(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薄地織物の平滑性がより高い表面側の最表面を構成する糸の糸潰れ指数Xが0.75以下であり、かつ、該最表面を構成しない糸の糸潰れ指数Yが0.8〜1.1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄地織物。
前記熱可塑性合成繊維のガラス転移点をTG(℃)、融点をTM(℃)、カレンダーロール温度をT(℃)、カレンダーロール圧力をP(t/150cm)、カレンダーロール速度をS(m/min)とするとき、{T−(TG+TM)/2}/2+{(P−25)/5}+{(10−S)/2}で求められるカレンダー指数が−12〜12のカレンダー条件下で、製織後の織物をカレンダー加工する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄地織物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の薄地織物は、織物の経糸又は緯糸の少なくとも一部に、繊度が5〜30dtexの熱可塑性合成繊維が配置された薄地織物である。熱可塑性合成繊維は、経糸又は緯糸のいずれか一方に配置されていてもよく、あるいは、経糸及び緯糸の両方に配置されていてもよい。本実施形態でいう熱可塑性合成繊維は、特に限定されず、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等が好適に用いられる。ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやこれらを主成分とした共重合ポリエステル系繊維等が挙げられ、また、ポリアミド系繊維としては、ナイロン6、ナイロン66及び第3成分を共重合したもの等が挙げられる。ポリオレフィン系繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。このうち特に耐熱性、染色性の観点から、ポリエステル系繊維が好ましく、強度や柔らかさの観点からポリアミド系繊維が好ましい。また、一部に熱可塑性合成繊維以外の繊維が用いられていてもよい。
【0011】
本実施形態の織物の経糸又は緯糸の一部に配置される繊維の繊度は5〜30dtexとする必要があり、好ましくは7〜24dtexであり、より好ましくは7〜18dtexである。30dtexを超えると糸が太く、織物にした場合に、厚く、硬くなり所望の効果が発揮できない。5dtexより小さい場合には織物組織を調整して樹脂加工を施しても引き裂き強度を8N以上にすることは困難であり、実用性能に耐えることが困難である。単糸繊度は0.5〜2.5dtexが好ましく、より好ましくは0.7〜2.0dtexである。
【0012】
合成繊維マルチフィラメントの単糸断面の形状は、特に限定されず、丸断面や異形断面が用いられる。異形断面の形状は三角、Y字型、十字型、W型、V型等が挙げられるが、強度の面から丸断面が好適に用いられる。
上述の熱可塑性合成繊維は、織物の経糸又は緯糸の少なくとも一部に用いられていればよく、織物すべてがこの糸から構成されるものでもよい。上述の熱可塑性合成繊維以外の糸としては、熱可塑性合成繊維以外の合成繊維、再生繊維、セルロース繊維等が混用されてもよく、また、繊度が上記範囲外の熱可塑性合成繊維が混用されてもよいが、それらの繊維の混率は30%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、本発明の緻密な構造の織物を得るためには、経糸、緯糸それぞれを構成する繊維の繊度ばらつきが小さいことが好ましく、経糸、緯糸それぞれについて、最高繊度の繊維と最低繊度の繊維との繊度比率が2.0以下であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.2以下が特に好ましい。最も好ましくは単一繊度の繊維だけで構成されたときの1.0である。
【0013】
本実施形態の織物は少なくとも一方の表面の摩擦係数の平均偏差が0.008〜0.050であることを特徴としている。織物の摩擦係数の平均偏差はカトーテック社製 KES−FB4の標準条件によって測定され、タテ、ヨコそれぞれn=3の平均値を求め、タテ、ヨコの平均値の大きい方の値を採用する。0.050より大きい場合には生地の摩擦係数の変動が大きいことを意味し、ざらざら感が強く不適である。0.008より小さい場合にはつるつるしすぎており、冷感も大きくなってしまい、好ましくない。摩擦係数の平均偏差は、0.010〜0.045がより好ましく、0.012〜0.040がさらに好ましい。
【0014】
織物を衣服として着用する場合には、肌に近い側に摩擦係数の平均偏差が0.008〜0.050である面を配置するのがよい。
摩擦係数の平均偏差を0.008〜0.050の範囲にするには糸の繊度、密度を調整する必要がある。繊度は上述の範囲が好ましいが、繊度が5dtex〜10dtexの比較的繊度が小さい範囲では密度が大きすぎるとなめらかになりすぎて好ましくなく、繊度が25dtex〜30dtexの比較的繊度が大きい範囲では密度が大きすぎると重く硬くなりすぎて好ましくない。また、いずれの繊度の場合も密度が粗い条件は凹凸が大きく、ざらつきが大きくなり、好ましくない。
【0015】
摩擦係数の平均偏差を0.008〜0.050の範囲にするためには、加工工程でのカレンダー条件が非常に重要である。薄地織物の場合、特に、ダウン等の詰め綿を使用する用途では、ダウンの抜けを抑えるためにカレンダー加工が使用されることが多く、カレンダーで表面の繊維を熱で圧することにより、通気性を抑え、ダウン抜けを抑えている。しかし、過度にカレンダー加工を行うと、表面は非常になめらかのなり、触った時の皮膚との接触面積が増えるため、冷感が大きくなり、好ましくない。カレンダー加工を特殊な条件で行い、表面の状態をコントロールすることで冷感が小さく、ざらざら感がなく、しかもダウン抜けの少ない織物を得ることができる。
【0016】
本実施形態の薄地織物は最表面が平滑でありながら最表面以外では糸が潰れていないことが好ましい。これにより、織物の充填率が大きくなりすぎることを防ぎ、保温性に優れる織物となる。具体的には平滑性が大きい表面側の最表面を構成する糸の糸潰れ指数をX、最表面を構成しない糸の糸潰れ指数Yとするとき、Xが0.75以下、かつ、Yが0.80〜1.0である。糸の潰れ指数を
図1で説明する。糸の断面の最大径をb、bに直交しbを2等分する線分をaとした時、aをbとの交点でa’、a’’に分け(a’>a’’)。このときa’’/a’を糸の潰れ指数とする。織物は最表面が平滑でありながら最表面以外では糸が潰れていない状態にするにはカレンダー条件のコントロールが必要である。
【0017】
具体的にはカレンダーロールの種類、圧力、温度、スピードをコントロールする。ロールは金属ロールと弾性ロールの組み合わせが好ましい。弾性ロールとはペーパーロール、コットンロール、樹脂ロール等である。このロールの組み合わせにより、金属ロールの熱と圧力を織物全体に均一に作用させることができる。適正なカレンダー(ロール)温度は、織物を構成する素材によって異なり、素材のガラス転移点をTG(℃)、融点をTM(℃)とすると(TG+TM)/2−20℃〜(TG+TM)/2+30℃にするのが好ましく、より好ましくは(TG+TM)/2−20℃〜(TG+TM)/2+20℃であり、さらに好ましくは(TG+TM)/2−15℃〜(TG+TM)/2+15℃である。織物が複数素材の混用品である場合には、カレンダーの金属面が当たる側の繊維素材のうち、最も低いガラス転移点、融点を採用する。カレンダー温度が高すぎると織物表面は硬くなり、また、表面がつるつるになり、冷感が大きく、好ましくない。カレンダー温度が低すぎると通気が大きく、表面のざらざら感が大きくなり、好ましくない。圧力は生地幅150cmあたり5〜50t(トン、以下同じ)掛けるのが好ましく、15〜40tがより好ましい。圧力をかけすぎると硬く、表面がつるつるになり、冷感が大きくなり好ましくなく、圧力が低すぎると通気が大きく、表面のざらざら感が大きくなり、好ましくない。スピードも重要であり、5〜30m/minで加工するのが好ましく8〜20m/minがより好ましく、10〜18m/minが特に好ましい。
【0018】
ロール温度をT℃、圧力をP(t/150cm)、スピードをS(m/min)とすると
{T−(TG+TM)/2}/2+{(P−25)/5}+{(10−S)/2}で計算されるカレンダー指数が−12〜12が好ましく、より好ましくは−10〜10である。この条件で加工することで通気と風合いのトレードオフの関係を打開し、通気性を抑えながら、肌触りをやわらかくし、冷感を抑えることができる。
好ましい条件のもう一つの例はカレンダー指数が−10〜0の条件で加工し、織物を急冷することである。50℃以下になるように一気に冷却することで通気と風合いのトレードオフの関係を打開し、通気性を抑えながら、肌触りをやわらかくし、冷感を抑えることができる。冷却には冷風装置や冷却ロールに接触させる方法などが用いられる。
なお、織物に仮撚り加工等を施した加工糸を用いる場合は糸自体にふくらみがあるため、通常より強い条件でカレンダー加工を施すのが好ましく、カレンダー指数が0〜12とするのが好ましい。カレンダーを2〜3回行うことも好ましく、複数回行う場合にはカレンダー条件を徐々に弱くするのが適当である。
織物の繊度が12dtexより小さい場合にも通気性のコントロールの観点からカレンダーを2〜3回行うのが好ましい。
【0019】
本実施形態の織物は、触った時に冷感を感じにくい。触った時の冷感はカトーテック社のサーモラボIIを用いてQmax値を測定することで評価ができ、本実施形態の薄地織物のQmax値は85〜125W/m
2・℃であり、好ましくは85〜120W/m
2・℃、さらに好ましくは90〜120W/m
2・℃である。Qmax値は素材の熱伝導性と織物の表面状態、特に織物の平滑性と大きく関連している。Qmax値が85W/m
2・℃より小さい場合には、冷感はないが、平滑性が高い組織においては表面の微細な凹凸が大きすぎて、肌触りが悪くなり、好ましくない。Qmax値が125W/m
2・℃を超える場合には冷感が大きく好ましくない。接触冷温感は表面の凹凸の影響が大きいため、本実施形態では前述の特殊なカレンダー条件が使用され、カレンダー指数が−12〜12が好ましく、より好ましくは−10〜10である。
【0020】
本実施形態の薄地織物は目付けが15〜50g/m
2であり、好ましくは15〜40g/m
2、さらに好ましくは20〜35g/m
2である。織物をスポーツ衣料やふとん側地、特に、ダウンジャケットや羽毛ふとんの側地として使用した際に軽量感ややわらかさを感じる為には、目付が50g/m
2以下であればよい。15g/m
2以上であれば、織物組織を調整してシリコーン樹脂等での樹脂加工を施すことにより引き裂き強度を8N以上にすることが可能である。
本実施形態の薄地織物は、接圧5g/cm
2での厚みが0.035〜0.080mmであり、好ましくは0.040〜0.075mm、さらに好ましくは0.040〜0.070mmである。織物をスポーツ衣料やふとん側地、特に、ダウンジャケットや羽毛ふとんの側地として使用した際に軽量感ややわらかさを感じるためには、厚みが0.080mm以下であればよい。
【0021】
本実施形態の薄地織物は、充填率が35〜65%であることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。充填率は空間に占める繊維の割合であり、目付、厚み、織物を構成する繊維の密度により計算できる。充填率が大きいほど繊維が密な状態で、通気性を抑える効果があるが、風合いが硬くなりやすく、熱の逃げも大きい。
本発明者等は、特定の接圧で測定した織物の厚みから算出された充填率を特定範囲にすることが、本発明を達成するために有効であることを見出した。本実施形態では織物の充填率を35〜65%にすることで通気を抑え、風合いが硬くなりすぎず、熱の逃げにくい構造にすることができる。
充填率もカレンダー条件に影響される。カレンダー指数を適正化することで充填率を35〜65%にすることが可能である。カレンダー指数が−12〜12が好ましく、より好ましくは−10〜10である。
【0022】
特に、本実施形態の織物を、ダウンジャケットや羽毛ふとんの側地に用いる場合、ダウンプルーフ性を満足させる為、通気度が0.3〜1.5cc/cm
2・secであることが好ましいが、軽量でかつ通気度を0.3〜1.5cc/cm
2・secにするには、細い糸で緻密にする必要があり、織物は組織が動きにくい構造でかたい織物になりやすい。非拘束点が2〜3ヶ所連続する構造にし、シリコーン樹脂等での樹脂加工を施すことで、軽量で低通気でありながら引き裂き強度が大きい織物が可能になる。特に好ましくは、通気度は0.5〜1.0cc/cm
2・secである。
【0023】
本実施形態の織物は薄地でありながら、引き裂き強度が大きいことが好ましい。本発明でいう引き裂き強度とは、JIS−L−1096:8.15.5 D法(ベンジュラム法)で測定されるもので、織物がスポーツ衣料やふとん側地等の実用に耐えるために、引き裂き強度は8N〜20N程度が好ましい。8N以上であれば使用中に破れるおそれもなく、また、20N以下であれば、細い糸を用いた薄地織物で所望の効果が奏され、実用上も有用である。
【0024】
軽量薄地でありながら引き裂き強度を8N〜20Nにするためには、本実施形態の織物は特定の構造をもち、なおかつシリコーン系樹脂での樹脂加工が施されていることが好ましい。従来は樹脂加工によって風合いが硬くなる、耐久性が劣る等の問題があるとされていたが、本実施形態では、このような細繊度高密度織物にシリコーン系樹脂での樹脂加工を施すことにより、織物の引き裂き強度が格段に向上するうえに、風合いが柔らかく耐久性に優れた樹脂皮膜を付与することができる。これは従来の樹脂加工が主として織物表面に皮膜を形成することを目的としていたのに対して、本実施形態ではシリコーン系樹脂での樹脂が細い繊度の繊維どうしの滑り性を改善させるためである。
シリコーン系樹脂としては、シリコーンを含む樹脂であれば特に限定されないが、特に耐久性と加工性の観点から変性シリコーン樹脂と界面活性剤のエマルジョンが好ましい。変性シリコーンの具体例としては、日華化学(株)のニッカシリコンDM−100E、京浜化学(株)のシリコランEC、パラジンMB、明成化学(株)のハイソフターKR−50、クラリアントジャパンのSolusoft WAなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。界面活性剤はシリコーン樹脂のイオン性を考慮して適宜選定すればよい。
【0025】
シリコーン系樹脂を薄地織物に加工することにより引き裂き強度が向上することは、シリコーン系樹脂での樹脂加工により糸のすべり性が向上することに起因している。一般に、織物の引裂きは、引裂かれる点に応力が集中すると比較的小さい応力で引き裂かれてしまうが、シリコーン系樹脂での樹脂加工により糸が滑ることにより引裂かれる点における応力が分散され、結果として、引き裂き強度を8N以上とすることが可能になる。
【0026】
糸が滑る効果を高めるためには織物の構造を特殊にする、すなわち、織物の経糸と緯糸の交点の数が23000個/inch
2〜70000個/inch
2、好ましくは27000個/inch
2〜62000個/inch
2にする。本織物の経糸と緯糸の交点の数とは、1inch四方に経糸と緯糸の交差する点の数をいい、タフタやリップストップタフタの場合には、経糸密度(本/inch)×緯糸密度(本/inch)で表すことができる。経糸と緯糸の交点の数が23000個/inch
2より少ない場合には、織物中の糸と糸の間隙が大きくなり、通気性を1.5cc/cm
2・sec以下にすることが困難である。また、縫い目滑脱抵抗も小さくなり、可縫性にも問題が生じる場合がある。経糸と緯糸の交点の数が70000個/inch
2を超えると風合いが硬くなり、樹脂加工を行っても引き裂き強度が向上せず、本発明の目標を達成し難い。
【0027】
本実施形態の織物に用いる熱可塑性合成繊維は分子量が大きいことが好ましく、該繊維を構成するポリマーの分子量は通常粘度で表すことができるため、高粘度であることが望ましい。例えばポリエステル系繊維の場合には、固有粘度[η]が0.65〜1.30であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.1である。ここで固有粘度[η]はオルソクロロフェノール中、1重量%で測定した極限粘度をいい、固有粘度[η]を0.65〜1.30にすることで、本発明に使用する細い糸繊度ポリエステル系繊維でも目標の引き裂き強力を得ることが可能になる。固有粘度[η]が0.65以上であれば、糸強度、糸の摩耗強度が大きく、特に単糸繊度が細い糸を織物にした場合の引き裂き強度、摩耗強度も十分となり、固有粘度[η]が1.3以下であれば、織物にした場合に風合いが硬くなるという問題も生じにくい。経糸又は緯糸に固有粘度[η]が0.65〜1.30のポリエステル系繊維を使用するのが好ましく、経糸、緯糸共に該ポリエステル繊維を用いるとさらに好ましい。
【0028】
また、ポリアミド系繊維の場合には、相対粘度が2.5〜3.5であることが好ましい。ここでいう相対粘度は85.5%特級濃硫酸中に重合体濃度が1.0g/dlの濃度でポリマー又はプレポリマーを溶解し25℃でオストワルド粘度計を用い、溶液相対粘度を測定したものである。相対粘度が2.5以上であれば、糸強度、糸の摩耗強度が大きく、特に繊度が細い糸を織物にした場合の引き裂き強度、摩耗強度も十分となり、相対粘度が3.5以下であれば、織物にした場合に風合いが硬くなるという問題も生じにくい。経糸又は緯糸に相対粘度が2.5〜3.5のポリアミド繊維を使用するのが好ましく、経糸、緯糸共に該ポリアミド繊維を用いるとさらに好ましい。
【0029】
本実施形態の織物の織り組織は特に限定されないが、タフタ、リップストップタフタ、綾組織、朱子組織等任意の組織を用いることができる。
タフタでは他の組織より組織の凹凸が小さいため、カレンダー指数を−12〜5の範囲にするのが好ましい。これにより、接触冷感の低減を抑制することができる。
また、特に、リップストップタフタの場合は、織組織の特異性とシリコーン樹脂の作用が、互いに相乗効果を発揮し、樹脂なしの生地に対し、30〜50%もの大幅な引き裂き強度の向上がみられる。リップストップタフタ組織の場合には、経糸又は緯糸に、糸が2〜3本、多重で配列されているため、シリコーン樹脂での滑り効果が顕著に生じやすくなるため、この様な優れた効果を生じたものと思われる。リップストップの格子柄の大きさは、0.2〜5mmであることが好ましい。
【0030】
滑り効果を発揮させるためのシリコーン系樹脂の付着量は、生地に対し、0.1〜10.0wt%が好ましい。0.1〜3.0wt%がより好ましく、0.5〜3.0wt%であれば目よれなど他の欠点が起こりにくいため、さらに好ましい。シリコーン系樹脂の付着量がこの範囲であると、シリコーン樹脂のない場合に比較して、引き裂き強度が10〜50%増加する。
【0031】
樹脂加工の方法は特に限定されないが、染色後にDIP−NIP法で加工する方法、吸尽法で加工する方法、コーティング剤中に混ぜて加工するなどの方法が好適に用いられる。加工工程の最終段階で生地表面にしっかり加工剤を付着させるという点でDIP−NIP法で加工する方法が特に好適に用いられる。乾燥温度も通常の織物の仕上げ温度で特に問題はない。
【0032】
シリコーン系の樹脂加工を施すことで、引き裂き強度向上効果に加えて、風合いをなめらかかつやわらかくする効果も同時に達成できる。この効果によりスポーツ衣料やふとん側地として用いた場合にがさがさ感がなく、肌触りが良好となる。
【0033】
本実施形態の薄地織物は引き裂き強度に加え、摩耗強度にも優れる。摩耗強度は摩耗の相手布を毛芯としたマーチンデール摩耗法で評価する。この方法で好ましくは10000回以上、より好ましくは15000回以上の摩耗強度があればダウンジャケットやウインドブレーカーなどのスポーツ用途に使用する場合にも十分な耐久性があるといえる。さらに好ましくは20000回以上である。薄地織物でありながら摩耗強度を高めるためには、高粘度のポリアミド又はポリエステル系繊維を使い、単糸繊度を好ましくは0.5dtex〜2.5dtex、より好ましくは0.7dtex〜2.5dtexにする方法や、熱リラックス処理を糸又は織物に施すことが効果的である。
【0034】
織物の製織時に使用する織機も特に制限は無く、ウォータージェットルーム織機やエアージェットルーム織機、レピア織機を使用することができる。製織後の織物は常法に従って精錬、リラックス、プレセット、染色し必要に応じて撥水処理、吸水加工、抗菌、消臭などの機能付与加工を付与することができる。
【0035】
こうして得られた織物は、非常に軽量、薄地でありながら、接触時の快適性に優れ、着用や使用時に冷たくなく、やや保温感があり、快適な織物である。引き裂き強度や摩耗強度にも優れ、風合いが非常にやわらかく、ダウンプルーフ性にも優れる織物であり、ダウンジャケット、ウインドブレーカーなどのスポーツ用衣料、寝袋やふとんの側地、又は中袋用の織物に好適である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を、実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例で用いた測定項目、方法は以下の通りであった。
(1)繊維のポリマー粘度
ポリエステル系繊維の場合:固有粘度[η]はオルソクロロフェノール中、1重量%で測定した極限粘度で示した。
ポリアミド系繊維の場合:相対粘度は85.5%特級濃硫酸中に重合体濃度が1.0g/dlの濃度でポリマー又はプレポリマーを溶解し25℃でオストワルド粘度計を用い、溶液相対粘度を測定した。
【0037】
(2)カレンダー指数
試料のガラス転移点をTG(℃)、融点をTM(℃)、カレンダーロール温度をT℃、圧力をP(t/150cm)、スピードをS(m/min)とするとき、{T−(TG+TM)/2}/2+{(P−25)/5}+{(10−S)/2}をカレンダー指数とした。ナイロン6の場合TGを47℃、TMを225℃、ナイロン66の場合TGを49℃、TMを267℃、ポリエステルの場合TGを68℃、TMを260℃とした。
【0038】
(3)糸潰れ指数
織物のタテ、ヨコそれぞれの方向の断面を電子顕微鏡で写真撮影する。糸の断面の最大径をb、bに直交しbを2等分する線分をaとした時、aをbとの交点でa’、a’’に分け(a’>a’’)。このときa’’/a’を糸の潰れ指数とし、タテ、ヨコそれぞれ最表面の糸、5か所を平均する。さらに最表面以外の糸についてもタテ、ヨコそれぞれ任意の5か所を計測し、平均する。
【0039】
(4)目付け
JIS−L−1096 8.4.2 織物の標準状態における単位面積当たりの質量により求めた。
(5)厚み
ピーコック社製の厚み計(ダイヤルシックネスゲージ 接圧:5g/cm
2)を用いて測定し、n=5の平均値で求めた。
【0040】
(6)摩擦係数の平均偏差
織物の摩擦係数の平均偏差は、カトーテック社製 KES−FB4の標準条件によって測定し、タテ、ヨコそれぞれn=3の平均値を求め、タテ、ヨコの平均値の大きい方の値を採用した。
【0041】
(7)冷感(Qmax値)
カトーテック社のサーモラボIIを用いてQmax値を測定した。8cm×8cmの試料を20℃、65%RH(相対湿度)の環境下で24時間調湿した後、試料に30℃に温められた熱板を載せた瞬間の最大熱移動量を測定する。単位はW/m
2・℃である。
【0042】
(8)充填率
目付(g/m
2)をM、繊維の比重(g/cm
3)をd、厚み(mm)をTとするとき、充填率=M/(10×d×T)で計算した。単位は%である。ここで、ナイロン6の比重を1.14、ナイロン66の比重を1.14、ポリエステルの比重を1.38とした。
【0043】
(9)引き裂き強度
JIS−L−1096 8.15.5 D法(ベンジュラム法)により測定した。単位はNである。
【0044】
(10)摩耗強度
JIS−L−1096 8.17.5 E法(マーチンデール法)に準じて、但し、摩擦相手布を毛芯に変更して測定した。穴があく、又は減耗率が5%以上になるまでの摩耗回数を測定した。
【0045】
(11)通気度
JIS−L−1096 8.27.1 A法(フラジール法)により測定した。単位はcc/cm
2・secである。
【0046】
(12)シリコーン樹脂加工の有無
加工の有る場合は「有」、加工の無い場合は「無」とした。
【0047】
(13)生地の風合い(やわらかさ)
5名の官能評価(1:硬い、2:やや硬い、3:どちらともいえない、4:やややわらかい、5:やわらかい)の平均とした。
【0048】
(14)生地の風合い(なめらかさ)
5名の官能評価(1:ざらざらする、2:ややざらざらする、3:どちらともいえない、4:ややざらざらしない、5:ざらざらしない)の平均とした。
【0049】
[実施例1]
経糸に22デシテックス24フィラメントのナイロン6繊維を、緯糸に22デシテックス24フィラメントのナイロン6繊維を使用し、
図2に示すリップストップタフタ組織の織物をウォータージェットルーム織機にて製織した。得られた織物を、常法に従って精練、プレセットした後、液流染色機にて染色、乾燥した後、変性シリコーン樹脂として日華化学(株)のニッカシリコンDM−100Eを1%とアニオン系の界面活性剤0.5%のエマルジョンをDIP−NIP法で加工し、140℃で乾燥させた。シリコーン樹脂の付着量は0.8wt%であった。その後、カレンダーを金属/樹脂ロールで金属面の温度を150℃とし、カレンダー圧力27t/150cm幅、スピード10m/minの熱カレンダー加工を2回施した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が小さく、風合いもやわらかい織物であった。
【0050】
[実施例2]
経糸に22デシテックス24フィラメントのナイロン6繊維を、緯糸に33デシテックス26フィラメントのナイロン6繊維を使用し、タフタ組織の織物を、ウォータージェットルーム織機にて製織し、実施例1と同じ製織、加工を行った。
ただし、カレンダーを金属/樹脂ロールで金属面の温度を145℃とし、カレンダー圧力27t/150cm幅、スピード15m/minの熱カレンダー加工を1回施した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が小さく、風合いもやわらかい織物であった。
【0051】
[実施例3]
経糸に11デシテックス8フィラメントのナイロン66繊維を、緯糸に17デシテックス16フィラメントのナイロン66繊維を使用し、リップストップタフタ組織の織物を、実施例1と同じ製織、加工を行った。
カレンダーを金属/樹脂ロールで金属面の温度を150℃とし、カレンダー圧力27t/150cm幅、スピード15m/minの熱カレンダー加工を1回施した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が小さく、風合いもやわらかい織物であった。
【0052】
[実施例4]
経糸に11デシテックス8フィラメントのナイロン6繊維を、緯糸に11デシテックス8フィラメントのナイロン6繊維を使用し、リップストップタフタ組織の織物を、実施例1と同じ製織、加工を行った。
カレンダーを金属/樹脂ロールで金属面の温度を160℃とし、カレンダー圧力20t/150cm幅、スピード10m/minの熱カレンダー加工を2回施した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感がややあるが、風合いはやわらかい織物であった。
【0053】
[実施例5]
経糸に14デシテックス6フィラメントのナイロン66加工糸を、緯糸に14デシテックス6フィラメントのナイロン66加工糸を使用し、リップストップタフタ組織の織物を、実施例1と同じ製織、加工を行った。
カレンダーを金属/ペーパーロールで金属面の温度を160℃とし、カレンダー圧力35t/150cm幅、スピード10m/minの熱カレンダー加工を3回施した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が小さく、風合いもやわらかい織物であった。
【0054】
[実施例6]
経糸と緯糸ともに固有粘度[η]が0.87で17デシテックス18フィラメントのポリエステルフィラメントを使用し、リップストップタフタ組織の織物を、実施例1と同じ製織、加工を行った。
カレンダーを金属/樹脂ロールで金属面の温度を160℃とし、カレンダー圧力30t/150cm幅、スピード10m/minの熱カレンダー加工を1回施し、その後直ちに冷却ロールを用いて冷却した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が小さく、風合いもやわらかい織物であった。
【0055】
[実施例7]
経糸と緯糸ともに固有粘度[η]が0.87で24デシテックス18フィラメントのポリエステルフィラメントを使用し、リップストップタフタ組織の織物を、実施例1と同じ製織、加工を行った。
カレンダーを金属/樹脂ロールで金属面の温度を150℃とし、カレンダー圧力25t/150cm幅、スピード15m/minの熱カレンダー加工を2回施した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が小さく、風合いもやわらかい織物であった。
【0056】
[実施例8]
実施例1において変性シリコーン樹脂の加工を行わない他は実施例1と同様に加工した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。冷感は少ないが風合いが硬く、引裂きが弱い織物となった。
【0057】
[比較例1]
カレンダー条件をカレンダー温度165℃、圧力35t/150cm幅、スピード10m/minの熱カレンダー加工を1回施した他は実施例1と同様に加工した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感が大きく、風合いも硬い織物となった。
【0058】
[比較例2]
カレンダー条件をカレンダー温度120℃、カレンダー圧力10t/150cm幅、スピード20m/minの熱カレンダー加工を1回施した他は実施例1と同様に加工した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。接触時の冷感はないが、通気性が大きく織物となった。
【0059】
[比較例3]
経糸に33デシテックス26フィラメントのナイロン66繊維を、緯糸に56デシテックス48フィラメントのナイロン66繊維を用い、カレンダー温度を160℃とした他は実施例1と同様に加工した。
得られた織物の特性を以下の表1に示す。重く、ごわごわした織物となった。
【0060】
【表1】