特許第6227902号(P6227902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227902
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20171030BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B43K24/12
   B43K7/00 100
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-120377(P2013-120377)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237240(P2014-237240A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260218(JP,A)
【文献】 特開2013−95016(JP,A)
【文献】 特開2011−84007(JP,A)
【文献】 特開2012−240408(JP,A)
【文献】 特開2006−264732(JP,A)
【文献】 特開平10−217675(JP,A)
【文献】 特開昭53−33727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 5/00− 8/24
B43K 21/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後端部に、軸筒の後端を露出及び閉鎖する蓋体が頭冠を装着した状態で具備される筆記具であって、前記軸筒の後部の側面に、軸筒の外面から突出した基部を形成し、前記蓋体の一端部に設けた係合部を前記基部に形成したヒンジ部に係合して前記蓋体を回動自在に係合し、且つ、前記蓋体の嵌合部を、前記軸筒の後端部に形成した被嵌合部に着脱自在に嵌合することで、軸筒の後端を露出及び閉鎖可能としており、
前記頭冠が蓋体から垂直方向に突出する位置に装着され、前記蓋体の係合部側に垂直方向に突出する支持部と頭冠とが接触状態で配置されることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記頭冠には、蓋体の他端部側の面に、押圧操作部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記頭冠の高さが、蓋体の係合部から嵌合部までの距離よりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記押圧操作部が窪状であることを特徴とする請求項2に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具に関する。詳細には、軸筒後端部に開閉式の蓋体を備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒の後端部に、軸筒の後端を露出及び閉鎖する蓋体を具備してなる筆記具として、軸筒の後端に摺動溝を後方に開口させる開口部を設け、前記開口部から摺動体を取り外し及び挿入可能とし、軸筒に設けたヒンジ部に開口部を閉鎖する蓋体を回動自在に装着した構成の筆記具が開示されている。
また、前記構成の筆記具において、蓋体閉鎖時(蓋体の一部と軸筒の一部が嵌合する時)の嵌合力を向上させるとともに、装飾性を付与することを目的に、蓋体に頭冠を装着した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38635号公報
【特許文献2】特開2012−911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記筆記具に適用される蓋体にはいずれも、回動するための支点となるヒンジ部に対して対称な位置(端部)に、軸筒外方に向かって突出する取手部が形成されており、爪等を引っ掛けて蓋体を軸方向上側に引き上げることで、嵌合状態の蓋体を解除して回動させる構造を有している。
しかしながら、前記構造においては、取手部を大きく形成することができないため、爪が短い時や長すぎる時、更に指の力が弱い人が操作する場合には、軸筒との嵌合を解除して蓋体を開放することが困難なものであった。
【0005】
本発明は、前記構造の回動式蓋体を備えた筆記具であっても、爪等を引っ掛けて蓋体を上方向に引き上げる必要がなく、径方向に押圧することで嵌合状態の蓋体を容易に開放して回動させ得る筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の筆記具は、軸筒の後端部に、軸筒の後端を露出及び閉鎖する蓋体が頭冠を装着した状態で具備される筆記具であって、前記軸筒の後部の側面に、軸筒の外面から突出した基部を形成し、前記蓋体の一端部に設けた係合部を前記基部に形成したヒンジ部に係合して前記蓋体を回動自在に係合し、且つ、前記蓋体の嵌合部を、前記軸筒の後端部に形成した被嵌合部に着脱自在に嵌合することで、軸筒の後端を露出及び閉鎖可能としており、前記頭冠が蓋体から垂直方向に突出する位置に装着され、前記蓋体の係合部側に垂直方向に突出する支持部と頭冠とが接触状態で配置されることを要件とする。
更に、前記頭冠には、蓋体の他端部側の面に、押圧操作部が形成されること、前記頭冠の高さが、蓋体の係合部から嵌合部までの距離よりも長いこと、前記支持部が、押圧操作部を押圧した際に頭冠の上側半分の外面と少なくとも一部が面接触すること、前記押圧操作部が窪状であることを要件とする。
尚、本発明において「前」とは、筆記具におけるペン先側であり、「後」とは、その反対側を示す。また、「下」とは、蓋体(頭冠)の軸筒側であり、「上」とはその反対側を示す。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、軸筒の後端を露出、閉鎖する回動式蓋体を備えた筆記具であっても、爪等を引っ掛けて蓋体を軸方向に引き上げることなく、径方向に押圧することで嵌合状態の蓋体を容易に開放することが可能となるため、爪の長さや指の力に関係なく、蓋体を容易且つ確実に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の筆記具の一例を示す外観図である。
図2図1の筆記具の蓋体を開放した状態の外観図である。
図3図1の筆記具の摺動体付筆記体を外した状態(筆記具本体)の外観図である。
図4図3における蓋体を開放した状態の外観図である。
図5図3の縦断面図である。
図6図5の要部拡大断面図である。
図7】蓋体と頭冠の斜視図〔(a)係合部側、(b)支持部平面側〕である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の筆記具の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1乃至7に示す実施形態の筆記具1は、前軸2と後軸3を螺合により取り付けられる軸筒本体4内に複数本(四本)の筆記体が前後方向に移動可能に収容されている。筆記体の後部には、筆記体のインキ収容筒に収容した筆記具用インキと同色の摺動体9が配設してあり、筆記体はコイルスプリング12により後方に付勢される。尚、筆記体について詳細は図示していないが、前述の構成と同様にして他の三本の摺動体付筆記体を配設した従来から知られている出没機構のスライド式の多芯筆記具である。
【0010】
前記筆記体はボールペンレフィルであり、具体的には、インキ収容筒の先端部にボールが回転可能に抱持されたペン先部を装着し、インキ収容筒の内部には、黒色の剪断減粘性を有する水性ゲルインキ及びインキ追従体を直に収容してある。他の三本の筆記体も同様に、インキ収容筒の先端部にボールペンチップからなるペン先部を装着し、各筆記体で色の異なる水性ゲルインキ及びインキ追従体を直に収容したボールペンレフィルである。尚、筆記体としては、前述のボールペンレフィルの他、油性インキを収容したものや、シャープペンユニットが適用できる他、消しゴムユニットやタッチペンユニット等を用いることもできる。
【0011】
後軸3の後部には、前後方向に延びる細長状の摺動溝3bが四本形成されており、互いに、略等間隔に形成される。また、各摺動溝3bは、後方が開口しており、後軸3の後端3aで連通する開口部3cを有している。
更に、後軸3の内部には、略円筒状のスプリング支持部8を固着している。スプリング支持部8は、四本の筆記体が挿通される内孔が軸方向に貫設し、スプリング支持部8と、各々の摺動体9,10間には、コイルスプリング12,13が配置し、筆記体及び摺動体を後方に付勢してある。尚、図示はしていないが、他の2つの摺動体も摺動体9,10と同様に、スプリング支持部8と、各々の摺動体間には、コイルスプリング14,15が配置され、筆記体及び摺動体を後方に付勢している。
【0012】
後軸3の後部(二本の摺動溝の間)には、長手方向に沿って延びる凹状の装着溝が形成してあり、この装着溝にクリップ7を付設してある。尚、クリップ7は、落とし込み嵌合によって後軸3に固設してある。
また、クリップ7の後部には、軸筒外面から突出するように基部7aが延設され、基部7aの外面を挟持する対称位置に円形凹孔状のヒンジ部7bが形成してある。このヒンジ部7bに、ポリアセタールからなる略円盤状の蓋体5の一端部に設けた、クリップ7を正面から見て左右に延出する係合部5aを係合し、蓋体5を回動自在に係合してあり、前記蓋体5を回動することで、後軸3の後端3aを露出することができる。具体的に、係合部5aの係合位置には、基部7aの外面を挟持する対称位置に円柱状突起5bが形成されており、ヒンジ部7bとの係合状態(枢着)を維持している。
【0013】
また、蓋体5の軸方向の中央には、嵌合部5eとなる貫通孔が形成され、その内方には嵌合用の突起が形成されている。蓋体5が後軸3の後端3aを閉鎖する際、後軸3の後端部に軸方向に形成した、後方に向かって突出する被嵌合部3dに、嵌合部5e(突起)を乗り越え嵌合することで、蓋体5を後軸3に対して開閉自在に嵌合している。
【0014】
更に、前記蓋体5には、蓋体5よりも硬くて変形し難い、ポリカーボネートからなる略ドーム型の頭冠6が装着してある。具体的には、頭冠6の一方の側壁(ヒンジ側)は略垂直に面取りされた平面部6aとして形成され、頭冠装着時に、蓋体5より上方に延設される支持部5cの支持平面と一部を接触した状態となる。尚、前記支持部5cは、蓋体5の係合部5a側に、蓋体から垂直方向に延設されることで、径方向の押力を軸方向の嵌合解除力に変換するものである。尚、本実施形態では、支持部を蓋体に一体成形しているが、別体で形成したものを蓋体に取り付けて使用することもできる。
また、前記ヒンジ側側壁と略対称位置になる他方の側壁(即ち、蓋体5の他端部側)には、押圧操作時に指先が安定接触する窪部6bが形成されている。尚、前記窪部6bは必須ではないが、押圧開放操作時の最適な箇所を示す位置表示となるとともに、指先のグリップ性を向上できるために形成することが好ましい。
【0015】
前記頭冠6の平面部6a下方には、嵌合突起6cが対向する位置に形成されており、該嵌合突起6cが蓋体5の支持部5c下方の係合部5a外面に形成される傾斜部5dを乗り越え嵌合するまで頭冠6を押圧被覆することで、頭冠6が蓋体5を覆うように装着される。その際、蓋体5が頭冠6下部の開口内面と略接触状態で保持され、更に、平面部6aの下側が支持部5c平面の下側と面接触する。尚、前記面接触箇所は、頭冠押圧時(蓋体の開放操作時)に支持部5cの平面全体が平面部6aと面接触する構造となっており、頭冠6をF方向(軸筒径方向のヒンジ側)に押圧した際の押力を確実に支持部5cに伝達して蓋体5を上方向に回動させることができる。
【0016】
また、前記平面部6aと支持部5cは、組立時の位置決めを容易とするとともに、頭冠6を上方から下方にスライドさせる際のガイドとしても機能するため、組立性が高い構造となっている。
【0017】
尚、前記頭冠6の高さHは、蓋体5の係合部5a(ヒンジ部7b)から嵌合部5eまでの距離L(いずれも中心からの距離)よりも長く設定することが好ましく(図6参照)、この場合、頭冠をF方向(軸筒径方向のヒンジ側)に押圧した際の押力を嵌合解除力に効率的に変換できるため、弱い力で押圧した場合であっても、蓋体5を容易に開放できる。
【0018】
軸筒内に収容する筆記体のペン先部(ボールペンチップ)を前軸2の先端開口部2aから突出させるには、摺動体9の操作部9aを、摺動溝3bに沿って、前軸2の先端開口部2a方向へスライドすることにより、摺動体9に形成した係合突起が後軸3内に形成した係止部に係止して、筆記体のペン先部を前軸の先端開口部2aから選択して突出を維持することができる。また、摺動体9には、解除突起を設けてある。
【0019】
筆記体のペン先部が先端開口部2aからの突出を維持した状態で、他の摺動体10の操作部10aを前軸2の先端開口部2a方向にスライドすることで、摺動体10の解除突起が、スリーブ11を介して摺動体9の係止を解除し、先に突出していた筆記体のペン先部を前軸2内に没入させることができる。
【0020】
筆記体を交換する場合、蓋体5が後軸3の後端3aを閉鎖した状態から、頭冠6の窪部6bをヒンジ側に押圧(図1の矢印F方向)し、蓋体5の嵌合部5eと後軸3の被嵌合部3dとの嵌合を解除し、蓋体5を回動させて後軸3の後端3aを露出させる。この時、蓋体5は、窪部6bを親指の腹等の指先で押圧操作することにより容易に嵌合解除できるため、爪の長さや指の力に関係なく交換作業を行うことが可能となる。
【0021】
嵌合解除された蓋体5を回動し、後軸3の後端3aが露出すると、摺動溝3bから各々の摺動体9,10(その他図示せず)が、コイルスプリング12,13の後方付勢により後方外部に突出される。この状態から摺動体9を筆記具本体4内から取り出すことにより、その摺動体9と互いに連結状態にある筆記体(摺動体付筆記体)を後軸3から取り出し、その後、互いに連結状態にある新たな筆記体と新たな摺動体とを後端が開口した摺動溝3bから後軸3内に挿入する。そして、蓋体5を前方(ヒンジ部反対側)に回動させ、その後、蓋体5の嵌合部5eと後軸3の被嵌合部3dとを嵌合して、後軸3の後端3aを閉鎖する。これにより、筆記体及び摺動体の交換作業が終了するため、ユーザーが好みの筆記体とそれに対応した摺動体を軸筒内に交換可能に収容でき、しかも、筆記体及び摺動体を迅速且つ確実に交換することができる。
【0022】
本実施例では、便宜上、蓋体を回動し、後軸の後端が露出して、筆記体及び摺動体を交換可能としてあるが、蓋体を回動し、後軸の後端を露出して、鉛芯を充填するなど、蓋体の回動によって後軸の後端が露出する構造であれば特に限定されるものでなく、弱い力であっても蓋体を紛失することなく容易に開閉でき、筆記体の交換作業や鉛芯の充填をすることができる。
【0023】
更に、頭冠の頂壁の形状は特に限定されないが、透明又は半透明として頂壁の内面をダイヤカット等の多面体として装飾性を高めることもできる。また、頭冠の外面を、内面の多面体と相似形や大きさの異なる多面体として、装飾性を高めることもできる。更に、印刷や貼着等による加飾を施すことで、より多彩な装飾効果を付与することもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 筆記具
2 前軸
2a 先端開口部
3 後軸
3a 後端
3b 摺動溝
3c 開口部
3d 被嵌合部
4 筆記具本体
5 蓋体
5a 係合部
5b 円柱状突起
5c 支持部
5d 傾斜部
5e 嵌合部
6 頭冠
6a 平面部
6b 窪部
6c 嵌合突起
7 クリップ
7a 基部
7b ヒンジ部
8 スプリング支持部
9,10 摺動体
9a,10a 操作部
11 スリーブ
12,13,14,15 コイルスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7