特許第6227697号(P6227697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユー・ディー・シー アイルランド リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000017
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000018
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000019
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000020
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000021
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000022
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000023
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000024
  • 特許6227697-有機電界発光素子及び表示装置 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227697
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20171030BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171030BHJP
   H05B 33/24 20060101ALI20171030BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20171030BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20171030BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20171030BHJP
   H01L 27/32 20060101ALN20171030BHJP
   G09F 9/30 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/24
   H05B33/12 B
   H05B33/26 Z
   G02B5/22
   !G02B5/30
   !H01L27/32
   !G09F9/30 365
【請求項の数】5
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-78707(P2016-78707)
(22)【出願日】2016年4月11日
(62)【分割の表示】特願2009-209556(P2009-209556)の分割
【原出願日】2009年9月10日
(65)【公開番号】特開2016-149372(P2016-149372A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】512253626
【氏名又は名称】ユー・ディー・シー アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】細田 英正
(72)【発明者】
【氏名】市橋 光芳
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−215067(JP,A)
【文献】 特開2002−373776(JP,A)
【文献】 特開2008−225179(JP,A)
【文献】 特開2009−049223(JP,A)
【文献】 特開2009−283246(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0261716(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0085478(US,A1)
【文献】 特開2005−063841(JP,A)
【文献】 特開2004−030955(JP,A)
【文献】 特開2007−299980(JP,A)
【文献】 特開平06−203963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
G02B 5/22
H01L 51/50
H05B 33/12
H05B 33/24
H05B 33/26
G02B 5/30
G09F 9/30
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有するマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、
前記発光層から出射する光に対応した所定の波長範囲の光を反射と透過により2種類の円偏光成分に分離するコレステリック層である偏光分離手段と、
1/4波長板である位相差板及び偏光板を有する円偏光板と、
前記反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面
を有し、
前記偏光分離手段が、前記発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記マイクロキャビティ構造の前記有機電界発光層の光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記位相差板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光であり、
前記光吸収波長範囲が、前記マイクロキャビティ構造の前記有機電界発光層が青色のときは430nm〜520nm、緑色のときは470nm〜630nm、赤色のときは530nm〜740nmであり、
前記発光層の厚みが1nm〜500nmであることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
発光層からの光の出射方向からみて、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、偏光分離手段と、円偏光板とをこの順に有し、半透過層と位相差板の間に偏光分離手段を有する請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
マトリクス状に配置された複数の有機電界発光素子と、該有機電界発光素子の発光動作を画像情報に基づいて制御する制御手段とを少なくとも有する表示装置であって、
前記複数の有機電界発光素子が、いずれも請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
複数の有機電界発光素子が、それぞれ、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有する複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、コレステリック層と、1/4波長板及び偏光板を有する円偏光板とを有し、
前記複数のマイクロキャビティ構造の前記有機電界発光層が、赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有し、
前記コレステリック層が、前記複数の発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、前記緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び前記青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層のいずれかの光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記1/4波長板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光であり、
前記反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有する請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
複数の有機電界発光素子が、それぞれ、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有する複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、コレステリック層と、1/4波長板及び偏光板を有する円偏光板とを有し、
前記複数のマイクロキャビティ構造の前記有機電界発光層が、少なくとも赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有し、
前記コレステリック層が、前記複数の発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、前記緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び前記青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層のそれぞれの光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記1/4波長板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光となるように青色、緑色、及び赤色の発光画素のパターンに従ってそれぞれへの選択反射を示すようにコレステリック層が厚さを調整されてパターニングされており、
前記反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有する請求項3に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセント素子」、「有機EL素子」と称することもある)及び該有機電界発光素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置(有機電界発光装置)は自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に用いられる。有機ELディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高い、視野角依存性がないといった表示性能の利点を有する。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できるといった利点もある。
【0003】
このような有機ELディスプレイにおいて、発光輝度と共に外光の映り込みを低減し、コントラストを上げることは重要な課題である。そのため、有機電界発光素子の光取り出し面に、1/4波長板と偏光板からなる円偏光板を配置することで、外光の映り込みを抑えていた。しかしこの場合、有機電界発光層で発光した光の半分以上が円偏光板で吸収されてしまうという問題がある。
前記問題を解決するため、例えば特許文献1には、透明電極を利用した有機電界発光層と、1/4波長板と偏光板からなる円偏光板との間にコレステリック層を設けることで、光利用効率を高めることができる発光素子が提案されている。この提案によれば、図1に示すある特定波長の片方の円偏光成分のみを反射し、その他の光を通過させるというコレステリック層の円偏光選択反射性により光利用効率が向上するものの、図2に示すように、コレステリック層の反射波長帯域での外光の映り込みが生じ、コントラストが悪化してしまうという問題がある。
【0004】
また、特許文献2には、図3に示すように、カラーフィルタ50と、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層51とを組み合わせることで、外光反射を防止できる表示装置が提案されている。図3中、52は半透過層、53は反射層を表す。しかし、この提案では、正面方向からのマイクロキャビティ構造の反射率でカラーフィルタを設計すると、図3の下図に示すように、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層51により、斜め方向で反射率の低減される波長域がシフトし、カラーフィルタ50により全ての角度からの外光成分を低減させることは原理的に困難であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4011292号公報
【特許文献2】特許第3555759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光取り出し効率が高く、明室コントランスが良好であり、消費電力の低減を図ることが可能な有機電界発光素子及び該有機電界発光素子を用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、マイクロキャビティ構造を有する有機電界発光層と、コレステリック層と、円偏光板とを有する有機電界発光素子が、円偏光板単独よりも取り出し効率を高め、かつマイクロキャビティ構造内部の吸収を利用して、コレステリック反射波長帯域での外光を低減可能となる上に、斜め方向でのマイクロキャビティ構造の反射率の低減される波長域のシフトに応じてコレステリック反射波長域が変化するため、斜め方向のコントラストの悪化も防止できることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有するマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、
前記発光層から出射する光に対応した所定の波長範囲の光を反射と透過により2種類の円偏光成分に分離する偏光分離手段と、
位相差板及び偏光板を有する円偏光板と、
を有することを特徴とする有機電界発光素子である。
<2> 発光層からの光の出射方向からみて、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、偏光分離手段と、円偏光板とをこの順に有し、半透過層と位相差板の間に偏光分離手段を有する前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
<3> 偏光分離手段が、発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記位相差板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光である前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<4> 反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<5> 偏光分離手段がコレステリック層であり、位相差板が1/4波長板である前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<6> マトリクス状に配置された複数の有機電界発光素子と、該有機電界発光素子の発光動作を画像情報に基づいて制御する制御手段とを少なくとも有する表示装置であって、
前記複数の有機電界発光素子が、いずれも前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光素子であることを特徴とする表示装置である。
<7> 複数の有機電界発光素子が、それぞれ、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有する複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、コレステリック層と、1/4波長板及び偏光板を有する円偏光板とを有し、
複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層が、赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有し、
前記コレステリック層が、前記複数の発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、前記緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び前記青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層のいずれかの光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記1/4波長板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光であり、
前記反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有する前記<6>に記載の表示装置である。
<8> 複数の有機電界発光素子が、それぞれ、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有する複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、コレステリック層と、1/4波長板及び偏光板を有する円偏光板とを有し、
複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層が、少なくとも赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有し、
前記コレステリック層が、前記複数の発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、前記緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び前記青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層のそれぞれの光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記1/4波長板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光となるようにコレステリック層がパターニングされており、
前記反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有する前記<6>に記載の表示装置である。
<9> 特定の光を反射する偏光分離手段を有する層の面上のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を覆う範囲のみ、特定の光の波長域が、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲よりも狭い前記<6>から<8>のいずれかに記載の表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、光取り出し効率が高く、明室コントランスが良好であり、消費電力の低減が可能な発光素子及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、従来の有機電界発光素子について、取り出し効率が上がる原理を示す図である。
図2図2は、従来の有機電界発光素子について、外光反射によりコントラストが悪化する原理を示す図である。
図3図3は、従来の有機電界発光素子について、斜め方向の外光反射によりコントラストが悪化する原理を示す図である。
図4図4は、本発明の有機電界発光素子について、外光反射によりコントラストが良化する原理を示す図である。
図5図5は、実施例における発光輝度を対比した結果を示す図である。
図6図6は、実施例における明室コントラストを対比した結果を示す図である。
図7図7は、本発明の有機電界発光素子の一例であるボトムエミッション型の有機電界発光素子を示す概略断面図である。
図8図8は、本発明の有機電界発光素子の一例であるトップエミッション型の有機電界発光素子を示す概略断面図である。
図9図9は、実施例における外光反射の測定の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(有機電界発光素子)
本発明の有機電界発光素子は、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、偏光分離手段と、円偏光板とを有し、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0012】
前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層は、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記偏光分離手段は、前記発光層から出射する光に対応した所定の波長範囲の光を反射と透過により2種類の円偏光成分に分離する手段(円偏光選択分離手段)であり、コレステリック層であることが好ましい。
前記円偏光板は、外光反射を低減でき、コントラスト比を向上させる機能を有する手段であり、位相差板及び偏光板を有し、該位相差板が1/4波長板であることが好ましい。
この場合、発光層からの光の出射方向からみて、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、偏光分離手段と、円偏光板とをこの順に有し、半透過層と位相差板の間に偏光分離手段を有することが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記偏光分離手段が、前記発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記位相差板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光であることが好ましい。マイクロキャビティ構造にした場合、特許第3555759号公報に記載されるように、マイクロキャビティの吸収波長域と、発光波長域が近い関係となる。これにより、マイクロキャビティ構造内部から発光した光のうち従来円偏光板で吸収され、利用できなかった特定の光を偏光分離手段により反射させ、更にマイクロキャビティの反射層により円偏光板の外部に取り出せる成分へと変換し、取り出し効率を高め、コントラストの向上を図ることができる。
前記反射電極層は、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有することが好ましい。
【0014】
ここで、図4は、本発明の有機電界発光素子の一例を示す概略図である。この図4の有機電界発光素子は、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層5と、偏光分離手段としてのコレステリック層1と、位相差板としての1/4波長板2及び偏光板3を有する円偏光板4とを有する。本発明の有機電界発光素子は、前記構成を備えることにより、マイクロキャビティ構造内部の吸収を利用して、コレステリック反射波長帯域での外光を低減可能となる上に、斜め方向でのマイクロキャビティ構造の反射率の低減される波長域のシフトに応じてコレステリック反射波長域が変化するため、斜め方向のコントラストの悪化も防止できる。
【0015】
本発明の有機電界発光素子は、図4に示すように、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層5と、偏光分離手段としてのコレステリック層1と、位相差板としての1/4波長板2及び偏光板3を有する円偏光板4とを有する。
マイクロキャビティ構造の有機電界発光層5の発光層から出射した光は直接、あるいは発光層の裏面に配置した反射電極層で反射した後、偏光分離手段を構成するコレステリック層1に入射する。コレステリック層1に入射した光は、コレステリック層1の選択反射により一方の回転方向の円偏光(例えば、ここでは左回りの円偏光)成分は反射し、これとは逆回りの円偏光(右回りの円偏光)成分は透過する。コレステリック層1を透過した光は1/4波長板2の作用により円偏光から直線偏光に変換され、偏光板3で吸収されることなく透過して観察者へ向かう。
【0016】
一方、コレステリック層1で反射した光は、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層5裏面の反射電極層で反射して再びコレステリック層1に向うが、反射電極層での反射の際、位相がπずれて回転方向が逆の円偏光(右回りの円偏光)となる。このため今度はコレステリック層1を透過して1/4波長板2の作用により、偏光板3を透過する直線偏光に変換された後、偏光板3を透過して観察者へ向う。つまり、従来、偏光板で吸収され、無駄となっていた光を偏光板で吸収される前にコレステリック層で反射して、再利用することで有機電界発光素子を明るくすることができる。
【0017】
明るい環境下において有機電界発光素子に入射する外光は一般に非偏光であるため、偏光板3を通過する際、少なくともその半分が吸収される。偏光板3を通過した光は1/4波長板2を透過する際、その作用を受け、円偏光(例えば右回りの円偏光)となりコレステリック層1を透過する。コレステリック層1を透過した光は反射電極層で反射する際、回転方向が逆の円偏光(左回りの円偏光)となり、再びコレステリック層1に入射する。コレステリック層1に入射した光のうち、選択反射波長以外の波長の光はそのまま透過して、1/4波長板2の作用を受けて偏光板3で吸収される直線偏光となり、偏光板3で吸収されるため外部には透過しない。
【0018】
一方、偏光板3を通過した外光は1/4波長板2を透過する際、その作用を受け、円偏光(例えば右回りの円偏光)となりコレステリック層1を透過する。コレステリック層1を透過した光は反射電極層で反射する際、回転方向が逆の円偏光(左回りの円偏光)となり、再びコレステリック層1に入射する。選択反射波長に相当する波長の光はコレステリック層1で反射して、再び反射電極層で反射した後、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層5で吸収されるため、外部に出ない。その結果、コレステリック反射波長帯域での外光を低減可能となる。
更に、斜め方向でのマイクロキャビティ構造の有機電界発光層5の反射率の低減される波長域のシフトに応じてコレステリック反射波長域が変化するため、斜め方向のコントラストの悪化も防止できる。
【0019】
<マイクロキャビティ構造の有機電界発光層>
前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層とは、前記発光層の両側に反射電極層と半透過層を備え、かつ反射電極層と半透過層の間で光共振器構造となる光学膜厚に設定された構造を意味する。
前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有することで、従来の反射層と透明電極からなる有機電界発光層を有する有機電界発光素子よりも出射光の波長域を狭くでき、その波長域での出射強度を高める効果を有する。
【0020】
前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層における光吸収波長範囲とは、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層単独での波長毎の反射率を測定した際に、可視光領域で反射率の最も低い波長を中心とし、その中心波長より短波長側で反射率の最も大きくなる可視波長、及びその中心波長より長波長側で反射率の最も大きくなる波長で挟まれた可視波長領域を意味する。
前記可視波長領域とは、380nm〜780nmを意味し、コレステリック等の偏光分離手段を用いた場合の選択波長域として、好ましくは、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層単独での波長毎の反射率を測定した際に、可視光領域で反射率の最も低い波長を含み、かつ反射率が70%以下となる波長域である。より好ましくは、マイクロキャビティ構造単独での波長毎の反射率を測定した際、可視光領域で反射率の最も低い波長を含み、かつ反射率が50%以下となる波長域である。
ただし、前記反射率の上限は、外光のスペクトル、環境、及び視感度に影響を受けるため、使用環境で想定される外光による規定反射の上限輝度を達成できるように適宜調整される。
本発明においては、前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲内に前記偏光分離手段としてのコレステリック層の選択反射波長域が含まれているので、コントラストの向上が達成可能である。
【0021】
単色発光の有機電界発光素子においては、用いるコレステリック層をパターニングする必要はないが、有機電界発光層の上部領域をパターニングすることで、外光反射を更に抑制し、高コントラスト化を達成することができる。
一方、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)等の複数の発光色を有す有機電界発光素子においては、所望のコントラストを達成できれば、コレステリック層をパターニングする必要は特にない。この場合、一般的に視感度の小さく、かつ発光効率の低い青発光に対して最適化したコレステリック層を全面に設けることが好ましい。
更に外光反射を抑制し、コントラストを改善する場合には、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)のそれぞれのマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有する有機電界発光素子に対して、それぞれ最適化したコレステリック層をパターニングして設けることがより好ましい。
なお、複数の発光色に白色(W)が含まれる場合、白色素子上部のコレステリック層の反射波長域を可視光領域に設けてもよいし、可視光領域に反射域を設けず透明とするなど用途に応じて適宜使い分けてもよい。
【0022】
ここで、前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層は、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有し、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、封止層、基板、などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0023】
前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層は、赤(R)、緑(B)及び青(B)のいずれかを含む画素として構成される。
このような画素の構成としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、前記発光層を、赤色、緑色、又は青色に対応する光をそれぞれ発光する発光層とした画素を形成し、これら赤色、緑色、及び青色のいずれかの画素を配する3色発光法など、公知の構成を適用することができる。
【0024】
−陽極−
前記陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが特に好ましい。
前記陽極の厚みは、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜500nmが更に好ましい。
【0025】
前記陽極としては、通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成したものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。
前記基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、0.2mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。
【0026】
前記透明樹脂基板としては、バリアフィルムを用いることもできる。該バリアフィルムとは、プラスチック支持体上にガス不透過性のバリア層を設置したフィルムである。バリアフィルムとしては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953号公報、特開昭58−217344号公報)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743号公報)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361号公報、特開2006−263989号公報)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387号公報、米国特許第6413645号明細書、Affinitoら著 Thin Solid Films 1996年 290-291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許出願公開公報2004−46497号明細書)などが挙げられる。
【0027】
前記陽極の作製には、材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル−ゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。陽極は洗浄その他の処理により、表示装置の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UVによるオゾン処理などが効果的である。
【0028】
−陰極−
前記陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの陰極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。
前記陰極の材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を用いることができ、具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K等)又はそのフッ化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)又はそのフッ化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金又はそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらの中でも、仕事関数が4eV以下の材料が好ましく、アルミニウム、リチウム−アルミニウム合金又はそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金又はそれらの混合金属が特に好ましい。
【0029】
前記陰極の厚みは、特に制限はなく、材料により適宜選択可能であるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜1μmが更に好ましい。
前記陰極の作製には、例えば電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。更に、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、またあらかじめ調整した合金を蒸着させてもよい。
前記陽極及び陰極のシート抵抗は、低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0030】
−発光層−
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、電界印加時に陽極又は正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に、陰極又は電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものなどを用いることができる。
【0031】
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体;ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
前記発光層の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、LB法などの方法が挙げられる。これらの中でも、抵抗加熱蒸着、コーティング法が特に好ましい。
【0032】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層及び正孔輸送層の材料としては、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の材料としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、LB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができる。
前記樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)樹脂、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0034】
−電子注入層、電子輸送層−
前記電子注入層及び電子輸送層の材料としては、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電子注入層及び電子輸送層の材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記電子注入層及び電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層及び電子輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解乃至分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができ、前記樹脂成分としては、例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
前記電子注入層又は電子輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0036】
−封止層−
前記封止層としては、大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等の透過を防ぐという機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記封止層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiN、SiON、などが挙げられる。
前記封止層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、7nm〜750nmがより好ましく、10nm〜500nmが特に好ましい。前記封止層の厚みが、5nm未満であると、大気中の酸素及び水分の透過を防ぐバリア機能が不充分であることがあり、1,000nmを超えると、光線透過率が低下し、透明性を損なうことがある。
前記封止層の光学的性質は、光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
前記封止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD法、真空蒸着法、などが挙げられる。
【0037】
−基板−
前記基板としては、その形状、構造、大きさ等を適宜選択すればよく、一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。前記基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0038】
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂等の有機材料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記基板としてガラスを用いる場合には、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したもの(例えば、バリアフィルム基板)を使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0040】
前記熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0041】
<偏光分離手段>
前記偏光分離手段は、前記有機電界発光層の発光層から出射する光に対応した所定の波長範囲の光を反射と透過により2種類の円偏光成分に分離する手段、即ち、円偏光選択反射性を有する手段である。
前記偏光分離手段としては、コレステリック層を用いることが好ましい。
前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の半透過層上にコレステリック層を形成する方法としては、別途形成したコレステリック層を前記有機電界発光層の半透過層表面上に転写する方法、コレステリック層形成用塗布液を前記マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の半透過層表面上に塗布して形成する方法の、いずれの方法も用いることができる。また、接着剤層や空気層を介してコレステリック層の付いた基板を張り合わせてもよい。
【0042】
本発明においては、円偏光選択反射を示すコレステリック層は有機電界発光素子の各ピクセルの発光色の波長に対応して選択反射中心波長を持つように調整及び配置して形成する必要がある。この円偏光選択反射を示す液晶相としては、螺旋構造を有するコレステリック液晶相やキラルスメクチック液晶相を挙げることができる。このコレステリック液晶相やキラルスメクチック液晶相を示す液晶物質は非キラルな液晶性化合物とキラル化合物の混合によって形成することができる。また、別の方法としてこれらの化合物を共重合することによって高分子液晶とすることで得ることも可能である。
【0043】
選択反射帯の中心波長λは、コレステリック相やキラルスメクチック相における螺旋構造のピッチ長P(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。それ故この螺旋構造のピッチ長を調節することによって、選択反射特性を示す波長を調製できる。ピッチ長は液晶組成物のキラル化合物の種類やその添加濃度に依存するため、これらを調製することによって所望のピッチ長を得ることができる。また、選択反射帯の半値幅は、Δλが液晶化合物の複屈折Δnと上記ピッチ長Pに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。それ故、選択反射帯の幅の制御は、Δnを調整して行うことができる。Δnの調整は液晶の種類や、配向固定時の温度を制御で行うことができる。
【0044】
以下に、前記コレステリック層を構成する材料及びコレステリック層の形成方法について説明する。
前記コレステリック層は、液晶性化合物及びキラル化合物のほか、必要に応じて添加されるその他の配合剤(重合開始剤、架橋剤、界面活性剤)、その他の任意成分を含むコレステリック液晶性組成物を固定することによって得られる。
【0045】
−液晶性化合物−
前記液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物、及び高分子液晶性化合物が好ましく、配向時間が短いことや配向の均一性が高いことから低分子液晶化合物がより好ましい。
前記液晶性化合物は重合性基を有することが好ましく、ネマティック相もしくはキラルスメクチック相を示すことがより好ましい。更に、分子形状は円盤状もしくは棒状であることが好ましく、生産性の観点からは棒状であることがより好ましく、選択反射の幅の角度依存性低減が重要である場合には円盤状であることがより好ましい。重合性基のない棒状ネマチック液晶性化合物については、様々な文献(例えば、Y.Goto et.al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst.1995,Vol.260,pp.23−28)に記載がある。
【0046】
前記重合性基は、特に制限はなく、公知の方法でネマチック液晶性化合物に導入できる。前記重合性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、アクリル基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合性基を有する円盤状化合物については、特開平8−27284号公報、特開2001−100028号公報、特開2006−76992号公報に記載の化合物を好適に用いることができる。2種類以上の重合性ネマチック液晶性化合物を併用すると、塗布配向時の結晶の析出を抑制したり、配向温度を低下させることができる。
【0047】
−コレステリック液晶性組成物及びキラル化合物−
例えば重合性ネマチック液晶性化合物と、キラル化合物(光学活性化合物)とを混合することによりコレステリック液晶性組成物が得られる。
前記キラル化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)やイソソルビド、イソマンニド誘導体を用いることができる。
前記キラル化合物(光学活性化合物)は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物もキラル化合物として用いることができる。
前記軸性不斉化合物又は面性不斉化合物としては、例えばビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン又はこれらの誘導体などが挙げられる。
前記キラル化合物は、重合性基を有していてもよい。該キラル化合物が重合性基を有する場合は、重合性ネマチック液晶性化合物の重合反応により、ネマチック液晶性繰り返し単位と光学活性構造とを有するポリマーを形成することができる。光学活性化合物の重合性基は、重合性ネマチック液晶性化合物の重合性基と同様の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基、又はアジリジニル基等であることが好ましく、不飽和重合性基であることがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが更に好ましい。
【0048】
前記キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布し、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、1プロセスで画素の発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。前記光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位や、アゾ、アゾキシ、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002−80478号公報、特開2002−80851号公報、特開2002−179668号公報、特開2002−179669号公報、特開2002−179670号公報、特開2002−179681号公報、特開2002−179682号公報、特開2002−338575号公報、特開2002−338668号公報、特開2003−313189号公報、特開2003−313292号公報に記載の化合物を用いることができる。
前記光学活性化合物の含有量は、重合性ネマチック液晶性化合物量の0.01モル%〜200モル%であることが好ましく、1モル%〜30モル%であることがより好ましい。
【0049】
−重合開始剤−
前記コレステリック液晶性組成物には、重合反応のための重合開始剤を添加することが好ましい。前記重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。これらの中でも、光重合開始剤を用いる光重合反応が特に好ましい。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばα−カルボニル化合物、アシロインエーテル、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ、オキサジアゾール化合物、ハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アントラキノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、オキシム誘導体、などが挙げられる。
前記光重合開始剤の含有量は、前記コレステリック液晶性組成物の固形分の0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0050】
−架橋剤−
重合の際には、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有することができる。前記架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、前記架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記架橋剤の含有量は、3質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%であることがより好ましい。前記架橋剤の含有量が、3質量%未満であると、架橋密度向上の効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、コレステリック層の安定性を低下させてしまうことがある。
【0051】
−界面活性剤−
前記重合開始剤及び液晶化合物を含有するコレステリック液晶性組成物を基材フィルム上に塗布して得られる塗膜の表面張力を調整し、膜厚を均一にするため、界面活性剤を使用することができる。
前記界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。
前記界面活性剤としては、例えば疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。
前記界面活性剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えばOMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。また、特開2002−341126号公報の段落〔0087〕に記載のフッ化化合物、特開2005−99248号公報の段落〔0064〕〜〔0080〕及び段落〔0092〕〜〔0096〕に記載のフッ化化合物を好適に用いることができる。
前記界面活性剤の含有量は、コレステリック層中0.01質量%〜1質量%であることが好ましい。前記界面活性剤の含有量が、0.01質量%未満であると、空気界面における表面張力が十分低下しないため、配向欠陥が生じることがあり、1質量%を超えると、過剰の界面活性剤が空気界面側で不均一構造を形成し、配向均一性を低下させることがある。
【0052】
−コレステリック層(コレステリック配向性光学薄膜)の製造方法−
前記コレステリック層の製造方法は、前記重合性液晶化合物及び前記重合開始剤、更に必要に応じて添加される前記キラル剤、前記界面活性剤等を溶媒に溶解させたコレステリック液晶性組成物を、基材上の水平配向膜上に塗布し、乾燥させて塗膜を得、この塗膜に活性光線を照射してコレステリック液晶性組成物を重合し、コレステリック規則性が固定化されたコレステリック層を形成する。
この活性光線照射時にフォトマスクを介して照射し、その後溶剤を用いて基材上の塗膜を洗浄することによって未硬化部分を洗い流すことで、所望の位置にのみコレステリック層を固定することができる。この操作を赤色、緑色、及び青色の画素ごとに繰り返して行うことによって、各画素の発光波長に対応した選択反射波長を有するコレステリック層を形成することができる。
【0053】
−溶媒−
前記コレステリック液晶性組成物の調製に使用する溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。
【0054】
−水平配向膜−
前記水平配向膜は、有機化合物やポリマー(ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、変性ポリアミドなどの樹脂)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。これらの中でも、ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。前記ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施することができる。
【0055】
−塗布−
配向膜上へのコレステリック液晶性組成物の塗布は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法などが挙げられる。また、別途支持体上に塗設したコレステリック液晶性組成物を配向膜上へ転写することによっても実施できる。塗布したコレステリック液晶性組成物を加熱することにより、液晶性組成物を配向させる。加熱温度は、200℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。この配向処理により、重合性棒状ネマチック液晶性化合物が、光学薄膜の面に対して実質的に垂直な方向に螺旋軸を有するようにねじれ配向している光学薄膜が得られる。
【0056】
−固定−
配向させた重合性棒状ネマチック液晶性化合物は、更に重合させる。前記重合は、熱重合よりも光照射による光重合の方が好ましい。前記光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、100mJ/cm〜1,500mJ/cmであることがより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下や窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射紫外線波長は350nm〜430nmが好ましい。重合反応率は安定性の観点から、高いほうが好ましく70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
前記重合反応率は、重合性の官能基の消費割合をIR吸収スペクトルを用いて、決定することができる。
前記コレステリック層(コレステリック配向性光学薄膜)の厚さは、0.1μm〜50μmであることが好ましく、0.5μm〜10μmであることがより好ましく、1.5μm〜7μmであることが更に好ましい。
【0057】
−パターニング方法−
表示装置の各画素の発光波長に対応して、選択反射波長を調整したコレステリック層をパターニングすることで、光取り出し効率をより高めることができる。
前記パターニング方法としては、前記溶剤現像による方法や前記光異性化キラル剤を用いる方法(特開2001−159706号公報)、予め配向固定し、コレステリック層をレーザーやサーマルヘッドを用いて転写する方法(特開2001−4822号公報、特開2001−4824公報)、インクジェット法(特開2001−159709号公報)、コレステリックの螺旋ピッチの温度依存性を利用する方法(特開2001−159708号公報)、などが挙げられる。これらの方法を用いて、表示装置基板上に直接塗布形成してもよいし、別途支持体上にパターニングしたコレステリック層を形成した後に、これを表示装置に転写して形成してもよい。
【0058】
−配向制御、散乱性制御−
コレステリック層を設ける位置によっては、コレステリック層に光拡散性を持たせることによって、表示装置の視野角を拡大させたり、光取り出し効率を向上することができる。
前記コレステリック層に光拡散性を持たせる方法としては、例えば配向熟成温度を下げたり、配向熟成時間を短縮したり、表面張力剤の濃度を低下させたり、ラビングしない配向膜の使用、配向膜を用いない方法などが挙げられる。
【0059】
<円偏光板>
前記円偏光板は、位相差板と偏光板とからなり、具体的には、直線偏光板と1/4波長板とからなる。
前記偏光板はこれを通過する光のうち特定の直線偏光は透過し、これと直交する直線偏光は吸収するものである。前記偏光板としては、例えばポリビニルアルコールにヨウ素を吸収させて延伸させ、偏光機能を付与した膜の両面にトリアセチルセルロースの保護層を施したもの、あるいは、ポリビニルアルコールにAg等の金属ナノロッドを添加し、延伸させたものなどを用いることができる。
【0060】
前記1/4波長板は、透明な一軸延伸した高分子フィルム、例えばポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリアリレート等を用いることができる。尚、一般に1/4波長板を構成する透明体には屈折率の波長依存性(波長分散)があるため、太陽光や照明光などの外光のように波長範囲が広い光に対しては、一種類の位相差板では十分な性能が得られない。このため、波長分散の異なる2種類の位相差フィルムを、その光学軸をずらして張り合わせ、広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板を構成するようにしてもよい。
【0061】
前記円偏光板の前記偏光分離手段としてのコレステリック層表面上に形成する方法としては、別途形成した円偏光板の1/4波長板が接するように前記コレステリック層表面上に貼り付ける方法、円偏光板上の1/4波長板側に前記コレステリック層を形成し、有機電界発光素子に張り合わせる方法の、いずれの方法も用いることができる。
【0062】
−直線偏光板−
前記直線偏光板は、少なくとも偏光層を有してなり、基材、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0063】
−−偏光層−−
前記偏光層は、少なくとも偏光子を含有し、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記偏光子としては、例えばヨウ素、2色性色素、異方性金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、金属錯体、などが挙げられる。
【0064】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、セルロースブチレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンアジパミド、ポリ酢酸ビニル、又はこれらの共重合体(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記偏光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm〜300μmが好ましい。
【0066】
−−基材−−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、例えば単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
【0067】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれであっても好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコンなどが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂;ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
【0069】
前記偏光板は、基材上に、偏光子及びバインダー樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥させてなる塗布膜を一定方向に延伸することにより製造することができる。
【0070】
<1/4波長板>
前記1/4波長板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、延伸されたポリカーボネートフィルム、延伸されたノルボルネン系ポリマーフィルム、炭酸ストロンチウムのような複屈折を有する無機粒子を含有して配向させた透明フィルム、支持体上に無機誘電体を斜め蒸着した薄膜などが挙げられる。
【0071】
前記1/4波長板としては、例えば、(1)特開平5−27118号公報、及び特開平5−27119号公報に記載された、レターデーションが大きい複屈折性フィルムと、レターデーションが小さい複屈折性フィルムとを、それらの光軸が直交するように積層させた位相差板、(2)特開平10−68816号公報に記載された、特定波長において1/4波長となっているポリマーフィルムと、それと同一材料からなり同じ波長において1/2波長となっているポリマーフィルムとを積層させて、広い波長領域で1/4波長が得られる位相差板、(2)特開平10−90521号公報に記載された、二枚のポリマーフィルムを積層することにより広い波長領域で1/4波長を達成できる位相差板、(3)国際公開第00/26705号パンフレットに記載された変性ポリカーボネートフィルムを用いた広い波長領域で1/4波長を達成できる位相差板、(4)国際公開第00/65384号パンフレットに記載されたセルロースアセテートフィルムを用いた広い波長領域で1/4波長を達成できる位相差板、などが挙げられる。
このような1/4波長板としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば商品名:ピュアエース WR(帝人株式会社製)などが挙げられる。
【0072】
本発明で用いられる円偏光板は、前記直線偏光板と前記1/4波長板とからなり、直線偏光板の偏光吸収軸に対し該1/4波長板の光軸が45度となるように貼り合せてなる。該貼り合せ方法としては、例えば粘着フィルムを用いてロール同士のラミネーションを行う方法、などが挙げられる。
【0073】
ここで、図7は、本発明の有機電界発光素子の一例であるボトムエミッション型の有機電界発光素子を示す概略断面図である。図8は、本発明の有機電界発光素子の一例であるトップエミッション型の有機電界発光素子を示す概略断面図である。
【0074】
図7のボトムエミッション型の有機電界発光素子100は、ガラス基板11上に、有機EL層101〔反射電極層(陽極)12、ホール注入層13、ホール輸送層14、発光層15、電子輸送層16、電子注入層17、半透過層(陰極)18〕を有し、該有機EL層101のガラス基板11上に、偏光分離手段としてのコレステリック層20と、1/4波長板21と直線偏光板22からなる円偏光板30とを有している。
図8のトップエミッション型の有機電界発光素子200は、ガラス基板11上に、有機EL層101〔反射電極層(陽極)12、ホール注入層13、ホール輸送層14、発光層15、電子輸送層16、電子注入層17、半透過層(陰極)18〕を有し、該有機EL層101の半透過奏18上に、偏光分離手段としてのコレステリック層20と、1/4波長板21と直線偏光板22からなる円偏光板30を有している。
なお、「光出射方向」は、発光層からの光が、光取り出し面から有機電界発光素子の外部に出射される方向を示す。図7に示すボトムエミッション型の有機電界発光素子100の場合、矢印で示した通り、発光層15からみて図面に平行に下方に向かう方向を示す。図8に示すトップエミッション型の有機電界発光素子200の場合、矢印で示した通り、発光層15からみて図面に平行に上方に向かう方向を示す。
【0075】
本発明の有機電界発光素子は、コレステリック反射波長帯域での外光を低減可能となる上に、斜め方向でのマイクロキャビティ構造の反射率の低減される波長域のシフトに応じてコレステリック反射波長域が変化するため、斜め方向のコントラストの悪化も防止できるので、各種分野に用いることができるが、以下に説明する本発明の表示装置として特に好適である。
【0076】
(表示装置)
本発明の表示装置は、マトリクス状に配置された複数の有機電界発光素子と、該有機電界発光素子の発光動作を画像情報に基づいて制御する制御手段とを少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記複数の有機電界発光素子としては、いずれも本発明の前記有機電界発光素子である。
【0077】
この場合、前記複数の有機電界発光素子が、それぞれ、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有する複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、コレステリック層と、1/4波長板及び偏光板を有する円偏光板とを有し、
複数の有機電界発光素子が、それぞれ、少なくとも反射電極層、発光層、及び半透過層を有する複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層と、コレステリック層と、1/4波長板及び偏光板を有する円偏光板とを有し、
複数のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層が、赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を有し、
前記コレステリック層が、前記複数の発光層側から前記偏光分離手段側へ向かう光のうち、特定の光を反射すると共に他の光を透過し、
前記特定の光が、前記赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、前記緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び前記青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層のいずれかの光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記1/4波長板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光であり、
前記反射電極層が、該反射電極層に垂直入射する円偏光を回転方向が逆の円偏光として反射する反射面を有することが好ましい。
【0078】
また、前記特定の光が、前記赤色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、前記緑色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層、及び前記青色発光のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層のそれぞれの光吸収波長範囲よりも狭い波長範囲の光であり、かつ前記1/4波長板により直線偏光に変換された場合に、前記偏光板で吸収される円偏光成分を持つ光となるようにコレステリック層がパターニングされていることが、RGBの輝度向上の点で好ましい。
【0079】
更に、特定の光を反射する偏光分離手段を有する層の面上のマイクロキャビティ構造の有機電界発光層を覆う範囲のみ、特定の光の波長域が、マイクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲よりも狭いことが、コントラスト向上の点でより好ましい。
【0080】
<制御手段>
前記制御手段としては、複数の有機電界発光素子の発光動作を画像情報に基づいて制御する手段であり、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0081】
本発明の表示装置は、フルカラーで表示し得る装置として構成される。本発明の有機EL装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
【0082】
また、前記方法により得られる異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色の発光素子、緑色の発光素子、及び赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0083】
本発明の表示装置は、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
(製造例1)
<コレステリック層1(非パターニング)の作製>
ガラス基板上にポリイミド配向膜(LX−1400、日立化成デュポン株式会社製)塗布液をスピンコーターにより塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させた後、250℃のオーブンで1時間加熱焼成して膜を形成した。この膜の表面をラビング処理により配向処理して配向膜付きガラス基板を作製した。
得られた配向膜付きガラス基板の該配向膜上に、下記処方にて調製したコレステリック層用塗布液1(固形分濃度40質量%)をスピンコーターにより塗布した。これを、90℃のオーブンで2分間乾燥して、コレステリック層を形成した。
【0086】
−コレステリック層用塗布液1−
・下記構造式で表される化合物A・・・100質量部
【化1】
・下記構造式で表される化合物B・・・5.4質量部
【化2】
・下記構造式で表される化合物C・・・0.03質量部
【化3】
・下記構造式で表される化合物D・・・3質量部
【化4】
・メチルエチルケトン・・・適量
【0087】
次に、前記ガラス基板を25℃で30秒間保持した。窒素雰囲気下、25℃で超高圧水銀灯により、100mW/cmの照射強度で10秒間全面照射した。以上により、コレステリック層1を作製した。
得られたコレステリック層1の厚みを共焦点顕微鏡(キーエンス社製、FV−7510)で測定したところ、5.1μmであった。マスク露光を全く行わなかった部分は青色の選択反射を示し、マスク露光を3秒間行った部分は緑色の選択反射を示し、マスク露光を8秒間行った部分は赤色の選択反射を示し、右捩れ、選択反射中心波長は540nm、選択反射波長領域の半値幅は57nmであった。
【0088】
(製造例2)
<コレステリック層2(パターニングあり)の作製>
ガラス基板上にポリイミド配向膜(LX−1400、日立化成デュポン株式会社製)塗布液をスピンコーターにより塗布し、100℃のオーブンで5分間乾燥させた後、250℃のオーブンで1時間加熱焼成して膜を形成した。この膜の表面をラビング処理によって配向処理して配向膜付きガラス基板を作製した。
得られた配向膜付きガラス基板について、配向膜上に、下記処方にて調製したコレステリック層用塗布液2(固形分濃度40質量%)をスピンコーターにより塗布した。これを、90℃のオーブンで3分間乾燥して、コレステリック層を形成した。
【0089】
<コレステリック層用塗布液2>
・下記構造式で表される化合物A・・・50質量部
【化5】
・下記構造式で表される化合物E・・・50質量部
【化6】
・下記構造式で表される化合物F・・・7.8質量部
【化7】
・下記構造式で表される化合物C・・・0.04質量部
【化8】
・下記構造式で表される化合物D・・・3質量部
【化9】
・メチルエチルケトン・・・適量
【0090】
次に、前記ガラス基板を80℃で30秒間保持した。この温度でコレステリック層に、開口部がストライプ状であり、線幅80μmで開口部のピッチが270μmのフォトマスクと、405nmに透過の中心波長を有する干渉フィルタとを介して超高圧水銀灯により、15mW/cmの照射強度で3秒間照射した。
次に、このフォトマスクを90μm線幅方向にステップ移動させて同様な干渉フィルタと光源とを用いて、8秒間照射した。
次に、フォトマスクを取り除き、窒素雰囲気下、室温で超高圧水銀灯により、100mW/cmの照射強度で10秒間全面照射した。以上により、コレステリック層2を作製した。
得られたコレステリック層2の厚みを、共焦点顕微鏡(キーエンス社製、FV−7510)で測定したところ、3.4μmであった。
マスク露光を全く行わなかった部分は青色の選択反射を示し、マスク露光を3秒間行った部分は緑色の選択反射を示し、マスク露光を8秒間行った部分は赤色の選択反射を示し、選択反射波長は、青部470nm、緑部530nm、赤部630nm、選択反射波長領域の半値幅は青部58nm、緑部62nm、赤部69nmであり、表示装置用選択反射膜として良好なものであることが確認できた。
【0091】
(製造例3)
−円偏光板の作製−
1/4波長板としてピュアエース WR(帝人株式会社製)と、偏光板としてヨウ素・PVA系の偏光板(サンリッツ社製)とを用い、前記偏光板の偏光吸収軸に対し、前記1/4波長板の光軸が45度となるように粘着シート(パナック株式会社製、PD−S1)を介して貼り合わせ、円偏光板を作製した。
【0092】
(実施例1)
−有機電界発光層の作製−
ガラス基板として、厚みが0.2mm、屈折率が約1.5のSBSL−7(オハラ社製)を用いた。
次に、ガラス基板上に、陽極として銀(Ag)の半透過層を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、アルミニウム膜上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnOを7:3(質量比)の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQ(2,3,5,6−tetrafluoro−7,7,8,8tetracyanoquinodimethane)を1.0質量%ドープして141nmの厚さとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第2のホール輸送層上に、第3のホール輸送層として下記構造式で表されるホール輸送材料Aを、厚みが3nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【化10】
次に、第3のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてCBP(4,4’−ジカルバゾール−ビフェニル)と、発光材料として下記構造式で表される発光材料Aを、85:15(質量比)の割合で、厚みが20nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【化11】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlq(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)−4−phenylphenolate)を、厚みが39nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCP(2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthrolin)を、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1の電子注入層の上に、陰極としてアルミニウム(Al)を、厚みが100nmとなるように、真空蒸着により形成した。
【0093】
正面方向を基準としてマイクロキャビティ構造の取り出す波長の中心を530nmとなるように、それぞれの層厚を設計した。
作製した実施例1のマクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲は、470nm〜630nmであった。
【0094】
−有機電界発光素子の作製−
次に、得られた有機電界発光層のガラス基板(半透過層側)上に、製造例1で作製したコレステリック層1を有するガラス基板を屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した。
次に、コレステリック層1上に、製造例3の円偏光板をその1/4波長板側がコレステリック層側となるように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した。以上により、実施例1の有機電界発光素子を作製した。
【0095】
(実施例2)
ガラス基板として、厚みが0.2mm、屈折率が約1.5のSBSL−7(オハラ社製)を用いた。
ガラス基板上にマスク蒸着法を用いて、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の各色の画素をパターニング形成した。それぞれの処方について以下に示す。
【0096】
―緑発光素子―
実施例1に記載のものと同様である。
【0097】
―赤発光素子―
陽極として銀(Ag)の半透過膜を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、アルミニウム膜上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnOを7:3(質量比)の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQを1.0質量%ドープして196nmの厚さとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第2のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてBAlqと、発光材料として下記構造式で表される発光材料Xを、95:5(質量比)の割合で、厚みが30nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【化12】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlqを、厚みが48nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCPを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1の電子注入層の上に、陰極としてアルミニウム(Al)を、厚みが100nmとなるように、真空蒸着により形成した。
正面方向を基準としてマイクロキャビティ構造の取り出す波長の中心を630nmとなるように、それぞれの層厚を設計した。
マクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲は、530nm〜740nmであった。
【0098】
―青発光素子―
陽極として銀(Ag)を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、アルミニウム膜上に、ホール注入層として2−TNATA〔4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕とMnOを7:3(質量比)の割合で、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、ホール注入層上に、第1のホール輸送層として2−TNATAにF4−TCNQを1.0質量%ドープして110nmの厚さとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1のホール輸送層上に、第2のホール輸送層としてα−NPD〔N,N’−(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、厚みが10nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第2のホール輸送層上に、第3のホール輸送層として下記構造式で表されるホール輸送材料Aを、厚みが3nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第3のホール輸送層上に、発光層を、ホスト材料としてmCP(1,3−ビス(カルバゾーリル)ベンゼン)と、発光材料として下記構造式で表される発光材料Yを、85:15(質量比)の割合で、厚みが30nmとなるように、真空共蒸着により形成した。
【化13】
次に、発光層上に、第1の電子輸送層としてBAlqを、厚みが29nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1の電子輸送層上に、第2の電子輸送層としてBCPを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第2の電子輸送層上に、第1の電子注入層としてLiFを、厚みが1nmとなるように、真空蒸着により形成した。
次に、第1の電子注入層の上に、陰極としてアルミニウム(Al)を、厚みが100nmとなるように、真空蒸着により形成した。
正面方向を基準としてマイクロキャビティ構造の取り出す波長の中心を470nmとなるように、それぞれの層厚を設計した。
このマクロキャビティ構造の有機電界発光層の光吸収波長範囲は、430nm〜520nmであった。
【0099】
−有機電界発光素子の作製−
次に、得られた有機電界発光層のガラス基板(半透過層側)上に、製造例2で作製したコレステリック層を有するガラス基板を、各画素と各コレステリック層が対応するように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した。
次に、コレステリック層1上に、製造例3の円偏光板をその1/4波長板側がコレステリック層側となるように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した。以上により、実施例2の有機電界発光素子を作製した。
【0100】
(比較例1)
実施例1において、陽極として銀(Ag)の半透過層を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した代わりに、厚み100nmのITO膜を真空蒸着で作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機電界発光素子を作製した。
【0101】
(比較例2)
比較例1において、有機電界発光層のガラス基板(透明電極層側)上に、製造例3の円偏光板をその1/4波長板側が有機電界発光層側となるように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の有機電界発光素子を作製した。
【0102】
(比較例3)
実施例1において、製造例1のコレステリック層1と、製造例3の円偏光板とを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例3の有機電界発光素子を作製した。
【0103】
(比較例4)
実施例1において、製造例1のコレステリック層1を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例4の有機電界発光素子を作製した。
【0104】
(比較例5)
比較例1において、有機電界発光層のガラス基板(透明電極層側)上に、製造例1のコレステリック層1を有するガラス基板を屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用い接着し、該コレステリック層1上に、製造例3の円偏光板をその1/4波長板側がコレステリック層側となるように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した以外は、比較例1と同様にして、比較例5の有機電界発光素子を作製した。
【0105】
(比較例6)
実施例1の有機電界発光層のガラス基板(半透過層側)上に、以下のようにして作製したカラーフィルタを形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例6の有機電界発光素子を作製した。
−カラーフィルタの作製−
特許第3555759号公報に準じて、緑(G)のカラーフィルタを最適にしてガラス基板上に作製した。
【0106】
(比較例7)
実施例2において、陽極として銀(Ag)の半透過層を、厚みが20nmとなるように、真空蒸着により形成した代わりに、厚み100nmのITO膜を真空蒸着で作製した以外は、実施例2と同様にして、比較例7の有機電界発光素子を作製した。
【0107】
(比較例8)
比較例7において、有機電界発光層のガラス基板(透明電極層側)上に、製造例3の円偏光板をその1/4波長板側が有機電界発光層側となるように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した以外は、比較例7と同様にして、比較例8の有機電界発光素子を作製した。
【0108】
(比較例9)
実施例2において、製造例2のコレステリック層2と、製造例3の円偏光板とを形成しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例9の有機電界発光素子を作製した。
【0109】
(比較例10)
実施例2において、製造例2のコレステリック層2を形成しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例10の有機電界発光素子を作製した。
【0110】
(比較例11)
比較例7において、有機電界発光層のガラス基板(透明電極層側)上に、製造例2のコレステリック層2を有するガラス基板を屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用い接着し、該コレステリック層1上に、製造例3の円偏光板をその1/4波長板側がコレステリック層側となるように、屈折率1.5のイマージョンオイル(モリテックス社製、TYPE B)を用いて接着した以外は、比較例7と同様にして、比較例11の有機電界発光素子を作製した。
【0111】
(比較例12)
実施例2の有機電界発光層のガラス基板(半透過層)上に、以下のようにして作製したカラーフィルタを形成した以外は、実施例2と同様にして、比較例12の有機電界発光素子を作製した。
−カラーフィルタの作製−
特許第3555759号公報に準じて、赤(R)、緑(G)、及び青(B)のカラーフィルタを最適にしてガラス基板上に作製した。
【0112】
次に、実施例1、比較例2、比較例4、及び比較例5について、以下のようにして、発光輝度を測定した。結果を図5に示す。
【0113】
<発光輝度>
発光輝度は、0.025A/cmで有機電界発光素子を発光させ、分光放射輝度計(SR−3、トプコン社製)で測定し、実施例1及び比較例2〜6については比較例1の輝度を1に規格化し評価した。結果を表1に示す。
また、実施例2及び比較例8〜12に関しては各画素を0.025A/cmで発光させ、分光放射輝度計(SR−3、トプコン社製)で測定した輝度を比較例7の値で規格化した。結果を表2に示す。
【0114】
表1の結果から、実施例1は、比較例2、比較例4、及び比較例5に比べて発光輝度の上昇が認められた。なお、表1では、有機電界発光層、コレステリックフィルタ層、及び円偏光板をそれぞれ、空気層を介して重ねたときの測定結果を記載しているが、それぞれの層を光学接着させても同様の結果が得られる。
表2の結果から、実施例2は、比較例8、比較例10、及び比較例11に比べて発光輝度の上昇が認められた。
なお、図1では、有機電界発光層、コレステリックフィルタ層、及び円偏光板をそれぞれ、空気層を介して重ねたときの測定結果を記載しているが、それぞれの層を光学接着させても同様の結果が得られる。
【0115】
次に、実施例1、比較例3、比較例4、及び比較例5について、以下のようにして、明室コントラストを測定した。結果を図6示す。
【0116】
<明室コントラストの測定>
鉛直照度1,000luxの照明環境下でのアルミニウム(Al)ミラーを地面に対し垂直に置き、ミラーの垂直から5°ずらした方向の輝度を波長毎に測定した(輝度計自体の映り込みを防ぐため)。この強度を基準とし、それぞれの有機電界発光素子の非発光時の外光による輝度を測定し、波長ごとに基準となるアルミニウム(Al)ミラーの値に対する割合を算出した。
【0117】
図6の結果から、実施例1は、比較例3、及び比較例5に比べて明室コントラストが向上していることが分かった。
【0118】
次に、各有機電界発光素子について、以下のようにして、外光反射、及び斜め外光による反射強度を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0119】
<外光反射>
非発光時鉛直照度1,000luxの環境下で、輝度計(SR−3、トプコン社製)により外光反射の測定を行い、実施例1及び比較例2〜6については、比較例1の輝度を1に規格化して評価した。
また、実施例2及び比較例8〜12については、分光放射輝度計(SR−3、トプコン社製)で測定した輝度を比較例7の輝度を1に規格化して評価した。
なお、外光反射の測定の概略を図9に示す。
【0120】
<斜め外光による反射強度>
暗室下、キセノンランプ(ウシオ電機株式開社製、SX−1501)を用い、スリット等の光学系を通した平行白色光を、測定サンプルに対し、一定角度で入射させ、その反射光を、光ファイバーを通し、分光器(オーシャンオプティクス社製、QE65000)で検出したのち視感度から輝度に変換し、下記基準で評価を行った。
〔評価基準〕
○: 表1において比較例2,4と同等あるいはそれ以下の輝度である。また表2において比較例8,10と同等あるいはそれ以下の輝度である。
△: 表1において比較例2,4以上かつ比較例3以下の輝度である。また表2において比較例8,10以上かつ比較例9以下の輝度である。
×: 表1において比較例3と同等あるいはそれ以上の輝度である。また表2において比較例9と同等あるいはそれ以上の輝度である。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の有機電界発光素子は、例えば表示素子、ディスプレイ、バックライト、各種証明などに好適に用いられる。
本発明の表示装置は、例えば、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 コレステリック層
2 1/4波長板
3 直線偏光板
4 円偏光板
5 マイクロキャビティ構造の有機電界発光層
11 ガラス基板
12 陽極
13 ホール注入層
14 ホール輸送層
15 発光層
16 電子輸送層
17 電子注入層
18 陰極
20 コレステリック層
21 1/4波長板
22 偏光板
30 円偏光板
100 有機電界発光素子
101 有機EL層
200 有機電界発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9