特許第6227779号(P6227779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227779
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20171030BHJP
   B60R 21/207 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   B60R21/217
   !B60R21/207
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-532463(P2016-532463)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2015061442
(87)【国際公開番号】WO2016006296
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-140993(P2014-140993)
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
(72)【発明者】
【氏名】古澤 望
(72)【発明者】
【氏名】小幡 直志
(72)【発明者】
【氏名】大内 崇弘
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−82297(JP,A)
【文献】 特開2006−76392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/217
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されるエアバッグ装置であって、
シリンダ型のインフレータと、
前記インフレータから供給されるガスを利用して膨張展開する袋状のクッションと、
前記クッションに形成された挿入孔であって該挿入孔を通して前記インフレータが該クッションの内部に挿入される挿入孔と、
前記クッションの内側に設けられ前記挿入孔を覆う被覆部とを備え、
前記被覆部は、
前記挿入孔に重なる位置に設けられ一方向に長い第1孔が形成された第1布と、
第1布に重なって設けられ、前記挿入孔に重なる位置で第1孔の長手方向に交差する方向に長手方向を有する第2孔が形成された第2布とを含むことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
第1孔の短手方向の寸法は、第2孔の短手方向の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
第2孔の短手方向の寸法は、前記インフレータの直径とほぼ等しいことを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
第1布および第2布は、第1孔上で第1孔の長手方向に沿って前記クッションの内部に向かって張り出すように山折りされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
第1布は、前記クッションの内側に設けられており、第2布と前記クッションの内側との間に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
少なくとも第1布の長手方向の両端部が前記クッションの内側に接合されていることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
第2布は、前記クッションの内側に設けられており、第1布と前記クッションの内側との間に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
少なくとも第2布の長手方向の両端部が前記クッションの内側に接合されていることを特徴とする請求項7に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
第1布および第2布は、前記挿入孔を覆うように互いに重ねられることで、前記インフレータの作動後において、前記クッションの外部へのガスの漏れを規制する逆止弁を形成することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置され緊急時での乗員保護を目的として膨張展開するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、例えば袋状のクッションを備える。クッションは、緊急時にガスによって膨張展開して乗員を受け止め保護する。エアバッグ装置は、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。一例として、側面衝突やそれに続いて起こるロールオーバ(横転)から乗員を守るために、車両用シートの側部から乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグなどが知られている。
【0003】
エアバッグ装置のクッションは、主にガス圧で膨張展開する構成となっていて、ガスの供給源としてインフレータと呼ばれるガス発生装置が備えられている。インフレータには、エアバッグの種類やその設置箇所に応じて様々な種類がある。例えば、カーテンエアバッグやサイドエアバッグ等にはシリンダ型(筒型)のインフレータが主に用いられている。
【0004】
インフレータ全体またはその一部がエアバッグ(厳密にはそのうちのクッション)の内部に挿入されている。例えば、特許文献1には、サイドエアバッグとシリンダ型のインフレータとを備えたエアバッグ装置が記載されている。サイドエアバッグ(クッション)には、インフレータを挿入するための挿入孔と、逆止弁とが設けられている。逆止弁は、クッションの内部に挿入孔を覆うように設けられていて、ほぼ台形状に形成された一対の布片を有する。
【0005】
特許文献1に記載のエアバッグ装置では、クッションの内部に挿入孔を通して挿入されたインフレータが作動すると、逆止弁を形成する一対の布片の上端側がガスの風圧により互いに離間して、ガスの供給を許容する。そして、ガス圧が所定値以上になると、逆止弁は、一対の布片の上端側が互いに接近して、ガスの移動を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−131363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、一対の布片で逆止弁を形成しているものの、一対の布片はガス圧によって互いに離間あるいは接近するものに過ぎない。よって、特許文献1に記載の技術では、インフレータ作動時のガス圧の変化により逆止弁が崩れてしまい、クッションに形成されインフレータが挿入される挿入孔から外部にガスが漏れることが懸念される。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、インフレータが作動したとき、クッションに形成されインフレータが挿入される挿入孔から外部にガスが漏れ難いエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるエアバッグ装置の代表的な構成は、車両に設置されるエアバッグ装置であって、シリンダ型のインフレータと、インフレータから供給されるガスを利用して膨張展開する袋状のクッションと、クッションに形成された挿入孔であって挿入孔を通してインフレータがクッションの内部に挿入される挿入孔と、クッションの内側に設けられ挿入孔を覆う被覆部とを備え、被覆部は、挿入孔に重なる位置に設けられ一方向に長い第1孔が形成された第1布と、第1布に重なって設けられ、挿入孔に重なる位置で第1孔の長手方向に交差する方向に長手方向を有する第2孔が形成された第2布とを含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、被覆部の第1布および第2布が互いに重ねられた状態で、第1孔および第2孔が挿入孔を跨いでいる。このため、クッションの挿入孔を通してシリンダ型のインフレータをクッションの内部に挿入する場合、インフレータは、挿入孔から第1孔および第2孔を通過できる。そして、第1孔および第2孔は、互いの長手方向に対して交差するように重なっている。このため、被覆部を通過したインフレータが作動したとき、第1布および第2布が逆止弁として機能し、挿入孔を通してクッションの外部にガスが漏れ難くなる。
【0011】
上記の第1孔の短手方向の寸法は、第2孔の短手方向の寸法よりも小さいとよい。この場合、一例として第1布の第1孔をスリットとし、第2布の第2孔をスロット(例えば長穴)とすればよい。このようにすれば、クッションの内部にシリンダ型のインフレータを挿入するとき、インフレータは、第1布のスリットを押し広げつつ、第2布のスロットを通過できる。
【0012】
上記の第2孔の短手方向の寸法は、インフレータの直径とほぼ等しいとよい。ここで、クッションの内部にシリンダ型のインフレータを挿入すると、第1布の例えばスリットがインフレータのスタッドボルトによって押し広げられる。押し広げられた状態の第1布のスリットは、第1布を覆う第2布に形成された、インフレータの直径とほぼ等しい短手方向の寸法を有する例えばスロットによって押付けられる。よって、押し広げられた状態の第1布のスリットは、第2布のスロットによって元の状態に戻る。このため、クッションの内部に挿入されたインフレータと第1布のスリットとの隙間が小さくなり、インフレータ作動時のガス漏れを低減できる。
【0013】
上記の第1布および第2布は、第1孔上で第1孔の長手方向に沿ってクッションの内部に向かって張り出すように山折りされているとよい。これにより、インフレータを被覆部に挿入するとき、第1布と第2布とが重ねられ山折りされた頂部に向けて、インフレータの先端を押し込むことで、先端が第1孔および第2孔を通過し易くなる。よって、クッションの内部にインフレータを容易に挿入できる。
【0014】
上記の第1布は、クッションの内側に設けられており、第2布と前記クッションの内側との間に位置するとよい。これにより、クッションの内部にインフレータを挿入すると、インフレータは、まず、直接対面する第1布の例えばスリットを通過する。このとき、第1布のスリットは、インフレータの本体および本体から突出したスタッドボルトによって押し広げられる。続いて、インフレータは、第2布の例えばスロットを通過する。このとき、押し広げられた状態の第1布のスリットは、第2布のスロットによって元の状態に戻る。したがって、クッションの内部に挿入されたインフレータと第1布のスリットとの隙間が小さくなり、インフレータ作動時のガス漏れを低減できる。
【0015】
上記の少なくとも第1布の長手方向の両端部がクッションの内側に接合されているとよい。これにより、第1布および第2布が互いに重ねられ、挿入孔を跨いでいる状態で、被覆部をクッションの内側に設けることができる。
【0016】
上記の第2布は、クッションの内側に設けられており、第1布と前記クッションの内側との間に位置するとよい。これにより、クッションの内部にインフレータを挿入すると、インフレータは、まず、直接対面する第2布の例えばスロットを通過し、続いて第1布の例えばスリットを通過する。このとき、第1布のスリットは、インフレータの本体および本体から突出したスタッドボルトによって押し広げられる。しかし、クッションの内部に挿入されたインフレータと第1布のスリットとの隙間は、第1布に重ねられた第2布によって覆われる。したがって、この隙間が小さくなり、インフレータ作動時のガス漏れを低減できる。
【0017】
上記の少なくとも第2布の長手方向の両端部が前記クッションの内側に接合されているとよい。これにより、第1布および第2布が互いに重ねられ、挿入孔を跨いでいる状態で、被覆部をクッションの内側に設けることができる。
【0018】
上記の第1布および第2布は、挿入孔を覆うように互いに重ねられることで、インフレータの作動後において、クッションの外部へのガスの漏れを規制する逆止弁を形成するとよい。これにより、第1布および第2布によって逆止弁が形成されるので、クッションの内部に挿入されたインフレータが作動したとき、挿入孔を通してクッションの外部にガスが漏れることを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インフレータが作動したとき、クッションの挿入孔から外部にガスが漏れ難いエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態におけるエアバッグ装置を概略的に例示する図である。
図2図1のエアバッグ装置の一部を詳細に例示する図である。
図3図1のクッションの縫製前での状態を例示する図である。
図4図1のクッションの被覆部を例示する図である。
図5図4の被覆部にインフレータを挿入する手順を例示する図である。
図6図5に続くインフレータを挿入する手順を例示する図である。
図7】比較例のエアバッグ装置を例示する図である。
図8】本発明の実施形態と比較例とのインパクター反力を比較したグラフである。
【符号の説明】
【0021】
100…エアバッグ装置、102…車両用シート、104…シートバック、106…ドア、108…クッション、108a、132a、132b、134a、134b、138a、138b、140a、140b…縫製ライン、110…インフレータ、110a…先端、110b…本体、112…挿入孔、114…ガス供給孔、116a、116b…スタッドボルト、118a、118b…孔部、120…被覆部、122…第1布、124…第2布、126…スリット、128…スロット、130…領域、136a、136b、142a、142b…端部、144…頂部、146、146A…隙間
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態におけるエアバッグ装置を概略的に例示した図である。エアバッグ装置100は、例えば、車両用シート102のシートバック104に内蔵されている。エアバッグ装置100は、シートバック104の車両外側に設けられていて、車両用シート102とドア106との間で立設して膨張展開するクッション108(図2参照)を備える。
【0024】
図2は、図1のエアバッグ装置100の一部を詳細に例示する図である。図2(a)は、クッション108が展開した状態を例示している。図2(b)は、図2(a)のA矢視図であり、クッション108の内側を見た状態を示している。クッション108は、例えば表裏の面を構成する計2枚の基布から縫製する方法や、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織する方法などによって袋状に形成されている。
【0025】
本実施形態におけるクッション108は、一枚の布地から構成されていて、その周囲が縫製ライン108aによって縫製され袋状に形成されている。またエアバッグ装置100は、インフレータ110を備える。インフレータ110は、ガス発生装置であって、内部のガス発生剤が燃焼することでガスを発生させ供給する構成となっている。インフレータ110はシリンダ型(筒型)であって、図2(a)に示すようにクッション108の内部へ、クッション108に形成された挿入孔112を通って中央付近までその一部が挿し入れられ、取り付けられている。
【0026】
クッション108の内側へ挿入されたインフレータ110の先端110a側には、図2(b)に示すように、ガス供給孔114が設けられている。また、インフレータ110には本体110bから突出したスタッドボルト116a、116bが設けられている。インフレータ110は、クッションに形成された孔部118a、118bに、このスタッドボルト116a、116bを通して、例えば車両用シート104(図1参照)に固定されている。
【0027】
図3は、図1のクッション108の縫製前での状態を例示する図である。クッション108には、図3(a)に示すように、上記挿入孔112および孔部118a、118bが形成されている。エアバッグ装置100は、図3(b)に示すように被覆部120を備える。被覆部120は、クッション108の内側に設けられ挿入孔112を覆っている。
【0028】
図4は、図1のクッション108の被覆部120を例示する図である。被覆部120は、図4(a)に示すように、第1布122と第2布124とを含む。第1布122には、長手の第1孔(スリット126)が形成されている。第2布124には、長手の第2孔(スロット128)が形成されている。
【0029】
ここで、図4(b)は、被覆部120に対して挿入孔112を投影した領域130を示し、この領域130に重ねられた第1布122および第2布124の位置関係を模式的に例示している。第1布122は、挿入孔112を覆っていて、クッションの内側に直接対面している。第1布122のスリット126は、挿入孔112に重なる位置に設けられ一方向に長く形成されていて、挿入孔112を跨いでいる。
【0030】
第2布124は、第1布122に重なって設けられていて、第1布122を介してクッション108の内側に対面している。つまり、第1布122は、第2布124とクッション108の内側との間に位置している。第2布124のスロット128は、挿入孔122に重なる位置でスリット126の長手方向に交差する方向に長手方向を有するように形成されている。言い換えると、スリット126を通る長手方向Bと、スロット128を通る長手方向Cとが、図4(b)に示すように、領域130上で交差している。なお図中では、スリット126、スロット128は、互いの長手方向B、Cが領域130上で直交して交差しているが、これに限られず、直交以外の角度で交差してもよい。
【0031】
また第2布124のスロット128の、図4(a)に示す短手方向の寸法Lが上記インフレータ110の直径とほぼ等しい。なお第1布122のスリット126の短手方向の寸法は、スロット128の短手方向の寸法Lよりも小さい。さらに第2布124は、図中に示す縫製ライン132a、132b、134a、134bを含む。
【0032】
第1布122および第2布124は、図4(c)に示すように重ねられ、まず、スリット126上でスリット126の長手方向に沿ってクッション108(図3(b)参照)の内部に向かって張り出すように山折りされる。つぎに、第1布122および第2布124は、互いに山折りされた状態で縫製ライン132a、132bによって縫製される。続いて、例えば第2布124のうち、スロット128の長手方向の両端部136a、136bを、縫製ライン134a、134bによってクッション108の内側に縫製する。このようにして、被覆部120は、挿入孔112を覆うようにクッション108の内側に設けられる。
【0033】
なお本実施形態では、被覆部120のうち、第1布122がクッション108の内側に対面し、第2布124が第1布122に重なって挿入孔112を覆っているが、これに限定されない。すなわち、図4(d)に例示する被覆部120Aのように、第1布122と第2布124との位置関係を被覆部120とは逆にしてもよい。被覆部120Aでは、第2布124がクッション108の内側に対面し、第1布122が第2布124に重なって挿入孔112を覆っている。つまり、第2布124は、第1布122とクッション108の内側との間に位置している。
【0034】
図4(d)に例示する被覆部120Aの場合、まず、第2布124が上記挿入孔112を覆い、第1布122が第2布124に重なるように互いに山折りして、縫製ライン138a、138bによって縫製する。つぎに、縫製ライン140a、140bによって第1布122のうち、スリット126の長手方向の両端部142a、142bを、クッション108の内側に縫製する。このようにして、挿入孔112を覆うようにクッション108の内側に、被覆部120Aを設けてよい。
【0035】
以下、エアバッグ装置100において、挿入孔112および被覆部120を通して、クッション108の内部にインフレータ110を挿入する動作を説明する。図5は、図4の被覆部120にインフレータ110を挿入する手順を例示する図である。図5(a)は、インフレータ110の先端110aおよびスタッドボルト116aがスリット126を通過する状態を示している。インフレータ110の挿入方向は、図中矢印Dで示している。図5(b)は、図5(a)のE矢視図である。
【0036】
インフレータ110は、まず上記挿入孔112に挿入された後、挿入孔112を覆いクッション108と直接対面する第1布122のスリット126を通過する。第1布122のスリット126は、インフレータ110の直径とほぼ等しい短手方向の寸法L(図4(a)参照)のスロット128を有する第2布124に重ねられている。このため、スリット126は、図5(a)および図5(b)に示すように、インフレータ110の本体110bおよび本体110bから突出したスタッドボルト116aの通過に伴って変形可能となる。よって、第1布122のスリット126は、図示のように、本体110bおよびスタッドボルト116aによって押し広げられ、スタッドボルト116aを容易に通過させることができる。
【0037】
ここで、インフレータ110を被覆部120に挿入するとき、第1布122と第2布124とが重ねられ山折りされた頂部144に向けて、インフレータ110の先端110aを押し込むとよい。このようにすれば、インフレータ110の先端110aがスリット126およびスロット128を通過し易くなり、クッション108の内部にインフレータ110を容易に挿入できる。
【0038】
図6は、図5に続くインフレータ110を挿入する手順を例示する図である。図6(a)は、図5(a)に続いてインフレータ110のスタッドボルト116bがスリット126を通過した状態を示している。図6(b)は、図6(a)のF矢視図である。
【0039】
図5(a)に続いて、インフレータ110のスタッドボルト116a、116bが第1布122のスリット126を通過すると、スリット126は、図6(a)および図6(b)に示すように、第2布124のスロット128によって押付けられる。よって、図5(a)および図5(b)での押し広げられた状態の第1布122のスリット126は、第2布124のスロット128によって元の状態に戻る。したがって、図6(b)に示すように、インフレータ110と第1布122のスリット126との隙間146が小さくなり、インフレータ110の作動時のガス漏れを低減できる。
【0040】
なおエアバッグ装置100において、挿入孔112および図4(d)に例示した被覆部120Aを通して、クッション108の内部にインフレータ110を挿入する場合を説明する。この場合、インフレータ110は、まず、直接対面する第2布124のスロット128を通過し、続いて第1布122のスリット126を通過する。このとき、第1布122のスリット126は、インフレータ110の本体110bおよびスタッドボルト116a、116bによって押し広げられる。しかし、クッション108の内部に挿入されたインフレータ110と第1布122のスリット126との隙間は、第1布122に重ねられた第2布124によって覆われる。したがって、被覆部120Aをクッション108の内側に設けた場合であっても、上記の隙間が小さくなり、インフレータ110の作動時のガス漏れを低減できる。
【0041】
これに対して、図6(c)に示すように、第1布122のみで形成された比較例としての被覆部120Bでは、第1布122のスリット126が第2布124のスロット128によって押付けられることがない。このため、被覆部120Bでは、インフレータ110と第1布122のスリット126との隙間146Aが大きくなり、インフレータ110の作動時にガス漏れが生じてしまう。
【0042】
図7は、比較例のエアバッグ装置200を例示する図である。図7(a)は、エアバッグ装置200のクッション202を示す図である。図7(b)は、クッション202にインフレータ110を挿入した状態を示す図である。
【0043】
エアバッグ装置200は、クッション202に上記被覆部120が形成されていない点で、本実施形態のエアバッグ装置100と異なる。クッション202には、図7(a)に示すように、インフレータ110の挿入孔204と、スタッドボルト116aを通すための孔部206とが形成されている。なおクッション202にスタッドボルト116bを通すための他の孔部を追加し、インフレータ110を挿入孔204から内部に挿入後、スタッドボルト116a、116bを孔部に通してもよい。
【0044】
比較例のエアバッグ装置200では、インフレータ110が作動すると、クッション202は展開の初期で振れながら、図7(b)に折れ線202bで示すように折れる。その後、クッション202は、展開するにつれて伸びつつ折れるような挙動を示す。このような挙動、特にクッション202の振れと伸びとによって、インフレータ110と挿入孔204との間には、図7(b)に示すように大きな隙間208が生じ、ガス漏れが生じ易い。
【0045】
図8は、本発明の実施形態と比較例とのインパクター反力を比較したグラフである。図8(a)では、横軸を時間、縦軸をインパクター反力とした。図8(b)では、図8(a)に示す本発明の実施形態のインパクター反力の平均と、比較例のインパクター反力の平均とを示している。なお比較例としては、図7に例示したエアバッグ装置200のように上記被覆部120が形成されていないものを用いている。
【0046】
ここではインフレータ110の挿入孔112からガス漏れを直接測定する代わりに、インパクターをクッション108に衝突させた際のインパクター反力を測定した。インパクター反力は、インパクターがクッション108を介して壁面などに接触する、いわゆる底付きを起こす前のものを採用している。なおガス漏れが多いと、クッション108内の圧力が減少すると想定されるため、インパクター反力を用いることで、ガス漏れを間接的に比較することが可能となる。
【0047】
図8(a)には、本発明の実施形態である第1サンプルおよび第2サンプルのグラフと、比較例である第3サンプル、第4サンプルおよび第5サンプルのグラフとが例示されている。これらのグラフを比較すると、本発明の実施形態は、図8(a)に例示するように、比較例に比べて、インパクター反力が大きいことが明らかである。これは、被覆部120を形成する第1布122および第2布124が、挿入孔112を覆うように互いに重ねられることで、インフレータ110の作動後において、クッション108の外部へのガスの漏れを規制する逆止弁を形成しているためである。
【0048】
しかもエアバッグ装置100では、挿入孔112ではなく第1布122および第2布124により、インフレータ110との隙間146を小さくしている。このため、エアバッグ装置100では、クッション108の展開時での振れと伸びとによって挿入孔112に隙間208(図7(b)参照)が生じたとしても、逆止弁として機能する被覆部120によってガス漏れを低減できる。
【0049】
その結果、図8(b)に示すように、比較例のインパクター反力の平均に対して、本発明のインパクター反力の平均は、約400[N]も向上することが確認できた。
【0050】
このように本実施形態では、被覆部120の第1布122および第2布124が互いに重ねられた状態で、スリット126およびスロット128が挿入孔112を跨いでいる。このため、クッション108の内部に挿入孔112を通してインフレータ110を挿入する場合、インフレータ110は、挿入孔110からスリット126およびスロット128を通過できる。そして、スリット126およびスロット128は、互いの長手方向に対して交差するように重なっている。このため、被覆部120を通過したインフレータ110が作動したとき、第1布122および第2布124が逆止弁として機能し、挿入孔110を通してクッション108の外部にガスが漏れ難くなる。
【0051】
上記実施形態では、エアバッグ装置としてサイドエアバッグを例示したが、これに限られず、側面衝突やそれに続いて起こるロールオーバ(横転)から乗員を守るために、壁部の天井付近からサイドウィンドウに沿って膨張展開するカーテンエアバッグであってもよい。なおエアバッグ装置がカーテンエアバッグの場合は、ガスが導入されるダクト部分に孔を形成し、この孔にインフレータを差し込むようにすればよい。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
また、上記実施形態においては本発明にかかるエアバッグ装置を自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両に設置され緊急時での乗員保護を目的として膨張展開するエアバッグ装置に利用することができる。
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図8