(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[高分子化合物(A)]
本発明で用いられる高分子化合物(A)は、該高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位中における、下記一般式(1)で表されるモノマー由来の繰り返し単位(a)(以下、単に「繰り返し単位(a)」ともいう)の組成が60モル%以上であり、酸性基を有するモノマー由来の繰り返し単位(b)(以下、単に「繰り返し単位(b)」ともいう)の組成が5モル%以下であり、質量平均分子量が1,000〜20,000であるものである。
高分子化合物(A)は、繰り返し単位(a)を含有し、必要に応じて、繰り返し単位(b)、及びその他のモノマー由来の繰り返し単位(c)を含んでいてもよい。
また、高分子化合物(A)は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。高分子化合物(A)が共重合体である場合、繰り返し単位の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれであってもよい。さらに、高分子化合物(A)の構造は直鎖状、分岐状のいずれでもよい。
【0010】
<一般式(1)で表されるモノマー由来の繰り返し単位(a)>
【0011】
【化2】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、R
2は炭素数が1〜6のアルカンジイル基、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基、ベンジル基、又はアルキル基の炭素数が1〜5のアルキルベンジル基、Xは酸素原子又はNH基、Y
-は陰イオンを示す。)
【0012】
一般式(1)において、R
1は、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、メチル基が好ましい。
R
2は、一般式(1)で表されるモノマーの入手の容易さの観点から、炭素数が1〜3のアルカンジイル基が好ましく、具体的には、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基(エチレン基)、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基(トリメチレン基)が挙げられるが、エチレン基がより好ましい。
R
3、R
4は、一般式(1)で表されるモノマーの入手の容易さの観点から、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基がより更に好ましい。
R
5は、一般式(1)で表されるモノマーの入手の容易さの観点から、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0013】
一般式(1)において、Xは、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、酸素原子が好ましい。
Y
-は、ハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸イオン、ヒドロキシイオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、又は酢酸イオンが好ましく、塩素イオン等のハロゲンイオン、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル硫酸エステルイオンがより好ましい。
高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位中における繰り返し単位(a)の含有量は、60モル%以上であれば、親水化処理剤の固体表面に対する親水化力に優れ、80モル%以上であることが好ましく、その上限は100モル%である。
【0014】
<酸性基を有するモノマー由来の繰り返し単位(b)>
繰り返し単位(b)が有する酸性基とは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を意味する。
酸性基を有するモノマー由来の繰り返し単位(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート等の酸性基を有するモノマー由来の繰り返し単位が挙げられる。
高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位中における繰り返し単位(b)の含有量は、5モル%以下であれば、親水化処理剤は固体表面に対する親水化力に優れ、1モル%以下であることが好ましく、0モル%であることがより好ましい。
【0015】
本発明において、前記一般式(1)で表されるモノマー、又は酸性基を有するモノマー由来の繰り返し単位とは、前記一般式(1)で表されるモノマー、又は酸性基を有するモノマーを重合させて得られる高分子化合物における繰り返し単位構造をいう。また以下において、繰り返し単位(a)又は繰り返し単位(b)を構成するモノマーとは、それぞれ前記一般式(1)で表されるモノマー、又は前記酸性基を有するモノマーのことをいう。
【0016】
<繰り返し単位(c)>
高分子化合物(A)は、繰り返し単位(a)を構成するモノマー、及び繰り返し単位(b)を構成するモノマー以外のモノマー由来の繰り返し単位(c)を含んでいてもよい。
繰り返し単位(c)を構成するモノマーの具体例としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリルアミドモノマー;メタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等のメタクリルアミドモノマー;メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜5モル付加)アクリレート等のアクリレートモノマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜5モル付加)メタクリレート等のメタクリレートモノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィンモノマー;スチレン等のスチレンモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられる。これらの中では、親水化処理剤の固体表面に対する親水化力を高める観点から、アクリルアミド、メトキシポリエチレングリコール(1〜3モル付加)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜3モル付加)メタクリレート、及びスチレンから選ばれる1種又は2種以上に由来する繰り返し単位が好ましい。
【0017】
<高分子化合物(A)の物性>
高分子化合物(A)のカチオン電荷密度は、本発明の親水化処理剤の親水化力を高める観点から、好ましくは3meq/g以上であり、より好ましくは3.5meq/g以上、更に好ましくは3.7meq/g以上であり、その上限は、好ましくは6.7meq/g以下、より好ましくは6meq/g以下、更に好ましくは5.5meq/g以下である。上記の観点から、高分子化合物(A)のカチオン電荷密度は、より好ましくは3〜6.7meq/g、更に好ましくは3.5〜6meq/g、より更に好ましくは3.7〜5.5meq/gである。
ここでカチオン電荷密度(meq/g)とは、ポリマー1g当たりのカチオン性基のモル数×1000で表され、高分子化合物(A)を製造する場合には、用いた原料から算出することもできる。
高分子化合物(A)の質量平均分子量は、本発明の親水化処理剤の親水化力を高める観点から、1,000〜20,000である。前記質量平均分子量は、好ましくは、2,000以上、より好ましく3,000以上であり、その上限は、好ましくは18,000以下、より好ましくは15,000以下である。上記の観点から、高分子化合物(A)の質量平均分子量は、2,000〜18,000が好ましく、3,000〜15,000がより好ましい。なお、本発明における質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量であり、測定条件の詳細は実施例に示すとおりである。
【0018】
<高分子化合物(A)の製造法>
高分子化合物(A)は公知の方法により製造することができる。例えば、一般式(1)で表されるモノマーと、所望に応じて、繰り返し単位(b)を構成するモノマー、及び繰り返し単位(c)を構成するモノマーから選ばれる1種以上のモノマーを含む原料モノマーを、溶液重合法で重合させることにより製造することができる。
上記の溶液重合に用いられる溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素(トルエン、キシレン等)、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を使用することができる。溶媒量は、原料モノマー全量に対し0.5〜20質量倍が好ましく、1〜10質量倍が好ましい。
【0019】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンアミジン)・二塩酸、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系重合開始剤、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロ過酸化物類、過酸化ジt−ブチル等の過酸化ジアルキル類、ドデカノイルペルオキシド等の過酸化ジアシル類、メチルエチルケトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩類等が挙げられる。
重合開始剤の量は、原料モノマー全量に対し0.001〜5モル倍が好ましく、0.02〜1モル倍が好ましい。
重合反応は、不活性ガス気流下、好ましくは60〜180℃、より好ましくは65〜120℃の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは1〜12時間が好ましい。
得られた高分子化合物(A)は必要に応じて公知の方法で精製することもできる。
【0020】
[多価有機酸(B)]
本発明に用いられる多価有機酸(B)とは、1分子内に2個以上の酸性基を有する化合物であり、酸性基とは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を意味する。
多価有機酸(B)としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ2−アクリルアミド―2−メチルプロパンスルホン酸、ポリp−スチレンスルホン酸等が挙げられる。これらの中では、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、エチレンジアミン四酢酸、及びポリアクリル酸から選ばれる1種又は2種が好ましい。
前記ポリアクリル酸の質量平均分子量は、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、好ましくは1,000以上、好ましくは1,200以上、より好ましくは1,500以上であり、その上限は、好ましくは20,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましく5,000以下である。上記の観点から、前記ポリアクリル酸の質量平均分子量は、1,000〜20,000が好ましく、1,200〜10,000がより好ましく、1,500〜5,000が更に好ましい。
多価有機酸(B)は、塩の形であってもよい。多価有機酸(B)の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩が挙げられる。これらの中では、多価有機酸(B)の水への溶解性の問題、及び親水化処理剤の親水化力を高める観点から、アルカリ金属塩又はアミン塩であることが好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩であることがより好ましい。
【0021】
[親水化処理剤]
本発明の親水化処理剤は、前記一般式(1)で表されるモノマー由来の繰り返し単位(a)を有する高分子化合物(A)、多価有機酸(B)、及び水(C)を含有する。
高分子化合物(A)は1種又は2種以上を用いることができ、親水化処理剤中の高分子化合物(A)の含有量は、親水化処理剤の親水化力を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、その上限は、好ましくは5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。上記の観点から、親水化処理剤中の高分子化合物(A)の含有量は、0.01〜25質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.2〜1質量%が更に好ましい。
多価有機酸(B)は1種又は2種以上を用いることができ、親水化処理剤中の含有量に特に限定はないが、その含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、その上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましく4質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下である。上記の観点から、親水化処理剤中の多価有機酸(B)の含有量は、0.01〜25質量%が好ましく、溶解性と親水化力向上を両立させる観点から0.1〜5質量%がより好ましく、0.2〜4質量%が更に好ましく、0.2〜3質量%がより更に好ましい。
【0022】
また、本発明の親水化処理剤中の高分子化合物(A)と多価有機酸(B)の質量比((A)/(B))は、本発明の親水化処理剤の親水化力を高める観点から、より好ましくは1/20以上、より好ましくは1/10以上、更に好ましくは1/5以上であり、その上限は、好ましくは20/1以下、より好ましくは10/1以下、更に好ましくは5/1以下である。上記の観点から、質量比((A)/(B))は、1/20〜20/1が好ましく、1/10〜10/1がより好ましく、1/5〜5/1が更に好ましい。
本発明の親水化処理剤中の水(C)の含有量に特に限定はないが、その含有量は、親水化力を高める観点から、50〜99.9質量%が好ましく、80〜99.5質量%がより好ましく、85〜99.2質量%が更に好ましい。
【0023】
[その他の成分]
本発明の親水化処理剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、尿素等の可溶化剤;粘土鉱物、水溶性高分子化合物等の粘度調整剤(但し、高分子化合物(A)又は多価有機酸(B)であるものを除く);方解石、珪石、リン酸カルシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム、ポリエチレン、ナイロン、ポリスチレン等の水不溶性研磨剤;グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;カチオン化セルロース等の感触向上剤(但し、高分子化合物(A)であるものを除く);炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等のアルカリビルダー;酵素、色素、香料、防腐・防かび剤等を添加することができる。
【0024】
<界面活性剤>
本発明の親水化処理剤は、界面活性剤と併用する方が好ましい。また、固体表面に汚れ物質、特に疎水性の高い例えば油性の汚れ物質が付着している場合には、本発明の親水化処理剤と界面活性剤を併用することにより、界面活性剤により疎水性の高い汚れ物質が除去された固体表面を親水化できるため、より効率的に固体表面の親水化処理が可能になる。
用いられる界面活性剤としては、通常液体洗浄剤に用いられる界面活性剤であれば特に限定はない。界面活性剤としてはアニオン性、非イオン性、カチオン性及び両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、洗浄性の観点から、疎水性部位としてアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましく、その炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは炭素数10以上であり、その上限は、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。
【0025】
(陰イオン性界面活性剤)
陰イオン性界面活性剤としては、疎水性部位を有する硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩、及びアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
具体的には、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;炭素数8以上16以下の高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩等が挙げられる。
【0026】
これら陰イオン性界面活性剤の中では、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス−2硫酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(ラウレス−4,5酢酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ラウレス−2スルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸アルキルエステル塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム(ココイルグルタミン酸ナトリウム)等のアシルグルタミン酸塩アシルイセチオネート、及びアシルメチルタウレートから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩又はアルキル硫酸塩がより好ましい。
【0027】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
これらの中では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、及びアルキルグリコシドから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルキルグルコシドがより好ましい。
【0028】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。 これらの中では、界面活性剤組成物の洗浄性及び洗浄時の泡量の観点から、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
(陽イオン性界面活性剤)
陽イオン性界面活性剤としては、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12〜28、好ましくは炭素数16〜22炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩が挙げられる。
具体的には、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、オクダデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩や、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム塩等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩や、ステアリルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミンの酸塩等のモノ長鎖アルキルジメチルアミン塩が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、本発明の親水化処理剤中に、0.5〜80質量%配合するのが好ましく、2〜30質量%配合するのがより好ましい。
【0030】
<親水化処理剤の製造>
本発明の親水化処理剤は、前記の高分子化合物(A)、多価有機酸(B)、水(C)、及び必要に応じて前述したその他の成分を加えて、公知の方法により攪拌、混合することにより得ることができる。混合装置としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、高圧分散機等を用いることができる。
親水化処理剤は、固体表面の種類や処理目的に応じて、適宜組成割合を調整することができる。また、濃厚溶液を調製しておき、使用時に希釈して用いることもできる。
得られる親水化処理剤の20℃におけるpHは、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、好ましくは2〜11、より好ましくは3〜10、更に好ましくは4〜8である。pH調節剤としては、塩酸、硫酸等の無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸等の酸剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩等、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤が挙げられる。また、酸剤とアルカリ剤を組み合わせて緩衝剤系として用いることもできる。
【0031】
[親水化処理方法]
本発明の固体表面の親水化処理方法は、固体表面を本発明の親水化処理剤を含有する溶液に接触させることを特徴とする。
ここで「固体表面」の「固体」とは、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維;毛髪、爪、歯等の固体を意味する。
本発明方法を適用しうる好適な固体表面としては、前記のセラミックス、金属、合成樹脂から選ばれる1種又は2種以上の疎水性硬質表面が挙げられる。
また、親水化処理剤を含有する溶液としては、取扱いの安全性の観点から、水溶液が好ましい。
親水化処理剤を含有する溶液中の親水化処理剤の含有量は、処理条件にもよるが、表面親水化効果の観点から、前記高分子化合物(A)の含有量が、親水化処理剤を含有する溶液中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上となる量であり、その上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下となる量である。上記の観点から、親水化処理剤を含有する溶液中の前記高分子化合物(A)の含有量は、0.01〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0032】
固体表面と親水化処理剤を含有する溶液の接触方法は、特に限定されない。例えば、次の(i)〜(iii)の方法等が挙げられる。
(i)親水化処理剤を含有する溶液に固体を浸漬させる方法
(ii)親水化処理剤を含有する溶液を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(iii)親水化処理剤を含有する溶液で常法に従い固体表面を洗浄する方法
前記(i)の方法では、固体表面の親水化効果の観点から、親水化処理剤を含有する溶液中に固体表面を、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜40℃の温度で、好ましくは0.5〜60分間、より好ましくは1〜50分間浸漬するのが好ましい。
前記(ii)の方法において、親水化処理剤を含有する溶液を固体表面に適用する方法は、硬質表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。通常は、親水化処理剤を固体表面にスプレーした後、乾燥する方法が好ましいが、例えば、10cm
2あたり0.01〜0.1mLの親水化処理剤の0.5質量%水溶液をスプレーした後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばして処理することもできる。
前記(iii)の方法では、親水化処理剤及び界面活性剤を含有する洗浄剤組成物の形態で使用し、固体表面と接触させるのが好ましい。かかる洗浄剤組成物の形態とする場合、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、そのpHは4〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
界面活性剤としては、前述したものを使用することができる。
【0033】
また、本発明の親水化処理により固体表面の水に対する静止接触角が、疎水性硬質表面、好ましくは塩化ビニルの場合は50°以下、特に40°以下になることが好ましい。また、親水性硬質表面、好ましくはガラスの場合、30°以下、特に25°以下になることが好ましい。ここで、疎水性硬質表面とは、水に対する静止接触角が70°以上であることを意味し、親水性硬質表面とは70°未満であることを意味する。
【実施例】
【0034】
以下の合成例及び実施例における各物性の測定条件をまとめて以下に示す。
<質量平均分子量測定条件>
高分子化合物の質量平均分子量は、高分子化合物を溶離液に溶解した0.5質量%溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量である。
(GPC測定条件)
・カラム:東ソー株式会社製、TSKgelα−M、2本を直列につないで使用。
・溶離液:50mmol/L臭化リチウム、1%酢酸、エタノール/水=3/7vol
・流速:0.6mL/min、
・カラム温度:40℃、
・検出器:示差屈折率計
・標準ポリマー;ポリエチレングリコール(東ソー株式会社又は西尾工業株式会社製)
【0035】
合成例1(高分子化合物(A)−(1)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)50.0g、及び重合溶媒としてイソプロピルアルコール200.0gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)6.0gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(1)を得た。高分子化合物(A)−(1)中の繰り返し単位(a)、(b)の含有量、カチオン電荷密度、質量平均分子量を表1にまとめて示す。
【0036】
合成例2(高分子化合物(A)−(2)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)40.8g、メトキシポリエチレングリコール(2モル)メタクリレート7.4g、及び重合溶媒としてイオン交換水11.2gとエタノール101.1gと、重合開始剤としてドデカノイルペルオキシド7.8gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(2)を得た。結果を表1に示す。
【0037】
合成例3(高分子化合物(A)−(3)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)50.0g、スチレン0.8g、及び重合溶媒としてイオン交換水118.6g、重合開始剤として過硫酸ナトリウム4.8gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(3)を得た。結果を表1に示す。
【0038】
合成例4(高分子化合物(A)−(4)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)40.7g、アクリルアミド(AAm)7.4g、及び重合溶媒としてイオン交換水112.3gと、重合開始剤として過硫酸ナトリウム6.2gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(4)を得た。結果を表1に示す。
【0039】
合成例5(高分子化合物(A)−(5)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩(MOEDES)38.6g、アクリルアミド(AAm)5.3g、及び重合溶媒としてイオン交換水102.3gと、重合開始剤として過硫酸ナトリウム4.4gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(5)を得た。結果を表1に示す。
【0040】
合成例6(高分子化合物(A)−(6)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)40.0g、及び重合溶媒としてイオン交換水9.3gとエタノール84.0gと、重合開始剤としてV−65(和光純薬工業株式会社製)6.3gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(6)を得た。結果を表1に示す。
【0041】
合成例7(高分子化合物(A)−(9)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩(MOEDES)140.4g、及び重合溶媒としてイオン交換水259.3gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンアミジン)・二塩酸(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−50)1.4gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(9)を得た。結果を表1に示す。
【0042】
合成例8(高分子化合物(A)−(10)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)100.0g、及び重合溶媒としてエタノール66.7gと、重合開始剤としてV−65(和光純薬工業株式会社製)0.1gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(10)を得た。結果を表1に示す。
【0043】
合成例9(高分子化合物(A)−(9)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)45.3g、メタクリル酸3.8g、及び重合溶媒としてイオン交換水114.5gと、重合開始剤として過硫酸ナトリウム5.2gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(9)を得た。結果を表1に示す。
【0044】
合成例10(高分子化合物(A)−(10)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド(QDM)37.3g、アクリルアミド10.2g、及び重合溶媒としてイオン交換水110.7gと、重合開始剤として過硫酸ナトリウム6.8gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(10)を得た。結果を表1に示す。
【0045】
合成例11(高分子化合物(A)−(11)の合成)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩(MOEDES)36.2g、アクリルアミド7.4g、及び重合溶媒としてイオン交換水101.8gと、重合開始剤として過硫酸ナトリウム5.0gを仕込み、85℃にて6時間重合反応を行った。その後、アセトン3000.0gで再沈殿させた後に乾燥させることで高分子化合物(A)−(11)を得た。結果を表1に示す。
【0046】
実施例1(親水化処理剤の製造)
合成例(1)で得た高分子化合物(A)−(1)3.75g、ポリアクリル酸1.25g、及びイオン交換水495gを混合し、親水化処理剤を得た。
得られた本発明の親水化処理剤の親水化能を、下記の方法で処理した固体表面の接触角測定から評価した。
【0047】
<接触角測定条件>
水平に固定した予め清浄にしたテストピース(材質:硬質ポリ塩化ビニル、25mm×75mm、株式会社エンジニアリングテストサービス製、商品名:塩化ビニルテストピース)に親水化処理剤1mLを滴下して5分間静置した後、イオン交換水約200mLで軽くすすいで風乾した。
このテストピースの処理部分表面のイオン交換水に対する静止接触角を、協和界面科学株式会社製の自動接触角計DM−500を用いて、添加量10μL、添加6秒後の接触角を測定した。測定は2枚のテストピースについて、1枚のテストピース当たり5回行い、その平均値を用いた。
処理後の接触角が低いほど、水に濡れやすい、即ち、固体表面が親水化されていることを示す。結果を表1に示す。
【0048】
実施例2〜7及び比較例1〜11
高分子化合物(A)、多価有機酸(B)の種類と配合量を表1に示すように変化させたほかは、実施例1と同様の操作を行って、親水化処理剤を得た。
得られた親水化処理剤の親水化能を、実施例1と同様の操作を行って、評価した。結果を表1に示す。
なお、親水化処理剤の配合時に原料として水溶液を用いた場合、表中の数値は、水溶液の配合量ではなく、配合した水溶液中に含まれる原料の値に換算した数値である。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中の、略号は以下のとおりである。
・QDM:2−メタクリロイルオキシ−エチルトリメチルアンモニウムクロリド
・PEG(2)MA:メトキシポリエチレングリコール(2モル)メタクリレート
・St:スチレン
・AAm:アクリルアミド
・DMAEMA:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
・MOEDES:メタクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩
・MAA:メタクリル酸
【0051】
表1から、実施例1〜7で得られた親水化処理剤は、及び比較例1〜11で得られた親水化処理剤に比べて、親水化処理後の静止接触角が39°以下と低く、固体表面に対する親水化力が優れていることが分かる。