特許第6227849号(P6227849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227849ゴム用無機充填材、ゴム組成物及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6227849
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ゴム用無機充填材、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20171030BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171030BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171030BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   C08L21/00
   B60C1/00 A
   C08K3/22
   C08L9/00
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-531784(P2017-531784)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2017007021
【審査請求日】2017年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-51346(P2016-51346)
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 春奈
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−139434(JP,A)
【文献】 特開昭62−003003(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/178311(WO,A1)
【文献】 特開平06−279618(JP,A)
【文献】 特開平11−012148(JP,A)
【文献】 特開昭63−307119(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/051690(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00−19/12
C01G 23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分に、ゴム用無機充填材を配合してなる、ゴム組成物であって、
前記ゴム用無機充填材が、窒素気流下において昇温速度10℃/分で40℃から1000℃まで加熱したときの200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率が0.4〜10.0質量%であるチタン酸化物粒子からなり、
前記ゴム組成物が、タイヤトレッド用である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記チタン酸化物粒子の比表面積(BET法)が5〜1000m/gである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記チタン酸化物粒子の平均粒子径が10.0μm以下である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記チタン酸化物粒子のX線回折における2θ=20°〜30°の範囲内におけるピークの半値幅が0.10°以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記チタン酸化物粒子の水分散pH値が2.0〜11.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記チタン酸化物粒子の表面に表面処理剤からなる処理層が形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム成分がジエン系ゴムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム用無機充填材の配合量が、ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物をトレッド部に用いてなる、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに用いた場合にウェットグリップ性を向上させることができるゴム用無機充填材、それを含有するゴム組成物及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
雨天時の濡れた路面を自動車が走行すると、タイヤと路面との間に水が介在するため、タイヤのグリップ性能が低下し、ブレーキをかけたときの制動距離が伸びるという問題がある。自動車の安全性を高めるために、この湿潤路面でのグリップ性能(ウェットグリップ性)に優れたタイヤが求められている。
【0003】
これに対して、特許文献1のように、ゴム成分中に無機充填材を配合したゴム組成物を用いることが知られている。
【0004】
一方で、チタン系材料は、取扱いが容易であり、低廉で、さらに環境安全性の高い材料であることから、様々な用途においての利用が検討されている。しかし、チタン系材料を配合したゴム組成物で十分なウェットグリップ性が得られることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤに用いた場合に、優れたウェットグリップ性を発揮するゴム用無機充填材、それを含有するゴム組成物、及びそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、以下のゴム用無機充填材、ゴム組成物及びタイヤを提供する。
【0008】
項1 昇温速度10℃/分で40℃から1000℃まで加熱したときの200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率が0.4〜10.0質量%であるチタン酸化物粒子からなる、ゴム用無機充填材。
【0009】
項2 前記チタン酸化物粒子の比表面積が5〜1000m/gである、項1に記載のゴム用無機充填材。
【0010】
項3 前記チタン酸化物粒子の平均粒子径が10.0μm以下である、項1又は2に記載のゴム用無機充填材。
【0011】
項4 前記チタン酸化物粒子のX線回折における2θ=20°〜30°の範囲内におけるピークの半値幅が0.10°以上である、項1〜3のいずれか一項に記載のゴム用無機充填材。
【0012】
項5 前記チタン酸化物粒子の水分散pH値が2.0〜11.0である、項1〜4のいずれか一項に記載のゴム用無機充填材。
【0013】
項6 前記チタン酸化物粒子の表面に表面処理剤からなる処理層が形成されている、項1〜5のいずれか一項に記載のゴム用無機充填材。
【0014】
項7 ゴム成分に、項1〜6のいずれか一項に記載のゴム用無機充填材を配合してなる、ゴム組成物。
【0015】
項8 前記ゴム成分がジエン系ゴムである、項7に記載のゴム組成物。
【0016】
項9 前記ゴム用無機充填材の配合量が、ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部である、項7又は8に記載のゴム組成物。
【0017】
項10 タイヤトレッド用である、項7〜9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【0018】
項11 項7〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物をトレッド部に用いてなる、タイヤ。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゴム用無機充填材を配合したゴム組成物は、タイヤに用いた場合に、優れたウェットグリップ性を発揮することができる。本発明のタイヤは、ウェットグリップ性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の製造例1で得られたチタン酸化物粒子AのX線回折チャートを示す図である。
図2図2は、本発明の製造例2で得られたチタン酸化物粒子BのX線回折チャートを示す図である。
図3図3は、本発明の製造例3で得られたチタン酸化物粒子CのX線回折チャートを示す図である。
図4図4は、本発明の製造例4で得られたチタン酸化物粒子DのX線回折チャートを示す図である。
図5図5は、本発明の製造例5で得られたチタン酸化物粒子EのX線回折チャートを示す図である。
図6図6は、本発明の製造例1〜5で得られたチタン酸化物粒子A〜E及び比較例1で用いた酸化チタン(アナターゼ)粒子のX線回折チャートにおける結晶面(101)に相当する部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明のゴム用無機充填材は、不活性ガス気流下、昇温速度10℃/分で40℃から1000℃まで加熱したときの200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率が0.4〜10.0質量%であるチタン酸化物粒子からなる。本発明のチタン酸化物粒子には、化学吸着された水、水酸基が存在し、前記温度範囲において化学吸着された水の蒸発、水酸基の脱水反応が起こり、最終的に酸化チタンになると考えられる。加熱重量減少率を特定する理由は、前記温度範囲の加熱重量減少率を評価することで、前記温度範囲に到達するまでに物理吸着水が蒸発し、チタン酸化物粒子の化学吸着水および水酸基の量を評価することができ、優れたウェットグリップ性を付与することができるチタン酸化物粒子を特定することができるからである。
【0023】
本発明のチタン酸化物粒子の200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率は、0.4〜10.0質量%であり、1.0〜8.0質量%であることが好ましく、1.5〜7.0質量%であることがより好ましく、2.0〜6.5質量%であることが更に好ましく、2.3〜6.0質量%であることが特に好ましい。
【0024】
本発明のチタン酸化物粒子の形状は特に限定されないが、環境への影響の観点から、板状、球状、不定形状等の非繊維状の粒子であることが好ましい。
【0025】
本発明のチタン酸化物粒子の比表面積(BET法)は、通常、5〜1000m/gであり、好ましくは10〜500m/gであり、より好ましくは30〜200m/gであり、さらに好ましくは50〜150m/gである。比表面積を、このような範囲に調整することにより、ゴム成分中へより良好に分散することができ、より一層優れたウェットグリップ性と、優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0026】
本発明のチタン酸化物粒子の平均粒子径は、通常は10.0μm以下であり、好ましくは0.01〜10.0μmであり、より好ましくは0.1〜10.0μmであり、更に好ましくは0.1〜5.0μm、特に好ましくは0.5〜2.0μmである。平均粒子径が10.0μmを超えるとゴムの耐破壊性特性の観点から好ましくなく、平均粒子径が小さすぎると微粒子の毒性の観点から好ましくない。本発明において平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%の粒子径を意味する。
【0027】
本発明のチタン酸化物粒子は、硫酸チタン、塩化チタン等の水溶性チタン化合物の加水分解物として知られている化合物、例えば、「酸化チタン水和物」、「含水酸化チタン」、「メタチタン酸」等と称される化合物と同様の組成を有するものである。X線回折においては、アナターゼ型の酸化チタンと似たピークパターンを有するが、酸化チタンとは異なり低結晶性の化合物である。本発明において「低結晶性」とは、X線回折において、特定のピークを持たないアモルファスの化合物とは異なり、また急峻なピークをもつ結晶性の化合物とも異なり、その中間的なピークを示す。中間的なピークとは、2θ=20°〜30°の範囲内にある酸化チタンの結晶面(101)に対応するピークの半値幅が0.10°以上であることをいう。なお、2θ=20°〜30°の範囲内に複数のピークが存在するときは、最大ピークの半値幅が0.10°以上であることをいう。半値幅は、好ましくは0.10°〜2.00°であり、より好ましくは0.45°〜1.80°である。半値幅を、このような範囲に調整することにより、より一層優れたウェットグリップ性を得ることができる。本発明において半値幅とは、X線回折によって得られたピークの1/2の高さの箇所の幅を意味する。
【0028】
本発明のチタン酸化物粒子は、例えば、硫酸チタン溶液の加水分解により得ることができ、「硫酸法酸化チタン」の製造工程で得られるチタン酸化物粒子を用いることもできる。「硫酸法酸化チタン」とは、酸化チタンの原料鉱石等を硫酸に溶解して精製して、その精製物を焼成することで酸化チタンを得る方法であり、通常、チタン鉱石、イルメナイト鉱石、天然ルチル等を濃硫酸中で加熱することにより溶解して硫酸チタン溶液を得ることができる。
【0029】
硫酸チタンの加水分解により得られるチタン酸化物粒子は、不純物として製造工程の硫酸分が多く含まれていることがあり、ゴム成分の劣化や、使用機材の劣化のおそれがある。そのため、チタン酸化物粒子を水に分散させ、アルカリを添加することにより硫酸分を洗浄し、固形分を濾取、乾燥、篩い通しすることで、本発明のチタン酸化物粒子とすることが好ましい。
【0030】
上記洗浄における分散液の濃度、アルカリ添加量は、チタン酸化物粒子の分散が安定していれば特に制限はなく、広い範囲から適宜選択できる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を例示することができる。アルカリは必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0031】
硫酸チタン溶液において、チタンイオンは、水分子と結合した錯化合物となり、加水分解の進行にともなって鎖状あるいは網目状結合を形成するといわれている。この化合物はコロイド状になるまで成長し、ついには沈殿することでチタン酸化物粒子を得ることができる。このため硫酸チタンの加水分解により得られるチタン酸化物粒子は、比表面積が大きく、多くの水酸基、化学吸着された水を有しており、優れたウェットグリップ性が得られるものと考えられる。また、前記チタン酸化物粒子は、酸化チタンよりも多くの水酸基を有することから、酸化チタンとは異なり低結晶性の化合物になると考えられる。
【0032】
本発明のチタン酸化物粒子は、ゴム組成物の製造、加工工程の熱により構造変化しないようにするため、過剰な化学吸着された水等を蒸発させる等の目的により焼成して用いてもよい。上記焼成温度が高くなると結晶化が進行し酸化チタンに転移するため、焼成温度は800℃以下にすることが好ましく、500℃以下にすることがより好ましい。上記焼成温度が低くなると目的とする焼成効果が得られない場合があることから、焼成温度は200℃以上にすることが好ましい。上記焼成時間が長くなると結晶化が進行し酸化チタンに転移するおそれがあるため、また焼成時間が短くなると目的とする焼成効果が得られない場合があるため、焼成時間は2〜8時間であることが好ましい。
【0033】
本発明のチタン酸化物粒子の水分散pH値は、好ましくは2.0〜11.0であり、より好ましくは4.0〜8.0である。水分散pH値が2.0未満であれば、硫酸分が多く含まれ、ゴム成分の劣化や使用機器の劣化のおそれがある。また、水分散pH値が11.0より大きければ、アルカリ分が多くなり、ゴム成分の劣化や使用機器の劣化のおそれがある。
【0034】
本発明のチタン酸化物粒子は、分散性の向上、ゴム成分との密着性の向上等を目的として、チタン酸化物粒子の表面に表面処理剤からなる処理層が形成されていることが好ましい。前記表面処理剤としては、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等のカップリング剤が挙げられ、これらのなかでもシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤の例として、スルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系等のシランカップリング剤が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等を挙げることができる。
【0036】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0037】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0038】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0039】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0040】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0041】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0042】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0043】
チタン酸化物粒子の表面に表面処理剤からなる処理層を形成する方法としては、公知の表面処理方法を使用することができ、例えば、加水分解を促進する溶媒(例えば、水、アルコール又はこれらの混合溶媒)に表面処理剤を溶解して溶液として、その溶液をチタン酸化合物粒子に噴霧する湿式法、ゴム成分にチタン酸化合物粒子と表面処理剤とを配合するインテグラルブレンド法等でなされる。
【0044】
表面処理剤を本発明のチタン酸化合物粒子の表面へ処理する際の該表面処理剤の量は特に限定されないが、湿式法の場合、チタン酸化合物粒子100質量部に対して表面処理剤が0.1〜20質量%となるように表面処理剤の溶液を噴霧すればよい。また、インテグラルブレンド法の場合は、チタン酸化合物粒子100質量部に対して表面処理剤が1〜50質量部、好ましくは10〜40質量部になるように表面処理剤をゴム成分に配合すればよい。表面処理剤の量を前記範囲内にすることで、ゴム成分との密着性がより一層向上し、チタン酸化合物粒子の分散性をより一層向上することができる。
【0045】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に、上述のゴム用無機充填材を配合してなる、ゴム組成物である。
【0046】
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分は特に限定されないが、強度に優れている観点からジエン系ゴムを用いることが好ましい。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム、これらの変性ゴムが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を含むゴム成分が好ましい。低い転がり抵抗と高いウェットグリップ性とのバランスの観点から、スチレンブタジエンゴム(SBR、変性されていても良い)を用いることが特に好ましい。
【0047】
本発明のゴム組成物における上述の無機充填材の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、5〜70質量部であることがより好ましく、10〜40質量部であることが更に好ましい。この範囲とすることで、より一層優れたウェットグリップ性を得ることができる。
【0048】
本発明のゴム組成物には、補強性充填材として、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム(CaCO)、アルミナ(Al)、アルミナ水和物(Al・HO)、水酸化アルミニウム[Al(OH)]、炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を配合することができる。これら補強性充填材は、いずれか1種又は2種以上を混合して使用することができ、上記のうちでも、カーボンブラック及びシリカを好適に用いることができる。補強性充填材の総配合量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは5〜200質量部、より好適には30〜100質量部である。なお、これらの補強性充填材では、ゴム成分との親和性を向上させるために、該補強性充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0049】
本発明のゴム組成物には、上記各成分に加えて、ゴム業界で通常使用されるゴム薬品を適宜配合することができる。例えば、プロセスオイル等の軟化剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、ステアリン酸、亜鉛華(酸化亜鉛)、スコーチ防止剤、オゾン防止剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、ステアリン酸、加硫遅延剤等を、必要に応じて、通常使用される配合量の範囲内で配合することができる。
【0050】
本発明のゴム組成物は、ロール等の開放式混練機や、バンバリーミキサー等の密閉式混練機等の混練機を用いて混練することによって得られ、成形加工後に加硫を行うことで、各種ゴム製品に適用することが可能である。本発明のゴム組成物は、特に、タイヤ用途として、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等の各部材に用いることができ、これらの中でも、優れたウェットグリップ性を発揮できることから、タイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0051】
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物をトレッド部に使用した点に特徴を有し、これにより、優れたウェットグリップ性を備えるものである。本発明のタイヤにおいては、上記本発明のゴム組成物をトレッド部に用いる以外の点については特に制限はなく、常法に従い適宜構成することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0053】
(製造例1:チタン酸化物粒子A)
硫酸法酸化チタンの製造工程において得られたチタン酸化物粒子1(含水率50%、平均粒子径2.5μm)100gを脱イオン水10Lに分散し分散液を得た。得られた分散液に48質量%水酸化カリウム水溶液を分散液のpHが7になるように添加し攪拌した。攪拌後、固体を濾取、乾燥、篩い通しすることで、チタン酸化物粒子Aを得た。
【0054】
得られたチタン酸化物粒子Aの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−2100)により測定し、比表面積はJIS Z8830により準拠して測定し、結果を表1に示した。
【0055】
得られたチタン酸化物粒子Aの200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率は、サンプル10mgを、セイコーインスツル社製TG−DTAを用いて、窒素気流200ml/分下、10℃/分で40〜1000℃の範囲まで測定し、その結果から200〜800℃の温度範囲における重量減少率を算出し、結果を表1に示した。
【0056】
得られたチタン酸化物粒子AのX線回折チャートを、図1及び図6に示した。測定は、X線回折測定装置(リガク社製、UltimaIV)により行い、2θ=20°〜30°の範囲内にある酸化チタンの結晶面(101)に対応するピークの半値幅を表1に示した。
【0057】
得られたチタン酸化物粒子Aの水分散pH値は、チタン酸化物粒子Aの1質量%スラリー濃度で10分間撹拌後、pH計(HORIBA製、カスタニーラボpHメーターF−21)を分散液に浸し、3分間撹拌後の安定したpH値であり、その結果を表1に示した。
【0058】
(製造例2:チタン酸化物粒子B)
製造例1で得られたチタン酸化物粒子Aを200℃で6時間焼成することで、チタン酸化物粒子Bを得た。
【0059】
得られたチタン酸化物粒子Bの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子BのX線回折チャートを図2及び図6に、半値幅を表1に示した。
【0060】
(製造例3:チタン酸化物粒子C)
製造例1で得られたチタン酸化物粒子Aを400℃で6時間焼成することで、チタン酸化物粒子Cを得た。
【0061】
得られたチタン酸化物粒子Cの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子CのX線回折チャートを図3及び図6に、半値幅を表1に示した。
【0062】
(製造例4:チタン酸化物粒子D)
製造例1で得られたチタン酸化物粒子Aを600℃で6時間焼成することで、チタン酸化物粒子Dを得た。
【0063】
得られたチタン酸化物粒子Dの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子DのX線回折チャートを図4及び図6に、半値幅を表1に示した。
【0064】
(製造例5:チタン酸化物粒子E)
製造例1で得られたチタン酸化物粒子Aを800℃で6時間焼成することで、チタン酸化物粒子Eを得た。
【0065】
得られたチタン酸化物粒子Eの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子EのX線回折チャートを図5及び図6に、半値幅を表1に示した。
【0066】
(製造例6:チタン酸化物粒子F)
硫酸法酸化チタンの製造工程において得られたチタン酸化物粒子2(含水率50%、平均粒子径1.1μm)100gを脱イオン水10Lに分散し分散液を得た。得られた分散液に48質量%水酸化カリウム水溶液を分散液のpHが7になるように添加し攪拌した。攪拌後、固体を濾取、乾燥、篩い通しすることで、チタン酸化物粒子Fを得た。
【0067】
得られたチタン酸化物粒子Fの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子Fの半値幅を表1に示した。
【0068】
(製造例7:チタン酸化物粒子G)
製造例6で得られたチタン酸化物粒子Fを500℃で6時間焼成することで、チタン酸化物粒子Gを得た。
【0069】
得られたチタン酸化物粒子Gの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子Gの半値幅を表1に示した。
【0070】
(製造例8:チタン酸化物粒子H)
硫酸法酸化チタンの製造工程において得られたチタン酸化物粒子2(含水率50%、平均粒子径1.1μm)100gを脱イオン水10Lに分散し分散液を得た。得られた分散液に48質量%水酸化カリウム水溶液を分散液のpHが4になるように添加し攪拌した。攪拌後、固体を濾取、乾燥、篩い通しし、500℃で6時間焼成することで、チタン酸化物粒子Hを得た。
【0071】
得られたチタン酸化物粒子Hの平均粒子径、比表面積、200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率、水分散pH値を表1に示した。チタン酸化物粒子Hの半値幅を表1に示した。
【0072】
なお、表1には、以下に説明する比較例1に用いる酸化チタン(アナターゼ)粒子の比表面積、平均粒子径、半値幅及び200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率も示す。
【0073】
【表1】
【0074】
(実施例1〜13及び比較例1〜2)
加硫促進剤と硫黄を除く表2に記載の成分を、1.5Lの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、140〜170℃に達したときに放出したマスターバッチに表2に記載の割合で加硫促進剤と硫黄を添加して10インチのオープンロールで混練し、組成物を得た。この組成物を金型中で150℃ 、40分間プレス加硫して目的とするゴム組成物の試験サンプルを作製した。
【0075】
なお、表2に記載の主な成分としては、以下のもの用いた。
【0076】
SBR:商品名「RC2557S」、中国石油独山子石化公司社製
ブタジエンゴム:商品名「BR9000」、中国石化斉魯石油化工公司社製
シリカ:商品名「HD165MP」、無錫確成硅化学有限公司社製
カーボンブラック:商品名「N234」、Cabot社製
シランカップリング剤:商品名「Si69」、Evonik Industries AG社製
老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3-ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)
加硫促進剤(DPG):1,3−ジフェニルグアニジン
加硫促進剤(CBS):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0077】
(ウェットグリップ性の評価方法)
上記で得られたゴム組成物の試験サンプル(実施例1〜13及び比較例1〜2)を、ブリティッシュ・ポータブル・スキッドテスターを用いて、室温(25℃)の条件で測定し、比較例2を100にした指数で表示した。数値は大きい程、ウェットグリップ性が優れていることを示す。結果を、表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示すように、本発明におけるチタン酸化物粒子A〜Hを用いた実施例1〜13は、比較例1及び2に比べ、優れたウェットグリップ性を示した。特に、チタン酸化物粒子A〜C及びF〜Hを用いた実施例1〜3及び11〜13は、チタン酸化物粒子D及びEを用いた実施例4及び5よりも優れたウェットグリップ性を示している。
【0080】
(アクロン摩耗の評価方法)
上記で得られたゴム組成物の試験サンプル(実施例1、実施例11〜13及び比較例2)を、アクロン式摩耗試験機及び直径65.0mm、内径12.0mm、厚み12mmのサンプルを使用して、室温(25℃)にて、サンプル回転速度76rpm/min、砥石回転速度34rpm/min、傾角15°、及び荷重1700gの条件下で、摩耗量を測定した。使用した砥石は材質が酸化アルミニウムで形状が直径150mm、内径32mm、厚み25mmであるものを使用した。数値が小さい程、耐摩耗性が優れていることを示す。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
表3に示すように、平均粒子径の小さいチタン酸化物粒子F〜Hを用いた実施例11〜13は、平均粒子径の大きいチタン酸化物粒子Aを用いた実施例1や水酸化アルミを用いた比較例2と比べ、優れた耐摩耗性を示した。また、実施例11と実施例12及び13との比較から、比表面積が小さいチタン酸化物粒子を用いることでより一層優れた耐摩耗性を示していることがわかる。
【要約】
タイヤに用いた場合に、優れたウェットグリップ性能を発揮するゴム用無機充填材、それを含有するゴム組成物、及びそれを用いたタイヤを提供する。
昇温速度10℃/分で40℃から1000℃まで加熱したときの200〜800℃の温度範囲における加熱重量減少率が0.4〜10.0質量%であるチタン酸化物粒子からなる、ゴム用無機充填材であって、好ましくは、チタン酸化物粒子の比表面積は5〜1000m/gであり、チタン酸化物粒子の平均粒子径は10.0μm以下であり、チタン酸化物粒子のX線回折における2θ=20°〜30°の範囲内におけるピークの半値幅が0.10°以上であり、チタン酸化物粒子の水分散pH値が2.0〜11.0であり、チタン酸化物粒子の表面に表面処理剤からなる処理層が形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6