特許第6227907号(P6227907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6227907スピンドルモータを備えた加工機械とその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227907
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】スピンドルモータを備えた加工機械とその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20171030BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B23Q17/00 A
   B23Q11/12 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-131962(P2013-131962)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-6700(P2015-6700A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】酒井 謙太朗
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269440(JP,A)
【文献】 実開昭63−063070(JP,U)
【文献】 実開昭50−144904(JP,U)
【文献】 特開平01−231637(JP,A)
【文献】 特開平05−300697(JP,A)
【文献】 特開2012−035396(JP,A)
【文献】 特開平05−138493(JP,A)
【文献】 特開平04−041151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00,11/12−11/14,
H02K 9/00−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ内部を通風冷却する冷却ファンと当該モータの内部温度を検出する内部センサとを有するスピンドルモータを備えた加工機械において、
前記冷却ファンの電源をオンオフするスイッチと、前記モータの外装表面温度を検出する外装センサと、外気温を検出する外部センサと、温度及び温度差の設定器と、ファン制御手段とを備え、ファン制御手段は、検出された前記内部温度及び外装表面温度並びに当該内部温度及び外装表面温度と外気温の差が、それぞれについて前記設定器に予め登録した設定温度以下又は設定温度差以下となったときに、前記冷却ファンの運転を停止し、この運転の停止時に、当該モータが通電されたときにその冷却ファンの運転を開始する、スピンドルモータを備えた加工機械。
【請求項2】
前記ファン制御手段が、当該加工機械の手動運転時にのみ呼び出される、請求項1記載の加工機械。
【請求項3】
前記モータが停止してから内部温度が外気温に達する時間を登録する時間設定器と、前記モータが停止してからの経過時間を計時するタイマとを備え、前記フアン制御手段が、当該タイマの計時時間が前記時間設定器に登録した時間を経過したときにも当該冷却ファンの運転を停止する、請求項1又は2記載の加工機械。
【請求項4】
モータ内部を通風冷却するための冷却ファン及び当該モータ内部の温度検出手段を内蔵したスピンドルモータを備えた加工機械の手動運転時における運転方法において、
前記モータの外装の表面温度を検出するセンサと外気温を検出するセンサとを設け、検出した前記内部温度及び外装表面温度並びに当該内部温度及び外装表面温度と外気温の差が、それぞれについて前記加工機械の制御器に予め登録した設定温度以下となったときに、当該モータに内蔵した冷却ファンの運転を停止し、この運転の停止時に、当該モータが通電されたときにその冷却ファンの運転を開始する、加工機械の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属やガラス板の加工機械、特に冷却ファンを内蔵したスピンドルモータを備えた加工機械に関するもので、無駄な電力の消費を避ける制御手段を備えた上記機械とその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工機械には、旋盤の主軸、マシニングセンタの工具軸、研削装置の砥石駆動軸などを駆動する主軸モータとしてスピンドルモータを備えた機械が多く存在する。NC装置を備えたこれらの加工機械は、通常は加工プログラムに従って自動運転されるが、機械動作の確認、テスト加工、加工プログラムの動作確認などを行うときは手動で運転される。手動運転には、指令する動作毎に操作盤のキーボードから切込み量や送り速度などを指定する純粋な手動運転や、操作盤のスイッチを押す毎に加工プログラムの1ステップないし1ブロック毎の動作を実行する半自動とも言えるような手動運転もあるが、いずれの手動運転においても、操作盤のスイッチなどによって開始された動作が終了すると、機械は次の動作指令を受けるまで停止状態で待機する。
【0003】
機械やNC装置は、オペレータが操作盤の前にいるかどうかを認識していないし、たとえカメラなどを設置してオペレータの存否を認識させたとしても、オペレータの意図までを察知することはできない。例えばオペレータが指令した機械動作の結果から機械や加工プログラムに設定するパラメータ(定数)を変更する操作を行っている場合などは、機械が停止した状態で長い時間待機するということが起こる。
【0004】
この待機時、機械やNC装置の電源は投入された状態となっているが、主軸は停止しているので、それを駆動するスピンドルモータ自体は殆ど電力を消費していない。しかし、連続回転することが本来の運転形態であるスピンドルモータは、温度上昇に起因する定格出力の低下を避けるために、内部に冷却ファンを設けてモータ内部の冷却を行っている。そのため、スピンドルモータを備えた加工機械では、機械が停止していても冷却フアンは回り続けているので、電力を消費している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、手動運転中にあっては、オペレータによる動作指令の入力を待って機械が停止状態で待機するという状況が常に生じ、オペレータが次の動作のためのパラメータの演算や設定変更に手間取るとか、機械動作が正しいかどうかを確認するために加工プログラムの作成者と打合せをするとかのために機械の停止状態が長時間になるということも起こる。
【0006】
そこでこのような長時間の機械の停止時には、その停止の間も電力を消費し続ける冷却ファンの運転を停止して省エネを図ることが考えられる。この場合、スピンドルモータは回転と停止のデューティ比により定格出力が相違し、機械の設計者はデューティ比を考慮して負荷が定格出力以下となる大きさのモータを選択して機械に搭載しているので、モータが停止してから冷却ファンの運転を停止するまでの時間間隔を一定時間に設定することはできない。
【0007】
スピンドルモータには、過負荷で使用されることによる故障や寿命低下を避けるために、モータ内部の温度を計測するサーミスタが設けられているので、このサーミスタの検出温度が設定値以下になったときに冷却ファンの運転を停止するということも考えられる。しかし、モータ内部の冷却は冷却ファンのみに依存している訳ではないと考えられ、また停止後に運転を開始したときにどのようなカーブを描いて温度が上昇するかによっても、冷却ファンの運転を停止することができるモータ内部温度が変わると考えられ、モータ内部の温度のみによって冷却ファンの運転を停止するのは、モータの保護と省エネの両方を満足させる手段としては不適当であると考えられる。
【0008】
そこでこの発明は、手動運転中のスピンドルモータが停止している間における無駄な電力消費を避け、モータの性能や寿命に悪影響を及ぼすことなく、スピンドルモータ内の冷却ファンの運転の停止を合理的に行うことによって電力の消費を低減する手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、冷却ファン13を内蔵したスピンドルモータ1を備えた加工機械の運転時、特に手動運転時において、当該モータの内部温度T2、外装表面温度T1及び外気温Taを検出し、当該内部温度T2及び外装表面温度T1並びに当該内部温度及び外装表面温度と外気温の差T2−Ta、T1−Taが、それぞれについて予め設定した設定温度T2max、T1max、T2amax、T1amax以下となったときに当該スピンドルモータ1に内蔵の冷却ファン13の運転を停止し、この停止時に、スピンドルモータ1の運転を開始したときに冷却ファン13の運転も開始することにより、上記課題を解決したものである。
【0010】
具体的には、モータ内部を通風冷却する冷却ファン13と当該モータの内部温度を検出する内部センサ12とを有するスピンドルモータ1を備えた加工機械に、当該モータ1の外装表面温度を検出する外装センサ11と、外気温を検出する外部センサaと、冷却ファン13の電源をオンオフする電磁開閉器14を設置する。そして、加工機械を制御する制御器2に、モータ外装表面温度の設定値T1max、内部温度の設定値T2max、モータ外装表面温度T1と外気温Taの差の設定値T1amax、内部温度T2と外気温Taの差の設定値T2amaxを登録する設定器21〜24と、ファン制御手段25とを設ける。
【0011】
ファン制御手段25は、各センサ11、12の検出温度及び温度差T1、T2、T1−Ta、T2−Taが対応する設定器21、22及び23、24の設定値T1max、T2max、T1amax、T2amax以下になったときに冷却ファン13の運転を停止する。
【0012】
更に、制御器2に時間設定器26とタイマ27とを設け、時間設定器26にはスピンドルモータ1が停止してから内部温度T2が外気温に達する時間tdを予め計測して登録し、スピンドルモータ1が停止したときにタイマ27の計時を開始し、タイマ27の計時時間が時間設定器26に登録された時間に達したときにも、当該冷却ファンの運転を停止する。そして、冷却ファン13が停止しているときにスピンドルモータ1が回転を開始したときに、冷却ファン13の運転も開始する。
【発明の効果】
【0013】
スピンドルモータのデューティサイクルに影響を与えることなく、通風冷却が必要なときにモータ内蔵の冷却用ファンを運転し、通風冷却が必要ないときは冷却ファンの運転を停止することで効果的に省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】スピンドルモータを備えた旋盤における要部のブロック図
図2】スピンドルモータの運転と停止の際の内部温度上昇と低下パターンを示すグラフ
図3】制御手順を示すフローチャート
図4】他の制御手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1は、この発明の加工機械の一例としての旋盤を模式的に示した図である。主軸台3に軸支された主軸(図には表われていない)は、先端にワークを把持するチャック4を備え、プーリ5、Vベルト6及びプーリ7を介してスピンドルモータ(主軸モータ)1で回転駆動される。符号8は、タレット刃物台である。
【0016】
スピンドルモータ1は、機械の主開閉器15、モータオンオフ用の電磁開閉器16及び速度制御器17を介して運転されている。スピンドルモータ1には、モータ内部を通風冷却する冷却ファン13と、内部温度を検出するサーミスタ12が設けられており、サーミスタ12の検出温度T2が制御器2に入力されている。この発明の加工装置では、スピンドルモータ1の外装表面に温度センサ11が装着され、その検出温度T1が制御器2に入力されている。また、制御器2の制御によりモータ内蔵の冷却ファン13の電源をオンオフする電磁開閉器14が追加設置されている。更に、機械周囲の外気温を検出する温度センサaが設けられ、この温度センサの検出温度Taも制御器2に入力されている。
【0017】
制御器2に設けた設定器21〜24には、温度センサ11で検出されるモータ外装表面温度T1と比較する設定値T1max、モータ内蔵のサーミスタ12が検出した温度T2と比較する設定値T2max、外装表面温度T1と外気温Taの差、すなわちT1−Taと比較する設定値T1amax及び内部温度T2と外気温Taとの差と比較する設定値T2amaxが予め登録されている。これらの設定値の値は、使用されるスピンドルモータ1の仕様及び運転実績等から導き出された値である。
【0018】
更に図の例では、スピンドルモータ1が停止したときに計時を開始するタイマ27と、モータ1が停止してからモータの内部温度が外気温になるまでの時間tdを登録する時間設定器26が設けられている。時間tdは、種々の条件及び外気温の下でモータを運転して、モータが停止してからモータ内蔵のサーミスタで検出される温度が外気温になるまでの時間を計測して、例えばその平均値を設定してやればよい。
【0019】
図3は、上記のように構成された旋盤におけるファン制御手段25の手順を示したフローチャートである。この手順は、手動運転モードで主軸モータの運転が停止したときに呼び出される。なお、主軸モータ1は、コイルに通電されて電機子の回転角が固定されていることもあるが、ここで言う停止は、コイルへの通電が遮断されて電機子が自由回転可能な状態になっていることを言う。
【0020】
手順が呼び出されると、まずタイマをリセットしてそのカウントを開始し、手動運転モードが継続していること、モータに通電されていないこと及び停止時間が時間tdに達していないことを条件として、モータの外装表面温度T1、内部温度T2、外装表面温度と外気温の差T1−Ta及び内部温度と外気温の差T2−Taがそれぞれの設定値T1max、T2max、T1amax及びT2amaxより大きいかどうかを比較し、これらの温度及び温度差の全てがそれらの設定値より小さくなったときに、スピンドルモータ1に内蔵された冷却ファン13の運転を停止する。また、これらの値が設定値以上であっても、タイマのカウント値がtd以上になれば、同様に冷却ファン13の運転を停止する。そして、冷却ファンの運転を停止したときは、運転モードの切換とスピンドルモータの通電とを監視し、手動運転モードでなくなったとき及びモータに通電されたときには冷却ファン13の運転を開始して手順を終了する。
【0021】
スピンドルモータの放熱は、冷却ファン13でモータ内部を通風冷却することによる放熱の他に、モータの外装表面からの輻射や外気への伝熱による放熱がある。この発明では、モータの内部温度のみでなく、外装表面からの放熱も考慮して冷却ファン13の運転を停止しているので、より合理的な冷却ファンの運転の停止による省エネを図ることができ、停止後の運転再開時における負荷の大きさ(モータ内部温度の上昇率の程度)をも考慮した省エネ運転が可能である。
【0022】
図3の例では、モータの外装表面温度、内部温度、外装表面温度と外気温の差及び内部温度と外気温の差の全てがそれらの設定値より小さくなったときに、冷却ファン13の運転を停止しているが、図4に示すように、モータの外装表面温度T1、内部温度T2、外装表面温度と外気温の差T1−Ta及び内部温度と外気温の差T2−Taがそれぞれの設定値T1max、T2max、T1amax及びT2amaxより大きいかどうかを比較し、これらの温度及び温度差のいずれかが設定値より小さくなったときに、スピンドルモータに内蔵された冷却ファン13の運転を停止するようにすることもできる。更に、制御器に図3の手順を実行するファン制御手段と、図4の手順を実行するファン制御手段と、その選択手段とを設けて、加工装置の設置環境やスピンドルモータの使用状況に応じて、いずれかの手順を選択させることもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 スピンドルモータ
2 制御器
10 加工機械
11 温度センサ
a 温度センサ
T1 外装表面温度
T1max 設定値
T2 内部温度
T2max 設定値
T2max 第2設定値
T2amax 設定値
Ta 外気温
td 時間
図1
図2
図3
図4