り付けられる。中心シャフト2は、使用時、2つのナット4によって自転車のフレームに固定的に取り付けられる。ハブは、環状の入力部材6を含む。入力部材6は、従来のフリーホイール機構9(詳細には図示せず)を介して従来の自転車用スプロケットホイール8に接続される。入力部材6は、シャフト2を中心に回転するべく、いくつかの軸受10によって取り付けられる。入力部材6は、単一の三分岐遊星歯車装置にも接続される。この3つの分岐、すなわちシャフト、は全て回転する。変速システムは、サンギア12を含む。サンギア12は、シャフト2を中心に回転するべく取り付けられ、いくつかの、一般に3つの、プラネットギア14によって担持された複数の歯と噛合する複数の歯を担持する。各プラネットギア14は、共通キャリア20に接続されたそれぞれのプラネットシャフト18によって軸受16を介して回転可能に担持される。各プラネットギア14の歯は、アニュラスギア22の歯にも噛合する。アニュラスギア22は、ハブハウジングの右側部分24に固定的に接続される。ハブハウジングの右側部分24は、複数のボルト30によって右側および左側部分24、26に接続された中心部分28によって左側部分26に接続される。
【0019】
ハブハウジング内に2つの電動機/発電機が収容される。これら電動機/発電機は、一方の電動機/発電機が他方の内側に同軸に配置される。内側の電動機/発電機は、サンギア12と共に回転するべく接続された略U字形状のロータ32とステータ34とを含む。外側の電動機/発電機は、ハブハウジングの中心部分28に固定的に接続されたロータ36とステータ38とを含む。2つのステータの電気接続部は、制御装置40に接続される。制御装置40は、模式的にのみ図示されているが、充電式電池42にも接続されている。制御装置40は、2つの電動機/発電機の間の、および電池42と2つの電動機/発電機の各々との間の、電力の流れを要件に応じて制御するべくプログラム化される。
【0020】
共通キャリア20は、入力部材6に一体化され、ワンウェイクラッチの駆動部材または入力部材を構成する。共通キャリア20は、ワンウェイクラッチの環状の被駆動部材44の円形の内周によって密に取り囲まれる円形の外周を有する。被駆動部材44の外周は、複数の歯46を担持する。これらの歯46は、ハブハウジングの右側部分24に固定的に接続されたアニュラスギア22の内歯にも噛合する。ワンウェイクラッチの内側すなわち駆動部材20の外周には、周方向に延在する凹部47が複数、この場合は3つ、形成される。これら凹部の各々に、ジャミングボール48と付勢バネ50とが収容される。各凹部47の半径方向寸法すなわち幅は、バネ50から遠い端部において最大である。この端部における幅の値は、対応付けられたジャミングボール48の直径より大きい。ただし、その幅は、付勢バネ50に向かって狭まり、ジャミングボール48の直径より小さい値になる。付勢バネは、バネ50から遠い凹部47の端部に向けてボール48を付勢する。この端部における凹部の幅は、ボールの直径より大きい。ボールがこの位置にあるとき、ワンウェイクラッチの駆動および被駆動部材20および44は、互いに対して自由に回転可能であり、クラッチは係合解除されている。ただし、クラッチの内側すなわち駆動部材が、図2に示されているように、右回り方向に動くと、すなわち自転車の使用者がペダルに力をかけると、その力は自転車のチェーンによってスプロケット8に伝達され、次にトルクの形態で駆動部材20に伝達され、駆動部材20を回転させようとする。この結果、ボール48は、図2に示されているように、左回り方向に、すなわち凹部の幅がボールの直径より狭い領域に向かって、移動させられる。ボールがこの領域に近づくと、ボールは凹部47の基部と外側すなわち被駆動クラッチ部材44の内周との間に押し込まれ、結果として2つのクラッチ部材20および44を回転連結するように作用する。したがって、入力部材6の、ひいてはクラッチ部材20の、連続的な回転は、被駆動クラッチ部材44に直接伝達され、ひいてはアニュラスギア22およびハブハウジング24、26、28にも伝達される。この結果、自転車の車輪が回転する。使用者がその後にペダルに圧力をかけなくなると、付勢バネ50によって加えられる力によって、ボール48をボールの直径より大きい幅の凹部47の領域内に戻すことができる。したがって、2つのクラッチ部材の回転連結が解除される。
【0021】
使用中、一方の電動機/発電機は、通常、発電機として働き、電動機として働くもう一方の電動機/発電機に電力を伝達する。こうして伝達される電力量は制御装置によって選択的に変化させ得るので、変速システムの変速比を変え得る。変速システムを介して、変速比の変化に応じて変化する比率で、動力が機械的および電気的に伝達される。したがって、変速システムの出力速度を、ひいてはハブ部材の速度を、入力速度とは独立に変化させ得る。すなわち、本発明によるハブ部材に接続された車輪の速度は、ペダルの回転速度とは独立に、および/または、自転車を推進するために、または自転車を推進する使用者を助けるために、電動機として動作して起動トルクを供給する一方の電動機/発電機の速度とは独立に、変化させられ得る。これは、運転条件に最も適切な、かつ使用者による操作が可能な1つ以上の制御子によって指示されたように使用者の要望に一致する、速度で正確に変速装置を作動させ得ることを意味する。
【0022】
したがって、これら電動機/発電機は、変速システムの変速比を連続的に変化させ得る手段であるばかりでなく、電池からの電力を機械的動力に変換して自転車の車輪に伝達させうる手段でもある。これら電動機/発電機は、更に二重の機能を果たすことが好ましい。すなわち、例えば下り坂で自転車が惰性走行しているために、例えば使用者がブレーキをかけて指示しているように、使用者が所望する速度を超えた速度で自転車が移動している場合、制御装置は、電池を再充電するために、一方または両方の電動機/発電機を発電機として作動させ、発生した電力を電池に向かわせるべくプログラムされる。
【0023】
一方または両方の電動機/発電機は、大部分の時間、自転車を駆動するために電動モードで使用され得る一方、本発明によるハブは、単車ではなく、主にモータアシスト自転車に使用されること、すなわち使用者は、その運転時間の大部分、自転車を推進するために必要な起動力に寄与することが考えられる。上で説明したように、使用者が駆動力をペダルに加えると、ワンウェイクラッチは直ちに係合するので、使用者によって加えられた駆動力が自転車の被駆動輪に直ちに向けられ、「ペダルの落下」が起きない。
図1
図2
図3