(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227765
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ガスタービン及び取付方法
(51)【国際特許分類】
F01D 9/04 20060101AFI20171030BHJP
F01D 11/08 20060101ALI20171030BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20171030BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
F01D9/04
F01D11/08
F01D25/24 R
F01D25/24 J
F01D25/00 X
F01D25/00 U
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-516887(P2016-516887)
(86)(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公表番号】特表2016-535188(P2016-535188A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014068359
(87)【国際公開番号】WO2015043876
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】13185947.2
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ファティ・アーマッド
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘンドラー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・カンプカ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・コヴァルスキ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・コヴァルツィク
(72)【発明者】
【氏名】ニハル・クルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・シュレーダー
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0077141(US,A1)
【文献】
特開平08−277701(JP,A)
【文献】
特開昭63−239301(JP,A)
【文献】
特公昭50−020201(JP,B1)
【文献】
米国特許第2685429(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/04
F01D 11/08
F01D 25/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータブレード列(12)を具備するタービン(11)と、前記ロータブレード列(12)の周囲に配置されていると共に複数のリングセグメントから構成されているリングとを備えているガスタービン(10)であって、
少なくとも1つの前記リングセグメントが、取付状態において高温ガス経路(26)に面している高温ガス面(27)を有しているリングセグメント本体(25)を備えており、
前記リングセグメント本体(25)が、凹所(23)を前記高温ガス面(27)に有しており、前記凹所(23)を覆うように構成されているインサート要素(14)が、前記凹所(23)に配置されている、前記ガスタービン(10)において、
前記インサート要素(14)が、凹状の前面(15)と、前記リングセグメント本体(25)に位置決めするための少なくとも1つの成形部分(17,18)を具備する後面(16)とを有しており、
これにより、前記リングセグメント(25)が前記ガスタービン(10)に既に取り付けられている場合に、前記インサート要素(14)が、前記高温ガス経路(26)の内部に導入された後に、前記リングセグメント本体(25)の前記凹所(23)に取り付けられ、
前記インサート要素(14)が、前記前面(15)から端面(22)に至るまで延在している少なくとも1つの通路(21)を有しており、螺合手段が、前記通路(21)を通じて送り込まれることを特徴とするガスタービン(10)。
【請求項2】
前記インサート要素(14)が、通路(21)と同軸に配置されている少なくとも1つの窪み(19)を前記前面(15)に有していることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン(10)。
【請求項3】
前記インサート要素(14)が、上側成形部分(17)と下側成形部分(18)とを有しており、前記インサート要素(14)が、前記下側成形部分(18)を介して、前記リングセグメント本体(25)のアンダーカット(24)の内部に押し込まれることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン(10)。
【請求項4】
前記インサート要素(14)が、前記リングセグメント本体(25)に螺合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスタービン(10)。
【請求項5】
インサート要素(14)を請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスタービンに取り付けるための方法であって、インサート要素(14)が、ガスタービン(10)のタービン(11)のリングセグメント本体(25)の凹所(23)に取り付けられる、前記方法において、
前記凹所(23)が、前記リングセグメント本体(25)の取付状態において前記ガスタービン(10)の高温ガス経路(26)に面している高温ガス面(27)に配置されていることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記リングセグメント本体(25)の取付状態において、前記インサート要素(14)が、前記高温ガス経路(26)の内部に導入された後に、前記リングセグメント本体(25)に固定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インサート要素(14)が、前記リングセグメント本体(25)に螺合されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、ガスタービ
ン及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンのタービンのロータブレード列がいわゆるシュラウドをブレード翼の上側端部に有していることは周知である。
【0003】
特許文献1は、ガスタービンのための冷却されたタービンリングセグメントを開示しており、当該タービンリングセグメントは、アキシアル方向に方向づけられているシュラウドリングセグメントであって、内面、外面、上流フランジ、及び下流フランジを有しているシュラウドリングセグメントを備えている。フランジは、シュラウドリングをエンジンケーシングに保持する。穿孔された冷却空気衝突プレートは、上流フランジと下流フランジとの間においてシュラウドリングの外面に配置されており、衝突チャンバが、冷却空気衝突プレートと当該外面との間に形成されている。アキシアル方向に方向づけられているリングセグメントの冷却ボアは、衝突チャンバと出口との間に延在している。中空の隣接する出口が、案内羽根を冷却するために、冷却空気を当該出口から下流の案内羽根に向かって案内する。
【0004】
特許文献2は、ターボ機械のロータブレードのためのシール装置を開示している。シール装置は、区間シールを備えている。当該区間シールは、接続要素を介して内側リングに取り付けられている一方、フックを介して外側リングに取り付けられている。内側リングは低い熱慣性を有しており、外側リングは高い熱慣性を有している。さらに、区間シールは、フックに設けられたサポートリブと芯出し手段とを有している。
【0005】
特許文献3は、動作中にガスタービンエンジンのタービンブレードの一の段の両端を囲んでいるタービンブレードシュラウド装置を開示している。シュラウド装置は、アキシアル方向及びラジアル方向において緩く保持されているリングと、横方向において互いに当接している複数のセグメントを有しているタービンブレードシュラウドとを備えており、タービンブレードシュラウドそれぞれが、リングのラジアル方向面から懸架されており、ガスシールに位置決めされており、定置式エンジン構造体に対して比較的移動可能とされ、リングが、定置式エンジン構造体の材料より低い熱反応特性を有している材料から構成されている。
【0006】
特許文献4は、交互に配置された空気冷却ロータブレード列とロータ熱シールドとを具備するロータと、交互に配置された空気冷却案内羽根列と内側リングに取り付けられたステータ熱シールドとを具備するステータと、を備えている軸流式ガスタービンを開示している。ステータは、高温ガス通路がステータとロータとの間に形成されるように、ロータを同軸に囲んでいる。ロータブレード列とステータ熱シールドとは、又は案内羽根列とロータ熱シールドとは互いに対向して配置されている。一の案内羽根列とその下流のロータブレード列とが、タービン段を形成している。ロータブレードは、外側ブレードプラットフォームをその先端に備えている。ブレードプラットフォームは、複数の歯を自身の外側に備えており、複数の歯は、周方向において互いに対して平行に延在しており、高温ガス流の流れ方向において縦列に配置されている。
【0007】
シュラウドが設けられていることに起因して、例えば点検又は試験を目的としてロータブレードを動作させる際に、上側ケーシング部分の全体を揚重すること、いわゆるカバーリフトを実施する必要がある。カバーリフトは非常に面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国出願公開第2004/120803号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0132182号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2206651号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2458152号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、これら欠点を解決すること、並びに、シュラウドをガスタービンに設けることなくロータブレード列を動作させることができ
るガスタービ
ン及び取付方法を提供することである。
【0010】
当該目的は
、請求項
1に規定されるガスタービン、及び請求項
6に規定される取付方法によって達成される。本発明の優位な変形例は、従属請求項において特定され、本明細書において説明される。
【0011】
従って、優位には、ガスタービンは、シュラウドを具備しないロータブレード列によって動作するように適合されている。ロータブレードを交換する場合に、ガスタービンの上側ケーシングを揚重する(カバーリフト)必要が無い。出口側からアクセスすることができる。従って、本発明におけるガスタービンは、ブレード翼の頻繁な交換作業を含む試験のために特に適合している。本発明におけるガスタービンによって、これら試験を一層速く手配及び実施することができる。
【0012】
さらに、本発明におけるガスタービンは、当該少なくとも1つのインサート要素をリングセグメント本体から取り外すことによって、シュラウドを具備するロータブレード列によって動作させるために容易に転換することができる。
【0013】
ガスタービンのタービンの本発明におけるリングセグメントは、高温ガス面を有しているリングセグメント本体であって、高温ガス面が取付状態において高温ガス経路に面している、リングセグメント本体を備えている。リングセグメント本体が、凹所を高温ガス面に有している。上述のタイプのインサート要素が、凹所に配置されている。特にインサート要素が、リングセグメント本体に螺合されている。
【0014】
ガスタービンのタービンのリングセグメント本体に取り付けるため
のインサート要素は、凹所を覆うように構成されている。インサート要素は、凹状の前面と、リングセグメント本体に位置決めするための少なくとも1つの成形部分を具備する後面とを有している。これに関連して、凹所は、リングセグメント本体の高温ガス面に配置されている。従って、リングセグメント本体は、シュラウドを有するロータブレード列によって動作するように構成されている。
【0015】
優位には、このような配置によって、シュラウドを有するロータブレード列によって動作するガスタービンを、シュラウドを有しないロータブレード列によって動作するガスタービンに変更することができる。適合するリングセグメントの極めて面倒な新規の製造を免れることができる。
【0016】
本発明におけるインサート要素の一の優位な実施例では、インサート要素が、前面から
端面に至るまで延在している少なくとも1つの通路を有している。
【0017】
従って、インサート要素は、対応するネジ又はボルトを単純に利用することによって、リングセグメント本体に取り付けることができる。
【0018】
本発明におけるインサート要素のさらなる優位な実施例では、インサート要素が、通路と同軸に配置されている少なくとも1つの窪みを前面に有している。
【0019】
従って、取付手段、特にネジの頭をインサート要素の輪郭の内側に埋設することができる。
【0020】
本発明におけるインサート要素のさらなる優位な実施例では、インサート要素が、上側成形部分と下側成形部分とを有している。
【0021】
成形部分は、インサート要素をリングセグメント本体に固定する前に、より急速に、より容易に、且つより正確にインサート要素を位置決めするために利用される。従って、より単純に且つより容易に据付を実施することができる。
【0022】
従って、リングセグメントは、シュラウドを具備しないロータブレード列を動作させるように構成されている。
【0023】
本発明におけるガスタービンは、タービンを備えており、タービンが、ロータブレード列と、複数のリングセグメントから
構成されていると共にロータブレード列の周りに配置されているリングとを有している。これに関連して、少なくとも1つのリングセグメントが、上述のタイプのリングセグメントである。
【0024】
本発明における取付方法では、インサート要素が、ガスタービンのタービンのリングセグメント本体の凹所に取り付けられる。これに関連して、凹所が、リングセグメント本体の取付状態においてガスタービンの高温ガス経路に面している高温ガス面に配置されている。特にリングセグメント本体の取付状態において、インサート要素が、高温ガス経路の内部に導入された後に、リングセグメント本体に固定される。例えば、インサート要素が螺合される。
【0025】
従って、特に試験目的において、ガスタービンのリングセグメントは、シュラウドを具備するロータブレード列によって動作する構成から、シュラウドを具備しないロータブレード列によって動作する構成に容易に転換することができる。逆の転換も容易に実施可能である。
【0026】
本発明の典型的な実施例について、図面及び以下の説明に基づいて詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明におけるガスタービンの典型的な実施例を表わす。ガスタービン10は、少なくとも1つのロータブレード列12を内蔵するタービン11を備えている。ロータブレード列12の周囲には、複数のリングセグメントから構成されているリングが配置されている。ロータブレード列12は、回転軸線20の周りに回転可能となるように配置されている。
【0029】
特にロータブレード列12は、他のロータブレード列の下流に配置されているロータブレードである。
図1では、対応するロータブレード列12は、ガスタービン10のタービン11の第4のロータブレード列である。
【0030】
本発明におけるガスタービン10は、少なくとも1つの本発明におけるリングセグメント13を有している。
図2は、典型的な実施例におけるリングセグメント13を表わす。
【0031】
リングセグメント13は、リングセグメント本体25とインサート要素14とを備えている。
【0032】
リングセグメント本体25は、高温ガス面27を備えている。取付状態において、高温ガス面27は、ガスタービン10の高温ガス経路26に面している。
【0033】
インサート要素14は、リングセグメント本体25に形成された凹所23を覆っている。凹所23は、高温ガス面27に配置されている。リングセグメント本体25は、シュラウドを具備するロータブレード列を備えているガスタービン10を動作させるために、凹所23を有している。優位には、例えば試験段階においてガスタービン10の上側ケーシング半体の全体を取り外す(カバーリフト)必要が無いように、シュラウドを具備しないロータブレード列12が利用される。本発明におけるインサート要素14によって、リングセグメント本体25が、シュラウドを具備しないロータブレード列12に適合可能となる。
【0034】
当該適合は、本発明における取付方法によって実現することができる。当該取付方法では、インサート要素14が凹所23に固定される。特にリングセグメント本体25が既にガスタービン10に取り付けられている際に、当該適合が実施可能とされる。当該適合を実現するために、インサート要素14は、高温ガス経路26の内部に導入された後に、リングセグメント本体25に固定される。
【0035】
図3は、典型的な実施例におけるインサート要素14を表わす。図示された単体のインサート要素14は、凹状の前面15と後面16とを備えている。取付状態では、前面15は高温ガス経路26に面している。インサート要素14は、リングセグメント本体25に位置決めするために、少なくとも1つの成形部分17,18を後面16に有している。
【0036】
図示の構成では、インサート要素14が、1つの上側成形部分17と2つの下側成形部分18とを有している。第1の取付ステップM1において、インサート要素14が、下側成形部分18を介して、リングセグメント本体25のアンダーカット24の内部に押し込まれる。その後に、第2の取付ステップM2において、インサート要素14がリングセグメント本体25に向かって回動される。その後に、上側成形部分17はインサート要素14をその取付位置に位置決めする。図示のインサート要素14は、前面15から
端面22に至るまで延在している2つの通路21を有している。第3の取付ステップM3において、インサート要素14がリングセグメント本体25に螺合される。従って、螺合手段は通路21を通じて送り込まれる。インサート要素14は、3つの取付ステップのみを完了させれば、リングセグメント本体25に固定状態で接続される。好ましくは、取付状態において、インサート要素14はリングセグメント13と面一になっている。インサート要素14をリングセグメント本体25に取り付けることによって、本発明におけるリングセグメント13が形成される。
【0037】
本発明におけるインサート要素14の前面15は、ロータブレード列12の周囲に配置されているリングセグメント13に適合可能とされるように凹状に形成されている。図示のインサート要素14それぞれが、一の通路21につき一の窪み19を前面15に有している。窪み19それぞれは、通路21と同軸に配置されている。
【0038】
本発明について、好ましい典型的な実施例によって詳細に説明及び図解したが、本発明は、開示された実施例によって限定される訳ではなく、当該開示された実施例に基づいて当業者が想到可能な他の変形例も、本発明の保護範囲内にある。
【符号の説明】
【0039】
10 ガスタービン
11 タービン
12 ブレード列
13 リングセグメント
14 インサート要素
15 (インサート要素14の)前面
16 (インサート要素14の)後面
17 (上側)成形部分
18 (下側)成形部分
19 窪み
20 回転軸線
21 通路
22 (インサート要素14の)
端面
23 凹所
24 アンダーカット
25 リングセグメント本体
26 高温ガス経路
27 高温ガス面