特許第6227671号(P6227671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネマク ヴェルニゲローデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6227671機能的フィーダ接続を用いて、鋳造部品、特にシリンダ・ブロックおよびシリンダ・ヘッドを製造するための方法および鋳型
<>
  • 特許6227671-機能的フィーダ接続を用いて、鋳造部品、特にシリンダ・ブロックおよびシリンダ・ヘッドを製造するための方法および鋳型 図000002
  • 特許6227671-機能的フィーダ接続を用いて、鋳造部品、特にシリンダ・ブロックおよびシリンダ・ヘッドを製造するための方法および鋳型 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227671
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】機能的フィーダ接続を用いて、鋳造部品、特にシリンダ・ブロックおよびシリンダ・ヘッドを製造するための方法および鋳型
(51)【国際特許分類】
   B22D 27/04 20060101AFI20171030BHJP
   B22C 9/00 20060101ALI20171030BHJP
   B22D 25/02 20060101ALI20171030BHJP
   B22C 9/24 20060101ALN20171030BHJP
   B22D 21/04 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   B22D27/04 A
   B22C9/00 A
   B22D25/02 Z
   !B22C9/24 A
   !B22D21/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-553115(P2015-553115)
(86)(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公表番号】特表2016-507381(P2016-507381A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2014051030
(87)【国際公開番号】WO2014111573
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】102013100540.3
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515197053
【氏名又は名称】ネマク ヴェルニゲローデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Nemak Wernigerode GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング マイズナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴァグナー
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−205228(JP,A)
【文献】 米国特許第07753103(US,B1)
【文献】 独国特許出願公開第04244789(DE,A1)
【文献】 特開平01−107957(JP,A)
【文献】 特開昭59−166346(JP,A)
【文献】 特開昭61−017343(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202079258(CN,U)
【文献】 中国実用新案第202479451(CN,U)
【文献】 中国実用新案第202461429(CN,U)
【文献】 米国特許第05058655(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 27/00−27/20
B22D 15/00−17/32
B22D 1/00−5/04
B22D 21/00−23/06
B22D 25/00−25/08
B22C 5/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属から鋳造部品を鋳造するための鋳型であり、前記鋳型(G1、G2)はモールド・キャビティ(3)を型取っていて、鋳込まれる前記鋳造部品の形状を画定する鋳型部品(4〜7)と、さらに注入の過程で前記溶融金属が前記モールド・キャビティ(3)に到達するために通る、重力の方向から見て前記鋳型(G1、G2)の上側の個所に配置され、かつ、重力フィーダとしての機能を果たす、フィーダ(2)とを含み、前記フィーダ(2)は、少なくとも2つの接続リンクによって前記モールド・キャビティ(3)の、鋳込まれる鋳造部品の相異なる部分に対応する少なくとも2つの領域(8、9、10、19、20)につながれ、前記部分は、重力の方向(S)に相互に間隔を空けられ、前記少なくとも2つの接続リンクの少なくとも1つは、鋳込まれる前記鋳造部品の外形に関わりなく、前記鋳型部品(5、6)の1つを貫通して通る付加チャネル(16、23)として設計されている鋳型であって、前記注入の過程で、前記モールド・キャビティ(3)に入る前記溶融金属の加速された冷却をもたらす少なくとも1つの冷却エレメント(12〜15;17、18、21、22)が、前記鋳型(G1、G2)中に配置されること、および前記付加チャネル(16、23)の少なくとも1つが、前記溶融金属の流入の方向で、前記冷却エレメント(12〜15;17、18、21、22)の下方に位置する領域に至ることを特徴とする鋳型。
【請求項2】
前記冷却エレメント(12〜15;17、18、21、22)と前記付加チャネル(16、23)との間に、前記冷却エレメント(12〜15;17、18、21、22)に比べて低い熱伝導性を有する壁部(26〜29)が設けられることを特徴とする請求項に記載の鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造部品の鋳造の方法に関し、本方法において、溶融金属はフィーダまたは別個のランナもしくは鋳込みチャネルを介して、鋳型(独:Giessform,英:casting mould)によって型取られ(独:umgrenzten,英:defined)鋳造部品の形状に模られたモールド・キャビティの中に注がれ、該鋳型は鋳込まれる鋳造部品の形状を画定する鋳型部品を含む。
【0002】
さらに、本発明は、溶融金属から鋳造部品を製造するための鋳型に関係し、該鋳型はモールド・キャビティを型取っていて、鋳込まれる鋳造部品の形状を画定する鋳型部品と、さらに注入の過程で溶融金属がモールド・キャビティに到達するために通るフィーダまたは別個のランナもしくは鋳込みチャネルとを含む。
【0003】
本発明による方法、および本発明による鋳型は、重力鋳造(独:Schwerkraftguss,英:gravity casting)を用いる、鋳造部品の鋳造のため特に構築されたものである。
【背景技術】
【0004】
この溶融金属の対象となり得るのは、特に軽金属およびそれらの合金、具体的にはアルミニウムまたはその合金から成る溶融物である。
【0005】
特にシリンダ・ブロックについては、種々の構成部分域の各々における最適な構成部分特性を実現する上での課題が存在する。このために、これらの分域は相異なる速度で凝固させる必要がある。したがって、迅速な凝固が必要な分域は特別に冷却される。この処理は、凝固プロセスに微妙な混乱をもたらし得る。原則として方向性凝固は実現できなくなる。同時に、鋳造部品の内部に位置する諸構成部分域中にもたらされる熱的中心の確実な分配も危うくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来技術の背景に対し、本発明の目的は、前述の条件の下にあっても、機能的で且つ欠陥のない鋳造部品の製造を確実にする鋳造方法および鋳型を明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の教示による方法に関連させてこの目的を解決している。
【0008】
本発明によれば、鋳型に関連する前述の目的の解決は、請求項3により設計される当該鋳型により構成される。
【0009】
本発明の有利な実施形態が従属請求項中で提供され、全般的な発明の着想と共に以降で詳しく説明される。
【0010】
本発明は、鋳造部品の製造のためにフィーダまたはランナもしくは鋳込みチャネルを機能的にリンクさせる着想に基づいており、溶融物は、これらを介して、鋳型の中へ鋳型のモールド・キャビティに注がれる。本発明によれば、フィーダのリンクは、該リンクを、鋳造部品の形状を画定する鋳型部品を貫通して延ばすことにより実現され、このリンクは、具体的には、鋳込まれる成形部品のいくつかの平面を横切って延びる。
【0011】
本発明による鋳造部品を鋳造する方法を用い、しかして溶融金属が、フィーダまたは別個のランナもしくは鋳込みチャネルを介し、周知の仕方で、鋳型に囲まれて鋳造部品の形状を型取るモールド・キャビティの中に注がれ、該鋳型は鋳込まれる鋳造部品の形状を画定する鋳型部品を含む。本発明によれば、溶融物は、このとき少なくとも2つの接続を介し、鋳込まれる鋳造部品の相異なる平面に対応するモールド・キャビティの中の少なくとも2つの分域中に搬送され、これらの接続の少なくとも1つは、鋳込まれる鋳造部品の外形とは関わりなく、鋳型部品の1つを貫通して通る付加チャネルとして設計される。
【0012】
かくのごとく、本発明による、溶融金属から鋳造部品を製造するための鋳型は、モールド・キャビティを型取っていて、鋳込まれる鋳造部品の形状を画定する鋳型部品と、加えて、注入の過程で溶融金属がモールド・キャビティに入るため通る、フィーダまたは別個のランナもしくは鋳込みチャネルと、を有する。本発明によれば、かかる鋳型において、該フィーダまたはランナもしくは鋳込みチャネルは、少なくとも2つの接続によって、鋳込まれる成形部品の相異なる平面に対応するモールド・キャビティの少なくとも2つの分域につながれ、これら接続の少なくとも1つは、鋳込まれる鋳造部品の外形とは関わりなく、鋳型部品の1つを貫通する付加チャネルとして設計される。
【0013】
これにより、本発明による方法を用いて、または本発明による鋳型を用いて、溶融物は、各例において設けられたフィーダからまたはランナもしくは鋳込みチャネルから、周知の仕方で、完成鋳造部品においてその鋳造部品の一部を形成するチャネルを通って通常通り鋳型に入ることができる。但し、本発明によれば、溶融金属は、少なくとも1つの付加接続を介してモールド・キャビティに流入することが可能で、この接続は、生成される鋳造部品の後の形状とは関係のない付加チャネルとして、鋳造部品の外形を画定するこれら鋳型部品の1つを貫通して通る。
【0014】
したがって、本発明によれば、鋳造部品の形状を画定する鋳型の構成部品の適切な設計を介して、構成部品の内部の熱的中心部が、鋳型につながれたフィーダに直接にリンクされる。これは、付加的な供給チャネルを使って達成され、このチャネルは、外形付与鋳型部品を貫通して通り、成形部品、または成形部品の形状を画定する鋳型のモールド・キャビティにとって重要な分域中につながれる。
【0015】
本明細書において「外形付与鋳型部品(独:konturgebenden Formteilen,英:Contour-giving mould parts)」とは、それらの鋳型部品を使って鋳造部品の形状が画定される、鋳型の全ての部品を意味すると理解する。これは、具体的には、鋳造部品の中の凹部、キャビティなどを複製するため鋳型中に挿入された鋳込みコアを含む。
【0016】
鋳型は、砂型または永久鋳型とすることができる。
【0017】
鋳型は、フィーダを含み、このフィーダは鋳型に供給が必要な溶融金属の量を収容する。本フィーダは、鋳型上または鋳型に離接して配置されるかまたは鋳型内に組み込まれる「フィーダ・コア」と称されるものとして構築することができる。このフィーダ・コアは、収縮を埋め合わせるのに必要なフィーダ容積だけでなく、鋳型内に溶融物を分配するのに必要なフィーダ形状をも包含するように設計するとよい。通常、このフィーダ・コアは、凝固の過程が鋳型の最上部で終端するように設計される。
【0018】
これらにより、本発明は、成形部品の後の形状を模る鋳型部品がモールド・キャビティの中に挿入され、鋳造部品の形状を画定する鋳型の該モールド・キャビティに液状金属が充填される、鋳造部品の製造のための方法および鋳型を利用可能にする。
【0019】
本発明は、全ての従来式および動的な永久鋳型鋳造法並びに低圧鋳造法を含む、重力鋳造法に対して特に適している。
【0020】
同時に、本発明は、凝固の過程で、フィーダが鋳型の上側に配置されている全ての鋳造方法に適しているだけでなく、それどころか、原理的には、同じように、凝固の過程で、モールド・キャビティの一区画におけるより早い段階での金属の凝固の結果、モールド・キャビティの他の隣接する区画への溶融物のアクセスが制限される、という問題をかかえた他の鋳造方法に対しても、本発明の利点を同様に用いることが考えられる。
【0021】
溶融物による鋳型充填および鋳造部品の凝固は、前述のように、通常、重力のかかる状態の下で行われる。この場合、通常、フィーダは、重の方向から見て鋳型の上側の個所に配置される。鋳型は、凝固の速度が、該鋳型の他の分域または区画と比べてかなり加速される必要のある1つ以上の分域を有することがある。
【0022】
この加速された冷却は、しばしば「冷却部(独:Kuehleisen,英:chills)」または「冷やし金型(独:Kuehlkokillen,英:cooling moulds)」とも称される冷却エレメントを用いる周知の仕方で行うことが可能であり、これらのエレメントは、鋳型の中に配置され、鋳造品の特定の分域において局部的に制限された凝固速度の増大をもたらす。これを達成するため、これら冷却エレメントは、通常、隣接する鋳型の材料よりも熱伝導性が高い材料から成る。
【0023】
例えば、少なくとも外部および/または側部部品および底部部品それ自体が良好な熱伝導性を有する材料から成る永久鋳型については、関連する外形形成(独:konturbildenden,英:contour-forming)鋳型部品(底部部品、外部および/または側部部品)それ自体が、既に、尚早な凝固がその上で生じ得る冷却エレメントを形成する。当然ながら、これらの場合についても同様に、本発明による仕方で、かかる永久鋳型中に、凝固プロセスおよびこれに起因する流れの途絶の点に関し危険性があることが判明している分域を迂回する、少なくとも1つの付加チャネルを設け、しかして、その危険性がある分域の外側に位置する、鋳型のモールド・キャビティの区画への供給を確かにすることは得策であろう。
【0024】
本発明によれば、このフィーダは、凝固の方向から見て、すなわち、注入された後、溶融金属が鋳型内で凝固する方向から見て、成形部品の様々な平面につながれる。
【0025】
本発明によれば、このために、フィーダ接続またはフィーダ・チャネルは、成形部品の外形の一部となることなく鋳型の中に設けられ、溶融物は、これらを介して鋳型のモールド・キャビティの特定の区画または分域に到達することができる。
【0026】
本発明によれば、フィーダ・リンクまたは供給チャネルは、外形形成鋳型部品を貫通して導くことができる。但し、フィーダ接続または供給チャネルを、鋳型の上記以外の鋳型部品を介して導くことも考えられる。同様に、モールド・キャビティの特定のゾーンに供給を行うために、鋳型の外部構成部品を貫通して適切なチャネルを導くことも可能で、これにより、狙いとする仕方で溶融金属によって鋳造部品を複製することができる。
【0027】
冷却エレメントが影響を与える特定のゾーンにおいて鋳造金属の加速された凝固を得るため、外形形成鋳型部品中に当該冷却エレメントを設けることが可能である。
【0028】
フィーダ・チャネルまたはフィーダ接続の中に存在する溶融金属が尚早に凝固するのを防止するために、特定の冷却体と特定のフィーダ・チャネルまたは特定のフィーダ接続リンクとの間に、低い熱伝導性を有する壁部を設け、これにより、供給チャネルに対し冷却体を熱的に絶縁することができる。具体的には、この壁部は、特定の外形形成鋳型部品を同時に形作る、型砂から構成することが可能である。
【0029】
冷却エレメントが存在する場合、外形形成鋳型部品の少なくとも1つの中に鋳形されたフィーダ接続またはチャネルは、溶融金属が、特定の冷却体が加速された凝固をもたらすゾーンを回避しながら、凝固がもっとゆっくり行われることになる鋳造部品のゾーンに搬送されるように導くことができる。このようにして、たとえ、加速冷却が行われる或るゾーンであって、結果的に、既に凝固した材料が、さらなる溶融金属がもっとゆっくり凝固する予定のゾーンの中に流入するのを妨げる危険性があるゾーンが、フィーダと関連ゾーンとの間に在る場合にあっても、そのゆっくりした凝固のゾーンにも、同様に確実に溶融金属が供給される。
【0030】
本発明によって、複雑な形状の鋳造部品も生成することができ、この場合、かなりの程度まで、鋳型の複雑さを増すことなく、相異なる点において相異なる速度で凝固を生じさせることが可能である。製造するのに本発明が特に適した鋳造部品には、燃焼エンジンのシリンダ・ヘッドおよびシリンダ・ブロックが含まれる。
【0031】
特に、複雑な設計について、本発明は欠陥のない鋳造成形部品の製造を保証し、その結果として、本発明は、主軸の分域およびシリンダ・バーの分域における強度値に関するきわめて高い要求事項を満たしつつ、シリンダ・ブロックを鋳造するのに特に適している。
【0032】
以下に、1つの例示的な実施形態を表す図面を用いて、本発明をさらに詳しく説明することとする。
【0033】
以下の図面は、概略的に示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第一鋳型の垂直断面である。
図2】第二鋳型の垂直断面である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
鋳型G1、G2の例において、重力フィーダとしての機能を果たすフィーダ・コア1は、どちらの例でも、特定の鋳型G1、G2の上縁部を形成している。フィーダ・コア1はフィーダ2を囲んでおり、該フィーダを介して、溶融金属によるモールド・キャビティ3の充填が行われ、どちらの例でも、キャビティ3は鋳型G1、G2によって囲まれている。鋳型G1、G2の充填は、別個のランナおよび鋳込みチャネルを介し、周知の仕方で、同じ様に行われる。
【0036】
どちらの例でも、鋳型G1、G2中に、外形付与鋳型部品4a、4b、4cが設けられている。さらに、鋳型G1は外形付与鋳型部品5を有し、鋳型G2は外形付与鋳型部品6を有する。
【0037】
鋳型部品4a〜4c並びに5および6は、どちらの例でも、鋳造コアとして周知の仕方で設計され、型砂によって形作られる。これらは、鋳型G1、G2の特定の外部鋳型部品7によって型取られたモールド・キャビティ3中に設置され、鋳込まれる鋳造部品の中の凹部、キャビティ、およびチャネルを複製する。したがって、鋳型部品4a〜4c、および5、6は、鋳型G1、G2からコアが除去されると破壊される。鋳型部品4a〜4c、および5、6が、鋳込まれる鋳造部品の内部輪郭を画定する一方、外部部品7は、その外部輪郭を画定する。
【0038】
鋳型部品5、6は、特定のモールド・キャビティ3内に、それらの上側の特定のフィーダ・コア1に接し、同時に特定の鋳型G1、G2のモールド・キャビティ3の中央に位置するように配置される。このようにして、鋳型部品5、6は、モールド・キャビティ3内で2つの側部域8、9を相互から区切っており、これら側部域は、例えば、鋳込まれる鋳造部品の側壁を表している。
【0039】
どちらの例でも、重力の方向Sで鋳型部品5、6の下側に、さらなる区画10が存在し、その中に、この特定の鋳型G1、G2の他の外形形成鋳型部品4a〜4cが配置されている。
【0040】
これらの図に示された例示的な実施形態において、特定の鋳型部品5、6の各々は、その上側をフィーダ2にあてがって、その関連するフィーダ2の底部を形成する。鋳造作業の過程において、フィーダ2に存在する溶融金属は、しかしてこの特定の鋳型部品5、6の上に在ることになる。実用本位の設計では、フィーダ2は、通常のように、破線によって図1中に示された別の底部を有することになり、この中に、フィーダの開口にあたる側部域8、9の開口と合同するスルーホールが鋳形され、これにより、このスルーホールを介して注入が行われる間、溶融金属は開口部を通って側部域に流入する。
【0041】
鋳型G1、G2のモールド・キャビティ3の底部域中に、どちらの例でも、1つの冷却エレメント11が設けられている。この特定の鋳型G1、G2への充填の後、冷却エレメント11上に存在する溶融金属は、この箇所ではより高い放熱が生ずるので、それより上方に在る溶融金属よりも速く凝固する。これは、モールド・キャビティ3を充填している溶融金属の、重力の方向Sと反対方向に向かう凝固進行をもたらす。
【0042】
鋳型G1については、冷却エレメント12、13はそれぞれ、鋳型部品5の、分域8、9に面し、重力の方向Sから見て該部品の下縁である箇所に隣接する側にそれぞれ配置される。
【0043】
同様に鋳型G1については、さらなる冷却エレメント14、15はそれぞれ、分域8、9に面する外部鋳型部品7のそれぞれ相反対側に配置される。対応する冷却エレメント14と12との間および/または15と13との間に存在する区画K1、K2の中に入った溶融金属は、結果的に、これら区画K1、K2の重力の方向Sで上方および下方に存在する溶融金属よりも速く凝固する。
【0044】
鋳型G1の例において、区画K1、K2の下方に存在するモールド・キャビティ3の区画10に、フィーダ2に格納された溶融金属を確実に供給するために、フィーダ・チャネル16が鋳型部品5の中に鋳形され、該フィーダ・チャネル16は、フィーダ2にあてがわれた鋳型部品5の上側から、モールド・キャビティ3の下方区画10に面する該部品の下側まで、垂直方向に延びる。
【0045】
本図に示された例示的な実施形態では、フィーダ・チャネル16は、フィーダ2に直接つながっている。この例では図1の破線だけによって示された、フィーダ2が別の底部を有する、前述した実用本位の設計が選択される場合、当然のことながら、フィーダ2に対応するフィーダ・チャネル16の開口部に向けて、フィーダ2の底部の中に別個のスルーホールが鋳形される。
【0046】
鋳型G1の場合、しかして、フィーダ2中に存在する溶融金属は、側部域8、9を介するだけでなく、鋳型部品5中のフィーダ・チャネル16も介して、モールド・キャビティ3の区画10に到達する。このようにして、フィーダ・チャネル16を流通する溶融金属は、危険性がある区画K1、K2を迂回し、たとえ、区画K1、K2中で溶融金属が既に凝固し始め、そこでの流れが妨げられていても、溶融物が区画10に継続して供給されることを確実にする。
【0047】
鋳型G2の例において、冷却エレメント17、18は、同様に、分域8、9に面する、鋳型部品6の側面部にそれぞれ配置されている。鋳型G1と違って、冷却エレメント17、18は、重力の方向Sと反対向きに鋳型部品6の上側方向にずらされて配置されており、これにより、いずれもそれらの下方に、側部域8、9の別の狭い区画19、20が存在し、鋳型G2のモールド・キャビティ3の下方区画10につながっている。同様に、さらなる冷却エレメント21、22は、鋳型G2の分域8、9に面する外部鋳型部品の特定の両反対側にそれぞれ配置される。
【0048】
対応する冷却エレメント17と21との間および/または18と22との間に存在する区画K1’、K2’に到達した溶融金属は、結果的に、これら区画K1’、K2’の重力の方向Sで上方および下方に存在する溶融金属よりも速く凝固する。
【0049】
鋳型G2の例では、区画K1’、K2’の下方に存在する、鋳型G2のモールド・キャビティ3の区画10、19、20に、フィーダ2に格納されている溶融金属を確実に供給するために、G2では、鋳型部品6の中にフィーダ・チャネル23が鋳形され、これは、上部においてフィーダ2に面する鋳型部品6の上側から分岐点に至るまで垂直方向に延び、分岐点で別に配置された分岐24、25に分岐する。当然のことながら、分岐24、25の各々は、鋳型部品6の中に鋳形された別々のフィーダ・チャネル23を介してフィーダ2につなぐことも可能である。
【0050】
分岐24、25は、分域8、9に面する、鋳型部品6の両側面の各1つに向けて、それぞれに斜めの方向に導かれる。一方の分岐24は、側部域8の区画19につながり、他方の分岐25は、側部域9の区画20につながる。このようにして、危険性がある区画K1’およびK2’の下方に存在する区画19、20は、その中で溶融金属の凝固が生ずるまで、溶融金属の供給を受けることができる。同様に、鋳型部品6の下方に存在するモールド・キャビティ3の下方区画10にも、このルートを介して、危険性がある区画K1’、K2’を回避して溶融金属が供給される。
【0051】
鋳型G2の場合、しかして、フィーダ2中に存在する溶融金属は、側部域8、9を介するだけでなく、フィーダ・チャネル23およびその分岐24、25も介して、モールド・キャビティ3の区画10に到達する。このような仕方で、たとえ、区画K1’、K2’中で溶融金属が既に凝固し始め、そこでの流れが妨げられていても、鋳型G2の区画10、19、20に溶融物が継続して供給されることが確実になる。
【0052】
注入の過程で、鋳型G1、G2の特定のフィーダ・チャネル16、23中を流れる溶融金属が尚早に凝固するのを防止するために、鋳型G1では、特定の冷却エレメント12、13とフィーダ・チャネル16との間に、鋳型G2では、冷却エレメント17、18とフィーダ・チャネル23との間に、それぞれ、壁部26、27または28、29が設けられ、この壁部は、鋳型部品5、6が通常に製作される鋳型部品材料であって、冷却エレメント12、13、17、18に比べて低い熱伝導性を有する材料から成る。
【0053】
以上のように、本発明は、たとえ他の分域で溶融金属が既に凝固し始めたり、あるいは、他の理由で溶融金属の流れが妨げられたりする場合にあっても、鋳型内のモールド・キャビティの相異なる分域および区画に溶融物を確実に供給することを可能にする。したがって、本発明による鋳造部品の鋳込みの過程では、一部の構成部分域が他の部分域よりかなり早期に凝固してもよい。例えば、図面中で示された例では、特定のフィーダ・チャネル16、23を介してフィーダにつながれた上部かつ内部の分域の各々の中の溶融物は、どちらの例でも、区画K1、K2またはK1’、K2’中に存在する溶融金属よりもゆっくりと固化される。但し、このことと関係なく、上部および下部の分域を同時に凝固させることは可能である。
【0054】
フィーダ・チャネルが、望ましくは、モールド・キャビティ中に配置された外形付与鋳型部品の中に鋳形されるという事実から得られる1つの利点は、本発明のこの設計が、鋳造部品を、部分的な硬化状態、すなわち、まだ完全に凝固していない状態で、外部鋳型部品から取り外すことを可能にすることである。したがって、本発明では、フィーダ2の状態がまだ練り物状の時にあっても、成形部品の取り出しを行うことも可能である。
【符号の説明】
【0055】
G1、G2 鋳型
K1、K2 鋳型G1のモールド・キャビティ3の、相互に面する冷却エレメント14と12との間または15と13との間に存在する区画
K1’、K2’ 鋳型G2のモールド・キャビティ3の、相互に面する冷却エレメント17と21との間または18と22との間に存在する区画
S 重力の方向
【0056】
1 フィーダ・コア
2 フィーダ
3 モールド・キャビティ
4a〜4c 鋳型部品
5 鋳型部品
6 鋳型部品
7 外部鋳型部品
8、9 モールド・キャビティ3の側部域
S 重力の方向
10 モールド・キャビティ3の下方区画
11 冷却エレメント
12、13 冷却エレメント
14、15 冷却エレメント
16 フィーダ・チャネル
17、18 冷却エレメント
19、20 狭い区画
21、22 冷却エレメント
23 フィーダ・チャネル
24、25 フィーダ・チャネル23の分岐
26、27 壁部
28、29 壁部
図1
図2