(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227860
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】体形補整機能を備えた下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 1/00 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
A41C1/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-194577(P2012-194577)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-51747(P2014-51747A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】竹島 丈博
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕子
(72)【発明者】
【氏名】牧田 乃里子
【審査官】
藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−239104(JP,A)
【文献】
特開2011−214188(JP,A)
【文献】
特開2012−097361(JP,A)
【文献】
特開平09−059805(JP,A)
【文献】
特開2011−168904(JP,A)
【文献】
特開2009−270215(JP,A)
【文献】
特開2009−057660(JP,A)
【文献】
特開平08−260205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00 − 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経方向及び緯方向に伸縮性を備えた身生地で構成され、少なくとも前身頃と後身頃を備えるとともに体形補整機能を備えた下半身用衣類であって、
後身頃に、
着用状態で、上縁が仙骨下端から左右に略水平に延出し、臀部突出点の下側を経由して、後腸棘点の外側を回って体側上部に到り、下縁が大腿部内側裾部から立ち上がり、臀溝の下方で大腿部背面を横切るように体側下部に延出する曲線を備えた帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第1樹脂被覆部を備え、
前記第1樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片が一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている体形補整機能を備えた軽度の運動用の下半身用衣類。
【請求項2】
後身頃に、
着用状態で、後中心に沿ってウェスト部から仙骨下端に向けて垂下して、前記第1樹脂被覆部と接合するように帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第2樹脂被覆部を備え、
前記第2樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片が一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている体形補整機能を備えた請求項1記載の下半身用衣類。
【請求項3】
前身頃に、
着用状態で、上縁が腸骨稜点より上方の側腹部から臍部にかけてV字状に降下し、下縁が腸骨稜点近傍の側腹部から鼠径部を覆いながら大腿部内側に沿うように裾部にかけて次第に窄まる曲線を備え、側腹部で前記第1樹脂被覆部と接合する帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第3樹脂被覆部を備え、
前記第3樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片が一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている請求項1または2記載の体形補整機能を備えた下半身用衣類。
【請求項4】
前記第3樹脂被覆部の上縁に形成されたV字状の縁部に沿って腹部を被覆する四角形状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第4樹脂被覆部をさらに備えている請求項3記載の体形補整機能を備えた下半身用衣類。
【請求項5】
各樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片がその一辺の長さの約1/3から1/5の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されて構成され、各樹脂被覆片で被覆された領域の身生地の伸縮が各樹脂被覆片で阻止され、各樹脂被覆片の隙間で身生地の伸張が許容される請求項1から4の何れかに記載の体形補整機能を備えた下半身用衣類。
【請求項6】
身生地の編み立て方向の引張り伸度が200%より大きな値に設定されて、前記樹脂片の200%モジュラスが5N/mm2より大きな値に設定されている請求項1から5の何れかに記載の体形補整機能を備えた下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体形補整機能を備えた下半身用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、ガードルに代表される下半身用補整衣類は、膨らみや弛みが生じた腹部を引き締め、下垂した臀部を上方に持上げて美しいボディラインを形成するために、身生地よりも伸縮強度の強い補整用の布地を、臀部突出点の下方周囲や腹部等、引き締める必要がある領域を覆うように、身生地に重畳して配置する構成が主に採用されている。
【0003】
しかし、このような締付力の強い補整用衣類は、着用者に大きな圧迫感を与えるため、本来的に、ジョギングやウォーキング等の軽度の運動時、機器を使用して筋肉に負荷をかけるような運動時の着用には向いていない。
【0004】
近年、健康への関心が高まり、年齢を問わず様々なトレーニングにチャレンジする傾向にあり、着用者の体形を補整し、姿勢を矯正し、運動機能性を向上させるような機能を備えた衣類が注目されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、伸縮性生地を使用した被服の該伸縮性生地の伸びを拘束したい所定の箇所に、伸びを拘束するための樹脂が付与され、伸びの拘束を強く必要とする部分から伸びの拘束を小さくしたい部分に向かうに従って樹脂の面積割合が小さくなった被服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−260205号公報
【特許文献2】実公平7−48644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載された被服は、補整用の布地を身生地に縫着しなくても引き締め効果が得られ、肌触りが良好な被服となるが、具体的な樹脂部の形状は示されていないため、樹脂部がどのような形状であれば、体形補整効果が得られるのか明らかではなく、伸びの拘束を強く必要とする部分で樹脂面積が大きく、伸びの拘束が弱い部分で樹脂面積が小さくなるので、樹脂が配された領域でも、その面積と分布の違いによって肌に与える感触が異なり、着用者に違和感を与えるという問題があった。
【0008】
また、着用者の体形によって樹脂部が当接する位置が異なるため、樹脂面積の大小で拘束されると、適正な補整効果が得られなくなる虞もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、適正な補整効果が得られるとともに、ソフトな着用感を実現し、デザイン性に富んだ体形補整機能を備えた下半身用衣類を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため本発明による体形補整機能を備えた下半身用衣類の特徴構成は、請求項1に記載した通り、経方向及び緯方向に伸縮性を備えた身生地で構成され、少なくとも前身頃と後身頃を備えるとともに体形補整機能を備えた下半身用衣類であって、後身頃に、着用状態で、上縁が仙骨下端から左右に略水平に延出し、臀部突出点の下側を経由して、後腸棘点の外側を回って体側上部に到り、下縁が大腿部内側裾部から立ち上がり、臀溝の下方で大腿部背面を横切るように体側下部に延出する曲線を備えた帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第1樹脂被覆部を備え、前記第1樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片が一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている体形補整機能を備えた
軽度の運動用の下半身用衣類である点にある。
【0011】
身生地に張力が作用すると、多角形の樹脂被覆片で被覆された領域での伸長が大きく抑制されるとともに、樹脂被覆片の間隙で身生地の伸長が許容される。従って、樹脂被覆部全体として張力が作用する方向への伸長が均等に分散して抑制されるので、着用者に違和感が生じることがない。
【0012】
そのような樹脂片と間隙で第1樹脂被覆部が構成されるので、贅肉がつきやすい大腿部内側が適度に緊締されて美しい脚部ラインに補整され、また、臀溝を挟み上下方向に分布する帯状体で臀部突出点の下側及び側方周部が緊締され、良好なヒップアップ効果が得られる。第1樹脂被覆部では、大臀筋や大腿二頭筋等が適度に緊締されて筋肉の伸張収縮運動が軽やかになる。
【0013】
しかも、樹脂被覆部に対して身生地は経方向及び緯方向に十分な伸縮性を備えているので、ボリュームのある体形であっても樹脂被覆部の緊締効果で適正に補整され、余剰の贅肉が樹脂被覆部以外の身生地の伸長で吸収されるので、極端な緊締力が作用せず、脚部から腰周りにかけての様々な運動を阻害することがない。
【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、後身頃に、着用状態で、後中心に沿ってウェスト部から仙骨下端に向けて垂下して、前記第1樹脂被覆部と接合するように帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第2樹脂被覆部を備え、前記第2樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片が一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている体形補整機能を備えた点にある。
【0015】
上述の構成によれば、第1樹脂被覆部によるヒップアップ作用に加えて、さらに、第2樹脂被覆部によって第1樹脂被覆部の左右方向中央部が適正に上方に引き上げられ、左右の臀部突出点との間に凹みが形成され、美しいヒップラインに補整されるようになる。
【0016】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前身頃に、着用状態で、上縁が腸骨稜点より上方の側腹部から臍部にかけてV字状に降下し、下縁が腸骨稜点近傍の側腹部から鼠径部を覆いながら大腿部内側に沿うように裾部にかけて次第に窄まる曲線を備え、側腹部で前記第1樹脂被覆部と接合する帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第3樹脂被覆部を備え、前記第3樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片が一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている点にある。
【0017】
同様に、第3樹脂被覆部によっても大腿部内側が緊締されて美しい脚部ラインに補整され、V字状の帯状部によって側腹部及び下腹部の膨出が抑制され、美しいウエストラインに補整される。樹脂被覆部に対して身生地は経方向及び緯方向に十分な伸縮性を備えているので、ボリュームのある体形であっても樹脂被覆部の緊締効果で適正に補整され、余剰の贅肉が樹脂被覆部以外の身生地の伸長で吸収される点は上述と同様である。
【0018】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の
第三の特徴構成に加えて、前記第3樹脂被覆部の上縁に形成されたV字状の縁部に沿って腹部を被覆する四角形状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第4樹脂被覆部をさらに備えている点にある。
【0019】
第4樹脂被覆部によって臍部周辺の腹部の膨出が抑制されるとともに、腹直筋が持続的に押圧されて、適度な筋肉の伸張収縮動作が促される。
【0020】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、各樹脂被覆部は、複数の多角形の樹脂被覆片がその一辺の長さの約1/3から1/5の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されて構成され、各樹脂被覆片で被覆された領域の身生地の伸縮が各樹脂被覆片で阻止され、各樹脂被覆片の隙間で身生地の伸張が許容される点にある。
【0021】
上述の構成によれば、樹脂被覆部全体として張力が作用する方向への伸長が均等に分散して抑制され、極端に緊締力が強い部分や弱い部分が生じることがないので、着用者に違和感を与えることなく、樹脂被覆部による適度な緊締力が確保できる。
【0022】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、身生地の編み立て方向の引張り伸度が200%より大きな値に設定されて、前記樹脂片の200%モジュラスが
5N/mm2より大きな値に設定されている点にある。
【0023】
樹脂片の応力が大きな値、つまり伸長力が小さな値に設定されているので、樹脂被覆片同士の間隙での身生地の伸長と相俟って適度な緊締力が発現し、この値と身生地の引張り伸度とが好適にバランスし、着用者の体形にかかわらず、引き締めるべき部位は適切に引き締められ、しかも圧迫感を感じることがない下半身用補整衣類となる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、適正な補整効果が得られるとともに、ソフトな着用感を実現し、デザイン性に富んだ体形補整機能を備えた下半身用衣類を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は本発明による体形補整機能を備えた下半身用衣類の正面図、(b)は同側面、(c)は同背面図
【
図2】(a)は本発明による体形補整機能を備えた下半身用衣類の着用状態を示す正面図、(b)は同側面図、(c)は同背面図
【
図3】本発明による下体形補整機能を備えた下半身用衣類のパターン図
【
図4】(a)は多角形の樹脂被覆片が配列された樹脂被覆部の一部分の説明図、(b)はデザイン性を向上させた樹脂被覆部の一部分の説明図
【
図5】多角形の樹脂被覆片が配列された樹脂被覆部の別実施形態を示し、(a)は樹脂被覆片が正方形の樹脂被覆部の説明図、(b)は樹脂被覆片が六角形の樹脂被覆部の説明図、(c)は樹脂被覆片が三角系の樹脂被覆部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の体形補整機能を備えた下半身用衣類を説明する。
図1(a),(b),(c)及び
図3に示すように、下半身用衣類Aは、前身頃1と後身頃2と左右脚部3,4とクロッチ部5を備えている。
【0027】
これらを構成する身生地は、緯編地で構成され、詳しくは重量比でナイロン糸85%、ポリウレタン糸15%を用いた天竺編地で構成されている。当該身生地は、経方向及び緯方向に伸縮性を備え、生地の編み立て方向である経方向の引張り伸度が200%より大きな値に設定されている。つまり、身生地が緯編地の場合はコース方向が編み立て方向となり、身生地が経編地の場合はウエール方向が編み立て方向となる。
【0028】
身生地に緯編地の一種である丸編地を用いることにより前身頃1と後身頃2の接合部に縫着部を備えないシームレス構造に構成することができる。この場合、クロッチ部5から左右の左右脚部3,4内側にかけて縫着すればよい。本実施形態では、
図3に示したようなパターンで裁断され、後中心に沿って縫着される。また、クロッチ部5の肌側には綿の天竺生地が縫着され、直接着用することも可能に構成されている。
【0029】
生地の経方向の引張り伸度とは、着用時に想定される荷重時の伸度を意味し、幅2.5cmの試験片に対して22.1Nの荷重をかけて測定した際の伸び率(%)である。少なくとも経方向の引張り伸度は200%〜400%の範囲であることが好ましく、200%〜300%の範囲であることがさらに好ましい。
【0030】
後身頃2に、第1樹脂被覆部10と、第2樹脂被覆部20とを備え、前身頃1に第3樹脂被覆部30と、第4樹脂被覆部40を備えている。各樹脂被覆部は、身生地の伸長特性を抑制して体形を補整する緊締帯として機能する。以下に詳述する。
【0031】
図2(a),(b),(c)に示すように、後身頃2に、着用状態で、上縁が仙骨下端から左右に略水平に延出し、臀部突出点の下側を経由して、後腸棘点の外側を回って体側上部に到り、下縁が大腿部内側裾部から立ち上がり、臀溝の下方で大腿部背面を横切るように体側下部に延出する曲線を備えた帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第1樹脂被覆部10と、着用状態で、後中心に沿ってウェスト部から仙骨下端に向けて垂下して、第1樹脂被覆部10と接合するように帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第2樹脂被覆部20が配置されている。
【0032】
また、前身頃1に、着用状態で、上縁が腸骨稜点より上方の側腹部から臍部にかけてV字状に降下し、下縁が腸骨稜点近傍の側腹部から鼠径部を覆いながら大腿部内側に沿うように裾部にかけて次第に窄まる曲線を備え、側腹部で第1樹脂被覆部10と接合する帯状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第3樹脂被覆部30を備えている。尚、第1樹脂被覆部10と第3樹脂被覆部30は、大腿部内側で接合されている。
【0033】
さらに、第3樹脂被覆部30の上縁に形成されたV字状の縁部に沿って腹部を被覆する四角形状に形成され、身生地の伸縮性を抑制する第4樹脂被覆部40を備えている。
【0034】
図4(a)に示すように、各樹脂被覆部B(10,20,30,40)は、複数の菱形の樹脂被覆片Cが一定の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されている。
【0035】
身生地に張力が作用すると、菱形の樹脂被覆片Cで被覆された領域での伸長が大きく抑制されるとともに、樹脂被覆片Cの間隙で身生地の伸長が許容される。従って、樹脂被覆部B全体として張力が作用する方向への伸長が均等に分散して抑制されるので、着用者に違和感が生じることがないように構成されている。
【0036】
樹脂片の200%モジュラスが
5N/mm2より大きな値に設定されている。従って、樹脂被覆片C同士の間隙での身生地の伸長と相俟って適度な緊締力が発現し、この値と身生地の引張り伸度とが好適にバランスし、着用者の体形にかかわらず、引き締めるべき部位は適切に引き締められ、しかも圧迫感を感じることがない下半身用補整衣類となる。尚、200%モジュラスとは、200%伸張時の樹脂応力をいい、樹脂の柔らかさを表す値である。
【0037】
第1樹脂被覆部10及び第3樹脂被覆部30により、大腿部内側が適度に緊締されて細身で美しい脚部ラインに補整される。また、第1樹脂被覆部10のうち臀溝を挟み上下方向に分布する帯状体領域で、臀部突出点の下側及び側方周部が緊締され、良好なヒップアップ効果が得られる。
【0038】
さらに、第2樹脂被覆部20によって、第1樹脂被覆部10の左右方向中央部が上方に引き上げられ、左右の臀部突出点との間に凹みが形成され、美しいヒップラインに補整される。第1樹脂被覆部10では、大臀筋や大腿二頭筋等が適度に緊締されて筋肉の伸張収縮運動が軽やかになる。
【0039】
同様に、第3樹脂被覆部30のうちV字状の帯状部によって側腹部及び下腹部の膨出が抑制され、美しいウエストラインに補整される。第4樹脂被覆部40によって臍部周辺の腹部の膨出が抑制されるとともに、腹直筋が持続的に押圧されて、適度な筋肉の伸張収縮動作が促される。
【0040】
樹脂被覆部に対して身生地は経方向及び緯方向に十分な伸縮性を備えているので、ボリュームのある体形であっても樹脂被覆部の緊締効果で適正に補整され、余剰の贅肉が樹脂被覆部以外の身生地の伸長で吸収される点は上述と同様である。
【0041】
しかも、樹脂被覆部Cに対して身生地は経方向及び緯方向に十分な伸縮性を備えているので、ボリュームのある体形であっても樹脂被覆部の緊締効果で適正に補整され、余剰の贅肉が樹脂被覆部以外の身生地の伸長で吸収されるので、極端な緊締力が作用せず、脚部から腰周りにかけての様々な運動を阻害することがない。
【0042】
図4(a)に示すように、各樹脂被覆部Bは、複数の菱形の樹脂被覆片Cがその一辺の長さの約1/3から1/5の間隔を隔てて身生地の表面を被覆するように配列されて構成されている。本実施形態では、菱形の一辺が約8mm、間隔が約2mmに設定されている。
【0043】
各樹脂被覆片Cで被覆された領域の身生地の伸縮が各樹脂被覆片Cで阻止され、各樹脂被覆片Cの隙間で身生地の伸張が許容されるようになり、従って、樹脂被覆部B全体として張力が作用する方向への伸長が均等に分散して抑制され、極端に緊締力が強い部分や弱い部分が生じることがないので、着用者に違和感を与えることなく、樹脂被覆部による適度な緊締力が確保できる。
【0044】
図4(b)に示すように、各樹脂被覆片Cまたはその隙間の形状を僅かに変化させることにより、緊締力を変化させずにデザイン性を向上させることができる。図では、菱形の上下頂部にハートマークが上下対称に付加されている。
【0045】
このような樹脂被覆片の形状は菱形に制限されず、様々な多角形を採用することができる。例えば、
図5(a)に示すような平方形、
図5(b)に示すような正六角形、
図5(c)に示すような三角形等を採用することができる。
【0046】
各樹脂被覆片のサイズは特に制限されず、樹脂被覆部B全体として張力が作用する方向への伸長が均等に分散して抑制され、極端に緊締力が強い部分や弱い部分が生じることがないという作用効果が奏される範囲で適宜設定することができる。
【0047】
樹脂被覆片の材料として、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ナイロン系樹脂等を用いることができる。
【0048】
これらの樹脂の何れかを架橋剤、触媒とともに溶剤に添加して分散または溶解させた原液を身生地表面に塗布し、その後乾燥させることにより樹脂被覆片が形成される。塗布方法は特に制限されず、スクリーン捺染、ロータリー捺染、スプレー法等を採用することができる。
【0049】
上述の実施形態では、身生地にナイロン糸85%、ポリウレタン糸15%を用いた天竺編地を用いた例を説明したが、ナイロン糸とポリウレタン糸の比率はこの値に制限されず、また、他の糸をさらに交編してもよい。例えば、綿糸やレーヨン糸等のセルロース系繊維を交編すれば吸湿性が増し、ポリエステル糸を交編すれば吸水性、速乾性が得られる。また、本発明に用いられる編地は天竺編地に制限されず、伸縮性を備えた編地であればその他の緯編地であってもよく、経編地を用いてもよい。
【0050】
本発明の体形補整機能を備えた下半身用衣類は、上述したような脚部の長さが膝上までのハーフサイズの衣類に限らず、足首まで身生地で被覆するロングサイズの衣類にも適用できる。肌着として直接着用してもよいし、アウターとして着用してもよい。
【0051】
上述の実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、樹脂被覆部の材料、形状、サイズ、被覆法等、また編地の種類、編地の厚さ、使用する糸種や太さ等、具体的な態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、優しい着心地でありながら十分な体形補整効果が得られ、女性一般が軽度の運動等を行なう際に安心して着用できる体形補整機能を備えた下半身用衣類として用いられる。
【符号の説明】
【0053】
A:下半身用衣類
1:前身頃
2:後身頃
3,4:脚部
5:クロッチ部
10:第1樹脂被覆部
20:第2樹脂被覆部
30:第3樹脂被覆部
40:第4樹脂被覆部
B:樹脂被覆部
C:樹脂被覆片