特許第6227724号(P6227724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227724超音波システムのビーム形成方法及び超音波撮像システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227724
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】超音波システムのビーム形成方法及び超音波撮像システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   A61B8/14ZDM
【請求項の数】31
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2016-139832(P2016-139832)
(22)【出願日】2016年7月14日
(62)【分割の表示】特願2012-538082(P2012-538082)の分割
【原出願日】2010年11月9日
(65)【公開番号】特開2016-179313(P2016-179313A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】61/259,938
(32)【優先日】2009年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/259,346
(32)【優先日】2009年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505284921
【氏名又は名称】フジフィルム・ソノサイト・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FUJIFILM SONOSITE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワング,ジュイン,ジェット
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−142334(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0141957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
G01N 29/00 −29/52
G01S 1/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム信号を、メインローブ成分とサイドローブ成分に区分化すること、
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の少なくとも一方を独立に処理する
こと、および、
少なくとも一方が独立に処理された前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分
を再結合することを含むビーム形成方法。
【請求項2】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の少なくとも一方を独立に処理する
ことは、
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の前記少なくとも一方を、前記メイ
ンローブ成分および前記サイドローブ成分の他方と異なるように重み付けすることを含む
請求項1に記載のビーム形成方法。
【請求項3】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の前記少なくとも一方を異なるよう
に重み付けすることは、
前記再結合する場合に、前記メインローブ成分の重み付けより小さい重み付けを有する
ように、前記サイドローブ成分を重み付けすることを含む請求項2に記載のビーム形成
方法。
【請求項4】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分を再結合することは、
非ヌルサイドローブ成分を前記メインローブ成分と結合することを含む請求項1に記載
のビーム形成方法。
【請求項5】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分を再結合することは、所望の形
よび幾何学的特性を有するビームを合成することを提供する請求項1に記載のビーム形
成方法。
【請求項6】
前記合成されたビームの前記所望の形状および幾何学的特性は、画像品質の向上のため
に、前記区分化されたビームより先鋭なメインローブおよびメインローブ分解能とサイド
ローブレベルとの間の均衡を提供するように適合されたサイドローブを含む請求項5に記
載のビーム形成方法。
【請求項7】
複数のサイクルにわたって、前記区分化すること、前記独立に処理すること、および、
前記再結合することを繰返すことにより、前記再結合されたメインローブ成分およびサイ
ドローブ成分からの信号を使用して生成される画像の詳細分解能およびコントラスト分解
能を最適化することをさらに含む請求項1に記載のビーム形成方法。
【請求項8】
前記複数のサイクルは、複数の被走査エリアを含む請求項7に記載のビーム形成方法。
【請求項9】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分に区分化される前記ビーム信号は、
合成ビーム技法によって提供される請求項1に記載のビーム形成方法。
【請求項10】
前記合成ビーム技法は、
第1のメインローブおよび1つまたは複数のサイドローブを有する第1のサンプルビー
ムを使用して第1の信号を取得すること、
第2のメインローブおよび1つまたは複数のサイドローブを有する第2のサンプルビー
ムを使用して第2の信号を取得することであって、その際、前記第1のメインローブの形
状は前記第2のメインローブの形状と実質的に異なっていること、および、
前記第1の信号と前記第2の信号と重み付けファクタとを使用して第3の信号を提供す
るビームを合成することを含む請求項9に記載のビーム形成方法。
【請求項11】
前記第1のサンプルビームは非アポダイズドビームであり、前記第2のサンプルビーム
はアポダイズドビームである請求項10に記載のビーム形成方法。
【請求項12】
前記第1のサンプルビームはSincビームを含み、前記第2のサンプルビームは余弦
アポダイズドビームを含む請求項11に記載のビーム形成方法。
【請求項13】
前記第1および第2のサンプルビームと比較して、1つまたは複数の減少したサイドロ
ーブを有する前記合成されたビームを提供するように、前記重み付けファクタを選択する
ことをさらに含む請求項10に記載のビーム形成方法。
【請求項14】
前記重み付けファクタを選択することは、
前記第1のサンプルビームと比較して、前記合成されたビームの減少したサイドローブ
と増加したメインローブ幅との間に許容可能な均衡を提供するように前記重み付けファク
タを選択することをさらに含む請求項13に記載のビーム形成方法。
【請求項15】
ビーム信号をメインローブ成分とサイドローブ成分に区分化すること、
前記メインローブ成分にビーム先鋭化関数を適用すること、および、
前記メインローブ成分に前記ビーム先鋭化関数を適用した後に、前記メインローブ成分
および前記サイドローブ成分を再結合することを含むビーム形成方法。
【請求項16】
前記ビーム先鋭化関数は、
前記メインローブ成分からサンプルビーム信号の重み付けされた成分を減算することを
含む請求項15に記載のビーム形成方法。
【請求項17】
前記サンプルビーム信号の前記重み付けされた成分を減算することは、
前記サンプルビーム信号の前記重み付けされた成分と前記メインローブ成分の最小をと
ることを含む請求項16に記載のビーム形成方法。
【請求項18】
前記サンプルビーム信号の前記重み付けされた成分を減算することは、
前記メインローブ成分から異なるように重み付けされたサンプルビーム成分を繰り返し
減算することを含む請求項16に記載のビーム形成方法。
【請求項19】
前記サンプルビーム信号の前記重み付けされた成分は、重み付けされたメインローブ成
分を含む請求項16に記載のビーム形成方法。
【請求項20】
前記サンプルビーム信号は、アポダイズドビームによって提供された信号を含む請求項
16に記載のビーム形成方法。
【請求項21】
前記アポダイズドビームは、アポダイズド余弦ビームを含む請求項20に記載のビーム
形成方法。
【請求項22】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分を再結合することは、
非ヌルサイドローブ成分を前記メインローブ成分と結合することを含む請求項15に記
載のビーム形成方法。
【請求項23】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分に区分化される前記ビーム信号は、
合成ビーム技法によって提供される請求項15に記載のビーム形成方法。
【請求項24】
前記合成ビーム技法は、
第1のビーム信号を、メインローブ成分とサイドローブ成分に区分化すること、
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の少なくとも一方を独立に処理する
こと、および、
少なくとも一方が独立に処理された前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分
を再結合することを含む請求項23に記載のビーム形成方法。
【請求項25】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の少なくとも一方を独立に処理する
ことは、
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の前記少なくとも一方を、前記メイ
ンローブ成分および前記サイドローブ成分の他方と異なるように重み付けすることを含む
請求項23に記載のビーム形成方法。
【請求項26】
前記メインローブ成分および前記サイドローブ成分の前記少なくとも一方を異なるよう
に重み付けすることは、
前記再結合する場合に、前記メインローブ成分の重み付けより小さい重み付けを有する
ように、前記サイドローブ成分を重み付けすることを含む請求項25に記載のビーム形成
方法。
【請求項27】
前記合成ビーム技法は、
第1のメインローブおよび1つまたは複数のサイドローブを有する第1のサンプルビー
ムを使用して第1の信号を取得すること、
第2のメインローブおよび1つまたは複数のサイドローブを有する第2のサンプルビー
ムを使用して第2の信号を取得することであって、その際、前記第1のメインローブの形
状は前記第2のメインローブの形状と実質的に異なっていること、および、
前記第1の信号と前記第2の信号と重み付けファクタとを使用して第3の信号を提供す
るビームを合成することを含む請求項23に記載のビーム形成方法。
【請求項28】
前記第1のサンプルビームは非アポダイズドビームであり、前記第2のサンプルビーム
はアポダイズドビームである請求項27に記載のビーム形成方法。
【請求項29】
前記第1のサンプルビームはSincビームを含み、前記第2のサンプルビームは余弦
アポダイズドビームを含む請求項28に記載のビーム形成方法。
【請求項30】
前記第1および第2のサンプルビームと比較して、1つまたは複数の減少したサイドロ
ーブを有する前記合成されたビームを提供するように、前記重み付けファクタを選択する
ことをさらに含む請求項27に記載のビーム形成方法。
【請求項31】
前記重み付けファクタを選択することは、
前記第1のサンプルビームと比較して、前記合成されたビームの減少したサイドローブ
と増加したメインローブ幅との間に許容可能な均衡を提供するように前記重み付けファク
タを選択することをさらに含む請求項30に記載のビーム形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組込まれる、2009年11月9日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR SCAN BEAM SIDEしOBE REDUCTION WHIしE REDUCING THE MAINしOBE USING DYNAMIC RESOLUTION」という名称の米国仮特許出願第61/259,346号、および、2009年11月10日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR SCAN BEAM SIDEしOBE REDUCTION WHIしE REDUCING THE MAINしOBE USING DYNAMIC RESOLUTION」という名称の米国仮特許出願第61/259,938号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ビーム形成に関し、より詳細には、サイドローブ低減および/またはメインローブ整形などによる、ビーム性能向上のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
超音波検査システムでは、音響信号が、走査ヘッドによって身体または他の被検体内に送信され、反射信号が、画像処理のために走査ヘッドによって受信される。反射信号は、目標(着目)の身体物質(たとえば、患者の組織)または他の被検体の構造の画像を形成するために、超音波検査システムによって使用される。こうした超音波検査撮像で使用される走査ヘッドは、通常、1つまたは複数の独立したトランスデューサおよびおそらくは他の電子部品を収容する手持ち式容器である。
【0004】
超音波検査システム走査ヘッドのトランスデューサは、送信時に、電気エネルギーをその表面から遠くに放射する機械(音響)エネルギーに、また、受信時に、その表面に入射する機械(音響)エネルギーを電気エネルギーに変換する。エネルギー変換材料の個、の部分は、長方形などの特定の幾何学的形状として製造されることが多い素子である。通常、これらのトランスデューサ素子は、規則的パターン(アレイ)に配列され、素子の中心は、リニアアレイまたはフェーズドアレイを形成するために直線状に、湾曲アレイを形成するために孤に沿って、または2Dアレイを形成するために格子状に配列される。通常、トランスデューサ素子のこの規則的パターンは、ピッチと呼ばれる素子中心から素子中心まで測定される反復間隔を有する。超音波検査撮像動作において、トランスデューサ素子は、概してグループで使用される。一つの次元におけるトランスデューサ素子のこうしたグループの全範囲は、その次元における開口である。たとえば、リニアアレイの場合、1つの次元はトランスデューサ素子の高さであり、他の次元は、使用されるトランスデューサ素子の数にピッチを掛けた値である。
【0005】
超音波ビームは、送信動作であっても受信動作であっても、トランスデューサ素子の先のグループの適切な使用によって形成されうる。たとえば、受信ビームは、トランスデューサ素子信号の1つまたは複数の属性を調整し(たとえば、選択された開口のトランスデューサ素子に対応するトランスデューサ素子ビーム形成信号を提供するように、遅延させ、かつ/または、重み付けし)、特定の地点(特定の地点は「焦点(focaし point)」である)に対応する最大信号応答を有するビーム形成信号を提供するために、これらのトランスデューサ素子ビーム形成信号を加算することによって形成される。先のトランスデューサ素子信号属性は、本明細書でビーム形成パラメータと呼ばれる。こうしたビーム形成パラメータは、通常、望ましくないエリア(たとえば、所望の「見通し方向(しook direction)」以外の方向)から受信されるクラッタ(たとえば、望ましくない反射信号などの雑音)を排除するためのビームを形成するために利用される。
【0006】
特に、遅延は、トランスデューサ素子のグループからのトランスデューサ素子信号に適用され、それにより、狭いパルスが焦点から放出された場合、こうして遅延された信号が、加算デバイスに同時に到着し、したがって、最大の値をもたらす。焦点以外の任意の他の地点からやって来るこの同じ狭いパルスは、加算器に同時に到着しないことになり、したがって、加算されて大きな信号にならないことになる。特定の形状(たとえば、幅、長さ、方向など)を有するビームは、適切なビーム形成パラメータを使用して形成されうる。たとえば、所望の「見通し(しook)」方向を「指示した(pointed)」メインローブが形成されうる。
【0007】
ビームを生成するための遅延の適用と無関係に、開口がアポダイズ(後記する「アポダイゼーション」参照)されうる。アポダイゼーションは、信号が加算される前に、トランスデューサ素子信号におそらくは一意の利得値(重み付け)を適用するプロセスである。特定のアポダイゼーション関数が、減少したサイドローブなどの所望の属性を有するビームを生成するために、したがって、クラッタを排除するために開口に適用されうる。開口に適用されうる多くの標準的な重み付け関数が存在するが、特に例示的である3つの関数が存在する。これらは、一様な重み付け(矩形型、ボックスカー型、sinc型、または非アポダイズド型としても知られる)、ハニング(ハンとしても知られる)重み付け、および余弦重み付けである。ハニング重み付け(1+cos(x))および余弦重み付け(cos(x))は、ハニング重み付けが二乗余弦関数である点で互いに関連する。超音波撮像システムにおいて開口アポダイゼーションのために使用されうる他の数学的関数は、ハミング、ブラックマンハリス、または他のアプリケーション特有の窓関数である。
【0008】
一様に重み付けされた開口によって形成されるビームは、Sincビームと呼ばれ、ハニング重み付けされた開口によって形成されるビームは、ハニングビームと呼ばれ、余弦関数重み付けされた開口によって形成されるビームは、余弦アポダイズドビームと呼ばれる。対象物は、画像を形成するために超音波ビーム(たとえば、Sincビーム、ハニングビーム、または余弦アポダイズドビーム)を順次シフトさせることによって走査される。実装態様に応じて、超音波画像が、Sincビームか、ハニングビームか、または他のタイプのビームによって形成されうる。
【0009】
焦点が特定の方向に沿って移動するように、ビーム形成パラメータ(たとえば、遅延)が、連続して調整されるとき、動的に合焦されるビームが生成される。超音波検査撮像のためのビームスキャニングを行うとき、これらの動的ビームは、焦点が、リニアアレイの場合デカルト空間内で直線に、あるいは、フェーズドアレイまたは湾曲アレイでは頂点から単一角度に沿う直線に追従するように、通常形成される。たとえば、トランスデューサ素子信号のビーム形成パラメータを順次調整することによって、一連のビームは、目標の体積を走査するように形成されうる(たとえば、患者の中の特定のエリアまたは深さが走査されうる)。複数のこうした走査されるビームからの情報は、集められて、目標の被走査体積の画像(たとえば、患者の皮下部分の超音波画像)が生成されうる。たとえば、超音波Bモード動作では、異なる見通し方向の複数の超音波ビーム(たとえば、異なる見通し方向に走査されるビーム)から受信される複数ラインのエコーデータから画像が生成される。走査されたビームからのこうした画像生成は、本明細書で走査式体積撮像と呼ばれる。
【0010】
ハニングビームによって取得される単色信号は、Sincビームから取得される信号を、2つの空間的にシフトした隣り合うSincビームから取得される信号の平均と加算したものに数学的に等しく、ただし、これらのビームがナイキスト理論による間隔で配置される場合に限ることが知られている。すなわち、左Sincビームの第1のヌル(0)および右Sincビームの第1のヌルは、中心Sincビームのピークと整列しなければならない。これらの特性に基づいて、3つの隣接するナイキスト間隔で配置されたSincビームから取得される信号を処理することによって、レーダアプリケーションにおいて性能を改善する技法が提案されている。しかし、超音波撮像において、ライン密度は、最適な画像品質のために複数のシステムパラメータに従って選択され、したがって、ナイキスト基準に従ってサンプリング間隔を、ビームごとにまたは走査ラインごとに設定することが、一般に充足できない。さらに、超音波撮像において、上述した走査式サンプルビームを実現するときに使用されうる動的ビーム形成は、通常、可変開口と共に実装される。換言すれば、異なる開口サイズが、異なる深さのビームを形成するために使用される。そのため、レーダについて実装されうるようなSincビームを処理することに基づくクラッタ低減技法は、しばしば、超音波走査式体積撮像で使用するために採用されることができない。
【0011】
図1は、上述した走査式体積撮像(体積画像)を示す。具体的に、図1Aに示すトランスデューサ素子E1〜ENを有するトランスデューサ11は、こうした走査式体積撮像を行うように動作しうる。動作時、トランスデューサ素子E1〜ENのトランスデューサ素子信号は、体積画像15内の特定のエリアに向けられる受信ビームを形成するように処理される。こうしたビームは、表面16(たとえば、皮膚表面)の下に存在する対象物12(たとえば、流体充満領域)および対象物13(たとえば、組織構造)などの、体積画像15内の対象物(目標対象物とも呼ばれる)に関する情報を収集するために形成されうる。
【0012】
走査式体積撮像で使用される信号(たとえば、ビーム形成済み信号)の信号対クラッタ比が高ければ高いほど、生成される画像においてコントラスト分解能(たとえば、よりよい組織識別)が高くなることが認識されるべきである。1つの信号クラッタ源は、生成されるビームのメインローブに通常伴う上述したサイドローブである。所望のメインローブに伴う望ましくないサイドローブの存在は、図1Aの例証から見てわかる。具体的に、図1Aに示すメインローブはそれぞれ、メインローブに伴うサイドローブ(たとえば、メインローブMし5に伴うサイドローブSし5、それらの組合せは、複合表現からこれらのローブを識別するのを補助するために点線部で示される)を有する。サイドローブの数およびレベルならびにサイドローブの構造は、どれだけの軸外の望ましくないエコーが、結果として得られるビーム形成済み信号に統合されているか、したがって、目標の対象物についての所望のエコーをクラッタリングするかを規定する。サイドローブを低減する能力は、コントラスト分解能または画像内の組織などの目標対象物の識別性を改善する。
【0013】
別の画像劣化源は、画像情報を収集するために使用されるメインローブの幅である。たとえば、メインローブの幅は、撮像される体積内の対象物がビームによってどのように広がっているかを規定する。メインローブの幅は、通常、画像の細部分解能に関連する。したがって、上述したスキャニングのために形成されるビームは、生成される画像内の目標対象物が、輪郭がはっきりするように狭い焦点を有すことが望ましいことが多い。
【0014】
上記から、メインローブの幅、サイドローブのレベル、およびサイドローブの構造(たとえば、サイドローブが、メインローブからどれだけ速くロールオフするか)が、画像品質にとって大きな意義を有することが認識されうる。たとえば、高分解能画像は、非常に輪郭がはっきりしたビームによって達成されうる。
【0015】
図1Aのトランスデューサ11を使用して画像生成するための信号処理は、選択された開口のトランスデューサ素子によって受信されるトランスデューサ素子信号についてビーム形成パラメータ(たとえば、遅延および/または重み)を適切に実装することによって、選択された開口(たとえば、トランスデューサ素子E11〜E15などの、選択されたトランスデューサ素子のグループ)を使用してビームを形成することを含みうる。たとえば、ビーム形成パラメータの遅延は、(たとえば、体積画像15の特定の深さを走査するビームを提供するための適切な遅延を適用して)所望の焦点を有するメインローブMし11〜Mし15を提供するように選択されうる。さらに、ビーム形成プロセスは、メインローブに伴うサイドローブを低減するなどのために、選択された開口のトランスデューサ素子から受信される信号に対して適切な重み付けをすること(アポダイゼーションプロセス)を必要としうる。そのため、ビームを生成するときに利用されるビーム形成パラメータは、トランスデューサ素子から受信される信号が大きさと位相の両方を修正されるように複素値を含みうる。
【0016】
一般的にビームのサイドローブを低減するが、開口アポダイゼーションプロセスの使用は、メインローブを広げる。アポダイゼーションプロセスを使用する先の典型的なビーム形成の使用に伴う望ましくない結果は、図1B図1Dに示される。図1Bは、組織模擬画像150(全体として、図1Aに示す、体積画像15を表す)を示し、左の(対象物12を備える図1Aの撮像される体積の一部分に相当しうるような)流体充満領域Aおよび右の(対象物13を備える図1Aの撮像される体積の一部分に相当しうるような)組織領域Bからなる。組織領域Bは、同じ散乱断面の点散乱体(たとえば、点散乱体14)のクラスタを備えると仮定される。ここでは組織模擬画像150で表される、撮像される体積が、素子E1〜ENのリニアアレイによって形成される超音波ビームのシーケンスで超音波を照射されると、画像が形成される。流体充満領域Aから、ほとんど散乱強度が受信されないことになるため、結果として得られる(理想的な状況の)画像は、流体充満領域Aについて表示されるグレイスケールを保持せず、一方、組織領域Bは、模擬画像に示すのと同様な強度を有するドットの分布を表示することになる。
【0017】
先に論じたように、従来の超音波撮像システムにおいて、アレイの開口は、画像コントラストの改善のためにサイドローブを部分的に抑制するための決定論的数学関数でアポダイズされるか(それによりメインローブを広げる)、または、狭いメインローブを維持するためにアポダイズされず、それにより、クラッタが増大した状態でより小さな撮像ドットサイズをもたらす。いずれも、画像品質の劣化をもたらし、歪んだ画像を表示するであろう。
【0018】
図1Cは、問題を示すために、先に論じた2つの異なるビーム構成を示す。ビームBUは、比較的高いレベルでサイドローブを有するより狭いメインローブを提供する非アポダイズドビーム(たとえば、ビーム形成重み付け分布を規定するために、一様な重み付け関数を使用して形成されたSincビーム)である。ビームBHは、比較的低いレベルでサイドローブを有するより広い(広がった)メインローブを提供するアポダイズドビーム(たとえば、ビーム形成重み付け分布を規定するために、二乗余弦重み付け関数を使用して形成されたハニングビーム)である。図1Cに示すビームの大きさは、対数的に圧縮され、サイドローブは、ほたて貝形状にされ、徐、にロールオフする。
【0019】
ビームBUおよびBHは、同じエリア、特に図1Bの組織模擬画像150の組織領域Bの一部分を撮像するために使用されると仮定される。ビームBUは、メインローブによって受信される(たとえば、点散乱体14によって反射される)反射信号から得られる(組織模擬画像150によって表されるエリア内で異なる見通し方向に複数のビームBUを走査することによって生成される画像を集めるときに使用されうる)目標対象物表現101を生成する。ビームBUは、さらに、サイドローブによって受信される反射信号から得られる(同様に、望ましくないクラッタとして生成画像になるように集められうる)アーチファクト101−1〜101−8を生成する。同様に、ビームBHは、メインローブによって受信される(たとえば、点散乱体14によって反射される)反射信号から得られる(組織模擬画像150によって表されるエリア内で異なる見通し方向に複数のビームBHを走査することによって生成される画像を集めるときに使用されうる)目標対象物表現100を生成する。ビームBHは、さらに、サイドローブによって受信される反射信号から得られる(同様に、望ましくないクラッタとして生成画像になるように集められうる)アーチファクト100−1〜100−4を生成する。図1Cを見てわかるように、対象物の同じエリアが撮像されたが、ビームBHによって提供される目標対象物表現100は、ビームBUによって提供される目標対象物表現101と比較して広がっている。同様に、図1Cを見てわかるように、ビームBHによって生成されるアーチファクト(アーチファクト100−1〜100−4)より、(小さいものの)より多くのアーチファクト(アーチファクト101−1〜101−8)が、ビームBUによって生成される。
【0020】
超音波検査画像は、撮像される体積に超音波を照射するように、複数のビームBUまたはビームBHを走査することによって生成されうる。たとえば、組織模擬画像150によって表されるエリア全体を通してビームBUおよびビームBHのそれぞれ一方を走査することによって生成される表現は、目標対象物の画像を形成するために集められうる。しかし、図1Cの図から認識できるように、ビームBUを使用すると、生成画像内の目標対象物は、比較的先鋭でありうる。その理由は、目標対象物表現(たとえば、目標対象物表現101)は、比較的小さいが、より顕著なサイドローブの結果として、アーチファクト(たとえば、アーチファクト101−1〜101−8)の数が大きいからである。ビームBUの使用に関連するアーチファクトはまた、目標対象物表現の対応する目標対象物表現から長い距離にわたって延在し、さらに生成画像を劣化させる。同様に図1Cの図から認識できるように、ビームBHを使用すると、生成画像内の目標対象物は、あまり先鋭でない。その理由は、目標対象物表現(たとえば、目標対象物表現100)は、比較的大きいが、あまり顕著でないサイドローブの結果として、関連するアーチファクト(たとえば、アーチファクト100−1〜100−n)の数が小さいからである。さらに、ビームBHの使用に関連するアーチファクトは、目標対象物表現から短い距離にわたって延在する。したがって、先のビーム形成技法はそれぞれ、所望されるより低い品質であることが多い生成画像をもたらす。上記から認識できるように、所定品質の撮像を提供するために、明白なサイドローブがない、輪郭がはっきりしたビームを達成することが幻想であることがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明は、動的分解能(dynamic resolution)(DR)ビーム合成技法の使用などによってビームサイドローブ低減を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では、撮像される体積のそれぞれの被走査エリアについてサンプルビームから複数のビーム形成された信号を取得することによってDRビーム合成技法を実装する。たとえば、第1のサンプルビーム(たとえば、ビーム形成重み付け分布を規定するシンク関数を使用して形成されうるような非アポダイズドビーム)および第2のサンプルビーム(たとえば、ビーム形成重み付け分布を規定する余弦関数を使用して形成されうるようなアポダイズドビーム)が共に、撮像される体積(たとえば、組織エリア)のそれぞれの被走査エリア(たとえば、それぞれの見通し方向)について形成される。結果として得られるサンプルビーム信号(たとえば、非アポダイズド関数を使用したビーム形成された信号およびアポダイズド関数を使用したビーム形成された信号)は、本明細書のDRビーム形成技法のオペレーションを通して高分解能で低サイドローブビームからの信号に対応するビーム形成された信号を合成するために利用される。本発明の好ましい実施形態によれば、サンプルビームは、最小化された総合パワーをもたらすように、DRビーム形成技法において重み付けされ結合されうる。結果として得られるDRビームは、好ましくは、減少したサイドローブを有し、メインローブの広がりが比較的小さいかまたは全くない。
【0023】
本発明の改良型動的分解能(improved dynamic resolution)(IDR)ビーム合成技法において、DRビームは、所望の属性を有するIDRビームを合成するために区分化される。たとえば、DRビームは、サンプルビーム(たとえば、上述した第2のサンプルビーム)などを使用して、そのメインローブ成分とそのサイドローブ成分に区分化されうる。これらのビーム成分は、好ましくは、その1つまたは複数の属性を変更するなどのために、独立して操作されるかまたはその他の方法で処理される(たとえば、異なる重みを適用する)。本明細書のIDRビーム合成技法は、IDRビームを合成するためにこれらのビーム成分を再結合することによって、操作された区分化済みビーム成分からIDRビームを合成するように働く(たとえば、メインローブ成分には重みを大きく、サイドローブ成分には重みを小さく)。
【0024】
先鋭化関数は、さらに性能向上されたビームを提供するために、所望である場合、DR/IDRビームに適用されうる。先鋭化関数が適用されているDR/IDRビームは、本明細書で性能向上型動的分解能(enhanced dynamic resolution)(XDR)ビームと呼ばれる。先鋭化関数が適用されているXDRビームは、対応するDR/IDRビームより狭いメインローブを提供する。さらに、こうしたXDRビームのサイドローブは、良好な画像品質を達成するレベルにさらに抑制されうる。
【0025】
IDRおよびXDRビーム処理の実施形態は、先に論じたDRビーム処理のビーム合成を利用しうるが、DRビーム合成の使用は、本明細書の概念の適用の制限ではない。たとえば、IDRおよび/またはXDRビーム先鋭化処理の実施形態は、DRビームを使用することなくSincビームおよび余弦アポダイズドビームに関して適用されうる(たとえば、Sincビームおよび余弦アポダイズドビームを処理することによる最小パワービーム)。
【0026】
本発明の実施形態の1つの特徴は、生成画像のサンプル空間において全てのビーム形成されたサンプルの焦点性能を最適化することである。本発明の実施形態の別の特徴は、パルス波(「PW」)、連続波(「CW」)におけるスペクトル漏れの最小化およびスペクトル分解能の改善、ならびに、符号化励起および符号化パターンがあるかまたはない状態でのカラーフロー処理である。本発明のなおさらなる特徴は、実施形態が、マルチラインビーム形成、合成開口ビーム形成、および高フレームレートビーム形成などの、多くのタイプのシステムで使用するために容易に適合しうることである。
【0027】
本明細書の概念の実施形態は、ビームサイドローブ低減を提供するために超音波撮像に適用されうる。しかし、本明細書の概念は、超音波撮像に関する適用性に限定されない。実施形態は、可視光、赤外、無線周波数、および他の撮像技術に関して適用されうる。
【0028】
次に続く本発明の詳細な説明がよりよく理解されうるために、上記は、本発明の特徴および技術的利点を幾分幅広く概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点が、以下で述べられる。開示される概念および特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実施する他の構造を修正するかまたは設計するための基礎として容易に利用されうることが当業者によって認識されるべきである。こうした等価な構成は、添付特許請求の範囲で述べられる本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことも当業者によって認識されるべきである。その構成とオペレーション方法の両方についての本発明に特徴的であると思われる新規な特徴は、さらなる目的および利点と共に、添付図面に関連して考えられると、以下の説明からよりよく理解される。しかし、図はそれぞれ、例証および説明だけのために提供され、本発明の限界の規定として意図されないことが明白に理解される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、動的分解能(DR)ビーム合成技法の使用などによってビームサイドローブ低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】サイドローブ低減についての必要性および従来方式でサイドローブを低減しようと試みるときに固有の問題を示す図である。
図1B】サイドローブ低減についての必要性および従来方式でサイドローブを低減しようと試みるときに固有の問題を示す図である。
図1C】サイドローブ低減についての必要性および従来方式でサイドローブを低減しようと試みるときに固有の問題を示す図である。
図2A】本発明の実施形態による、動的分解能処理、改良型動的分解能処理、および/または性能向上型動的分解能処理を提供するように適合されたシステムを示す図である。
図2B】本発明の実施形態による、動的分解能処理、改良型動的分解能処理、および/または性能向上型動的分解能処理を提供するように適合されたシステムを示す図である。
図3A】本発明の実施形態による動的分解能ビーム合成技法によって使用されうる、第1のサンプルビームおよび第2のまたは補助のサンプルビームの例を示す図である。
図3B】本発明の実施形態による図3Aのサンプルビームから合成されうる例示的な動的分解能ビームを示す図である。
図4】本発明の実施形態のDRビームを使用して生成される画像の表現を示す図である。
図5A】本発明の実施形態による、図3Bの動的分解能ビームなどの動的分解能ビームを合成するように適合された図2のシステムの実施形態の詳細を示す図である。
図5B】本発明の実施形態による、図3Bの動的分解能ビームなどの動的分解能ビームを合成するように適合された図2のシステムの実施形態の詳細を示す図である。
図6】本発明の実施形態による、図5Aおよび図5BのDR−XDRプロセッサの例示的なオペレーションを示す図である。
図6A】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号および第2のまたは補助のサンプルビーム信号についての信号の結合を示す図である。
図6B】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号および第2のまたは補助のサンプルビーム信号についての信号の結合を示す図である。
図6C】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号および第2のまたは補助のサンプルビーム信号についての信号の結合を示す図である。
図6D】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6E】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6F】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6G】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6H】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6I】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6I(1)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6I(2)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6I(3)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる改良型動的分解能ビーム合成のための、第1のサンプルビーム信号からのメインローブ信号成分の分離を示す図である。
図6J】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図6K】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図6L】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図6L(1)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図6L(2)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図6L(3)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図6L(4)】実施形態による図6のプロセスのオペレーションによる性能向上型動的分解能ビーム合成の反復オペレーションにおける、ビーム整形関数の使用を示す図である。
図7A】例示的なサンプルビーム、および、本発明の実施形態に従って例示的なサンプルビームから合成された性能向上型動的分解能ビームのグラフである。
図7B】例示的なサンプルビーム、および、本発明の実施形態に従って例示的なサンプルビームから合成された性能向上型動的分解能ビームのグラフである。
図7C】例示的なサンプルビーム、および、本発明の実施形態に従って例示的なサンプルビームから合成された性能向上型動的分解能ビームのグラフである。
図8】1次元処理に適用される本発明の概念の一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態による、異なるパラメータのセットを使用して処理された種、のビームを示す図である。
図10】本発明の実施形態に従って処理された種、のビーム間の関係を示す図である。
図11】本明細書の実施形態の補助サンプルビームに対して大きな増幅ファクタが適用されるときの、2つのメインローブビーム信号の大きさの間の差を示す図である。
図12】本発明の実施形態に従って利用されるビーム整形関数の一例を示す図である。
図13A】残留メインローブ、動的分解能ビームのサイドローブを低減するためのメインローブ区分化ならびに結果として得られるビームを示す図である。
図13B】残留メインローブ、動的分解能ビームのサイドローブを低減するためのメインローブ区分化ならびに結果として得られるビームを示す図である。
図14】本発明の実施形態の複数の反復後の性能向上型動的分解能ビームの例を示す図である。
図15A】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図15B】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図15C】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図15D】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図15E】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図15F】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図15G】本発明の実施形態による、異なるビーム特性を有する新しい成分信号の生成を示す図である。
図16A】本発明の実施形態によるビーム分解および合成で利用されるビームを示す図である。
図16B】本発明の実施形態によるビーム分解および合成で利用されるビームを示す図である。
図16C】本発明の実施形態によるビーム分解および合成で利用されるビームを示す図である。
図16D】本発明の実施形態によるビーム分解および合成で利用されるビームを示す図である。
図16E】本発明の実施形態によるビーム分解および合成で利用されるビームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
図2Aは、本発明の実施形態に従って適合された超音波撮像システムの実施形態を示す。例示的な実施形態は、本明細書の概念を理解するのを補助するためにより具体的な例を提供するように、超音波撮像を参照して述べられることが認識されるべきである。しかし、本発明の概念は、超音波撮像に関する適用に限定されない。そのため、本発明の概念は、可視光、赤外線、および無線周波数撮像技術などの、送信信号の反射が使用される多数の技術に関して適用されうる。
【0032】
超音波撮像システム200が示され、走査ヘッド220と通信状態のシステムユニット210を備える。本実施形態のシステムユニット210は、走査式体積撮像を提供するために走査式ビームの送信/受信回路要素221を使用して超音波信号を送受信する走査ヘッド220のトランスデューサ(たとえば、図1Aに示すトランスデューサ11)を制御するように動作可能なプロセッサベースシステムを備える。したがって、本実施形態のシステムユニット210のプロセッサベースシステムは、受信した超音波信号を処理して、ディスプレイ212上に表示され、撮像される体積201の一部分を表す画像211を生成する。本発明の概念に従って適合されうる撮像システムに関する詳細は、その開示が参照により本明細書に組込まれる、「Moduしar Apparatus for Diagnostic Untrasound」という名称の同時係属中でかつ同一譲受人に譲渡された米国特許出願第12/467,899号に提供される。
【0033】
超音波撮像システム200の本実施形態に関するさらなる詳細は、図2Bの高レベル機能プロック図に示される。図2Bに示すように、走査ヘッド220のトランスデューサは、(増幅器、バッファ回路、マルチプレクサ回路などを備えうるような)送信/受信回路要素221と通信状態であり、かつ、超音波信号を制御可能に送受信するように動作可能な超音波素子のアレイ(トランスデューサ素子E1〜ENを有する図1Aのトランスデューサ11)を備えうる。
【0034】
図2Bのシステムユニット210は、ビーム形成器213、DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214、超音波画像処理回路215、およびディスプレイ212を備える。ビーム形成器213は、トランスデューサ11に/から提供される信号に関してビーム形成を提供するように動作する。DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214は、本明細書で述べる動的分解能ビーム合成処理を提供するように動作する。超音波画像処理回路215は、ディスプレイ212上で表示するなどのために、DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214によって合成された動的分解能(たとえば、DR、IDR、および/またはXDR)ビーム信号を使用して超音波画像(たとえば、Bモード、Mモード、ドプラーモード、3−D、4−Dなど)を形成するように動作する。
【0035】
図2Bに示す機能プロックに対する付加的なおよび/または代替の機能プロックが、本発明の実施形態に従って利用されうることが認識されるべきである。たとえば、デジタルビーム形成またはデジタル信号処理が、超音波撮像システム200によって実装される場合などで、1つまたは複数のアナログ−デジタルコンバータ(ADC)および/またはデジタル−アナログコンバータ(DAC)が利用されうる。さらに、機能プロックは、図2Aに示すものと異なるように分配されうる。たとえば、走査ヘッド220とシステムユニット210との間に、「細いワイヤ(thin wire)」リンクが所望される場合などで、ビーム形成器213は、走査ヘッド220内に配設されうる。
【0036】
ビーム形成器213によって実装されうる適応的ビーム形成プロセスに基づいて、調べられる組織部位に関連する信号内の信号対雑音比を最適にすることが可能である。適応的ビーム形成プロセスにおいて、全てのトランスデューサ素子(または、トランスデューサ素子のある選択されたサブセット)からの信号の大きさおよび位相についての一連の行列演算が、全てのサンプル場所について使用される。行列の次元は、通常、アレイ開口の次元に比例する。開口が、従来の超音波撮像システムの場合と同様に大きい、たとえば、32、64、または128であるとき、実装に必要とされる処理パワーは、非常に高く、あるシステムアプリケーションには適用できない。
【0037】
ビーム形成器213のサンプルビームのビーム形成器213aおよび213bは、本実施形態に従って走査式体積内の調べられる組織部位についてビーム形成された信号を生成するために遅延加算型(delay−and−sum)ビーム形成プロセスを利用する。
遅延加算型ビーム形成は、トランスデューサ素子の間の到着時間差が補償された後に複数のトランスデューサ素子(トランスデューサ素子の全てまたはある選択されたサブセット)から受信される複数の信号を統合することによって行われる。ビーム形成器からの出力は、組織の散乱断面の分布に応じて、その大きさおよび位相を変更するビーム形成された信号である。
【0038】
本実施形態によるオペレーションにおいて、ビーム形成パラメータの第1のセット(たとえば、遅延および/または重みの第1のセット)は、第1のサンプルビームを提供し、同時に、ビーム形成パラメータの第2のセット(たとえば、遅延および/または重みの第2のセット)は第2のサンプルビームを提供する。たとえば、サンプルビームのビーム形成器213aは、第1のサンプルビーム(たとえば、非アポダイズドビーム)を形成するためにビーム形成パラメータの第1のセットを実装し、一方、サンプルビームのビーム形成器213bは、第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、アポダイズドビーム)を形成するためにビーム形成パラメータの第2のセットを実装する。したがって、サンプルビームのビーム形成器213aおよび213bは、本発明の実施形態による動的分解能処理のために2つの異なるビーム形成された信号を同時に提供する。
【0039】
上記から、ビーム形成された信号において、複数のトランスデューサ素子(トランスデューサ素子の全てまたはある選択されたサブセット)からの信号が、統合されて、単一のビーム形成された信号になることが認識されるべきである。そのため、個、のトランスデューサ素子で受信された信号(たとえば、エコー信号)の位相および大きさが失われる。したがって、ビーム形成された信号のポストビーム形成(post beamforming)を改善することは、技術的な難題である。しかし、本明細書のDR、IDR、および/またはXDRビーム合成概念を使用して、ポストビーム形成のビーム性能を改善することが可能である。
【0040】
超音波撮像システム200の本実施形態は、本明細書で述べる、動的分解能(DR)ビーム合成技法、改良型動的分解能(IDR)ビーム合成技法、および/または拡張型動的分解能(XDR)ビーム合成技法を実装する。たとえば、DRビーム合成技法は、DRビームを合成するために、撮像される対象物(たとえば、組織)のそれぞれの被走査エリアについて、ビーム形成器213のサンプルビームのビーム形成器213aおよび213bによって提供される複数のビーム形成された信号を取得する超音波撮像システム200のDR/IRD/XDRビーム合成プロセッサ214によって実装されうる。合成されたDRビームの信号は、IDRおよび/またはXDRビーム合成を提供するために、本明細書で述べる区分化(分割)技法などを使用して、超音波撮像システム200のDR/IRD/XDRビーム合成プロセッサ214によってさらに処理されうる。
【0041】
本発明の実施形態によるDRビーム合成技法は、調べられる組織部位から2つのビーム形成された信号を同時に取得する。たとえば、第1のサンプルビーム(たとえば、図3AのビームBU)および第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、図3AのビームA)は、撮像される体積201のそれぞれの被走査エリア(たとえば、それぞれの見通し方向)の各サンプル点についてビーム形成器213を使用して形成される。合成されたDRビーム(たとえば、図3BのビームBO)においてサイドローブを最小にする1つの方法は、DRビームを合成するためにサンプルビームが結合されるときにサイドローブを最小にする、位相、形状、および大きさを有するサンプルビームを形成することによる。したがって、図3Aの図から認識できるように、本実施形態のサンプルビームは、これらのサンプルビームが結合されるときに所望の属性を有するDRビームを合成するように協働するピークおよびヌルを提供するように適合する。すなわち、第1のサンプルビームBu(θ)に伴うサイドローブは、第2のまたは補助のサンプルビームA(θ)を使用して低減されて、良好な品質のDRビームBo(θ)をもたらしうる。
【0042】
サイドローブを最小にする本発明のDRビーム合成技法の本実施形態は、アポダイゼーションなしで形成された第1のサンプルビーム、および、余弦関数(たとえば、cos(θ))を使用して開口をアポダイズすることによって形成された第2のサンプルビームまたは補助サンプルビームによって実装されうる。たとえば、アレイからの非アポダイズドビーム(図3AのビームBU)パターンは、シンク関数sinc(θ)によって記述されうる。関数sinc(θ)は、振動性であり、θ=±nπでゼロ交差する、すなわち、sinc(±π)=0であり、一方、sinc(0)=1である。アレイからのビームパターンが、余弦関数を使用してアポダイズされる(たとえば、図3AのビームA)場合、余弦アポダイズドビームは、2つの幾何学的にシフトした成分のSincビームに対称に区分化され、その2つのピークは、非アポダイズドビームの第1のサイドローブと整列し、ヌルが原点に設置されるA(0)=0。Aは、第2のサンプルビームまたは余弦アポダイズドビームである。そのため、余弦アポダイズドビームは、シンク関数を使用して形成された非アポダイズドサンプルビームに適用されると、サイドローブ低減用の補助サンプルビームとして使用されうる。Sincビームおよび余弦アポダイズドビームは、DRビーム合成プロセスを説明するために本明細書で参照されるが、サンプルビームの他の組合せが使用されて、本発明の概念に従って、改善された画像品質を有する画像再構成のために信号が処理されうることが認識されるべきである。
【0043】
サンプルビームから得られるサンプルビーム形成済み信号は、本発明のDRビーム(たとえば、図3BのビームBO)に対応する信号を合成するために、図2BのDR/IRD/XDRビーム合成プロセッサ214によって利用される。たとえば、サンプルビームの幾何学的および/または形態学的特性を使用して、サンプルビームからの信号が結合されて、所望の特性を有するDRビームが合成される。望ましくない属性(たとえば、サイドローブ)を打ち消すために結合する幾何学的および/または形態学的特性をサンプルビームが提供する場合、本実施形態のDRビーム合成は、サンプルビームを加算するように働きうる(たとえば、BO=BU+αA)。しかし、望ましくない属性(たとえば、サイドローブ)を増加させるために結合する幾何学的および/または形態学的特性をサンプルビームが提供する場合、本実施形態のDRビーム合成は、サンプルビームを減算するように働きうる(たとえば、BO=BU−αA)。したがって、DRビームを合成するときにサンプルビームの使用に関して本明細書で提供される数学的関係は、利用される特定のサンプルビームの結合/打ち消し特性に応じて符号の変化を実装しうることが認識されるべきである。
【0044】
次に続く説明からよりよく理解されるように、先の例のαは、第1のサンプルビームの望ましくない部分を打ち消すために使用される第2のサンプルビームから受信される信号の分割量を規定する。パラメータαは、DRビーム合成におけるサイドローブ軽減とメインローブの広がりとの間の均衡を提供するために本実施形態に従って使用される。したがって、本明細書の動的分解能ビーム形成技法のオペレーションによって合成されたDRビームは、好ましくは、減少したサイドローブを有し、メインローブの広がりが比較的小さいかまたは全くない。
【0045】
以下の説明は、本発明の実施形態のDRビーム合成プロセスをよりよく理解するのを補足するために提供される。第1のサンプルビームBu(θ)が、撮像される体積を走査するために使用される場合、対象物O(θ)に関して第1のサンプルビームBu(θ)を走査することによって受信される、結果として得られるビーム形成された信号Iu(θ)は、Iu(θ)=∫O(φ−θ)*Bu(φ−θ)dφとして記述されうる。第1のサンプルビームBu(θ)が、2つの成分BuM(θ)およびBuS(θ)に分解されうると仮定する。ここで、ビーム成分BuM(θ)は所望のビーム成分(たとえば、メインローブ)であり、ビーム成分BuS(θ)は望ましくないビーム成分(たとえば、サイドローブ)であり、Bu(θ)=BuM(θ)+BuS(θ)である。そのため、Iu(θ)=∫O(φ−θ)*Bu(φ−θ)dφ=IuM(θ)+IuS(θ)である。
【0046】
第2のサンプルビームA(θ)は、第1のサンプルビームBu(θ)の方向と同じ方向を「見通す(しook)」または指示する補助ビームでありうる。第2のサンプルビームA(θ)もまた、2つの成分A(θ)およびA(θ)に分解されうると仮定する。ここで、A(θ)=A(θ)+A(θ)である。そのため、I(θ)=∫O(φ−θ)*A(φ−θ)dφ=IAM(θ)+IAS(θ)である。上記から、DRビームB(θ)は、B(θ)=B(θ)+αA(θ)=BUM(θ)+αA(θ)+BUS(θ)+αA(θ)に従って形成されうる。そのため、サイドローブ信号BUS(θ)は、差 ||BUS(θ)−A(θ)||を最小にする、すなわち、
となるαを確定することによって減少されうる。これは、事実上、
と等価である。
【0047】
本発明の実施形態によるDRビームのメインローブを劣化させないために、第2のまたは補助のサンプルビームαIAM(θ)のメインローブから得られるビーム信号成分は、できる限り小さいことが望ましい。すなわち、非ゼロαIAM(θ)は、通常、合成されたDRビームBo(θ)においてメインローブBuM(θ)の少なくともある程度の広がりをもたらす。第2のサンプルビームA(θ)と結合されるときに、サンプルビームBu(θ)の見通し方向または指示方向を変えないために、本実施形態の第2のサンプルビームA(θ)は、第1のサンプルビームのメインローブBuM(θ)に対応して設置されたヌルを含む。換言すれば、A(0)=0でかつBo(0)=BuM(0)である場合、サイドローブからのクラッタエネルギーが、打ち消しプロセスBu(θ)+αA(θ)の結果として最小になると、BuM(θ)の見通し方向または指示方向は、BuM(θ)+αAM(θ)のプロセスのためにメインローブがわずかに広がりうることを除いて変更されないことになる。
【0048】
パラメータ・アルファαは、所定の最小値および最大値によって境界付けられうる。たとえば、本実施形態のパラメータ・アルファは、好ましくは、0と1との間で境界付けられて、データ取得または他の数値プロセスから生じる誤差が回避される。第2のサンプルビーム(たとえば、先の余弦アポダイズドビーム)からの信号を使用することによってサンプルビーム(たとえば、先にSincビーム)からのクラッタ信号を打ち消すことが実用的でない状況が存在しうることが認識されるべきである。たとえば、クラッタレベルが異常に高いとき、または、望ましくない方向からの信号が、非常に高いため、第2のサンプルビームから容易に達成されるものより高い性能のサイドローブ打ち消しビームが所望されうるときである。こうした状況では、パラメータαの値は、本発明の実施形態による所定の最大許容可能値(たとえば、1)に設定されうる。
【0049】
アルファがゼロの場合は、サイドローブが、第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)において低く、DRビーム合成におけるサイドローブ打ち消しのために、第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アポダイズドビーム)から信号が全く必要とされない状況である。対照的に、アルファが1に等しいとき、サイドローブに起因する第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アポダイズドビーム)から受信される信号は、DRビーム合成のために第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)のサイドローブの打ち消しのために必要とされる。したがって、本実施形態のSincビーム/余弦アポダイズドビームDRビーム合成例では、α=0の場合、合成されるDRビームはSincビーム(BO=BU+αA=BU+0A=BU)であり、α=1の場合、合成されるDRビームは二乗余弦またはハニングビーム(BO=BU+αA=BU+1A)である。0と1との間のαの値は、Sincビームのメインローブと二乗余弦アポダイズドビームのメインローブとの間で幅が変動する合成されたDRビームメインローブを提供し、サイドローブは、余弦アポダイズドビームサイドローブから受信される信号の分割量に従って減少する。
【0050】
最適化プロセスは、第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)の望ましくない部分の打ち消しのために、第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アポダイズドビーム)から必要とされる信号量を計算するために実装されうる。しかし、こうした最適化プロセス、すなわち、本発明の実施形態のDRビーム合成プロセスでは、目的関数の異なる選択が使用されうる。ビームのクラッタ信号のパワーの最小化に基づく基準が、上述したパラメータαを計算するために選択されうる。すなわち、本発明の実施形態のパラメータαは、DRビームを合成するために第1のサンプルビーム信号と結合される、第2のまたは補助のサンプルビーム信号の分割量を事実上規定し、したがって、サンプルビームが結合されるときに、クラッタ信号のパワーが最小になるようにパラメータαを選択するための目的関数が、本実施形態に従って選択されうる。
【0051】
本発明の実施形態のDRビーム合成プロセスでは、パラメータαは、サンプルごとに(たとえば、見通し方向ごとに)動的に変更されうる。本実施形態のパラメータαは、サイドローブ打ち消しプロセスにおいて、サンプルビーム(たとえば、Sincビームおよび余弦アポダイズドビーム)からの測定に基づいて、ビームの総合クラッタパワーを最小にすることによって選択されるため、DR処理された画像内の全てのサンプルについて、細部分解能とコントラスト分解能との間の良好な均衡が達成されうる。たとえば、サイドローブが高いサンプル場所では、パラメータαは、高いまたは上方限界(たとえば、先の例では1)に設定される可能性があり、第2のサンプルビームは、そのロールオフ率が速い低いサイドローブを有するDRビームを合成するために利用される。しかし、合成されたDRビームのメインローブの幅は、第2のサンプルビームの影響によって広がり、したがって、画像分解能は低くなる可能性がある。少ないクラッタが、その隣から受信されるサンプル場所において、パラメータαは、低いまたはより低い限界(たとえば、先の例では0)に設定される可能性があり、第2のサンプルビームは、本質的に、DRビームを合成するときに未使用のままである。こうした本実施形態ではアポダイゼーションが全く利用されないため、合成されたDRビームのメインローブは狭い。そのため、画像内のサイドローブ打ち消しパラメータは、先の例において0〜1に変動する。結果として、DRビーム合成プロセスは、事実上、画像内の細部分解能およびコントラスト分解能から最良のトレードオフを可能にする。
【0052】
先の概念を示すために、図3BのビームBOは、サンプルビームBUおよびAのサンプルビーム信号から合成されたDRビームBo(θ)の表現を示す(たとえば、Bo(θ)=Bu(θ)+αA(θ)であり、ここでα=1である)。ビームBOのサイドローブは大幅に減少した。しかし、メインローブは、図3AのW1および図3BのW2によって示すように、Sincビームのメインローブと比較して、比較的幅広であった。こうした広がったメインローブは、一般に、結果として得られる画像の分解能を減少させるが、比較的わずかなメインローブの広がりとサイドローブのかなりの低減の均衡を通して、改善された画像品質が、こうした本実施形態のDRビームによって提供される。
【0053】
図4は、本発明の実施形態に従って合成されたDRビームを使用して生成された画像の表現を示す。特に、図4は、DRビーム(たとえば、図3BのDRビームBO)を合成するために、サンプルビーム(たとえば、図3AのサンプルビームBUおよびA)を走査することによって生成される、撮像される体積内の目標対象物(たとえば、目標対象物を表すために凝集する目標対象物表現400)を示す画像460を示す。図示するように、図3Bでは、画像460についての表示のダイナミックレンジは、下方カットオフGしと上方カットオフGHとの間のDRビーム信号内の情報に対応する。サイドローブアーチファクトは、画像460では全く見えない。その理由は、合成されたDRビームのサイドローブが急速に低下し、サイドローブが実際に生成する画像は、下方カットオフGし未満であるからである。点散乱体14に対応する生成画像は、DRビームのメインローブ幅が減少するため、画像460内でほんのわずかに広がる。そのため、画像のテクスチャは、よく保存され、画像460の領域AまたはBのいずれにおいても、アーチファクトがほとんど存在しないかまたは全く存在しない。
【0054】
図5Aおよび図5Bは、複数のサンプルビーム(たとえば、図3AのサンプルビームBUおよびA)を使用してDRビーム(たとえば、図3BのDRビームBO)を合成するように適合した超音波撮像システム200の本実施形態のさらなる詳細を示す。図5Aおよび図5Bの例示的なシステムは、DRビーム合成のために2つのサンプルビーム信号を形成するためにビーム形成器213を利用する。本実施形態のビーム形成器213は、本明細書で述べるサンプルビーム信号を形成するために、DE/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214などの制御プロセッサの制御下で動作可能でありうる、種、の信号処理、重み付け、および結合回路要素を備える。
【0055】
本実施形態では、トランスデューサ素子(たとえば、図1Aに示すトランスデューサ素子E1〜EN)から供給される信号は、後続のビーム形成処理のためのトランスデューサ信号増幅を行う低ノイズ増幅器を備えうるような増幅器51−1〜51−Nによって処理される。素子52−1〜52−Nは、各トランスデューサ素子信号について信号位相(遅延)調整を行い、素子53−1〜53−Nは、各トランスデューサ素子信号について信号振幅(重み付け)調整を行う。そのため、素子52−1〜52−Nおよび53−1〜53−Nは共に、トランスデューサ素子信号にビーム形成パラメータを適用する。結合器54および55は、トランスデューサ素子信号の結合(たとえば、加算)を行って、結果として得られるビーム信号を形成する。したがって、素子52−1〜52−Nおよび結合器55は、協働して、本発明の実施形態のサンプルビームのビーム形成器213aを提供し、素子52−1〜52−N、素子53−1〜53−N、および結合器54は、協働して、本実施形態のサンプルビームのビーム形成器213bを提供する。
【0056】
図5Aの本実施形態では、適切に遅延された複数のトランスデューサ素子信号が、結合器55で結合されて、Sincビーム信号が上述した第1のサンプルビーム信号として提供される。適切に遅延され重み付けされたトランスデューサ素子信号が、結合器54で結合されて、余弦アポダイズドビーム信号が上述した第2のまたは補助のサンプルビーム信号として提供される。本発明の実施形態によるオペレーション時に、Sincビームおよび余弦アポダイズドビームは、(たとえば、同じセットのトランスデューサ素子信号を使用して)同時に形成される。
【0057】
ビーム信号調節および/または処理は、所望される場合、DRビーム合成処理の前に、それと一緒に、または、それの後に本実施形態に従って提供されうる。たとえば、ベクトル空間におけるDRビーム合成を容易にするために、本実施形態の余弦アポダイズドビーム信号は、直交バンドパスフィルタ56−1に供給され、一方、Sincビーム信号は、直交バンドパスフィルタ56−2に供給される。付加的なまたは代替のサンプルビーム信号調節は、アナログ−デジタルコンバータ(たとえば、デジタル信号プロセッサ(DSP)が、本明細書のDRビームを合成するときに使用される場合)、増幅器、ノイズキャンセリングなどを備えうる。
【0058】
Sincビーム信号および余弦アポダイズドビーム信号は、DRビーム信号合成のために、本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214に供給される。図5Aに示すDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214の本実施形態は、本明細書で述べる動的分解能処理を提供するために、ここではDR処理511、IDR処理512、およびXDR処理513として示される複数のビーム処理回路を含む。しかし、本発明の実施形態が、本実施形態のビーム処理回路の全てを実装しない可能性があることが認識されるべきである。たとえば、実施形態は、所望される場合、本明細書で述べるDR処理(たとえば、DR処理511)だけ、または、DR処理とIDR処理(たとえば、DR処理511とIDR処理512)の組合せを実装しうる。DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214は、本明細書で述べるビーム処理回路を提供するように構成された、本明細書で述べるオペレーションを提供するための命全セットの制御下で動作可能な汎用プロセッサ、DSP、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)などを備えうる。DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサの動作は、図6のプロセスを参照して以下でより完全に述べられる。
【0059】
本発明の実施形態に従って合成されたビーム信号は、上述した超音波画像の生成などの画像生成において利用されることが認識されるべきである。したがって、本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214の出力は、こうした画像生成のための回路要素に供給される。たとえば、本実施形態の合成された動的分解能ビーム信号は、走査変換のために、信号の位相を除去し、信号の大きさのマッピングを行うなどのために、検出および圧縮回路59に供給される。本実施形態の走査コンバータ501は、ディスプレイ212を介してユーザに提示するために、取得空間から表示空間に信号の大きさを変換する。
【0060】
余弦アポダイズドビームを実装することについての問題の1つは、(たとえば、図5Aの結合器54にて)トランスデューサ素子信号を結合することである。余弦関数は、−1と+1との間で振動する。そのため、重みおよび加算を実施するとき、1つのトランスデューサ素子信号(チャネル)は−1である可能性があり、一方、別のトランスデューサ素子信号(チャネル)は+1である可能性があり、それにより、1つのチャネルが他のチャネルを相殺する確率が存在する。余弦関数の使用に伴う各チャネルの正値および負値は、ビーム形成時の遅延および加算プロセスにおける打ち消しを引起す可能性があり、ダイナミックレンジ制限をもたらす。さらに、余弦関数が−1から+1に進み、したがって、ゼロを交差するため、あるトランスデューサ素子は、非常に小さな信号を受信することになる。この問題を克服するために、画像処理システムのフロントエンド回路要素(たとえば、フロントエンド回路要素のADコンバータ)は、非常に広いダイナミックレンジを有する必要がある可能性がある。
【0061】
余弦アポダイゼーションの使用に伴う先の問題は、二乗余弦アポダイズドビーム(たとえば、ハニングビーム)が、ビーム形成器213によって形成される図5Bの本実施形態において回避される。そのため、余弦アポダイズドビームを直接形成するためにビーム形成器を使用する代わりに、図5Bの本実施形態は、DRビーム合成で使用するためのSincビームに加えて、二乗余弦アポダイズドビーム(たとえば、ハニングビーム)を形成するように働く。その後、上述したDRビーム合成で使用される第2のまたは補助のサンプルビーム信号が、第1のサンプルビーム(ここではSincビーム)の信号と二乗余弦アポダイズドビームの信号との差をとることによって計算されうる。したがって、図5Bの本実施形態では、適切に遅延されたトランスデューサ素子信号は、結合器55にて結合されて、Sincビーム信号が、上述した第1のサンプルビーム信号として提供される。二乗余弦関数で重み付けされたトランスデューサ素子信号は、結合器54にて結合されて、二乗余弦アポダイズドビーム信号が提供される。フロントエンド上でこうした二乗余弦アポダイズドビームを形成することの利点は、結合器54が、正の信号を扱う必要があるだけであり、それにより、ノイズがさらに抑制されることである。
【0062】
超音波撮像において、動的合焦が、可変開口と共に実装されることが多い。換言すれば、異なる開口サイズが、異なる深さのビームを形成するために使用される。一般に、画像内の種、の深さにおいて分解能を維持するために、深さが増大するにつれて、開口サイズを増大させることが好ましい。Sincビームおよび余弦アポダイズドビームは、深さと共に変動する異なるサイズの開口を使用して形成されうる。ビーム形成器内に実装されるチャンルの数は、一般に制限されるため、ビーム形成のための開口サイズは、ビーム形成のために利用可能な全てのチャネルが利用されるときの、ある深さで増大することを停止する。このある深さから、全ての受信チャネルが、一定の開口でビームを形成するために使用される。
【0063】
たとえば二乗余弦ビーム信号を生成するとき、図5Bに示す本実施形態の増幅器51−1〜51−Nへの入力は、トランスデューサの特定のトランスデューサ素子からの信号を表す。Nチャネルのビーム形成器の場合、最大の開口は、Nチャネルでビームを形成するためにN個のトランスデューサ素子を備える。開口が深さと共に変動するとき、ある計算は、トランスデューサ素子のサブセットを使用する必要があるだけである可能性がある(たとえば、種、の深さについての二乗余弦関数が、選択されたトランスデューサ素子または選択された開口について計算されうる)。好ましい実施形態では、全ての二乗余弦関数計算の場合、本実施形態のシステムは、2つのサンプルビームを使用して最良のDRビームを達成するために、最良の重み付けのセット(たとえば、素子51−1〜52−Nおよび53−1〜53−Nの適切なセットについての設定)を探す。
【0064】
信号が、図5Bの結合器54および55によって結合された後、結果として得られるビーム信号は、それ自体、本実施形態では減算的結合を可能にする結合器57によって結合されて、本実施形態によるDRビーム合成で使用するための第2のまたは補助のサンプルビーム(ここでは余弦アポダイズドビーム)が提供される。結合器54によって最初に生成される二乗余弦またはハニングビームは、特定の状況において(たとえば、本実施形態においてパラメータα=1である場合)DRビーム合成処理によって結果として得られるビームでありうることが、先の説明から認識されるべきである。そのため、第1のサンプルビームおよび第2のまたは補助のサンプルビームから二乗余弦アポダイズドビームを再生成するのではなく、本実施形態は、結合器54によって最初に生成された二乗余弦アポダイズドビームを利用しうる。したがって、結合器54の出力は、DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214に結合されて、第1のサンプルビーム(Sincビーム)および第2のサンプルビーム(余弦アポダイズドビーム)に加えて、二乗余弦アポダイズドビーム信号がDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214に提供されるのが示される。
【0065】
Sincビーム信号および余弦アポダイズドビーム信号は、本明細書で述べる動的分解能ビーム信号合成のために、本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214に供給される。したがって、図5Bの本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214は、先に図5Aに関して論じたように構成されうる。
【0066】
先に論じた図5Aの本実施形態の場合と同様に、ビーム信号調節および/または処理は、所望される場合、DRビーム合成処理の前に、それと一緒に、または、それの後に本発明の実施形態に従って提供されうる。たとえば、図5Bの本実施形態では、DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214は、RF領域で動作し(すなわち、信号は、RF信号として結合される)、本実施形態の合成された動的分解能ビーム信号は、信号調節のために直交バンドパスフィルタ56に供給される。付加的なまたは代替のビーム信号調節は、アナログ−デジタルコンバータ(たとえば、デジタル信号プロセッサ(DSP)が、本明細書のDRビームを合成するときに使用される場合)、増幅器、ノイズキャンセリングなどを備えうる。
【0067】
図5Aの本実施形態の場合と同様に、図5Bの本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214によって合成されたDRビーム信号は、画像生成を行う回路要素に供給される。具体的には、本実施形態の合成されたDRビーム信号は、走査変換のために、信号の位相を除去し、信号の大きさのマッピングを行うなどのために、検出および圧縮回路59に供給される。本実施形態の走査コンバータ501は、ディスプレイ212を介してユーザに提示するために、取得空間から表示空間に信号の大きさを変換する。
【0068】
図6は、本発明の概念による走査ビームのサイドローブ低減を達成するための、図5Aおよび図5BのDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214によって提供されうる、動的分解能ビーム合成プロセスの本実施形態の詳細を示す。特に、図6に示す本実施形態では、上側点線の上に示すプロセスは、図5AのDR処理511のオペレーションに対応するDRビーム合成を提供し、上側点線と下側点線との間に示すプロセスは、図5AのIDR処理512のオペレーションに対応するIDRビーム合成を提供し、下側点線の下に示すプロセスは、図5AのXDR処理513のオペレーションに対応するXDRビーム合成を提供する。
【0069】
本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214のDR処理511のオペレーションにおいて、好ましくはパラメータαを使用して重み付けされた、第1のサンプルビーム信号および第2のまたは補助のサンプルビーム信号は、DRビーム信号を合成するために結合される。したがって、プロセス601にて、走査される対象物(たとえば、組織エリア)の被走査エリア(たとえば、それぞれの見通し方向)における各サンプル点について形成された、メインローブ601−1およびサイドローブ601−4を有する第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)が取得される、さらに、撮像される体積の被走査エリアにおける各サンプル点について形成された、メインローブ601−2およびサイドローブ601−3を有する第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アポダイズドビーム)が取得される。本実施形態のプロセス601によるオベレーションにおいて、(メインローブ信号成分IuM(斜字はベクトルを表す)およびサイドローブ信号成分IuSを含む)第1のサンプルビーム信号Iおよび第2のまたは補助のビーム信号Iは、全てのサンプルについて上述したSincビームおよび余弦アポダイズドビームを使用して取得される。
【0070】
本実施形態の第1のサンプルビーム信号Iおよび第2のまたは補助のビーム信号Iは、サンプルビームの重み付けされた結合で使用するためのパラメータαを計算するプロセス62に入力される。先に論じたように、パラメータαは、本実施形態のDRビーム合成プロセスにおけるサイドローブ打ち消しパラメータであり、サンプルビーム(たとえば、Sincビームおよび余弦アポダイズドビーム)からDRビームを合成するときに使用される。代替の実施形態では、パラメータαの計算は、省略されてもよく、したがって、プロセスフローは、点線610で示すように、プロセス602に直接進みうる。
【0071】
以下のベクトル解析は、本発明の実施形態に従って使用されうる、プロセス62におけるパラメータαの計算を理解するときに役立つ。上述した第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)信号I(Echo received)=IuM(Mainしobe)+IuS(Sideしobe)となるように2つの成分に分解されうる。単位ベクトルUuMは、メインローブの見通し方向を規定し、UuM=IuM/|IuM| であり、単位ベクトルUuSは、サイドローブの見通し方向を規定し、UuS=IuS/|IuS| である。上述した第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アホダイズドビーム)信号Iは、I=|I|U によって表されうる。第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アホダイズドビーム)が、第1のザンプルビーム(たとえば、Sincビーム)のサイドローブに整列すると、第2のまたは補助の(たとえば、余弦アホダイズド)ビームUの単位ベクトルは、逆位相を有する第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)のサイドローブ成分の単位ベクトルと整列することになる。すなわち、U=−UUSであり、ここで、U=I/|I|である。そのため、Uに沿う第1のサンプルビーム信号Iのサイドローブ成分は、
であり、ここで、α=−(IU●)/|I|である。
【0072】
本明細書のDRビーム合成プロセスは、全ての走査用ビームの異なる深さに位置する全てのサンプルについて、パラメータ
を計算することによって、両像の全てのサンプルに適用されうることは認識されるべきである。たとえば、I(n, zn) およびI(n, zn)は、n番目の未処理の第1のサンプルビーム(たとえば、先の例ではアポダイズされないSincビーム)および第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、先の例ではアポダイズされた余弦アボダイズドビーム)から深さzで取得された信号である。そのため、
である。先に論じたように、パラメータα(n, zn) の値は、0と1との間で境界付けされる、すなわち、o≦α(n, zn)≦1であることが本発明の実施形態に従って望ましい。たとえば、望ましくない方向からのクラッタが、サンプル場所(n, zn)で非常に大きい場合、α(n, zn)は、サイドローブ抑制量を最大にするために、DRビーム合成プロセスにおいて1に設定される。この例では、第2のまたは補助のサンプルビーム(たとえば、余弦アポダイズドビーム)から取得される信号の100%が、そのときに、第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)からの信号に加算される。しかし、そうすることによって、メインローブI(n, zn)は、加算プロセスの結果として広がる。すなわち、メインローブのある程度の広がり、α(n, zn)≠0であるときにサンプル(n, zn)で起きる。そのため、本実施形態のDR合成プロセスでは、α(n, zn)はサンプル場所(n, zn)の近くのクラッタのパワーに応じてサンプルごとに動的に変化する。
【0073】
場合α=0は、Sincビームから受信されるクラッタが比較的小さいため、余弦アポダイズドビームからの信号が、クラッタを排除するためサイドローブを抑制するために全く必要とされない状況を示す。この場合、撮像される対象物は、その幅が回折制限分解能に従って広がるSincビームのメインローブによって描写される。
【0074】
場合α=1は、Sincビームから受信されるクラッタが非常に大きいため、余弦アポダイズドビームから受信され信号の100%がサイドローブを抑制するために使用される別の状況を示す。これは、対象物描写について回折制限分解能よりずっと大きく広がるメインローブを有するハニングビームをもたらす。異なる分解能を用いて撮像される対象物を描写することは、画像解釈について対象物の知覚歪を生じうる。さらに、クタッラが、非常に強いため、ハニングビームのサイドローブ(α=1のとき)が、クラッタを抑制する(またはロールオフする)のに十分でない極端な状況では、サンプルは、画像品質を劣化させるクラッタで汚染される。
【0075】
ビームのメインローブまたはサイドローブに起因する信号成分は、本発明の実施形態のIDRおよびXDRプロセスにおいて区分化されうる。DRビームおよび余弦アポダイズドビームから取得される信号を操作することによって、異なる幾何学的特性を有する異なる形状のビームに対応する信号成分のカテゴリが生成されうる。ずっと先鋭なメインローブおよび低いサイドローブを有する所望の信号成分は、メインロ一ブ分解能とサイドローブレベルを同等にするために合成して画像品質を改善できる。
【0076】
パラメータα(n, zn)は、クラッタの量、その強度、およびクラッタがサンプル点の近くでどのように分布しているかを示し、本発明の実施形態のIDRおよびXDRプロセスにおいてメインローブを先鋭化し、サイドローブを減衰させる他のビーム形成パラメータを制御するために使用されうる。本実施形態のパラメータテーブル63は、αを使用して所望のビーム形成パラメータをマッピングするルックアップテーブルを備える。これらの処理パラメータは、種、の深さおよび条件について予め決定されてもよく、種、のオペレーション条件およびパラメータに基づいて動的に計算されてもよいなどである。一実施形態では、処理用のパラメータテーブル63のパラメータは、各走査ビーム信号について、開口ごとに深さおよび見通し方向と一致するように設定される。
【0077】
上記から、本実施形態のDRビームは、サイドローブを低減するために、Sincビームからの信号を、余弦アボダイズドビームからの信号のαパーセンテージと結合することによって形成される。ここで、αは、本実施形態によって、α=−(IU●)/|I|をもたらす最小パワー基準に従って確定されうる。換言すれば、本実施形態のDRビーム信号IDR は、IDR=I+αI=I−{(IU●)/|I|}Iに従って合成される。したがって、本発明の実施形態のプロセス602は、Sincビーム信号と余弦アポダイズドビーム信号の重み付けされた和から、DRビーム信号IDR を形成するように働く。たとえば、合成されたDRビームB(θ)に対応するDRビーム信号IDR は、プロセス602にて、Sincビーム、B(θ)信号と重み付けされた余弦アポダイズドビームA(a)、信号Iの和(たとえば、B(θ)=B(θ)+αA(θ))から形成されうる。
【0078】
プロセス602にて形成されるDRビーム信号IDR に対応する、合成されたDRビームB(θ)は、減少したまたは最小化されたサイドローブ602−3を有するメインローブ602−1を有する。図6A〜6Cは、ビーム形成器213によって提供されるサンプルビームを使用してプロセス602の上記オペレーションに従って、Sincビーム、B(θ)、信号Iと重み付けされた余弦アポダイズドビームA(θ)、信号Iの和(たとえば、B(θ)=B(θ)+αA(θ))から合成されたDRビームB(θ)に対応するDRビーム信号IDR を合成することを示す。具体的には、図6Aは、Sincビーム(第1のサンプルビーム)から受信されたSincビーム信号Iを示し、図6Bは、余弦アポダイズドビーム(第2のまたは補助のサンプルビーム)から受信された余弦アポダイズドビーム信号Iを示す。図6Cは、α=1の場合に、サイドローブ成分がSincビーム信号Iから除去されることから得られる、合成されたDRビームを示す。
【0079】
上述したように、DRビーム信号を合成する1つの技法は、Sincビーム信号Iと余弦アポダイズドビーム信号Iを結合することである(たとえば、IDR=I+αIC,0≦α≦1)。しかし、DRビームを合成するために余弦アポダイズドビームを形成する代わりに、先に論じた図5Bのような本実施形態は、DRビームを合成するときに使用するために二乗余弦ビーム(たとえば、ハニングビーム)を形成する。たとえば、図5Bのビーム形成器213によって提供されるサンプルビームを使用するプロセス602のオペレーションは、二乗余弦ビームの信号とSincビームの信号との差をとることを含むDRビーム信号合成を提供する。
が二乗余弦ビームであるとすると,IDR=I+α(I−I),(0≦α≦1)である。こうした実施形態は、二乗余弦ビームおよびSincビームから余弦アポダイズドビームを形成するように働き、したがって、余弦アポダイズドビームをSincビームのサイドローブに整列させる。DRビーム合成におけるこうした余弦アポダイズドビームの使用は、Sincビーム信号Iのメインローブの広がりを回避しながら、Sincビーム信号Iのサイドローブを実質的に抑制する。
【0080】
抑制されたサイドローブおよび最小化されたメインローブを提供する、プロセス602にて合成されたDRビーム信号は、高品質画像の合成のための超音波撮像システム200によって利用されうる。しかし、本発明の実施形態は、合成されたビーム特性をさらに改善するために、さらなる動的分解能ビーム合成処理を提供する。したがって、本実施形態による処理は、さらなる動的分解能ビーム合成のためにプロセス603に進む。
【0081】
本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214のIDR処理512のオペレーション中に、異なるビーム(たとえば、サンプルビームの1つまたは複数、あるいは/または合成されたDRビーム)のある幾何学的特性および形態学的特性が、動的分解能ビームをさらに処理するときに利用される。特に、ビームの信号は、2つの成分、すなわち、メインローブに対応する成分およびサイドローブに対応する別の成分に分解される。これらの成分信号は、その後、再結合(重み付け加算)されて、非常に狭いメインローブおよび非常に低いサイドローブを有する新しいビーム(本発明の実施形態のIDRビーム)に対応する新しい信号が生成される。
【0082】
図6に示す本実施形態のプロセス603は、成分ビームを区分化するために、合成されたDRビーム信号および1つまたは複数のサンプルビーム信号(たとえば、第2のまたは補助のサンプルビーム信号)の処理を提供する。これらの成分信号からの信号は、その後、新しいビームを、まるで新しいビームが高性能ビーム(IDRビーム)から受信されるかのように構成するために使用される。信号分解および再構成プロセスは、本発明の実施形態によって画像全体の細部分解能およびコントラスト分解能を最適化するために、各見通し方向において全てのサンプル点で働く。
【0083】
本実施形態によるIDRビームの合成を行うための、プロセス603のオペレーションによるビーム区分化、操作、および再結合は図6D〜6Iに示される。先に論じたように、パラメータα>0の場合、本実施形態によるDRビーム合成は、サイドローブの抑制に加えて、メインローブの広がりをもたらすことになる。プロセス603によって提供され、図6D〜6Iに示されるIDRビーム処理(α=1の場合)は、合成されたDRビームを使用して第1のサンプルビームからメインローブを区分化する(第2のまたは補助のビームと再結合することによって広がらない)ことによってこうしたメインローブの広がりを回避するように働く。第1のサンプルビームからメインローブを区分化するために、本実施形態のプロセス603は、DRビーム(IDR=I+α(I−I))と第2のまたは補助のビーム(I)との間の最小M =φ(IDR)min(|IDR|, |I|)を計算して、図6Dに示すメインローブ広がり成分を与える。このメインローブ広がり成分(M)は、本質的に、第1のサンプルビーム(I)のメインローブでない合成されたDRビームの部分を含む。したがって、メインローブ広がり成分は、DRビームから減算されて、図6Eに示すように、第1のサンプルビームメインローブ成分(IUM=IDR−M)が提供されうる。図6Eの第1のサンプルビームメインローブ成分(IUM)は、サンプルビームの上述した結合によって合成されたDRビーム(IDR)のメインローブより狭いメインローブを提供し、したがって、高品質画像生成を実現するときに利用されうることが認識されるべきである。
【0084】
図6Dおよび図6Eに示す例示的な本実施形態は、サンプルビーム(たとえば、SincビームI)の信号を、2つの成分、すなわち、メインローブ成分(IUM)およびサイドローブ成分(IUS)に効率的に分割(区分化)する。サイドローブ成分信号の大きさ |IUS| は、サンプル点に近い近傍で第1のサンプルビームのサイドローブによって受信されるクラッタ信号を表す。メインローブ成分信号の大きさ |IUM| は、メインローブの幅に従って広がる、サンプル点において第1のサンプルビームのメインローブによって超音波照射されるエリアにおいて受信される信号を表す。信号対クラッタ比は、超音波照射される対象物に応じて、地点ごとに変動する。画像は、こうして、クラッタによって異なるレベルで損傷される(belmish)ことが多い明瞭で損傷のない画像が、第1のサンプルビームのメインローブからの成分信号だけを保持し、そのサイドローブからの成分を削除することによって再構成されうることがもっともらしく思えるが、これは、必ずしもそうではない。サイドローブからの信号の大きさが、メインローブからの信号の大きさに比べて小さい撮像エリアの場合、サイドローブ成分信号を除去することが、画像品質の改善をもたらす可能性があるが、サイドローブからの信号の大きさが、メインローブからの信号の大きさに比べて大きい他のエリアの場合、画像内でサイドローブからの全ての信号を削除することが、画像解釈時の問題をもたらす可能性がある多数の斑点状の「暗い(dark)」エリアを生成す可能性があることが発見された。これは、ビームのサイドローブが、サンプル点に近い拡張したエリアから受信されたエコー信号を統合するからである。メインローブから受信される信号が、そのサイドローブからのものである信号よりずっと小さいサンプル点において、クラッタ成分信号は、対象物の形状を機能的に補間し、それは、画像解釈に役立つ。
【0085】
したがって、メインローブ成分信号と少量のサイドローブ成分信号の重み付けされた和によって形成される新しいビームから得られる信号は、本発明の実施形態によれば好ましい。本発明の実施形態のプロセス603において。メインローブ信号およびサイドローブ信号についての重みは、画像品質を最適化するために、各サンプル点における、メインローブからの信号の大きさ、サイドローブからのクラッタ信号の大きさ、サイドローブ信号対メインローブ信号比、および/またはDRパラメータαに応じてプログラムされ選択される。
【0086】
本実施形態のプロセス603によるさらなる動的分解能処理は、図6F〜6Iによって示され、IDRビームを合成するために、適切に重み付けされたサイドローブ成分として提供されうるようなメインローブおよびサイドローブロルオフが、区分化された第1のサンプルビームメインローブ成分に付加される。図6Fに示すサイドローブ成分信号は、第1のサンプルビーム、たとえばSincビームの信号から区分化される。Sincビームのサイドローブレベルは、α>0のときに、DRビームと比較して比較的ゆっくりであるレート(率)約6db/オクターブで角度(または距離)と共にロールオフすることが知られている。具体的には、ハニングビーム(α=1のときのDRビーム)の場合、サイドローブは、Sincビーム(α=0のときのDRビーム)のレートと比較してずっと早いレート約18db/オクターブで角度と共にロールオフする。成分信号IUS はDRビーム信号IDR の信号とSincビームから区分化されたメインローブ信号IDR との差をとることによって抽出されうる、すなわち、IUS=IDR−IUM
【0087】
図6Gは、そのサイドローブが、減算プロセスの結果としてDRビームの小さな残留メインローブを有するDRビーム(たとえば、α=1のときのハニングビーム)に従って幾何学的に分在するビームに対応するIαS を示す。図6Hおよび図6Iに示すように、パラメータγ(γ≦1)によって減衰され、その後、信号IUM と統合されて、
新しい信号IαN =IUM +γIαS 生成されうる。
αN は、図6Iに示すように、そのローブが、角度(または距離)と共に幾何学的に分布するビーム(IDRビーム)に対応する信号を表す。IDRビームのメインローブの中心は、SincビームIUM のメインローブと同程度に狭いかまたはそれより狭い。メインローブの低い振幅スカート部は、その後、徐、に広がり、DRビームのレートでロールオフするサイドローブと混ざる。γが、本発明の実施形態に従って1より小さくなるように選択されるため、サイドローブは、20×log(γ)dbだけ減衰することになる。たとえば、γ=0.125であるとき、サイドローブは、18dbだけ減衰する。パラメータγは、そのビーム形成パラメータα、異なるタイプの成分信号の大きさ、または最適画像品質についてのそれらの比に適合するように、各サンプル点で選択されうる。
【0088】
先の例は、SincビームのメインローブIUM が、IDRプロセスにおいて、DRビーム(α=1のとき)から区分化されうることを示すことが認識されるべきである。SincビームのメインローブIUM より狭いメインローブもまた、0<α<1のときに他のDRビームから区分化されうる。たとえば、α=0のとき、IDR=Iである。IDRプロセスの場合と同様に、狭いメインローブ成分ビームIαM を示す。さらに、成分信号IαS は、IαS=IDR−IαM を計算することによって区分化されうる。
αS は、図6I(2)に示すように、α=0のときにDRビームのサイドローブに対応する成分信号である。新しいIDRビームはIαN =IUM +γIαS を計算することによって形成されうる。
αS は、そのサイドローブが18dbだけ減衰する新しいビームに対応する信号である。しかし、サイドローブのロールオフ率は、6db/オクターブの(α=0の場合の)DRビームのロールオフ率と同じである、図6I(3)は、対数スケールで、α=0およびα=1のときの、DRビームおよびIDRビームのメインローブ、サイドローブ、サイドローブロルオフ率をそれぞれ示す。
【0089】
0<α<1のときの他のDRビームIαM メインローブに対応する信号が、本発明の実施形態に従って同様に区分化されうることが認識されるべきである。DRビームの区分化されたメインローブの幅は、αと共に増加し、0≦α≦1について、IαM ≦IUM である。0≦α≦1について、区分化されたIDRビームIαM のサイドローブは、20×log(γ)dbだけ減衰し、サイドローブロ−ルオフ率は、0≦α≦1の場合のαと共に6db/オクターブから18db/オクターブまで増大する。
【0090】
合成されたDRビームサイドローブ成分は、実質的に抑制されるが、メインローブのある程度の広がりが存在することが、認識されるべきである。IDRプロセスにおいて、適切にスケーリングされる区分化された成分信号を使用して、DRビームのメインローブが広がらず、そのサイドローブロールオフ率がさらに改吟される。IDR処理パラメータγは、そのメインローブが、回折制限ビームより狭いかまたはそれと同程度に狭い合成されたビームに対応する信合を構成するように選択される。IDRメインローブの大きさは、徐、にロールオフし、そのレベルがパラメータγによって決定されるサイドローブと混ざる。DRビームのサイドローブのピークは、本実施形態に従って、最初に減衰し、その後、IDRビームのサイドローブに従うレートで連続的にロールオフする。こうしたIDRビームは、知覚される画像コントラストおよび細部画像分解能が改善された画像を形成するために利用されうる。
【0091】
メインローブの広がりなしで抑制されたサイドローブを提供する。プロセス603にて合成されたIDRビーム信号は、高品質画像の生成のための超音波撮像システム200によって利用されうる。しかし、本発明の好ましい実施形態は、合成されたビーム特性をさらに改善するために、さらなる動的分解能ビーム合成処理を提供する。したがって、本実施形態による処理は、さらなる動的分解能ビーム合成のためのプロセス604に進む。
【0092】
本実施形態のDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214のXDR処理513のオペレーション中に、合成されたビーム(たとえば、先のIDRビーム)のメインローブ幅は、本発明の好ましい実施形態の拡張型DR(XDR)ビーム合成プロセスによってさらに先鋭化される。ビームは、本発明の実施形態による、よりよいビーム制御のためのXDRプロセスを通して漸進的にまたは反復的に整形される。XDRビーム合成プロセスのビーム先鋭化関数は、処理済みビームのメインローブおよびサイドローブを整形して、極端に狭いメインローブおよび非常に低いサイドローブを有するビームから受信された信号と同様な信号が得られる。たとえば、本実施形態のXDRビーム合成から得られるメインローブは、XDRビームがそこから合成されるサンプルビームを形成するときに実際に使用されるより実質的に大きなトランスデュ一サ開口に対応する幅を有する。
【0093】
図6に示すXDRビームの合成プロセス603は、先鋭化されたメインローブを有するXDR信号を合成するときに使用するための先鋭化関数604−1を生成する。こうした先鋭化関数は、ビームを狭くするために、プロセス605において、メインローブ成分(たとえば、メインローブ605−1)に、好ましくは反復的に適用される。先に論じたIDRビーム合成の場合と同様に、適切に重み付けられたサイドローブ成分(たとえば、サイドローブ605−3)が、メインローブ成分に付加されて、所望のロールオフを有するXDRビーム(たとえば、XDRビーム605’)が合成される。本実施形態の反復的制御606は、プロセス604の先鋭化関数生成およびプロセス605の先鋭化関数適用と連携して働いて、合成されたXDRビームのメインローブが反復的に先鋭化される。たとえば、本実施形態では、nは、プロセス607における出力である、結果として得られる合成されたXDRビーム信号を達成するための、XDR処煙について所望される反復数である。図6に示すXDRビーム処理の各反復は、その反復のXDRビーム605’によって表される、性能向上された新しい合成されたビームを提供する。
【0094】
先鋭化(狭細叱)において、本実施形態のXDRビーム合成プロセスに提供されるビームのメインローブの属性(たとえば、合成されたIDRビームの本実施形熊のメインローブにも対応する、第1の非アポダイズドサンプルビームのメインローブ成分)は、ビーム整形関数を提供するために操作される。本実施形態のビーム整形関数を理解するとき、DRビームが第1のサンプルビームと第2のまたは補助のサンプルビームを結合することによって合成される(たとえば、B(θ)=B(θ)+αA(θ))上記例におけるメインローブの広がりが、第1のサンプルビームのメインローブによって規定される角度間隔内の第2のまたは補助のサンプルビームの大きさが0にされない状況から生じることが認識されるべきである。第1のサンプルビームのサイドローブ成分信号の低減のために、第2のサンプルビームからの信号のαパーセンテージが第1のサンプルビームの信号に加算されるため、第1のサンプルビームのメインローブからの信号成分は、同じパーセンテージだけ、第2のサンプルビームからの信号成分に加算されることになる。たとえば、図3Aに示すように、余弦アポダイズドビーム(本実施形態の第2のまたは補助のビーム)の2重ピークメインローブは、2つの幾何学的にシフトしたSincビームからなり、1つのビームはSincビームメインローブの左にあり、他のビームはSincビームメインローブの右にある。DRビームのメインローブは、見通し方向±θi(|θi |≦θα)で余弦アポダイズドビームの2重ピークメインローブに関して切片を持つことになる。±θα は、DRビームのサイドローブ打ち消しファクタがαであるとき、2θα となるビーム分解能を規定するメインローブのゼロ交差である。αは、本実施形態のDRビームにおいて0と1との間で境界付けされるため、α=0のとき |θ|=πであり、α=1のとき |θ|=2πである。そのため、余弦アポダイズドビームから取得される信号をSincビームの信号と加算することは,|θ|≧θα の領域においでSincビームの信号から受信されるクラッタを低減することになる。Sincビームのメインローブはまた、−θα≦θ≦θαの領域におけるビーム信号の加算の結果として広がる。
【0095】
しかし、余弦アポダイズドビームから受信される信号が、κ倍に増幅される場合、余弦アポダイズドビームとDRビームとの間の交差の場所θi は、利得ファクタκに応じてDRビームのメインローブに沿って上下に移動することになる。利得κが大きくなればなるほど、θi は、主DRビームの中心に近くなる。κがゼロに近づくと、|θi |=θαになる。DRビームの区分化されたメインローブからの信号の大きさが、余弦アポダイズドビームかの増幅された信号こ匹敵し、κが増幅ファクタである場合、κ|I| と |IUM| との交差点は、±θDm に位置することになる。ここで、|θDM |≦πである。増幅ファクタκが高ければ高いほど、±θDm は、原点に近づく。2|θDM |がメインローブの広がりであり、値 |θDM | が小さければ小さいほど分解能が良いことに留意されたい。たとえば、二乗余弦またはハニングビーム(たとえば、第1のサンプルビームがSincビームであり、第2のまたは補助のサンプルビームが余弦アポダイズドビームであり、パラメータがα=1である合成されたDRビーム)は、余弦アポダイズドビームと結合されたSincビームである。したがって、ハニングビームから成分信号を減算することは、(利得が高い(たとえば、κ>1)余弦アポダイズドビームとハニングビームの最小をとることによって計算される)は、先鋭化されたメインローブを有するビームを与える。プロセスは、ハニングビームのメインローブを先鋭化するビーム整形関数を効果的に作る。ハニングビームのメインローブが先鋭化されるため、ハニングビームのサイドローブ構造もまた修正され、非常に狭いメインローブおよび非常に低いサイドローブを有する新しいビームがもたらされ、それにより、画像の細部分解能およびコトラスト分解能が共に改善される。
【0096】
図6J〜6Lは、本実施形態のビーム整形関数を使用するXDRビーム合成を示す。本実施形態のビーム整形関数を提供するとき、XDRビーム合成処理がそれについて提供されるビーム(たとえば、第1のサンプルビーム、合成されたDRビーム、合成されたIDRビーム、または以前の反復合成されたXDRビーム)のメインローブ成分は、図6Jに示すプロセス604のオペレーションを通して2つの成分(たとえば、狭いメインローブ
成分および残留メインローブ成分)に分割される。たとえば、IUM は、図6Kのビーム形関数ψ(θ)などのビーム整形関数を使用して、成分IUM_n(狭いメインローブ成分)とIUM_S(残留メインローブ成分)に分割される。ここで
である。XDRビームは、図6Lに示す成分信号の重み付け加算によってプロセス605にて合成される。たとえば、XDRビームIXDR は、重み付けされた(μ)狭いメインローブ成分(IUM_n)と、重み付けされた(ρ)残留メインローブ成分(IUM_S)と、重み付けされた(γ)サイドローブ成分(I)とを結合することによって形成されうる。ここで、重み付けファクタ(μ、ρ、およびγ)は、所定の基準に基づいて選択されうる。
【0097】
DRビームのピークが余弦アポダイズドビーのヌルと整列するため、ビームのピークは、
のプロセスによって変わらないことになる。
【0098】
そのため、信号 |IUM_n| のピークは、理論的に、信号 |IDR| のピークに等しい、すなわち
である。実装能様において、アポダイゼーションプロセスの数値誤差は、第1のサンプルビームと第2のサンプルビームの微小なミスアライメントをもたらす可能性があり、プロセスビーム |IUM_n| の振幅の減少をもたらす可能性がある。
であるような利得等化のために、スケールファクタμが導入される。最初の反復において、第1のサンプルビーム(Sincビーム)のメインローブに対応する信号IUM は、2つの成分IUM_lとIUM_S_l に分解される。
UM_lがIUM と整列するIUM より狭いビームからの信号であり、IUM_S_l が、IUM_l についてのビームの中心から離れて位置する信号成分であるため、新しいメインローブIN_UM_l は、IUM_l とIUM_S_l を結合することによって形成されうる。すなわち、IN_UM_l =IUM_l +ρIUM_S_l(ρ≦1)である。ρ=1のとき、IN_UM_l =IUMlであり、DRビームのメインローブは変わらない。ρ<1のとき、新しいメインローブIN_UM_l は、ローブの中心が狭いように形成され、ローブの外側スカート部は、ρIUM_S_lの減衰した信号成分によって形成される。新しいメイローブIN_UM_l が、IUM から分解される成分IUM_l +ρIUM_S_lから生成されるため、ローブIN_UM_l とIUM は、同じ角度間隔で広がる。信号IN_UM_l のビームは、DRビームIαS のサイドローブに連続して接続されて広がる。
【0099】
上記から
を計算することによって、XDRビームが形成されうることが認識されうる。XDRプロセスは、プロセッサにて形成されるXDRビームをn回の間、供給することによって反復され、ついには、n回反復されたXDRビームにおいて、満足のいくメインローブが生成される。
各反復におけるスケールパラメータμは、一般性を失うことなく、パラメータ、ρを正規化することによって1に設定されうる。パラメータγは、各反復において異なるように設定されうる。しかし、γはまた、全ての反復における計算を簡単にするために同じに設定されうる。XDRビームのメインローブが、各反復において分割されると、新しいメインローブのスカート部における信号の大きさが、パラメータρに従って減衰して、スカート部のレベルを、新しいメインローブから20×log(ρ)dbに設定する。
【0100】
図6L(1)〜6L(4)を用いて、本発明の実施形態によるプロセス604および605によって提供されるXDRプロセスの1.回の反復で、XDRビームがどのように形成されるかを説明する。処理例について使用されるパラメータは、次の通りに設定される。α=1、κ=2、μ=1、ρ=±0.125、およびγ=0.015625である。第1のサンプルビーム(Sincビーム)のメインローブに対応する信号IUM は、図6L(1)に示すIDRプロセスにおいて区分化される。κ=2と設定することにより、第2のサンプルビーム(余弦アポダイズドビーム)の利得を上げることによって、信号IUM は、2つの成分IUM_l とIUM_S_l に分解される。ここで、IUM =IUM_l+IUM_S_l である。これらの2つの信号成分は、その後、結合され、IN_UM_l 、すなわち、IUM_lのビームによって構築される狭いメインローブと、IUM_S_lのローブに対応する減衰したスカート部によって構成される新しいメインローブに対応する信号になる。ローブ減衰係数ρは、0.125に設定され、それは、新しいメインローブが、過渡的にロールオフし18dbで下がり、そこで、スカート部がサイドローブと混ざり始めることを示唆する。ρはまた、図6L(2)に示すように強制的にメインローブにゼロを交差させるために、負値に設定されうる。負の最初のサイドローブが、対象物の境界を性能向上し、ある撮像アプリケーションについて組織識別の改善をもたらすことがわかった。
XDR_l ビームの遠いサイドローブは、ファクタγ=0.015625によって、すなわち36dbだけ減衰するDRビームIαS の区分化されたサイドローブと混ざる。XDRビーム、第1のサンプルビーム(α=0、IDR_α=1 の場合のSincビームまたはDRビーム)、および、α=1の場合のDRビームIDR_α=1 図6L(3)に重ね合わされる。図6L(4)は、対数スケールでXDRビームをプロットする。説明のように、XDRビームのメインローブは、Sincビームよりずっと狭く、サイドローブレベルは、DRビームより実質的に低く、例では、18db/オクターブでロールオフする。プロセス604および605のオペレーションは、合成されたXDKビームのメインローブを漸進的に狭くするために操り返されうる。
【0101】
先に作成されたIDRビームの場合と同様に、上記XDRプロセスのオペレーションによって区分化されたメインローブ成分は、狭いビームを提供する。しかし、本発明の実施形態は、重み付けされた(たとえば、0<ρ<1および0<γ<1)残留メインローブ成分とサイドローブ成分を結合して、合成されるXDRビームに関して所望のロールオフおよびサイドローブレベルを提供するように働く。
【0102】
異なるビーム特性を有する新しい成分信号がまた、本明細書の原理に基づいて区分化される異なる成分信号を算術的に結合することによって生成されうることが、認識されるべきである。たとえば、図6Dに示す区分化された成分信号M は、
により生成される成分信号P と結合されて,新しい成分信号IUMM が得られうる。ここで、IUMM =M +P である。
UMM はハニングメインローブより小さいが、IUM 、全てのαについてのIαM などの他の区分化されたメインローブからの信号、および、IXDR は、IXDR_M のメインローブからの信号より大きい、メインローブ広がりに対応する成分信号である。このプロセスは、図15A〜15Cにグラフで示される。それぞれが異なるビーム幅の区分化されたメインローブから取得される3つの成分IUMM、IUM、IXDR_M(IUMM >IUM >IXDR_M )は、図15Dで重ね合わされる。信号IS_MM は、信号IUMMと信号IUM との差をとることによって得られ、図15Eに示すサイドローブ成分ビームから取得される信号を表す。同様に、信号IS_M は、IUM とIXDR_M との差をとることによって区分化することができ、図15Eに示すサイドローブ成分ビームから取得される信号と同等である新しい信号が得られうる。たとえば、信号
に対応するビームが、図15Gに示される。整形されたメインローブICM は、所望のロールオフを有する他のサイドローブ成分信号と結合されて、所望のビームの信号が得られうる。
【0103】
本発明の実施形態のDR、IDR、およびXDR信号区分化技法は、Sincビーム、余弦アポダイズドビーム、ハニングビーム、および他のビームの中での、狭い帯域(band)の幾何学的および形態学的特性による成分ビームの合成および分解に基づく。しかし、本明細書の概念は、広帯域信号が、一般的な撮像アプリケーションについてビーム形成され処理されるときに同様に有効であることが示されうる。図7A〜7Cは、本発明のビーム合成の結果を示すための、上述した概念による、サンプルビームおよびサンプルビームから合成されるXDRビームの例示的な時空間プロファイルのグラフを示す。32個のトランスデューサ素子のアレイは、2MHzの帯域幅を有する3.5MHzに中心にしたガウスパルスによって励起される。60mmの点に合焦させるために、各素子によって受信される信号に適切な時間遅延および異なる重みを適用すると、点は、ビームの特性に応じて異なるように広がる。図7Aのサンプルビーム71は、アポダイズドされない第1のサンプルビーム(たとえば、Sincビーム)を含み、図7Bの第2のまたは補助のサンブルビーム72は、アポダイズドビーム(たとえば、ハニングビームまたは二乗余弦アポダイズドビーム)を含み、XDRビーム73は、本発明の概念に従って第1のサンプルビームおよび第2のまたは補助のサンプルビームを使用して合成される。結果として得られるXDRビーム73のメインローブが、図7Aのサンプルビーム71のメインローブより狭く、サイドローブがほとんどないかまたは全くないことを図7Cは示す。¥同様に、図7CのXDRビーム73のメインローブは、図7Bのサンプルビーム72(アポダイズドビーム)のメインローブより狭い。
【0104】
図8は、さらに、1次元処理に適用される本発明の概念の例を示す。グラフ800は、Sincビーム801、ハニングビーム802、および本明細書で教示される概念によって生成される合成されたビーム803を示す。具体的には、グラフ800は、−0.35〜0.25の正規化された周波数から広がった10個のシヌソイドa0〜a9を含む信号のスペクトル成分を示すフーリエスペクトルである。これらの信号のダイナミックレンジは、140dBであり、0dBの信号a3および−140dBの信号a7を有する。33dBの一様に分布したノイズが、試験信号に付加される。見てわかるように、窓関数を使用することなく、試験信号に関してフーリエ変換が施される場合、強いスペクトル成分a1、a2、a3、a4、およびa5だけが分解される。他の信号a6、a7、a8、a9、およびa0は、これらの強い成分の複合サイドローブによって損なわれる。各スペクトル成分のスペクトルピークは、そのサイドローブが6dB/オクターブのレートでロールオフするSinc関数のメインローブを表す。強い成分のサイドローブは、周波数を埋没させ、a0、a9、a8、a6、および、a7の検出を可能にしない。信号がハニングアポダイズ(Hanning apodized)されると、総合サイドローブレベルは、低くなり、より速いレートまたは18dB/オクターブでロールホフする。結果として、さらなるa6の信号が分解される。しかし、ハニングビーム802によって示されるように、主ビームは広がり、スペクトル成分a7、a8、a9、および、a0はやはり分解されない。
【0105】
余弦アポダイズドフーリエスペクトルは、各スペクトル成分を、その2つの最も近接する近傍スペクトル成分の平均によって置換することによって得られうる。非アポダイズド成分および余弦アポダイズド成分を使用して、DR/IDR/XDRスペクトルが計算されうる。クラッタ打ち消しパラメータαは、フーリエスペクトル内の全てのスペクトル成分について計算される。全てのスペクトル成分のサイドローブは、その後、DRプロセスから抑制され、それに続いて、本実施形態のXDRプロセスにおいて、μ=1、γ=1、ρ=1、およびκ=2に設定される。合成されたビーム803によって示されるように、そのレベルがノイズに埋め込まれる成分、a7、a8、およびa0を含む全てのスペクトル成分が分解される。
【0106】
図9は、異なるパラメータのセットを使用して処理された、Sincビーム905、ハニングビーム906、DRビーム901、XDR1ビーム902、XDR2ビーム903、およびXDR3ビーム904を示す。Sincビーム905はアポダノズされず。ハニングビーム906はアポダイズされる。DRビーム901は、先に論じたDR処理だけを使用することによって生じる。本明細書で論じるXDRプロセスを使用することによって、XDR1ビーム902、XDR2ビーム903、およびXDR3ビーム904が生成されうる。
【0107】
図10は、Sincビーム1001、ハニングビーム1002、および余弦アポダイズドビーム1003を示す。余弦アポダイズドビームは、パワーレベルを制御ずるために案内ビームとして使用されることに留意されたい。余弦アポダイズドビームは、システムがSincビームをどこでカットすべきかを検出するために、利得を上下に移動させるために使用される。Sincビームおよび余弦アポダイズドビームの最小は、主ビームがゼロ軸をどこで交差するかを決定する。
【0108】
上記から、DRビーム信号が異なる成分信号に分解される非線形および線形信号処理の適用などによって、XDRビーム合成プロセスのオペレーションが超削皮ビームのメインローブをさらに狭細化する、かつ/または、サイドローブがさらに低減されることが認識されうる。これらの成分信号は、その後、そのメインローブが狭く、そのサイドローブが低い仮想ビームに対応する新しいビーム信号(XDRビーム信号)を合成するために使用されうる。あるいは、本実施形態のXDRビームは、本質的に上述のDRビームを形成するのではなく、むしろ、αをある定数(たとえば、1または0.5)に維持することなどによって、図6のXDRプロセスに直接進むことによって合成されうる。
【0109】
先のDR/IDR/XDRビーム合成技法は、多数の異なる撮像技法で実装されることが認識されるべきである。たとえば、DR/IDR/XDRビーム合成技法は、線形走査変換、空間合成などに関して実装されうる。マルチビーム空間合成の場合、空間変位したビームからの検出信号は、コヒーレントスペックルを低減するために統合されうる。分解能を高めるために、合成プロセスが起こる前に、各見通し方向からのDR/IDR/XDR信号を得るために非アポダイズドビームおよびハニングビームが同時に形成されうる。
【0110】
本実施形態が、1次元トランスデューサアレイを参照して上述されたが、本発明の概念が多次元トランスデューサアレイに適用可能であることが認識されるべきである。たとえば、DR/IDR/XDRビーム合成の概念は、2次元(2D)ビーム形成に直接適用されうる。
【0111】
本発明の実施形態による、DR/IDR/XDRビーム合成を提供することを述べたが、DR、IDR、およびXDRビーム合成の機能および実装態様に関する詳細は以下に述べられる。以下で述べる機能および実装態様は、本発明の実施形態によるDR、IDR、および/またはXDRビーム合成を提供するための、上述したシステムおよび方法で利用されうることが認識されるべきである。
【0112】
<ビーム分解およびDR/IDR/XDRビーム合成>
本発明の実施形態によるオペレーション中に、特定の場所でDRビームから取得される信号は、各見通し方向において形成ビームのパワーを最小にすることによって計算されうる。ビームのパワーが各ビーム場所で変化するため、DRビームのメインローブ幅およびサインローブレベルは、本発明の実施形態によるパワー最小化基準に従って最適化される。DRビーム、第1のサンプルビーム、および第2のサンプルビームの幾何学的および形態学的特性に基づいて、異なる成分のメインローブビームおよびサイドローブビームに対応する信号は区分化されうる。これらの成分ビームは、さらに分解され、所望の特性を有する新しいビームは、その後、算術的に操作されたこれらの成分ビームによって合成される。それぞれの新しいビームに対応する信号は、本発明の実施形態のDR、IDRおよびXDRビーム分解および合成プロセスに従って計算される。分解された成分ビームを使用して所望の特性を有する合成されたビームに対応する信号を構築するプロセスは、図6のプロセス601、602、603、604、および605において本発明の実施形態に従って実装される。これらのプロセスは図3A図6A〜6L(4)、および図15A〜15Gに示す、第1のサンプルビーム、第2のサンプルビーム、非アポダイズドビーム(α=0)、ハニングアポダイズドビーム(α=1)、他のα(0<α<1)のDRビームの組合せの信号を使用してより詳細にグラフで表現される。
【0113】
本発明の実施形態のビーム分解および合成プロセスは、ソフトウェアおよび/またはハードウェア構成で実装されうる。こうしたビーム分解および合成プロセスは、図5Aおよび図5Bに示すようにQBP(直交バンドパス式)フィルタリングの前かまたはポストQBPフィルタリングの前に実装されうる。図5Bに基づく方法は、第1および第2のビームから取得された信号がQBPフィルタによってフィルタリングされた後、プロセスがノイズの存在下でより頑健であるため好ましい。
【0114】
ビーム分解は、本明細書で述べるように、本発明の実施形態による動的分解能ビーム合成で利用されうる。本発明の実施形態によるサンプルビーム分解および合成のさらなるより詳細な例において、IおよびIが、角度的にφで広がっているSincビームBおよび余弦アポダイズドビームBを使用することによって受信される、2つの取得済みサンプル信号(たとえば、散乱体の分布からのエコーO(φ))であるとする。受信信号の振幅は、全ての角度方向において全てのビームの振幅によって重み付けされる、超音波照射された散乱体からの全てのエコーの統合であるため、これらのサンプル信号は、I(z,θ)=∫O(z,θ−φ)B(z,θ)dφおよびI(z,θ)=∫O(z,θ−φ)B(z,θ)dφとして表されることができ、したがって、新しいビームBからの信号は、以下の式に従って信号IとI加算することによって計算されうる。
【0115】
先に論じたように、余弦アポダイズドビームから受信される信号は、新しい信号を得るために、Sincビームから受信される信号と結合されうる。この新しい信号は、そのメインローブを幅広化するというトレードオフを行うことによる低サイドローブレベルの新しいビームから事実上受信される、たとえば、Iα =I+αIとする、信号Iα に関して、その対応するビームBαの幾何学的および形態学的特性はパラメータαと共に変動する。一般に、メインローブはパラメータαと共に単調に幅広化し、一方、αが0以上ありかつ1以下である、0<α<1のとき、サイドローブレベルは単調に減少し、サイドローブロールオフ率は単調に増加する。
【0116】
αの異なる値(0,0.25,0.5,1)についてのビーム特性は図16Aおよび図16Bを使用して示される。α=1のとき、α=1,Iα =I=I+Iであり、ここで、Iはハニングビーム(二乗余弦アポダイズドビーム)である。α=0のとき、α=0,Iα =I=Iであり、ここで、IはSincビームである。ハニングビームにおいて、最初のサイドローブは、Sincビームの最初のサイドローブより−18db低い。ハニングサイドローブは、18db/オクターブの速いレートでロールオフし、一方、Sincサイドローブは、6db/オクターブのレートでロールオフする。しかし、ハニングビームのメインローブは、Sincビームのメインローブより50%幅広であることになる。
【0117】
図16Cに示すように、θ>±πのとき、Sincビームおよび余弦アポダイズドビームは逆位相で振動することが認識されるべきである。そのため、±πより大きい角度場所におけるBα =B+αBのプロセスにおいて、Sincビームのサイドローブの大きさの打ち消しが、「>±π」の全ての角度場所で起こる。しかし、Sincビームの第1のサイドローブが位置する±π<θ<±2πの角度場所において、サイドローブ打ち消しプロセスは、ゼロ交差点のシフトおよびBα ビームのメインローブの広がりをもたらす。
【0118】
同様に図16Cに示すように、Sincビームの最初のゼロ交差は、±πに位置する。すなわち、I(±π)=0である。信号を得るために、ビームBα がBα =B+αBに従って形成されるとき、Bαビームの形成に対する場所±πのSincビームからの寄与が存在しないため、±πにおけるIαビームの大きさは、αによってスケーリングされる余弦アポダイズドビームの大きさに等しくなる、すなわち、Iα(±π)=αI(±π)である。指示方向において、Bαビームの利得は最大になり、一方、余弦アポダイズドビームの利得は最小になる。すなわち、任意のαについて、0<±πの角度場所においてαBの利得より常に大きい。0≦α≦1のとき、|αB|≦|B|、したがって、α|I|≦|I| である。したがって、Iα とIの最小がとられる場合、
である。
【0119】
n_α が、2つのビームBα とBとの間の、全ての角度θにおいて絶対最小利得をとることによって形成される最小ビームから受信される信号である場合、θα は、ビームBおよびBα が交差する角度であり、θα≦πである。α=0、α=0.25、α=0.5、およびα=1それぞれについて、図16Cに示すC、C0.25、C0.5、Cは、ビームBとBα との間の交差点であり、Z、Z0.25、Z0.5、Zは、ビームBα との間のゼロ交差点である。αが0から1に増加するにつれて、ゼロ交差が、±πから±2πに漸進的に移動することに留意されたい。ビームBα のメインローブは、パラメータαが増加するにつれて広がり、一方、サイロローブレベルは減少する。
【0120】
信号Mn_α の位相ψ(Mn_α)を、ビームBα から受信される信号の信号と同じに、すなわち、ψ(Mn_α)=ψ(Iα)に設定すると、
である。ここで、ψ(Iα)は信号Iα の位相である。
【0121】
ビームBαとBはθαで交差するため、Bα(θα)=B(θα)である。同様に、ビーム指示方向において、Bα(0)=BαMAX かつBα(0)=0である。Mn_α が、Iαから減算されて、0≦α≦1について、新しい信号Iαm_n_αすなわち
が得られる。
【0122】
αm_n_αは、その振幅がθ=0で最大になる信号であり、Iαm_n_αの大きさは、±θα においてそのピークから0に向かって対称に広がる、Iα=Iαm_n_α+Mn_αの演算は、信号Iα が、2つの成分Iαm_n_αとMn_αに分解されることを示唆する。成分信号Iαm_n_αは、−θα≦θ≦θα の領域内に拘束される成分ビームΨαm_n_αに対応する信号を表す。信号Iαm_n_αのピークは、Iαのピークに整列する。成分信号Mn_αは、θ<−θαおよびθ>−θαの領域で、ビームBαのサイドローブ構造を保持する成分ビームΨαm_n_αに対応するIαの残差信号である。
【0123】
Sincビームのメインローブは、−π≦θ≦πの領域内に角度的に境界付けられる。θα≦|π|であるため、成分ビームΨαm_n_α(信号Iαm_n_α)のビーム幅は、Sincビームのビーム幅より狭い。さらに、Ψαm_n_α(0)=B(0)であり、ビームΨαm_n_αの最大利得およびその指示方向もまた変わらない。
【0124】
SincビームBUMおよびビームΨαm_n_αα=0=Ψαm_n_0のメインローブは、図16Dで重ね合わされる。新しい成分ビームΨαm_n_0は、Ψαm_n_0=BUM−ΨαS_n_0に従ってSincビームBUMのメインローブから分解されうる。ΨαS_n_0は、そのピークが、成分ビームΨαm_n_0のヌルと整列する2重ローブからなる残差メインローブビームである。成分ビームΨαm_n_0によって受信され信号の振幅およびパワーを最小にすることによって、分解能は、漸近的にビームΨαm_n_0に近づくことになる。
【0125】
Sincビームのメインローブは、以下のプロセスに従って分割されうることが認識されるべきである。図16Eは、ビームBとBが加算されて、ビームBα=1、ハニングビームが形成されることを示す。B(π)=0であるため、Bα=1(π)=B(π)=0である。そのため、ビームBMn_1がビームBα=1の振幅とBの振幅との間で最小をとることによって生成されうる。BMn_1の位相を、ビームBα=1の位相と同じに割り当てることによって、ビームBMn_1の大きさは、θ≦πのとき、Bの大きさと同じであることになる。θ>πの領域において、ビームBMn_1の大きさは、ビームBα=1の大きさと同じであることになる。そのため、SincビームBUMのメインローブは、その後、BUM=Bα=1−BMn_1Ψαm_n_0によって区分化され、Sincビームのサイドローブは、BUS=B−BUM=B−Ψαm_n_1によってSincビームBからメインローブBUMを除去することによって区分化されうる。
【0126】
これらのビームからの信号は、以下のプロセスに従って事実上計算される。パラメータαを1に設定する(α=1)と、I=I+Iである。したがって、
である。
【0127】
n_1 の位相は、Mn_1=ψ(I)Mn_1とすることによって、ベクトルIと同じになるように設定される。I−Mn_1の減算プロセスにおいて、ビームMn_1からの信号量が、Iの信号から除去されるとき、ヌルが、θ=±πに設置されることになる。Sincビームのメインローブの幅が、−πと+πとの間の角度領域によって規定されるため、Sincビームのメインローブが区分化される。
UM=I−Mn_1
【0128】
Sincビームのサイドローブは、IUS =I−IUMによって得られ、Iαのサイドローブは、IαS =Iα −IUMによって得られうる。DRi信号は、異なるαを使用して最小のクラッタパワーを有する異なるサンプル場所で異なるビームから受信される信号である。すなわち、IDR_i =Iαである。
αSおよびIUMが与えられると、本発明の実施形態のDRビームは、IDR=IUM+γIαS(γ≦1)であるように、メインローブIUMをIαSの異なる量と加算することによって合成されうる。
【0129】
結果が示すところによれば、DRビーム信号IDRに関連する合成されたDRビームのビ−ム幅は、回折制限Sincビームと同じであり、一方、DRビーム信号γIαSに関連する合成されたDRビームのサイドローブは、画像内の全ての信号についてSincビームおよびサイドローブの最小パワービームIαより低い。
【0130】
DRビームからの信号IDRは、2つの信号、すなわち、サイドローブIαSまたは減少したサイドローブγIαSからの成分信号、および、メインローブから受信される成分信号を含む。サイドローブIαS(またはγIαS)からの信号を不変に保って、区分化された主ビーム|IUM| からの成分信号は、そのビーム幅が|ImM| からのビーム幅よりずっと狭い新しいメインローブIUM_mに対応する少なくとも1つの成分、および、IUMのメインローブから分割される新しいサイドローブになるように残差信号から分解される他の成分を含む成分信号にさらに分割されうる。所望の方向からのビームは、信号IUMが受信されるメインローブを形成する。同じ方向からは、余弦アポダイズドビームのヌルの場所のために、信号は、Iから全く受信されることができない。換言すれば、事実上の所望の方向(たとえば、見通し方向)からの信号は、I内に全く存在しない。
【0131】
増幅ファクタκがIに適用されると、望ましくない場所からの信号だけが増幅され、所望の方向からの信号はほとんどない。そのため、2つの信号|IUM|とκ|I|の大きさの差は、κが大きいときに、そのメイローブが実質上狭いビームからの信号を表す。この特性は、図11に示される。
【0132】
区分化されたメインローブがBμM(θ)であり、BμM(θ)によって受信される信号が、
とする。
UMは、対象物が、θ=−πからθ=πまでの、BμM(θ)の重み分布に従って重み付け加算されるときに受信される信号を表す。ここで、BμM(θ≦−π)=0、BμM(θ≧−π)=0である。信号IUMに対応するビームの見通し方向において、bは、ビームBμM(θ)の最大利得であり、一方、同じ見通し方向において、余弦アポダイズドビームからの信号は、I(0)=0である。
【0133】
余弦アポダイズドビームから取得される信号を増幅ファクタκで増幅することは、余弦アポダイズドビームに利得κを提供することと事実上同等である。余弦アポダイズドビームから受信される信号が、Sincビームの信号から減算される場合、ビーム整形関数によって整形されたメインローブを有する新しいビームをもたらす。このビーム整形関数は、利得κの関数である。こうしたビーム整形関数は、メインローブを整形するだけでなく、サイドローブの構造を修正し、したがって、そのレベルを同時に低減する。余弦アポダイズドビームが、θ=±θでSincビームに交差することになるため、交差点において、BμM(θ)=B(θ)である。上記から、|IDR|の大きさとγ|I|の大きさの最小値を計算することによって抽出された、成分信号Mn_mは、以下の特性を有する。
であり、ここで、
であり、ψ(IUM)は、信号IUMの位相である。また、
であり、ここで、ψ(IαS)は、信号IαSの位相である。そのため、成分信号Mn_mおよびMn_Sは、増幅された余弦アポダイズドビームがDRビームのメインローブおよびサイドローブと相互作用する方法およびビーム増幅ファクタκにおけるこれらの成分ビームの形態に応じてその特性を変える。
【0134】
n_S=ψ(IαS)|IαS|であるように十分に大きくκが選択される場合を仮定する。MがIDRから減算される場合、サイドローブ|IαS|から受信される全ての信号が除去されることになる。同様に、減算プロセスの結果として、新しいヌルは、ビームIUMκ|I|が交差する±θで生成される(図11に示すように、BμM(θ)=B(θ))。これは、DRビームIUMのメインローブからの(ビームのメインローブが境界付けされる−π≧θ≧πの領域の)信号を、2つの新しい信号成分に分割することと事実上同等である。1つの信号成分は、θ−m<θ<θかつθ≦πによって境界付けされる新しく形成され狭細化されたメインローブIUM_mからのものであり、他のIUM_Sは、π≧θ>θおよび−π≦θ<−θの領域にある新しく形成された2つのサイドローブからのものである。
【0135】
より狭いメインローブのビームから取得される信号を使用して面像を構築することは、画像品質を改善する。しかし、減算プロセスにおいて区分化されたサイドローブから成分信号を完全に削除することは、画像品質を劣化させる穴を画像内に導入する。DRビームから減算される成分信号の量のよりよい制御のために、パラメータη≦1が、本実施形態に従って導入され、ηMは、所望の高品質ビームを合成するための、DRビームから除去される信号|M|の小部分を示す。
【0136】
ある量の信号ηMが、DRビームIUMから受信される信号から減算されるため、新しい信号は、ビーム整形関数によって整形されたメインローブを有するビームから受信されるのと事実上同等である。この処理済みビームのメインローブは、より狭いメインローブをもたらすように整形され、サイドローブは、この関数によって低減される。たとえば、
である。上記は、整形関数Ψ(θ)によって整形されるメインローブ|IUM|が、領域|θ|<θで新しいメインローブIUM_mをもたらすことを示すことに留意されたい。この新しいメインローブは、
と表せうる。SincビームBμM(θ)のメインローブの利得が、|θ|<θのときゼロでないため、
であり、ここで、BUM_m(θ)=Ψ(θ)BUM(θ)かつΨ(θ)={1−ηκ(BC(θ)/BUM(θ))}である。これは、ビーム交差点θを規定する領域|θ|<θにおいて、主ビームが、余弦アポダイズドビームの利得とSincビームの利得の比に従って整形されることを示す。整形されたビームの形態は、パラメータηおよびκに依存することになる。
【0137】
上記は、DRビームのメインローブが、|θ|<θのときに、ビーム整形関数Ψ(θ)(図12にグラフで示す)によって修正されることを示す。本実施形態の整形関数Ψ(θ)は以下の特性を有する。
1.B(0)=0であるため、Ψ(0)=1である。換言すれば、所望の見通し方向においてビーム利得が、最大になり信号処理中に変わらない。
2.ηおよびκが共にゼロであるとき、ビームの形態は、DRビームと同じであり、全てのθについてΨ(θ)=1である。
3.メインローブ領域においてB(θ)がBμM(θ)より小さいため、|θ|<θのとき、Ψ(0)<1である。したがって、ビームBμM_m(θ)は、ビームBμM(θ)より常に狭い。
4.B(θ)およびビームBμM(θ)が共に、ビーム見通し方向に対称であるため、ビーム整形関数は対称関数である。
【0138】
ビーム整形関数Ψ(θ)は、領域|θ|<θでビームの利得を変える。整形ビームの量および形態は、パラメータηおよびκに依存することになる。ηおよびκが共にゼロであるとき、B(θ)およびBμM(θ)が共に、ビーム見通し方向に対称であるため、ビーム整形関数Ψ(θ)は対称関数である。|θ|<πであるため、BμM(θ)のビーム幅はBμM(θ)のビーム幅より常に狭い。
【0139】
先の成分信号Mn_mおよびMn_Sは、増幅された余弦アポダイズドビームがDRビームのメインローブおよびサイドローブと相互作用する方法および増幅ファクタκにおけるこれらの成分ビームの形態に応じて変動する。増幅ファクタκが小さいとき、±θの場所は±πに近い。そのため、処理されるビームのメインローブは、大きな増幅ファクタκを有する処理されるビームからのメインローブと比較して比較的狭いことになる。増幅ファクタκが小さいとき、余弦アポダイズドビームとDRビームのサイドローブとの間の相互作用は、より複雑になる。処理されるビームのサイドローブの形態は、DRビームのサイドローブ|IαS|の相対的振幅および増幅ファクタが適用された後の余弦アポダイズドビームのサイドローブκ|I|の大きさに依存することになる。その理由は,成分|Mn_S|からの信号が、好ましくは、DRビームと同相に設定され、その大きさが、2つの信号|IαS|とκ|I|の小さい方を表すからである。したがって、|Mn_S|が、DRビームから減算されると、サイドローブの信号は、常に小さいことになり、サイドローブの抑制をもたらす。
【0140】
成分信号を区分化するための減算プロセスは、減数信号と被減数信号の両方の位相が同一に維持されるべきであることを提案する。信号の大きさだけが対象である撮像アプリケーションの場合、減算プロセスは、大きさだけのオペレーションの実装態様において同様
に有効である。この場合、減数信号と被減数信号の両方の信号の符号が同一に維持されることが所望される。換言すれば、DR/XDRプロセスにおいて、ψ(Iα)の任意のオペレーションが sign(Iα)で置換される。たとえば、ビーム形成された信号が、直交バンドパス処理され、実数および虚数データストリームにデシメートされた後、アルゴリズムが、ビーム形成された信号を処理するために実装されるとき、ψ(Iα)が
で置換される。この状況では、real(Iα)は、信号(Iα)の実数部を表し、imag(Iα)は、信号の虚数部である。そうすることによって、DR/XDRプロセスは、バンドパス処理されたデータの実数部および虚数部に別々に作用する。処理される信号成分はまた、2つの部分、すなわち、実数部real(I)および、虚数部imag(I)を含むことになる。その後、処理される信号の実数部および虚数部が、再結合されてI=real(Iα)+i*imag(Iα)になる。信号Iが、その後、検出され、圧縮され、走査変換されて、結果として得られる画像ビデオになる。
【0141】
2Dグレイスケール撮像だけのアフリケーションの場合、しかし、信号の位相は、DR/IDR/XDRプロセスにおいて無視されうる。この場合、信号の大きさだけが、DR/IDR/XDRプロセスにおいて必要とされる。さらに、XDRプロセスにおいて、信号の大きさを処理する代わりに、信号パワーが、計算を低減するために使用されうる。分割および検出プロセスが、本実施形態のDRプロセスに組込まれるため、計算コストが、比較的高い可能性がある。低コスト実装の場合、DRプロセスは、省略され、性能をコストまたは速度と交換する。
【0142】
アルゴリズムはまた、信号が直交バンドパス処理される前に実装されうる。その後、信号減算プロセスにおいて、効果的な成分信号区分化のために、ψ(IRF)は、sign(IRF)によって置換される。
【0143】
先に述べたように、Sincビームのメインローブから受信される信号は、κ=1のときκ|I|および|I|を処理することによって区分化されるIUMとすることができる。その後IUMは、κ>1に設定することによって信号κ|I|および|IUM|を処理することによってさらに分割されうる。κが、1より小さな値に設定される、たとえばκ=0.22225に設定されると、メインローブサイズがハニングビームにほぼ等しいビームが形成されうる。このより幅広のメインローブは、先に述べたプロセスを使用してさらに分割されうる。新しいビームは、その後、異なる成分信号を用いて合成されうる。
【0144】
DRビームから得られる信号から先の成分信号を除去することは、ビーム先鋭化関数を効果的に生成する。この関数数は、処理されるビームのメインローブを先鋭化し、サイドローブを低減する。図13Aは、κ=2を使用し、残留メインローブを低減するために、ρ=0.0625に設定し、この場合IのサイドローブであるDRビームのサイドローブを低減するためにγ=0.125に設定してメイローブが分割されるのを示す。結果として信号I=μIn_m+ρIn_S+γIμSおよびその対応するビームは、図13Bに示される。メインローブの狭細化およびサイドローブの減衰によってアーチファクトの低減が可能になるため、目標の対象物をオーパサンブリングすることが有利であり、それにより、現在可能であるより先鋭な表示画像が達成されることに留意することが重要である。
【0145】
DRビームと、異なる増幅ファクタの増幅済み余弦アポタツズドビームとの間で最小信号をとり、最小信号の位相をDRビーム同相になるように設定するプロセスが、狭い幅の所望のメインローブと所望の低サイドローブレベルを有するビームに対応する信号を得るために、幾度も適用されうることが認識されるべきである。すなわち、異なる増幅ファクタκ、サイドローブ低減パラメータγ、およびビーム整形パラメータηを使用して、信号を成分に区分化し、ビームを整形するXDRビーム合成プロセスは、所望のメインローブおよびサイドローブ特性を有する新しい処理済みビームを得るために、処理されるビームに反復して適用されうる。これらの特性は、撮像プロセスにおいて細部分解能、コントラスト分解能、およびダイナミックレンジなどの撮像パラメータに従って規定されうる。異なる処理パラメータを用いた10反復後のビームが図14に示される。
【0146】
さらなるサイドローブレベル制御は、所望される場合、メインローブの区分化された残留サイドローブを減衰させる(たとえば、1より小さい減衰ファクタで乗算する)ことによって達成されうる。たとえばDRおよびXDRプロセスの利得ファクタおよび減衰ファクタはまた、全てのサンプルにおけるサイドローブ・のパワーに適合するためにαの関数として設定されうる。
【0147】
上述した解析は、Sincビーム、余弦アポダイズドピーム、ハニングビーム、および他のビームの狭帯域定式化の中の幾何学的特性に基づく。しかし、本発明の概念は、一般
的な撮像アプリケーションについて広帯域信号がビーム形成され処理されるときに同様に有効であることが証明され実験的に示されうる。さらに、その概念は、スペクトル解析、2次元アレイビーム形成、複数ビーム空間合成、およびマルチビーム並行ビーム形成に直接適用されうる。
【0148】
異なる結果を達成するために、本明細書のDR/IDR/XDR技法の実装態様の変形を使用することが可能であることに留意されたい。たとえば、ベクトル形成は、実数部と虚数部によって表されてもよく、DR、IDR、およびXDRは、実数部および虚数部において別々に処理されうる。位相を不変に維持することは、実数部の符号または虚数部の符号を不変に維持することと同等である。RF領域における大きさだけの処理は、位相を不変に維持する代わりに、信号の符号を不変に維持することによって達成されうる。
【0149】
利得および減衰ファクタを適用するかあるいは利得または減衰を数学的関数として表すという異なるシーケンスが、所望される場合に達成されうる。定数α(任意のα≦1)についてビームを形成することに統いて、分解能向上およびサイドローブ抑制のためのXDRプロセスが行われる。2つのビームを使用して、ある実施形態は、成分ビームまたは成分信号を区分化するためにmin(前記「min」参照)を適用し、その後、新しいビームを構築するための利得および減衰ファクタを使用して、新しいビームを合成するために成分信号を合成しうる。
【0150】
本実施形態では、新しい高性能ビームに到達するために、複数の利得および減衰ファクタを用いて新しいビームを再帰的に形成しうる。そのため、その概念は、高次元ビーム形成に適用される。たとえば、
【0151】
<例示的なDR/IDR/XDRビーム合成アルゴリズム>
上述した本発明の概念を理解するのを補助するために、図2A図2B図5A、および図5BのDR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ214によって実装されうる例示的なDR/IDK/XDRビーム合成アルゴリズムが以下に提供される。以下のアルゴリズムが、本発明の概念によるDR/IDK/XDRビーム合成を提供するように働くアルゴリズムの一例に過ぎないことが認識されるべきである。
【0152】
【0153】
【0154】
再び図6を参照して、深さzおけるn番目のSincビームおよび余弦アホダイズドビームからの信号として先の例示的な方法を実装するとき、I(n, zn) およびI(n, zn)がプロセス60lにて取得され、ビーム形成パラメータαが.その後、パワー|Iα|=|I+αI|が最小にされる基準に従って、プロセス62にて計算され、DRビームIαDR=Iαがプロセス603にて形成される。
【0155】
パラメー-タαは、その後、撮像アブリケーションについて適切である、IDRおよびXDRビーム分解および合成に有用なビーム形成パラメータμ、ρ、κ、γ、およびγを得るために処理用パラメータテーブル63(ルックアッブテーブル)を通過させられる。パラメータαは、サンプル場所(n、z)における所望の信号および望ましくないクラッタの相対量を示すので、クラッタは、αが小さいとき小さく、αが大きいとき大きく、そして、IDRおよびXDRビーム分解および合成に有用なパラメータμ、ρ、κ、γ、およびγは、αの関数でありうる。
【0156】
最良の画像品質ための合成されたビームの所望の特性は、走査ヘッドの素子ピッチ、ビーム形成器で利用可能なチャネル数、画像のライン密度、使用される平行ビームの数、超音波照射信号の周波数および帯域幅などの多数のシステムパラメータに応じて変勤し、したがって、異なるパラメータのセットμ(α)、ρ(α)、κ(α)、γ(α)、およびγ(α)が、異なる撮像アプリケーションにとって好ましい。特定の機能的関係は、所望される画像特性、撮像される対象物、撮像システムの構成などに基づいて実験的に確定されうる。
【0157】
DRビームIαDRおよびパラメータμ、ρ、κ、γ、およびγは、所望のIDRビームを形成するためにプロセッサ603で使用される。DRビーム、IDRビーム、およびXDRビーム形成パラメータはまた、プロセッサ604および605においてXDRビームを反復的に形成するために使用されうる。
【0158】
図6L(1)〜6L(4)は、上述した方法1を使用してIXDR=IαM_κ+ραn_S+γIαSを計算することによってXDRビームを合成するための、パラメータκ=2、ρ=0.125、γ=0.015625、n=1を使用したα=1のDRビームの例示的な分解を示す。3dbFWHMは、0.7122πであり、SincビームのFWHMより21.6%狭い。α=1の場合、DRビームは、そのピークサイドローブレベルが−31dbであるハニングビームである。XDRビーム合成プロセスにおいて、パラメータγは、ハニングサイドローブを20×log10(γ)=−36.12dbだけ減衰させるために使用され、それにより、図6L(4)に示すように、−31+20×log 10(γ)=−67.12がもたらされる。合成されたXDRビームのサイドローブロールオフ率は、−18db/オクターブのハニングビーム同じである。
【0159】
【0160】
本発明およびその利点が詳細に述べられたが、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種、の変更、置換、および改変が本明細書で行われうることが理解されるべきである。さらに、本発明の範囲は、明細書に述べる、プロセス、機械、製品、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図されていない。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、現在のところ存在するかまたは後で開発される、本明細書で述べる対応する実施形態と実質的に同じ機能を実施する、または、実質的に同じ結果を達成する、プロセス、機械、製品、組成物、手段、方法、またはステップが、本発明に従って利用されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、こうしたプロセス、機械、製品、組成物、手段、方法、またはステップをその範囲内に含むことを意図されている。
【符号の説明】
【0161】
200 超音波撮像システム
210 システムユニット
211 画像
212 ディスプレイ
213,213a,213b ビーム形成器
214 DR/IDR/XDRビーム合成プロセッサ
215 超音波画像処理回路
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6I(1)】
図6I(2)】
図6I(3)】
図6J
図6K
図6L
図6L(1)】
図6L(2)】
図6L(3)】
図6L(4)】
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E