(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0012】
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置1について、
図1及び
図2を参照して説明する。インクジェット記録装置1は、ライン型のインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置1によれば、記録媒体2にフルカラーの画像を記録することができる。本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色によってフルカラーの画像を記録する場合を例に説明する。インクジェット記録装置1は、搬送部10と、記録部20Y,20M,20C,20Kと、制御ボックス30と、インクタンク40Y,40M,40C,40Kと、インク流路50Y,50M,50C,50Kと、分配器60Y,60M,60C,60Kとを備える。
【0013】
搬送部10は、コンベア等のような搬送機構によって構成される。搬送部10は、記録媒体2を、搬送部10の一端側から、記録部20Y,20M,20C,20Kを通過させ、搬送部10の他端側に搬送する。搬送部10は、既に実用化されたインクジェット記録装置が備える搬送部と同様の構成を有する。従って、搬送部10に関するこの他の説明は省略する。
【0014】
記録部20Yは、イエローインクによって画像を記録する記録部である。記録部20Mは、マゼンタインクによって画像を記録する記録部である。記録部20Cは、シアンインクによって画像を記録する記録部である。記録部20Kは、ブラックインクによって画像を記録する記録部である。記録部20Yは、
図2に示すように配置された、複数の記録ヘッド22Yを含む。記録ヘッド22Yには、イエローインクを吐出する複数のノズル24Yが形成される。記録部20Mは、
図2に示すように配置された、複数の記録ヘッド22Mを含む。記録ヘッド22Mには、マゼンタインクを吐出する複数のノズル24Mが形成される。記録部20Cは、
図2に示すように配置された、複数の記録ヘッド22Cを含む。記録ヘッド22Cには、シアンインクを吐出する複数のノズル24Cが形成される。記録部20Kは、
図2に示すように配置された、複数の記録ヘッド22Kを含む。記録ヘッド22Kには、ブラックインクを吐出する複数のノズル24Kが形成される。
【0015】
記録部20Y,20M,20C,20Kのそれぞれに含まれる記録ヘッド22Y,22M,22C,22Kの配置及び総数について、
図2では、3個/列×2列の合計6個としているが、これは例示である。記録ヘッド22Y,22M,22C,22Kの配置及び総数は、諸条件を考慮して適宜決定される。1個の記録ヘッド22Y,22M,22C,22Kのそれぞれに形成されるノズル24Y,24M,24C,24Kの配置及び総数について、
図2では、3個/列×2列の合計6個としているが、これは例示である。ノズル24Y,24M,24C,24Kの配置及び総数は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0016】
記録部20Y,20M,20C,20K及び記録ヘッド22Y,22M,22C,22Kは、それぞれ同一の構成を有する。本実施形態では、記録部20Y,20M,20C,20Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、「記録部20」という。同様に、記録ヘッド22Y,22M,22C,22Kは、「記録ヘッド22」という。ノズル24Y,24M,24C,24Kは、「ノズル24」という。
【0017】
各色用の記録部20は、搬送面12の上方の位置に設けられる。この状態で、各色用の記録部20において、ノズル24が形成された記録ヘッド22の面(吐出面)は、搬送部10の搬送面12にセットされて搬送される記録媒体2の記録面3に対向する。各色用の記録部20は、搬送部10による記録媒体2の搬送方向に隣り合った状態で配列される。各色用の記録部20の配列は、
図1及び
図2とは異なる順序としてもよい。各色用の記録部20の配列順序は、諸条件を考慮して決定される。インクジェット記録装置1において画像の記録が行われる場合、各色のインクは、各色用の記録部20にそれぞれ含まれる記録ヘッド22に形成されたノズル24から、搬送面12にセットされて搬送される記録媒体2の記録面3に向けて吐出される。ノズル24から吐出された各色のインクは、記録面3に着弾する。
【0018】
制御ボックス30は、例えば、制御部(不図示)と、接続インターフェース(不図示)とを含む。制御部は、インクジェット記録装置1を制御する。制御部は、例えば、画像の記録等に関するインクジェット記録方法のための処理を制御する。制御部は、電子部品が搭載された回路基板及び電気配線等を含む。制御部に含まれる少なくとも一部の構成は、記録部20の上部に設けられることもある。接続インターフェースは、インクジェット記録装置1(制御ボックス30)と、パーソナルコンピュータのような外部装置(不図示)とを、データ通信可能に接続するためのインターフェースである。例えば、外部装置からインクジェット記録装置1には、接続インターフェースを介して、記録される画像に対応した画像データが入力される。制御部は、この入力された画像データに従いインクジェット記録方法のための処理を制御する。
【0019】
インクタンク40Y,40M,40C,40Kは、画像の記録に用いられる上述した各色のインクをそれぞれ貯留する。インクタンク40Yは、イエローインクを貯留するインクタンクである。インクタンク40Mは、マゼンタインクを貯留するインクタンクである。インクタンク40Cは、シアンインクを貯留するインクタンクである。インクタンク40Kは、ブラックインクを貯留するインクタンクである。インクタンク40Y,40M,40C,40Kは、同様の構成を有する。本実施形態では、インクタンク40Y,40M,40C,40Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、「インクタンク40」という。
【0020】
インク流路50Y,50M,50C,50Kは、上述した各色のインクが流れる流路である。インク流路50Yは、イエローインクが流れる流路である。インクタンク40Yから流出したイエローインクは、インク流路50Yを流れ、記録部20Yに含まれる複数の記録ヘッド22Yに供給される。インク流路50Mは、マゼンタインクが流れる流路である。インクタンク40Mから流出したマゼンタインクは、インク流路50Mを流れ、記録部20Mに含まれる複数の記録ヘッド22Mに供給される。インク流路50Cは、シアンインクが流れる流路である。インクタンク40Cから流出したシアンインクは、インク流路50Cを流れ、記録部20Cに含まれる複数の記録ヘッド22Cに供給される。インク流路50Kは、ブラックインクが流れる流路である。インクタンク40Kから流出したブラックインクは、インク流路50Kを流れ、記録部20Kに含まれる複数の記録ヘッド22Kに供給される。インク流路50Y,50M,50C,50Kは、同様の構成を有する。本実施形態では、インク流路50Y,50M,50C,50Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、「インク流路50」という。
【0021】
インク流路50は、インク流入流路52と、インク回収流路54と、複数のインク供給流路56とを含む。インク流入流路52、インク回収流路54及びインク供給流路56は、何れも、チューブ又は鋼管等で構成される。インク流入流路52は、インクタンク40と分配器60とを接続し、インクタンク40から分配器60にインクを供給するための流路である。インク回収流路54は、分配器60とインクタンク40とを接続し、分配器60に供給されたインクをインクタンク40に回収するための流路である。インク供給流路56は、分配器60と複数の記録ヘッド22のそれぞれとを接続し、分配器60に供給されたインクを、複数の記録ヘッド22のそれぞれに供給するための流路である。インク流入流路52、インク回収流路54及びインク供給流路56の各流路の流路径(内径)について、例えば、インク供給流路56の流路径は、インク流入流路52及びインク回収流路54の各流路径よりも小さくなるように設定するとよい。インク流入流路52及びインク回収流路54の各流路径は、同一又は同程度になるように設定するとよい。
【0022】
分配器60Y,60M,60C,60Kは、対応する色のインク流路50Y,50M,50C,50Kの途中の位置にそれぞれ設けられ、各色のインクをそれぞれ、記録ヘッド22Y,22M,22C,22Kに分配する。分配器60Y,60M,60C,60Kは、内部に空間が形成された管状の構成を有する。分配器60Y,60M,60C,60Kは、同様の構成を有する。本実施形態では、分配器60Y,60M,60C,60Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、「分配器60」という。
【0023】
<インク供給及びインク循環>
インクジェット記録装置1において、各色用のインクタンク40にそれぞれ貯留された各色のインクがインクタンク40から、対応する色の記録部20に含まれる複数の記録ヘッド22に供給される構成と、各色用のインクタンク40にそれぞれ貯留された各色のインクが循環される構成とについて、
図3を参照して説明する。インクタンク40から記録ヘッド22へのインクの供給は、インク色に関わりなく、以下に示すような構成によって実現される。従って、以下では、インク色を限定することなく説明する。
図3において、インク流路50(インク流入流路52、インク回収流路54及びインク供給流路56)に沿って図示した片矢の矢印は、図示された各範囲において、インクが流れる方向を示す。
【0024】
インクジェット記録装置1は、インクタンク40から、記録部20に含まれる複数の記録ヘッド22に、特定の色のインクを供給し、循環させるための構成として、
図3に示すような各部を備える。具体的に、インクジェット記録装置1は、上述したインク流路50及び分配器60の他、ポンプ90と、複数の供給側バルブ92と、回収側バルブ94とを備える。
【0025】
インク流入流路52は、インクタンク40と分配器60とを接続し、インクタンク40から分配器60にインクを供給するための流路である。インクタンク40から流出したインクは、インク流入流路52を流れ、分配器60に流入する。インク供給流路56は、分配器60と複数の記録ヘッド22のそれぞれとを接続し、分配器60に供給されたインクを、複数の記録ヘッド22のそれぞれに供給するための流路である。分配器60から記録ヘッド22の側に流出したインクは、インク供給流路56を流れ、記録ヘッド22に流入する。インク供給流路56は、1色分の記録部20に含まれる記録ヘッド22の数に対応した数(記録ヘッド22の数の倍数)だけ設けられる。例えば、
図2に示すように特定の色の記録部20が4個の記録ヘッド22を含むとする。この場合、インク供給流路56は、4個の記録ヘッド22に対応して、例えば、4本(1本/記録ヘッド1個)設けられる。インク回収流路54は、分配器60によってインク流入流路52から分岐した流路である。インク回収流路54は、分配器60とインクタンク40とを接続し、分配器60に供給されたインクをインクタンク40に回収するための流路である。
【0026】
分配器60には、流入口62と、共通流路64と、複数の供給口66と、流出口68が形成される。流入口62は、分配器60の一端側に形成された開口である。流入口62には、インク流入流路52が接続される。インク流入流路52を流れるインクは、流入口62から分配器60に流入し、分配器60の内部の共通流路64に供給される。共通流路64は、分配器60の内部に形成された流路である。共通流路64は、分配器60の一端側と他端側との間に延在する。共通流路64は、流入口62と、複数の供給口66と、流出口68に連続する。共通流路64の形状に関し、共通流路64が延在する方向に垂直な断面形状は、共通流路64が延在する方向に一定とされる。この断面形状は、例えば、円形、楕円形又は多角形とされる。
【0027】
供給口66は、分配器60の側面部において、共通流路64が延在する方向に配列された状態で複数設けられる。供給口66は、1色分の記録部20に含まれる記録ヘッド22の数に対応した数だけ設けられる。この点については、上述したインク供給流路56の場合と同様である。この点に関する説明は省略する。複数の供給口66には、インク供給流路56がそれぞれ接続される。流出口68は、分配器60の他端側に形成される。流出口68には、インク回収流路54が接続される。インクを循環させる場合、共通流路64を流れたインクは、流出口68からインク回収流路54の側に流れ、インクタンク40に回収される。
【0028】
ポンプ90は、インクを、インク流路50及び分配器60を介して送液するための送液部である。ポンプ90は、
図3に示すように、インク流入流路52の途中の位置に設けられる。ポンプ90が駆動すると、インクタンク40に貯留されたインクは、インクタンク40から流出し、インク流入流路52と、分配器60と、インク供給流路56を流れて、記録ヘッド22に供給される。また、ポンプ90が駆動してインクタンク40から流出したインクは、インク流入流路52と、分配器60と、インク回収流路54を流れて、インクタンク40に回収される。この場合、インクは、前述した流路等を介して循環される。
【0029】
複数の供給側バルブ92は、複数のインク供給流路56の途中にそれぞれ設けられる。インクジェット記録装置1が備える供給側バルブ92の数は、インク供給流路56の数に一致する。供給側バルブ92は、各々が設けられたインク供給流路56を開閉するためのバルブである。供給側バルブ92は、例えば、電磁弁によって構成される。回収側バルブ94は、インク回収流路54の途中に設けられ、インク回収流路54を開閉するためのバルブである。回収側バルブ94は、例えば、電磁弁によって構成される。
【0030】
供給側バルブ92及び回収側バルブ94の開閉と、開放される場合の開度は、制御部によって制御される。記録ヘッド22にインクが供給される場合、及び、記録ヘッド22にインクが供給されず循環される場合における供給側バルブ92及び回収側バルブ94の開閉について、その概略を説明する。インクジェット記録装置1で記録媒体2に画像が記録される場合、ポンプ90は駆動した状態とされる。回収側バルブ94は、開放及び閉鎖の何れかとされる。複数の供給側バルブ92は、それぞれ開放される。このとき、複数の供給側バルブ92は、それぞれが所定の開度で開放される。回収側バルブ94の開閉は、記録ヘッド22への供給総量に応じて制御される。例えば、ノズル24から吐出されるインクの量が多くなり、その結果、各記録ヘッド22に多くのインクが供給される場合、回収側バルブ94は、閉鎖、又は、僅かに開放された状態とされる。一方、ノズル24から吐出されるインクの量が少なく、その結果、各記録ヘッド22に少しのインクが供給される場合、回収側バルブ94は、例えば、全開又は全開に近い状態とされる。各供給側バルブ92の開度は、供給側バルブ92の全てで同一となるようにしてもよい。また、各供給側バルブ92の開度は、供給側バルブ92のそれぞれで異なる量に調整されるようにしてもよい。インクジェット記録装置1で記録媒体2に画像が記録されない場合、ポンプ90は駆動した状態とされる。回収側バルブ94は、開放される。複数の供給側バルブ92は、それぞれ閉鎖される。
【0031】
供給側バルブ92及び回収側バルブ94の開閉と、開放される場合の開度は、色毎に制御されるようにしてもよい。例えば、モノクロの画像が記録媒体2に記録される場合、ブラックインクの供給及び循環のための供給側バルブ92及び回収側バルブ94のみが制御の対象とされる。ブラック以外の色の供給及び循環のための供給側バルブ92及び回収側バルブ94については、インクジェット記録装置1で画像が記録されない場合と同様にして制御される。
【0032】
脱気モジュール70は、記録ヘッド22に供給するインク中の溶存気体を除去するために設けられるものであり、その構造としては、例えば、中空糸膜からなる分離膜を備えたものである。ここで、中空糸膜を用いた脱気モジュールには、インクの通過経路の違いから、中空糸膜の中空部をインクが通過する内部灌流方式と、中空糸膜の周囲をインクが通過する外部灌流方式とがあるが、本発明においてはいずれの方式であってもよい。
【0033】
インク流入流路52内のフィルタ72は、インク中の不純物を除去するために設けられるものであり、脱気モジュール70の前後に設けられている。
【0034】
継手82、84は、インク流入流路52中に1箇所(継手82)とインク回収流路54中に1箇所(継手84)の合計2箇所に設けられている。継手82よりインクタンク40側に、脱気モジュール70、フィルタ72及びポンプ90を設け、また、インク回収流路54中にも継手84を設けることにより、インクジェット記録装置1から容易に、インクタンク40、脱気モジュール70、フィルタ72及びポンプ90を着脱可能な構成としている。このようにインク置換時に洗浄に時間がかかる機器類をひとまとめにして着脱可能な構成としたため、効率よく洗浄をおこなうことができ、インク置換を短時間で完了することができる。
【0035】
<インク置換>
インクジェット記録装置1におけるインクの置換方法について説明すると、まず、供給側バルブ92を閉め、継手82を外し、そこから加圧エアをインク流入流路52内に吹き込み、インクをインクタンク40に回収する。次に継手84も外して、インクタンク40、脱気モジュール70、フィルタ72及びポンプ90をひとまとめにしてインクジェット記録装置1から取り外す。
【0036】
インクジェット記録装置1から取り外したインクタンク40、脱気モジュール70、フィルタ72及びポンプ90(ユニットAとする)は、洗浄作業をおこなって、その後、置換しようとするインクをインクタンク40に充填しておく。ユニットAはインクジェット記録装置1から取り外してあるので、ヘッド等の破損を危惧することなく、洗浄作業をおこなえるので、短時間にて作業を終了することが出来る。
【0037】
また、ユニットAと同様な構造で洗浄液を充填したユニットBを準備し、取り外したユニットAに換えてインクジェット記録装置1にユニットBを装着する。そして、供給側バルブ92を開き、洗浄液にてインク流路50、分配器60、記録ヘッド22を洗浄する。洗浄作業が完了したら、上記インク回収手順と同様にして、供給側バルブ92を閉め、継手82を外し、そこから加圧エアをインク流入流路52内に吹き込み、洗浄液をユニットBのインクタンク40に回収する。
【0038】
次に、ユニットBをインクジェット記録装置1からユニットAと同様にして取り外し、ユニットBに換えて置換しようとするインクが充填されたユニットAをインクジェット記録装置1に装着する。これによりインク置換が完了する。
【0039】
なお、上記インク置換方法では、ユニットAを洗浄、置換するインクを充填する例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、ユニットをもう1つ追加して、置換前のインクを充填したユニットAと洗浄液を充填したユニットBと置換後のインクを充填したユニットCを使用しても良い。これによれば、ユニットAを洗浄、置換するインクを充填する必要はなく、更なるインク置換の時間短縮が期待できる。