【文献】
EUROPEAN JOURNAL OF PHARMACEUTICS AND BIOPHARMACEUTICS,NL,1998年,Vol.45, No.2,p.157-163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
f)病理関連の一の生物学的マーカーと特異結合するための分子標的となる部分であって、コアシェルb)または親水性ポリマー官能基e)のいずれかに連結する部分をさらに含む、ところの請求項1−3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
固形脂質コアa)が、少なくとも1つのグリセリド、および/または少なくとも1つの脂肪酸あるいはそれらの混合物を含み、その少なくとも1つのグリセリド、あるいはその脂肪酸またはエステルが、室温および体温で固形状態である、ところの請求項1−4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
親水性ポリマーe)が、官能化ポロキサマー、ポリシロキサン、ポリアルキルポリエーテル、ポリグリセリン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールからなる群より選択され、リン脂質の部分と共有結合してもよい、ところの請求項3−10のいずれか一項に記載のナノ粒子。
分子標的となる部分f)が、細胞表面レセプター、蛋白、アプタマー、ペプチドおよびポリペプチド、ビタミン、抗体またはそのフラグメント、および炭水化物からなる群より選択される腫瘍標的となるリガンドである、ところの請求項4−12のいずれか一項に記載のナノ粒子。
溶媒が、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、およびギ酸エチル、あるいはその混合液からなる群より選択される、ところの請求項19に記載の方法。
工程ii)にて、親水性界面活性剤が、コール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、あるいはその塩または誘導体からなる群より選択され、共界面活性剤が、1−ブタノールおよび1−ヘキサノールからなる群より選択される、ところの請求項20に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係るナノ粒子は、必須成分として:
a)少なくとも1のグリセリド、および/または少なくとも1の脂肪酸を含む固形脂質コア;
b)該コアa)の回りにシェルを形成する両親媒性成分の混合物;
c)式Iおよび/またはII:
【化2】
[式中、各基は下記にて定義されるとおりである]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩とのアルカリ土類錯体からなる両親媒性成分;
d)シアニンファミリー、および/またはクマリン、ピラノ、キノリン、ピラノキノリン、インドールおよびピラノインドール誘導体を含むポリエテロサイクリック化合物の酸形態、またはその医薬的に許容される塩での蛍光色素
を含む。
【0031】
本発明のもう一つ別の実施態様にて、該ナノ粒子は:
e)ステルス剤としての機能を有する、該シェルb)に共有結合する親水性ポリマー
をさらに含む。
【0032】
本発明のもう一つ別の実施態様にて、該ナノ粒子は:
f)病理関連の一の生物学的マーカーと特異結合するための分子標的となる部分であって、シェルb)または親水性ポリマーe)のいずれかに連結する部分をさらに含む。
【0033】
以下の組成パーセントは、最終懸濁液にて実質的に含まれないイオン性界面活性剤および低分子量アルコールの寄与を考慮することなく、SLNの調製に用いられるa)ないしf)の成分の配合量と関連付けられる。
【0034】
以下の記載において、各成分a)ないしf)は、SLN乾燥成分の総重量に対する重量/重量%で表される。
【0035】
固形脂質コアa)は、少なくとも1つのグリセリド、好ましくはトリグリセリド、および/または少なくとも1つの脂肪酸またはそのエステルあるいはそれらの混合物(室温(すなわち、約20−25℃)ないし体温(37℃)からなる温度範囲にて少なくとも固形である)を含む。本発明の第一の態様において、該固形脂質コアa)は、飽和または不飽和で直鎖または分岐鎖のC
12−C
24アシル基を有する、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドからなる群より選択される少なくとも1つのグリセリドを含む。ジおよびトリグリセリドでは、そのアシル鎖は同じであっても異なってもよい。該脂肪酸またはそのエステルは、飽和または不飽和で直鎖または分岐鎖のC
12−C
24の炭素鎖を有する。本発明の目的を達成するのに該脂肪酸のエステルもまた提供され、好ましくはC
12−C
24脂肪族アルコールとのエステルが提供される。
【0036】
本発明の目的を達成するために、「固形脂質コア」なる語は、室温(すなわち、約20−25℃)と体温(すなわち、約37℃)の間からなる温度で固体である脂質コアを意図とする。
【0037】
約30−50%(重量/重量)、好ましくは35−45%を構成しうる、本明細書において「脂質成分」とも称される固形コアは、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドからなる群より選択される少なくとも1つのグリセリド(飽和または不飽和で、鎖長が炭素数12−24の直鎖または分岐鎖の炭素水素鎖であって、融点が37℃よりも高いグリセリド)および/または少なくとも1つの飽和または不飽和で、直鎖または分岐鎖のC
12−C
24脂肪酸またはそのエステルを含む;ただし、その選択される割合は上記される条件で固形組成物を提供するものとする。
【0038】
脂質成分はまた、モノ、ジまたはトリグリセリドの混合物、例えば、SOFTISAN(登録商標)およびWitepsol(登録商標)、好ましくはWitepsol(登録商標)W35、H42、E76、E85またはSOFTISAN(登録商標)I38、I42、I54の名称で知られる市販の混合物とすることもできる。
【0039】
脂質成分は、トリパルミチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリアラキジン酸グリセリルまたはそれらの混合物などのトリグリセリドからなるのが好ましい。特に好ましい実施態様によれば、固形コアはトリパルミチン酸グリセリル(トリパルミチン)を含む。
【0040】
脂質成分は、好ましくは、少なくともC
12−C
24脂肪酸を含み、その炭化水素鎖は飽和または不飽和で直鎖または分岐鎖とすることができる。好ましくは、脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸またはそれらの混合物より選択される。該コアは、所望により、C
12−C
24脂肪アルコールとのC
12−C
24脂肪酸のモノまたはジエステルを含んでもよい。該脂肪酸エステルの成分は、さらには、例えば、パルミチン酸セチルとすることもできる。
【0041】
好ましい脂質の組み合わせは、トリパルミチンとステアリン酸との組み合わせである。
【0042】
もう一つ別の実施態様によれば、a)の脂質成分は、水に不溶であるが、有機溶媒に可溶である他の脂質を含んでもよい。例えば、脂質は、エステル化ポリ(アクリル酸)またはエステル化ポリ(ビニルアルコール)であり得る。特に、該脂質は1または複数のアルコールで全体としてまたは部分的にエステル化されるポリ(アクリル酸)であり得る。一の態様において、アクリル酸残基のすべてがすべてエステル化されるのではない。さらなる態様において、実質的にすべてのアクリル酸残基がエステル化される。ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーとすることができる。一の態様において、脂質は少なくとも1のC
4−C
24アルコールを含み得る。一の態様にて、該アルコールは飽和または不飽和とすることができ、直鎖または分岐鎖とすることもでき、置換または非置換とすることもできる。アルコールは各アクリル酸残基で同一または異なってもよい。もう一つ別の実施態様において、脂質は1または複数のカルボン酸で完全にまたは部分的にエステル化されたポリ(ビニルアルコール)であり得る。一の態様において、ビニルアルコール残基のすべてがすべて、あるいは実質的にすべてがエステル化されるものではない。ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーのいずれであってもよい。カルボン酸は各ビニルアルコール残基で同一または異なってもよい。
【0043】
SLNにおいて、脂質成分は固体であり、非晶質または結晶の形態である。
【0044】
特に好ましい実施態様によれば、固形コアはトリパルミチンおよびステアリン酸を含み、結晶形態である。
【0045】
成分b)に関して、本発明は、両親媒性化合物を界面活性成分として使用することを含む。界面活性成分は、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和のC
6−C
24炭化水素を有するリン脂質、リゾ脂質およびスフィンゴ脂質;所望により、少なくとも1つのコレステロールおよびステロイド誘導体、糖脂質、脂肪酸、脂肪族アルコールおよびジアルキルエーテル、非イオン性界面活性剤、例えばソルビタン誘導体、好ましくはポリオキシエチレンモノオレアートまたはモノパルミタート誘導体(商品名:Alkest TW 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)で公知のポリソルベート20等)、C
6−C
24の炭素原子より誘導される飽和または不飽和脂肪酸のジ−およびトリ−エステル、ならびにそのエトキシ化アナログ;モノ−またはオリゴ−配糖体およびそのエトキシ化アナログ、室温または体温で液体であるグリセロールモノ−、ジ−またはトリ−エステルからなる群より選択される。界面活性成分はSLNの25−60%(重量/重量)に相当する。SLN組成物は、好ましくは約27−45%、より好ましくは30−38%にてリン脂質を含む。
【0046】
この点において、リン脂質の例が、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(エチル-DSPC)、ジペンタデカ-ノイルホスファチジルコリン(DPDPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PM-PC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1-パルミトイル-2-オレイルホスファチジルコリン(POPC)、1-オレイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(OPPC)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DL-PG)およびそのアルキル金属塩、ジアラキドイルホスファチジルグリセロール(DAPG)およびそのアルキル金属塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)およびそのアルキル金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびそのアルキル金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)およびそのアルキル金属塩、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)およびそのアルキル金属塩、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)およびそのアルキル金属塩、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)およびそのアルキル金属塩、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA)およびそのアルキル金属塩、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)およびジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)、ジラウロイルホスファチジルイノシトール(DLPI)、ジアラキドイルホスファチジルイノシトール(DAPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)またはそれらの混合物である。
【0047】
本発明の一の実施態様において、両親媒性成分b)は、リン脂質、好ましくは天然源のリン脂質を包含する。好ましい実施態様にて、成分b)は、Epikuron 200(登録商標)として市販されている大豆レシチンから由来のホスファチジルコリンを包含する。天然源の他のリン脂質の例が、Epikuron 170(登録商標)またはEpikuron 100(登録商標)、Lipoid(登録商標)S 75、Lipoid(登録商標)S 100、または卵レシチンのLipoid(登録商標)E 80である。
【0048】
両親媒性成分はまた、胆汁酸またはその塩、コレステロールおよびステロイド誘導体、例えば6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシル-1-チオ-β-D-マンノピラノシド、糖脂質、脂肪酸、脂肪族アルコールおよびジアルキルエーテルを含むことができ、該酸、エステルおよびアルコールは直鎖または分岐鎖のC6−C24の炭素鎖を有するか、トコフェロールまたはトコフェロール・ヘミコハク酸である。
【0049】
他の両親媒性成分はまた、非イオン界面活性剤、好ましくは炭素数6−24の飽和または不飽和の脂肪酸誘導体のソルビタンモノ−、ジ−またはトリ−エステル、あるいはそのエトキシル化アナログを包含しうる。好ましい実施態様において、該組成物は、Tween 80(登録商標)として市販されているポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、および/またはポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40)などの類似化合物を包含する。ソルビタンモノパルミタート(Span(登録商標)40)、ソルビタンモノステアラート(Span(登録商標)60)、ソルビタンモノオレアート(Span(登録商標)80)などのさらなるソルビタン誘導体も含まれうる。好ましくはこの成分はSLNの5−20%を構成し、さらにより好ましくは約8−12%を構成する。
【0050】
他の両親媒性成分はまた、室温および体温で可溶性の、単糖類またはオリゴ糖類およびそれらのエトキシル化アナログ、グリセロールモノ−、ジ−またはトリ−エステルを包含しうる。室温および体温で可溶性であるとの特徴は当業者に鎖長を想起させる。
【0051】
両親媒性成分はまた、イオン界面活性剤を包含する。好ましい実施態様において、コール酸、その誘導体または塩などのアニオン界面活性剤が好ましい。コール酸の中でも、コール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、およびタウロコール酸ナトリウムなどのタウロコール酸およびタウロデオキシコール酸あるいはその誘導体または塩が特に好ましい。より好ましい実施態様において、タウロコール酸ナトリウム・水和物がその製剤に含まれる。6ないし24個の炭素原子を有するポリアルキルホスファート、アルキルスルホナートおよびスルファート、アルキルスルホスクシナートなどの他のアニオン界面活性剤も含められ得る。
【0052】
共界面活性剤をその製剤に含めることができる。好ましい実施態様において、C
3−C
8炭化水素鎖を有するアルコール、好ましくは、例えば1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールおよび1−オクタノール、3−ペンタノールおよび4−ヘプタノールなどのモノアルコールが含まれうる。1−ブタノールおよび/または1−ヘキサノールが最も好ましい。
【0053】
成分c)によれば、本発明は両親媒性化合物の安定化剤としての使用を含む。特に成分c)は、実験のセクションにて詳細に記載されるように、粒子が経時的にその大きさを維持し、SLN粒子の安定性に寄与することを可能とする。両親媒性化合物は、親油性の脂肪族の部分と配位ケージにより特徴付けられる配位化合物より選択されるアルカリ土類金属の錯体である。そのような配位ケージは主に2種:ジアゼピン誘導体(式I)およびテトラアザシクロドデカン誘導体(式II)に属する。
【0054】
かくして、成分c)は、式(I)または式(II):
【化3】
[式中:
Yは、式:Y’−NH−または(Y’)
2−N−で示される基であり、ここで、Y’は、(Y’)
2−N−の場合には、同一または異なってもよく、直鎖または分岐鎖であって、飽和または不飽和であるC
12−C
20アルキル基と、リン酸基である−O−(HO−P=O)−O−で所望により分断されてもよく、またはOH、COOR
1(ここで、R
1は、水素H、および直鎖または分岐鎖のC
1−C
4アルキル基からなる群より選択される)、オキシカルボニル−(C
12−C
18)アルキルおよびオキシカルボニル(C
12−C
18)アルケニルからなる群より選択される1または複数の原子または基によって置換されてもよいC
1−C
10アルキル基とからなる群より選択されるか;あるいはY’は置換または部分置換のグリセロールの一リン酸エステルであり、該グリセロールの少なくとも1の官能基が飽和または不飽和の炭素鎖を有する脂肪酸でエステル化され、リン酸の他の2つの官能基が遊離しているか、あるいはアルカリまたはアルカリ土類金属で塩化されるかのいずれかであり;
Lは、−C=O、−C=S、−NR
1−、−COO、−OCO、−NR
1CO、−CONR
1−、−O−および−S−(ここで、R
1は上記で定義されるとおりである)からなる群より選択される1または複数の原子または基で所望により分断されてもよい、脂肪族の直鎖または分岐鎖のC
1−C
6のアルカンジイル、アルケンジイル、アルキンジイルからなる群より選択される二価のリンカーであり;
R
I〜R
IVは、各々独立して、−R
2−COOR
3であり、ここでR
2は直鎖または分岐鎖のC
1−C
6アルキルであり、R
3はHまたは医薬的に許容されるカチオンであり;
R
’〜R
’’’は、各々独立して、−R
2−COOR
3であり、ここでR
2は直鎖または分岐鎖のC
1−C
6アルキルであり、R
3はHまたは医薬的に許容されるカチオンである]
で示される化合物である。
【0055】
Y基は、好ましくは、Y基の末端窒素原子と、Yと結び付く末端に存在するカルボニル(−C=O)またはチオカルボニル(−C=S)との間のアミド結合によりL基に連結される。好ましくは、Y基は、式:(Y’)
2−N−(式中、Y’残基は、同一または異なり、鎖長がC
12−C
20、好ましくはC
16−C
18のアルキル鎖である)で示される。
【0056】
別に、Y基はまた、式:Y’−NH−(式中、Y’は、式:
【化4】
で示される1または複数のリン酸基により分断される、C
12−C
20アルキル基、より好ましくはC
16−C
18アルキル基である)で示されてもよい。
【0057】
この実施態様によれば、Yは、式:Y’−NH−(式中、Y’は、式:
【化5】
で示される1または複数の基により分断され、さらには12−20個の炭素原子、より好ましくは16−18個の炭素原子を含有する少なくとも1個の、好ましくは2または3個のカルボキシアルキル基で置換される、C
16−C
18アルキル基である)で示されるリン脂質である。
【0058】
さらに別の実施態様において、Y’は置換または部分置換のグリセロールの一リン酸エステルであり、該グリセロールの少なくとも一つの官能基が飽和または不飽和の炭素鎖を有する脂肪酸でエステル化され、リン酸の他の2つの官能基が遊離しているか、あるいはアルカリまたはアルカリ土類金属で塩化されるかのいずれかである。好ましくは、脂肪酸はC
14−C
20カルボン酸である。
【0059】
したがって、好ましい実施態様によれば、(Y’)
2−N−である場合に、Y’は同一または異なってもよく、
− 直鎖または分岐鎖で、飽和または不飽和のC
16−C
18アルキル基;
− リン酸基である−O−(HO−P=O)−O−で分断され、および/またはオキシカルボニル−(C
12−C
18)アルキルおよびオキシカルボニル(C
12−C
18)アルケニルからなる群より選択される1または複数の原子または基によって所望により置換されてもよいC
4−C
6アルキル基;
からなる群より選択されるか、
あるいはY’は、置換または部分置換のグリセロールの一リン酸エステルであり、該グリセロールの少なくとも一つの官能基が脂肪酸でエステル化され(ここで、該脂肪酸は飽和または不飽和の炭素鎖を有するC
14−C
20カルボン酸である)、リン酸の他の2つの官能基が遊離しているか、あるいはアルカリまたはアルカリ土類金属で塩化されるかのいずれかであり;
L、R
I〜R
IV、およびR
’〜R
’’’は、上記と同意義である。
【0060】
さらにより好ましくは、Y’がリン酸基である−O−(HO−P=O)−O−で分断されるC
4−C
6アルキル基である場合、そのアルキル基は、好ましくは、オキシカルボニル−(C
14−C
16)アルキルおよびオキシカルボニル(C
14−C
16)アルケニルからなる群より選択される少なくとも2つの原子または基によってさらに置換される。
【0061】
このさらに別の実施態様によれば、Yは以下の基:
【化6】
より選択され、ここで、#はリンカーLとの結合点を示す。
【0062】
リンカーLは、式(I)の誘導体にて、ジアゼピン部分をY基に連結し、同様に式(II)の誘導体にて、テトラアザシクロドデカンをY基に連結する、二価の基である。
【0063】
好ましくは、Lは、式(I)および(II)におけるY残基の末端にある窒素原子の結合点として、一の末端で、チオカルボニル基(−C=S)、またはより好ましくはカルボニル基(−C=O)で官能性が付与されている、直鎖または分岐鎖のC
1−C
6アルキル、アルケニルまたはアルキニル基である
【0064】
リンカーLの例が、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル、ペンチルカルボニルおよびヘキシルカルボニルである。
【0065】
式(I)の化合物では、より好ましくは、リンカーLは、式c’):
【化7】
[式中、#は式(I)におけるジアゼピンとの結合点を示す]
で示されるブチルカルボニルより選択される。
【0066】
式(II)の化合物では、リンカーLは、好ましくは、式d’)のメチルカルボニル、および式e’)のカルボキシプロピルカルボニルより選択される。
【化8】
[式中、#は式(II)におけるテトラアザシクロドデカンとの結合点を示す]
【0067】
上記されるように、リンカーLは、その一端でY基に結合し、他端でジアゼピンまたはテトラアザシクロドデカンに結合する。式:Y’−NH−または(Y’)
2−N−で示されるY基は、アミド結合を通してリンカーLが結合する末端窒素原子を有する。
【0068】
式(I)の化合物では、好ましくは、L−Y−システムは、
【化9】
より選択され、ここで、Y’は上記した定義と一致し、#は式(I)の誘導体のジアゼピンとの結合点を示す。
【0069】
式(II)の化合物では、L−Y系は、好ましくは、
【化10】
より選択され、ここで、Y’は上記と同意義であり、#は式(II)の誘導体のジテトラアザシクロドデカンとの結合点を示す。
【0070】
好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物は、
【化11】
からなる群より選択され、ここでR
I〜R
IVは本明細書中に定義されるとおりである。
【0071】
好ましい実施態様によれば、基R
I〜R
IVは同一であり、−CH
2−COOHおよび−R
2−COO
−M
+より選択されるカルボキシメチル基であるのが好ましく、ここでR
2は上記と同意義であり、M
+はMg
2+、Ca
2+およびSr
2+からなる群より選択される金属である。
【0072】
結果として、式(I)のキレート剤は、好ましくは、一般式(I’):
【化12】
[式中、LおよびYならびにL−Yのその組み合わせは上記の好ましい実施態様に記載されるとおりである]
で示されるか、あるいはアルカリ土類金属、好ましくはCa
2+との錯体の形態である。
【0073】
同様に、好ましくは、式(II)のキレート剤、またはその医薬的に許容される塩は、一般式(II’):
【化13】
[式中、LおよびYならびにL−Yのその組み合わせは上記の好ましい実施態様に記載されるとおりである]
で示される化合物を有する。
【0074】
従って、YおよびLの構造と一致して、Ca
2+、Sr
2+、Mg
2+、好ましくはCa
2+などのアルカリ土類金属との錯体として、あるいは医薬的に許容される塩の形態での式(I’)の好ましい化合物は、
【化14】
からなる群より選択される。
【0075】
式(II’)の好ましい錯体は、
【化15】
からなる群より選択される。
【0076】
特に好ましいのは、
− c.1:[6-[[ビス(カルボキシメチル)]アミノ]-6-[5-(ジオクタデシルアミノ)-5-オキソペンタ-1-イル]-テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジアセタート(4-)]カルシアート(2-);
− c.4:[6-[[ビス(カルボキシメチル)]アミノ]-6-[(13R)-10-ヒドロキシ-10-オキシド-5,16-ジオキソ-13-(1-オキソヘキサデシル)オキシ]-9,11,15-トリオキサ-6-アザ-10-ホスファヘントリアコンタ-1-イル]-テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジアセタート(4-)]カルシアート(2-);
− c.5:[10-[2-(ジオクタデシルアミノ)-2-オキソエチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリアセタート(3-)]カルシアート(1-);
− c.7:[10-[(10R)-7-ヒドロキシ-7-オキシド-2,13-ジオキソ-10-[(1-オキソオクタデシル)オキシ]-6,8,12-トリオキサ-3-アザ-7-ホスファトリアコンタ-1-イル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリアセタート(3-)]カルシアート(1-);
からなる群より選択される錯体およびその塩であり、錯体c.5およびその塩、好ましくはCa
2+塩:
【化16】
が最も好ましく、その塩は実験的パートの調製例3.2に詳説される操作に従って合成されるキレート剤14をCa錯形成することで得られる。
【0077】
好ましくは、安定化錯体c)は全重量の4−13%、好ましくは8−10%w/wを構成する。
【0078】
式IおよびIIの化合物の合成:一般的スキーム
本発明の式(I)の化合物は、最初に、選択されたリンカーLと、ジアゼピン部分との間でアダクツを形成し、続いて、リンカーの末端にあるカルボン酸官能性を活性化し、その後で選択されたY基でアミド化することを含む工程で調製され得る。最後に、得られる生成物に保護基がある場合にはそれを除去し、その誘導体を選択されたアルカリ土類金属と所望により錯形成させてもよい。
【0079】
リンカーLと、合成工程にて「試薬」と称されるジアゼピン部分との間のアダクツは、適切なニトロ誘導体(選択されるリンカーの前駆体)と、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ジアゼピンの先駆体)とを反応させることで得られる。その後で、典型的には水素化処理に付し、つづいて塩基性条件下でN−アルキル化に付すことで、ニトロ基を還元して官能性をもたせる。リンカーとジアゼピン部分との間の該アダクツは調製に好都合であり、選択される部分のYを変えることで式(I)の一連の誘導体を調製するための基礎的要素として使用され得る。
【0080】
従って、式(I)および(II)
【化17】
で定義される化合物を調製するための合成方法は、以下の工程:
a)式:
【化18】
[式中、R
I〜R
IVおよびR
’〜R
’’’は上記と同意義であり、Lは末端カルボン酸官能性を含むリンカーである]
で示されるアダクツを調製し;
b)該リンカーの末端カルボン酸官能性を活性化し;
c)工程b)の生成物と、上記のY基との間でアミド化反応に付し;
d)いずれの保護基も切断して、式(I)または(II)の誘導体を得;
e)アルカリ土類金属イオンでキレート化し、式(I)または(II)の誘導体を金属錯体の形態で得る
を含む。
【0081】
式Iの化合物(スキーム1の化合物IIIに相当する化合物)を調製する説明に基づく実例によれば、該方法は、出発アダクツとして、化合物5より出発し、次の工程b)〜e)から構成される。
【化19】
【0082】
リンカーと、ジアゼピン部分との間のアダクツ5は、以下のスキーム2に示されるように、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン・ジアセタートと、6−ニトロヘキサン酸メチルエステル1のアルコール性溶液とを、パラホルムアルデヒドの存在下で反応させ、つづいてニトロ基2を還元し、アミノ誘導体3に官能性を付与し、末端カルボン酸基4を選択的切断に付すことで調製される。
【化20】
【0083】
化合物5で一様に示されるジアゼピン誘導体を、該方法の工程b)に示されるように、末端カルボン酸官能性の活性化に供する。その活性化は、有機化学の分野でカルボン酸官能性を活性化するのに周知の操作に従って、典型的にはカルボキシル活性化剤(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS))と、カルボジイミド(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))の存在下、出発物質に関して少なくとも1:1のモル比で、あるいは好ましくはわずかに過剰量のモル比、例えば1:1.5までのモル比で、適切な有機溶媒(例えば、CHCl
3、CH
2Cl
2等より選択される非極性有機溶媒)中にて反応させることにより実施され得る。好ましくは、工程b)は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびEDCの存在下、出発物質に関して1:1〜1:1.1のモル比で、CH
2Cl
2の存在下にて実施される。こうして得られた誘導体を次に、工程c)に従って、一般にはジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で、リンカーLの活性化されるカルボン酸末端基と、選択されるY残基(例えばジアルキルアミン)の窒素原子との間のアミド化反応に供する。
【0084】
好ましくは、アミド化反応は、工程b)より得られた活性化化合物をCHCl
3に溶かし、例えばジアルキルアミンおよびDIPEAをこの順序で、出発物質に関して1:1〜1:1.7のモル比で添加することで実施される。次に、該溶液を、選択された温度で適切な期間、典型的には室温(例えば、15〜30℃の温度)で、一般には20−24時間までの期間攪拌する。次にこうして形成されたアミド生成物を、例えば、水で洗浄し、分離した有機相を一般には減圧下で蒸発させるか、あるいは蒸留操作に付すことで精製する。例えば、クロマトグラフィーに付して精製した後、式(I)の生成物は、保護された形態にて、例えばtert-ブチルエステル誘導体として高収率(約80%)および高純度(約95−99%HPLC)で得られる。
【0085】
工程d)によれば、そのカルボン酸保護の形態にて得られる式(I)の誘導体は、当該分野にて公知の条件下で、工程a)にて実際に利用された保護基の種類に応じて、容易に脱保護され得る。可能とする保護基の選択については参考までに、「Greene's protective groups in organic synthesis」Wiley 14版を参照のこと。
【0086】
好ましい実施態様において、カルボン酸官能性はtert-ブチルエステルとして保護され、その脱保護は、酸性条件、典型的にはトリフルオロ酢酸(TFA)の存在下で、CH
2Cl
2などの有機非極性溶媒中で実施される。
【0087】
式(II)の化合物の合成は、市販されている1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸トリス(1,1-ジメチル)エチルエステル11より出発して実施された。
【0088】
実験的パートにて規定される化合物11を、カルボン酸官能性の活性化、アミド化反応、および保護されたカルボン酸官能性の脱保護に供する。
【0089】
脱保護の後で、そうして得られた式(I)および(II)の化合物は、対応する金属錯体の誘導体を得るために、アルカリ土類金属の化合物と適宜反応させることができる。当該変形は、典型的には、選択された金属の無機または有機塩あるいはオキシドと、水または有機溶媒、例えばCHCl
3、MeOHまたはEtOHあるいはその混合液などの溶媒の存在下で操作して反応させることで実施される。その金属の好ましい対イオンはクロリドまたはアセタートであり、好ましい塩はCaCl
2、Ca(OAc)
2であり、それに対して好ましいオキシドはCaOである。
【0090】
本発明の組成物はまた、蛍光色素を含むSLNの細網内皮系からの認識を減少させることを目的とするステルス剤の機能を有する少なくとも1つの親水性ポリマーe)を含有しうる。好ましい実施態様において、ステルス剤は、疎水性セグメントに連結するナノ粒子表面をコーティングするための親水性ポリマーである。ステルス剤は、官能化ポロキサマー、ポリシロキサン、ポリアルキルポリエーテル、ポリグリセリン、ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールとすることができ、所望によりリン脂質部分と共有結合してもよい。該成分の混合物も供給される。ステルス剤は当該分野にて周知であり、本発明における使用に適する。例えば、PEGそれ自体、あるいはアルキル官能性を有するように誘導されたPEG、および/またはリン脂質、例えばリガンド機能を有するビタミンまたはペプチドなどの細胞受容体に対する特異的リガンドが挙げられる。
【0091】
好ましい実施態様において、親水性ポリマーは、好ましくは分子量が500−10000ダルトンの、より好ましくは2000−5000ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)である。ポリエチレングリコールはリン脂質部分と共有結合し得る。ペグ化リン脂質の例が、DPPE−PEG、DSPE−PEG、DMPE−PEG、DAPE−PEGまたはDOPE−PEGである。特に好ましいリン脂質がDAPC、DSPC、DPPC、DMPA、DPPA、DSPA、DMPG、DPPG、DSPG、DMPS、DPPS、DSPSおよびエチル−DSPCである。DPPG、DPPSおよびDSPCが最も好ましい。例えば、DPPEおよび/またはDSPE(ペグ化誘導体を含む)、DPPC、DSPCおよび/またはDAPC+DSPS、DPPS、DSPA、DPPA、DSPG、DPPG、エチル−DSPCおよび/またはエチル−DPPCの混合物などのリン脂質の混合物も使用され得る。
【0092】
好ましくは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)(DSPE-PEG2000)を製剤に配合する。好ましくは、この成分がSLNの16%までを構成し、さらにより好ましくは約6−12%を構成する。
【0093】
本発明の固形脂質ナノ粒子を形成する材料はすべて当業者に周知であり、一般に市販されている。
【0094】
本発明の一の実施態様において、該組成物はさらに、疾患組織に対して高い結合アフィニティを有する標的とする部分を含む。一般に、標的とする部分は、疾患の標的に特異的に結合するのに効果的であり、該標的と関連する疾患の徴候を提供するのに有用でなければならない。標的の例が、疾患または病理学的組織にてアップレギュレートされる、蛋白、酵素または特異的分子の形態の細胞表面受容体である。表面活性な標的化剤は、標的とする部分と、脂質構造と、活性部分および脂質構造の間のポリマースペーサーとにより構成され得る。本発明の範囲にて、「標的とする部分」は、標的との関係を、いずれか適当な形態にて、例えば化学結合、物理化学親和性、化学反応、代謝性事象にて確立する能力を有する分子、化合物、物質である。該標的とする部分と標的との間のこの関係が、本発明のナノ粒子が最新の診断装置により検出されるのに十分な時間にわたって標的付近に存在させることを可能とする。
【0095】
本発明の好ましい標的とする部分は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ホラート(ポリエチレングリコール)-2000]アンモニウム塩(DSPE-PEG2000-ホラート)である。この部分は、本明細書にて、ホラート受容体とのその結合アフィニティについての代表的な実施態様として提示される。他の代表的な標的とする部分はまた、蛋白、アプタマー、αvβ3インテグリンを標的とするためのArg−Gly−Asp(RGD)などのペプチド、およびポリペプチド、ビタミン、ベバシズマブ、トラスツズマブおよびセツキシマブまたはそれらのフラグメントなどの抗体、好ましくは、本発明のSLNのコアの回りのシェル構造にそれらを配合するのに、親油性または両親媒性成分、例えばアルカリ鎖またはリン脂質でそれらを誘導化した後に、本発明のナノ粒子に配合され得る炭水化物を包含しうる。
【0096】
本発明のナノ粒子を標的とすることで、該ナノ粒子は1または複数の特異的マーカーを検出することによっても診断され得る疾患の診断剤として有用なものとなる。腫瘍が本発明にとって関心のある代表例である。
【0097】
成分d)はシアニンファミリーおよび/またはポリエテロサイクリック化合物(クマリン、ピラノ、キノリン、ピラノキノリン、インドールおよびピラノインドール誘導体を含む)の酸形態またはその医薬的に許容される塩での蛍光色素である。
【0098】
かかる蛍光色素の例として、ICG、cy5、cy5.5、cy7、IRDye(登録商標)800、IRDye(登録商標)750(LI-COR Viosciences)、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)700およびFluor(登録商標)750(Invitrogen)、DY−682、DY−675、DY−782(Dyomics GmbH)(商業的にAlexa Fluor(登録商標)として知られている)であって、酸形態またはその医薬的に許容される塩のものが挙げられる。
【0099】
本発明によれば、シアニンファミリーおよび/またはポリエーテロサイクリック化合物の蛍光色素は、インドシアニン・グリーン(ICG)
【化21】
および以下の化合物(その化学構造、および商品または一般名あるいは共通コードを以下に報告する)
【化22】
からなる群より選択される。
【0100】
本発明の好ましい実施態様によれば、蛍光色素は、いずれかの塩の形態の、好ましくはナトリウム塩としてのインドシアニン・グリーンである。本発明に係る蛍光色素は、0.01−0.5%、好ましくは0.05−0.15%の量で配合される。
【0101】
一般に、本発明に係る固形脂質ナノ粒子を製造する異なる成分の間での個々の割合は、この分野における常識に訴えかけることにより当業者であれば容易に決定することができる。例えば、US2006/0083781、その中に引用されている参考文献も参照のこと。
【0102】
本発明のある典型的な実施態様に対する指針として、乾燥SLN組成物の理論上の成分を重量/重量%で言及すると、コアa)を形成する脂質成分は30−50%、好ましくは35−45%の範囲で配合されるグリセリドおよび/または脂肪酸である。界面活性成分b)は、好ましくは、25−60%の範囲、より好ましくは27−45%、より一層好ましくは30−38%の範囲で配合されるリン脂質でできている。使用されるなら、PEG(成分e)は、好ましくは、約16%まで、より好ましくは6−12%である。両親媒性の安定化成分c)は約4−13%、好ましくは8−10%に相当する。
【0103】
本発明に係る蛍光色素d)は、0.01−0.5%、好ましくは0.05−0.15%の量で配合される。
【0104】
本発明はまた、上記のナノ粒子の製造方法にも関する。
【0105】
この方法は、水/油/水(W/O/W)方法を修飾したものであり、以下の工程:
i)固形脂質結晶性コアを形成するであろう脂質物質a)、該コアの周囲にシェルを形成するであろう両親媒性化合物b)、好ましい実施態様を構成する上記の式Iおよび/またはIIの化合物とのアルカリ土類錯体(成分c))、シアニンファミリーおよび/またはポリエテロサイクリック化合物の蛍光色素d)、所望により親水性ポリマーe)、所望により標的とする部分f)を、水非混和性または水低混和性有機溶媒に溶かすことで有機相(O)を調製し;
ii)1または複数の親水性界面活性剤を、所望により共界面活性成分を溶かすことで、第1水溶液(W)を調製し;
iii)工程i)の有機相(O)を工程ii)の第1水溶液(W)と混合し、安定したW/Oミクロエマルジョンが形成されるまで混合し;
iv)工程iii)で得られたW/Oミクロエマルジョンを、その後で、少なくとも界面活性剤を含有しうる第2水溶液(W
1)に添加してW/O/W
1の多重エマルジョンを得;
v)蒸発により多重エマルジョンから有機溶媒を取り去り、脂質ナノ粒子の懸濁液を得;
vi)工程v)で得られた懸濁液を冷却し、固形コアa)を完全に結晶化させ;
vii)工程vi)にて得られた懸濁液から過剰量の成分を洗浄し(そうして得られたSLNの懸濁液は使用されたイオン性界面活性剤などの親水性界面活性成分および共界面活性剤を含まないと考えられる);
viii)工程vii)にて得られた懸濁液を水相にて、あるいは水を除去した後に固相にて所望により貯蔵してもよい
工程を含む。
【0106】
工程i)にて、有機溶媒は水非混和性または水低混和性有機溶媒である。この有機溶媒の種類は当該分野にて周知であり、化学の分野では常識の範囲である。本発明の目的のために、該有機溶媒は20℃〜70℃の低沸点を有し得る。この低沸点は、この分野における常套手段として、大気圧または制御された減圧の条件下で決定され得る。好ましい実施態様において、有機溶媒は、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、およびギ酸エチル、あるいはその混合液からなる群より選択される。より好ましい実施態様において、塩化メチレンが使用される。該溶液は優先的に30−35℃に加熱される。
【0107】
工程ii)の好ましい実施態様において、タウロコール酸ナトリウム・水和物および1−ブタノールを水相に溶かす。例えば、ステルス剤の機能を有する親水性ポリマー官能基(上記の成分dを参照のこと)および/または活性な標的剤(上記の成分eを参照のこと)を水相または有機相に溶かすことで、他の親水性成分をSLNに導入できる。
【0108】
工程iii)にて、W/Oミクロエマルジョンは、以下の成分を、次の濃度範囲(M)で溶媒混合液(CH
2Cl
2:H
2O(1:0.125)v/v)に溶かすことで得られる:
【表1】
【0109】
工程iv)にて、ミクロエマルジョンを、界面活性剤を0.12−0.5%w/vの範囲、好ましくは0.24%にて含有する水溶液W1(割合1:10 W/O:W、v/v)に添加する。好ましい実施態様において、W1溶液は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートを含有する。
【0110】
工程v)にて、溶媒は、好ましくは、大気圧で、または制御された減圧下で蒸発し、都合よくは蒸発させるのに攪拌を用いる。多重エマルジョンの大気圧での、または制御された減圧下での温度を上げることで蒸発させることもできる。好ましくは、蒸発温度は、脂質コア成分の融点を越えてはならない。
【0111】
工程vi)は、当業者が決定することができ、最終の固形結晶性脂質コアを組成するのにも作用する、都合のよい温度で実施される。好ましい実施態様において、冷却は4−15℃の範囲の温度でなされる。好ましくは、懸濁液は0.1−0.4℃/分、好ましくは0.2−0.4℃/分、より一層好ましくは0.3℃/分からなる速度で冷却される。
【0112】
工程vii)の洗浄操作は、例えば、透析、濾過、限外濾過または超遠心分離操作を含む。好ましい実施態様において、製剤を限外濾過または凍結乾燥に付し、「乾燥」SLN組成物を得る。
【0113】
上記において、本発明は、一の好ましい実施態様により、すなわちインドシアニン・グリーンをロードしたナノ粒子を用いて記載される。しかしながら、この記載が本発明のあらゆる態様に、すなわちシアニンファミリーおよびAlexa Fluor(登録商標)のあらゆる色素(実施例1〜6に記載される色素)に適用できることは十分に理解される。本発明の一の実施態様において、蛍光色素をロードしたSLN製剤において、好ましくは粒度分布が10〜220nmであり、平均粒度(z−アベレージ)が100nmより小さく、多分散指標が0.2より低い、安定した単分散コロイド懸濁液が得られる(ICGをロードした実施態様での、
図1を参照のこと)。本発明の実施態様において、ICGをロードしたSLNは、z−アベレージが約60nmで、多分散指標(PdI)が0.16である(実施例1、60R012001L;実施例2、63R011013L;実施例3、60R012002L;実施例4、63R011005L;実施例5、63R011001L;実施例6、63R011002LのSLNを示す表Aを参照のこと)。
【0114】
表A
標的とされる、および標的とされないICGをロードしたSLNの物理化学特性評価
【表2】
【0115】
本発明の方法の再現性は、調製した異なる3つのバッチについて、平均した物理化学パラメータ、その標準偏差、およびその相対的標準偏差を分析することで、標的とされる、および標的とされないICGをロードしたSLN製剤について評価された。
【0116】
表B
標的とされる、および標的とされないナノ粒子に関するICGをロードしたSLN製剤の再現性(表Aに示される3つのバッチでの再現性)
【表3】
【0117】
表Bに列挙される結果(実施例1−6)は製造方法にて良好な再現性のあることを示す。さらには、標的となる部分を組み込むことに応じて、ICGをロードしたSLNの最終物理化学パラメータにおいて関連する差異のないことは注目に値する。
【0118】
本発明に係るナノ粒子は、遊離色素の場合と比べて、その中に配合される色素の蛍光発光効率を有意に改善する能力を有する。例えば、ICGをロードしたSLNでの代表的な実施態様において、水溶液中でのICG蛍光発光収量%(Φ%)は約2.72%であるのに対して、本発明の対応するSLNは、標的とされる、および標的とされないSLNのいずれにおいても、約7.6%の蛍光発光効率を示し(表C、実施例2および4を参照のこと)、貯蔵条件で経時的に(少なくとも>60日にて)安定したままである。
【0119】
表C
ICG色素の水中での、およびSLNに組み入れた後でのΦ%
【表4】
【0120】
本発明のさらなる利点は、水溶液中での遊離色素との関連で、色素の光安定性が改善されることにある。遊離ICG溶液およびSLNにロードさせたICG懸濁液を785nmのレーザー照射に暴露することで水性媒体での実験を行った(
図2、実施例8を参照のこと)。NIR蛍光画像システム(LI-COR BiosciencesによるPearl(登録商標)インパルスシステム)により蛍光発光を集めた。試料の濃度は比較可能な最初の蛍光発光シグナルを表示するように調整された。次に、両方の試料に光を3秒間照射し、その試料を暗闇に1秒間保持する実験を37℃で二重に重複して行った。この一連の実験を連続して1時間繰り返した。
図2から、SLNにロードさせたICGが、遊離色素(経時的に蛍光発光シグナルを迅速に減少させることにより特徴付けられる)よりも高い光安定性を示すことは注目に値する。実験の終わりの時点で、SLNにロードさせたICGはまだ、最初の蛍光発光効率の50%の効率を示すのに対して、遊離ICGの蛍光発光は0よりもほんの少し上にあるに過ぎない。
【0121】
本発明のもう一つ別の利点として、色素をロードしたSLNの長期安定性が改善される。安定性は試料を暗闇にて貯蔵条件(4℃)で保持し、UV−Vis分光光度計(Lambda40、Perkin Elmer)で吸収極大を測定することにより分析された。ICGをロードしたSLNを有機溶媒の混合液(CHCl
3:CH
3OH 2:1)に溶かし、800nmでのUV−Vis分析のためにさらに希釈した。SLNにて処方されたICGの濃度を計算するのに検量線を用いた。
図3のデータ(実施例9)は、処方した日から90日間の異なる時点で測定される、ICGをロードしたSLNの濃度が、初期値との関連で95%でリカバーされ得ることを示す。
【0122】
本発明のもう一つ別の利点は、水溶液中の遊離ICGとの関連で、凝集体を形成する速度が著しく低下することである。
図4(パネルA、実施例7)にて、処方した直後、および処方した日から90日および120日後のICGをロードしたSLNの懸濁液のUV−Visスペクトルが報告される。120日後で凝集体(いわゆるJ−凝集体)の存在は有意ではなく、観察されるスペクトルの範囲でSLNにロードさせたICGの吸収スペクトルはなおも実質的に同じままであるのは明らかである。800nmでの吸光度は初期値との関連で96%でリカバーされる。加えて、蛍光発光特性は、ICGをSLNに取り込むことで、観察される期間にわたって保持され得る(図示せず)。他方において、ICGは、μM濃度にて、数日で凝集し、その結果として貯蔵期間の間に遊離ICGの吸光度(780nm)が減少し、900nmで新たなピークを生成し得ることが知られている(
図4B、実施例7を参照のこと)。
【0123】
本発明により提供されるもう一つ別の利点は、粒度分布の安定性、表面荷電およびPdIの強化であり、それらの強化は製剤を暗闇中にて4℃に維持し、25℃で測定を行う様々な時点で測定された。表Dに列挙される結果、実施例4は、処方から90日経過した後では、その物理化学的パラメータはいかなる有意な変数でもないことは明白である。
【0124】
表4
標的とされるICGをロードしたSLNの物理化学安定性(実施例4に示される)
【表5】
【0125】
さらなる態様において、本発明は、標的とされるICGをロードしたSLNの特異的受容体に対する特異的摂取を取り扱う。具体的な実施態様において、FA−ICG−ロードのSLNを葉酸受容体との結合特性の点から評価した。実験をバイオレイヤー干渉システム(Octet(登録商標)装置、Fortebio)で実施した。標的とされる、および標的とされないICGをロードしたSLNの2つの異なるバッチを、プロテインAを通してコンジュゲートされる、抗葉酸IgG(FA2)で被覆されたバイオセンサーとのその結合特性について分析した。
図5において、実施例10の結果は、標的とされるICGをロードしたSLNが、予め活性化されたバイオセンサーを認識しない、標的とされないものとの関連で、IgG抗葉酸と強いアフィニティで結合したことを示す。
【0126】
本発明はまた、本明細書のインビボ適用にて開示されるICGをロードしたSLNの組織標識化特性の改善に関する。一の実施態様において、F−ICGをロードしたSLNの腫瘍組織に対する特異的摂取を、IGROV−1細胞系統を用い、Balb/C nu/nuマウスの右側面に皮下注射した卵巣悪性腫瘍の異種移植片実験で具体的に評価した。腫瘍域周辺で示される関心のある領域にて獲得される蛍光シグナルを集め、それは筋肉では筋肉の背景蛍光とも称される。FA−ICGをロードしたSLNの場合には、測定されるインビボの蛍光シグナルは5.1a.u.(SD2.9)であり、それに対して標的とされないICGをロードするSLNを投与する場合には、蛍光シグナルは1.7a.u.(SD0.2)であった。
【0127】
その後で、エクスビボでの画像分析から、切除された各臓器における蛍光シグナルを定量するために動物を殺した。
図6にて、実施例11の分析組織の測定されるすべての蛍光シグナルが報告される。FA−ICGをロードしたSLNの腫瘍組織への特異的摂取が確かめられることは注目に値する。特に、標的とされるICGをロードしたSLNと、標的とされないものとで比較したエクスビボでの蛍光割合は3倍に強化された(腫瘍SI−筋肉SI)/筋肉SIで測定した)。さらには、両方の製剤は、主に肝臓および腎臓の代謝経路を含め、同じクリアランス機構に準ずるようである。
図7にて、実施例11の、標的とされる、および標的とされないICGをロードするSLNの投与の24時間後に殺した代表の2匹のマウスから得られるエクスビボ画像分析も報告される。
【0128】
本発明に係るSLNは、他のキャリアシステムに関して数種の利点を提供する。例えば、脂肪エマルジョンまたはナノエマルジョンは、油滴に容易に組み込むことのできる親油性薬物のためのデリバリーシステムとして提案される。これらのキャリアシステムは副作用を減少させることができるが、熱力学的に不安定である。従って、エマルジョンは凝集しやすく、あるいは破壊したとしても、薬物が血流に達するや否や迅速に放出されることがしばしばである。
【0129】
リポソームに関して、SLNは、安定したリポソームとは両立しない、60nmより小さい、極めて小さな直径で処方され得、面曲率の超過はリポソーム製剤の不安定性を生じさせ、その実戦利用をある程度まで阻害する。
【0130】
ナノ粒子の大きさは、病理組織におけるその蓄積に強く影響を及ぼす極めて重要なパラメータである。大きな違いが、その大きさを変えることで、がん組織におけるナノ粒子の分布にて簡単に発生しうることが証明される。最適な蓄積が、リポソーム製剤についてよりも、安定したSLNについてより到達可能な大きさである、60nmよりも小さな直径の粒子で得られ得ることが示唆された。
【0131】
本発明に係るSLNは、ICGをロードしたナノ粒子の典型的な実施態様において、先行文献に記載の製剤と比べて(WO2010/018216で40日、およびWO2003/057259で25日)、極めて高い光学およびコロイド安定性を示す。
【0132】
実際に、発明の典型例において、標的とするICGをロードするSLNの光学密度を処方から170日目まで測定し、極めて安定した観測値がもたらされた(170日目のODは初期値に対して>95%であった)。測定はパーキン・エルマー・ラムダ(Perkin Elmer Lambda)40UV−Vis分光光度計を用いて実施された(
図8を参照のこと)。
【0133】
発明の典型例において、ICGをロードするSLNの蛍光発光効率の測定値は、標的とする、または標的とされないSLNのいずれにおいても7.6%に等しかった(表Cを参照のこと)。その上、蛍光量子収率は、実施例2に記載されるように処方したICGをロードするSLDについて示されるように、経時的に(少なくとも>60日)安定したままである。さらには、ICGをロードしたSLNの蛍光量子収率はICG/水よりも2.8倍高い。この特性は、WO2010/018216に記載の先行技術(ICGナノエマルジョン(400μM)の蛍光量子収率がICGの水中溶液よりも2倍高いに過ぎない(表2およびカラムラベルFを参照のこと))との関連で、有意かつ予期せぬ改善である。
【0134】
水性媒体中の、およびSLNに組み込まれた後のICGのさらなる光学特性(すなわち、最大吸収および発光波長、ストークスシフト)を表Eにて報告する。
【0135】
表E
ICGをロードするSLN製剤の光学特性(実施例4)
【表6】
【0136】
ICGの水中溶液との関連で、吸収および発光最大波長の高レッドシフトにより示されるように、ICGとSLNとの成分の相互作用が、ICGのインビボにおける光学画像用途を改善することは明らかである。
【0137】
本発明に係るICG−SLNも従来技術との関連で改善されたアップロードを示す。アップロードされたICGの平均収率は、理論的な量との関連で最終処方中のICGの量として計算した場合に、75%よりも高く、90%までであった(外部相ではICGは検出できなかった)。WO2010/018216は35%に近い値を示す。さらには、初期のICGのローディング濃度に対するICG封入の実験がNavarroらによってなされ、初期濃度が増加するに従って、封入効率も増加した(>40%)。本発明者らの処方工程においては、ICGの初期濃度が1mMよりも低い場合であっても、高い封入効率を得ることが可能であった。
【0138】
次に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
【0139】
実験的パート
式(I)の化合物の調製
【0140】
調製1:スキーム3に係る化合物8の調製
【化23】
【0141】
調製1.1:化合物5の調製
化合物5は、下記のスキーム2にて説明されるように、US2006018830に記載の操作に従って、5つの工程で調製された。
【0143】
2−ニトロシクロヘキサノンをアンバーライトA21の存在下にてMeOH中で還流させて6−ニトロヘキサン酸メチルエステル1を得た。1と、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン・ジアセタートおよびパラホルムアルデヒドとを反応させてジアゼピン2を得、それをまず水素化して3とし、次にブロモ酢酸t−ブチルでアルキル化してペンタエステル4を得た。4をTHF/H
2O中にてLiOHで選択的加水分解に付して5(全収率13%)を得た。
【0144】
調製1.2:化合物6 6-[ビス[2-[(1,1-ジメチル)エトキシ]-2-オキソエチル]アミノ]-6-[(2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-5-オキソペンタ-1-イル]テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジ酢酸ビス[(1,1-ジメチル)エチル]エステルの調製
化合物5(14.6 g;0.022モル)をCH
2Cl
2(350mL)に溶かし、次にNHS(3.75g;0.033モル)を加え、該混合物を氷浴中にて0℃に冷却した。EDC(6.25g;0.033モル)のCH
2Cl
2(150mL)中溶液を滴下して加え、次に該反応溶液を室温で24時間攪拌した。該混合物をH
2O(3x150mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、蒸発させて6を黄色油(15.42g;0.020モル;収率92%)として得た。
【0145】
分析データ:
分子量:768.94(C38H64N4O12)
1H−および
13C-NMRならびにMSは構造式と矛盾しない。
【0146】
調製1.3:化合物7 (6-[ビス[2-[(1,1ジメチル)エトキシ]-2-オキソエチル]アミノ]-6-[(13R)-10-ヒドロキシ-10-オキシド-5,16-ジオキソ-13-(1-オキソデシル)オキシ]-9,11,15-トリオキサ-6-アザ-10-ホスファノナコス-1-イル]-テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジ酢酸・ビス[(1,1-ジメチル)エチル]エステル)の調製
化合物6(1.92g;2.50ミリモル)をCHCl
3(190mL)に溶かした。ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)(1.73g;2.50ミリモル)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(1.7当量)をこの順序で添加した。該溶液を室温で3時間ないし24時間攪拌した。該混合物をH
2O(1x50mL)、酸性H
2O(HClを用いてpH4-5とした;1x50mL)およびH
2O(1x50mL)で順次洗浄した。有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過して蒸発させた。こうして得られた粗物質をフラッシュクロマトグラフィーに付して精製し、化合物7(2.79g;2.07ミリモル)を白色固形物質(収率83%)として得た。
【0147】
分析データ:
HPLC−ELSD:100%(エリア%);分子量:1345.82(C71H133N4O17P)
1H−および
13C-NMRならびにMSは構造式と矛盾しない。
【0148】
調製1.4:化合物8 (6-[ビス[(カルボキシメチル)アミノ]-6-[(13R)-10-ヒドロキシ-10-オキシド-5,16-ジオキソ-13-(1-オキソデシル)オキシ]-9,11,15-トリオキサ-6-アザ-10-ホスファノナコス-1-イル]-テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジ酢酸)の調製
化合物7(2.79g;2.07ミリモル)をCH
2Cl
2(100mL)に溶かし、該溶液を攪拌して0℃に冷却し、ついでTFA(6当量)を滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した。該溶液を蒸発させ、残渣を新たなTFA(30当量)に溶かした。この溶液を室温で80時間攪拌し;その反応をMS分析およびHPLC−ELSDでモニター観察した。混合物を蒸発させ、残渣をジイソプロピルエーテルで処理して白色固体を得、それを遠心分離に付し、ジイソプロピルエーテル(2x30mL)で洗浄した。得られた固体をH
2Oに懸濁させ、5%水性NaHCO
3を添加することによりpH6−7で溶かし、1M HClを添加することによりpH2で沈殿させた。固体を濾過し、減圧下で乾燥させ(P
2O
5)、リガンド8(1.77g;1.58ミリモル)を白色固形物質(収率76%)として得た。
【0149】
分析データ:
HPLC−ELSD:95.3%(エリア%)
分子量:1121.39(C55H101N4O17P)
錯滴定値:95.7%
1H−および
13C-NMRならびにMSは構造式と矛盾しない。
【0150】
調製2:スキーム4による化合物10の調製
【化25】
【0151】
調製2.1:化合物9 (6-[ビス[2-[(1,1-ジメチル)エトキシ]-2-オキソエチル]アミノ]-6-[5-(ドデシルアミノ)-5-オキソペンタ-1-イル]-テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジ酢酸・ビス[(1,1-ジメチル)エチル]エステル)の調製
調製1.2に従って調製した化合物6(3.13g;4.07ミリモル)を、ジドデシルアミン(1.44g;4.07ミリモル)およびDIPEA(1.7当量)を含むCHCl
3(200mL)に溶かした。反応溶液を室温で24時間攪拌し、H
2O(1x50mL)、酸性化H
2O(HClでpH4-5とした水;1x70mL)およびH
2O(1x50mL)で連続して洗浄した。有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過して蒸発させた。そうして得られた生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、化合物9(4.30g、4.27ミリモル)を油状物(定量収率)として得た。
【0152】
分析データ:
HPLC−ELSD:89.7%(エリア%)
分子量:1007.53(C58H110N4O9)
1H−および
13C-NMRならびにMSは構造式と矛盾しない。
【0153】
調製2.2:化合物10 (6-[ビス[(カルボキシメチル)アミノ]-6-[5-(ドデシルアミノ)-5-オキソペンタ-1-イル]-テトラヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン-1,4(5H)-ジ酢酸]の調製
化合物9(4.30g、4.27ミリモル)をCH
2Cl
2(50mL)に溶かし、そうして得られた溶液を攪拌し、0℃に冷却し、次にTFA(6当量)を滴下して加えた。該反応混合物を室温で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、得られた残渣を新たなTFA(50当量)に溶かした。この溶液を80時間攪拌した。混合物を蒸発させ、残渣をジイソプロピルエーテル(70mL)で処理して白色沈殿物を得、それを濾過または遠心分離に付し、ジイソプロピルエーテル(2x20mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させ(P
2O
5;NaOHペレット)、粗リガンドを白色固体として得た。粗生成物をH
2Oに再び懸濁させ、2N NaOHを添加することによりpH6−7で溶かし、1M HClを添加することによりpH2で沈殿させ、リガンド10(2.83g、3.61ミリモル)を白色固体(収率:85%)として得た。
【0154】
分析データ:
HPLC−ELSD:82.4%(エリア%)
分子量:783.10(C42H78N4O9)
1H−および
13C-NMRならびにMSは構造式と矛盾しない。
【0155】
1.1 式(II)の化合物の調製
1.2 調製3:スキーム5による化合物13の調製:
【0157】
調製3.1:化合物12 (10-[2-(ジドデシルアミノ)-2-オキソエチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸・トリス[(1,1-ジメチル)エチル]エステル)の調製
HBTU(1.89g;4.95ミリモル)およびDIPEA(1.09g;8.41ミリモル)を、化合物11(2.84g;4.95ミリモル)のCH
3CN(200mL)中懸濁液に連続して添加し、その混合物を攪拌しながら室温で30分間放置し、ジドデシルアミン(1.75g;4.95ミリモル)を加え、その混合物を攪拌しながら室温で24時間保持した。
【0158】
反応混合物を蒸発させ、残渣をCHCl
3に溶かし、H
2O(100mL)、酸性H
2O(HClでpHを4−5とした水;100mL)およびH
2O(100mL)で連続して洗浄した。有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過して蒸発させ、得られた粗物質をフラッシュクロマトグラフィーに付して精製し、化合物12を無色油(3.55g;3.91.ミリモル;収率79.%)として得た。
【0159】
分析データ:
分子量:908.40(C52H101N5O7)
1H−および
13C-NMRならびにMSは構造式と矛盾しない。
【0160】
調製3.2:化合物13および14 (10-[2-(ジドデシルアミノ)-2-オキソエチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸;化合物13)の調製
TFA(6当量)を、化合物12(4.40.g;4.84ミリモル)の0℃に冷却したCH
2Cl
2(70mL)中溶液に滴下して加え;その得られた溶液を室温で1時間攪拌し、次に蒸発させた。残渣を新たなTFA(50当量)に溶かし、そうして得られた溶液を攪拌しながら室温で96時間保持した。
【0161】
反応混合物を蒸発させ、残渣をiPr
2O(150mL)で処理して白色固形物質を得、それを遠心分離に付し、iPr
2O(2x40mL)で洗浄し、乾燥させてリガンド13を白っぽい固形物質(2.44.g;3.30ミリモル;収率68%)として得た。
【0162】
分析データ
錯滴定値:99.4%
分子量:740.08(C40H77N5O7)
1H−および
13C-NMRならびにMSはその構造と矛盾しない。
【0163】
MAGMA 2001. 12 (2-3), 114-120に開示の操作に従って化合物14を合成した。
【化27】
【0164】
調製4:化合物15a−bの調製
【化28】
【0165】
調製4.1 化合物15a−bの調製 −一般的操作
HBTU(1当量)およびDIPEA(1.7当量)を、化合物11のCH
2Cl
2中懸濁液(濃度1%w/v)に連続して添加し、その混合物を攪拌しながら室温で30分間放置し、次にホスホエタノールアミン(DLPE n=10またはDMPE n=12)(1当量)を加え、その混合物を攪拌しながら室温で24時間維持した。反応混合物を
H
2O(100mL)、酸性H
2O(HClでpHを4−5とした水;100mL)およびH
2O(100mL)で連続して洗浄した。有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過して蒸発させ、そうして得られた粗物質をフラッシュクロマトグラフィーに付して精製し、化合物15a−bを得た。
【0166】
調製4.1a 10-[(10R)-7-ヒドロキシ-7-オキシド-2,13-ジオキソ-10-[(1-オキソドデシル)オキシ]-6,8,12-トリオキサ-3-アザ-7-ホスファテトラコス-1-イル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸・トリス[(1,1-ジメチル)エチル]エステル;化合物15aの調製
試薬:化合物11(968mg;1.69ミリモル);1,2-ジドデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(980mg;1.69ミリモル);
化合物15a(605mg、0.53ミリモル);収率32%
【0167】
分析データ
HPLC−ELSD:40.6%(エリア%)
分子量:1134.48(C57H108N5O15P)
1H−および
13C-NMRならびにMSはその構造と矛盾しない。
【0168】
調製4.1b 10-[(10R)-7-ヒドロキシ-7-オキシド-2,13-ジオキソ-10-[(1-オキソテトラデシル)オキシ-6,8,12-トリオキサ-3-アザ-7-ホスファエサコス-1-イル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸・トリス[(1,1-ジメチル)エチル]エステル;化合物15bの調製
試薬:化合物11(1.43g;2.36ミリモル)、1,2-ジテトラデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1.50g;2.36ミリモル);
化合物15b(2.18g;1.97ミリモル;収率78%)
【0169】
分析データ
HPLC−ELSD:82.4%(エリア%)
分子量:1190.49(C61H116N5O15P)
1H−および
13C-NMRならびにMSはその構造と矛盾しない。
【0170】
調製4.2 化合物a−bの調製−一般的操作
TFA(6当量)を化合物15a−bの0℃に冷却したCH
2Cl
2中溶液(濃度1%w/v)に滴下して加え、該溶液を室温で1時間攪拌し、次に蒸発させた。残渣を新たなTFA(30当量)に溶かし、その新規な溶液を攪拌しながら室温で96時間保持した。
【0171】
反応混合物を蒸発させ、残渣をiPr
2O(150mL)で処理して白色固形物質を得、それを遠心分離に付し、iPr
2O(2x40mL)で洗浄した。
【0172】
粗生成物16aを次の方法に従って精製した。粗生成物をH
2Oに懸濁させ、5%水性NaHCO
3を添加することによりpH6−7で溶かし、その後で1M HClを添加することによりpH3で再び沈殿させた。そうして得られた固形物質を遠心分離に付し、乾燥させてリガンド16aを得た。
【0173】
粗生成物16bを次の方法に従って精製した。粗生成物をH
2Oに懸濁させ、1M NaOHを添加することによりpH6−7で溶かし、そうして得られた溶液を、溶出液としてH
2O/CH
3CNのグラジエントを用いて、アンバーライト(登録商標)XAD1600樹脂上のパーコレーションに供することで精製した。所望の生成物を含有するフラクションを合わせ、凍結乾燥させてリガンド16bを得た。
【0174】
調製4.2a 10-[(10R)-7-ヒドロキシ-7-オキシド-2,13-ジオキソ-10-[(1-オキソドデシル)オキシ]-6,8,12-トリオキサ-3-アザ-7-ホスファテトラコス-1-イル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸;化合物16aの調製
試薬:化合物15a(600mg;0.53ミリモル)
化合物16a(501mg;0.53ミリモル);収率98%
【0175】
分析データ
HPLC−ELSD:61.3%(エリア%)
分子量:966.16(C45H84N5O15P)
1H−および
13C-NMRならびにMSはその構造と矛盾しない。
【0176】
調製4.2b 10-[(10R)-7-ヒドロキシ-7-オキシド-2,13-ジオキソ-10-[(1-オキソテトラデシル)オキシ]-6,8,12-トリオキサ-3-アザ-7-ホスファエサコス-1-イル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸;化合物16bの調製
試薬:化合物15b(2.0g;1.68ミリモル)
化合物16b(1.1g;1.07ミリモル)収率63%
【0177】
分析データ
HPLC−ELSD:99.9%(エリア%)
分子量:1022.26(C49H92N5O15P)
1H−および
13C-NMRならびにMSはその構造と矛盾しない。
【0178】
調製5 [[10-[2-(ジオクタデシルアミノ)-2-オキソエチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリアセタート (3-)]カルシアート(1-)]カルシウム(2:1)
【化29】
【0179】
酸化カルシウム CaO(464mg;8.30ミリモル;1.5当量)をエタノール(300mL)中で1時間還流させ、次にリガンド14(5g;5.5ミリモル;1当量)を添加し;その反応混合物を26時間還流させ、次に濾過して不溶物を除去した。透明な溶液を(最終容量が約30mLとなるまで)濃縮し、黄色がかった固体の沈殿物を得、それを濾過し、冷EtOHおよびH
2Oで洗浄し、乾燥させ(20mbar;30℃)、錯体17を黄色がかった固体(3.12g;1.71ミリモル;収率62%)として得た。
【0180】
錯体17をNMR、MSおよびICPで特徴付けた。
【0181】
実施例1. ICGoyobiDSPE−PEG−2000を含有するSLN(60R012001L)の調製
有機相(O)は、エピクロン(Epikuron)200(登録商標)(Cargill Deutschland GmbH, Krefeld, Germany)(401mg)、[1,2-ジステロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)アンモニウム塩(DSPE−PEG−2000)(100mg)、錯体17(110mg)、トリパルミチン(450mg)、ステアリン酸(50mg)およびICG(1.1mg)をCH
2Cl
2に溶かすことで調製された。該有機相を35℃に加熱し、全ての成分が完全に可溶化するまで攪拌下で保持した。タウロコール酸ナトリウム(380mg)、1−ブタノール(0.4mL)および水(0.5mL)を含有する水相(W)を該有機相に添加した。安定した透明のミクロエマルジョン(W/O)が得られるまで、該溶液を35℃で30分間攪拌した。同時に、0.24%(重量/容量)ツゥーン(Tween)80(登録商標)(Serva, Heidelberg, Germany)を含有する水溶液W
1(50mL)を調製し、30℃に加熱した。ミクロエマルジョンW/Oを30℃に保持した水相W
1に滴下して加え、多重エマルジョンW/O/W
1を得た。次に、該多重エマルジョンを攪拌下で45分間維持しながら、有機溶媒を大気圧で蒸発させた。ついで、該懸濁液の温度を10℃にまで下げ(0.25℃/分)、SLNの脂質コアを結晶化させた。調製後に、Labscale(登録商標)TFFシステムおよびペリコンXLフィルター(Pellicon XL Filter)、30kDa 0.005m
2(Merck Millipore, Billerica, MA)で、グルコース5.5%w/vの等張溶液(1L)を用いる限外濾過操作に付すことで、懸濁液から過剰量の成分を除去した。さらには、室温、減圧下で蒸発させることで、残っている可能性のある微量な溶媒を除去した。最後に、該懸濁液を約8.5mLにまで濃縮し、0.22μmのステライル・ミレックス(Sterile Millex)(登録商標)-GS SyringeフィルターMCE(Millipore, Ireland)を用いて2回濾過した。
【0182】
懸濁液の特徴付け
最終の懸濁液中にあるリンの量は、試料を65%硝酸にマイクロ波システム(MDS−2000CEMコーポレーション)で消化させた後に、ICP−MS ELAN6100(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて測定された。データを表Gにおいて報告する。
【0183】
最終の懸濁液中のICGの量は、デュアルビーム式ラムダ(Lambda)40UV−Vis分光光度計(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて測定された。SLN成分を同じモル比で含有する脂質マトリックスにおける検量線を、ICGを用いて、CHCl
3:CH
3OH(2:1)中標準液として作製した。その検量線から、ICGのモル吸光係数はその最大波長(800nm)で229000M
−1*cm
−1と算定された。分析用溶液は、7%(v/v)のICG−SLN懸濁液をCHCl
3:CH
3OH(2:1)の混合溶媒に溶かすことで調製された。
【0184】
ICGのSLNへの取り込み効率は、最終懸濁液中のICGを理論的な取り込み量と比べた割合(*100)として計算された。ICGの取り込みは>90%と推定される。平均流体力学直径(z−アベレージ)および多分散指標(PdI)などの分散したナノ粒子の物理化学特性を、マルバーン・ゼータ・サイザー・ナノインストルメント(Malvern Zeta Sizer Nanoinstrument)(NanoZS, Malvern, UK)を用いる動的光散乱(DLS)によりP=2mMの濃度で、NaCl(1mM)中で測定した。表面帯電電位(ζ−電位)を電気泳動光散乱(ELS)により同じ装置によって同じ条件で測定した。ICG/P%モル比は0.27%であると算定された。データを表Fに報告する。球体アクセサリーと一体となったF−3018を装着したFluoroLog−3 1IHR−320分光蛍光計(Horiba Jobin Yvon, Edison NJ)を用いて蛍光量子収率%(φ%)の測定を行った。光電子増倍管PMT−NIR R5509冷却検出器(日本国、浜松市、浜松ホトニクス)を用いて検出を行った。φ%は3回繰り返し7.7の平均%(SD0.15)で測定された。
【0185】
熱量計DSC4000パーキン・エルマーを用いて示差走査熱量(DSC)測定を行った。ICG−SLN分散体(29.0mg)を正確に秤量してアルミニウム製るつぼに入れ、その後で密閉した。るつぼでの水分照合の測定を行った。30℃から80℃まで5℃/分の走査速度で熱曲線を記録した。実験結果を
図9にて報告する。オンセット値が45.78℃であり、その製剤のデルタHは6.74J/gであった。融点(DSCで測定されるオンセット値)はトリグリセリドの正確に規定された多形的結晶形(α)の温度と非常に近く(±2℃)(Chapman D.、「グリセリドの多形性(The polymorphism of glycerides)」1962およびWindbergsら、AAPS PharmSciTech、2009、10:1224−1233を参照のこと)、SLNの固形コア中に結晶構造のあることを定性的に規定しうる。
【0186】
表F. DLSおよびELS特性評価
【表7】
【0187】
表G. 最終製剤中のリンおよびICGの配合量
【表8】
【0188】
実施例2
ICGおよびDSPE−PEG−2000を含有するSLN(60R011013L)の調製
調製方法は実施例1に記載の方法を繰り返した。
粒度、ζ−電位およびPdIに関する懸濁液の物理化学的特性評価は実施例1に記載されるようになされ、そのデータを表Aにおいて報告する。
【0189】
実施例3
ICGおよびDSPE−PEG−2000を含有するSLN(60R012002L)の調製方法
調製方法は実施例1に記載の方法を繰り返した。
粒度、ζ−電位およびPdIに関する懸濁液の物理化学的特性評価は実施例1に記載されるようになされ、そのデータを表Aにおいて報告する。
【0190】
実施例4
ICG、DSPE−PEG−2000、および1,2−ジステアリル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ホラート(ポリエチレングリコール)−2000]アンモニウム塩(DSPE−PEG−2000−ホラート)を含有するSLN(63R011005L)の調製
標的とされるICGをロードしたSLNを実施例1と同じ操作に従って処方し、DSPE−PEG−2000−ホラート(2mg)を標的剤として有機相に添加した。その調製にて、エピクロン(Epikuron)200(登録商標)(402mg)、[1,2-ジステロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000)アンモニウム塩 DSPE−PEG−2000(99mg)、錯体17(111mg)、トリパルミチン(450mg)、ステアリン酸(50mg)およびICG(1.2mg)をCH
2Cl
2に溶かした。水相(W)はタウロコール酸ナトリウム(382mg)、1−ブタノール(0.4mL)および水(0.5mL)を含有した。懸濁液を約8.5mLに濃縮した。
【0191】
懸濁液の物理化学的特性評価は実施例1に記載されるようになされ、そのデータを表HおよびIにて報告する。ICG/Pのモル比は0.26%であると算定された。ICGの取り込み%は約90%と推定される。蛍光量子収率%は7.6(SD 0.3)であった。DSC分析は31.2mgの製剤に対して行われた。オンセット値は45.56℃であるのに対して、その製剤のデルタHは7.13J/gであった。
【0192】
表H. DLSおよびELSの特性評価
【表9】
【0193】
表I. 最終製剤中のリンおよびICGの配合量
【表10】
【0194】
図10はこの実施例のSLNのDSC曲線を示す。融点(DSCで測定されるオンセット値)はトリグリセリドの正確に規定された多形的結晶形(α)の温度と非常に近く(±2℃)(Chapman D.、「グリセリドの多形性」, Chem. Rev., 1962,62:433−456およびWindbergsら、AAPS PharmSciTech、2009、10:1224−1233を参照のこと)、SLNの固形コアに結晶構造のあることを定性的に規定しうる。
【0195】
製剤の、表面荷電、PdIおよびζ−電位に関するコロイド安定性は、90日に達するまで、該製剤を暗闇にて4℃で維持しながら測定された。測定は、試料をNaCl(1mM)中に希釈しながら、マルバーン装置(Zetasizer Nano ZS)を用いて25℃で実施された。データを表Dに列挙する。
【0196】
実施例5
ICG、DSPE−PEG−2000、および1,2−ジステアリル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ホラート(ポリエチレングリコール)−2000]アンモニウム塩(DSPE−PEG−2000−ホラート)を含有するSLN(63R011001L)の調製
標的とされるICGをロードしたSLNを実施例1と同じ操作に従って処方し、DSPE−PEG−2000−ホラート(1mg)を標的剤として有機相に添加した。その調製にて、エピクロン200(登録商標)(202mg)、DSPE−PEG−2000(50mg)、錯体17(56mg)、トリパルミチン(225mg)、ステアリン酸(25mg)およびICG(2mg)をCH
2Cl
2(2mL)に溶かした。水相W(0.25mL)はタウロコール酸ナトリウム(175mg)、1−ブタノール(0.2mL)を含有した。水相W
1(25mL)はツィーン(Tween)80(登録商標)0.24%w/vを含有した。懸濁液を約10mLに濃縮した。
【0197】
粒度、ζ−電位およびPdIに関する懸濁液の物理化学的特性評価は実施例1に記載されるようになされ、そのデータを表Aにて報告する。
【0198】
実施例6
ICG、DSPE−PEG−2000、および1,2−ジステアリル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ホラート(ポリエチレングリコール)−2000]アンモニウム塩(DSPE−PEG−2000−ホラート)を含有するSLN(63R011002L)の調製
標的とされるICGをロードしたSLNを実施例1と同じ操作に従って処方し、DSPE−PEG−2000−ホラート(1mg)を標的剤として有機相に添加した。その調製にて、エピクロン200(登録商標)(202mg)、DSPE−PEG−2000(52mg)、錯体17(56mg)、トリパルミチン(225mg)、ステアリン酸(25mg)およびICG(2mg)をCH
2Cl
2(2mL)に溶かした。水相W(0.250mL)はタウロコール酸ナトリウム(190mg)、1−ブタノール(0.2mL)を含有した。水相W
1(25mL)はツィーン80(登録商標)0.24%w/vを含有した。懸濁液を約8mLに濃縮した。
【0199】
粒度、ζ−電位およびPdIに関する懸濁液の物理化学的特性評価は上記の実施例に記載されるようになされ、そのデータを表Aにて報告する。
【0200】
実施例7
J−凝集体を評価するためのICGをロードしたSLN懸濁液および遊離ICG溶液のUV−Visスペクトル
実施例4の記載に従って調製したICGをロードしたSLN懸濁液のUV−Visスペクトルを、処方した日の最後に、その懸濁液を貯蔵条件で維持しながら90日および120日経過した後に記録した。120日後には、吸光度は最初の値との関連で96%をリカバーした(
図4A)。
【0201】
ICG(0.14mg/mL)溶液をグルコサート(glucosate)(5.5%)溶液中にて調製した。UV−Vis分析の前に試料を希釈し、吸光度の動きを300〜950nmで15日間にわたって評価した(
図4B)。
【0202】
実施例8
光退色実験
遊離ICG水溶液およびICGをロードしたSLN懸濁液を785nmのレーザー照射に暴露することで光退色実験を行った。NIR蛍光画像システム(LI-COR BiosciencesによるPearl(登録商標)インパルスシステム)により蛍光発光を集めた。ICGの配合量(0.23ナノモルのICGおよび0.036ナノモルのICGをロードしたSLNは5.6%の蛍光量子収率を有する)を調整し、初期の比較可能な蛍光発光シグナルを表示させた。
【0203】
次に、両方の試料に光を3秒間照射し、その試料を暗闇に1秒間保持する実験を37℃で二重に重複して行った。この一連の実験を連続して1時間繰り返した。結果を
図2に示す。
【0204】
実施例9
UV−Visによりその最大吸収波長で測定されるICGをロードしたSLNの長期安定性
最終製剤中のICGの配合量はデュアルビーム式ラムダ40UV−Vis分光光度計(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて実施例1に記載されるように測定された。熱安定性は、ICGをロードしたSLNの試料を暗闇にて貯蔵条件(4℃)で90日間保持し、その試料(実施例4に記載されるように調製)を有機溶媒混合液(CHCl
3:MeOH;2:1)に溶かした後で、800nmでの吸収最大値を測定することにより分析された。
【0205】
実施例10
バイオレイヤー干渉による標的とされるICGをロードしたSLNの標的とする特性の証明
葉酸に拮抗する抗体(MabFA2)に対する、標的とされるICGをロードしたSLNおよび標的とされないICGをロードしたSLN(各々、実施例5および実施例2に記載されるように調製した)の2つの異なるバッチについてバイオレイヤー干渉方法(OCTET QK, ForteBio)を実施した。該実験において、バイオセンサーは、室温で6分間インキュベートすることにより、プロテインAの相互作用を通して、葉酸に拮抗するモノクローナル抗体(Mab FA2)で被覆された。分析を行う前に、バイオセンサーをPBS液で洗浄し、標的とされるICGをロードしたSLNの、混合下で保持される、希釈懸濁液を含有する96−マルチウェルのプレートに直ちに浸した。300秒間インキュベートした後、センサーをリン酸緩衝食塩水(PBS)含有のウェルに移し、解離曲線を作製した。MAb FA2とF−ICGをロードしたSLNとの間の結合特異性は、同様にして行われた標的とされないICGをロードしたSLN(負対照)分析と比較することで確かめられた。この実験結果を
図5にて報告する(点線は結合曲線と解離曲線とを分ける)。
【0206】
実施例11
蛍光画像処理による腫瘍標的のインビボおよびエクスビボにおける評価
実施例5および実施例2の各々で処方されたF−ICG−SLNおよびICG−SLNを、Balb/C nu/nuマウスの右側面に皮下注射したIGROV−1細胞系統を用いる卵巣悪性腫瘍の異種移植片実験で評価した。血管の新生度を評価するためにマウス(n=6)を遊離ICG色素で予め処理することで選択した。このようにして、動物を一貫して2群に配分した。腫瘍域周辺にある関心のある領域における後発的蛍光シグナルを集め、筋肉の場合にその背景蛍光は(腫瘍SI−筋肉SI)/筋肉SIで表される。マウスに付き15ナノモルのICGを注射した30分、4時間および24時間後のインビボでのデータ解析により、ICG−SLNとの関連で、F−ICG−SLNにてより高い強度の腫瘍シグナルが得られた。24時間後に測定される蛍光シグナルは5.1a.u.(SD2.9)であり、それに対して標的とされないICGをロードしたSLNを投与する場合には、蛍光シグナルは1.7a.u.(SD0.2)であった。臓器を摘出し、エクスビボでの蛍光定量のために組織を分析した(
図6および7)。