特許第6227741号(P6227741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62277413−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の固体状形態
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227741
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の固体状形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   C07D405/12
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-207622(P2016-207622)
(22)【出願日】2016年10月24日
(62)【分割の表示】特願2015-99613(P2015-99613)の分割
【原出願日】2008年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-14290(P2017-14290A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/012,162
(32)【優先日】2007年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アリ ケシャバーズ−ショクリ
(72)【発明者】
【氏名】ベイリ チャン
(72)【発明者】
【氏名】マリウス クラウィエク
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/056341(WO,A1)
【文献】 特許第5702149(JP,B2)
【文献】 国際公開第2006/115834(WO,A1)
【文献】 特表2007−518791(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/116218(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/108127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩を適切な溶媒に有効時間懸濁又は溶解させることを含む、形態Iとして特徴づけられる3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸を調製するプロセスであって、前記形態Iが、CuKアルファ照射によって得られたX線粉末回折における15.4±0.2度、16.3±0.2度、14.5±0.2度、14.8±0.2度および17.8±0.2度の1個以上のピークによって特徴づけられ、前記適切な溶媒が水またはアルコール/水混合物である、プロセス。
【請求項2】
前記適切な溶媒が水又は50%メタノール/水混合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記適切な溶媒が水である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有効時間が2から24時間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有効時間が2から6時間である、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法§119の下、2007年12月7日に出願された米国仮特許出願第61/012,162号の利益を主張し、この出願の全内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の固体状形態、例えば結晶形態、その薬学的組成物、及びそれを用いた方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
CFTRは、吸収及び分泌上皮細胞を含めて、種々の細胞タイプにおいて発現されるcAMP/ATP媒介性陰イオンチャネルであり、膜を横切る陰イオンの流れ、並びに他のイオンチャネル及びタンパク質の活性を調節する。上皮細胞では、CFTRの正常な機能は、呼吸器及び消化器組織を含めて、体全体にわたる電解質輸送の維持に重要である。CFTRは、膜貫通領域の縦列反復で構成されるタンパク質をコードする、約1480個のアミノ酸で構成され、膜貫通領域の各々が6回膜貫通ヘリックスとヌクレオチド結合領域を含む。2つの膜貫通領域は、チャネル活性及び細胞内輸送を調節する複数のリン酸化部位を有する大きな極性調節(R)領域によって連結される。
【0004】
CFTRをコードする遺伝子は、特定され、配列決定されている(Gregory,R. J.et al.(1990)Nature 347:382−386;Rich,D.P.et al.(1990)Nature 347:358−362参照)、(Riordan,J.R.et al.(1989)Science 245:1066−1073)。この遺伝子の欠陥は、CFTRの変異を引き起こし、ヒトにおける最も一般的な致死的遺伝病である嚢胞性線維症(「CF」)をもたらす。嚢胞性線維症は、米国においては乳児2,500名当たり約1名が罹患する。米国人口では、最高1000万人が明白な発症なしに欠陥遺伝子の単一コピーを有する。これに対して、CF関連遺伝子の2個のコピーを有する個体は、慢性肺疾患を含めて、CFの消耗性の致死的作用に苦しむ。
【0005】
嚢胞性線維症患者では、呼吸上皮において内因的に発現されるCFTRの変異は、頂端側陰イオン分泌を減少させ、イオン及び体液輸送の不均衡を引き起こす。結果として生じる陰イオン輸送の減少は、肺における粘液蓄積の増加、及びCF患者の死を最終的にもたらす付随的微生物感染症の一因になる。呼吸器疾患に加えて、CF患者は、典型的には、胃腸障害、及び無処置のまま放置すると死をもたらすすい不全に罹患する。さらに、嚢胞性線維症の男性の大多数は生殖能力がなく、嚢胞性線維症の女性は受精率が低下する。CF関連遺伝子の2個のコピーの激しい作用とは対照的に、CF関連遺伝子の単一コピーを有する個体は、コレラ、及び下痢に起因する脱水に対する抵抗が増加する。これは、恐らく、集団内のCF遺伝子の発生頻度が比較的高いことを説明している。
【0006】
CF染色体のCFTR遺伝子の配列解析によって、種々の病原性変異が明らかになってきた(Cutting,G.R.et al.(1990)Nature 346:366−369;Dean,M.et al.(1990)Cell 61:863:870;及びKerem,B−S.et al.(1989)Science 245:1073−1080;Kerem,B−S et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8447−8451)。現在まで、CF遺伝子の1000を超える病原性変異が特定された(http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/)。最も一般的な変異は、CFTRアミノ酸配列の508位のフェニルアラニンの欠失であり、ΔF508−CFTRと一般に称される。この変異は、嚢胞性線維症の症例の約70%で起こり、重篤な疾患に関連する。
【0007】
ΔF508−CFTRにおける残基508の欠失は、新生タンパク質の正確な折りたたみを阻止する。その結果、変異タンパク質はERを出ることができず、原形質膜に移動することができない。その結果、膜中に存在するチャネル数は、野生型CFTRを発現する細胞で認められるよりもはるかに少ない。輸送障害に加えて、変異は、不完全なチャネル開閉をもたらす。膜中のチャネル数の減少と不完全な開閉は一緒に、上皮を横切る陰イオン輸送を減少させ、不完全なイオン及び体液輸送をもたらす。(Quinton,P.M.(1990),FASEB J.4:2709−2727)。しかし、複数の研究によれば、膜中の少数のΔF508−CFTRは、野生型CFTRより少なくても機能する。(Dalemans et al.(1991),Nature Lond.354:526−528;Denning et al.、上掲;Pasyk and Foskett(1995),J.Cell.Biochem.270:12347−50)。ΔF508−CFTRに加えて、不完全な輸送、合成及び/又はチャネル開閉をもたらすCFTRの別の病原性変異を上方又は下方制御して、陰イオン分泌を変え、疾患の進行及び/又は重症度を変化させることができた。
【0008】
CFTRは、陰イオンに加えて種々の分子を輸送するが、この役割(陰イオン輸送)が、上皮を横切ってイオン及び水を輸送する重要な機序における一要素であることは明らかである。別の要素としては、上皮NaチャネルENaC、Na/2Cl/K共輸送体、Na−K−ATPaseポンプ及び側底膜Kチャネルが挙げられ、これらは細胞中への塩化物イオンの取り込みを担う。
【0009】
これらの要素は一緒に作用して、細胞内の選択的発現及び局在化を介して、上皮を横切る定方向輸送を果たす。塩化物イオンの吸収は、頂端膜上に存在するENaC及びCFTRと細胞の側底面で発現されるNa−K−ATPaseポンプ及びCl−チャネルとの協調活性によって起こる。管腔側からの塩化物イオンの二次性能動輸送は、細胞内塩化物イオンの蓄積をもたらし、次いで塩化物イオンは、Clチャネルを介して受動的に細胞から出て行くことができ、ベクトル輸送を生じる。側底面のNa/2Cl/K共輸送体、Na−K−ATPaseポンプ及び側底膜Kチャネルの配列と、管腔側のCFTRは、管腔側のCFTRを介した塩化物イオンの分泌を連係して調整する。水は恐らくそれ自体では決して能動輸送されないので、上皮を横切るその流れは、ナトリウム及び塩化物イオンの容積流によって生じるごくわずかの経上皮浸透勾配に依存する。
【0010】
上述したように、ΔF508−CFTRにおける残基508の欠失は、新生タンパク質の正確な折りたたみを阻止し、その結果、この変異タンパク質がERを出ることができず、原形質膜に移動することができないと考えられる。その結果、不十分な量の成熟タンパク質しか原形質膜に存在せず、上皮組織内の塩化物イオン輸送がかなり低下する。実際に、ER機構によるABC輸送体の不完全なERプロセシングのこの細胞現象は、CF疾患だけでなく、広範囲の他の単独の遺伝性疾患の根底にあることが示された。ER機構が機能不全を起こし得る2つの過程は、分解をもたらすタンパク質のER排出との結合不足、又はこれらの欠陥のある/誤って折りたたまれたタンパク質のER蓄積による[非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5]。
【0011】
塩型の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸は、特許文献1(該刊行物を参照によりその全体を本明細書に援用する。)にCFTR活性の調節物質として開示されており、したがって嚢胞性線維症などのCFTR媒介性疾患の治療に有用である。しかし、治療用物質としての使用に適切な、薬学的組成物に容易に使用することができる前記化合物の安定な固体形態が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2007056341号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Aridor M,et al.,Nature Med.,5(7),pp745−751(1999)
【非特許文献2】Shastry,B.S.,et al.,Neurochem.International,43,pp1−7(2003)
【非特許文献3】Rutishauser,J.,et al.,Swiss Med Wkly,132,pp211−222(2002)
【非特許文献4】Morello,JP et al.,TIPS,21,pp.466−469(2000)
【非特許文献5】Bross P.,et al.,Human Mut.,14,pp.186−198(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、以下の構造を有する3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(以下、「化合物1」)の固体形態に関する。
【0015】
【化1】
化合物1及び薬学的に許容されるその組成物は、嚢胞性線維症の治療又は重症度の低減に有用である。一態様においては、化合物1は、本明細書に記載され特徴づけられる形態Iと称する、実質的に結晶性であり、塩を含まない形態である。
【0016】
本明細書に記載のプロセスを使用して、形態Iを含む本発明の組成物を調製することができる。プロセスに使用される成分の量及び特徴は、本明細書に記載するとおりである。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
形態Iとして特徴づけられる3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸。
(項目2)
前記形態Iが、CuKアルファ照射によって得られたX線粉末回折における15.2から15.6度、16.1から16.5度、及び14.3から14.7度の1個以上のピークによって特徴づけられる、項目1に記載の形態I。
(項目3)
前記形態Iが15.4、16.3及び14.5度の1個以上のピークによって特徴づけられる、項目2に記載の形態I。
(項目4)
前記形態Iが14.6から15.0度のピークによって更に特徴づけられる、項目2に記載の形態I。
(項目5)
前記形態Iが14.8度のピークによって更に特徴づけられる、項目4に記載の形態I。
(項目6)
前記形態Iが17.6から18.0度のピークによって更に特徴づけられる、項目4に記載の形態I。
(項目7)
前記形態Iが17.8度のピークによって更に特徴づけられる、項目6に記載の形態I。
(項目8)
前記形態Iが16.4から16.8度のピークによって更に特徴づけられる、項目6に記載の形態I。
(項目9)
前記形態Iが16.4から16.8度のピークによって更に特徴づけられる、項目8に記載の形態I。
(項目10)
前記形態Iが16.6度のピークによって更に特徴づけられる、項目9に記載の形態I。
(項目11)
前記形態Iが7.6から8.0度のピークによって更に特徴づけられる、項目9に記載の形態I。
(項目12)
前記形態Iが7.8度のピークによって更に特徴づけられる、項目11に記載の形態I。
(項目13)
前記形態Iが25.8から26.2度のピークによって更に特徴づけられる、項目11に記載の形態I。
(項目14)
前記形態Iが26.0度のピークによって更に特徴づけられる、項目13に記載の形態I。
(項目15)
前記形態Iが21.4から21.8度のピークによって更に特徴づけられる、項目13に記載の形態I。
(項目16)
前記形態Iが21.6度のピークによって更に特徴づけられる、項目15に記載の形態I。
(項目17)
前記形態Iが23.1から23.5度のピークによって更に特徴づけられる、項目15に記載の形態I。
(項目18)
前記形態Iが23.3度のピークによって更に特徴づけられる、項目17に記載の形態I。
(項目19)
前記形態Iが、図1の回折パターンと実質的に類似した回折パターンによって特徴づけられる、項目1に記載の形態I。
(項目20)
前記形態Iが、図2の回折パターンと実質的に類似した回折パターンによって特徴づけられる、項目1に記載の形態I。
(項目21)
D90の粒径分布が約82μm以下である、項目1に記載の形態I。
(項目22)
D50の粒径分布が約30μm以下である、項目1に記載の形態I。
(項目23)
項目1に記載の形態Iと薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
(項目24)
ほ乳動物における嚢胞性線維症を治療する方法であって、有効量の項目1に記載の形態Iを該ほ乳動物に投与することを含む、方法。
(項目25)
前記方法が、追加の治療薬を投与することを含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
項目1に記載の形態I及びその使用説明書を含む、キット。
(項目27)
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩を適切な溶媒に有効時間懸濁又は溶解させることを含む、項目1に記載の形態Iを調製するプロセス。
(項目28)
前記適切な溶媒が水又は50%メタノール/水混合物である、項目27に記載のプロセス。
(項目29)
前記適切な溶媒が水である、項目27に記載のプロセス。
(項目30)
前記有効時間が2から24時間である、項目27に記載のプロセス。
(項目31)
前記有効時間が2から6時間である、項目27に記載のプロセス。
(項目32)
単斜晶系、P2/n空間群、及び以下の単位格子寸法を有する、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の結晶形態:
a=4.9626(7)Å α=90°
b=12.2994(18)Å β=93.938(9)°
c=33.075(4)Å γ=90°。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】形態Iの化合物1の単結晶構造から計算されるX線回折パターンを示したグラフである。
図2】形態Iの化合物1の実際のX線粉末回折パターンを示したグラフである。
図3】形態Iの化合物1の単結晶から計算されるX線回折パターンと、形態Iの化合物1の実際のX線粉末回折パターンとの重ね合わせを示したグラフである。
図4】形態Iの化合物1の示差走査熱量測定(DSC)線を示したグラフである。
図5】単結晶X線分析に基づく形態Iの化合物1の配座図である。
図6】カルボン酸基を介して形成された二量体としての、単結晶X線分析に基づく形態Iの化合物1の配座図である。
図7】分子が積層されたことを示す、単結晶X線分析に基づく形態Iの化合物1の配座図である。
図8】単結晶X線分析に基づく形態Iの化合物1の配座図であり、異なる位置から見た図である(下方a)。
図9】T(0)における50mg/mL、0.5メチルセルロース−ポリソルベート80懸濁液中の形態Iの化合物1のH NMR分析結果を示したグラフである。
図10】室温で24時間貯蔵された50mg/mL、0.5メチルセルロース−ポリソルベート80懸濁液中の形態Iの化合物1のH NMR分析結果を示したグラフである。
図11】化合物1・HCl標準のH NMR分析結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
定義
本明細書では、別段の記載がない限り、以下の定義を適用するものとする。
【0019】
本明細書では「CFTR」という用語は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子、又はΔF508 CFTR及びG551D CFTRを含めて、ただしそれだけに限定されない、制御因子活性能力のあるその変異体を意味する(CFTR変異体については、例えばhttp://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/を参照されたい。)。
【0020】
本明細書では「結晶性」とは、構造単位が、固定された幾何パターン又は格子状に配置された化合物又は組成物を指し、その結果、結晶性固体は剛直な長距離秩序を有する。結晶構造を構成する構造単位は、原子、分子又はイオンとすることができる。結晶性固体は、明確な融点を示す。
【0021】
本明細書では「調節」という用語は、例えば活性を、測定可能な量だけ増減させることを意味する。
【0022】
一態様においては、本発明は、形態Iとして特徴づけられる3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の一形態を特徴とする。
【0023】
別の一実施形態においては、形態Iは、CuKアルファ照射によって得られたX線粉末回折における15.2から15.6度、16.1から16.5度、及び14.3から14.7度の1個以上のピークによって特徴づけられる。
【0024】
別の一実施形態においては、形態Iは、15.4、16.3及び14.5度の1個以上のピークによって特徴づけられる。
【0025】
別の一実施形態においては、形態Iは、14.6から15.0度のピークによって更に特徴づけられる。
【0026】
別の一実施形態においては、形態Iは、14.8度のピークによって更に特徴づけられる。
【0027】
別の一実施形態においては、形態Iは17.6から18.0度のピークによって更に特徴づけられる。
【0028】
別の一実施形態においては、形態Iは17.8度のピークによって更に特徴づけられる。
【0029】
別の一実施形態においては、形態Iは16.4から16.8度のピークによって更に特徴づけられる。
【0030】
別の一実施形態においては、形態Iは16.4から16.8度のピークによって更に特徴づけられる。
【0031】
別の一実施形態においては、形態Iは16.6度のピークによって更に特徴づけられる。
【0032】
別の一実施形態においては、形態Iは7.6から8.0度のピークによって更に特徴づけられる。
【0033】
別の一実施形態においては、形態Iは7.8度のピークによって更に特徴づけられる。
【0034】
別の一実施形態においては、形態Iは25.8から26.2度のピークによって更に特徴づけられる。
【0035】
別の一実施形態においては、形態Iは26.0度のピークによって更に特徴づけられる。
【0036】
別の一実施形態においては、形態Iは21.4から21.8度のピークによって更に特徴づけられる。
【0037】
別の一実施形態においては、形態Iは21.6度のピークによって更に特徴づけられる。
【0038】
別の一実施形態においては、形態Iは23.1から23.5度のピークによって更に特徴づけられる。
【0039】
別の一実施形態においては、形態Iは23.3度のピークによって更に特徴づけられる。
【0040】
一部の実施形態においては、形態Iは、図1の回折パターンと実質的に類似した回折パターンによって特徴づけられる。
【0041】
一部の実施形態においては、形態Iは、図2の回折パターンと実質的に類似した回折パターンによって特徴づけられる。
【0042】
一部の実施形態においては、形態IのD90の粒径分布は約82μm以下である。
【0043】
一部の実施形態においては、形態IのD50の粒径分布は約30μm以下である。
【0044】
一態様においては、本発明は、形態Iと薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を特徴とする。
【0045】
一態様においては、本発明は、有効量の形態Iをヒトに投与することを含む、ヒトにおけるCFTR媒介性疾患を治療する方法を特徴とする。
【0046】
一部の実施形態においては、方法は、追加の治療薬を投与することを含む。
【0047】
一部の実施形態においては、疾患は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性血色素症、プロテインC欠乏症などの凝固−線維素溶解欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポタンパク質血症などの脂質プロセシング欠乏症、I細胞病/偽性Hurler、ムコ多糖症などのリソソーム蓄積症、Sandhof/Tay−Sachs、Crigler−Najjar II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症(hyperinsulemia)、真性糖尿病、Laron小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、糖鎖不全糖タンパク質症候群(glycanosis CDG)1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、神経垂体性(neurophyseal)DI、腎性(neprogenic)DI、Charcot−Marie Tooth症候群、Perlizaeus−Merzbacher病、Alzheimer病、Parkinson病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻ひ(plasy)、Pick病などの神経変性疾患、Huntington、脊髄小脳(spinocerebullar)失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核(dentatorubal)淡蒼球ルイ体、筋緊張性ジストロフィーなどの幾つかのポリグルタミン神経疾患、並びに遺伝性Creutzfeldt−Jakob病などの海綿状脳症、Fabry病、Straussler−Scheinker症候群、COPD、ドライアイ疾患、及びSjogren病から選択される。
【0048】
一実施形態においては、本発明は、有効量の形態Iをヒトに投与することを含む、ヒトにおける嚢胞性線維症を治療する方法を提供する。
【0049】
一態様においては、本発明は、形態I及びその使用説明書を含む、キットを特徴とする。
【0050】
一態様においては、本発明は、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩を適切な溶媒に有効時間分散又は溶解させることを含む、形態Iを調製するプロセスを特徴とする。
【0051】
一実施形態においては、本発明は、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩を適切な溶媒に有効時間分散させることを含む、形態Iを調製するプロセスを特徴とする。
【0052】
一部の実施形態においては、適切な溶媒は、水又はアルコール/水混合物である。
【0053】
一部の実施形態においては、適切な溶媒は、水又は50%メタノール/水混合物である。
【0054】
一部の実施形態においては、適切な溶媒は水である。
【0055】
一部の実施形態においては、適切な溶媒は、メタノール50%と水50%を含む混合物である。
【0056】
一部の実施形態においては、有効時間は約2から約1日である。一部の実施形態においては、有効時間は約2から約18時間である。一部の実施形態においては、有効時間は約2から約12時間である。一部の実施形態においては、有効時間は約2から約6時間である。
【0057】
一態様においては、本発明は、単斜晶系、P2/n空間群、及び以下の単位格子寸法を有する、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の結晶形態を特徴とする:a=4.9626(7)Å、b=12.2994(18)Å、c=33.075(4)Å、α=90°、β=93.938(9)°及びγ=90°。
【0058】
形態Iを調製する方法
一実施形態においては、形態Iは、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCLなどの塩形態を適切な溶媒に有効時間分散又は溶解させて調製される。別の一実施形態においては、形態Iは、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCLなどの塩形態を適切な溶媒に有効時間分散させて調製される。別の一実施形態においては、形態Iは、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート及びギ酸などの適切な酸から直接形成される。一実施形態においては、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩形態が出発点であり、一実施形態においては、スキーム1〜3に従って酸塩化物部分をアミン部分とカップリングさせることによって調製することができる。
【0059】
スキーム1.酸塩化物部分の合成
【0060】
【化2】
スキーム2.アミン部分の合成
【0061】
【化3】
スキーム3.3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の酸性塩の形成
【0062】
【化4】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の、例えばHCl、塩形態を出発点として使用して、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩形態を適切な溶媒に有効時間分散又は溶解させることによって、形態Iを高収率で形成することができる。例えば他の無機又は有機酸形態など、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の他の塩形態を使用することができる。他の塩形態は、対応する酸を用いたt−ブチルエステルの加水分解から生じる。他の酸/塩形態としては、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸、安息香酸、マロン酸などが挙げられる。3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の塩形態は、使用溶媒に応じて可溶性でも非可溶性でもよいが、溶解性不足は、形態Iの形成を妨げない。3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸のHCl塩形態は水にわずかしか溶解しないが、例えば、一実施形態においては、適切な溶媒は、水、又は50%メタノール/水混合物などのアルコール/水混合物とすることができる。一実施形態においては、適切な溶媒は水である。
【0063】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の塩形態から形態Iを形成するための有効時間は、2から24時間以上の任意の時間とすることができる。一般に、高収率(約98%)を得るのに24時間を超える時間は不要であるが、ある種の溶媒は24時間を超える時間を必要とし得る。必要な時間は、温度に逆比例することも認識されている。すなわち、温度が高いほど、酸の解離に作用して形態Iを形成するのに必要な時間が短くなる。溶媒が水であるときには、分散液を室温で約24時間撹拌すると、形態Iが収率約98%で得られる。3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸の塩形態の溶液がプロセス目的で必要な場合には、高温を使用することができる。溶液を高温で有効時間撹拌後、冷却再結晶させると、実質的に純粋な形の形態Iが生成する。一実施形態においては、実質的に純粋とは、約90%を超える純度を指す。別の一実施形態においては、実質的に純粋とは、約95%を超える純度を指す。別の一実施形態においては、実質的に純粋とは、約98%を超える純度を指す。別の一実施形態においては、実質的に純粋とは、約99%を超える純度を指す。選択される温度は、使用溶媒にある程度依存し、当業者の決定能力の十分な範囲内である。一実施形態においては、温度は室温から約80℃である。別の一実施形態においては、温度は室温から約40℃である。別の一実施形態においては、温度は約40℃から約60℃である。別の一実施形態においては、温度は約60℃から約80℃である。
【0064】
一部の実施形態においては、形態Iは、有機溶媒からの再結晶によって更に精製することができる。有機溶媒の例としては、トルエン、クメン、アニソール、1−ブタノール、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルt−ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン又は(種々の比の)1−プロパノール/水が挙げられるが、それだけに限定されない。温度は、上述したように使用することができる。例えば、一実施形態においては、形態Iを完全に溶解するまで75℃で1−ブタノールに溶解させる。溶液を速度0.2℃/分で10℃に冷却すると、形態Iの結晶が生成する。この結晶は、ろ過によって単離することができる。
【0065】
使用、処方及び投与
薬学的に許容される組成物
本発明の別の一態様においては、薬学的に許容される組成物が提供され、この組成物は、本明細書に記載の形態Iを含み、場合によっては、薬学的に許容される担体、補助剤又はビヒクルを含む。ある実施形態においては、この組成物は、場合によっては、1種類以上の追加の治療薬を更に含む。
【0066】
上述したように、本発明の薬学的に許容される組成物は、さらに、薬学的に許容される担体、補助剤又はビヒクルを含む。薬学的に許容される担体、補助剤又はビヒクルとしては、本明細書では、所望の特定の剤形に適した、あらゆるすべての溶媒、希釈剤又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤又は乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に許容される組成物の処方に使用される種々の担体、及びその調製のための公知技術を開示している。任意の従来の担体媒体が、例えば、任意の望ましくない生物学的効果を生じることによって、又は薬学的に許容される組成物の任意の他の成分(単数又は複数)と有害な様式で相互作用することによって、本発明の化合物に適合しない場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内であることが企図される。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料の幾つかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩又は電解質、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖;コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂、坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油などの油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油及びダイズ油;グリコール;かかるプロピレングリコール又はポリエチレングリコール;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝液が挙げられるが、それだけに限定されない。さらに、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒の適合した潤滑剤、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、防腐剤及び抗酸化剤も、処方者の判断に従って組成物中に存在することができる。
【0067】
化合物及び薬学的に許容される組成物の使用
更に別の一態様においては、本発明は、CFTRによって関係づけられる症状、疾患又は障害を治療する方法を提供する。ある実施形態においては、本発明は、CFTR活性の欠乏によって関係づけられる症状、疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に記載の形態Iの固体状形態を含む組成物をそれを必要とする対象、好ましくはほ乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0068】
本明細書では「CFTR媒介性疾患」は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性血色素症、プロテインC欠乏症などの凝固−線維素溶解欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベータリポタンパク質血症などの脂質プロセシング欠乏症、I細胞病/偽性ハーラー、ムコ多糖症などのリソソーム蓄積症、Sandhof/Tay−Sachs、Crigler−Najjar II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、真性糖尿病、Laron小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、糖鎖不全糖タンパク質症候群1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、神経垂体性DI、腎性DI、Charcot−Marie Tooth症候群、Perlizaeus−Merzbacher病、Alzheimer病、Parkinson病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻ひ、Pick病などの神経変性疾患、Huntington、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体、筋緊張性ジストロフィーなどの幾つかのポリグルタミン神経疾患、並びに遺伝性Creutzfeldt−Jakob病などの海綿状脳症、Fabry病、Straussler−Scheinker症候群、COPD、ドライアイ疾患、及びSjogren病から選択される疾患である。
【0069】
ある実施形態においては、本発明は、本明細書に記載の形態Iを含む有効量の組成物をヒトに投与するステップを含む、ヒトにおけるCFTR媒介性疾患を治療する方法を提供する。
【0070】
別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の形態Iを含む組成物をヒトに投与するステップを含む、ヒトにおける嚢胞性線維症を治療する方法を提供する。
【0071】
本発明によれば、形態I又は薬学的に許容されるその組成物の「有効量」は、上記疾患のいずれかを治療又はその重症度を軽減するのに有効な量である。
【0072】
形態I又は薬学的に許容されるその組成物は、上記疾患の1つ以上を治療又はその重症度を軽減するのに有効な任意の投与量及び任意の投与経路で投与することができる。
【0073】
ある実施形態においては、本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物は、呼吸器及び非呼吸器上皮の頂端膜において残留CFTR活性を示す患者における嚢胞性線維症の治療又は重症度の低減に有用である。上皮表面における残留CFTR活性の存在は、当分野で公知の方法、例えば標準的な電気生理学的、生化学的又は組織化学的技術を使用して、容易に検出することができる。かかる方法は、in vivo若しくはex vivo電気生理学的技術、汗若しくは唾液のCl濃度の測定、又は細胞表面密度をモニターするex vivo生化学的若しくは組織化学的技術を使用してCFTR活性を確認する。かかる方法を使用して、最も一般的な変異であるΔF508に対して同型接合的又は異型接合的な患者を含めて、種々の異なる変異に対して異型接合的又は同型接合的な患者において残留CFTR活性を容易に検出することができる。
【0074】
一実施形態においては、本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物は、残留CFTR活性、例えば、クラスIII変異(調節又は開閉障害)、クラスIV変異(コンダクタンス変化)又はクラスV変異(合成低下)を示すある遺伝子型内の患者において、嚢胞性線維症の治療又は重症度の低減に有用である(Lee R.Choo−Kang,Pamela L.,Zeitlin,Type I,II,III,IV,and V cystic fibrosis Tansmembrane Conductance Regulator Defects and Opportunities of Therapy;Current Opinion in Pulmonary Medicine 6:521−529,2000)。残留CFTR活性を示す別の患者遺伝子型としては、これらのクラスの一つに対して同型接合的である患者、又はクラスI変異、クラスII変異若しくは分類されない変異を含めて、任意の他のクラスの変異と異型接合的である患者が挙げられる。
【0075】
一実施形態においては、本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物は、ある臨床像、例えば、上皮の頂端膜における残留CFTR活性量と典型的に相関する中程度から軽度の臨床像内の患者において、嚢胞性線維症の治療又は重症度の低減に有用である。かかる臨床像としては、すい不全を示す患者、又は特発性すい炎及び先天性両側精管欠損症若しくは軽度の肺疾患と診断された患者が挙げられる。
【0076】
正確な必要量は、対象の種、年齢及び全身状態、感染の重症度、個々の薬剤、その投与方法などに応じて、対象ごとに異なる。本発明の化合物は、好ましくは、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、単位用量剤形で処方される。本明細書では「単位用量剤形」という表現は、治療すべき患者に適切な薬剤の物理的に分離した単位を指す。しかし、本発明の化合物及び組成物の1日の全使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることを理解されたい。任意の特定の患者又は生物体に対する具体的有効量レベルは、治療する障害及び障害の重症度;使用する具体的化合物の活性;使用する具体的組成物;患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別及び食事;使用する具体的化合物の投与時間、投与経路及び排出速度;治療期間;使用する具体的化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物を含めた種々の因子、並びに医学分野で周知の同様の因子に応じて決まる。本明細書では「患者」という用語は、動物、好ましくはほ乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0077】
本発明の薬学的に許容される組成物は、治療する感染症の重症度に応じて、ヒト及び他の動物に経口的に、直腸に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、(散剤、軟膏剤又は滴剤によって)局所に、頬に、経口又は経鼻噴霧剤としてなど、投与することができる。ある実施形態においては、本発明の化合物は、経口的又は非経口的に、約0.01mg/kgから約50mg/kg対象体重/日、好ましくは約1mg/kgから約25mg/kg対象体重/日の投与量レベルで、1日1回以上投与して、所望の治療効果を得ることができる。
【0078】
ある実施形態においては、単位用量剤形の形態Iの投与量は100mgから1,000mgである。別の一実施形態においては、形態Iの投与量は200mgから900mgである。別の一実施形態においては、形態Iの投与量は300mgから800mgである。別の一実施形態においては、形態Iの投与量は400mgから700mgである。別の一実施形態においては、形態Iの投与量は500mgから600mgである。
【0079】
注射用調製物、例えば、無菌注射用水性又は油性懸濁液剤は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、公知の技術に従って処方することができる。無菌注射製剤は、無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の、例えば1,3−ブタンジオール溶液としての、無菌注射液剤、懸濁液剤又は乳濁液剤とすることもできる。使用可能な許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、U.S.P.及び等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌不揮発性油が溶媒又は懸濁媒体として従来使用されている。この目的で、合成モノ又はジグリセリドを含めて、任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の調製に使用される。
【0080】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターに通してろ過することによって、又は使用前に滅菌水若しくは他の無菌注射用媒体に溶解若しくは分散させることができる無菌固体組成物の形の殺菌剤を混合することによって、滅菌することができる。
【0081】
直腸又は膣投与用組成物は、好ましくは、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤又は担体を本発明の化合物と混合することによって調製することができる坐剤である。この賦形剤又は担体は、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸又は膣腔内で溶融して活性化合物を放出する。
【0082】
経口投与用固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤などが挙げられる。かかる固体剤形においては、活性化合物は、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウムなどの少なくとも1種類の不活性な薬学的に許容される賦形剤若しくは担体、及び/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸などの充填剤若しくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、アラビアゴムなどの結合剤、c)グリセリンなどの湿潤剤、d)アガー−−アガー、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリカート、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリンなどの湿潤剤、h)カオリン、ベントナイト粘土などの吸収剤、並びにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、その混合物などの潤滑剤と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、剤形は緩衝剤を含むこともできる。
【0083】
類似のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖、高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟及び硬ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用することもできる。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、薬剤処方分野において周知である他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製することができる。これらの剤形は、場合によっては不透明化剤を含んでもよく、腸管のある一部において活性成分(単数又は複数)のみを、又は活性成分を優先的に、場合によっては遅延方式で、放出する組成とすることもできる。使用可能な埋め込み組成物の例としては、重合体物質及びワックスが挙げられる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖、高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟及び硬ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用することもできる。
【0084】
活性化合物は、1種類以上の上記賦形剤と一緒にマイクロカプセル形態にすることもできる。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、薬剤処方分野において周知である他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製することができる。かかる固体剤形においては、活性化合物をスクロース、ラクトース、デンプンなどの少なくとも1種類の不活性希釈剤と混合することができる。かかる剤形は、通常実施されるように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、錠剤化潤滑剤及び他の錠剤化助剤、かかるステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロースを含むこともできる。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、剤形は緩衝剤を含むこともできる。これらの剤形は、場合によっては不透明化剤を含んでもよく、腸管のある一部において活性成分(単数又は複数)のみを、又は活性成分を優先的に、場合によっては遅延方式で、放出する組成とすることもできる。使用可能な埋め込み組成物の例としては、重合体物質及びワックスが挙げられる。
【0085】
本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物は、併用療法に使用することができ、すなわち、形態Iは、1種類以上の別の所望の治療法又は医療処置と同時に、その前に、又はその後に投与できることも理解されるであろう。併用投薬計画において使用する療法(治療法又は手順)の特定の組合せは、所望の治療法及び/又は手順の適合性、並びに達成すべき所望の治療効果を考慮したものとなる。採用される療法は、同じ障害に対して所望の効果を得ることができ(例えば、本発明の化合物は、同じ障害の治療に使用される別の薬剤と同時に投与することができる。)、又は該療法は、異なる効果(例えば、任意の有害作用の抑制)を得ることができることも理解されるであろう。本明細書では、特定の疾患又は症状を治療又は防止するのに通常投与される追加の治療薬は、「治療する疾患又は症状に適切である」として知られる。
【0086】
一実施形態においては、追加の薬剤は、粘液溶解薬、気管支拡張剤(bronchodialator)、抗生物質、抗感染薬、抗炎症剤、本発明の化合物以外のCFTR調節物質、又は栄養剤から選択される。
【0087】
別の一実施形態においては、追加の薬剤は、ゲンタマイシン、クルクミン、シクロホスファミド、4−フェニルブチラート、ミグラスタット、フェロジピン、ニモジピン、Philoxin B、ゲニエステイン(geniestein)、アピゲニン、cAMP/cGMP調節物質、例えば、ロリプラム、シルデナフィル、ミルリノン、タダラフィル、アムリノン、イソプロテレノール、アルブテロール及びアルメテロール(almeterol)、デオキシスパガリン、HSP90阻害剤、HSP70阻害剤、エポキソミシン、ラクタシスチンなどのプロテオソーム阻害剤から選択される化合物である。
【0088】
別の一実施形態においては、追加の薬剤は、国際公開第2004028480号、同2004110352号、同2005094374号、同2005120497号又は同2006101740号に開示された化合物である。
【0089】
別の一実施形態においては、追加の薬剤は、CFTR調節活性を示すベンゾ(c)キノリジニウム誘導体又はCFTR調節活性を示すベンゾピラン誘導体である。
【0090】
別の一実施形態においては、追加の薬剤は、米国特許第7202262号、同6992096号、米国特許出願公開第20060148864号、同20060148863号、同20060035943号、同20050164973号、国際公開第2006110483号、同2006044456号、同2006044682号、同2006044505号、同2006044503号、同2006044502号又は同2004091502号に開示された化合物である。
【0091】
別の一実施形態においては、追加の薬剤は、国際公開第2004080972号、同2004111014号、同2005035514号、同2005049018号、同2006002421号、同2006099256号、同2006127588号又は同2007044560号に開示された化合物である。
【0092】
別の一実施形態においては、参照によりその全体を援用する、2005年6月24日に出願され、米国特許出願公開第2006/0074075号として公開された、米国特許出願第11/165,818号に開示された化合物から選択される追加の薬剤。別の一実施形態においては、追加の薬剤は、N−(5−ヒドロキシ−2,4−ジtert−ブチル−フェニル)−4−オキソ−1H−キノリン−3−カルボキサミドである。これらの組合せは、嚢胞性線維症を含めて、本明細書に記載の疾患の治療に有用である。これらの組合せは、本明細書に記載のキットにおいても有用である。
【0093】
本発明の組成物中に存在する追加の治療薬の量は、該治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物中で通常投与される量以下である。好ましくは、ここに開示する組成物中の追加の治療薬の量は、該治療薬を唯一の治療有効薬剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%から100%の範囲である。
【0094】
本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物は、プロテーゼ、人工弁、移植血管、ステント、カテーテルなどの移植可能な医療用具をコーティングするための組成物に組み込むこともできる。したがって、本発明は、別の一態様においては、本明細書のクラス及びサブクラスにおいて、本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物と、移植可能な装置のコーティングに適切な担体とを含む、移植可能な装置をコーティングするための組成物を含む。更に別の一態様においては、本発明は、本明細書に記載の形態I又は薬学的に許容されるその組成物と移植可能な装置のコーティングに適切な担体とを含む組成物で被覆された、移植可能な装置を含む。適切なコーティング、及び被覆された移植可能な装置の一般的な調製は、米国特許第6,099,562号、同5,886,026号及び同5,304,121号に記載されている。コーティングは、典型的には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、その混合物などの生体適合性高分子材料である。コーティングは、場合によっては、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質又はその組合せの適切なトップコートで更に被覆して、組成物における制御放出特性を与えることができる。
【0095】
本明細書に記載した発明をより十分に理解できるようにするために、以下の実施例を示す。これらの実施例は単に説明のためのものにすぎず、本発明を限定するものと決して解釈すべきではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0096】
方法及び材料
示差走査熱量測定(DSC)
形態Iの示差走査熱量測定(DSC)データをDSC Q100 V9.6 Build 290(TA Instruments、New Castle、DE)を用いて収集した。温度をインジウムを用いて較正し、熱容量をサファイアを用いて較正した。試料3〜6mgをアルミニウムパンに計量し、1個のピンホールを有する蓋を圧着した。試料を25℃から350℃まで加熱速度1.0℃/分、窒素ガスパージ50ml/分で走査した。データをThermal Advantage Q SeriesTM version 2.2.0.248ソフトウェアによって収集し、Universal Analysis software version 4.1D(TA Instruments、New Castle、DE)によって分析した。報告した数は、単一の分析結果である。
【0097】
XRPD(X線粉末回折)
HI−STAR2次元検出器及びフラットグラファイトモノクロメーターを備えたBruker D8 DISCOVER粉末回折計によって、形態1のX線回折(XRD)データを収集した。Kα照射のCu封管を40kV、35mAで使用した。試料を25℃のゼロバックグラウンドシリコンウェーハ上に置いた。各試料について、2個のデータフレームを各々2つの異なるθ角度8°及び26°で120秒目に収集した。データをGADDSソフトウェアによって積分し、DIFFRACTplusEVAソフトウェアによってマージした。報告したピーク位置の不確実性は±0.2度である。
【0098】
Vitride(登録商標)(ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム水素化物[又はNaAlH(OCHCHOCH]、65wgt%トルエン溶液)をAldrich Chemicalsから購入した。
【0099】
2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸をSaltigo(the Lanxess Corporationの系列会社)から購入した。
【0100】
本願のどこでも化合物の名称が化合物の構造を正確に記述することができない場合、構造が名称に取って代わり、基準となる。
【0101】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HClの合成
酸塩化物部分
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−メタノールの合成
【0102】
【化5】
市販2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸(1.0当量)をトルエン(10体積)中でスラリーにする。Vitride(登録商標)(2当量)を、温度を15〜25℃に維持する速度で添加漏斗を介して添加する。添加の最後に、温度を40℃に2時間上昇させ、次いで10%(w/w)NaOH水溶液(4.0当量)を添加漏斗を介して慎重に添加し、温度を40〜50℃に維持する。更に30分間撹拌後、40℃で層分離させる。有機相を20℃に冷却し、次いで水(2×1.5体積)で洗浄し、脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮して、粗製(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−メタノールを得る。それを次のステップに直接使用する。
【0103】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールの合成
【0104】
【化6】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−メタノール(1.0当量)をMTBE(5体積)に溶解させる。触媒作用量のDMAP(1mol%)を添加し、SOCl(1.2当量)を添加漏斗を介して添加する。反応器内の温度を15〜25℃に維持する速度でSOClを添加する。温度を30℃に1時間上昇させ、次いで20℃に冷却し、次いで水(4体積)を添加漏斗を介して添加し、温度を30℃未満に維持する。更に30分間撹拌後、層分離させる。有機層を撹拌し、10%(w/v)NaOH水溶液(4.4体積)を添加する。15から20分間撹拌後、層分離させる。次いで、有機相を脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮して、粗製5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールを得る。それを次のステップに直接使用する。
【0105】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−アセトニトリルの合成
【0106】
【化7】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(1当量)のDMSO(1.25体積)溶液を、DMSO(3体積)中のNaCN(1.4当量)のスラリーに添加し、温度を30〜40℃に維持する。混合物を1時間撹拌し、次いで水(6体積)、続いてMTBE(4体積)を添加する。30分間撹拌後、層分離させる。水層をMTBE(1.8体積)で抽出する。混合有機層を水(1.8体積)で洗浄し、脱水し(NaSO)、ろ過し、濃縮して、粗製(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−アセトニトリル(95%)を得る。それを次のステップに直接使用する。
【0107】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルの合成
【0108】
【化8】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−アセトニトリル(1.0当量)、50wt%KOH水溶液(5.0当量)1−ブロモ−2−クロロエタン(1.5当量)及びOctNBr(0.02当量)の混合物を70℃で1時間加熱する反応混合物を冷却し、次いでMTBE及び水で処理する。有機相を水及び塩水で洗浄し、次いで溶媒を除去して、(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを得る。
【0109】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸の合成
【0110】
【化9】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを6M NaOH(8当量)を用いてエタノール(5体積)中で80℃で終夜加水分解する。混合物を室温に冷却し、エタノールを減圧蒸発させる。残留物を水及びMTBEにとり、1M HClを添加し、層分離させる。次いで、MTBE層をジシクロヘキシルアミン(0.97当量)で処理した。スラリーを0℃に冷却し、ろ過し、ヘプタンで洗浄して、対応するDCHA塩を得る。塩をMTBE及び10%クエン酸にとり、すべての固体が溶解するまで撹拌する。層分離させ、MTBE層を水及び塩水で洗浄する。溶媒をヘプタンに交換し、続いてろ過し、真空乾燥機中で50℃で終夜乾燥後、1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸を得る。
【0111】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニルクロリドの合成
【0112】
【化10】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸(1.2当量)をトルエン(2.5体積)中でスラリーにし、混合物を60℃に加熱する。SOCl(1.4当量)を添加漏斗を介して添加する。トルエン及びSOClを30分後に反応混合物から蒸留する。追加のトルエン(2.5体積)を添加し、再度蒸留する。
【0113】
アミン部分
tert−ブチル−3−(3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートの合成
【0114】
【化11】
2−ブロモ−3−メチルピリジン(1.0当量)をトルエン(12体積)に溶解させる。KCO(4.8当量)、続いて水(3.5体積)を添加し、混合物をN気流下で65℃に1時間加熱する。次いで、3−(t−ブトキシカルボニル)フェニルボロン酸(1.05当量)及びPd(dppf)Cl・CHCl(0.015当量)を添加し、混合物を80℃に加熱する。2時間後、熱を切り、水を添加し(3.5体積)、層分離させる。次いで、有機相を水(3.5体積)で洗浄し、10%メタンスルホン酸水溶液(MsOH 2当量、7.7体積)で抽出する。水相を、50%NaOH水溶液(2当量)を用いて塩基性にし、EtOAc(8体積)で抽出する。有機層を濃縮して、粗製tert−ブチル−3−(3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアート(82%)を得る。それを次のステップに直接使用する。
【0115】
2−(3−(tert−ブトキシカルボニル)フェニル)−3−メチルピリジン−1−オキシドの合成
【0116】
【化12】
tert−ブチル−3−(3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアート(1.0当量)をEtOAc(6体積)に溶解させる。水(0.3体積)、続いて尿素−過酸化水素(3当量)を添加する。無水フタル酸(3当量)を固体として分割添加して、反応器内の温度を45℃未満に維持する。無水フタル酸の添加終了後、混合物を45℃に加熱する。更に4時間撹拌後、熱を切る。10%w/wNaSO水溶液(1.5当量)を添加漏斗を介して添加する。NaSOの添加終了後、混合物を更に30分間撹拌し、層分離させる。有機層を撹拌し、10%w/w NaCO水溶液(2当量)を添加する。30分間撹拌後、層分離させる。有機相を13%w/v NaCl水溶液で洗浄する。次いで、有機相をろ過し、濃縮して、粗製2−(3−(tert−ブトキシカルボニル)フェニル)−3−メチルピリジン−1−オキシド(95%)を得る。それを次のステップに直接使用する。
【0117】
tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートの合成
【0118】
【化13】
2−(3−(tert−ブトキシカルボニル)フェニル)−3−メチルピリジン−1−オキシド(1当量)とピリジン(4当量)のMeCN(8体積)溶液を70℃に加熱する。メタンスルホン酸無水物(1.5当量)のMeCN(2体積)溶液を添加漏斗を介して50分間添加し、温度を75℃未満に維持する。全量添加後、混合物を更に0.5時間撹拌する。次いで、混合物を周囲温度に冷却する。エタノールアミン(10当量)を添加漏斗を介して添加する。2時間撹拌後、水(6体積)を添加し、混合物を10℃に冷却する。3時間以上撹拌後、固体をろ過によって収集し、水(3体積)、2:1 MeCN/水(3体積)及びMeCN(2×1.5体積)で洗浄する。固体を真空乾燥機中で50℃でわずかなN気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートを赤黄色固体として得る(収率53%)。
【0119】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートの合成
【0120】
【化14】
粗製酸塩化物をトルエン(酸塩化物に基づいて2.5体積)に溶解させ、tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアート(1当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.02当量)及びトリエチルアミン(3.0当量)の混合物のトルエン(tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートに基づいて4体積)溶液に添加漏斗を介して添加する。2時間後、水(tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートに基づいて4体積)を反応混合物に添加する。30分間撹拌後、層分離させる。次いで、有機相をろ過し、濃縮して、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートの濃厚な油を得る(定量的粗収率)。MeCN(粗生成物に基づいて3体積)を添加し、結晶化が起こるまで蒸留する。水(粗生成物に基づいて2体積)を添加し、混合物を2時間撹拌する。固体をろ過によって収集し、1:1(体積)MeCN/水(粗生成物に基づいて2×1体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートを褐色固体として得る。
【0121】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HCL塩の合成
【0122】
【化15】
MeCN(3.0体積)中の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート(1.0当量)のスラリーに水(0.83体積)、続いて濃HCl水溶液(0.83体積)を添加する。混合物を45±5℃に加熱する。24から48時間撹拌後、反応が終了し、混合物を周囲温度に冷却する。水(1.33体積)を添加し、混合物を撹拌する。固体をろ過によって収集し、水(2×0.3体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HClをオフホワイト固体として得る。
【0123】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(形態I)の合成
【0124】
【化16】
水(10体積)中の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HCl(1当量)のスラリーを周囲温度で撹拌する。24時間撹拌後、試料を採取する。試料をろ過し、固体を水(2×)で洗浄する。固体試料をDSC分析にかける。DSC分析によって形態Iへの完全な転化が示された後、固体をろ過によって収集し、水(2×1.0体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、形態Iをオフホワイト固体として得る(収率98%)。1HNMR(400MHz,DMSO-d6) 9.14 (s, 1H), 7.99-7.93 (m, 3H),7.80-7.78 (m, 1H),7.74-7.72(m,1H),7.60-7.55 (m, 2H), 7.41-7.33 (m, 2H),2.24 (s, 3H), 1.53-1.51(m,2H),1.19-1.17(m, 2H).
水及び塩基を使用した3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(形態I)の合成
【0125】
【化17】
周囲温度で撹拌された水(10体積)中の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HCl(1当量)のスラリーに50%w/wNaOH水溶液(2.5当量)を添加する。混合物を15分以上又は均一な溶液まで撹拌する。濃HCl(4当量)を添加して、形態Iを結晶化させる。混合物を必要に応じて60℃又は90℃に加熱して、t−ブチルベンゾアートエステルのレベルを低下させる。HPLC分析によって0.8%(AUC)以下のt−ブチルベンゾアートエステルが示されるまで、混合物を加熱する。次いで、混合物を周囲温度に冷却し、固体をろ過によって収集し、水(3×3.4体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、形態Iをオフホワイト固体として得る(収率97%)。
【0126】
ベンゾアートからの直接的な3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(形態I)の合成
【0127】
【化18】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート(1.0当量)のギ酸(3.0体積)溶液を70±10℃に加熱する。反応が終了するまで(1.0%AUC以下の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート)、又は8時間以下加熱して、反応を続ける。混合物を周囲温度に冷却する。50℃で加熱された水(6体積)に溶液を添加し、混合物を撹拌する。次いで、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートのレベルが0.8%(AUC)以下になるまで、混合物を70±10℃に加熱する。固体をろ過によって収集し、水(2×3体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、形態Iの化合物1をオフホワイト固体として得る。
【0128】
形態Iの化合物1の単結晶構造から計算されるX線回折パターンを図1に示す。表1に、図1の計算されたピークを示す。
【0129】
【表1】
形態Iの化合物1の実際のX線粉末回折パターンを図2に示す。表2に、図2の実際のピークを示す。
【0130】
【表2】
形態Iの化合物1の単結晶構造から計算されるX線回折パターンと、形態Iの化合物1の実際のX線粉末回折パターンとの重ね合わせを図3に示す。重ね合わせは、計算と実際のピーク位置の良好な一致を示し、差はわずか約0.15度にすぎない。
【0131】
形態Iの化合物1のDSC線を図4に示す。形態Iの化合物1の融解は、約204℃で起こる。
【0132】
単結晶X線分析に基づく形態Iの化合物1の配座図を図5〜8に示す。図6〜8は、二量体のカルボン酸基間の水素結合、及びその結果結晶中で起こる積み重ねを示す。分子の密な充填が結晶構造から明らかである。形態Iの化合物1は単斜晶、P2/nであり、以下の単位格子寸法を有する:a=4.9626(7)Å、b=12.299(2)Å、c=33.075(4)Å、β=93.938(9)°、V=2014.0Å、Z=4。構造データから計算される形態Iの化合物1の密度は、100Kで1.492g/cmである。
【0133】
化合物1のH NMRスペクトルを図9〜11に示す(図9及び10は、50mg/mL、0.5メチルセルロース−ポリソルベート80懸濁液中の形態Iの化合物1を示し、図11はHCl塩としての化合物1を示す。)。
【0134】
下表3に化合物1の追加の分析データを列挙する。
【0135】
【表3】
アッセイ
化合物のΔF508−CFTR修正特性を検出及び測定するアッセイ
化合物のΔF508−CFTR調節特性を評価する膜電位光学方法
光膜電位アッセイは、Gonzalez及びTsienによって記述された電位感受性FRETセンサー(Gonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1995)”Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells”Biophys J 69(4):1272−80、及びGonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1997)”Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer”Chem Biol 4(4):269−77参照)を、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)などの蛍光変化測定器と組み合わせて利用した(Gonzalez,J.E.,K.Oades,et al.(1999)”Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets”Drug Discov Today 4(9):431−439参照)。
【0136】
これらの電位感受性アッセイは、膜可溶性電位感受性色素DiSBAC(3)と蛍光性リン脂質CC2−DMPEとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の変化に基づく。CC2−DMPEは、原形質膜の外側リーフレットに結合し、FRET供与体として作用する。膜電位(V)の変化は、負に帯電したDiSBAC(3)を原形質膜全域に再分布させ、CC2−DMPEからのエネルギー移動量がそれに応じて変化する。蛍光発光の変化をVIPRTM IIによってモニターした。VIPRTM IIは、96又は384ウェルマイクロタイタープレート中で細胞を用いたスクリーニングを実施するように設計された一体型の液体処理装置と蛍光検出器である。
【0137】
1.修正化合物の特定
ΔF508−CFTRに関連する輸送欠陥を修正する小分子を特定するために、単回添加HTSアッセイ形式を開発した。試験化合物の存在下又は非存在下(負の対照)で、細胞を無血清培地中で37℃で16時間インキュベートした。正の対照として、384ウェルプレートに蒔いた細胞を27℃で16時間インキュベートして、ΔF508−CFTRを「温度修正」した。続いて、細胞をKrebs Ringers液で3回リンスし、電位感受性色素を添加した。ΔF508−CFTRを活性化するために、10μMフォルスコリン及びCFTR増強物質ゲニステイン(20μM)をCl非含有培地と一緒に各ウェルに添加した。Cl非含有培地の添加は、ΔF508−CFTRの活性化に応答してCl流出を促進した。生じた膜脱分極を、FRETに基づく電圧センサー色素を使用して光学的にモニターした。
【0138】
2.増強物質化合物の特定
ΔF508−CFTRの増強物質を特定するために、2回添加HTSアッセイ形式を開発した。最初の添加中に、試験化合物を含む又は含まないCl非含有培地を各ウェルに添加した。22秒後、2〜10μMフォルスコリンを含むCl非含有培地の第2の添加分を添加して、ΔF508−CFTRを活性化した。両方の添加後の細胞外Cl濃度は28mMであり、ΔF508−CFTR活性化に応答してCl流出を促進した。生じた膜脱分極を、FRETに基づく電圧センサー色素を使用して光学的にモニターした。
【0139】
3.溶液
浴溶液#1:(mM)NaCl 160、KCl 4.5、CaCl 2、MgCl 1、HEPES 10、NaOHを用いてpH7.4
塩化物イオン非含有浴溶液:浴溶液#1中の塩化物塩をグルコン酸塩で置換する。
【0140】
CC2−DMPE:DMSO中の10mM原液として調製し、−20℃で保管。
【0141】
DiSBAC(3):DMSO中の10mM原液として調製し、−20℃で保管。
【0142】
4.細胞培養
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を膜電位の光学的測定に使用する。175cm培養フラスコ中の2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep及び25mM HEPESを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO及び湿度90%で細胞を維持する。すべての光学的アッセイについて、384ウェルmatrigel被覆プレート中に細胞を30,000個/ウェルで蒔き、37℃で2時間培養後、増強物質アッセイのために27℃で24時間培養した。修正アッセイのために、細胞を27℃又は37℃で化合物と一緒に、さらに、化合物なしで、16〜24時間培養する。
【0143】
化合物のΔF508−CFTR調節特性を評価する電気生理学的アッセイ
1.チャンバーアッセイの使用
チャンバー実験の使用を、ΔF508−CFTRを発現する分極された上皮細胞について実施して、光学的アッセイにおいて特定されたΔF508−CFTR調節物質を更に特徴づけた。Costar Snapwell細胞培養挿入物上で成長させたFRTΔF508−CFTR上皮細胞をUssingチャンバー(Physiologic Instruments,Inc.、San Diego、CA)に取り付け、電位固定システム(Department of Bioengineering,University of Iowa,IA及びPhysiologic Instruments,Inc.、San Diego、CA)を使用して単層を連続的に短絡させた。経上皮の抵抗を2mVパルスを印加して測定した。これらの条件下で、FRT上皮は4KΩ/cm以上の抵抗を示した。溶液を27℃で維持し、空気をバブリングさせた。電極オフセット電位及び流体抵抗を、無細胞挿入物を使用して補正した。これらの条件下で、電流は、頂端膜において発現されるΔF508−CFTRを介したClの流れを反映する。MP100A−CEインターフェース及びAcqKnowledgeソフトウェア(v3.2.6;BIOPAC Systems、Santa Barbara、CA)を使用して、ISCをデジタル方式で取得した。
【0144】
2.修正化合物の特定
典型的なプロトコルは、側底から頂端膜のCl濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、正常リンゲル液を側底膜に使用し、一方、頂端側NaClを等モルの(NaOHでpH7.4に滴定された)グルコン酸ナトリウムで置換して、上皮を横切る大きいCl濃度勾配を得た。すべての実験を無処置単層を用いて実施した。ΔF508−CFTRを十分に活性化するために、フォルスコリン(10μM)及びPDE阻害剤IBMX(100μM)を適用し、続いてCFTR増強物質ゲニステイン(50μM)を添加した。
【0145】
他の細胞型において認められるように、ΔF508−CFTRを安定に発現するFRT細胞の低温インキュベーションによって、原形質膜中のCFTRの機能密度が増加する。修正化合物の活性を求めるために、細胞を10μM試験化合物と一緒に37℃で24時間インキュベートし、続いて記録前に3回洗浄した。化合物で処理した細胞においてcAMP及びゲニステインによって媒介されるISCを、27℃及び37℃の対照に対して正規化し、活性百分率として表した。細胞を修正化合物と一緒にプレインキュベートすると、cAMP及びゲニステインによって媒介されるISCが37℃の対照に比べてかなり増加した。
【0146】
3.増強物質化合物の特定
典型的なプロトコルは、側底から頂端膜のCl濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、正常リンゲル液を側底膜に使用し、ナイスタチン(360μg/ml)で透過性にし、一方、頂端側NaClを等モルの(NaOHでpH7.4に滴定された)グルコン酸ナトリウムで置換して、上皮を横切る大きいCl濃度勾配を得た。すべての実験をナイスタチン透過化処理の30分後に実施した。フォルスコリン(10μM)及びすべての試験化合物を細胞培養挿入物の両側に添加した。推定上のΔF508−CFTR増強物質の有効性を、公知の増強物質ゲニステインの有効性と比較した。
【0147】
4.溶液
側底溶液(mM):NaCl(135)、CaCl(1.2)、MgCl(1.2)、KHPO(2.4)、KHPO(0.6)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10)及びデキストロース(10)。NaOHを使用して溶液をpH7.4に滴定した。
【0148】
頂端溶液(mM):側底溶液と同じ。ただし、NaClをグルコン酸Na(135)で置換した。
【0149】
5.細胞培養
ΔF508−CFTRを発現するFisherラット上皮(FRT)細胞(FRTΔF508−CFTR)を、本発明者らによる光学的アッセイから特定された推定ΔF508−CFTR調節物質のUssingチャンバー実験に使用した。細胞をCostar Snapwell細胞培養挿入物上で培養し、5%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したCoon改変Ham F−12培地中で37℃及び5%COで5日間培養した。化合物の増強物質活性を特徴づけるのに使用する前に、細胞を27℃で16〜48時間インキュベートして、ΔF508−CFTRを修正した。修正化合物の活性を求めるために、細胞を27℃又は37℃で化合物と一緒に、さらに、化合物なしで、24時間インキュベートした。
【0150】
6.ホールセル記録
ΔF508−CFTRを安定に発現する、温度及び試験化合物で修正されたNIH3T3細胞における巨視的ΔF508−CFTR電流(IΔF508)を、穿孔パッチホールセル記録を使用してモニターした。手短に述べると、IΔF508の電位固定記録を、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.、Foster City、CA)を用いて室温で実施した。すべての記録をサンプリング周波数10kHzで取得し、1kHzの低域フィルターにかけた。ピペットは、細胞内液で満たすと5〜6MΩの抵抗を有した。これらの記録条件下で、室温でのClの計算逆転電位(ECl)は−28mVであった。すべての記録は、シール抵抗>20GΩ及び直列抵抗<15MΩであった。パルス発生、データ取得及び分析を、Clampex 8に接続されたDigidata 1320 A/Dインターフェースを備えたPC(Axon Instruments Inc.)を使用して実施した。浴は、食塩水<250μlを含み、重力駆動の潅流システムを使用して速度2ml/分で連続的に洗い流した。
【0151】
7.修正化合物の特定
原形質膜中の機能的ΔF508−CFTRの密度を増加させる修正化合物の活性を求めるために、本発明者らは、上記穿孔パッチ記録技術を使用して、修正化合物で24時間処理した後の電流密度を測定した。ΔF508−CFTRを十分に活性化するために、10μMフォルスコリン及び20μMゲニステインを細胞に添加した。本発明者らの記録条件下では、27℃で24時間インキュベートした後の電流密度は、37℃で24時間インキュベートした後に観察された電流密度より高かった。これらの結果は、原形質膜中のΔF508−CFTRの密度に対する低温インキュベーションの公知の効果と一致する。CFTR電流密度に対する修正化合物の効果を求めるために、細胞を10μM試験化合物と一緒に37℃で24時間インキュベートし、電流密度を27℃及び37℃の対照と比較した(%活性)。記録前に、細胞を細胞外記録培地で3回洗浄して、残留試験化合物を除去した。10μM修正化合物と一緒にプレインキュベートすると、cAMP及びゲニステインに依存性した電流が37℃の対照に比べてかなり増加した。
【0152】
8.増強物質化合物の特定
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3細胞において巨視的ΔF508−CFTR Cl電流(IΔF508)を増加させるΔF508−CFTR増強物質の能力も穿孔パッチ記録技術を用いて調べた。光学的アッセイから特定された増強物質は、光学的アッセイにおいて認められた類似の作用強度及び効力でIΔF508の用量依存的増加を惹起した。試験したすべての細胞において、増強物質の適用前及び適用中の逆転電位は、約−30mVであった。約−30mVは、計算したECl(−28mV)である。
【0153】
9.溶液
細胞内液(mM):アスパラギン酸Cs(90)、CsCl(50)、MgCl(1)、HEPES(10)及び240μg/mlアンホテリシンB(CsOHを用いて7.35に調節されたpH)。
【0154】
細胞外液(mM):N−メチル−D−グルカミン(NMDG)−Cl(150)、MgCl(2)、CaCl(2)、HEPES(10)(HClを用いて7.35に調節されたpH)。
【0155】
10.細胞培養
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞をホールセル記録に使用する。175cm培養フラスコ中の2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep及び25mM HEPESを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO及び湿度90%で細胞を維持する。ホールセル記録の場合、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リジン被覆カバーガラス上に蒔き、27℃で24〜48時間培養した後、増強物質の活性を試験するのに使用した。さらに、修正化合物と一緒に、又は修正化合物なしで、37℃でインキュベートして、修正化合物の活性を測定した。
【0156】
11.単一チャネル記録
NIH3T3細胞中で安定に発現された温度修正ΔF508−CFTRの単一チャネル活性、及び増強物質化合物の活性を、切り出したインサイドアウト膜パッチを使用して観察した。手短に述べると、単一チャネル活性の電位固定記録を、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.)を用いて室温で実施した。すべての記録をサンプリング周波数10kHzで取得し、400Hzの低域フィルターにかけた。パッチピペットは、Corning Kovar Sealing#7052ガラス(World Precision Instruments,Inc.、Sarasota、FL)から作製され、細胞外液で満たしたときに5〜8MΩの抵抗を有した。切り出し後に1mM Mg−ATP及び75nM cAMP依存性タンパク質キナーゼ触媒サブユニット(PKA;Promega Corp.Madison、WI)を添加することによってΔF508−CFTRを活性化した。チャネル活性が安定化された後、重力駆動微小潅流システムを使用してパッチを洗い流した。流入液をパッチに隣接して置き、1〜2秒以内に溶液を完全に交換した。急速な洗い流し中にΔF508−CFTR活性を維持するために、非特異的ホスファターゼ阻害剤F(10mM NaF)を浴溶液に添加した。これらの記録条件下で、チャネル活性は、パッチ記録の期間(最高60分間)を通して一定のままであった。細胞内液から細胞外液に移動する陽電荷(反対方向に移動する陰イオン)によって生成される電流を正電流として示す。ピペット電位(V)を80mVで維持した。
【0157】
2個以下の活性チャネルを含む膜パッチからチャネル活性を分析した。最高同時開口数によって、実験過程中の活性チャネル数が決まった。単一チャネルの電流振幅を測定するために、120秒のΔF508−CFTR活性から記録されたデータを100Hzで「オフライン」でフィルターし、次いでそれを使用して全点振幅(all−point amplitude)ヒストグラムを構築した。全点振幅ヒストグラムは、Bio−Patch Analysisソフトウェア(Bio−Logic Comp.France)を使用してマルチガウシアン関数に当てはめられた。合計の微小電流及び開口率(P)を、120秒のチャネル活性から決定した。Pを、Bio−Patchソフトウェアを使用して、又は関係式P=I/i(N)から、決定した。式中、I=平均電流、i=単一チャネル電流振幅、及びN=パッチ中の活性チャネル数である。
【0158】
12.溶液
細胞外液(mM):NMDG(150)、アスパラギン酸(150)、CaCl(5)、MgCl(2)及びHEPES(10)(Tris塩基を用いて7.35に調節されたpH)。
【0159】
細胞内液(mM):NMDG−Cl(150)、MgCl(2)、EGTA(5)、TES(10)及びTris塩基(14)(HClを用いて7.35に調節されたpH)。
【0160】
13.細胞培養
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、切り出された膜のパッチクランプ記録に使用する。175cm培養フラスコ中の2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep及び25mM HEPESを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO及び湿度90%で細胞を維持する。単一チャネル記録の場合、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リジン被覆カバーガラス上に蒔き、使用前に27℃で24〜48時間培養した。
【0161】
上記手順を使用して化合物1の活性、すなわちEC50を測定し、表4に示した。
【0162】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11