(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、強力な圧力で水を吹き付けることで、床や壁、あるいはコンクリートなどにこびりついた汚れを落とすことのできる高圧洗浄機が知られている。一般的な高圧洗浄機は、駆動源となる電動モータと、電動モータによって駆動されることで、供給される水を加圧して高圧水を発生させるポンプ機構を有しており、吸水口から供給される水が電動モータによって駆動されるポンプ機構によって加圧されて高圧水となり、その高圧水が吐水口及び吐水装置(ノズルガン等)を経て吐出されるように構成されていた。
【0003】
このような従来の高圧洗浄機においては、駆動源である電動モータと供給される水を加圧して高圧水を発生させるポンプ機構とが騒音源となるため、静音化の要請があった。特に、家庭用として用いられる高圧洗浄機の場合には、静音化を実現した高圧洗浄機の要請が強い。
【0004】
ところで、この種の機械装置で静音化を実現する技術としては、騒音源の周りを吸音材で取り囲むことで静音化を図ることが行われていた。例えば、下記特許文献1には、騒音源となるポンプユニットの周りを吸音材で取り囲むことで、静音化を図る技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の吸音材を高圧洗浄機にそのまま適用した場合には、装置が大型化してしまうという課題が存在していた。すなわち、ポンプ機構を吸音材で取り囲む場合を考えると、十分な静音効果を得るためには吸音材の厚みをある程度厚くする必要があるので、所望の静音効果を得るためには装置の大型化が必要となるのである。しかし、装置の大型化を回避しながらも静音化を実現した技術については、従来存在していなかった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題を解決するために成されたものであり、その目的は、装置の大型化を回避しながらも静音化を実現した従来にはない高圧洗浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係る高圧洗浄機(10)は、駆動源となる電動モータ(12)
を備えるモータユニット(11)と、
前記モータユニット(11)と横並びに配置され、前記電動モータ(12)によって駆動されることで、供給される水を加圧して高圧水を発生させるポンプ機構(21)と、
前記モータユニット(11)及び前記ポンプ機構(21)を収納する筺体(51)と、を備える高圧洗浄機(10)であって、
前記筐体(51)の内部には、前記ポンプ機構(21)が発する音を遮る
カップ型の遮音カバー(61)が、
前記モータユニット(11)の反対側から前記ポンプ機構(21)の少なくとも一部を覆うように設けられるとともに、前記筺体(51)の内部であって、
前記モータユニット(11)の周囲における前記遮音カバー(61)の設置箇所以外の箇所に、騒音を吸収するための
吸音スポンジからなる吸音材(65)が設置され
ており、前記遮音カバー(61)は、合成ゴム製のカバー材であり、前記ポンプ機構(21)の形状に沿った形状であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る高圧洗浄機(10)では、前記遮音カバー(61)が
前記モータユニット(11)の反対側から前記ポンプ機構(21)を覆うために有する開口から、当該開口が向く方向の前記筺体(51)の内壁面までの経路に、前記吸音材(65)が設置されることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の大型化を回避しながらも静音化を実現した従来にはない高圧洗浄機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る高圧洗浄機の全体構成を示した外観斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る高圧洗浄機の外観正面図である。また、
図3は、本実施形態に係る高圧洗浄機の外郭を構成する筐体の前面側を取り外した状態を示す図であり、
図4は、本実施形態に係る高圧洗浄機の内部構成を説明するための縦断面正面図である。
【0016】
本実施形態に係る高圧洗浄機10は、
図3で示されるように、駆動源となる電動モータ12が収納されたモータユニット11と、電動モータ12によって駆動されることで、供給される水を加圧して高圧水を発生させるポンプ機構21と、ポンプ機構21と接続されるホース30を巻き取るホースリール31と、を備えて構成されている。
【0017】
モータユニット11の内部には、不図示の電源から供給される外部電力によって回転駆動する電動モータ12が収納されている。この電動モータ12は、界磁束発生源である回転子13と、この回転子13を回転させる回転磁界を発生するための固定子14とから構成されている。回転子13は、モータ軸13aを有して構成されているとともに、モータ軸13aの先端には斜板13bが取り付けられている。電動モータ12は、斜板13bの回転運動を後述するポンプ機構21に伝達することで、駆動源としての機能を発揮する。一方、固定子14は、モータユニット11内で固定設置されている。
【0018】
また、
図4に示すように、本実施形態に係るモータユニット11には、電動モータ12を冷却するための冷却水を導通させるキャビティ15が、電動モータ12の外周を取り囲むように形成されている。このキャビティ15は、固定子14に接触するとともに固定子14の周りを取り囲むように設置される金属製の内方ケーシング15aと、この内方ケーシング15aのさらに外周を取り囲むように設置される外方ケーシング15bとによって形成されており、その空間形状は、略円筒形状となるように構成されている。
【0019】
内方ケーシング15aは、固定子14から伝達される熱をキャビティ15内の冷却水に効率よく伝達するために、例えばアルミニウム合金等の熱伝導性の高い金属で構成されている。また、キャビティ15からの冷却水の漏れを確実に防ぐために、内方ケーシング15aと外方ケーシング15bとの間には、Oリング15cが設置されている。なお、本実施形態では、2つのOリング15cが設置されている。
【0020】
以上のように、本実施形態に係るモータユニット11は、水冷式の冷却機構を備えて構成されているので、冷却ファンを備える必要がない。つまり、冷却風を取り込むための開口部を筺体51に設ける必要がないので、外部に漏れる騒音が非常に少なくなる構成となっている。
【0021】
一方、ポンプ機構21は、モータユニット11と斜板13bを介して動力伝達可能に接続する部材である。本実施形態に係るポンプ機構21では、略水平方向で往復運動を行う3つのピストン22が、この斜板13bの軸端面側の傾斜面に埋め込み設置されたスラストベアリング13cと接触状態で設置されている。3つのピストン22には、バネ22aが設置されており、常にはバネ22aの作用によってスラストベアリング13c側へ突出する方向(すなわち、
図4における紙面右方向)に弾性力が加わるとともに、このバネ22aの弾性力に抗する横向き(
図4における紙面左方向)の力が加わると、ピストン22が左方向へと移動するように構成されている。つまり、3つのピストン22のそれぞれは、略水平方向(左右方向)で往復ピストン運動ができるように構成されている。
【0022】
そして、斜板13bに埋め込み設置されたスラストベアリング13cと3つのピストン22とが接触するポンプ内領域23は潤滑油で満たされており、スラストベアリング13cと3つのピストン22との良好な接触状態が実現するように構成されている。したがって、電動モータ12が駆動されてモータ軸13aが回転駆動すると、この回転駆動力によって斜板13bが回転駆動されることとなるが、斜板13bが回転駆動されると、斜板13bの軸端面側に形成された傾斜面の作用によってスラストベアリング13cが傾斜した状態で回転運動を行うので、このスラストベアリング13cによって3つのピストン22が順に反斜板方向(
図4における紙面左方向)へ押し込まれるとともに、この方向への押し込みを解除され、3つのピストン22が順に往復ピストン運動を行うようになっている。
【0023】
3つのピストン22の先には、吸水口16を経由して送られてくる水が誘導される。3つのピストン22の設置箇所の左側位置に誘導された水は、ピストン22による往復ピストン運動の作用によって加圧されて、高圧水が生成されることとなる。
【0024】
ポンプ機構21によって加圧されて生成された高圧水は、ポンプ機構21と接続されるホース30に誘導され、外部への高圧洗浄作業に用いられることとなる。本実施形態に係る高圧洗浄機10は、ホース30を巻き取るためのホースリール31を備えており、ホース30の長さを作業環境に応じて調節できるようになっている。なお、ホースリール31には、リールの回転操作を容易に実現できるように、ハンドル32が設置されている。このハンドル32は、筐体51に対して取り出し・収納自在となっており、高圧洗浄機10の操作性の向上や装置のコンパクト化が図られている。
【0025】
上述したモータユニット11、ポンプ機構21、及びホースリール31については、高圧洗浄機10の外郭を構成する筐体51に対して収納設置されている。この筐体51は、前面側と後面側を構成する前後半割部材を組み合わせることで構成されている。また、筐体51の上部中央位置には把持部52が、下部後方位置には左右一対のタイヤ53が形成されている。本実施形態に係る高圧洗浄機10は、
図1〜
図4で例示するような自立状態にあるときには、重心がやや前方位置となるように構成されているので、左右一対のタイヤ53は機能せず、安定した自立状態を維持できるようになっている。また、移動時には、使用者が把持部52を持って後方側に傾けることで、筐体51の下部後方に位置する左右一対のタイヤ53が回転可能となるので、把持部52を後方側に傾けながら後方側に引くことで、高圧洗浄機10の移動が容易に可能となる。
【0026】
また、本実施形態に係る高圧洗浄機10では、当該高圧洗浄機10が自立状態のときに、筺体51の下方位置に電動モータ12を有するモータユニット11とポンプ機構21が横並びに配置されるとともに、筺体51の上方位置にホースリール31が配置されている。すなわち、重量物であるモータユニット11とポンプ機構21が筐体51の下方の位置に配置されるとともに、これらより比較的重量の小さいホースリール31が筐体51の上方の位置に配置されているので、本実施形態に係る高圧洗浄機10は非常に良好な重量バランスを有しており、安定した自立状態が実現可能となっている。また、使用者からホース30の出し入れの際に操作を受けるハンドル32を有するホースリール31が筐体51の上方側に配置されているので、高い操作性が実現している。
【0027】
なお、本実施形態のモータユニット11とポンプ機構21については、筐体51内での安定した設置状態を維持するために、モータユニット11とポンプ機構21それぞれの筐体51対向面に対して、筺体51の内面側と接続する支持部55が形成されている。本実施形態の支持部55は、
図3で示されるように、円筒形をした凸部として形成されており、筐体51の内面側に設けられた支持部55を収納するための凹部(不図示)と嵌合することで、筐体51内におけるモータユニット11とポンプ機構21の安定した設置状態が実現されている。なお、この支持部55と、支持部55を収納するための筐体51側の凹部の形状については、あらゆる形状を採用することができる。また、支持部55については、防振や防音等の効果を得るために、弾性部材を採用することが好適である。
【0028】
以上、本実施形態に係る高圧洗浄機10の基本構成について説明したが、本実施形態に係る高圧洗浄機10は、静音化を実現するための好適な構成を備えている。そこで、次に、
図5〜
図7を参照図面に加えることで、静音化を実現するために本実施形態が採用した構成の説明を行う。ここで、
図5は、本実施形態のモータユニットとポンプ機構の周囲の構成を説明するために、筺体の前面側を取り外した状態を示した部分斜視図である。また、
図6は、本実施形態のモータユニットとポンプ機構の周囲の構成を説明するための横断面平面図である。さらに、
図7は、本実施形態で採用された遮音カバーを示した斜視図である。
【0029】
図5〜
図7にて示されるように、本実施形態に係る高圧洗浄機10では、ポンプ機構21におけるモータユニット11との接続面以外の面を覆うように、遮音カバー61が設けられている。この遮音カバー61は、NBR(Nitrile butadiene rubber;ニトリルゴム)製のカバー材であり、ポンプ機構21の形状に沿ったものとなっている。また、ポンプ機構21におけるモータユニット11との接続面以外の面を最大限に覆うために、
図7で示すように、ポンプ機構21から筺体51の外部に飛び出す部位を避ける形で切れ目62が施されている。
【0030】
また、本実施形態に係る高圧洗浄機10では、モータユニット11とポンプ機構21が横並びに配置される構成が採られていることから、騒音源となるポンプ機構21が筺体51の側面に近接することとなり、何らかの消音対策を取らなければ、筺体側面から外部に向けて騒音が放出され易くなるのであるが、上述のように、本実施形態では、ポンプ機構21と筺体51との間にNBR製の遮音カバー61を設けたので、騒音が外部に漏れることを好適に防止できている。なお、本実施形態に係る遮音カバー61については、素材にNBRを用いたことから厚みが薄くとも好適な防音効果が得られている。したがって、従来技術に比べて装置の大型化を回避しながらも騒音の少ない高圧洗浄機を実現できている。
【0031】
またさらに、本実施形態では、筺体51の内部であって、遮音カバー61の設置箇所以外の箇所に対して、騒音を吸収するための吸音材65を設置することとした。この吸音材65の設置領域については、
図5及び
図6において、網掛け部として記載してあるが(なお、説明の便宜のため、
図3及び
図4では、吸音材65の図示を省略した。)、騒音源となり得るモータユニット11とポンプ機構21の周囲であって、遮音カバー61では覆いきれない領域に対して、吸音材65を設置することが好ましい。なぜなら、遮音カバー61の設置位置と吸音材65の設置位置とは筺体51内で連通した空間であるため、遮音カバー61によって遮音しきれない騒音を吸音材65に吸収させることができるからである。つまり、遮音カバー61と吸音材65とが協働して騒音の外部への漏れを防止することができるので、本実施形態に係る高圧洗浄機10では、従来の高圧洗浄機では実現できなかった静音化が実現されている。
【0032】
なお、本実施形態では、遮音カバー61が有する開口(
図5における紙面右側の方向に開口する部分)から、当該開口が向く方向の筺体51の内壁面までの経路に、吸音材65を設置することとし、さらに、遮音カバー61が有する開口をすべて塞ぐように吸音材65を設置することとした。この様な構成を採用することで、遮音カバー61を設置した状態で遮音カバー61の電動モータ12側にできる開口から放出される騒音は、吸音材65によって吸音された後、筺体51に到達することとなるので、より効果的な静音効果を得ることが可能となる。また、本実施形態に係る吸音材65は、遮音カバー61が有する開口をすべて塞ぐように設置されるので、さらに確実な静音化が実現されることとなる。
【0033】
また、本実施形態に係る吸音材65については、吸音スポンジが採用されている。しかしながら、本発明に適用可能な吸音材については、騒音を吸収でき、かつ、筺体51とモータユニット11及びポンプ機構21との間に存在する隙間に設置できるものであれば、どの様なものであってもよい。
【0034】
また、上述したように、本実施形態に係るモータユニット11は、水冷式の冷却機構を備えて構成されているので、外部に漏れる騒音が非常に少なくなる構成となっている。したがって、唯一の大きな騒音源であるポンプ機構21が、遮音カバー61によって最大限取り囲まれており、さらに、この遮音カバー61によって遮音できなかった騒音が吸音材65によって吸音されるので、従来の高圧洗浄機に比べて非常に静かな高圧洗浄機10が実現されている。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0036】
例えば、上述した遮音カバー61はNBR製であったが、本発明に適用可能な遮音カバーは、遮音性能を備えたものであればその材質は限定されない。すなわち、NBR以外の合成ゴムを用いたものであってもよいし、ゴム以外の遮音材量を本発明の遮音カバーとして採用することも可能である。
【0037】
また、例えば、遮音カバー61の形状や吸音材65の設置領域については、モータユニット11やポンプ機構21の形状、あるいは筐体51内部の空間形状等に応じて適宜変更が可能である。
【0038】
また、本実施形態に係る高圧洗浄機10では、モータユニット11とポンプ機構21が横並びに配置される構成が採られていた。しかしながら、本発明が適用可能な高圧洗浄機は、モータユニット11とポンプ機構21とが横並びに配置される構成のみに限定されるものではない。例えば、モータユニット11とポンプ機構21とが縦並びで配置される場合であっても、本実施形態に係る遮音カバー61や吸音材65を適用することができ、これにより、非常に静かな高圧洗浄機を実現することができる。
【0039】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。