(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記横メンバには、前記凹み壁部の前方からフロントサイドフレームに向って次第に後方に位置する稜線が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車体前部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記横メンバは、横メンバ本体と補強部材を備え、重量が大きいことから、軽量化が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、前記する背景に鑑みて創案された発明であって、軽量化された横メンバを備えた車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る車体前部構造は、前後方向に延在するフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの後部から車幅方向内側に延びる横メンバと、前記フロントサイドフレームの下方に配置されるサブフレームと、前記横メンバの底壁に設けられ、前記サブフレームの後端部を締結するためのサブフレーム取付部と、を備え、前記横メンバは、底壁に孔部が形成された横メンバ本体と、前記横メンバ本体よりも引張強度が低い材料で形成され、前記横メンバ本体の底壁に重ねられて前記横メンバ本体内に接合されるとともに上方に締結ナットが配置された補強部材と、を備え、前記孔部は、前記締結ナットよりも大径の大径孔と、前記大径孔の端縁を切り欠いてなる切り欠き部と、を有し、前記補強部材は、前記孔部に対応して下方に凹設されてなる凹み壁部を有し、前記凹み壁部は、前記切り欠き部に対応する排水孔を有していることを特徴とする。
【0009】
前記発明の孔部は、従来技術の逃げ孔に相当する大径孔のほかに、切り欠き孔を有し、切り欠かれている範囲が拡大し、横メンバが軽量化する。
凹み壁部の上方に溜まった水は、排水孔を通過して横メンバ下に排水されるため、錆が発生し難い。
また、排水孔は、凹み壁部において大径孔に対応する領域(締結ナットに締め付けられる締付領域、及び下方からの荷重により破断する脆弱部)から外れているため、サブフレーム取付部として要求される剛性が低下し難い。
さらに、締結ナットで締め付けられる部位は、横メンバ本体よりも引張強度が低い凹み壁部(補強部材)であり、前方からの衝突時において、締結ナットが脱落する確実性が高くなっている。
【0010】
また、前記発明において、前記横メンバは、前記横メンバ本体の側方を閉塞する閉塞プレートを備え、前記横メンバ本体は、側面視で上方に開口する略ハット状を呈し、前記補強部材は、前記横メンバ本体の前壁、後壁及び底壁に接合し、前記閉塞プレートは、前記凹み壁部の周縁に沿って延在し接合される周延補強部を有していることが好ましい。
【0011】
前記構成によれば、サブフレーム取付部がフロントサイドフレームからオフセットされた位置にあるものの、周延補強部によりサブフレーム取付部の周辺の剛性が高まり、サブフレームを安定して支持することができる。
【0012】
また、前記発明において、前記横メンバから後方に延びるフロアフレームと、前記横メンバと前記フロアフレームとに接合されて下方に突出する当て部材と、を備え、前記サブフレームは、前方からの衝突時において、前後方向中央部が下方に変位する側面視L字状に折れ曲がり、前記サブフレームの後端は、前記サブフレームの折れ曲がりにより、締結ボルトに締め付けられる被締結部を支点として上方へ変位し、前記当て部材に当接するように構成されていることが好ましい。
【0013】
前記構成によれば、サブフレームの折れ曲がりにより、サブフレームの前後方向中間よりも後方の部位は、被締結部を支点として、被締結部よりも前側が下方に変位し、一方で被締結部よりも後ろ側が上方へ変位する。
そして、サブフレームの後端が当て部材に当接した場合、サブフレームの前後方向中間よりも後方の部位全体が、当て部材を支点として下方へ変位するようになる。
このため、締結ナット及び締結ボルトには、てこの原理により、下方に向う荷重が作用し、締結ナットが横メンバから脱落し易くなる。
そのほか、従来使用されてきたリンク機構が不要となる。
【0014】
また、前記発明において、前記横メンバには、前記凹み壁部の前方からフロントサイドフレームに向って次第に後方に位置する稜線が形成されていることが好ましい。
【0015】
前記構成によれば、横メンバに入力される前方からの衝突荷重は、フロントサイドフレームに分散され、横メンバの後方への移動が抑制される。
よって、前方からの衝突時に、サブレームが確実に折れ曲がるようになるとともに、締結ナット及び締結ボルトに下方に向う荷重が作用し、締結ナットが横メンバから脱落するようになる。
【0016】
また、前記発明において、前記補強部材の板厚は、前記横メンバ本体よりも厚いことが好ましい。
【0017】
前記構成によれば、サブフレーム取付部の剛性が高まり、サブフレームを安定して支持できるようになる。
【0018】
また、前記発明において、前記フロントサイドフレームの前フレームには、前から順に、車幅方向外側に配置される車輪との接触を回避する逃げ部と、車幅方向内側へ屈曲する前部屈曲部と、車幅方向外側の外側壁が車幅方向内側に凹んでなる凹部と、が形成されていることが好ましい。
【0019】
前記構成によれば、前フレームが3点(逃げ部、前部屈曲部、凹部)で車幅方向へ交互に折れ曲がり、衝突エネルギーを効率良く吸収することができる。
【0020】
また、前記発明において、前記フロントサイドフレームの後フレームは、前記フロントサイドフレームの前フレームの後部から後ろ下方に延びる傾斜部と、前記傾斜部の後端から水平かつ後方に延びる水平部と、を有し、前記後フレームには、前記傾斜部と前記水平部とからなる角部である後部屈曲部が形成され、前記後部屈曲部の車幅方向外側には、アウトリガーのスチフナが設けられ、前記後部屈曲部の車幅方向内側には、横メンバの後壁が設けられ、前記後部屈曲部内には、前記スチフナと前記横メンバの後壁と車幅方向に並ぶ屈曲バルクヘッドが設けられていることが好ましい。
【0021】
前記構成によれば、スチフナ、横メンバの後壁及び屈曲バルクヘッドにより、後部屈曲部の剛性が高められている。よって、前方から衝突されても、後部屈曲部が成す角度が保持され、傾斜部が水平部に対して上方を向くように折れ曲がるということが抑制される。この結果、傾斜部の変形により前フレームの後端上方のダッシュロアパネルが後方(車内側)へ移動する、という事態を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、軽量化された横メンバを備えた車体前部構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、実施形態に係る車体前部構造を適用した車両について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、車体前部構造を下方から視た底面図である。
図1に示すように、車両100は、車体前部の骨格部材として、前輪110,110よりも車幅方向内側で前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム1,1と、左右のフロントサイドフレーム1の後部から車幅方向外側に延びる左右のアウトリガー2,2と、左右のフロントサイドフレーム1の後部から車幅方向内側に延びる左右の横メンバ3,3と、左右の横メンバ3,3から後方に延びる左右のフロアフレーム4,4と、左右のフロントサイドフレーム1の下方に設けられたサブフレーム5と、を備える。
【0026】
なお、左右のフロントサイドフレーム1,1と、左右のアウトリガー2,2と、左右の横メンバ3,3と、左右のフロアフレーム4,4は、それぞれ左右対称に形成されている。よって、以下の説明において、左側の構造を説明し、右側の構造の説明を省略する。
【0027】
図2に示すように、フロントサイドフレーム1は、前後方向に水平に延在する前フレーム6と、前フレーム6の後端部から後ろ下方へ延び、その後、後方へ水平に延びる後フレーム7と、を備える。
【0028】
図3、
図4に示すように、前フレーム6は、車幅方向外側を向いて開口する断面視略ハット状のインナフレーム6aと、インナフレーム6aの車幅方向外側に溶接されるアウタフレーム6bとで構成されている。よって、前フレーム6は、上壁、下壁、内側壁及び外側壁を備える閉断面構造になっている。
【0029】
図4に示すように、後フレーム7は、底壁7a、内側壁7b、外側壁7c、右フランジ7d及び左フランジ7eを有し、上方に向って開口する断面視略ハット状を呈している。
後フレーム7の前端部は、前フレーム6の後端部に溶接され、前フレーム6と後フレーム7とが一体になっている。
後フレーム7の右フランジ7d及び左フランジ7eには、ダッシュロアパネル111(
図2の二点鎖線を参照)と図示しないフロアパネルが接合され、後フレーム7は閉断面構造になっている。
【0030】
図3に示すように、前フレーム6は、前後方向に直線状に延びる第1直線部11と、第1直線部11の後端から車幅方向内側に向って直線状に延びる第2直線部12と、前フレーム6の後端部であり、かつ、第2直線部12の後端から後方に略直線状に延びて後フレーム7と連結する連結部13と、を備える。
また、前フレーム6には、前から順に、逃げ部14、前部屈曲部15、凹部16が形成されている。
【0031】
逃げ部14は、前フレーム6と前輪110(
図1参照)との接触を回避するための凹みであり、第1直線部11の前後方向中央部の外側壁を車幅方向内側に凹むように湾曲させてなる。
このため、前方からの衝突荷重が前フレーム6に作用した場合、応力(圧縮応力)が逃げ部14(外側壁)に集中し易くなっている。
また、応力により逃げ部14(外側壁)が変形(圧縮)すると、逃げ部14を起点として、第1直線部11の前部11aが車幅方向外側に折れ曲がり(
図3の二点鎖線で示すM11aを参照)、衝突エネルギーが吸収される。
【0032】
前部屈曲部15は、第1直線部11と第2直線部12との間に形成された角部である。
このため、前方からの衝突荷重が前フレーム6に作用した場合、応力(圧縮応力)が前部屈曲部15(内側壁)に集中し易くなっている。
また、応力により前部屈曲部15(内側壁)が変形(圧縮)すると、前部屈曲部15を起点として、第1直線部11の後部11bが車幅方向内側に折れ曲がり(
図3の二点鎖線で示すM11bを参照)、衝突エネルギーが吸収される。
【0033】
凹部16は、第2直線部12の後部及び連結部13の前部を構成する外側壁を車幅方向内側に凹ませてなる。
このため、前方からの衝突荷重が前フレーム6に作用した場合、応力(圧縮応力)が凹部16(外側壁)に集中し易くなっている。
また、応力により凹部16(外側壁)が変形(圧縮)すると、凹部16を起点として、第2直線部12が車幅方向外側に折れ曲がり(
図3の二点鎖線で示すM12)、衝突エネルギーが吸収される。
【0034】
また、凹部16は、第2直線部12と、この第2直線部12に対して屈曲する連結部13との間、言い換えると角部の内側に位置し、応力が凹部16(外側壁)にさらに集中し易くなっている。よって、凹部16を起点として、第2直線部12が車幅方向外側に折れ曲がる確実性が高くなっている。
【0035】
そして、逃げ部14、前部屈曲部15及び凹部16によれば、車幅方向外側又は内側に折れ曲がる方向が交互になり、衝突エネルギーが効率良く吸収される。
【0036】
以上が前フレーム6の基本的な構成である。つぎに前フレーム6に設けられている部材について説明する。
【0037】
図2に示すように、前フレーム6の第1直線部11の前端部には、下方に延びてサブフレーム5の前端部を取り付けるための前側取付アーム55が設けられている。
第2直線部12の下面には、ブラケット57が設けられている。
このブラケット57は、サブフレーム5の前後中間部から上方に延びる中間取付アーム56を前フレーム6に取り付けるためのものであり、締結具(
図1の締結ボルトB2参照)により連結している。
また、中間取付アーム56に下方に向う荷重が作用すると、中間取付アーム56がブラケット57から分離し、中間取付アーム56がフロントサイドフレーム1から脱落するようになっている(
図2の矢印A1参照)。
【0038】
図3に示すように、前フレーム6の前端には、車幅方向外側に延びる荷重伝達部材17が設けられている。これにより、フロントサイドフレーム1の車幅方向外側に衝突荷重が入力されるようなスモールオーバーラップ衝突の場合であっても、荷重伝達部材17を介してフロントサイドフレーム1に衝突荷重が確実に入力されるようになる。
【0039】
図4に示すように、前フレーム6内には、前から順に、第1直線部用バルクヘッド18、前バルクヘッド19、後バルクヘッド20が設けられている。
第1直線部用バルクヘッド18は、第1直線部11の後部11b内に設けられ、第1直線部11の後部11bの剛性を高めている。
前バルクヘッド19は、前フレーム6の第2直線部12内に設けられ、第2直線部12の剛性を高めている。
後バルクヘッド20は、前フレーム6の連結部13から後フレーム7内に延在し、前フレーム6と後フレーム7とが連結する部位の剛性を高めている。
【0040】
また、第1直線部用バルクヘッド18、前バルクヘッド19及び後バルクヘッド20のそれぞれは、互いに前後に離間し、前方からの衝突荷重が作用した場合、第1直線部11の後部11bの折れ曲がり(
図3の二点鎖線で示すM11b参照)や第2直線部12の折れ曲がり(
図3の二点鎖線で示すM12参照)を阻害しないようになっている。
【0041】
図4に示すように、後フレーム7は、前フレーム6の連結部13から後ろ下方に延びる傾斜部21と、傾斜部21の後端から水平かつ後方に延びる水平部22と、を有している。このため、後フレーム7には、傾斜部21と水平部22とからなる後部屈曲部23が形成されている。
【0042】
後部屈曲部23内には、屈曲バルクヘッド24が設けられている。屈曲バルクヘッド24は、後部屈曲部23に沿って上下方向及び左右方向に延在し、後部屈曲部23を構成する底壁7a、内側壁7b、外側壁7cのそれぞれに結合し、後部屈曲部23の剛性を高めている。
【0043】
図4に示すように、アウトリガー2は、後フレーム7の車幅方向外側に配置された図示しないサイドシルと、後フレーム7とを連結している。このため、後フレーム7に作用する衝突荷重は、アウトリガー2を介して、図示しないサイドシルに分散するようになっている。
アウトリガー2は、車幅方向に延在し断面視で上方に開口する略ハット状であり、上方にフロアパネルが接合されて閉断面構造になっている。
【0044】
図5に示すように、アウトリガー2の底壁は、段差状になっており、前底壁2aと、後底壁2bと、前底壁2aと後底壁2bとの間に位置する縦壁(不図示)と、を有する。
そして、アウトリガー2には、前底壁2aと後底壁2bと縦壁(不図示)とに跨って結合するスチフナ2dが設けられ、剛性が高められている。
スチフナ2dの車幅方向内側の端部は、後フレーム7の後部屈曲部23を構成する外側壁7cに接合している。
【0045】
横メンバ3は、後フレーム7の内側壁7bから車幅方向内側に延び、断面視で上方に開口する略ハット状の横メンバ本体30と、横メンバ本体30の底壁30aに重ねられて接合される補強部材40と、横メンバ本体30の側方を閉塞する閉塞プレート48と、を備える。
【0046】
横メンバ本体30の車幅方向外側の端部は、溶接により後フレーム7の内側壁7bに接合している。
横メンバ本体30の後壁30bの後面には、溶接によりフロアフレーム4の先端部が接合している。
このため、後フレーム7に作用する衝突荷重は、横メンバ3を介して、フロアフレーム4に分散するようになっている。
【0047】
横メンバ本体30の後壁30bは、後フレーム7の後部屈曲部23を構成する内側壁7bに接合している。
これにより、横メンバ3の後壁3bと屈曲バルクヘッド24とスチフナ2dとが車幅方向に並び、後部屈曲部23の剛性が極めて高くなっている。
この結果、前方からの衝突荷重により、後フレーム7の後部屈曲部23が小さくなりダッシュロアパネル111が車内側に変形することを抑制できる。
つまり、前方からの衝突荷重が作用しても、後部屈曲部23の角度θ1(
図2参照)が小さくなりダッシュロアパネル111が後方(車内側)に移動する、ということを防止できる。
【0048】
図5に示すように、補強部材40は、横メンバ本体30の底壁30aの車幅方向内側の上面に接合している。
補強部材40には、上下方向に貫通するボルト貫通孔45が形成されている。
また、
図6に示すように、横メンバ本体30の底壁30aにおいて、ボルト貫通孔45の下方に対応する部位に孔部31が形成されている(
図8(a)参照)。
【0049】
そして、ボルト貫通孔45と孔部31とを、締結ボルトB3の軸部が下方から貫通し、補強部材40の上方に配置された締結ナットN3に螺合している。
これにより、横メンバ3の底壁3aの下方に、サブフレーム5の後側被締結部52bが取り付けられる。
以上から、横メンバ本体30の底壁30aと補強部材40とがサブフレーム取付部8を構成している。なお、サブフレーム取付部8の詳細については後述する。
【0050】
図5に示すように、閉塞プレート48は、上下方向及び前後方向に延びる板状部材である。
閉塞プレート48の前端縁と後端縁には、車幅方向外側に延びる前壁48aと後壁48bが形成され、この前壁48aと後壁48bとが横メンバ本体30の前壁30cと後壁30bに接合されている。
また、閉塞プレート48は、補強部材40上に配置され、閉塞プレート48の下端が補強部材40に接合している。
これにより、横メンバ3の車幅方向内側が閉塞され、横メンバ3の剛性が高められている。
【0051】
図6に示すように、横メンバ3の底壁3aの下方には、底壁3aよりも下方に突出する当て部材70が配置されている。
図7に示すように、当て部材70は、横メンバ3とフロアフレーム4とに亘って延在する部材である。
また、当て部材70の前端部71は、横メンバ3の底壁3aの下面に接合され、当て部材70の後端部72は、フロアフレーム4の底壁4aの下面に溶接されている。
よって、当て部材70により、横メンバ3とフロアフレーム4との結合が強固になっている。
【0052】
また、当て部材70は、横メンバ3の底壁3aのボルト貫通孔45の後方に位置している。このため、
図6に示すように、当て部材70の下方には、サブフレーム5の後述する延長アーム51の後端51aが配置されている。
なお、当て部材70は延長アーム51の後端51aに離間している。よって、走行中の振動により、延長アーム51の後端51aと当て部材70とが接触せず、静寂性が確保されるようになっている。
【0053】
図1に示すように、サブフレーム5は、車幅方向中央部に位置し平面視略矩形状のアーム本体50と、アーム本体50の側部から前方に延びる左右の延長アーム51と、左右の延長アームの間に介在する補助アーム52と、を備える。
左右の延長アーム51、51は、後方に向うにつれて次第に幅狭となり、延長アーム51の後端51aがフロントサイドフレーム1よりも車幅方向内側にオフセットされている。
【0054】
延長アーム51の前端部及び後端部には、前側被締結部52a及び後側被締結部52bが形成されている。
前側被締結部52a及び後側被締結部52bは、上下方向に開口する筒状の被締結具53が設けられ(
図6参照)、上下方向から締結可能できるようになっている。
【0055】
図2に示すように、前側被締結部52aは、締結具(
図1の締結ボルトB1参照)により、前側取付アーム55に締結されている。
図6に示すように、後側被締結部52bは、締結ナットN3と締結ボルトB3とにより横メンバ3のサブフレーム取付部8に締結されている。
【0056】
なお、延長アーム51は、フロントサイドフレーム1と横メンバ3とに結合していることから、車両前方からの衝突荷重を受けて前フレーム6が折れ曲がると(
図3参照)、前側取付アーム55を介して延長アーム51の先端に後方に向う荷重が作用する。よって、延長アーム51には、前後方向に圧縮するような荷重が作用する。
【0057】
図2に示すように、さらに、延長アーム51の前後方向中央部には、上方に延びる中間取付アーム56が連結している。中間取付アーム56の上端は、締結具(
図1の締結ボルトB2参照)によりブラケット57に連結している。
【0058】
延長アーム51の上壁には、下方に凹む中央折れ部54が設けられている。
これによれば、延長アーム51に前後方向に圧縮するような荷重が作用した場合、中央折れ部54を起点として延長アーム51が谷折りになり、中央部近傍が下方に変位するようになる(
図2の二点鎖線M51参照)。
また、延長アーム51が谷折りになる際に、中間取付アーム56に下方に向う荷重が作用し、中間取付アーム56がブラケット57から離脱する(矢印A1参照)。
【0059】
ここで、
図6に示すように、延長アーム51が谷折りになると、延長アーム51の後部側は、後側被締結部52bを起点として傾倒し、延長アーム51の後端51aは、上方に変位して当て部材70に当接する(矢印A2参照)。
そして、延長アーム51の折れ曲がり量がさらに大きくなると、当て部材70に当接する延長アーム51の後端51aを起点として、延長アーム51の後部側が傾斜する。
このため、てこの原理により、延長アーム51の後側被締結部52bには、下方に向う荷重が作用する(矢印A3参照)。
【0060】
つぎに、サブフレーム取付部8について説明する。
図8(a)に示すように、横メンバ本体30の底壁30aに形成された孔部31は、締結ボルトB3の中心軸Oを同心円とする円状の円孔32と、円孔32の後端縁を半円状に切り欠いてなる切り欠き部33と、を備える。
なお、
図8において、円孔32と切り欠き部33の境界を補助線Hで表している。
また、円孔32は、締結ナットN3の外径よりも拡径している。
このため、
図8(c)に示すように、締結ナットN3と締結ボルトB3には、補強部材40のみが締結されるようになっている。
【0061】
図8(b)(c)に示すように、補強部材40には、孔部31に対応して下方に凹設され、平面視で孔部31と同一形状の凹み壁部41が形成されている。
凹み壁部41には、締結ボルトB3の中心軸Oに対応して締結ボルトB3の軸部が貫通するためのボルト貫通孔45と、切り欠き部33に対応して形成された排水孔46と、が形成されている。
よって、
図8(c)に示すように、凹み壁部41は、上方に締結ナットN3が設けられて締結される環状の被締結部42aと、円孔32内に位置し被締結部42aの周囲を囲む環状の脆弱部42bと、切り欠き部33内に位置し排水孔46が形成された切り欠き用凹部43と、を備える。
【0062】
以上から、上記したてこの原理により、延長アーム51の後側被締結部52bに下方に向う荷重が作用すると、締結ナットN3に締結される被締結部42aに下方に向う荷重が作用する。
そして、被締結部42aの周囲において、1層からなり上下方向からの荷重に対し比較的脆弱な脆弱部42bにせん断応力が集中し、脆弱部42bがせん断破壊される。
これにより、被締結部42aとともに締結ボルトB3が下方に脱落し、サブフレーム5の後側被締結部52bと横メンバ3との結合が解除されてエンジン(不図示)が下方に落下し、エンジンの車内侵入が防止される。
【0063】
さらに、脆弱部42bを構成する補強部材40は、横メンバ本体30よりも引張強度が低い材料で形成され、横メンバ本体30で形成した場合よりも小さい荷重で締結ナットN3が脱落し易い。よって、確実にサブフレーム5と横メンバ3との結合が解除されるようになっている。
なお、排水孔46は、切り欠き用凹部43に形成され、脆弱部42bの剛性が必要以上に低下しない。
【0064】
つぎに、穴部31及び凹み壁部41の周辺の構成について説明する
図8(c)に示すように、補強部材40の厚みL2は、横メンバ本体30の厚みL1よりも厚い。よって、横メンバ本体30の底壁30aと補強部材40とが重なっている部位の剛性が高められている。
これにより、サブフレーム取付部8は、凹み壁部41を介して水平方向に向う荷重に対して変形し難く、安定してサブフレーム5を支持することができる。
【0065】
図5に示すように、補強部材40の前端縁と後端縁には、横メンバ本体30の後壁30b、前壁30cに接合する被接合部40b、40cが形成されている。
また、閉塞プレート48には、凹み壁部41の周縁に沿って延在し、補強部材40に接合される周延補強部49が形成されている。
これにより、サブフレーム取付部8がフロントサイドフレーム1からオフセットされた位置にあるものの、サブフレーム取付部8の周辺の剛性が高まり、サブフレーム5を安定して支持することができる。
【0066】
図5、
図7に示すように、横メンバ3には、凹み壁部41の前方からフロントサイドフレーム1に向って次第に後方に位置する稜線37が形成されている。
なお、稜線37は、横メンバ本体30と補強部材40とが重なっている領域では、横メンバ本体30と補強部材40の両方に形成されている。
よって、サブフレーム5から後方へ向う荷重が横メンバ3に作用しても、その荷重は、稜線37によりフロントサイドフレーム1(後フレーム7)に分散される。
このため、横メンバ3は、後方に移動するように変形することが防止され、サブフレーム5が確実に折れ曲がるように、言い換えると、横メンバ3から締結ナットN3が確実に脱落するようになる。
【0067】
以上、実施形態によれば、横メンバ3の孔部31は、従来技術の逃げ孔に相当する大径孔(実施形態の円孔32)のほかに、切り欠き部33を有している。よって、切り欠かれている範囲が拡大しており、横メンバ3の軽量化を達成することができる。
また、横メンバ3に排水孔46が形成されているため、横メンバ3に錆が発生し難い。
【0068】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、実施形態において、大径孔は円形状の円孔32であったが、本発明では、矩形状であってもよく、特に限定されない。