(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記剥離防止手段は、前記ガセットプレートと前記対向プレートの間であって前記フランジがない位置にスペーサを介在させて、該ガセットプレートと該対向プレートをボルトで締め付けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の骨組構造。
前記剥離防止工程では、前記ガセットプレートと前記対向プレートの間であって、前記スペーサの一部と、前記柱材の一部又は前記梁材の一部が当接するように該スペーサを配置し、該スペーサを前記ガセットプレートに接着固定することを特徴とする請求項8記載の骨組構造の補強方法。
【背景技術】
【0002】
我が国は地震が頻発する国として知られ、近年では、東北地方太平洋沖地震や、兵庫県南部地震、新潟県中越地震など大きな地震が発生し、そのたびに甚大な被害を被っている。工場などの生産施設は、大地震による被害を受けて生産機能が停止した場合、機能回復までに時間がかかり、関連する企業も含め大きな影響を受けることとなる。
【0003】
このような生産施設の建物では、一般的に、H形鋼や鋼管など鉄骨を主体とするいわゆる鉄骨構造で構築されている。
図13(a)は、代表的な鉄骨構造の一部を示す側面図である。この図に示すように鉄骨構造は、柱材Pと梁材Bからなるのが基本構造である。
【0004】
この基本構造には、耐震などの目的から補強材が設置されることがある。この補強材の代表例として
図13(a)に示すような斜材Cを挙げることができる。この斜材Cは、山形鋼や溝形鋼あるいは鋼棒などが用いられることが多く、これを配置することによって柱材Pと梁材Bで構成される面内構造が補強され、その結果、外力に対してより抵抗できるようになるわけである。斜材Cの他には、補強材として方杖材を挙げることができる。柱材PがH形鋼のように方向性を持つ部材である場合、斜材Cが柱材Pの弱軸方向を補強するのに対して、方杖材は柱材Pの強軸方向を補強する部材である。方杖材としては、斜材Cと同様、山形鋼や溝形鋼などが用いられる。
【0005】
従来の斜材Cは、
図13(a)に示すように、対角状に配置されるとともに、その端部が柱材Pと梁材Bからなる隅角部に固定されていた。
図13(b)に、斜材C端部を固定した詳細を示す。この図に示すように、隅角部にはガセットプレートGpが溶接固定され、このガセットプレートGpに斜材Cの端部がボルト固定され、斜材Cは設置される。一方、方杖材の場合は、柱材Pに溶接固定されたガセットプレートと、梁材Bに溶接固定されたガセットプレートに、方杖材の両端部がボルト固定されて設置される。このように、従来の方法によれば斜材Cや方杖材を設置するためには溶接作業が必要となる。
【0006】
斜材Cや方杖材は、あらかじめ柱材Pや梁材Bと同時に設置される場合もあるが、供用中の鉄骨造建物を補強する目的で事後的に設置されることもある。事後的に斜材Cや方杖材を設置する場合、その設置作業に欠かせない溶接作業が問題になることがある。溶接作業は火気を伴うため、供用中の鉄骨造建物内(以下、単に「室内」という。)に引火しやすい物を保管しているなど、火気を敬遠している場合にはこの作業を行うことができない。また、稼働中の生産施設である場合、生産工程に影響を及ぼすためやはり溶接作業は採用し難い。さらに、既存の鉄骨構造が溶接に不向きな部材で構成されている場合も、斜材Cや方杖材を設置するのは困難である。なお溶接に不向きな部材とは、例えば、溶接時の熱に耐えられない薄肉部材などである。
【0007】
そこで特許文献1では、溶接作業を必要としない耐震補強工法を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記したように従来の斜材や方杖材による補強技術は、溶接に起因する種々の問題を抱えていた。また、溶接を必要としない特許文献1にも、次のような問題が挙げられる。
【0010】
特許文献1の技術は、摩擦接合を利用したものであり、梁材のフランジ部分を上下の添板で挟み、高力ボルトでこれらを締め付けるものである。下添板にはあらかじめ工場溶接されたガセットプレートが固定されているので、これに補強材をボルト固定することができる。なお、高力ボルトで上下添板を締め付ける際、フランジがない隙間部分にはスペーサが配置される。このように、高力ボルトによる摩擦接合を用いることで、溶接作業のない補強が可能となる。しかしながら特許文献1の技術を用いるのは、梁材や柱材がフランジ(あるいはフランジに相当する薄板部分)を有する部材である場合に限られ、鋼管等フランジのない部材によって梁材や柱材が形成されている場合には本技術を採用することができない。また、ガセットプレート(つまり下添板)の取り付けには高力ボルトが必要であり、作業空間が狭隘であるときには、極めて施工性が悪いという問題も挙げられる。
【0011】
本願発明では、従来の溶接による手法に代えて、ガセットプレートを柱材P等に接着固定する手法に着目したが、この場合も次のような問題が掲げられる。一つ目は、接着強度の方向性の問題である。例えば、ガセットプレートをH形鋼のフランジに接着した場合、せん断方向(プレートとフランジの接着面にずれる方向)には相当の抵抗力を発揮することが期待できるが、柱材のブレース方向に直交する方向(つまり、プレートとフランジを引き剥がす方向で、以下これを、「面外方向」という。)に関してはあらゆる外力に抵抗するには十分とはいえない。したがって、面外方向の剥離対策を講じる必要があるという問題が指摘できる。
【0012】
二つ目は、高温状態における接着力低下の問題である。通常、接着剤は高温になると接着強度が低下する。これを解決するためには、高温状態を予定してある程度大きな接着面積を確保し、あらかじめ高強度の接着力を与えておくことが考えられる。しかしながら現実には、接着面積はH形鋼のフランジ幅等によって制限されるので、設計できる接着力には限度がある。したがって高温状態を想定した、せん断方向に生ずる剥離(以下、「せん断方向のずれ」という。)対策を講じる必要があるという問題が指摘できる。
【0013】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、斜材や方杖材の設置の際に溶接作業を必要とせず、しかも柱材や梁材がフランジのない部材の場合にも採用可能であって、面外方向の剥離及びせん断方向のずれを防止し得る、骨組構造、及び骨組構造の補強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、接着によってガセットプレートを柱材等に取り付け、さらにガセットプレートの剥離防止も図るという発想に基づいて行われたものである。
【0015】
本願発明の骨組構造は、少なくとも柱材と梁材と補強材を含む構造である。柱材又は梁材には接合部が設けられており、補強材の一端(又は両端)はこの接合部に取り付けられる。接合部は、補強材を連結するためのガセットプレートと剥離防止手段を備えており、ガセットプレートの一部が柱材(又は梁材)に接着される。剥離防止手段は、柱材(又は梁材)を挟むように配置したガセットプレートと対向プレートを、ボルトで締め付ける構成となっている。この剥離防止手段によって、例えば柱材に面外方向の力が作用した場合であっても、ガセットプレートの剥離を防止することができる。
【0016】
本願発明の骨組構造は、柱材(又は梁材)の一部(例えばフランジなど)を挟む剥離防止手段を用いることもできる。この場合の剥離防止手段は、柱材(又は梁材)の一部分を挟むようにガセットプレートと対向プレートを配置し、さらにガセットプレートと対向プレートの間のうち柱材(又は梁材)の一部が存在しない隙間にはスペーサを介在させ、これらを高力ボルト以外のボルトで締め付けた構成となる。このとき、スペーサの一部と柱材(又は梁材)の一部が当接するようにスペーサを配置したうえで、ガセットプレートにスペーサを接着固定した構成とすることもできる。この場合、ガセットプレートのせん断方向のずれ防止が補強できるので好適となる。
【0017】
本願発明の骨組構造は、ガセットプレートと対向プレートの組み合わせによる剥離防止手段に代えて、2枚のガセットプレートによる剥離防止手段を用いることもできる。この場合の剥離防止手段は、柱材(又は梁材)を挟むように2枚のガセットプレートを配置し、これらガセットプレートをボルトで締め付けた構成となる。
【0018】
本願発明の骨組構造は、柱材の外周を取り巻くような形状のボルト(以下、「U形ボルト等」という。)による剥離防止手段を用いることもできる。この場合の剥離防止手段は、柱材(又は梁材)を巻きつけるようにU形ボルト等を配置し、このU形ボルト等によってガセットプレートを固定した構成となる。
【0019】
本願発明の骨組構造は、補強材を斜材とした構成とすることもできる。この場合の柱材(又は梁材)は、斜材が設置される面内方向と略平行な面を有するものを選択し、ガセットプレートは、柱材(又は梁材)のうち、この面内方向と略平行な面に接着される。
【0020】
本願発明の骨組構造は、補強材を方杖材とした構成とすることもできる。この場合の柱材(又は梁材)は、方杖材が設置される面内方向と略垂直な面を有するものを選択し、ガセットプレートは、柱材(又は梁材)のうち、この面内方向と略垂直な面に接着される。
【0021】
本願発明の骨組構造の補強方法は、少なくとも柱材と梁材を含む骨組構造に対して補強を行う方法である。柱材(又は梁材)に接合部を設置し(接合部設置工程)、この接合部のうちのガセットプレートに補強材の一端(又は両端)を連結する(補強材連結工程)。接合部設置工程は、ガセットプレートの一部を柱材(又は梁材)に接着する工程(接着工程)と、柱材(又は梁材)を挟むようにガセットプレートと対向プレートを配置するとともに、これらをボルトで締め付ける工程(剥離防止工程)を備えている。
【0022】
本願発明の骨組構造の補強方法は、柱材(又は梁材)の一部(例えばフランジなど)を挟むようにガセットプレートと対向プレートを配置するとともに、ガセットプレートと対向プレートの間のうち柱材(又は梁材)の一部が存在しない隙間にスペーサを配置し、これらをボルトで締め付ける工程(剥離防止工程)を備えることもできる。
【0023】
本願発明の骨組構造の補強方法は、ガセットプレートと対向プレートの間であって、スペーサの一部と柱材(又は梁材)の一部が当接するようにスペーサを配置し、ガセットプレートにスペーサを接着固定する工程(剥離防止工程)を備えることもできる。
【0024】
本願発明の骨組構造の補強方法は、柱材(又は梁材)を挟むように2枚のガセットプレートを配置し、これらをボルトで締め付ける工程(剥離防止工程)を備えることもできる。
【0025】
本願発明の骨組構造の補強方法は、柱材(又は梁材)を巻きつけるようにU形ボルト等を配置し、このU形ボルト等によってガセットプレートを固定する工程(剥離防止工程)を備えることもできる。
【0026】
本願発明の骨組構造の補強方法は、補強材として斜材を選択し、柱材(又は梁材)のうち、斜材が設置される面内方向と略平行な面に、ガセットプレートの一部を接着する工程(接着工程)を備えることもできる。
【0027】
本願発明の骨組構造の補強方法は、補強材として方杖材を選択し、柱材(又は梁材)のうち、方杖材が設置される面内方向と略垂直な面に、ガセットプレートの一部を接着する工程(接着工程)を備えることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本願発明の「骨組構造、及び骨組構造の補強方法」には、次のような効果がある。
(1)補強材を設置するので、柱材と梁材のみの骨組構造に比して、強度の高い構造が得られる。その結果、地震等の外力に対する抵抗力が向上し、より安心して鉄骨造建物等を利用することができる。
(2)溶接作業を必要としないので火災の心配がなく、あらゆる鉄骨造建物等に採用することができる。例えば、引火しやすい物を保管している倉庫や、薬品を取り扱う施設などにも採用することができる。
(3)また、溶接作業を必要としないので室内へ与える影響が小さく、対象が生産施設などの場合、継続して生産活動を行うことができる。
(4)柱材や梁材の種類によらず採用することができる。フランジあるいはこれに相当する薄板部分がない部材、例えば角形鋼管などで柱材や梁材が形成されていても、本願発明の「骨組構造、及び骨組構造の補強方法」を利用することができる。
(5)少なくともガセットプレートの取り付けには高力ボルトを使用しないので、作業空間が狭隘な場合であっても施工性が劣悪になることはない。
(6)剥離防止手段を備えているので、面外方向の外力によってガセットプレートが剥離するのを防止することができる。
(7)スペーサをガセットプレートに接着固定することで、スペーサもせん断抵抗を負担するため、高温状態でもせん断方向の力に抵抗することができる。
(8)補強材を設置する面内において、柱材等のうち面内方向と略平行する表面にガセットプレートを接着固定することで、補強材として斜材を設置することができるうえ、柱材等のうち面内方向と略垂直な表面にガセットプレートを接着固定することで、補強材として方杖材を設置することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明の骨組構造、及び骨組構造の補強方法の例を図に基づいて説明する。
【0031】
1.全体概要
図1は、本願発明の骨組構造の一例を示す側面図であり、(a)は斜材31を設置した場合、(b)は方杖材32を設置した場合の側面図である。この骨組構造は、オフィスビルや工場施設といった建造物を構成する主要構造の一部であり、柱材10、梁材20、そして斜材31や方杖材32などの補強材30によって形成される。
図1に示すように、2本の柱材10は床部FLから略鉛直に立ち上げられ、梁材20は床面から離れた位置で略水平に配置され、補強材30は柱材10と梁材20からなるフレーム内に対角状あるいは斜方向に設置される。
【0032】
2本の柱材10の間隔や床面から梁材20までの高さは、対象となる建造物に応じて適宜設計することができるが、例えば通常の生産施設の場合、柱材10の間隔として5〜6m、梁材20の設置高さとして3〜4mを例示することができる。
図1は、あくまで本願発明を示す一例であって、本願発明の技術的特徴を備えていれば、この図に限らずあらゆる配置が本願発明の範囲内にある。
【0033】
図1に示すように、2本の補強材30(斜材31や方杖材32)は、柱材10と梁材20からなる直交軸(以下、「主軸」という。)に対して角度をもって配置され、その端部は柱材10等に取り付けられている。より具体的には、柱材10に接着固定されたガセットプレート41に、補強材30の端部がボルト固定されることで、補強材30は柱材10に取り付けられる。なお、後に説明するように梁材20にガセットプレート41を接着固定し、このガセットプレート41に補強材30をボルト固定することもできる。
【0034】
補強材30は、建造物の建設時から柱材10や梁材20とともに設置することもできるが、既に供用している建造物を補強する目的で事後的に設置することもできる。
【0035】
以下、本願発明を構成する要素ごとに詳述する。
【0036】
2.柱材
柱材10は、おもに水平荷重による曲げモーメント、せん断力や軸力に対して抵抗する部材であり、梁材20を支持する支点としての働きもある。そのため柱材10として使用する部材は、このような性能を発揮するものであり、H形鋼や角形鋼管などを例示することができる。もちろんH形鋼や角形鋼管にかぎらず、建造物の規模や形状に応じて、山形鋼や溝形鋼といった他の形鋼や、円形鋼管などの部材を柱材10とすることもできる。なお、後に説明するようにガセットプレートを接着する場合は、少なくともその接着面が平坦面(極端な曲面でない程度の面)である柱材10を用いることが望ましい。
【0037】
3.梁材
梁材20は、おもに鉛直荷重による曲げモーメントやせん断力に対して抵抗する部材である。
図1に示す梁材20は天井の梁となっているが、これが多層階の建造物であれば上階の床面を支える梁となる。従って梁材20は、床上の人や物の重量を直接負担する部材といえる。そのため梁材20として使用する部材は、このような性能を発揮するものであり、H形鋼などを例示することができる。もちろんこの場合もH形鋼にかぎらず、建造物の規模や形状に応じて、山形鋼や溝形鋼といった他の形鋼や、角形鋼管や円形鋼管などの部材を梁材20とすることもできる。なお、後に説明するようにガセットプレートを接着する場合は、少なくともその接着面が平坦面(極端な曲面でない程度の面)である梁材20を用いることが望ましい。
【0038】
4.補強材
補強材30は、柱材10と梁材20で構成される面内構造を補強するもので、具体的には斜材31や方杖材32といった部材である。
図1(a)に示す補強材30は、主軸に対して角度をもって配置されることから斜材あるいはブレース材とも呼ばれる。一方、
図1(b)に示す補強材30は、梁材20を下方から支持して補強するもので、方杖材と呼ばれる。補強材30は、おもに軸引張力や軸圧縮力が作用することから、部材軸方向に相当の強度を有する部材を使用する。例えば、溝形鋼や山形鋼あるいは鋼棒などが例示できるが、そのほかH形鋼や鋼管など種々の部材を使用することができる。なお、補強材30として鋼棒を使用する場合、部材途中にターンバックルを設け、長さ調整を可能にすることもできる。
【0039】
5.接合部
図2〜
図9は補強材30を柱材10に取り付けるための接合部40を示す詳細図である。以下、補強材30が斜材31の場合、補強材30が方杖材32の場合に分けて説明する。なお説明の便宜上ここでは、補強材30を設置する柱材10と梁材20で構成される平面を単に「面」といい、この面上に描ける方向を「面内方向」、既述のとおりこの面に対する垂直方向を「面外方向」ということとする。従って、
図2及び
図4は接合部40を面外方向から見た斜視図、
図3及び
図5は接合部40を面内方向から見た斜視図となる。
【0040】
(斜材の場合の接合部)
図2〜
図5は斜材31を柱材10に取り付けるための接合部40(以下、「斜材用の接合部40」という。)を示す詳細図であり、このうち
図2と
図3は柱材10がH形鋼の場合であり、
図4と
図5は柱材10が角形鋼管の場合である。通常、
図2や
図3に示す柱材10がH形鋼の場合は、斜材31がH形鋼の弱軸方向を補強する補強材となるよう配置される。すなわち斜材31は、柱材10及び梁材20から構成される「面」に設置されるが、この「面」の面内方向はH形鋼の弱軸方向と一致する。
【0041】
図2〜
図5に示すように斜材用の接合部40は、ガセットプレート41と剥離防止手段42によって構成される。なお、
図2〜
図5ではすべて斜材用の接合部40が柱材10に設けられているが、これに限らず斜材用の接合部40を梁材20に設けることもできる。例えば
図10に示すように、水平方向に配置した斜材31(いわゆる水平ブレース)を梁材20間に取り付けることができる。具体的には、斜材31の一端を梁材20に設けられた斜材用の接合部40に取り付け、斜材31の他端を他の梁材20の斜材用の接合部40に取り付ける。
【0042】
斜材31の両端ともに斜材用の接合部40に取り付ける場合に限らず、一端のみを斜材用の接合部40に取り付けることもできる(図示しない)。既存のガセットプレートが柱材10等に溶接固定されている場合、斜材31の一端はこれを利用して取り付け、他端のみ斜材用の接合部40に取り付けるわけである。
【0043】
(方杖材の場合の接合部)
図6〜
図9は方杖材32を柱材10に取り付けるための接合部40(以下、「方杖材用の接合部40」という。)を示す詳細図であり、このうち
図6と
図7は柱材10がH形鋼の場合であり、
図8と
図9は柱材10が角形鋼管の場合である。通常、
図6や
図7に示す柱材10がH形鋼の場合は、方杖材32がH形鋼の強軸方向を補強する補強材となるよう配置される。すなわち方杖材32は、柱材10及び梁材20から構成される「面」に設置されるが、この「面」の面内方向はH形鋼の強軸方向と一致する。
【0044】
図6〜
図9に示すように方杖材用の接合部40も、ガセットプレート41と剥離防止手段42によって構成される。通常、
図6や
図8に示すように方杖材32は、一端が柱材10に設けられた方杖材用の接合部40に取り付けられ、他端が梁材20に設けられた方杖材用の接合部40に取り付けられる。その他、方杖材32の両端が方杖材用の接合部40に取り付けられる場合に限らず、一端のみを方杖材用の接合部40に取り付けることもできる。既存のガセットプレートが柱材10等に溶接固定されている場合、方杖材32の一端はこれを利用して取り付け、他端のみ方杖材用の接合部40に取り付けるわけである。
【0045】
5−1.接合部を構成する各要素
以下、接合部40を構成する要素ごとに詳しく説明する。ここでは、接合部40を柱材10に設ける場合で説明しているが、接合部40を梁材20に設ける場合も同様である。また、柱材10(又は梁材20)がH形鋼の場合と角形鋼管の場合を例示して説明しているが、フランジあるいはこれに相当する薄肉部分(以下、「フランジ等」という。)を有する部材の代表例としてH形鋼で説明し、フランジ等を有さない部材の代表例として角形鋼管で説明しているだけであって、本願発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0046】
5−2.ガセットプレート
ガセットプレート41は、
図2や
図4に示すように、大きく接着部41aと連結部41bに分けられる。接着部41aは柱材10表面に接触する部分で、連結部41bは補強材30の端部を実際に取り付ける部分である。
【0047】
ガセットプレート41は、その接着部41aに接着剤が塗布されて柱材10の表面に貼り付けられる。この場合、接着部41a全体に接着剤を塗布することもできるが、設計上必要な面積に塗布することができれば接着部41aのうち一部にのみ接着剤を塗布してもよい。また、接着剤の塗布厚も適宜設計により定めることができるが、鉛直面に塗布することからできる限り薄く塗布することが望ましく、2mm以内の塗布厚とするのがより好ましい。接着強度の設計をする場合、接着部41a全体に接着剤を塗布したとしても、
図2の破線で示す有効円(接着部41aに内接する円形)を接着面積として強度計算することも安全設計という面から考えると好ましい。柱材10の表面にガセットプレート41を貼り付ける際、ショットブラストやワイヤーブラシ等により柱材10の表面を凹凸に仕上げると、より堅固に接着できるため好適となる。このときの表面粗さの目安としては、Rz(最大高さ)20程度が例示できる。なお、柱材10の表面に代えて(あるいは加えて)ガセットプレート41の接着面を凹凸仕上げとすることもできる。
【0048】
ここで使用する接着剤は、従来から用いられているものの中から任意に選択できるが、垂直面に塗布してもその状態を維持しやすい(いわゆる「ダレない」)ものが望ましく、例えば二液混合形のエポキシ系接着剤を示すことができる。また、24時間以内に硬化する接着剤を選択すると、後続の工程に与える影響を抑えることができるので、より好適である。
【0049】
(斜材の場合のガセットプレート)
斜材31を設置する場合のガセットプレート41(以下、「斜材用のガセットプレート41」という。)について、さらに詳しく説明する。斜材用のガセットプレート41は、
図2や
図4に示すように、一つの材料(例えば、1枚の平鋼など)で接着部41aと連結部41bを形成する。柱材10表面に接触する部分が接着部41aであり、柱材10から張り出した部分が連結部41bである。
【0050】
図2や
図3に示す柱材10がH形鋼の場合、既述のとおり斜材31を設置する面内方向はH形鋼の弱軸方向と一致し、このH形鋼のフランジ表面に斜材用のガセットプレート41は接着される。つまり、斜材用のガセットプレート41は、柱材10のうち面内方向と略平行(平行含む)な表面(この場合はフランジ)に接着される。なお、
図2や
図3では両フランジ部分にガセットプレート41を接着固定し、それぞれ斜材用のガセットプレート41に補強材30(つまり2本の補強材30)を取り付けているが、フランジ片面にのみ斜材用のガセットプレート41を接着固定し、補強材30を1本だけ取り付けることもできる。また、図に示すようにフランジ表面(外側面)に斜材用のガセットプレート41を接着固定する場合に限らず、フランジの内側に斜材用のガセットプレート41を接着固定することもできる。ただしこの場合、接着面積が確保し難いので、接着部41aを鉛直方向に長くするなど、設計上必要な接着面積を確保できる寸法・形状を選択する。
【0051】
図4や
図5に示す柱材10が角形鋼管の場合も、斜材用のガセットプレート41は、柱材10のうち面内方向(斜材31を設置する柱材10及び梁材20から構成される面内方向)と略平行(平行含む)な表面に接着される。具体的には、斜材用のガセットプレート41のうちの接着部41aを角形鋼管の側面(面内方向に平行する面)に当てて接着する。なお、
図4や
図5では両側面に斜材用のガセットプレート41を接着固定し、それぞれ斜材用のガセットプレート41に補強材30(つまり2本の補強材30)を取り付けているが、H形鋼の場合と同様、一方の側面にのみ斜材用のガセットプレート41を接着固定し、補強材30を1本だけ取り付けることもできる。例えば、建造物が既に供用中で、角形鋼管のうち一方の側面に他の施設等が設置されている場合など、片側のみ斜材用のガセットプレート41を接着固定する。
【0052】
(方杖材の場合のガセットプレート)
次に、方杖材32を設置する場合のガセットプレート41(以下、「方杖材用のガセットプレート41」という。)について、さらに詳しく説明する。方杖材用のガセットプレート41は、
図7や
図9に示すように、接着プレートと連結プレートの二つの材料(例えば、2枚の平鋼など)からなり、接着プレートには接着部41aが形成され、連結プレートには連結部41bが形成される。接着プレートは柱材10表面に接着され、連結プレートは接着プレートに略垂直(垂直含む)に突き当てて固定される。なお、接着プレートと連結プレートは工場等で溶接固定したうえで利用するのが望ましい。
【0053】
図6や
図7に示す柱材10がH形鋼の場合、既述のとおり方杖材32を設置する面内方向はH形鋼の強軸方向と一致し、このH形鋼のフランジ表面に方杖材用のガセットプレート41は接着される。つまり、方杖材用のガセットプレート41は、柱材10のうち面内方向と略垂直(垂直含む)な表面(この場合はフランジ)に接着される。
【0054】
図8や
図9に示す柱材10が角形鋼管の場合も、斜材用のガセットプレート41は、柱材10のうち面内方向(方杖材32を設置する柱材10及び梁材20から構成される面内方向)と略垂直(垂直含む)な表面に接着される。具体的には、ガセットプレート41のうちの接着部41aを角形鋼管の正面(面内方向に対して垂直な面)に当てて接着する。
【0055】
5−3.剥離防止手段
設計上求められた接着面積を確保して接着固定すれば、接着面がずれようとするせん断方向(つまり、面内方向)の荷重に対してガセットプレート41が柱材10から剥離することはない。例えば、斜材31の場合は主に水平方向をせん断方向とするずれ、方杖材32の場合は主に鉛直方向をせん断方向とするずれに対しては、それぞれ防止することができる。しかしながら、接着面を引き剥がそうとする方向(つまり、面外方向)に作用する外力に対して剥離しないだけの接着量(接着面積)を算定することは難しく、接着固定だけで面外荷重に対しても剥がれないようにすることは極めて困難である。例えば、補強材30の軸方向を面外方向とする剥離に対して、接着固定のみで防止することは難しい。当然ながら
図1のような骨組構造は、面内方向だけでなく面外方向からの荷重も受ける。そうすると柱材10は面外方向に曲げ変形を生じ、平面状のガセットプレート41とは接触できない部分が現れ、その結果、ガセットプレート41の剥離が始まる。そこで、面外方向から力を受けた場合でも、柱材10からガセットプレート41が剥がれないよう剥離防止手段42が設けられる。
【0056】
剥離防止手段42の基本構造は、ガセットプレート41と他のプレート(以下、「対向プレート」という。)で柱材10を挟み込み、ボルトによって締め付けるものである。
図2や
図6で説明すると、フランジの内側に対向プレートを配置し、フランジ表面(外側面)に接着固定されたガセットプレート41とこの対向プレートでフランジを挟持し、ボルト締めを行う。この場合のボルトは、普通ボルトを用いる。
【0057】
(柱材がH形鋼の場合の剥離防止手段)
柱材10がH形鋼の場合の剥離防止手段42について、さらに詳しく説明する。
図2や
図3、あるいは
図6や
図7に示すように柱材10がH形鋼の場合、剥離防止手段42は対向プレート42a、締付けボルト42bとスペーサ42cで構成されている。ガセットプレート41と対向プレート42aによってH形鋼のフランジを挟み、締付けボルト42bで締め付けるわけである。締付けボルト42bは、フランジから外れたところで挿通される(フランジは貫通しない)。すなわち、対向プレート42aは、フランジを挟み込むためのフランジ接触部分と、締付けボルト42b挿通のためフランジとは重ならない張り出し部分があり、この張り出し部分にボルト孔が設けられる。一方のガセットプレート41にも締付けボルト42b挿通のためのボルト孔が設けられる。斜材用のガセットプレート41の場合は連結部41bにボルト孔が設けられ、方杖材用のガセットプレート41の場合は接着プレートのうちフランジとは重ならない張り出し部分にボルト孔が設けられる。このようにガセットプレート41に設けられたボルト孔と、対向プレート42aの張り出し部分にあるボルト孔と、それぞれ位置を合わせて締付けボルト42bが挿通される。
【0058】
斜材用のガセットプレート41の連結部41b(方杖材用のガセットプレート41の場合は接着プレートの張り出し部分)と、対向プレート42aの張り出し部分との間には、当然ながらフランジがない。すなわち、ガセットプレート41と対向プレート42aの間には、部分的に略フランジ厚分の隙間ができる。
図3や
図7に示すように、この隙間にはスペーサ42cを介在させることができる。このスペーサ42cにもボルト孔を設け、スペーサ42cを挟んでガセットプレート41と対向プレート42aを締付けボルト42bで締め付けると、より強固に締め付けることができる。
【0059】
先に、設計量の接着面積を確保すればせん断方向のずれを防止することができると説明した。しかしながら、柱材10であるH形鋼のフランジ幅が小さいなど、設計量に対して十分な接着面積を確保できないこともある。あるいは、既述のとおり高温になると接着力が低下することを考えれば、たとえ設計量の接着面積を確保したとしても高温状態で確実な接着力が維持できるとは限らない。すなわち、接着部41aによる接着力だけではせん断方向のずれ防止対策が不十分である場合も考えられる。
【0060】
このような場合、剥離防止手段42にせん断方向のずれ防止機能を持たせることができる。
図11は、スペーサ42cをガセットプレート41に接着してせん断方向のずれ防止機能を持たせた剥離防止手段42を示す説明図であり、
図12は、ガセットプレート41に接着固定されたスペーサ42cがせん断方向のずれ防止機能を発揮することを説明する詳細図である。
図11に示すように、ガセットプレート41に接着剤が塗布され、スペーサ42cが固定される。このときスペーサ42cは、フランジに隣接する位置であって、しかもスペーサ42cの側面とフランジの側面が当接する程度に接近した配置とするのが望ましい。
【0061】
図12に示すように、ガセットプレート41に接着固定されたスペーサ42cは、ガセットプレート41のせん断方向(図中の矢印方向)の移動を規制する。この結果スペーサ42cは、せん断方向の外力によって生ずる、柱材10のフランジとガセットプレート41の剥離、すなわちせん断方向のずれを防止することができる。例えば、斜材31の場合、主に水平方向をせん断方向とするずれに対して、接着固定されたスペーサ42cがせん断方向のずれ防止機能を発揮する。
【0062】
剥離防止手段42にせん断方向のずれ防止機能を持たせる場合、
図11や
図12に示すように、柱材10のフランジの両側2箇所でスペーサ42cを接着固定することが望ましいが、明らかにせん断力が一方向だけ作用する場合など、現場状況によっては片側のみスペーサ42cを接着固定することもできる。なお、スペーサ42cの接着に関しては、ガセットプレート41と柱材10表面の接着で説明した接着方法や、接着剤、設計手法と同様である。
【0063】
剥離防止手段42は、設置されたガセットプレート41ごとに設けられる。つまり、ガセットプレート41を両フランジに接着固定した場合はそれぞれのガセットプレート41に剥離防止手段42を設け(計2箇所)、フランジ片面にのみガセットプレート41を接着固定した場合はそのガセットプレート41に対してのみ剥離防止手段42を設ける。また斜材用のガセットプレート41は、フランジ表面に限らずフランジの内側にも接着固定することができると説明したが、この場合は対向プレート42aがフランジ表面(外側面)に配置されることとなる。方杖材用のガセットプレート41は、
図6や
図7に示すように、ひとつのガセットプレート41につき締付けボルト42bを両側2箇所に配置してフランジを両側で挟み込む。
【0064】
図2に示すように、斜材用のガセットプレート41に突出部41cを設けて剥離防止手段42とすることもできる。突出部41cは、連結部41bと同様に柱材10から張り出した部分であるが、連結部41bとは反対側に張り出した部分である。両フランジに接着固定されたガセットプレート41の突出部41cを、締付けボルト42bで締め付けることによってガセットプレート41の面外方向の剥離を防止するものである。従って、突出部41cにはボルト孔が設けられる。この場合、突出部41cと対向プレート42aによってH形鋼のフランジを挟むように配置し、これらを締付けボルト42bで締め付けることもできるし、H形鋼の両フランジに取り付けた2枚のガセットプレート41の突出部41cどうしを、締付けボルト42bで締め付けることもできる。このとき、突出部41cと対向プレート42aとの間、2枚のガセットプレート41の突出部41cの間には、スペーサ42cを配置することができる。
【0065】
上記したとおり柱材10がH形鋼の場合の剥離防止手段42としては、対向プレート42aと締付けボルト42bによる方法が例示できるが、斜材用のガセットプレート41の場合は、この方法に突出部41cと締付けボルト42bによる方法を加えることもできる。
【0066】
(柱材が角形鋼管の場合の剥離防止手段)
次に、柱材10が角形鋼管の場合の剥離防止手段42について、さらに詳しく説明する。
図4や
図5、あるいは
図8や
図9に示すように柱材10が角形鋼管の場合、剥離防止手段42はガセットプレート41と締付けボルト42bで構成されている。2枚のガセットプレート41で角形鋼管を挟み、締付けボルト42bで締め付ける。すなわちガセットプレート41が、対向プレート42aを兼用するわけである。締付けボルト42bは、角形鋼管から外れたところで挿通される(角形鋼管は貫通しない)。なおこの場合、角形鋼管の表面のうち対向する2面にガセットプレート41を接着固定する必要がある。ただし、双方のガセットプレート41にそれぞれ補強材30を取り付ける必要はなく、どちらか一方にだけ補強材30を取り付けてもよい。もちろん
図5に示すように、両方のガセットプレート41に補強材30を取り付けることもできる。
【0067】
柱材10がH形鋼の場合と同様、
図4に示すように斜材用のガセットプレート41に突出部41cを設けて剥離防止手段42とすることもできる。2枚のガセットプレート41の突出部41cを、締付けボルト42bで締め付けることによってガセットプレート41の面外方向の剥離を防止するものである。この場合も2枚のガセットプレート41の突出部41の間には、スペーサ42cを配置することができる。また、柱材10がH形鋼の場合と同様、スペーサ42cをガセットプレート41に接着してせん断方向のずれ防止機能を持たせることもできる。方杖材用のガセットプレート41は、
図8や
図9に示すように、締付けボルト42bを両側2箇所に配置して角形鋼管を両側で挟み込む。
【0068】
上記したとおり柱材10が角形鋼管の場合の剥離防止手段42としては、対向プレート42aと締付けボルト42bによる方法が例示できるが、斜材用のガセットプレート41の場合は、この方法に突出部41cと締付けボルト42bによる方法を加えることもできる。
【0069】
ガセットプレート41と対向プレートで柱材10を挟むという基本構造に代えて、U形ボルト等を利用した剥離防止手段42を採用することもできる。この場合、斜材用のガセットプレート41は、連結部41bと突出部41cを設ける必要があり、柱材10に巻き付けて配置したU形ボルト等の一端を連結部41bのボルト孔に挿通して締め付け、他端を突出部41cのボルト孔に挿通して締め付ける。一方の方杖材用のガセットプレート41は、両側に張り出し部分を設ける必要があり、柱材10に巻き付けて配置したU形ボルト等の一端を一方の張り出し部分のボルト孔に挿通して締め付け、他端を他方の張り出し部分のボルト孔に挿通して締め付ける。これによって、ガセットプレート41の面外方向の剥離の防止を図る。なお、U形ボルト等を利用した剥離防止手段42は、柱材10がH形鋼の場合であっても角形鋼管の場合であっても採用することができる。
【0070】
3.補強材とガセットプレートの取り付け
斜材用のガセットプレート41のうちの連結部41bには、斜材31の端部が連結される。この連結部41bにはボルト孔が設けられ、同じく斜材31端部にもボルト孔が設けられており、双方のボルト孔を合わせて高力ボルト50によって締め付けられる。一方、方杖材用のガセットプレート41は、既述のとおり接着プレートと連結プレートで構成されており、接着プレートに略垂直に突き当てられた連結プレートが溶接(工場溶接)固定されている。このうち接着プレートは、ガセットプレート41と柱材10等との接着面である接着部41aを含み、連結プレートには方杖材32の端部が連結される。連結プレートにはボルト孔が設けられ、同じく方杖材32端部にもボルト孔が設けられており、双方のボルト孔を合わせて高力ボルト50によって締め付けられる。ここで使用されるボルトは、状況によって普通ボルトを使用することもできるが、原則は高力ボルトによる摩擦接合とされる。なお高力ボルトであれば、摩擦接合用高力六角ボルト、構造用トルシア形高力ボルト、溶融亜鉛メッキ高力ボルト、など従来のものから適宜選択できる。
【0071】
以上説明したように、ガセットプレート41は柱材10に接着固定されたうえで、補強材30と摩擦接合されるものである。そのため従来のように現場における溶接工程が不要となり、建造物の利用状況にかかわらず採用できるうえ、作業も容易であるという効果がある。
【0072】
6.骨組構造の補強方法
柱材10、梁材20がともにH形鋼である骨組構造を、事後的に斜材31(補強材30)で補強する場合を例に、本願発明の骨組構造の補強方法を説明する。
2枚のガセットプレート41の接着部41aに接着剤を塗布し、一方の柱材10の所定位置の両フランジにそれぞれガセットプレート41を接着固定する。また、他方の柱材10の所定位置の両側面にもガセットプレート41を接着固定する。このとき斜材31を設置する場合は、柱材10のうち斜材31が設置される面内方向と略平行な面に、ガセットプレート41を接着する。なお、方杖材32を設置する場合は、柱材10のうち方杖材32が設置される面内方向と略垂直な面に、ガセットプレート41を接着する。(接着工程)
それぞれ柱材10のフランジ内側に対向プレート42aを配置し、さらにガセットプレート41と対向プレート42aの間(フランジがない隙間)にスペーサ42cを配置して、締付けボルト42bで締め付ける。このとき、せん断方向のずれ防止を図るために、スペーサ42cの一部と柱材10の一部が当接するように配置して、ガセットプレート41にスペーサ42cを接着固定することもできる。(剥離防止工程)
一方の柱材10に固定したガセットプレート41のうち連結部41bに、斜材31の一端を取り付ける。このとき、双方に設けられたボルト孔を利用して、高力ボルトによる締付けを行う。高力ボルトの締め付けは、一次締め、マーキング、本締めの順で行う。斜材31の他端は、他方の柱材10に固定したガセットプレート41のうち連結部41bに取り付ける。このときも双方に設けられたボルト孔を利用し、一次締め、マーキング、本締めの手順で高力ボルトによる締付けを行う。(補強材連結工程)
以上の工程を行うことで、骨組構造が補強される。