特許第6227746号(P6227746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227746
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】マーキング部材
(51)【国際特許分類】
   B25H 7/04 20060101AFI20171030BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B25H7/04 A
   F16L1/00 Y
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-218088(P2016-218088)
(22)【出願日】2016年11月8日
(62)【分割の表示】特願2013-14423(P2013-14423)の分割
【原出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-61033(P2017-61033A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔平
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−253242(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0139000(US,A1)
【文献】 実開昭58−169976(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 7/00−7/04
F16L 1/00
F16L 13/02−13/11
G01B 3/04
G01B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の管継手に対する接続代の長さを定めて、当該管の外周面に接続代端をマーキングするためのマーキング部材であって、
短尺板状のマーキング部材本体と、管の端面に係止させるべく、前記マーキング部材本体の裏面側に突設された管端係止部と、呼径の異なる少なくとも2種類の管の前記接続代端をマーキングする位置を示すためのマーキング位置指標部とを備え、
前記マーキング部材本体の裏面には、管における管端から管軸方向に離れていて、しかも当該管の周方向に沿ってずれた2箇所の外周面に当接する複数の管外面当接部が突出状態で形成され、
前記マーキング位置指標部と、前記複数の管外面当接部のうち1つの管外面当接部は、前記マーキング部材本体の幅方向の同一側の端部に形成され
前記管端係止部を相対的に呼径の大きな管の端面に係止させた状態では、前記マーキング位置指標部と同一側の端部に形成された管外面当接部と、当該管外面当接部と隣接する別の管外面当接部とが、前記管の外周面の周方向に沿ってずれた2箇所に当接するように構成され、
前記管端係止部を相対的に呼径の小さな管の端面に係止させた状態では、前記マーキング位置指標部と同一側の端部に形成された管外面当接部と、当該管外面当接部と隣接する別の管外面当接部との間に存在する前記マーキング部材本体の裏面の平面状の特定当接部とが、前記管の外周面の周方向に沿ってずれた2箇所に当接するように構成されていること特徴とするマーキング部材。
【請求項2】
前記管外面当接部は、管軸方向に沿って延びる突条に形成されていることを特徴とする請求項に記載のマーキング部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管、給湯管、排水管等の2本の管を管継手を介して接続する際に、当該管の接続代端に周方向に沿ってマーキングするのに使用されるマーキング部材に関するものである。
本明細書における「管外面当接部」の用語は、本発明の定義に際して根幹をなす用語であって、マーキング部材本体の裏面に突出状態で設けられることで、管に対してマーキング部材を宛てがった状態で、管の呼径(管のサイズ)とは無関係に、常に当接する「管外面当接部」と、管の呼径に応じて当接箇所が相対的に変化して、「管外面当接部」としての機能を果す平面状の「特定当接部」との2種類があるが、管に対してマーキング部材を宛てがった状態で、管の外面の2箇所において当接する点においては共通しているので、「管外面当接部」及び「特定当接部」の用語を上記した意義で用いた。
なお、本明細書で多用される「呼径」とは、管のサイズを特定するために使用される当該管の「内径」又は「近似内径」を言う。
【背景技術】
【0002】
上記した管の接続代は、JISによって、管の呼径、及び用途に応じて定められている。よって、管を接続するには、各管により定められた接続代の端部をマーキングし、その後に、当該マーキングにより、管の呼径、及び用途により定められた接続代を確保して、管継手を介して2本の管を接続している。
【0003】
管の接続代の端部位置をマーキングする部材として、特許文献1〜3に記載のものが知られている。特許文献1〜3に共通する構成として、平板状又は管の最小径よりも遥かに大きな曲率半径を有するわん曲板状をしたマーキング部材本体の長手方向の一端部に、管端面に係止される管端係止部が当該マーキング部材本体に対して直交した状態で、裏面側に向けて形成され、マーキング部材本体の表面側に、呼径の異なる他種類の各管の接続代端の位置を特定する多数のマーキング位置指標孔部が形成されたものである。
【0004】
そして、管の接続代端をマーキングするには、マーキング部材の管端係止部を当該管の端面に係止させると共に、平板状又はわん曲板状をしたマーキング部材本体を当該管の外周面に当接させた「宛がい状態」において、当該マーキング部材本体を一方の手で保持し、他方の手で持ったマーキングペンのペン先を特定のマーキング位置指標孔部に挿入して、管の外周面に対して接続代端の位置をマーキングしていた。
【0005】
当然のことながら、管の外周面は、凹凸部を全く有しない連続した曲面であるために、管に対するマーキング部材の前記「宛がい状態」では、管の外周面に対するマーキング部材の当接部は、周方向に沿った一箇所のみであるため、管に対するマーキング部材の「宛がい状態」は極めて不安定であって、横滑りし易い。特に、マーキング時には、マーキングペンの先端部がマーキング位置指標孔部に挿入されて、その力の一部がマーキング部材本体に作用するため、一層、横滑りし易く、マーキング作業を安定して行えないと共に、本来の位置とは異なる位置にマーキングしてしまうこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−28053号公報
【特許文献2】特開2001−289354号公報
【特許文献3】特開2006−189089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、マーキング作業を安定して行えるようにするため、管に対する「宛がい状態」を安定化させたマーキング部材の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、管の管継手に対する接続代の長さを定めて、当該管の外周面に接続代端をマーキングするためのマーキング部材であって、
短尺板状のマーキング部材本体と、管の端面に係止させるべく、前記マーキング部材本体の裏面側に突設された管端係止部と、呼径の異なる少なくとも2種類の管の前記接続代端をマーキングする位置を示すためのマーキング位置指標部とを備え、
前記マーキング部材本体の裏面には、管における管端から管軸方向に離れていて、しかも当該管の周方向に沿ってずれた2箇所の外周面に当接する複数の管外面当接部が突出状態で形成され、
前記マーキング位置指標部と、前記複数の管外面当接部のうち1つの管外面当接部は、前記マーキング部材本体の幅方向の同一側の端部に形成され
前記管端係止部を相対的に呼径の大きな管の端面に係止させた状態では、前記マーキング位置指標部と同一側の端部に形成された管外面当接部と、当該管外面当接部と隣接する別の管外面当接部とが、前記管の外周面の周方向に沿ってずれた2箇所に当接するように構成され、
前記管端係止部を相対的に呼径の小さな管の端面に係止させた状態では、前記マーキング位置指標部と同一側の端部に形成された管外面当接部と、当該管外面当接部と隣接する別の管外面当接部との間に存在する前記マーキング部材本体の裏面の平面状の特定当接部とが、前記管の外周面の周方向に沿ってずれた2箇所に当接するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、相対的に呼径の大きな管では、前記マーキング位置指標部と同一側の端部に形成された管外面当接部と、当該管外面当接部と隣接する別の管外面当接部とが、前記管の外周面の周方向に沿ってずれた2箇所に当接した状態で、即ち、管に対するマーキング部材の「宛がい状態」が最も安定した状態で、マーキング部材本体の幅方向の端部に形成された前記マーキング位置指標部によって、管の外周面に接続代端をマーキングできる。
一方、相対的に呼径の小さな管では、前記マーキング位置指標部と同一側の端部に形成された管外面当接部と、当該管外面当接部と隣接する別の管外面当接部との間に存在する前記マーキング部材本体の裏面の平面状の特定当接部とが、前記管の外周面の周方向に沿ってずれた2箇所に当接した状態で、前記マーキング位置指標部によって、管の外周面に接続代端をマーキングできる。
【0010】
この結果、請求項1の発明によれば、呼径の大小にかかわらず、マーキング部材本体の幅方向の一端部に形成された管外面当接部を共通に宛てがった状態で、当該管外面当接部と同様の当該マーキング部材の幅方向の一端部に設けられたマーキング位置指標部によって、管の外周面に接続代端をマーキングでき、特に、相対的に呼径の大きな管では、隣接する各管外面当接部を管の外周面に宛てがった状態にできるので、安定してマーキングを行える利点がある。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
請求項の発明は、請求項1の発明において、前記管外面当接部は、管軸方向に沿って延びる突条に形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項の発明によれば、管外面当接部は、管軸方向に沿って延びる突条に形成されているため、管外周面に対するマーキング部材本体の総当接長が長くなる点において、管の外周面に対するマーキング部材本体の「宛がい状態」が安定化する。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【発明の効果】
【0028】
本発明は、呼径の大小にかかわらず、マーキング部材本体の幅方向の一端部に形成された管外面当接部を共通に宛てがった状態で、当該管外面当接部と同様の当該マーキング部材の幅方向の一端部に設けられていて、全呼径の管に対して共通のマーキング位置指標部によって、管の外周面に接続代端をマーキングでき、特に、相対的に呼径の大きな管では、隣接する各管外面当接部を管の外周面に宛てがった状態にできるので、安定してマーキングを行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a),(b)は、それぞれ本発明の実施例1のマーキング部材M1 の表面側及び裏面側から見た斜視図である。
図2】(a)は、マーキング部材M1 の平面図、(b)は、(a)のX−X線断面図である。
図3】管P(50)に対してマーキング部材M1 が宛てがわれた状態の横断面図〔図2(a)のY1 −Y1 線拡大断面図〕である。
図4】マーキング部材M1 を用いて、管P(50)の外周面の接続代端にマーキングしている状態を示す平面図である。
図5】管P(30)に対してマーキング部材M1 が宛てがわれた状態の横断面図〔図2(a)のY1 −Y1 線拡大断面図〕である。
図6】呼径の異なる管P(13),P(50),P(150)に対してマーキング部材M1 が宛てがわれた状態を比較して示す横断面図である。
図7】(a),(b)は、参考例1のマーキング部材M2 を背面側から見た斜視図、及び拡大側面図である。
図8】(a)は、参考例2のマーキング部材M3 の背面図、(b)は、(a)のY3 −Y3 線拡大断面図、(c)は、マーキング部材M3 の背面側の斜視図である。
図9】マーキング部材M3 を用いて、管P(50)の外周面の接続代端にマーキングしている状態を示す平面図である。
図10】(a),(b)は、それぞれ参考例3のマーキング部材M4 の背面図及び側面図である。
図11】(a),(b)は、それぞれ参考例4のマーキング部材M5 の背面図及び側面図である。
図12】(a),(b)は、それぞれ参考例5のマーキング部材M6 の背面図及び側面図である。
図13】(a),(b),(c)は、それぞれ参考例6のマーキング部材M7 の背面図、側面図及び裏面側の斜視図である。
図14】(a),(b)は、それぞれ参考例7のマーキング部材M8 の背面図及び側面図である。
図15】(a),(b)は、それぞれ参考例8のマーキング部材M9 の背面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、図面の複雑化の回避のために、管の図示に関しては、斜視図、及び破断図においてのみ、肉厚が認識できる内周円を図示し、斜視図及び破断図以外の図面では、外周円のみ図示して、内周円は図示しない。
【実施例1】
【0031】
本発明の実施例1のマーキング部材M1 が、図1ないし図5に示されている。マーキング部材M1 は、呼径の異なる多種類の管Pの接続代の端部の位置(接続代端)を定めて、当該位置にマーキングするための部材である。マーキング部材M1 は、樹脂により形成されて、短尺平板状のマーキング部材本体D1 と、当該マーキング部材本体D1 を管Pの端面に係止させるべく、当該マーキング部材本体D1 の長手方向の端部に裏面11の側に突設された管端係止端部E1 と、前記マーキング部材本体D1 の裏面側に、幅方向に所定間隔をおいて長手方向の全長に亘って形成された計3本の管外面当接突条T1a,T1b, T1cとを備えている。計3本の管外面当接突条T1a,T1b, T1cは、管端係止端部E1 を管Pの端面に係止させて、当該管Pに対してマーキング部材M1 を宛てがった状態で、1本又は隣接する2本が管Pの外周面における周方向に沿ってずれた複数の位置で当接可能である。管外面当接突条T1a,T1cは、排水管に対して使用され、管外面当接突条T1b, T1cは、給水管に対して使用される。管Pは、給水塩ビ管(HI・TS)から成り、用途からして給水管と排水管とがあって、マーキング部材M1 は、給水管及び排水管の双方の接続代端を特定して、マーキング可能である。なお、符号(P)は、管を一般的に表示するものであって、呼径を特定して管を表示する場合には、呼径を併用する。例えば、呼径(50)の管は、P(50)のように表示する。
【0032】
計3本の管外面当接突条T1a,T1b, T1cのうち管外面当接突条T1a, T1bの2本は、マーキング部材本体D1 の幅方向の両端部に形成され、残りの1本の管外面当接突条T1cは、当該マーキング部材本体D1 の幅方向の中央に形成されている。両端部の2本の管外面当接突条T1a, T1b1 の外側面は、マーキング部材本体D1 の側面と同一面となっている。管外面当接突条T1a,T1b, T1cの突設高さ(Ht)〔図3参照〕は、管端係止端部E1 が管の端面に係止可能なように、当該管端係止端部E1 の突設高さ(He)よりも遥かに低い(小さい)。管外面当接突条T1a,T1cは、排水管に対して使用され、管外面当接突条T1b, T1cは、給水管に対して使用される。マーキング部材本体D1 の表面12の側の幅方向の両端部は、管Pにマーキング部材M1 を宛てがわれた状態で、作業者の一方の手の指先で押さえ付けられるように、当該管Pの外周面に漸次近付くような傾斜面13に形成されている。別の表現では、マーキング部材本体D1 の幅方向の両端部は、表面側において「大きな面とり状」に形成されているとも言える。
【0033】
マーキング部材本体D1 の表面12には、給水管及び排水管の双方の管の呼径に対する接続代端の位置、即ち、管外周面に対するマーキング位置を表示する各マーキング位置指標部As,Aeが形成されている。呼径が同一である場合には、排水管は、給水管に比較して短い管継手が使用されて、同一の呼径の管に対してマーキング位置が異なるので、マーキング部材本体D1 の表面12を幅方向に沿って二分割した各部分に、それぞれ給水管及び排水管のマーキング位置指標部As,Aeが独立して形成されている。マーキング部材本体D1 の表面12と、その幅方向の両端部の各傾斜面13との境界には境界線14が形成されて、マーキング位置指標部As,Aeは、前記境界線14と交差する短い線分15a又は折れ曲り線分15bと、当該各線分15a,15bの内側に表示された呼径の数字とで形成される。各線分15a,15b及び呼径を表示する数字は、いずれも凸の刻印により表示されており、当該凸の刻印は、作業者の一方の手でマーキング部材本体D1 を管Pの外周面に押し付ける際の指先に対する抵抗となって指先が滑りにくくなる。このため、凸の刻印の存在によって、管Pに対してマーキング部材M1 を滑ることなく、しっかりと保持できる利点がある。また、マーキング位置指標部As,Aeの刻印は、凸に替えて凹にすることも可能である。なお、図1及び図2において、16は、マーキング部材M1 を紐類によって作業者の腰に吊り下げておく際に、当該紐類を通す通し孔を示す。
【0034】
そして、上記したマーキング部材M1 を使用して、排水用の呼径(50)の管P(50)の接続代端をマーキングするには、以下のようにして行う。即ち、図1及び図3に示されるように、マーキング部材M1 の管端係止部E1 を管P(50)の端面Paに係止させて、マーキング部材本体D1 の裏面11の側の幅方向の一端部に突設された管外面当接突条T1aを管P(50)の外周面に当接させる。これにより、管P(50)の外周面に対してマーキング部材本体D1 は、上記した管外面当接突条T1aと、当該管外面当接突条T1aに隣接する別の管外面当接突条T1cの各部分において当接する。即ち、管P(50)の外周面に対してマーキング部材本体D1 は、横断面視において周方向にずれた2つの各当接点Q11, Q12において当接する。このように、マーキング部材M1 の管端係止部E1 を管P(50)の端面Paに係止させて、マーキング部材本体D1 を管P(50)の外周面に当接させると、当該マーキング部材本体D1 は、管P(50)の外周面における周方向に沿ってずれた2つの各当接点Q11, Q12に当接し、しかも当該各当接点Q11, Q12は、管軸方向に沿ってはマーキング部材本体D1 の長さだけ連続して存在するので、従来のマーキング部材のように、周方向の1点のみで当接する場合に比較して、管P(50)に対するマーキング部材M1 の保持の安定性が飛躍的に高められる。
【0035】
このため、図4のようにして、管P(50)の外周面に対してマーキング部材M1 を上記したようにして宛てがって、作業者の一方の手により管P(50)に対してマーキング部材M1 をしっかり保持した状態で、特に、一方の手の指先で傾斜面13を押し付けた状態で、マーキングペンBのペン先を排水管用のマーキング位置指標部Asの呼径(50)の部分に充てがって、そのペン先により管P(50)の外周面に周方向に沿ってマーキング線Kを施す。管P(50)に対するマーキング部材M1 の保持の安定性が高いために、マーキング時において、管P(50)が横滑りすることなく、管P(50)の外周面の正規の位置にマーキング線Kを正確に表示できる。マーキング時において、マーキング部材本体D1 の傾斜面13の部分まで、マーキング位置指標部As(Ae)を構成する線分15a又は折れ曲り線分15bまで刻印されているため、管P(50)の呼径に対応したマーキング位置を誤りなく探すことができる。
【0036】
また、図5は、呼径(30)の管P(30)に対してマーキング部材M1 が宛てがわれた状態の横断面図であって、管P(50)に比較して外径が小さくなるために、管P(30)の外周面に対してマーキング部材本体D1 は、管外面当接突条T1aと、マーキング部材本体D1 の裏面11における隣接する2つの管外面当接突条T1a,T1cの中間点との周方向に沿ってずれている横断面視で2つの当接点Q11, Q13において当接する。よって、管P(30)に対するマーキング部材M1 の「宛がい状態」の安定性が高められる。
【0037】
そして、管Pとして給水管及び排水管の双方を考慮した場合には、図6に示されるように、呼径の大きな管Pでは、マーキング部材本体D1 の裏面11に形成された隣接する2つの管外面当接突条T1a,T1c(T1b,T1c) が、横断面視で管Pの外周面の周方向にずれた2点において、管Pに対してマーキング部材M1 が当接する。一方、呼径の小さな管Pでは、マーキング部材本体D1 の裏面11の幅方向の端部に形成された管外面当接突条T1a(T1c) と、マーキング部材本体D1 の裏面11における隣接する2つの管外面当接突条T1a,T1c(T1b,T1c) の中間点とが、横断面視で管Pの外周面の周方向にずれた2点において、管Pに対してマーキング部材M1 が当接することになって、いずれの場合においても、管Pに対するマーキング部材M1 の「宛がい状態」の安定性が高められる。
【0038】
なお、給水管に対してマーキングする場合には、マーキング部材M1 の各管外面当接突条T1b,T1c及び裏面11における各管外面当接突条T1b,T1cの間の平面部の計3つの部分から選択された2つの部分を使用して、上記した排水管の場合と同様にして行う。
【0039】
参考例1
次に、図7を参照して、参考例1のマーキング部材M2 について説明する。マーキング部材M2 は、横断面が円弧状をした短尺わん曲板状のマーキング部材本体D2 の長手方向の一端部に、管Pの端面に係止する管端係止部E2 が裏面21の側に向けて突設された構成である。マーキング部材本体D2 の円弧面状をした裏面21の曲率半径Rは、最小呼径の管の外径の半分よりも小さくなっていて、裏面21の幅方向の両端縁は、マーキング対象となる全ての管Pの外周面における周方向にずれた2箇所において線状に当接する管外面当接部T2a, T2bとなる。マーキング部材本体D2 の表面22には、呼径の異なる他種類の管のマーキング位置を指標するマーキング位置指標部(図示せず)が設けられる。マーキング部材M2 は、マーキング部材本体D2 に対して管外面当接部を別途設けることなく、当該マーキング部材本体D2 の横断面形状のみによって、管外面当接部を形成できる利点がある。なお、図7(b)において、Cは、マーキング部材本体D2 の裏面21の円弧面の中心を示す。
【0040】
よって、呼径の異なる全ての管Pの端面Paにマーキング部材M2 の管端係止部E2 を係止させて、当該管Pに対してマーキング部材M2 を宛てがうと、当該マーキング部材M2 の裏面21の幅方向の両端縁に形成された各管外面当接部T2a, T2bが、呼径の異なる全ての管Pの外周面における幅方向にずれた2箇所に当接する。このため、管Pに対するマーキング部材M2 の「宛がい状態」が安定化して、マーキング作業を安定した状態で正確に行える。
【0041】
なお、マーキング部材M2 において、マーキング部材本体D2 の裏面21の横断面形状は、円弧状である必要はなく、一般の弧状(わん曲面形状)であってもよく、更に、横断面視で弧状に形成する必要があるのは、マーキング部材本体D2 の裏面21のみであって、表面22は、弧状である必要はない。
【0042】
参考例2
次に、図8及び図9を参照して、参考例2のマーキング部材M3 について説明する。マーキング部材M3 は、短尺平板状のマーキング部材本体D3 の長手方向の一端部に管端係止部E3 が裏面31の側に向けて突設され、マーキング部材本体D3 の裏面31の幅方向の中央部には、長手方向(管Pに対してマーキング部材M3 を宛てがった状態では、管軸方向)に沿って細長比の大きな断面方形状の凹部1が形成されて、当該凹部1と交差するようにして多数のマーキング位置表示用貫通孔G1 〜G5 が、マーキング部材本体D3 の幅方向に沿って形成されている。貫通孔G3 は、2つの方形がずれて連続されている変則的な形状である。各貫通孔G1 〜G5 の全体形状は、細長比の大きな方形状であって、各貫通孔G1 〜G5 におけるマーキング部材本体D3 の長手方向に沿って対向する各端縁は、マーキング位置指標部(A31a,A31b,A32a,A32b,A33a,A33b,A33a', A33b', A34a,A34b,A35a,A35b)を形成している。
【0043】
このため、管Pの端面に管端係止部E3 を係止させて、当該管Pにマーキング部材M3 を宛てがうと、前記凹部1の幅方向の各端縁は、管Pの外周面の周方向にずれた2箇所に当接して、管Pに対してマーキング部材M3 が安定して保持される。この点において、前記凹部1の幅方向の各端縁は、管外面当接部T3a, T3bとして機能する。前記凹部1の深さ(F)〔図8(b)参照〕は、対応する他種類の呼径の管のうち、最小径の管の外周が当該凹部1の底面に当接しないか、或いは、最小径の管の外周が底面に当接する場合には、同時に管外面当接部T3a, T3bとに当接していれば問題はない。換言すると、管の外周が凹部1の底面と管外面当接部T3a, T3bとの3点に同時に当接していれば、問題はない。
【0044】
そして、図9に示されるように、管Pに対してマーキング部材M3 を宛てがった状態において、当該管Pの呼径に対応するマーキング位置指標部が描かれている貫通孔G1 〜G5 の対向する端縁のいずれか一方に沿ってマーキングペンBのペン先を移動させて、管Pの外周面に対してマーキング線Kを施す。
【0045】
参考例3
次に、図10を参照して、参考例3のマーキング部材M4 について説明する。マーキング部材M4 は、マーキング部材本体D3 の長手方向に沿って凹部1を形成することにより、その幅方向の両端縁を管外面当接部T3a, T3bとした参考例2のマーキング部材M3 において、前記凹部1に替えて、マーキング部材本体D4 の裏面における管端係止部E4 から最も離れた部分に、幅方向に沿って対向させて一対の断面方形状の管外面当接部材2を一体に設けて、当該一対の管外面当接部材2の内側の対向する角縁を管外面当接部T4a, T4bとした構成である。一対の管外面当接部材2の高さ(J)は、最小の呼径の管を宛てがった状態で、当該管がマーキング部材本体D4 の裏面41に当接しないことが望ましい。しかし、最小の呼径の管の外周が前記各管外面当接部T4a, T4bとマーキング部材本体D4 の裏面41との計3点に同時に当接することを条件として、最小の呼径の管の外周は、前記裏面41に当接しても構わない。
【0046】
また、マーキング位置指標部に関しては、参考例2のマーキング部材M3 と同様であって、マーキング部材本体D4 に多数の貫通孔G1 〜G5 が形成されて、当該各貫通孔G1 〜G5 におけるマーキング部材本体D4 の長手方向に沿って対向する各端縁がマーキング位置指標部を構成している。また、マーキング部材本体D4 の表面42には、マーキング位置指標部に対応した呼径の数字が表示される。
【0047】
参考例4
次に、図11を参照して、参考例4のマーキング部材M5 について説明する。マーキング部材M5 は、参考例3のマーキング部材M4 において、一対の管外面当接部材2に替えて、マーキング部材本体D5 の裏面51の幅方向の中央部に、断面が極めて緩やかなV字状となる一対の管外面当接面T5a, T5bを形成したものであって、残りの構成は、参考例3のマーキング部材M4 と同一である。管P(40),P(150)は、それぞれ各管外面当接面T5a, T5b上の2点である当接点Q51a,Q51b(Q52a,Q52b)において当接する。即ち、マーキング部材M5 によれば、全ての呼径の管(P)において、周方向にずれた2箇所において、管(P)の外面に対してマーキング部材本体D5 の裏面は、管軸方向に沿って直線状に連続して当接するので、管(P)の外面に対するマーキング部材M5 の保持の安定性が一層に高められる。なお、図11において、52は、マーキング部材本体D5 の表面を示し、呼径の数字が表示される。
【0048】
参考例4のマーキング部材M5 では、呼径(サイズ)の小さな管では、緩やかなV字状をした管外周当接面T5a,T5bに当接して、その当接点Q52a,Q52b は、管の呼径により変化する。しかし、特定の呼径を超える大きなサイズの管では、緩やかなV字状をした管外周当接面T5a,T5bと、当該管外周当接面T5a,T5bに接続するフラット面(平面)との交差するエッジ部である横断面視での当接点Q52a,Q52b に常に当接して、当接点は変化しない点に特徴を有している。
【0049】
参考例5
次に、図12を参照して、参考例5のマーキング部材M6 について説明する。マーキング部材M6 は、参考例3のマーキング部材M4 において、多数の方形状の貫通孔G1 〜G5 におけるマーキング部材本体D4 の長手方向に沿って対向する各管端縁をマーキング位置指標部にする構成に替えて、マーキング部材本体D6 の幅方向に沿って形成された多数のスリット状の貫通孔をマーキング位置指標孔A6 としたものである。なお、図12において、61,62は、それぞれマーキング部材本体D6 の裏面及び表面を示し、表面62には、呼径の数字が表示される。
【0050】
参考例6
次に、図13を参照して、参考例6のマーキング部材M7 について説明する。マーキング部材M7 は、短尺平板状のマーキング部材本体D7 の長手方向の一端部に管端係止部E7 が裏面71の側に向けて突設され、当該マーキング部材本体D7 の裏面71における長手方向に沿って管端係止部E7 の反対側に近い端部であって、しかも幅方向に沿って一方の端部に、管Pの外周面に当接する半球状の管外面当接突起T7 が設けられた構成である。なお、マーキング部材本体D7 の表面72には、マーキング位置指標部が表示される。
【0051】
このため、管Pの端面に管端係止部E7 を係止させて、マーキング部材M7 を管Pに宛てがうと、マーキング部材本体D7 は、横断面視において、半球状の管外面当接突起T7 の当接点Q71と、マーキング部材本体D7 の裏面71の当接点Q72との管Pの外周面の周方向にずれた2点において、管Pの外周面に当接する。半球状の管外面当接突起T7 に対する当接点Q71は、点状であるが、マーキング部材本体D7 の裏面に対する当接点Q72は、線状である。このように、管Pの外周面に対してマーキング部材本体D7 は、横断面視において、管Pの外周面の周方向にずれた2箇所で当接するため、管Pに対するマーキング部材M7 の「宛がい状態」が安定化する。
【0052】
参考例7
図14に示される参考例7のマーキング部材M8 は、参考例6のマーキング部材M7 に対して、複数の管外面当接突起T8 がマーキング部材本体D8 の長手方向に沿って所定間隔をおいて設けられている構成のみが異なる。マーキング部材M8 によれば、管Pの外周面に対してマーキング部材本体D8 は、管Pの外周面の周方向に沿ってずれた2箇所の当接点Q81,Q82において、線状又は破線状に当接するために、上記した「宛がい状態」が一層に安定化する。なお、マーキング部材M8 の他の構成に関しては、マーキング部材M7 に対応する部分に、「添字」のみ異なる符号を付して図示のみ行う。なお、図14において、82は、マーキング部材本体D8 の表面を示す。
【0053】
参考例8
図15に示される参考例8のマーキング部材M9 は、参考例7のマーキング部材M8 において、複数の管外面当接突起T8 を連続させて管外面当接突条T9 にした構成が異なるのみである。管Pの外周面に対してマーキング部材本体D9 は、管Pの外周面の周方向に沿ってずれた2箇所の当接点Q91,Q92において、いずれも線状に当接する。なお、マーキング部材M9 の他の構成に関しては、マーキング部材M8 に対応する部分に、「添字」のみ異なる符号を付して図示のみ行う。なお、図15において、91、92は、マーキング部材本体D9 の裏面及び表面を示す。
【符号の説明】
【0054】
Ae,As,A31a,A31b,A32a,A32b,A33a,A33b,A33a', A33b', A34a,A34b,A35a,A35b :マーキング位置指標部
6 :マーキング位置指標孔(マーキング位置指標部)
1 〜D9 :マーキング部材本体
1 〜E9 :管端係止部
1 〜M9 :マーキング部材
P:管
Pa:管端面
11, Q12, Q13, Q51a,Q51b,Q52a,Q52b Q71, Q72, Q81, Q82, Q91, Q92 :横断面視における管に対するマーキング部材本体の当接点(管外面当接部)
1a, T1b, T1c, T9 :管外面当接突条(管外面当接部)
2a, T2b, T3a, T3b, T4a, T4b:管外面当接部
5a, T5b:管外面当接面(管外面当接部)
7,T8 :管外面当接突起(管外面当接部)
9 :管外面当接突条(管外面当接部)
11,21,31,41,51,61,71,81,91:マーキング部材本体の裏面
13:マーキング部材本体の表面側の傾斜面
図1
図2
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