特許第6227843号(P6227843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6227843
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】伝動ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/08 20060101AFI20171030BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20171030BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20171030BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20171030BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20171030BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20171030BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20171030BHJP
   C08L 23/16 20060101ALN20171030BHJP
【FI】
   F16G1/08 A
   F16G1/28 E
   F16G5/06 A
   F16G5/20 A
   C08K3/26
   C08K5/3477
   C08K5/14
   !C08L23/16
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-514938(P2017-514938)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2017006618
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-70272(P2016-70272)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸治
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴幸
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−9966(JP,A)
【文献】 特表2005−523947(JP,A)
【文献】 特開平6−249292(JP,A)
【文献】 特開2006−153152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/08
F16G 1/28
F16G 5/06
F16G 5/20
C08K 3/26
C08K 5/14
C08K 5/3477
C08L 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト外周側の背面ゴム層と、ベルト内周側の表面ゴム層とを有する伝動ベルトであって、
前記背面ゴム層は、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されているとともに、前記表面ゴム層は、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成され、
前記表面ゴム層を形成するゴム組成物に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのエチレン含量が、前記背面ゴム層を形成するゴム組成物に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのエチレン含量よりも小さい伝動ベルト。
【請求項2】
請求項に記載された伝動ベルトにおいて、
前記表面ゴム層を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのエチレン含量に対する前記背面ゴム層を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのエチレン含量の比が1.02以上である伝動ベルト。
【請求項3】
ベルト外周側の背面ゴム層と、ベルト内周側の表面ゴム層とを有する伝動ベルトであって、
前記背面ゴム層は、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されているとともに、前記表面ゴム層は、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成され、
前記表面ゴム層を形成するゴム組成物に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのジエン含量が、前記背面ゴム層を形成するゴム組成物に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのジエン含量よりも大きい伝動ベルト。
【請求項4】
請求項に記載された伝動ベルトにおいて、
前記表面ゴム層を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのジエン含量に対する前記背面ゴム層を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーのジエン含量の比が0.50以下である伝動ベルト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物が共架橋剤を含む伝動ベルト。
【請求項6】
請求項に記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物が前記共架橋剤としてトリアリルイソシアヌレートを含む伝動ベルト。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物における前記共架橋剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1〜5質量部である伝動ベルト。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物が充填材を含む伝動ベルト。
【請求項9】
請求項8に記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物が前記充填材として炭酸マグネシウムを含む伝動ベルト。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物における前記充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5〜20質量部である伝動ベルト。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記背面ゴム層を形成するゴム組成物が有機化酸化物で架橋されている伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(以下「EPDM」という。)をゴム成分とするゴム組成物で背面ゴム層が形成された伝動ベルトは公知である。例えば、特許文献1には、ジエン含量が0.2〜7.5質量%のEPDMのゴム組成物で背面ゴム層が形成されたVリブドベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−177967号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ベルト外周側の背面ゴム層を有する伝動ベルトであって、前記背面ゴム層は、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるEPDMをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施形態1に係るVリブドベルトの斜視図である。
図2】実施形態1に係るVリブドベルトのVリブ1個分の断面図である。
図3】ベルト成形型の縦断面図である。
図4】ベルト成形型の一部分の縦断面拡大図である。
図5】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第1の説明図である。
図6】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第2の説明図である。
図7】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第3の説明図である。
図8】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第4の説明図である。
図9】自動車の補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。
図10】実施形態2に係るVリブドベルトの斜視図である。
図11】実施形態2に係るVリブドベルトのVリブ1個分の断面図である。
図12】実施形態2に係るVリブドベルトの製造方法の第1の説明図である。
図13】実施形態2に係るVリブドベルトの製造方法の第2の説明図である。
図14A】その他の実施形態に係るローエッジ型Vベルトの斜視図である。
図14B】その他の実施形態に係る歯付ベルトの斜視図である。
図15】ベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】
(実施形態1)
図1及び2は、実施形態1に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)を示す。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスのものである。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
【0008】
実施形態1に係るVリブドベルトBは、ベルト外周側の背面ゴム層11と中間の接着ゴム層12とベルト内周側の表面ゴム層を構成する圧縮ゴム層13との三重層に構成されたVリブドベルト本体10を備えている。Vリブドベルト本体10の接着ゴム層12の厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。背面ゴム層11の厚さは例えば0.4〜0.8mmである。接着ゴム層12の厚さは例えば1.0〜2.5mmである。圧縮ゴム層13の厚さは例えば1.0〜3.6mmである。
【0009】
背面ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に構成されている。背面ゴム層11の表面、つまり、ベルト背面は、接触する平プーリとの間で生じる音を抑制する観点から、織布の布目が転写された形態に形成されていることが好ましい。
【0010】
背面ゴム層11は、ゴム成分に、種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋したゴム組成物で形成されている。従って、背面ゴム層11を形成するゴム組成物は、架橋したゴム成分と、各種の配合剤とを含有する。
【0011】
背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分は、EPDMを主体として含む。ゴム成分におけるEPDMの含有量は50質量%以上であるが、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。ゴム成分は、EPDMの他に、EPDM以外のエチレン−α−オレフィンエラストマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマー(EPR)、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマー等)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NOR)等を含んでいてもよい。
【0012】
背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMは、エチレン含量(A)が60質量%以上で且つジエン含量(B)が1質量%以下である。実施形態1に係るVリブドベルトBによれば、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるEPDMをゴム成分の主体とするゴム組成物で背面ゴム層11が形成されているので、後述の実施例で示すように、背面ゴム層11の粘着摩耗を抑制することができる。
【0013】
このEPDMのエチレン含量(A)は、粘着摩耗を抑制する観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは68質量%以上であり、また、好ましくは86質量%以下、より好ましくは76質量%以下である。エチレン含量は、ASTM D3900に基づいて測定される(以下同様)。
【0014】
このEPDMのジエン含量(B)は、0よりも大きいが、粘着摩耗を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは1.7質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。ジエン含量は、ASTM D6047に基づいて測定される(以下同様)。
【0015】
ジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、これらのうちエチリデンノボルネンが好ましい。
【0016】
このEPDMの125℃におけるムーニー粘度は、粘着摩耗を抑制する観点から、好ましくは20ML1+4(125℃)以上、より好ましくは35ML1+4(125℃)以上であり、また、好ましくは70ML1+4(125℃)以下、より好ましくは55ML1+4(125℃)以下である。ムーニー粘度は、ASTM D1646に基づいて測定される(以下同様)。
【0017】
配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、充填材、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0018】
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。補強材はISAF又はFEFを含むことが好ましい。補強材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば30〜70質量部である。
【0019】
充填材としては、例えば、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウム、層状珪酸塩等が挙げられる。充填材は、これらのうちの一方又は両方を用いることが好ましく、炭酸マグネシウムを用いることがより好ましい。充填材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部である。
【0020】
軟化剤としては、例えば、石油系軟化剤;パラフィンワックスなどの鉱物油系軟化剤;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、ロジン、パインオイルなどの植物油系軟化剤等が挙げられる。軟化剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。軟化剤はパラフィンワックスを用いることが好ましい。軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば5〜15質量部である。
【0021】
老化防止剤としては、芳香族第二級アミン系などのアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、フェノール系、亜リン酸エステル系のものが挙げられる。老化防止剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。老化防止剤は、芳香族第二級アミン系のものを用いることが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.1〜1.5質量部である。
【0022】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。加工助剤は、ステアリン酸を用いることが好ましい。加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.1〜3質量部である。
【0023】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物等が挙げられる。加硫助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。加硫助剤は、酸化亜鉛を用いることが好ましい。加硫助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば3〜15質量部である。
【0024】
架橋剤としては有機過酸化物が挙げられる。背面ゴム層11を形成するゴム組成物は、有機化酸化物で架橋されていることが好ましい。架橋剤は、有機過酸化物を単独で用いてもよく、また、有機過酸化物と硫黄とを併用してもよい。有機過酸化物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜8質量部であり、また、有機過酸化物と硫黄とを併用する場合、硫黄の配合量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜4質量部である。
【0025】
共架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、液状ポリブタジェエン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。共架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。共架橋剤は、トリアリルイソシアヌレートを用いることが好ましい。共架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1〜2質量部である。
【0026】
接着ゴム層12は、背面ゴム層11と同様、断面横長矩形の帯状に形成されている。圧縮ゴム層13は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。圧縮ゴム層13におけるこれらの複数のVリブ15の表面が動力伝達面としてのプーリ接触面を構成する。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。Vリブ数は例えば3〜6個である(図1では6個)。
【0027】
接着ゴム層12及び圧縮ゴム層13のそれぞれは、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋したゴム組成物で形成されている。従って、圧縮ゴム層13及び接着ゴム層12のそれぞれは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有する。
【0028】
圧縮ゴム層13及び接着ゴム層12を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。これらのゴム成分は、背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分と同一であることが好ましい。
【0029】
圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分にEPDMが含まれている場合、そのEPDMのエチレン含量(C)は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。このエチレン含量(C)は、背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのエチレン含量(A)よりも小さいことが好ましい。
【0030】
圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのエチレン含量(C)に対する背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのエチレン含量(A)の比(A/C)は、好ましくは1.02以上、より好ましくは1.13以上であり、また、好ましくは1.91以下、より好ましくは1.52以下である。
【0031】
EPDMのジエン含量(D)は、好ましくは3.5質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上であり、また、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下である。このジエン含量(D)は、背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのジエン含量(B)よりも大きいことが好ましい。
【0032】
圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのジエン含量(D)に対する背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのジエン含量(B)の比(B/D)は、好ましくは0.0125以上、より好ましくは0.10以上であり、また、好ましくは1よりも小さく、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.20以下、より更に好ましくは0.15以下である。
【0033】
ジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、これらのうちエチリデンノボルネンが好ましい。このジエン成分は、背面ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMのジエン成分と同一であることが好ましい。
【0034】
EPDMの125℃におけるムーニー粘度は、好ましくは10ML1+4(125℃)以上、より好ましくは15ML1+4(125℃)以上であり、また、好ましくは70ML1+4(125℃)以下、より好ましくは50ML1+4(125℃)以下である。
【0035】
圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分に含まれるEPDMは、有機過酸化物により架橋されていても、また、硫黄で架橋されていても、更に、それらの併用で架橋されていても、いずれでもよい。
【0036】
心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線14の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、断面における相互に隣接する心線14中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。心線14は、Vリブドベルト本体10の接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬された後に加熱される接着処理及び/又はゴム糊に浸漬された後に乾燥される接着処理が施されている。
【0037】
次に、実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法について説明する。
【0038】
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造では、図3及び4に示すように、同心状に設けられた、各々、円筒状の内型21及び外型22を備えたベルト成形型20を用いる。
【0039】
このベルト成形型20では、内型21はゴム等の可撓性材料で形成されている。外型22は金属等の剛性材料で形成されている。外型22の内周面は成型面に構成されており、その外型22の内周面には、Vリブ形成溝23が軸方向に一定ピッチで設けられている。また、外型22には、水蒸気等の熱媒体や水等の冷媒体を流通させて温調する温調機構が設けられている。そして、このベルト成形型20では、内型21を内部から加圧膨張させるための加圧手段が設けられている。
【0040】
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造において、まず、ゴム成分に各配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を作製する。
【0041】
同様に、接着ゴム層用及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート12’,13’も作製する。また、心線用の撚り糸14’をRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を行った後、ゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。
【0042】
次いで、図5に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上にゴムスリーブ25を被せ、その上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート13’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を形成する。なお、このとき、未架橋ゴムシート11’,12’,13’を、列理方向がベルト長さ方向(周方向)となるように巻き付けることが好ましい。
【0043】
次いで、未架橋スラブS’を設けたゴムスリーブ25を円筒ドラム24から外し、図6に示すように、それを外型22の内周面側に内嵌め状態にセットする。
【0044】
次いで、図7に示すように、内型21を外型22にセットされたゴムスリーブ25内に位置付けて密閉する。
【0045】
続いて、外型22を加熱すると共に、内型21の密封された内部に高圧空気等を注入して加圧する。このとき、図8に示すように、内型21が膨張し、外型22の成型面に、未架橋スラブS’のベルト形成用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’が圧縮され、また、それらのゴム成分の架橋が進行して一体化すると共に撚り糸14’と複合化し、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。このベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、成型時間は例えば10〜60分である。
【0046】
そして、内型21の内部を減圧して密閉を解き、内型21と外型22との間でゴムスリーブ25を介して成型されたベルトスラブSを取り出し、ベルトスラブSを所定幅に輪切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。なお、必要に応じて、ベルトスラブSの外周側、つまり、Vリブ15側の表面を研磨してもよい。
【0047】
図9は、実施形態1に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置30のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置30は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
【0048】
この補機駆動ベルト伝動装置30は、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ31が設けられ、そのパワーステアリングプーリ31の下方にリブプーリのACジェネレータプーリ32が設けられている。また、パワーステアリングプーリ31の左下方には平プーリのテンショナプーリ33が設けられており、そのテンショナプーリ33の下方には平プーリのウォーターポンププーリ34が設けられている。更に、テンショナプーリ33の左下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ35が設けられており、そのクランクシャフトプーリ35の右下方にリブプーリのエアコンプーリ36が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
【0049】
この補機駆動ベルト伝動装置30では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ31に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面側が接触するようにテンショナプーリ33に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ35及びエアコンプーリ36に順に巻き掛けられ、更に、ベルト背面側が接触するようにウォーターポンププーリ34に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ32に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ31に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0〜2°である。
【0050】
以上の構成の補機駆動ベルト伝動装置30では、実施形態1に係るVリブドベルトBが、ベルト背面の背面ゴム層11がテンショナプーリ33及びウォーターポンププーリ34に接触するように巻き掛けられているが、その背面ゴム層11が、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるEPDMをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されていることにより、背面ゴム層11の粘着摩耗を抑制することができる。
【0051】
(実施形態2)
図10及び11は、実施形態2に係るVリブドベルトBを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0052】
実施形態2に係るVリブドベルトBでは、圧縮ゴム層13は、表面ゴム層13aとコアゴム層13bとを有する。表面ゴム層13aは、多孔ゴムで形成され、Vリブ15の表面全体に沿うように層状に設けられ、ベルト内周側のプーリ接触面を構成している。表面ゴム層13aの厚さは例えば50〜500μmである。コアゴム層13bは、中実ゴムで形成され、表面ゴム層13aの内側に設けられ、圧縮ゴム層13における表面ゴム層13a以外の部分を構成している。
【0053】
ここで、本出願における「多孔ゴム」とは、内部に多数の中空部を有すると共に表面に多数の凹孔16を有する架橋済みのゴム組成物を意味し、中空部及び凹孔16が分散して配された構造並びに中空部及び凹孔16が連通した構造のいずれも含まれる。また、本出願における「中実ゴム」とは、「多孔ゴム」以外の中空部及び凹孔16を含まない架橋済みのゴム組成物を意味する。
【0054】
表面ゴム層13a及びコアゴム層13bは、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋したゴム組成物で形成されている。従って、表面ゴム層13a及びコアゴム層13bは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有する。表面ゴム層13aは、加えて多孔ゴムであることから、その形成前の未架橋ゴム組成物に、多孔ゴムを構成するための未膨張の中空粒子及び/又は発泡剤が配合されている。
【0055】
未膨張の中空粒子としては、例えば、熱可塑性ポリマー(例えばアクリロニトリル系ポリマー)等で形成されたシェルの内部に溶剤が封入された粒子等が挙げられる。中空粒子は、1種だけ用いても、また、2種以上を用いても、どちらでもよい。中空粒子の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部である。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミドを主成分とするADCA系発泡剤、ジニトロソペンタメチレンテトラミンを主成分とするDPT系発泡剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを主成分とするOBSH系発泡剤、ヒドラゾジカルボンアミドを主成分とするHDCA系発泡剤などの有機系発泡剤等が挙げられる。発泡剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。発泡剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0056】
コアゴム層13bは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。コアゴム層13bを形成するゴム組成物は、中空部及び凹孔16を除いた表面ゴム層13aを形成するゴム組成物と同一であってもよい。
【0057】
表面ゴム層13a及びコアゴム層13bを形成するゴム組成物のその他の構成は、実施形態1に係るVリブドベルトBの圧縮ゴム層13を形成するゴム組成物と同一である。
【0058】
表面ゴム層13aは多孔ゴムであるので、その表面には多数の凹孔16が形成されている。凹孔16の平均孔径は、好ましくは10〜150μmである。凹孔16の平均孔径は、表面画像で測定される50〜100個の数平均によって求められる。
【0059】
実施形態2に係るVリブドベルトBを製造するには、圧縮ゴム層13の表面ゴム層用及びコアゴム層用の未架橋ゴムシート13a’,13b’を作製する。表面ゴム層用の未架橋ゴムシート13a’には、未膨張の中空粒子及び/又は発泡剤を配合する。次いで、実施形態1と同様の方法により、図12に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上に被せたゴムスリーブ25上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、並びに圧縮ゴム層13におけるコアゴム層用の未架橋ゴムシート13b’、及び表面ゴム層用の未架橋ゴムシート13a’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を形成する。そして、この未架橋スラブS’により図13に示すような円筒状のベルトスラブSを成型する。
【0060】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0061】
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、VリブドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、ベルト外周側の背面ゴム層を有する伝動ベルトであれば特にこれらに限定されるものではなく、例えば、図14Aに示すようなローエッジ型のVベルトBであってもよく、また、図14Bに示すような歯付ベルトであってもよい。
【実施例】
【0062】
(Vリブドベルト)
以下の実施例1〜5及び比較例1〜5のVリブドベルトを作製した。なお、それぞれの構成については表1にも示す。
【0063】
<実施例1>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのEPDM(1)(ダウ社製 商品名:Nordel3745P、エチレン含量(A):70質量%、ジエン含量(B)(エチリデンノルボルネン含量(ENB含量)):0.5質量%、ムーニー粘度:45ML1+4(125℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材であるカーボンブラックのISAF(東海カーボン社製 商品名:シースト6)50質量部、軟化剤のパラフィンワックス(日本サン石油社製 商品名:サンフレックス2280)8質量部、芳香族第二級アミン系老化防止剤(大内新興化学工業社製 商品名:ノクラックCD)0.5質量部、加工助剤のステアリン酸(日油社製 商品名:ビーズステアリン酸 椿)0.5質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(堺化学社製 商品名:酸化亜鉛3種)8質量部、架橋剤の有機過酸化物(日油社製 商品名:ペロキシモンF40(純度40質量%)、α,α’−ジ(トリ−t−ブチルペロキシ)ジイソプロピルベンゼン)8質量部(3.2質量部)を投入して混練し、得られた未架橋ゴム組成物を用いて背面ゴム層を形成した上記実施形態2と同様の構成のVリブドベルトを作製した。それを実施例1とした。
【0064】
なお、圧縮ゴム層の表面ゴム層は、EPDMをゴム成分とする他のゴム組成物の多孔ゴムで形成した。表面ゴム層を形成するゴム組成物のゴム成分には、エチレン含量(C):67質量%、ジエン含量(D):4.5質量%、ムーニー粘度:27ML1+4(125℃)を主成分とするEPDMを用いた。圧縮ゴム層のコアゴム層及び接着ゴム層は、EPDMをゴム成分とする他のゴム組成物で形成した。また、心線をポリエチレンテレフタラート繊維製の撚り糸で構成した。更に、圧縮ゴム層には表面研磨を施した。そして、ベルト長さを1100mm、ベルト幅を21.36mm、ベルト厚さを4.3mmとし、リブ数を6個とした。
【0065】
<実施例2>
カーボンブラックのISAFの代わりにFEF(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)を用いると共に、共架橋剤のトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製 商品名:タイク)をゴム成分100質量部に対して2質量部用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを実施例2とした。
【0066】
<実施例3>
充填材の炭酸マグネシウム(神島化学工業社製 商品名:金星)をゴム成分100質量部に対して10質量部用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを実施例3とした。
【0067】
<実施例4>
カーボンブラックのISAFの代わりにFEFを用いると共に、充填材の炭酸マグネシウムをゴム成分100質量部に対して10質量部用い、且つ共架橋剤のトリアリルイソシアヌレートをゴム成分100質量部に対して2質量部用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを実施例4とした。
【0068】
<実施例5>
ゴム成分としてEPDM(2)(ダウ社製 商品名:Nordel3720P、エチレン含量(A):69質量%、ジエン含量(B):0.5質量%、ムーニー粘度:20ML1+4(125℃))を用いると共に、充填材の炭酸マグネシウムをゴム成分100質量部に対して10質量部用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを実施例5とした。
【0069】
<比較例1>
ゴム成分としてEPDM(3)(JSR社製 商品名:EP22、エチレン含量(A):54質量%、ジエン含量(B):4.5質量%、ムーニー粘度:27ML1+4(125℃))を用いると共に、架橋剤の有機過酸化物の代わりに不溶性硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:セイミOT)をゴム成分100質量部に対して1.7質量部用い、且つスルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学工業社製 商品名:ノクセラーMSA−G)をゴム成分100質量部に対して1.2質量部、並びにチウラム系、ジチオカーバメート系、及びチアゾール系の混合加硫促進剤(三新化学社製 商品名:サンセラーEM2)をゴム成分100質量部に対して2.8質量部用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを比較例1とした。
【0070】
<比較例2>
充填材の炭酸マグネシウムをゴム成分100質量部に対して10質量部用いたことを除いて比較例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを比較例2とした。
【0071】
<比較例3>
ゴム成分としてEPDM(4)(ダウ社製 商品名:Nordel3640、エチレン含量(A):55質量%、ジエン含量(B):1.8質量%、ムーニー粘度:40ML1+4(125℃))を用いたことを除いて実施例4と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを比較例3とした。
【0072】
<比較例4>
ゴム成分としてEPDM(5)(JSR社製 商品名:EP43、エチレン含量(A):54質量%、ジエン含量(B):4.5質量%、ムーニー粘度:27ML1+4(125℃))を用いると共に、カーボンブラックのISAFの代わりにFEFを用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを比較例4とした。
【0073】
<比較例5>
共架橋剤のトリアリルイソシアヌレートをゴム成分100質量部に対して2質量部用いたことを除いて比較例4と同一構成のVリブドベルトを作製した。それを比較例5とした。
【0074】
【表1】
【0075】
(試験評価方法)
図15はベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。
【0076】
このベルト走行試験機40は、各々、プーリ径が70mmで面粗度が12.5Z(TSZ2301Gによる)の平プーリである駆動プーリ41及び従動プーリ42が左右に間隔をおいて設けられている。
【0077】
実施例1〜5及び比較例1〜5のそれぞれについて、上記ベルト走行試験機40の駆動プーリ41及び従動プーリ42に、各VリブドベルトBの外周側の背面ゴム層が接触するように巻き掛け、従動プーリ42に22.5N・mのトルクを与えると共に、ベルト張力が負荷されるように側方(駆動プーリ41の反対側方向)に1177Nの荷重を与え、雰囲気温度25±7℃の下、駆動プーリ41を3500rpmの回転数で回転させてベルト走行させた。ベルト走行は60分まで行い、30分経過時点における粘着摩耗状況と、60分経過時点における背面ゴム層の表面の粘着摩耗状況を目視で確認して評価した。評価は、粘着摩耗が、無、微小、小、中、及び大の5段階で行った。
【0078】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
【0079】
この試験結果によれば、背面ゴム層が、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるEPDMのゴム組成物で形成された実施例1〜5は、走行30分後では無乃至微小であり、走行60分後では微小乃至小であるのに対し、
エチレン含量が60質量%未満又はジエン含量が1質量%以上である比較例1〜5は、走行30分後では小乃至大であり、走行60分後では中乃至大である。つまり、実施例1〜5は、比較例1〜5よりも耐粘着摩耗性が優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、伝動ベルトの技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0081】
B Vリブドベルト,Vベルト,歯付ベルト(伝動ベルト)
11 背面ゴム層
13 圧縮ゴム層(表面ゴム層)
13a 表面ゴム層
【要約】
伝動ベルト(B)は、ベルト外周側の背面ゴム層(11)を有する。背面ゴム層(11)は、エチレン含量が60質量%以上で且つジエン含量が1質量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15