(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227670
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】複合配置物の組付装置
(51)【国際特許分類】
B23P 21/00 20060101AFI20171030BHJP
B23P 11/02 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
B23P21/00 301A
B23P11/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-553075(P2015-553075)
(86)(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公表番号】特表2016-508887(P2016-508887A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014050808
(87)【国際公開番号】WO2014111472
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】102013200638.1
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ベーレンス
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ メノナ
(72)【発明者】
【氏名】ローター プフィツェンマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント シャハエラー
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−343335(JP,A)
【文献】
特開2002−028827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
B23P 11/02
F16H 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(3)のための孔(2)を有する複数の機能要素(4)を備えた複合配置物を上記軸(3)上の所定の位置角に組み付ける組付装置(1)であって、それぞれの機能要素(4)に適応する保持装置(5)を有する組付装置(1)において、
上記保持装置(5)は、鉛直線(7)上に上記機能要素(4)の孔(2)があるように、鉛直に並んで配置され、
上記機能要素(4)と軸(3)との接合が鉛直方向に行われるように、鉛直方向に移動可能な誘導スライド(8)が設けられ、
少なくとも2つの上記機能要素(4)を同時に加熱可能なように別々の位置に配置された複数の加熱装置(9)が設けられ、
把持装置(10)によって、少なくとも2つの、好ましくは全ての結合されることになっている上記機能要素(4)は、一緒に上記加熱装置(9)から取り外されることが可能であると共に、上記組付装置(1)の保持装置(5)に導かれることが可能である
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複合配置物の組付装置において、
上記保持装置(5)は、
それぞれの上記機能要素(4)を上記軸(3)上の位置角に対応する位置角に固定する型を有する支持具又は
結合動作の間、それぞれの機能要素(4)を固定する組立把持具(6)を備えている
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項3】
請求項2に記載の複合配置物の組付装置において、
上記把持装置(10)の把持具(11)及び/又は上記組立把持具(6)は、少なくとも一部が、誘導加熱不能な材料、特にセラミック又は、冷やされることが可能である材料からなる
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の複合配置物の組付装置において、
上記加熱装置(9)は、互いに独立して制御されることが可能である少なくとも2つの誘導コイル(12)である
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項5】
請求項2に記載の複合配置物の組付装置において、
上記型は、正確な角度で受け入れられるように、少なくとも部分的に上記機能要素(4,4a)に対応する凹部形状を有する
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の複合配置物の組付装置において、
上記組付装置(1)は、軸受枠(15)又はシリンダヘッドカバーを支持するための支持装置(14)を有する
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の複合配置物の組付装置において、
上記加熱装置(9)は、加熱され得る上記機能要素(4)を載置し得る保持用張り出し部(13)を有し、
上記保持用張り出し部(13)は、少なくとも部分的に誘導加熱不能な材料、特にセラミック又は、冷やされることが可能である材料からなる
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の複合配置物の組付装置において、
それぞれの上記保持装置(5)が、少なくとも2つの異なる保持位置を切り換えることができるように、可動であり、
上記少なくとも2つの異なる保持位置のうちの1つは、上記機能要素(4)の孔(2)が上記鉛直線(7)に載るように、上記保持装置(5)を位置決めする
ことを特徴とする複合配置物の組付装置。
【請求項9】
上記請求項1から8のいずれか1つの複合配置物の組付装置(1)を用いた、上記軸(3)に該軸(3)のための孔(2)を有するいくつかの機能要素(4)を熱結合する方法において、
少なくとも2つの機能要素(4)は、上記把持装置(10)によって、上記加熱装置(9)に一緒に導かれ、
上記少なくとも2つの機能要素(4)は、上記加熱装置(9)において加熱され、
上記少なくとも2つの機能要素(4)は、上記把持装置(10)によって、上記加熱装置(9)から一緒に取り外されて、上記組付装置(1)の保持装置(5)に導かれ、
上記保持装置(5)は、上記機能要素(4)の孔(2)が共通の実質的に鉛直な鉛直線(7)の上に載るように位置決めされ、
上記軸(3)は、上記機能要素(4)の孔(2)を通して上方から鉛直方向に移動可能な誘導スライド(8)により押され、
上記軸(3)に上記機能要素(4)を固定する温度の均一化が行われ、
上記軸(3)は、該軸(3)の上に固定した機能要素(4)と共に、上記組付装置(1)から取り出される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
上記保持装置(5)は、上記孔(2)が上記共通の実質的に鉛直な鉛直線(7)に載るように、上記軸(3)の導入の前に、単に直接、機能要素(4)を位置決めする
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載されているように、軸のための孔を有する複数の機能要素からなる複合配置物を、軸上の所定の位置角において組み付ける組付装置に関する。また本発明は、軸にいくつかの機能要素を熱結合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の一般的な装置が、軸のための孔を有する、特にカム、バランス錘、歯車及び/又はベアリングの複数の機能要素からなる複合配置物を軸上の所定の位置角において組み付けると共に、この装置が、それぞれの機能要素に対応する複数の保持装置を備えることは知られている。
【0003】
特許文献2の装置が軸上の所定の位置角において、軸のための孔を有する複数の機能要素、特にカムを位置決めすることは、知られている。この装置は、それぞれの機能要素に対応する複数の支持具(マウント)を備え、支持具はそれぞれ軸上の位置角に対応するそれぞれの機能要素の位置角を固定する型(モールディング)を備えている。機能要素の孔が共通の水平線にあるように、支持具を位置決めすることができる。
【0004】
特許文献3の装置は、機能要素を保持する軸を組み付けることで知られており、この装置には、機械張り出し部が設けられている。この機械張り出し部には、機能要素が正しい位置に整列配置された状態で軸を圧入できるように、複数の位置決めディスクが配置されている。位置決めディスクは、フレームに可逆的に取り付けられ、それは順番に機械張り出し部に可逆的に固定される。この構成により、利用可能ないくつかのフレームを有することによって、製造工程の中で急速な変更を可能にするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 056 638号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2008 064 194号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2009 060 350号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般的なタイプの組付装置のための改良された実施形態を示す課題に関し、特に熱結合する方法を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、独立項に示される本発明により解決される。有利な実施形態は、従属クレームの主題である。
【0008】
本発明は、軸のための孔を有する複数の機能要素を組み付ける組付装置を改善するという第1の一般的アイデアに基づき、個々の機能要素は組付装置の鉛直方向に整列されて組み付けられる。その結果、機能要素と軸との熱結合を鉛直方向で行うことができる。鉛直方向結合によって、例えば鉛直方向に順番に配置された加熱された機能要素に上方から冷やされた軸を挿入することで、従来必要であった、特に経費がかかる軸への案内は、軸を導くことが重力によってすでになされるので、省略できる。従来の技術から公知の組付装置では、機能要素に対する軸の接合は、水平方向で起こなわれ、その方法では、支持結合工程の間、頻度が高くて面倒なの軸の支持が必要とされる。本発明による組付装置は、軸の所定の位置角で、特にカム、バランス錘、歯車及び/又はベアリングを結合することに適している。組付装置は、それぞれが各機能要素を受け入れるための複数の保持装置を備えている。これらの保持装置は、機能要素の孔が鉛直線上にあるように、鉛直方向に重ねるように配置される。組付装置をより良好な方法で保守点検でき、より容易にアクセス可能であるために、別々に配置された加熱装置が機能要素を加熱するために設けられる。そして、結合されることになっている少なくとも2つ、好ましくは全ての機能要素は、把持装置によって、一緒に加熱装置から取り外されて、組付装置の保持装置に導かれることが可能である。したがって、本発明による組付装置は、機能要素の加熱及び接合が異なる位置で行われるという大きな効果を提供し、それによって個々の位置は、より複雑になることなく、より近づきやすくなり、このことにより保守がより容易になる。
【0009】
本発明の有利な更なる変形例において、保持装置は、それぞれ軸上の位置角に対応するそれぞれの機能要素の位置角を固定する型を備えている支持具として、又は、結合動作の間、それぞれの機能要素を固定する組立把持具として設けられる。機能要素は、正確に適切な方法で支持具に導かれ得るが、組立把持具は機能要素を締め付けることができ、かつ固定できる。ここではもちろん、機能要素の配列の偏りを補正するために、支持具、更には組立把持具が調節可能でかつ可動であってもよい。
【0010】
把持装置及び/又は組立把持具の把持具は、少なくとも部分的に、誘導加熱不能な材料、特にセラミックから造られるか、又は、能動的に冷やされることが可能な材料から造られていてもよい。加えて又はあるいは、加熱装置が保持用張り出し部を有していてもよい。保持用張り出し部において、加熱されることになっている機能要素を載置可能であり、保持用張り出し部は、少なくとも部分的に誘導加熱不能な材料、特にセラミックから造られるか、又は、冷やされることが可能な材料から造られる。誘導加熱不能な保持用張り出し部の材料によって、保持用張り出し部が拡大して機能要素の加熱の間に、ゆがむことを防止できる。また同様に、把持装置の把持具が、誘導加熱不能な材料から造られる限り、誘導加熱の間に機能要素が過大な応力を受けることはなく、その際に保持され得ることは有利である。
【0011】
本発明による組付装置の有利な更なる変形例において、加熱装置は、互いに独立に制御される得る少なくとも2つの誘導コイルを備えている。この種の加熱装置によって、機能要素の個々の加熱を行うことができる。その結果、例えば、それぞれの加熱要件を有する異なる機能要素を全く同一の加熱装置の中で加熱することができる。
【0012】
便宜上、上記組付装置は、軸受枠又はシリンダヘッドカバーを保持する装置を備えていてもよい。これによって、カムシャフトの製造だけでなく、同時に軸受枠又はシリンダヘッドカバーへの組付もまた単に1つの工程だけで行うことができる。
【0013】
本発明は更に、先に述べた組付装置によって、軸のための孔を有する複数の機能要素、特にカム、バランス錘、歯車及び/又はベアリングを軸に熱結合するのため方法を示すという一般のアイデアに基づく。組付装置において、少なくとも2つの機能要素は、把持装置によって、一緒に加熱装置に導かれ、そこで加熱される。その後、機能要素の孔が共通の略鉛直な鉛直線上にあるように、少なくとも2つの機能要素は把持装置によって一緒に加熱装置から取り外されて、組付装置の保持装置に導かれる。ここで、軸は、機能要素の整列配置された孔を通して上方から、鉛直方向に移動可能な誘導スライドにより押される。機能要素を軸に取り付けた後、温度均一化が行われる。最後に、軸と、その上に固定された機能要素とは、組付装置から取り外される。鉛直結合する方法によって、軸は、重力のためにそれ自体が整列配置されるので、苦労して挿入する必要はない。ここでは、保持装置が直接、機能要素を位置決めするだけであることが考えられる。その後に、その孔が共通の略鉛直な鉛直線上にあるように、軸を挿入する。ここで、保持装置は、ストッパ又はそれに類似するものに対して移動でき、それによってより高い位置決め精度が得られる。
【0014】
本発明の更に重要な特徴及び効果は、サブクレームから、図面から、そして、図面の説明に現れる。
【0015】
上述したそして以降に説明する特徴は、本発明の範囲内から遠く外れることのない範囲で、それぞれ示された組合せだけでなく他の組合せや単独でも適用できるものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】軸のための孔を有する複数の機能要素を取り付ける第1の組付装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明についての好ましい例示の実施形態は、図面において図示され、以下の記載においてより詳細に説明される。ここでは、同じ参照番号は、同一であるか類似であるか機能的に同一の構成要素に付されている。
【0018】
図1及び
図2によれば、軸3のための孔2を有する複数の機能要素4を軸3上の所定の位置角に組み立てるための、本発明による組付装置1は、それぞれの機能要素4に対応する複数の保持装置5を備えている。この保持装置5は、支持具(マウント)を備えることができる。支持具は、それぞれ、軸3上の位置角に対応するそれぞれの機能要素4の位置角を固定する型(モールディング)を備えている。型は、好ましくは、機能要素4,4aを正確な角度で受け入れる凹形状を少なくとも部分的に有する。又は保持装置5は、組立把持具6を備えていてもよい。そして、組立把持具6は、結合動作の間、それぞれの機能要素4を固定する。
【0019】
保持装置5は、機能要素4の孔が鉛直線7にあるように、鉛直的に並んで配置されている。更にまた、鉛直方向に移動可能な誘導スライド8が、機能要素4と軸3との接合が鉛直方向に行われるように、軸に設けられる。このことは、接合されることになっている軸3が、それに作用している重力のために、すでにそれ自体整列配置されているという特別な効果を奏し、その結果、水平結合の間に必要な面倒な整列配置を好ましくは完全に省くことができる。
【0020】
少なくとも2つの機能要素4は、別に配置された加熱装置9によって、同時に加熱され得る。中央に配置された把持装置10と共に、少なくとも2つの(
図1参照)好ましくは全ての(
図2参照)接合すべき機能要素4,4aは、共に加熱装置9から取り出されることができて、組付装置1の保持装置5に導かれることができる。そして、加熱装置9は、保持用張り出し部13を有する。保持用張り出し部13において、加熱されるべき機能要素4,4aを載置することができる。そして保持用張り出し部13は、少なくとも部分的に、誘導加熱不能な材料、特にセラミック又は、冷やされることが可能である材料から造られる。又は、機能要素4,4aは、加熱の間、把持装置10の把持具11により保持されてもよい。組立把持具6のような把持具11は、少なくとも部分的に、誘導加熱不能な材料、特にセラミック又は、冷やされることが可能な材料から造られてもよい。
【0021】
加熱装置9は、互いに独立して制御可能な少なくとも2つの誘導コイル12を備えていてもよい。その結果、要求に応じて異なる機能要素4のそれぞれの加熱を行うことができる。
【0022】
加えて、組付装置1は、軸3のための軸受枠15を支持する支持装置14を備えていてもよい。ここで、組付装置1に対する軸受枠15の位置決めは、軸受枠15のベアリング溝がそれぞれの機能要素4の孔2に整列配置されるように、少なくとも2つの位置決め要素、特に位置決めピンによって行うことができる。その結果、軸3は、単に機能要素4の孔2を通して押されることができ、軸受枠15の支持溝は、それに対して整列配置される。
【0023】
通常、上述した組付装置1によって、軸3の加熱結合は、以下に示すように、孔2を有する複数の機能要素4、特にカム4a、バランス錘、歯車及び/又はベアリングで行われる。
【0024】
まず、少なくとも2つの機能要素4は、加熱装置9に一緒に把持装置10で導かれ、そこにおいて加熱される。加熱の後、少なくとも2つの機能要素4は、加熱装置9から一緒に把持装置10で取り外され、組付装置1の保持装置5に導かれる。保持装置5は、機能要素4の孔2が共通の略鉛直な鉛直線7にあるように設けられるか又は共通の略鉛直な鉛直線7にあるように位置付けられる。ここで、鉛直方向に移動可能な誘導スライド8によって、軸3は、機能要素4の孔2を通して上方から押され、機能要素4を軸3に取り付ける温度均一化が行われる。最後に、軸3と、その上に固定された機能要素4とを組付装置1から取り外すことができる。
【0025】
軸受枠15又はシリンダヘッドカバー(詳細説明省略)が取り付けられることになっている場合には、軸3の挿入の前に支持装置14によって位置付けられる。言い換えれば、その支持溝が、機能要素4の孔2に沿うように整列配置される。その孔2が共通の略鉛直な鉛直線7に位置付けられるように、保持装置5は、軸3の挿入前に単に直接、機能要素4を位置決めすることができる。
【0026】
本発明による組付装置1及び本発明による方法において、軸3上の機能要素4を熱接合することを明確に単純化することができる。これまで必要であった面倒な軸3の配列は、鉛直方向の結合によって、主として重力によって行われると共に、手動による面倒な方法は、もはや必要ではないからである。別々の加熱装置9によって、アクセスしやすさ及びそれによる組付装置1の保守の容易さを増幅できる。にもかかわらず、把持装置10によって、完全自動接合を行うことができる。