【実施例】
【0096】
方法及び材料
示差走査熱量測定(DSC)
形態Iの示差走査熱量測定(DSC)データをDSC Q100 V9.6 Build 290(TA Instruments、New Castle、DE)を用いて収集した。温度をインジウムを用いて較正し、熱容量をサファイアを用いて較正した。試料3〜6mgをアルミニウムパンに計量し、1個のピンホールを有する蓋を圧着した。試料を25℃から350℃まで加熱速度1.0℃/分、窒素ガスパージ50ml/分で走査した。データをThermal Advantage Q SeriesTM version 2.2.0.248ソフトウェアによって収集し、Universal Analysis software version 4.1D(TA Instruments、New Castle、DE)によって分析した。報告した数は、単一の分析結果である。
【0097】
XRPD(X線粉末回折)
HI−STAR2次元検出器及びフラットグラファイトモノクロメーターを備えたBruker D8 DISCOVER粉末回折計によって、形態1のX線回折(XRD)データを収集した。Kα照射のCu封管を40kV、35mAで使用した。試料を25℃のゼロバックグラウンドシリコンウェーハ上に置いた。各試料について、2個のデータフレームを各々2つの異なるθ
2角度8°及び26°で120秒目に収集した。データをGADDSソフトウェアによって積分し、DIFFRACT
plusEVAソフトウェアによってマージした。報告したピーク位置の不確実性は±0.2度である。
【0098】
Vitride(登録商標)(ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム水素化物[又はNaAlH
2(OCH
2CH
2OCH
3)
2]、65wgt%トルエン溶液)をAldrich Chemicalsから購入した。
【0099】
2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸をSaltigo(the Lanxess Corporationの系列会社)から購入した。
【0100】
本願のどこでも化合物の名称が化合物の構造を正確に記述することができない場合、構造が名称に取って代わり、基準となる。
【0101】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HClの合成
酸塩化物部分
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−メタノールの合成
【0102】
【化5】
市販2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸(1.0当量)をトルエン(10体積)中でスラリーにする。Vitride(登録商標)(2当量)を、温度を15〜25℃に維持する速度で添加漏斗を介して添加する。添加の最後に、温度を40℃に2時間上昇させ、次いで10%(w/w)NaOH水溶液(4.0当量)を添加漏斗を介して慎重に添加し、温度を40〜50℃に維持する。更に30分間撹拌後、40℃で層分離させる。有機相を20℃に冷却し、次いで水(2×1.5体積)で洗浄し、脱水し(Na
2SO
4)、ろ過し、濃縮して、粗製(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−メタノールを得る。それを次のステップに直接使用する。
【0103】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールの合成
【0104】
【化6】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−メタノール(1.0当量)をMTBE(5体積)に溶解させる。触媒作用量のDMAP(1mol%)を添加し、SOCl
2(1.2当量)を添加漏斗を介して添加する。反応器内の温度を15〜25℃に維持する速度でSOCl
2を添加する。温度を30℃に1時間上昇させ、次いで20℃に冷却し、次いで水(4体積)を添加漏斗を介して添加し、温度を30℃未満に維持する。更に30分間撹拌後、層分離させる。有機層を撹拌し、10%(w/v)NaOH水溶液(4.4体積)を添加する。15から20分間撹拌後、層分離させる。次いで、有機相を脱水し(Na
2SO
4)、ろ過し、濃縮して、粗製5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールを得る。それを次のステップに直接使用する。
【0105】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−アセトニトリルの合成
【0106】
【化7】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(1当量)のDMSO(1.25体積)溶液を、DMSO(3体積)中のNaCN(1.4当量)のスラリーに添加し、温度を30〜40℃に維持する。混合物を1時間撹拌し、次いで水(6体積)、続いてMTBE(4体積)を添加する。30分間撹拌後、層分離させる。水層をMTBE(1.8体積)で抽出する。混合有機層を水(1.8体積)で洗浄し、脱水し(Na
2SO
4)、ろ過し、濃縮して、粗製(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−アセトニトリル(95%)を得る。それを次のステップに直接使用する。
【0107】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルの合成
【0108】
【化8】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−アセトニトリル(1.0当量)、50wt%KOH水溶液(5.0当量)1−ブロモ−2−クロロエタン(1.5当量)及びOct
4NBr(0.02当量)の混合物を70℃で1時間加熱する反応混合物を冷却し、次いでMTBE及び水で処理する。有機相を水及び塩水で洗浄し、次いで溶媒を除去して、(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを得る。
【0109】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸の合成
【0110】
【化9】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを6M NaOH(8当量)を用いてエタノール(5体積)中で80℃で終夜加水分解する。混合物を室温に冷却し、エタノールを減圧蒸発させる。残留物を水及びMTBEにとり、1M HClを添加し、層分離させる。次いで、MTBE層をジシクロヘキシルアミン(0.97当量)で処理した。スラリーを0℃に冷却し、ろ過し、ヘプタンで洗浄して、対応するDCHA塩を得る。塩をMTBE及び10%クエン酸にとり、すべての固体が溶解するまで撹拌する。層分離させ、MTBE層を水及び塩水で洗浄する。溶媒をヘプタンに交換し、続いてろ過し、真空乾燥機中で50℃で終夜乾燥後、1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸を得る。
【0111】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボニルクロリドの合成
【0112】
【化10】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸(1.2当量)をトルエン(2.5体積)中でスラリーにし、混合物を60℃に加熱する。SOCl
2(1.4当量)を添加漏斗を介して添加する。トルエン及びSOCl
2を30分後に反応混合物から蒸留する。追加のトルエン(2.5体積)を添加し、再度蒸留する。
【0113】
アミン部分
tert−ブチル−3−(3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートの合成
【0114】
【化11】
2−ブロモ−3−メチルピリジン(1.0当量)をトルエン(12体積)に溶解させる。K
2CO
3(4.8当量)、続いて水(3.5体積)を添加し、混合物をN
2気流下で65℃に1時間加熱する。次いで、3−(t−ブトキシカルボニル)フェニルボロン酸(1.05当量)及びPd(dppf)Cl
2・CH
2Cl
2(0.015当量)を添加し、混合物を80℃に加熱する。2時間後、熱を切り、水を添加し(3.5体積)、層分離させる。次いで、有機相を水(3.5体積)で洗浄し、10%メタンスルホン酸水溶液(MsOH 2当量、7.7体積)で抽出する。水相を、50%NaOH水溶液(2当量)を用いて塩基性にし、EtOAc(8体積)で抽出する。有機層を濃縮して、粗製tert−ブチル−3−(3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアート(82%)を得る。それを次のステップに直接使用する。
【0115】
2−(3−(tert−ブトキシカルボニル)フェニル)−3−メチルピリジン−1−オキシドの合成
【0116】
【化12】
tert−ブチル−3−(3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアート(1.0当量)をEtOAc(6体積)に溶解させる。水(0.3体積)、続いて尿素−過酸化水素(3当量)を添加する。無水フタル酸(3当量)を固体として分割添加して、反応器内の温度を45℃未満に維持する。無水フタル酸の添加終了後、混合物を45℃に加熱する。更に4時間撹拌後、熱を切る。10%w/wNa
2SO
3水溶液(1.5当量)を添加漏斗を介して添加する。Na
2SO
3の添加終了後、混合物を更に30分間撹拌し、層分離させる。有機層を撹拌し、10%w/w Na
2CO
3水溶液(2当量)を添加する。30分間撹拌後、層分離させる。有機相を13%w/v NaCl水溶液で洗浄する。次いで、有機相をろ過し、濃縮して、粗製2−(3−(tert−ブトキシカルボニル)フェニル)−3−メチルピリジン−1−オキシド(95%)を得る。それを次のステップに直接使用する。
【0117】
tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートの合成
【0118】
【化13】
2−(3−(tert−ブトキシカルボニル)フェニル)−3−メチルピリジン−1−オキシド(1当量)とピリジン(4当量)のMeCN(8体積)溶液を70℃に加熱する。メタンスルホン酸無水物(1.5当量)のMeCN(2体積)溶液を添加漏斗を介して50分間添加し、温度を75℃未満に維持する。全量添加後、混合物を更に0.5時間撹拌する。次いで、混合物を周囲温度に冷却する。エタノールアミン(10当量)を添加漏斗を介して添加する。2時間撹拌後、水(6体積)を添加し、混合物を10℃に冷却する。3時間以上撹拌後、固体をろ過によって収集し、水(3体積)、2:1 MeCN/水(3体積)及びMeCN(2×1.5体積)で洗浄する。固体を真空乾燥機中で50℃でわずかなN
2気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートを赤黄色固体として得る(収率53%)。
【0119】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートの合成
【0120】
【化14】
粗製酸塩化物をトルエン(酸塩化物に基づいて2.5体積)に溶解させ、tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアート(1当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.02当量)及びトリエチルアミン(3.0当量)の混合物のトルエン(tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートに基づいて4体積)溶液に添加漏斗を介して添加する。2時間後、水(tert−ブチル−3−(6−アミノ−3−メチルピリジン−2−イル)ベンゾアートに基づいて4体積)を反応混合物に添加する。30分間撹拌後、層分離させる。次いで、有機相をろ過し、濃縮して、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートの濃厚な油を得る(定量的粗収率)。MeCN(粗生成物に基づいて3体積)を添加し、結晶化が起こるまで蒸留する。水(粗生成物に基づいて2体積)を添加し、混合物を2時間撹拌する。固体をろ過によって収集し、1:1(体積)MeCN/水(粗生成物に基づいて2×1体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN
2気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートを褐色固体として得る。
【0121】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HCL塩の合成
【0122】
【化15】
MeCN(3.0体積)中の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート(1.0当量)のスラリーに水(0.83体積)、続いて濃HCl水溶液(0.83体積)を添加する。混合物を45±5℃に加熱する。24から48時間撹拌後、反応が終了し、混合物を周囲温度に冷却する。水(1.33体積)を添加し、混合物を撹拌する。固体をろ過によって収集し、水(2×0.3体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN
2気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HClをオフホワイト固体として得る。
【0123】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(形態I)の合成
【0124】
【化16】
水(10体積)中の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HCl(1当量)のスラリーを周囲温度で撹拌する。24時間撹拌後、試料を採取する。試料をろ過し、固体を水(2×)で洗浄する。固体試料をDSC分析にかける。DSC分析によって形態Iへの完全な転化が示された後、固体をろ過によって収集し、水(2×1.0体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN
2気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、形態Iをオフホワイト固体として得る(収率98%)。
1HNMR(400MHz,DMSO-d6) 9.14 (s, 1H), 7.99-7.93 (m, 3H),7.80-7.78 (m, 1H),7.74-7.72(m,1H),7.60-7.55 (m, 2H), 7.41-7.33 (m, 2H),2.24 (s, 3H), 1.53-1.51(m,2H),1.19-1.17(m, 2H).
水及び塩基を使用した3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(形態I)の合成
【0125】
【化17】
周囲温度で撹拌された水(10体積)中の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸・HCl(1当量)のスラリーに50%w/wNaOH水溶液(2.5当量)を添加する。混合物を15分以上又は均一な溶液まで撹拌する。濃HCl(4当量)を添加して、形態Iを結晶化させる。混合物を必要に応じて60℃又は90℃に加熱して、t−ブチルベンゾアートエステルのレベルを低下させる。HPLC分析によって0.8%(AUC)以下のt−ブチルベンゾアートエステルが示されるまで、混合物を加熱する。次いで、混合物を周囲温度に冷却し、固体をろ過によって収集し、水(3×3.4体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN
2気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、形態Iをオフホワイト固体として得る(収率97%)。
【0126】
ベンゾアートからの直接的な3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸(形態I)の合成
【0127】
【化18】
3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート(1.0当量)のギ酸(3.0体積)溶液を70±10℃に加熱する。反応が終了するまで(1.0%AUC以下の3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアート)、又は8時間以下加熱して、反応を続ける。混合物を周囲温度に冷却する。50℃で加熱された水(6体積)に溶液を添加し、混合物を撹拌する。次いで、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソル−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)−t−ブチルベンゾアートのレベルが0.8%(AUC)以下になるまで、混合物を70±10℃に加熱する。固体をろ過によって収集し、水(2×3体積)で洗浄し、フィルター上で減圧下である程度乾燥させる。固体を真空乾燥機中で60℃でわずかなN
2気流で一定重量(差<1%)に乾燥させて、形態Iの化合物1をオフホワイト固体として得る。
【0128】
形態Iの化合物1の単結晶構造から計算されるX線回折パターンを
図1に示す。表1に、
図1の計算されたピークを示す。
【0129】
【表1】
形態Iの化合物1の実際のX線粉末回折パターンを
図2に示す。表2に、
図2の実際のピークを示す。
【0130】
【表2】
形態Iの化合物1の単結晶構造から計算されるX線回折パターンと、形態Iの化合物1の実際のX線粉末回折パターンとの重ね合わせを
図3に示す。重ね合わせは、計算と実際のピーク位置の良好な一致を示し、差はわずか約0.15度にすぎない。
【0131】
形態Iの化合物1のDSC線を
図4に示す。形態Iの化合物1の融解は、約204℃で起こる。
【0132】
単結晶X線分析に基づく形態Iの化合物1の配座図を
図5〜8に示す。
図6〜8は、二量体のカルボン酸基間の水素結合、及びその結果結晶中で起こる積み重ねを示す。分子の密な充填が結晶構造から明らかである。形態Iの化合物1は単斜晶、P2
1/nであり、以下の単位格子寸法を有する:a=4.9626(7)Å、b=12.299(2)Å、c=33.075(4)Å、β=93.938(9)°、V=2014.0Å
3、Z=4。構造データから計算される形態Iの化合物1の密度は、100Kで1.492g/cm
3である。
【0133】
化合物1の
1H NMRスペクトルを
図9〜11に示す(
図9及び10は、50mg/mL、0.5メチルセルロース−ポリソルベート80懸濁液中の形態Iの化合物1を示し、
図11はHCl塩としての化合物1を示す。)。
【0134】
下表3に化合物1の追加の分析データを列挙する。
【0135】
【表3】
アッセイ
化合物のΔF508−CFTR修正特性を検出及び測定するアッセイ
化合物のΔF508−CFTR調節特性を評価する膜電位光学方法
光膜電位アッセイは、Gonzalez及びTsienによって記述された電位感受性FRETセンサー(Gonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1995)”Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells”Biophys J 69(4):1272−80、及びGonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1997)”Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer”Chem Biol 4(4):269−77参照)を、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)などの蛍光変化測定器と組み合わせて利用した(Gonzalez,J.E.,K.Oades,et al.(1999)”Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets”Drug Discov Today 4(9):431−439参照)。
【0136】
これらの電位感受性アッセイは、膜可溶性電位感受性色素DiSBAC
2(3)と蛍光性リン脂質CC2−DMPEとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の変化に基づく。CC2−DMPEは、原形質膜の外側リーフレットに結合し、FRET供与体として作用する。膜電位(V
m)の変化は、負に帯電したDiSBAC
2(3)を原形質膜全域に再分布させ、CC2−DMPEからのエネルギー移動量がそれに応じて変化する。蛍光発光の変化をVIPR
TM IIによってモニターした。VIPR
TM IIは、96又は384ウェルマイクロタイタープレート中で細胞を用いたスクリーニングを実施するように設計された一体型の液体処理装置と蛍光検出器である。
【0137】
1.修正化合物の特定
ΔF508−CFTRに関連する輸送欠陥を修正する小分子を特定するために、単回添加HTSアッセイ形式を開発した。試験化合物の存在下又は非存在下(負の対照)で、細胞を無血清培地中で37℃で16時間インキュベートした。正の対照として、384ウェルプレートに蒔いた細胞を27℃で16時間インキュベートして、ΔF508−CFTRを「温度修正」した。続いて、細胞をKrebs Ringers液で3回リンスし、電位感受性色素を添加した。ΔF508−CFTRを活性化するために、10μMフォルスコリン及びCFTR増強物質ゲニステイン(20μM)をCl
−非含有培地と一緒に各ウェルに添加した。Cl
−非含有培地の添加は、ΔF508−CFTRの活性化に応答してCl
−流出を促進した。生じた膜脱分極を、FRETに基づく電圧センサー色素を使用して光学的にモニターした。
【0138】
2.増強物質化合物の特定
ΔF508−CFTRの増強物質を特定するために、2回添加HTSアッセイ形式を開発した。最初の添加中に、試験化合物を含む又は含まないCl
−非含有培地を各ウェルに添加した。22秒後、2〜10μMフォルスコリンを含むCl
−非含有培地の第2の添加分を添加して、ΔF508−CFTRを活性化した。両方の添加後の細胞外Cl
−濃度は28mMであり、ΔF508−CFTR活性化に応答してCl
−流出を促進した。生じた膜脱分極を、FRETに基づく電圧センサー色素を使用して光学的にモニターした。
【0139】
3.溶液
浴溶液#1:(mM)NaCl 160、KCl 4.5、CaCl
2 2、MgCl
2 1、HEPES 10、NaOHを用いてpH7.4
塩化物イオン非含有浴溶液:浴溶液#1中の塩化物塩をグルコン酸塩で置換する。
【0140】
CC2−DMPE:DMSO中の10mM原液として調製し、−20℃で保管。
【0141】
DiSBAC
2(3):DMSO中の10mM原液として調製し、−20℃で保管。
【0142】
4.細胞培養
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を膜電位の光学的測定に使用する。175cm
2培養フラスコ中の2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep及び25mM HEPESを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO
2及び湿度90%で細胞を維持する。すべての光学的アッセイについて、384ウェルmatrigel被覆プレート中に細胞を30,000個/ウェルで蒔き、37℃で2時間培養後、増強物質アッセイのために27℃で24時間培養した。修正アッセイのために、細胞を27℃又は37℃で化合物と一緒に、さらに、化合物なしで、16〜24時間培養する。
【0143】
化合物のΔF508−CFTR調節特性を評価する電気生理学的アッセイ
1.チャンバーアッセイの使用
チャンバー実験の使用を、ΔF508−CFTRを発現する分極された上皮細胞について実施して、光学的アッセイにおいて特定されたΔF508−CFTR調節物質を更に特徴づけた。Costar Snapwell細胞培養挿入物上で成長させたFRT
ΔF508−CFTR上皮細胞をUssingチャンバー(Physiologic Instruments,Inc.、San Diego、CA)に取り付け、電位固定システム(Department of Bioengineering,University of Iowa,IA及びPhysiologic Instruments,Inc.、San Diego、CA)を使用して単層を連続的に短絡させた。経上皮の抵抗を2mVパルスを印加して測定した。これらの条件下で、FRT上皮は4KΩ/cm
2以上の抵抗を示した。溶液を27℃で維持し、空気をバブリングさせた。電極オフセット電位及び流体抵抗を、無細胞挿入物を使用して補正した。これらの条件下で、電流は、頂端膜において発現されるΔF508−CFTRを介したCl
−の流れを反映する。MP100A−CEインターフェース及びAcqKnowledgeソフトウェア(v3.2.6;BIOPAC Systems、Santa Barbara、CA)を使用して、I
SCをデジタル方式で取得した。
【0144】
2.修正化合物の特定
典型的なプロトコルは、側底から頂端膜のCl
−濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、正常リンゲル液を側底膜に使用し、一方、頂端側NaClを等モルの(NaOHでpH7.4に滴定された)グルコン酸ナトリウムで置換して、上皮を横切る大きいCl
−濃度勾配を得た。すべての実験を無処置単層を用いて実施した。ΔF508−CFTRを十分に活性化するために、フォルスコリン(10μM)及びPDE阻害剤IBMX(100μM)を適用し、続いてCFTR増強物質ゲニステイン(50μM)を添加した。
【0145】
他の細胞型において認められるように、ΔF508−CFTRを安定に発現するFRT細胞の低温インキュベーションによって、原形質膜中のCFTRの機能密度が増加する。修正化合物の活性を求めるために、細胞を10μM試験化合物と一緒に37℃で24時間インキュベートし、続いて記録前に3回洗浄した。化合物で処理した細胞においてcAMP及びゲニステインによって媒介されるI
SCを、27℃及び37℃の対照に対して正規化し、活性百分率として表した。細胞を修正化合物と一緒にプレインキュベートすると、cAMP及びゲニステインによって媒介されるI
SCが37℃の対照に比べてかなり増加した。
【0146】
3.増強物質化合物の特定
典型的なプロトコルは、側底から頂端膜のCl
−濃度勾配を利用した。この勾配を設定するために、正常リンゲル液を側底膜に使用し、ナイスタチン(360μg/ml)で透過性にし、一方、頂端側NaClを等モルの(NaOHでpH7.4に滴定された)グルコン酸ナトリウムで置換して、上皮を横切る大きいCl
−濃度勾配を得た。すべての実験をナイスタチン透過化処理の30分後に実施した。フォルスコリン(10μM)及びすべての試験化合物を細胞培養挿入物の両側に添加した。推定上のΔF508−CFTR増強物質の有効性を、公知の増強物質ゲニステインの有効性と比較した。
【0147】
4.溶液
側底溶液(mM):NaCl(135)、CaCl
2(1.2)、MgCl
2(1.2)、K
2HPO
4(2.4)、KHPO
4(0.6)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10)及びデキストロース(10)。NaOHを使用して溶液をpH7.4に滴定した。
【0148】
頂端溶液(mM):側底溶液と同じ。ただし、NaClをグルコン酸Na(135)で置換した。
【0149】
5.細胞培養
ΔF508−CFTRを発現するFisherラット上皮(FRT)細胞(FRT
ΔF508−CFTR)を、本発明者らによる光学的アッセイから特定された推定ΔF508−CFTR調節物質のUssingチャンバー実験に使用した。細胞をCostar Snapwell細胞培養挿入物上で培養し、5%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したCoon改変Ham F−12培地中で37℃及び5%CO
2で5日間培養した。化合物の増強物質活性を特徴づけるのに使用する前に、細胞を27℃で16〜48時間インキュベートして、ΔF508−CFTRを修正した。修正化合物の活性を求めるために、細胞を27℃又は37℃で化合物と一緒に、さらに、化合物なしで、24時間インキュベートした。
【0150】
6.ホールセル記録
ΔF508−CFTRを安定に発現する、温度及び試験化合物で修正されたNIH3T3細胞における巨視的ΔF508−CFTR電流(I
ΔF508)を、穿孔パッチホールセル記録を使用してモニターした。手短に述べると、I
ΔF508の電位固定記録を、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.、Foster City、CA)を用いて室温で実施した。すべての記録をサンプリング周波数10kHzで取得し、1kHzの低域フィルターにかけた。ピペットは、細胞内液で満たすと5〜6MΩの抵抗を有した。これらの記録条件下で、室温でのCl
−の計算逆転電位(E
Cl)は−28mVであった。すべての記録は、シール抵抗>20GΩ及び直列抵抗<15MΩであった。パルス発生、データ取得及び分析を、Clampex 8に接続されたDigidata 1320 A/Dインターフェースを備えたPC(Axon Instruments Inc.)を使用して実施した。浴は、食塩水<250μlを含み、重力駆動の潅流システムを使用して速度2ml/分で連続的に洗い流した。
【0151】
7.修正化合物の特定
原形質膜中の機能的ΔF508−CFTRの密度を増加させる修正化合物の活性を求めるために、本発明者らは、上記穿孔パッチ記録技術を使用して、修正化合物で24時間処理した後の電流密度を測定した。ΔF508−CFTRを十分に活性化するために、10μMフォルスコリン及び20μMゲニステインを細胞に添加した。本発明者らの記録条件下では、27℃で24時間インキュベートした後の電流密度は、37℃で24時間インキュベートした後に観察された電流密度より高かった。これらの結果は、原形質膜中のΔF508−CFTRの密度に対する低温インキュベーションの公知の効果と一致する。CFTR電流密度に対する修正化合物の効果を求めるために、細胞を10μM試験化合物と一緒に37℃で24時間インキュベートし、電流密度を27℃及び37℃の対照と比較した(%活性)。記録前に、細胞を細胞外記録培地で3回洗浄して、残留試験化合物を除去した。10μM修正化合物と一緒にプレインキュベートすると、cAMP及びゲニステインに依存性した電流が37℃の対照に比べてかなり増加した。
【0152】
8.増強物質化合物の特定
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3細胞において巨視的ΔF508−CFTR Cl
−電流(I
ΔF508)を増加させるΔF508−CFTR増強物質の能力も穿孔パッチ記録技術を用いて調べた。光学的アッセイから特定された増強物質は、光学的アッセイにおいて認められた類似の作用強度及び効力でI
ΔF508の用量依存的増加を惹起した。試験したすべての細胞において、増強物質の適用前及び適用中の逆転電位は、約−30mVであった。約−30mVは、計算したE
Cl(−28mV)である。
【0153】
9.溶液
細胞内液(mM):アスパラギン酸Cs(90)、CsCl(50)、MgCl
2(1)、HEPES(10)及び240μg/mlアンホテリシンB(CsOHを用いて7.35に調節されたpH)。
【0154】
細胞外液(mM):N−メチル−D−グルカミン(NMDG)−Cl(150)、MgCl
2(2)、CaCl
2(2)、HEPES(10)(HClを用いて7.35に調節されたpH)。
【0155】
10.細胞培養
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞をホールセル記録に使用する。175cm
2培養フラスコ中の2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep及び25mM HEPESを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO
2及び湿度90%で細胞を維持する。ホールセル記録の場合、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リジン被覆カバーガラス上に蒔き、27℃で24〜48時間培養した後、増強物質の活性を試験するのに使用した。さらに、修正化合物と一緒に、又は修正化合物なしで、37℃でインキュベートして、修正化合物の活性を測定した。
【0156】
11.単一チャネル記録
NIH3T3細胞中で安定に発現された温度修正ΔF508−CFTRの単一チャネル活性、及び増強物質化合物の活性を、切り出したインサイドアウト膜パッチを使用して観察した。手短に述べると、単一チャネル活性の電位固定記録を、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.)を用いて室温で実施した。すべての記録をサンプリング周波数10kHzで取得し、400Hzの低域フィルターにかけた。パッチピペットは、Corning Kovar Sealing#7052ガラス(World Precision Instruments,Inc.、Sarasota、FL)から作製され、細胞外液で満たしたときに5〜8MΩの抵抗を有した。切り出し後に1mM Mg−ATP及び75nM cAMP依存性タンパク質キナーゼ触媒サブユニット(PKA;Promega Corp.Madison、WI)を添加することによってΔF508−CFTRを活性化した。チャネル活性が安定化された後、重力駆動微小潅流システムを使用してパッチを洗い流した。流入液をパッチに隣接して置き、1〜2秒以内に溶液を完全に交換した。急速な洗い流し中にΔF508−CFTR活性を維持するために、非特異的ホスファターゼ阻害剤F
−(10mM NaF)を浴溶液に添加した。これらの記録条件下で、チャネル活性は、パッチ記録の期間(最高60分間)を通して一定のままであった。細胞内液から細胞外液に移動する陽電荷(反対方向に移動する陰イオン)によって生成される電流を正電流として示す。ピペット電位(V
p)を80mVで維持した。
【0157】
2個以下の活性チャネルを含む膜パッチからチャネル活性を分析した。最高同時開口数によって、実験過程中の活性チャネル数が決まった。単一チャネルの電流振幅を測定するために、120秒のΔF508−CFTR活性から記録されたデータを100Hzで「オフライン」でフィルターし、次いでそれを使用して全点振幅(all−point amplitude)ヒストグラムを構築した。全点振幅ヒストグラムは、Bio−Patch Analysisソフトウェア(Bio−Logic Comp.France)を使用してマルチガウシアン関数に当てはめられた。合計の微小電流及び開口率(P
O)を、120秒のチャネル活性から決定した。P
Oを、Bio−Patchソフトウェアを使用して、又は関係式P
O=I/i(N)から、決定した。式中、I=平均電流、i=単一チャネル電流振幅、及びN=パッチ中の活性チャネル数である。
【0158】
12.溶液
細胞外液(mM):NMDG(150)、アスパラギン酸(150)、CaCl
2(5)、MgCl
2(2)及びHEPES(10)(Tris塩基を用いて7.35に調節されたpH)。
【0159】
細胞内液(mM):NMDG−Cl(150)、MgCl
2(2)、EGTA(5)、TES(10)及びTris塩基(14)(HClを用いて7.35に調節されたpH)。
【0160】
13.細胞培養
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、切り出された膜のパッチクランプ記録に使用する。175cm
2培養フラスコ中の2mMグルタミン、10%ウシ胎仔血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep及び25mM HEPESを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO
2及び湿度90%で細胞を維持する。単一チャネル記録の場合、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リジン被覆カバーガラス上に蒔き、使用前に27℃で24〜48時間培養した。
【0161】
上記手順を使用して化合物1の活性、すなわちEC50を測定し、表4に示した。
【0162】
【表4】