(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227868
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】冷却装置、その冷却装置を備える電子装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20171030BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20171030BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20171030BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 E
H05K7/20 F
H01L23/48 L
H01L23/50 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-273777(P2012-273777)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-120576(P2014-120576A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 博
【審査官】
秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−138113(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/142006(WO,A1)
【文献】
特開2004−311905(JP,A)
【文献】
特開2005−005519(JP,A)
【文献】
特開2005−101259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/48
H01L 23/50
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスと、サーマルグリースを介して取り付けられる冷却装置において、
前記半導体デバイス上面と密着する面内かつ前記半導体デバイスの角部を含む上面が前記サーマルグリースを介して接触する領域において、螺子穴が形成されず、前記半導体デバイスの角部を結んだ対角線に直交し、前記半導体デバイスの角部が接触する部分もしくはその部分の近傍を通過し、その長さを、前記サーマルグリースが塗布される領域の外まで延長した溝部
を備えた冷却装置。
【請求項2】
半導体デバイスと、サーマルグリースを介して請求項1に記載の冷却装置が取り付けられた電子装置。
【請求項3】
半導体デバイス上面と密着する面内かつ半導体デバイスの角部を含む上面がサーマルグリースを介して接触する領域内において、前記半導体デバイスの角部を結んだ対角線に直交し、前記半導体デバイスの角部が接触する部分もしくはその部分の近傍を通過し、その長さを、前記サーマルグリースが塗布される領域の外まで延長した溝部を設けた冷却装置を、基板上の半導体デバイスとサーマルグリースを介して取り付ける
前記半導体デバイスの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの冷却装置に関し、特に、基板上の半導体デバイスにサーマルグリースを介して取り付けられる冷却装置と、その冷却装置を備える電子装置、及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却装置において、サーマルグリースが塗られる面に溝を設け、その溝にサーマルグリースを保持する技術が知られている。
【0003】
その技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された冷却機構は、半導体デバイスとその半導体デバイスをサーマルグリースを介して冷却するための冷却装置を備える。半導体デバイスは、冷却装置に螺子によって固定される。冷却装置は、螺子止め用の螺子穴を有し、さらに、その螺子穴へのサーマルグリースの流入を防止するため、螺子穴の周囲に溝部が形成される。すなわち、冷却装置は、サーマルグリースの一部を溝部へ導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−005519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術は、サーマルグリースの塗布量が溝部から溢れ、螺子穴に届かない量に制限される。さらに、特許文献1に記載された技術は、冷却効果が低下するという問題点がある。すなわち、特許文献1の場合、冷却装置の螺子穴にサーマルグリースが届かないよう、冷却装置の溝によってサーマルグリースの広がりが遮られる構造であるので、結果的に、半導体デバイスと冷却装置との間のサーマルグリースの及ぶ範囲が制限され、冷却効果は低下する。
【0006】
本発明の目的の一例は、上述した問題点を解決できる冷却装置、その冷却装置を備える電子装置及び冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態における冷却装置は、半導体デバイスと、サーマルグリースを介して取り付けられる冷却装置において、前記半導体デバイス上面と密着する面内かつ前記半導体デバイスが前記サーマルグリースを介して接触する領域において、螺子穴が形成されず、前記半導体デバイスの角部が接触する部分もしくはその部分の近傍を通過する溝部を備える。
【0008】
本発明の一形態における電子装置は、基板上の半導体デバイスと、サーマルグリースを介して上記の冷却装置が取り付けられている。
【0009】
本発明の一形態における冷却方法は、半導体デバイス上面と密着する面内かつ半導体デバイスがサーマルグリースを介して接触する領域内において、前記半導体デバイスの角部が接触する部分もしくはその部分の近傍を通過する溝部を設けた冷却装置を、基板上の半導体デバイスとサーマルグリースを介して取り付ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却装置の冷却効果の低下を防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、基板400上の半導体デバイス300とサーマルグリース200を介して冷却装置100が取り付けられた電子装置の一例を示し、(a)はその断面図((b)のA−A断面図)、(b)はその上面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子装置の、稼動した半導体デバイスの発熱時の一例を示し、(a)はその断面図((b)のB−B断面図)、(b)はその上面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す電子装置の、半導体デバイスが常温状態に戻った場合の一例を示し、(a)はその断面図((b)のC−C断面図)、(b)はその上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態の電子装置の一例を示し、(a)はその断面図((b)のD−D断面図)、(b)はその上面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施の形態の電子装置の一例を示し、(a)はその断面図((b)のE−E断面図)、(b)はその上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
ここで、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明の課題について詳しく説明する。前述の特許文献1における冷却効果が低下するという問題点を理解するために、基板上の半導体デバイスを冷却装置に取り付ける一般的な電子装置の構成について説明する。
【0014】
図1は、基板上の半導体デバイスとサーマルグリースを介して冷却装置が取り付けられる一般的な電子装置の一例を示し、(a)はその断面図((b)のA−A断面図)、(b)はその上面図である。図において、電子装置は、基板400に半田付けされた半導体デバイス300の上面に、放熱用の冷却装置100を装着し、ばねなどの機構により固定する。なお、冷却装置100を固定する機構は、
図1および後の説明では省略する。冷却装置100は、例えばヒートシンクやファンである。半導体デバイス300は、サーマルグリース200を介して冷却装置100に接触させる。一般に、半導体デバイス300の上面や冷却装置100の底面に、低コストで凹凸の無い完全に平滑な加工を施すことは、極めて高い工作精度が要求されるため困難である。微細な凹凸の存在は、断熱材であり冷却効率を低下させる原因となる空気層を混入させる。このため、表面の微細な凹凸から空気を排除するために、熱伝導率が高いサーマルグリース200を半導体デバイスの上面に塗布し、その上に放熱用の冷却装置を装着することが一般的である。
図1(b)では、冷却装置100と基板400の間にあるサーマルグリース200と半導体デバイス300は、上面からは見えないので点線で示す(点線は、他の図面も同様とする)。
【0015】
この場合、稼動した半導体デバイス300の発熱に伴い、半導体デバイス300や基板400が膨張する。これは、はんだ付け時の温度に近づき、半導体デバイス300と基板400がもともとの平らな状態に近づく。一方温度が下がると、半導体デバイス300と基板400の熱膨張率の差(基板400の方が、熱膨張率が大きく、半導体デバイス300よりも縮む)により半導体デバイス300が山のように中心が膨らむ現象が発生するからである。
図2は、
図1に示す電子装置の、稼動した半導体デバイスの発熱時の一例を示し、(a)はその断面図((b)のB−B断面図)、(b)はその上面図である。半導体デバイス300および基板400の熱膨張率の違いに基づいて、
図2(a)、(b)に示すように、発熱体である半導体デバイス300の中心から遠い場所すなわち半導体デバイスの角部301a〜301dほど、半導体デバイス300と冷却装置100の間の空隙が狭まる。その結果、角部301a〜301dにおいては、サーマルグリース200をより半導体デバイス300の中心から遠い方向へ押し出そうとする。
【0016】
ここで半導体デバイス300が常温状態に戻った場合、半導体デバイス300や冷却装置100が収縮し、半導体デバイス300と冷却装置100の間の狭まった空隙が元の幅に広がる。
図3は、
図2に示す電子装置の、半導体デバイスが常温状態に戻った場合の一例を示し、(a)はその断面図((b)のC−C断面図)、(b)はその上面図である。しかし、一旦押し出されたサーマルグリース200は、その粘性のため完全に元の空隙に戻ることができない。この結果、
図3(b)に示すように、広がった空隙に空気溜まり201a〜201dが発生し、サーマルグリース200が充填されない空間が発生する。この空間は、熱伝導率がサーマルグリース200で満たされた空間よりも低いため、冷却装置100の冷却効果が低下する。また、特許文献1に記載された技術は、半導体デバイス角部の螺子穴周辺にサーマルグリースが介在しないため、冷却効果が低下する。特に、特許文献1に記載された技術は、半導体デバイスの角部における冷却装置の冷却効果が低下するという問題点がある。
【0017】
本発明の各実施の形態は、このような問題点を解決する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図4は、本発明の第1の実施の形態における電子装置の一例を示し、(a)はその断面図((b)のD−D断面図)、(b)はその上面図である。
図4を参照すると、電子装置は、基板400に半田付けされた半導体デバイス300の上面に、放熱用の冷却装置100を装着し、図示しないばねなどの固定機構により固定する。冷却装置110は、例えば、放熱効果を高めたラジエータ部が形成された熱伝導率が高いヒートシンク、またはファンを有する固体である。半導体デバイス300は、サーマルグリース200を介して冷却装置100に接触させる。
【0019】
冷却装置110の、半導体デバイス300の上面と密着する面内において、半導体デバイス300の角部301aと301c、角部301bと301dを結んだ対角線上の部位に、溝部111a〜111dを各角部に対して一本ずつ設ける。溝部111a〜111dは、それぞれの角部301a〜301dから対角線の交点に向かって距離2.0mmの位置に、対角線に直交するように幅0.5mm、深さ0.5mm、長さ8.0mmで形成される。なお、この溝部の幅および深さは0.5mm、長さ8.0mmとしているが、これに限定するものではない。溝の本数も一本に限らず複数でも構わない。また、
図4に示す溝部111a〜111dの形状は、直線としているが、直線に限らない。たとえば、各溝は、半導体デバイス300の対角301aと301c、301bと301dを結んだ対角線に直交するように交差すれば、折れ線形状、曲線形状のいずれの形状でも構わない。また、溝部を設ける位置は、
図4ではそれぞれの角部301a〜301dから対角線の交点に向かって距離2.0mmの位置としているが、各々の材質や環境条件により空気溜まりが発生する位置が異なるので、この位置に限定せず、適宜変更してよい。
【0020】
次に、本発明の第1の実施の形態の効果について説明する。
【0021】
上述した本実施形態における冷却装置110は、冷却効果が低下する可能性を低減できる。
【0022】
その理由は、以下のような構成を含むからである。即ち、第1に基板400上の半導体デバイス300とサーマルグリース200を介して冷却装置110が取り付けられた際、サーマルグリース200は溝部111a〜111dの内部に浸入する。第2に、半導体デバイス300の発熱に伴う半導体デバイス300や冷却装置110の膨張収縮現象が発生した場合、冷却装置110に設けられた溝部111a〜111dが冷却装置110とサーマルグリース200との接触面積の増加に寄与する。これにより、冷却装置110のサーマルグリース200を保持する力が増大し、冷却装置110は空気溜まりが発生する確率を大幅に減らすことができるので、冷却装置110の冷却効果の低下を低減できるという効果が得られる。
【0023】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。
【0024】
図5は、本発明の第2の実施の形態の電子装置の一例を示し、(a)はその断面図、((b)のE−E断面図)、(b)はその上面図である。
【0025】
図5を参照すると、本実施形態における冷却装置120は、第1の実施形態のそれと比べて、溝部111a〜111dの代わりに溝部121a〜121dを備える。
【0026】
溝部121a〜121dは、溝部111a〜111dの長さをサーマルグリース200が塗布される領域の外まで十分延長し設けた溝部である。溝部121a〜121dの幅、深さ、本数、位置は第1の実施の形態の溝部111a〜111dと同様である。溝部111a〜111dを延長して設けられる溝部121a〜121dの長さは、サーマルグリースの塗布量や各々の材質や環境条件により変化するが、サーマルグリース200が塗布される領域の外まで十分延長されていればよい。
【0027】
次に、本発明の第2の実施の形態の効果について説明する。
【0028】
上述した本実施形態における冷却装置120は、第1の実施の形態における冷却装置110よりも効果的に冷却効果の低下を低減できる。
【0029】
その理由は、以下のような構成を含むからである。即ち、基板400上の半導体デバイス300とサーマルグリース200を介して冷却装置120が取り付けられた際、第1の実施の形態における冷却装置110と同様、サーマルグリース200は溝部121a〜121dの内部に浸入する。この際、第1の実施の形態における冷却装置110では、溝部111a〜111dの内部に存在している空気がサーマルグリース200の溝部111a〜111d内部への速やかな浸入を阻害する可能性がある。ここで第2の実施の形態における冷却装置120では、基板400上の半導体デバイス300とサーマルグリース200を介して冷却装置120が取り付けられる時に、溝部121a〜121dの内部に存在している空気は、溝内部を通って、サーマルグリース200が塗布される領域の外へサーマルグリース200によって押し出される。したがって、サーマルグリース200は速やかに溝部121a〜121dの内部に浸入するので、第1の実施の形態における冷却装置110よりも効率的に冷却効果が低下する可能性を低減できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、基板上の半導体デバイスとサーマルグリースを介して取り付けられる冷却装置に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
100、110 冷却装置
111a、111b、111c、111d、121a、121b、121c、121d 溝部
200 サーマルグリース
201a、201b、201c、201d 空気溜まり
300 半導体デバイス
301a、301b、301c、301d 角部
400 基板