(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含有してなる中間層と、前記中間層の表裏両面側に表面層を積層して、フィルムの巻き取り方向(MD)に実質的に一軸延伸して製膜した積層フィルムであって、
前記表面層はポリスチレン系樹脂から形成される樹脂組成の樹脂層であり、
前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの配合重量割合は、55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部を満たし、
前記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであるとともに、前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量が30重量%以下であり、
JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法に準拠した引裂試験に基づく前記積層フィルムの巻き取り方向(MD)に対して直交する幅方向(TD)の引裂強度が1.5N以下であり、
前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂のMFRの値(Rx)が4〜12g/10minである
ことを特徴とするシュリンクフィルム。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート製の樹脂ボトル容器(以下、「PETボトル」と表記する。)は、軽量でありながら耐久性があるため飲料用等の容器として広く普及している。このPETボトルのラベル用シュリンクフィルムとして、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、PET樹脂、ポリプロピレン樹脂等の各種樹脂フィルムが提案されている。
【0003】
ポリ塩化ビニル樹脂の場合、シュリンクフィルムとしての加熱収縮性、耐候性に優れているものの、塩素を含むため焼却処理に問題がある。ポリスチレン樹脂やPET樹脂の場合、加熱収縮性は優れている。しかし、PETボトルのリサイクルにおけるラベルの分離は、ボトル樹脂とラベルの樹脂との比重差が小さいため、比重差を利用した分離方法を使用することができず、PETボトルの再資源化の障害となっていた。そのため純度の高いリサイクル原料を得るために、風力分別等によるラベル分別のための新たに設備を導入する必要があり容易ではない。また、家庭においては、リサイクル意識の向上からボトルによってラベルを分離して廃棄されることが多く、そのため、ラベルにミシン目を設けて容易に手で剥がせるようになっている。しかしながら、ポリプロピレン樹脂の場合、フィルム製膜時の幅方向(TD)すなわちミシン目方向への引裂性が悪く、分別作業が容易ではなく、他の樹脂と比較して加熱収縮性も好ましくなかった。
【0004】
上記のとおり、各樹脂の抱える問題点に対処するべく、例えば、表面層を環状オレフィン系樹脂とし、基材層を結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体50〜95重量%と脂環式炭化水素樹脂5〜50重量%とする熱収縮性ポリオレフィン系シュリンクラベル用積層フィルムが提案されている(特許文献1参照)。さらに、ポリプロピレン系樹脂45〜94重量%と、エチレン・プロピレン系エラストマー1〜15重量%と、炭化水素樹脂5〜40重量%とからなる樹脂組成物を製膜したシュリンクフィルムが提案されている(特許文献2参照)。また、オレフィン系樹脂及びスチレン系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなる水添ブロック共重合体の接着樹脂からなる中間層とし、この中間層の表裏面にスチレン系樹脂の表面層を積層した熱収縮性積層フィルムが提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
特許文献1のフィルムによると、加熱収縮性は向上するとともに自然収縮率を抑制することができた。このフィルムの樹脂の比重はPET樹脂よりも小さいため、比重差による分離も可能となった。しかしながら、加熱収縮性は十分ではない。表面層に用いる環状オレフィン系樹脂はフィルムの外観不良の要因となりやすい。特許文献2のフィルムでは、高い加熱収縮率を有し自然収縮率も抑え、破断し難いフィルムとすることができた。ただし、耐衝撃性においては必ずしも十分とはいえず、フィルムの連続製造、その後の加工において難点がある。
【0006】
特許文献3のフィルムの場合、良好な熱収縮性を得ることができる。加えて、比重差による分離精度も高い。このようにシュリンクフィルムとしての特性を具備してはいるものの、引き裂き性が思わしくない。フィルムの引き裂きの良否は、PETボトルからフィルムを取り外す際の作業性に大きく関わる。
【0007】
一連の経緯から、例えばボトルに用いられるPET樹脂との比重差のある樹脂を用いながら、フィルムの外観不良の解消、高い加熱収縮性の発揮、フィルムの強度向上、及びPETボトルからの分別作業性の全てを調和して満たすフィルムは、未だ完成していない。
【0008】
これに加えて、既存のPETボトルのラベル用シュリンクフィルムの大半は、フィルム製膜時の幅方向(TD)に収縮する製法により製造されている。この場合、シュリンクフィルムに所定の印刷を施した後に筒状にして巻き取られ、ロール状で供給され、装着機では裁断してPETボトルに被せて加熱収縮により被着していた。このように、PETボトルに被せる工程が煩雑となっていた。このことから、生産効率のさらなる向上のためには、印刷後からPETボトルに被せるまでの工程が比較的容易となるフィルム製膜時の長さ方向(MD)への収縮を可能とするフィルムの設計が重要となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、PET樹脂と比重差を有する樹脂を用いながら、シュリンク工程においてフィルムの特定方向への加熱収縮性を向上させるとともに、フィルム自体の強度と必要時に容易に裂くことができる性質を備え、さらにフィルムの加工効率の向上を可能とするシュリンクフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1の発明は、ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含有してなる中間層と、前記中間層の表裏両面側に表面層を積層して、フィルムの巻き取り方向(MD)に実質的に一軸延伸して製膜した積層フィルムであって、
前記表面層はポリスチレン系樹脂から形成される樹脂組成の樹脂層であり、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの配合重量割合は、55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部を満たし、前記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであるとともに、前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量が30重量%以下であり、JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法に準拠した引裂試験に基づく前記積層フィルムの巻き取り方向(MD)に対して直交する幅方向(TD)の引裂強度が1.5N以下であ
り、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂のMFRの値(Rx)が4〜12g/10minであることを特徴とするシュリンクフィルムに係る。
【0012】
請求項
2の発明は、
ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含有してなる中間層と、前記中間層の表裏両面側に表面層を積層して、フィルムの巻き取り方向(MD)に実質的に一軸延伸して製膜した積層フィルムであって、前記表面層はポリスチレン系樹脂から形成される樹脂組成の樹脂層であり、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの配合重量割合は、55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部を満たし、前記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであるとともに、前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量が30重量%以下であり、JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法に準拠した引裂試験に基づく前記積層フィルムの巻き取り方向(MD)に対して直交する幅方向(TD)の引裂強度が1.5N以下であり、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂が2種類以上のポリプロピレン系樹脂であり、下記(i)式から求められる前記2種類以上のポリプロピレン系樹脂における見かけのMFRの値(Ry)が4〜12g/10minである
ことを特徴とするシュリンクフィルムに係る。
【0013】
前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂に占める第1ポリプロピレン系樹脂の重量をM
1、そのMFRをR
1g/10minとし、第2ポリプロピレン系樹脂の占める重量をM
2、そのMFRをR
2g/10minとし、第Nポリプロピレン系樹脂の占める重量をM
N、そのMFRをR
Ng/10minとして(i)式に代入する。
【0014】
【数1】
【0015】
請求項
3の発明は、前記スチレン系エラストマーが、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体またはスチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体である請求項1
または2に記載のシュリンクフィルムに係る。
【0016】
請求項
4の発明は、下記(I)の層間強度試験に基づく前記積層フィルムの各層間の層間強度が0.2N/15mm以上である請求項1ないし
3のいずれか1項に記載のシュリンクフィルムに係る。
【0017】
(I)層間強度試験は、前記積層フィルムを縦297mm、横210mmに裁断して縦方向に折り畳み、折り畳んだ辺部同士を横方向の帯状にヒートシールし、前記ヒートシール部位にて前記表面層と前記中間層との間に層間剥離を生じさせ、前記層間剥離部位を含めて前記積層フィルムを15mm幅の帯状に縦方向に裁断し、前記積層フィルムの上片と下片を互いに180°対向する向きで200m/minの速度にて引張してT字状剥離させたときの強度を求める試験である。
【0018】
請求項
5の発明は、JIS Z 1709(1995)に準拠し90℃の熱水に前記積層フィルムを浸漬して測定した90℃熱水収縮率試験において、下記(ii)式から求めた前記幅方向(TD)の伸縮変化率(St)が10%未満である請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のシュリンクフィルムに係る。
【0019】
前記積層フィルムにおける加熱前の幅方向の長さをLt
0とし、その加熱後の幅方向の長さをLt
1とし、(ii)式に代入する。
【0020】
【数2】
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係るシュリンクフィルムによると、ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含有してなる中間層と、前記中間層の表裏両面側に表面層を積層して、フィルムの巻き取り方向(MD)に実質的に一軸延伸して製膜した積層フィルムであって、
前記表面層はポリスチレン系樹脂から形成される樹脂組成の樹脂層であり、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの配合重量割合は、55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部を満たし、前記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであるとともに、前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量が30重量%以下であり、JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法に準拠した引裂試験に基づく前記積層フィルムの巻き取り方向(MD)に対して直交する幅方向(TD)の引裂強度が1.5N以下であ
り、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂のMFRの値(Rx)が4〜12g/10minであるため、PET樹脂と比重差を有する樹脂を用いながら、シュリンク工程においてフィルムの特定方向への加熱収縮性を向上させるとともに、フィルム自体の強度と必要時に容易に裂くことができる
引き裂き性能が良好となり、フィルムに必要な引裂荷重や層間強度等の物理的性質の均衡を維持することができて、さらにフィルムの加工効率の向上を可能とするシュリンクフィルムを得ることができた。
【0022】
請求項
2の発明に係るシュリンクフィルムによると、
ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーを含有してなる中間層と、前記中間層の表裏両面側に表面層を積層して、フィルムの巻き取り方向(MD)に実質的に一軸延伸して製膜した積層フィルムであって、前記表面層はポリスチレン系樹脂から形成される樹脂組成の樹脂層であり、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂と前記熱可塑性エラストマーとの配合重量割合は、55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部を満たし、前記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーであるとともに、前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量が30重量%以下であり、JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法に準拠した引裂試験に基づく前記積層フィルムの巻き取り方向(MD)に対して直交する幅方向(TD)の引裂強度が1.5N以下であり、前記中間層における前記ポリプロピレン系樹脂が2種類以上のポリプロピレン系樹脂であり、前記2種類以上のポリプロピレン系樹脂における見かけのMFRの値(Ry)が4〜12g/10minであるため、
PET樹脂と比重差を有する樹脂を用いながら、シュリンク工程においてフィルムの特定方向への加熱収縮性を向上させるとともに、フィルム自体の強度と必要時に容易に裂くことができる引き裂き性能が良好となり、フィルムに必要な引裂荷重や層間強度等の物理的性質の均衡を維持することができ
て、さらにフィルムの加工効率の向上を可能とするシュリンクフィルムを得ることができた。
【0023】
請求項
3の発明に係るシュリンクフィルムによると、請求項1
または2の発明において、前記スチレン系エラストマーが、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体またはスチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体であるため、ポリプロピレン系樹脂との相溶性やフィルムの加熱収縮性が良くなる。
【0024】
請求項
4の発明に係るシュリンクフィルムによると、請求項1ないし
3のいずれかの発明において、層間強度試験に基づく前記積層フィルムの各層間の層間強度が0.2N/15mm以上であるため、フィルムに対する印刷、搬送、裁断等の加工時の不具合を抑制することができる。
【0025】
請求項
5の発明に係るシュリンクフィルムによると、請求項1ないし
4のいずれかの発明において、JIS Z 1709(1995)に準拠し90℃の熱水に前記積層フィルムを浸漬して測定した90℃熱水収縮率試験において、(ii)式から求めた前記幅方向(TD)の伸縮変化率(St)が10%未満であるため、ボトル表面に貼り付いた際の歪みは少なく、包装体としての見栄えは良くなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のシュリンクフィルムは、主に清涼飲料水用のPETボトル等の容器のラベルに用いられるフィルムである。シュリンクフィルム表面に適宜印刷され、装着機にて所定の長さに切断された後、直接または端同士貼り合わされて円筒状に形成され、PETボトル等の容器に被せられる。その後、加熱によってフィルムは収縮して、当該PETボトル表面に密着、固定される。なお、PETボトル以外であってもシュリンクフィルムが適用される物品にも用いることができる。
【0028】
図1に示すように、シュリンクフィルムの本体である積層フィルム10は、フィルムの大半を占める中間層11と、当該中間層の表裏両面側に積層した2の表面層を備える。図示の表面層は第1表面層12と第2表面層13である。すなわち、当該積層フィルム10は、少なくとも第1表面層12、中間層11、及び第2表面層13の3層を備えた構造体である。両表面層を同一の組成としても異なる組成とすることもできる。そして、積層フィルム10表面(つまり、表面層12または13のいずれか)に適宜の印刷が施される。例えば、印刷される側の表面層には印刷インク等が付着しやすい樹脂組成とすることに加え、コロナ処理等の適宜の表面処理を施してもよい。当該積層フィルムを円筒状にするに当たり、接着剤の塗布やヒートシール等の手法により積層フィルム同士は貼り合わせられる。
【0029】
中間層11は、ポリプロピレン系樹脂と熱可塑性エラストマーとを含む組成である。ポリプロピレン系樹脂の採用により、低比重とともに、中間層の強度維持が可能である。ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン単独のホモポリプロピレンの他に、ポリプロピレンとαオレフィンとの重合によるランダム共重合体、ブロック共重合体等の一種あるいは複数種から選択される。プロピレン以外のオレフィンは、エチレン、他に炭素数4ないし18の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンである。これらの各種から選択可能である。後出の実施例では、ランダムポリプロピレンを使用した。
【0030】
中間層11の一方の成分となるポリプロピレン系樹脂の選択に際し、MFR(メルト・フロー・レイト)の値を指標とすることができる。中間層11は当該シュリンクフィルム(積層フィルム10)の厚さの半分以上を占める。そこで、中間層の物性がシュリンクフィルム自体の強度に大きく影響を与える。このことから、中間層自体や他層との相溶性が勘案される。そこで
、単独種類のポリプロピレン系樹脂におけるMFRの値(Rx)は4ないし12g/10minの範囲である。
【0031】
さらに、中間層11に配合されるポリプロピレン系樹脂については、樹脂の特性等を活かすため2種類以上のポリプロピレン系樹脂の混合とすることができる。この場合
、2種類以上のポリプロピレン系樹脂における見かけのMFRの値(Ry)も4ないし12g/10minの範囲である。ここで、複数種類の樹脂における見かけのMFR値については、前出の(i)式として概算することができる。複数種類の樹脂における見かけのMFR値の求め方は、例えば特許第3355819号の段落0020、0021に開示の式に基づき、同式において樹脂種類を拡張するべく変形し、(i)式のとおりとした。なお、式中の「M
1logR
1+M
2logR
2+…+M
NlogR
N」は「Σ(M
i・logR
i)」、「M
1+M
2+…+M
N」は「Σ(M
i)」等と表すこともできる。
【0032】
(i)式中、中間層11におけるポリプロピレン系樹脂に占める第1ポリプロピレン系樹脂(1種類目)の重量はM
1、その樹脂のMFR値はR
1g/10minである。同様に、第2ポリプロピレン系樹脂(2種類目)の重量はM
2、その樹脂のMFR値はR
2g/10minである。そして、第Nポリプロピレン系樹脂(N種類目)の重量はM
N、その樹脂のMFR値はR
Ng/10minである。例えば、中間層11におけるポリプロピレン系樹脂が2種類のポリプロピレン系樹脂の混合である場合、見かけのMFRの値(Ry)は(iii)式として求めることができる。また、3種類のポリプロピレン系樹脂の混合である場合、見かけのMFRの値(Ry)は(iv)式として求めることができる。
【0035】
単独種類のポリプロピレン系樹脂におけるMFRの値(Rx)及び複数のポリプロピレン系樹脂の混合による見かけのMFRの値(Ry)に関し、ともに4ないし12g/10minが好例である。理由としては、MFRが大きすぎまたは小さすぎとなる場合、後述するようにシュリンクフィルムの引裂荷重や層間強度等を悪化させてしまう。そのため、MFRの値(Rx及びRy)はともに前記の範囲とすることによりフィルムに必要な引裂荷重や層間強度等の物理的性質の均衡を維持することができる。
【0036】
中間層に配合される熱可塑性エラストマーとして、好ましくはスチレン系エラストマーが選択される。エラストマー樹脂は加熱シュリンク時に大きな熱収縮を得ることができる。特に、スチレン系エラストマーとすることにより、高濃度でのエラストマー添加が可能となる。
【0037】
具体的に、スチレン系エラストマーとして、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレンブロック共重合体、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン−イソプレンランダム共重合体ゴム等、さらにはこれらの水素添加物、スチレンまたはその誘導体の単独重合体もしくは共重合体を挙げることができる。
【0038】
背景技術にて開示した特許文献3(特許第3914656号公報)の段落0023において、「中間層に使用する上記ブロック共重合体中のスチレン含量は20〜75重量%がよく、より好ましくは30〜70重量%である。スチレン含量が20%未満の場合は、接着樹脂としての効果が得られにくく、また、75重量%を越えると、得られる積層フィルムの透明性が低下する場合がある。」と開示されている。すなわち、先行発明のスチレン系のブロック共重合体は、スチレン含有量を20重量%、好ましくは30重量%よりも多くする構造の樹脂である。
【0039】
これに対し、本願のスチレン系エラストマーの特徴として、当該スチレン系エラストマー樹脂分子全体に占めるスチレン部分の含有量は30重量%以下に規定される。スチレン部分とは、「C
6H
5−CH
2−」、「C
6H
4R−CHR−」(Rは水素または炭素数1ないし5のアルキル基である。)等のフェニル基部分であり、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が該当する。
【0040】
後記実施例のとおり、発明者らの試行によると、前出の特許と異なりスチレン含有量30重量%を超えた場合にフィルムに白濁が生じる等の外観上の不具合発生を確認した。スチレン部分の含有量に起因する影響の詳細は不明ではあるものの、中間層を構成する他のポリプロピレン系樹脂とスチレン部分との相溶性の相違が要因であると考えられる。シュリンクフィルムに印刷が施されるためフィルムの白濁は目立たなくなる。しかし、印刷デザイン等の問題から透明部分が現れることもある。このため、シュリンク後の白濁抑制は商品特性上の要素となり得る。そこで、スチレン系エラストマーとしながらも、スチレンの含有量を30重量%以下に抑える組成とすることに意味がある。
【0041】
従って、スチレン系エラストマーにおいてスチレン部分の含有量を極端に多くし過ぎない組成とし、後記実施例にて示すように、ポリプロピレン系樹脂との相溶性や加熱収縮性を勘案して
、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体またはスチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体が選択される。
【0042】
両成分の配合割合は、ポリプロピレン系樹脂を前者とし、熱可塑性エラストマーを後者とすると、「55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部」の範囲値に規定される。好ましくは「55重量部:45重量部ないし90重量部:10重量部」、さらに好ましくは「55重量部:45重量部ないし85重量部:15重量部」の範囲値に規定される。ポリプロピレン系樹脂の配合を前記の範囲値のとおり過半数以上とする主な理由は強度確保とともに比重差の制御である。すなわち、包装対象となるPETボトルのポリエチレンテレフタレートよりも本発明の積層フィルム10全体の比重を小さくすることである。さらには、両樹脂間の相溶性も影響すると考えられる。
【0043】
中間層11の両面に配される第1表面層12及び第2表面層13は、シュリンクフィルムの特性に鑑み
、ポリスチレン系樹脂から形成される。ポリスチレン系樹脂は、シュリンクフィルムに必要不可欠な加熱収縮性を向上させるため選択される。
【0044】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系モノマーの重合体、あるいは、スチレン系モノマーにブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等を含むランダムもしくはブロック共重合体等が例示される。後記の実施例においては、ビニル芳香族炭化水素の含有量が60ないし95重量%であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの割合が前記ブロック共重合体中の全ビニル芳香族炭化水素の50ないし95重量%であるスチレン・ブタジエン共重合体を大半の成分としたスチレン系樹脂としている。
【0045】
積層フィルム10の中間層11、第1表面層12、及び第2表面層13の樹脂には、帯電防止性能が求められることが多く、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物、多価アルコール等をはじめ各種の帯電防止剤が適度に添加されている。さらに、必要により、アンチブロッキング剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤が含有されることもある。
【0046】
シュリンクフィルムの実需要の観点から、積層フィルム10全体の好適な厚さはおよそ20ないし50μmの範囲である。なお、収縮率の観点から中間層11と両表面層12,13の厚さの比率(第1表面層12/中間層11/第2表面層13の層厚比率)は、1/1/1ないし1/4/1が好ましい。むろん、フィルムの厚さはPETボトルの大きさ、形状、フィルム自体の強度等に応じて適切に設定される。
【0047】
続いて、
図2を用い、シュリンクフィルム(
図1の積層フィルム10)の製造工程を説明する。シュリンクフィルム(積層フィルム10)は、通常、図示の延伸装置50を用いて製膜される。はじめに、樹脂溶融部51において、各層毎に構成成分の樹脂は溶融され、中間層、両表面層の樹脂溶融物は、Tダイ52より所定量ずつ、「表面層/中間層/表面層」の層状に形成されて吐出される。
【0048】
本発明に規定するシュリンクフィルムの特徴は、フィルムの巻き取り方向MD(フィルムの縦方向、機械方向、あるいは流れ方向とも称される。)に実質的に一軸延伸して製膜したことである。フィルムの縦方向(MD)に一軸延伸する方法として、テンター延伸やロール延伸等がある。本発明においてはロール延伸によりフィルムの巻き取り方向MDへの延伸を行った。ロール延伸に際し、Tダイ52より吐出された樹脂層状物は、順次、複数のローラー53に誘導され、当該ローラー間を通過する間に巻き取り方向のみに延伸される。その後、適宜熱固定(ヒートセット)、側端部の切りそろえ等を経て本発明のシュリンクフィルムは完成する。フィルムの巻き取り方向MDのみの一軸延伸とすることにより、フィルムには巻き取り方向に強い収縮性を生じさせ得る。また、樹脂の配向性を巻き取り方向に揃えることができ、同方向の強度を高めることができる。図中、符号TDはフィルムの幅方向である。
【0049】
シュリンクフィルム(積層フィルム)は、例えば、PETボトル等に被着して流通した後、廃棄時には剥がされる。ラベル用のシュリンクフィルムの場合、予め破線状のミシン目がボトルの高さ方向に設けられていることが多い。このことから、ミシン目に沿って容易に裂け易くして利便性を高めることができる。
【0050】
そこで、裂けやすさの指標として、JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法が利用される。トラウザー引裂法に準拠した引裂試験に基づいて、積層フィルム10におけるフィルムの巻き取り方向MDと直交する幅方向TDの引裂強度は1.5N以下に規定される。
【0051】
前記規格のトラウザー引裂法では、フィルムの巻き取り方向にフィルムを裂く試験となっている。しかし、本発明では、これとは異なりフィルムの幅方向TDに沿ってフィルムを裂く試験としている。詳細は後述するとおり、本発明のシュリンクフィルムはフィルムの巻き取り方向MDで印刷され円筒状に組み立てられる。そのため、フィルムの幅方向TDがフィルムを裂く方向となる。
【0052】
後記実施例に示すとおり、引裂強度1.5Nを上回る場合、フィルムの引き裂きやすさは大きく低下する。引裂強度の下限については特段限定されないものの、極端に低いようでは製品化されたPETボトルの落下時にフィルムが断裂するおそれからフィルム強度が保持できず好ましくない。このことから、シュリンクフィルム(積層フィルム)には少なくとも0.8N以上の引裂強度が望まれる。
【0053】
シュリンクフィルム(積層フィルム10)自体が具備する強度として、フィルムを形成する中間層11、第1表面層12、及び第2表面層13の各層間での層間強度が重視される。フィルム内の層間強度が伴わなければ、フィルムに対する印刷、搬送、裁断等の加工時に不具合が生じるおそれがある。そこで
、層間強度試験(I)に基づく積層フィルム10の各層間の層間強度が規定される。
【0054】
層間強度試験(I)を詳しく述べると、
図3に示すとおり、まず測定対象となるフィルム10は、巻き取り方向MDを縦とし幅方向TDを横とし、縦297mm、横210mmのA4サイズに裁断される(
図3(a))。当該フィルム10は長手方向となる縦方向(MD)で半分に折り畳まれ、折り畳んだ辺部16,17同士は横方向(TD)に帯状にヒートシールされる(
図3(b),(c))。図中、符号15はヒートシール部位である。断面図においてはヒートシール部位を「**」として示した。ヒートシール後のフィルム10は、辺部16,17にて上下に引き離される(
図3(d))。
【0055】
この引き離しにより、ヒートシール部位15にて中間層11と、第1表面層12または第2表面層13との間に層間剥離が生じる(
図4(a))。図示では、第1表面層12と中間層11との剥離であり、剥離部位18が生じる。ただし、層間強度が高い場合は層間では剥離は生じず、フィルム自体の破断となる(
図4(b))。その後、層間剥離(
図4(a)参照)の生じたヒートシール部位を含めて当該積層フィルム10は15mm幅の帯状に縦方向(MD)に裁断される(
図4(c))。帯状の裁断片19は、辺部16,17を上片と下片として互いに180°対向する向きで側面視T字状に開かれて引張試験機に固定される(
図4(d))。そして、200m/minの速度で帯状の裁断片19を上下に引張してT字状剥離させて測定値(N)が求められる。測定値の平均から、当該フィルムの層間強度(N/15mm)が算出される。
【0056】
このようにして算出される積層フィルム10の各層間の層間強度の適切な数値は0.04N/15mm以上、好ましくは0.1N/15mm以上、さらに好ましくは0.2N/15mm以上を満たすことである。後記の実施例に示すように、0.04N/15mmは事実上の下限となる。そこでより強度を高めるべく0.1N/15mm以上が好ましい。なお、層間剥離自体が生じない例もあることから、上限に規定はない。
【0057】
本発明に規定するシュリンクフィルムを使用した際の印刷、加工上の特徴について、従来のシュリンクフィルムとの相違を含めて説明する。
【0058】
従来のシュリンクフィルムの製膜においてはテンター等を用いた幅方向TDの延伸が一般的であった。一方、巻き取り方向MDに延伸する方法として、テンター延伸、ロール延伸等がある。巻き取り方向MDに延伸する方法は限定されないものの、本発明においてはその一例として、ロール延伸により巻き取り方向MDに延伸を採用した。当該製膜方法とすることにより、巻き取り方向MDに大きな収縮性能を発揮する(後記実施例参照)。
【0059】
そこで、
図5(a)に示すとおり、シュリンクフィルム(積層フィルム10)の一側表面に対し、ラベル用の印刷は巻き取り方向MDに沿って施される。図示の印刷部Pはフィルム収縮を勘案した幅広形状である。
図5(b)では、印刷後に対象となるPETボトルに対応した長さに裁断され、個々のラベルフィルム30を得ることができる。
【0060】
これに対し、
図7(a)は従前の幅方向TDの延伸により製膜したシュリンクフィルム10xである。ラベル用の印刷は幅方向TDに沿って施される。図示の印刷部Qもフィルム収縮を勘案した幅広形状である。むろん、シュリンクフィルム10xにおいても逐次裁断されて個々のラベルフィルム35を得ることができる。
【0061】
そして、ラベルフィルム30は印刷部Pを外側にして丸められる(
図6(a))。接合部31にて接着剤もしくはヒートシールにより互いのラベルフィルム30の端部同士は接合され円筒体に形成される(
図6(b))。その後、対象のボトルBの胴部に被せられて加熱される(
図6(c))。最終的にラベルフィルム30は熱収縮(シュリンク)により、ボトルBの胴部に密着するとともに当初の印刷部Pは適切な印刷部P1に収縮する(
図6(d))。
【0062】
従前品のラベルフィルム35についても、
図7(b),(c)のとおり、円筒体に形成され、ボトルBに被せられる。熱収縮(シュリンク)により、ボトルBの胴部に密着する。当初の印刷部Qは適切な印刷部Q1に収縮する。
【0063】
この流れからわかるように、個々のラベル用フィルムに裁断された後の加工等については、本発明品と従来品との相違はあまり多くない。しかしながら、本発明の積層フィルム10を使用した場合、印刷部Pの印刷とラベルフィルム30の裁断は連続的に可能となる。また、積層フィルムを巻き取ったロールへ印刷部を印刷する際の効率も良い。さらに、
図5(b)の向きのままラベルフィルム30は搬送され、加工される。
【0064】
従来のシュリンクフィルム10xからなるラベルフィルム35と比較して、本発明では裁断後にラベルフィルム30の方向を変更する工程は省略される。すなわち、最終的にボトルに貼り付けられるまでの工程が簡素化され、加工、巻き付けの効率向上が見込まれる。特に、従前の幅方向TDの延伸により製膜されたシュリンクフィルムに対応した加工機から、本発明に開示の巻き取り方向MDの延伸により製膜されたシュリンクフィルムに対応した加工機の開発による影響が大きい。
【0065】
前掲の
図5、
図6に開示のフィルム製造、印刷、ボトルへの被着から勘案されるとおり、積層フィルムの巻き取り方向MDには良好なシュリンク性能が求められる。これに対し、巻き取り方向MDに対し直交する幅方向TDはボトルの高さ方向であるため、大きな熱収縮は歪みの原因となり好ましくない。
【0066】
そこで
、JIS Z 1709(1995)に準拠しつつ、熱媒体を90℃の熱水に変更して積層フィルムを浸漬して測定した90℃熱水収縮率試験において、前出の(ii)式から求めた幅方向TDの伸縮変化率Stは10%未満に規定される。積層フィルムにおける浸漬加熱前の幅方向の長さはLt
0であり、その浸漬加熱後の幅方向の長さはLt
1である。そこで、浸漬加熱前の当初の長さと浸漬加熱後の長さを対比して伸縮の割合を評価した。伸縮変化率Stは積層フィルムの幅方向長さが加熱変形に伴い膨張する場合及び収縮する場合の両方を含み得る。
【0067】
幅方向TDの伸縮変化率Stとは、
図6の熱収縮(シュリンク)により、ボトルの胴部に密着する様子から理解されるように、ボトルの胴部に密着した際のボトルの縦方向の位置ずれや歪みの許容量と換言することができる。自明ながら、幅方向TDの伸縮変化率が少なければボトル表面に貼り付いた際の歪みは少なく、包装体としての見栄えはよくなる。そこで、前記のとおり、幅方向TDの伸縮変化率Stは10%未満とするべく規定される。10%を超える場合、変形量が大きく実需用上の観点から不向きとなることが多いためである。
【実施例】
【0068】
〔シュリンクフィルムの作成〕
試作例1ないし18のシュリンクフィルムは、後記の表1ないし4に示した配合割合(重量部)に基づく。原料となる樹脂のペレット等を単軸押出機に供給し、供給原料を溶融、混練して三層共押出Tダイフィルム成形機とこれに続く一軸延伸機により製膜した。中間層は各表中の「中間層」に記載の樹脂であり、中間層の表裏両面に配した表面層(第1表面層及び第2表面層)は、双方ともに同一組成とした。重複を避けるため一方のみの表記とした。
【0069】
〔使用原料〕
使用した原料樹脂、添加剤は次のとおりである。
〈表面層の組成〉
原料1:スチレン・ブタジエン共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製,商品名「860S」,MFR10g/10min)
原料2:耐衝撃性ポリスチレン系樹脂(PSジャパン株式会社製,商品名「475D」,MFR2g/10min)
原料3:アンチブロッキング剤(日本ポリエチレン株式会社製,商品名「MBN560B」)
【0070】
〈中間層のポリプロピレン系樹脂の組成〉
原料4:プロピレン−αオレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製,商品名「ウィンテックWFX6」,MFR2g/10min)
原料5:プロピレン−αオレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製,商品名「ウィンテックWFW4」,MFR7g/10min)
原料6:プロピレン−αオレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製,商品名「ノバテックMA3U」,MFR15.5g/10min)
原料7:プロピレン−αオレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製,商品名「ウィンテックWMG03」,MFR30g/10min)
【0071】
〈中間層の熱可塑性エラストマーの組成〉
原料8:スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(クレイトンポリマージャパン株式会社製,クレイトンG1657MS,スチレン含有量13%)(表中:SEBSと略記)
原料9:スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体(クレイトンポリマージャパン株式会社製,クレイトンD1161,スチレン含有量15%)(表中:SISと略記)
原料10:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(株式会社クラレ製,ハイブラー7125,スチレン含有量20%)(表中:H−SISと略記)
原料11:スチレン−イソプレンブロック共重合体(日本ゼオン株式会社製,クインタック3280,スチレン含有量25%)(表中:SISと略記)
原料12:スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製,タフテックH1041,スチレン含有量30%)(表中:SEBSと略記)
原料13:スチレン・エチレン/ブチレン・スチレンブロック共重合体(株式会社クラレ製,セプトン8007,スチレン含有量30%)(表中:SEBSと略記)
原料14:スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体(クレイトンポリマージャパン株式会社製,クレイトンD1165,スチレン含有量15%)(表中:SISと略記)
【0072】
〔MFR値〕
各試作例のシュリンクフィルムにおいて、その中間層に配合したポリプロピレン系樹脂のMFRの値(g/10min)を表記した。単独種類のポリプロピレン系樹脂の場合、当該プロピレン系樹脂の公表値を実測値(Rx)の欄に表記した。複数種類のポリプロピレン系樹脂配合の場合、プロピレン系樹脂の公表値に基づいて、前出の(i)式に基づいて算出し計算値(Ry)の欄に表記した。具体的には、2種類混合では(iii)式、3種類混合では(iv)式を用いた。
【0073】
〔厚さの測定〕
各試作例のシュリンクフィルムに対し、厚さ測定器(株式会社東洋精機製作所製,B−1)を用い測定して全層厚さ(μm)を求めた。また、三層共押出Tダイフィルム成形機の層厚さ設定を層厚比率とした。左から順に「第1表面層/中間層/第2表面層」の比率とした。
【0074】
〔引裂荷重の測定〕
引裂強度の測定に際し、JIS K 7128−1(1998)のフィルム及びシートの引裂強さ試験方法−第1部:トラウザー引裂法に準拠して引裂荷重を測定した。各試作例のシュリンクフィルムについて、試験に供する試験片は、当該フィルムの幅方向TDを長辺、巻き取り方向MDを短辺に150mm×50mmの長方形状に切り出した。短辺の中点から長手方向(TD)に75mmの切れ込みを入れた。切れ込みの左右の片部を上下に180°広げてそれぞれを株式会社島津製作所製,万能試験機(オートグラフ(AG−1))のチャックに固定し、上下に引張して引き裂いた。引き裂き量が20mmを超えた位置における数値を当該フィルム試験片の引裂荷重(N)とした。
【0075】
〔シュリンクフィルムの密度〕
各試作例のシュリンクフィルムは複数種類の樹脂を含んで形成されている。そこで、原料樹脂の密度及び配合割合に基づいて式(v)のとおり全体フィルム密度(g/cm
3)を求めた。式中ρ
allは当該試作例のシュリンクフィルム全体の密度である。ρ
1は原料1の樹脂の密度であり、r
1は原料1の樹脂の配合割合である。以下同様に、ρ
2ないしρ
14、r
2ないしr
14は、原料2ないし原料14の樹脂の密度及び配合割合に対応する。該当する原料がない場合には、その原料に対応する項を省略した。なお、配合割合は、いずれも「0≦r
1,r
2,r
3,r
4,r
5,r
6,r
7,r
8,r
9,r
10,r
11,r
12,r
13,r
14≦1」を満たす数値である。
【0076】
【数5】
【0077】
〔層間強度試験〕
層間強度の測定は、
図3及び4に開示し、詳述した層間強度試験(I)に即して各試作例のシュリンクフィルムについて行った。詳細は同様となるため、省略する。シュリンクフィルムを折り畳んだ後の各辺部同士のヒートシール(
図3(b)参照)は、富士インパルス株式会社製,卓上シーラー(P−200)を使用した。ヒートシール部位はフィルムの巻き取り方向MD側に10mmの幅とした。
【0078】
層間剥離では、フィルムの巻き取り方向MD側に20mmの長さにわたって剥離部位18を生じさせ(
図4(a)参照)、その後、剥離部位18を含めて、幅方向TD側に15mm幅で帯状の裁断片に裁断した。裁断片の引張に株式会社島津製作所製,万能試験機(オートグラフ(AG−1))を用いた。同試験機に裁断片の辺部を固定し、上下方向に200m/minの速度にて引張してT字状剥離を生じさせて、測定値(単位N)を求めた。ひとつの試作例当たり裁断片を得る場所を変えながら、複数回、T字状剥離を生じさせて測定値を求めた。測定値の平均から、当該フィルムの層間強度(N/15mm)を算出した。
【0079】
〔伸縮変化率の測定〕
伸縮変化率は、JIS Z 1709(1995)に準拠して試作例のシュリンクフィルム毎に試料を調製した。試料は、フィルムの巻き取り方向MD(縦)を100mm、幅方向TD(横)を100mmとした。なお、前記規格における浴液を水に変更し、90℃に加熱した熱湯に試料を10秒間浸し熱収縮させた。その後、常温の水に試料を浸し、平らに静置して30分以内に縦と横の長さを測定した。
【0080】
各試作例のシュリンクフィルムにおける加熱前の幅方向TDの長さをLt
0とし、その加熱後の幅方向の長さをLt
1とし、前出の(ii)式に代入して幅方向TDの伸縮変化率St(%)を求めた。いずれの試作例においても、幅方向TDの伸縮変化は膨張する変化であった。
【0081】
同様に、各試作例のシュリンクフィルムにおける加熱前の巻き取り方向MDの長さをLm
0とし、その加熱後の巻き取り方向の長さをLm
1とし、(vi)式に代入して巻き取り方向MDの伸縮変化率Sm(%)も求めた。いずれの試作例においても、巻き取り方向MDの伸縮変化は収縮する変化であった。
【0082】
【数6】
【0083】
〔総合評価〕
各試作例に関し、上記の各種評価、測定により得られた結果をとりまとめ、実需要の観点から総合的に判断して次の4段階の総合評価を下した。
・評価A:「全ての指標において特に優れている良品である。」
・評価B:「全ての指標において比較的優れている良品である。」
・評価C:「一部に好ましくない指標があり製品として十分ではない。」
・評価D:「好ましくない指標から製品として問題がある。」
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
〔結果と考察〕
製品として適する総合評価は「A」、「B」であり、「C」、「D」は不十分もしくは不適格である。試作例3,4,5,6,7,9,10,11,12,14,15は良好であり、中でも試作例5,6,7,10は優れている。以下、個別に言及する。
【0089】
〈樹脂と配合割合について〉
試作例1,2のとおり、中間層にスチレン系エラストマーを全く含まない組成では、中間層はポリプロピレン系樹脂となり引裂荷重が上昇した。つまり、引き裂き難くなることを意味しボトル用のシュリンクフィルムとしては不向きである。このことから、中間層へのスチレン系エラストマーの配合は必須である。
【0090】
試作例3ないし8では、スチレン系エラストマーの配合量の増加に伴い引裂荷重は概ね低減する傾向となり、その分、引き裂きやすさは向上した。また、試作例5ないし8のとおり、表面層との層間強度は上昇しているため、シュリンクフィルムとして取り扱いやすさは良くなる。しかし、中間層におけるスチレン系エラストマーの配合量が半分にまで増えた場合、特にTD方向の伸縮変化率が大きくなる(試作例8参照)。従って、変形を抑制したい向きの変形が大きくシュリンクフィルムとしては相応しくない。
【0091】
この結果を踏まえ、シュリンクフィルムの中間層に占めるポリプロピレン系樹脂(前者)と、熱可塑性エラストマー(スチレン系エラストマー)(後者)との配合割合について、総合評価から判断すると、試作例3ないし7から、55重量部:45重量部ないし95重量部:5重量部、好ましくは、試作例3と4の間ないし試作例7から、55重量部:45重量部ないし90重量部:10重量部、さらに好ましくは、試作例4ないし試作例7から、55重量部:45重量部ないし85重量部:15重量部の範囲値に規定される。
【0092】
〈MFR値〉
MFR値について各試作例の実測値(Rx)または計算値(Ry)を比較した場合、試作例14,15,16の評価から勘案すると、MFR値(RxまたはRy)が2g/10min(試作例16)では引裂強度の悪化が著しい。また、TD方向の伸縮変化率が大きく性能上好ましくない。試作例9ないし13から、試作例12の12.0g/10minまでは性能上良好ではあるものの、試作例13のMFR値では悪化した。そこで、中間層を形成するポリプロピレン系樹脂に求められるMFR値は、実測値(Rx)または計算値(Ry)を通じて、4ないし12g/10minである。より好ましくは、試作例9,10より、4ないし10g/10minである。
【0093】
〈スチレン含有量〉
スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量に着目した場合、試作例15,17,18のとおり、スチレン含有量が30重量%に達すると、評価の良否が別れた。従って、他の指標との関連も加味して、30重量%を上限とした。
【0094】
〈伸縮変化率,層間強度〉
伸縮変化率については、試作例3ないし8の傾向から、中間層に配合するスチレン系エラストマーの配合割合と相関性がある。すなわち、スチレン系エラストマーの配合割合が増すほど伸縮変化率の増加が顕著である。いずれのフィルムも巻き取り方向MDの一軸延伸であることから巻き取り方向MDに大きく収縮する良好なシュリンクフィルム特性を発揮する。中間層と表面層の間の層間強度については、両層の樹脂の性質から容易に把握できるように、同種の樹脂であるほどより強度は高まる。すなわち、試作例3ないし8の傾向から、スチレン系エラストマーの配合割合の増加に伴い、層間強度は向上する。ただし、中間層のスチレン系エラストマーの配合量が多くなりすぎれば他の指標にも影響を及ぼすため、全体的な均衡の下で勘案した。
【0095】
〈引裂強度について〉
試作例における引裂荷重の結果から明らかであるように、おおよそ1.5N以下が引き裂きやすさの目安となる。ただし、極端に低くなるようであれば、フィルムの製造途中、フィルムに対する印刷や加工時に損傷するおそれが高まり、作業性において好ましくない。また、製品化後のPETボトルを落下した際のフィルム強度を維持することができない場合もある。このことから、概ね0.8N以上の引裂強度が妥当と想定できる。