特許第6227912号(P6227912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許6227912-ビードフィラー成形装置および成形方法 図000002
  • 特許6227912-ビードフィラー成形装置および成形方法 図000003
  • 特許6227912-ビードフィラー成形装置および成形方法 図000004
  • 特許6227912-ビードフィラー成形装置および成形方法 図000005
  • 特許6227912-ビードフィラー成形装置および成形方法 図000006
  • 特許6227912-ビードフィラー成形装置および成形方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227912
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ビードフィラー成形装置および成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   B29D30/48
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-140514(P2013-140514)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-13403(P2015-13403A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】小川 渉
(72)【発明者】
【氏名】横田 賢明
(72)【発明者】
【氏名】山元 一史
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−228343(JP,A)
【文献】 特開2011−235525(JP,A)
【文献】 特開昭63−154334(JP,A)
【文献】 特開2010−269505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のビードコア部材を保持するビード保持部と、ビードフィラー部材を形成するためのフィラーゴムを押し出す押出機とを具えてなり、前記ビード保持部に保持させた前記ビードコア部材の外周面上に、ビードフィラー部材を形成するビードフィラー成形装置であって、
前記ビード保持部の側面に、該ビード保持部とともに前記ビードコア部材の中心軸線の周りに回転可能な成形ディスクを取り付けて配設し、
前記成形ディスクに近接配置されて、該成形ディスクおよび、前記ビードコア部材の外周面とともに、ビードフィラー部材の横断面形状に対応する空間を区画し、かつ、該空間に、押出機から押し出されたフィラーゴムを吐出する吐出口を有する口金を設けてなり、
前記口金の吐出面の、前記吐出口から前記成形ディスクの回転方向の後方側に位置する側縁に至るまでの表面領域に、該吐出面から窪んだ凹部を設けるビードフィラー成形装置。
【請求項2】
前記ビードコア部材の外周面上に形成する前記ビードフィラー部材が、直角三角形の横断面形状となる外周側部分を有し、前記口金の、前記空間の一部を区画する吐出面を、前記ビードフィラー部材の、直角三角形となる前記外周側部分の斜辺に平行としてなる、請求項1に記載のビードフィラー成形装置。
【請求項3】
前記成形ディスクが、前記ビードフィラー部材の横断面形状を規定する着脱可能なアタッチメントを備える、請求項1に記載のビードフィラー成形装置。
【請求項4】
前記ビード保持部を、前記ビードコア部材の半径方向に拡縮変形可能としてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビードフィラー成形装置。
【請求項5】
ビード保持部に保持させた環状のビードコア部材の外周面上に、押出機から押し出されたフィラーゴムを配設して、該外周面上にビードフィラー部材を形成するに当り、
前記押出機に設けた吐出口からフィラーゴムを押し出すとともに、該フィラーゴムを、前記ビード保持部の側面に取り付けられた成形ディスクに近接配置した口金に向けて送給し、
前記口金により、前記成形ディスクと前記ビードコア部材の外周面と前記口金とで区画される空間に、前記フィラーゴムを吐出させるとともに、該空間で該フィラーゴムに所要の横断面形状を付与しつつ、前記成形ディスクを前記ビード保持部とともに回転させて、前記ビードコア部材の外周面の全周にわたる前記ビードフィラー部材を形成するビードフィラー成形方法であり、
前記口金の吐出面の、前記吐出口から前記成形ディスクの回転方向の後方側に位置する側縁に至るまでの表面領域に、該吐出面から窪んだ凹部を設ける、ビードフィラー成形方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、環状のビードコア部材を保持するビード保持部と、ビードフィラー部材を形成するためのフィラーゴムを押し出す押出機とを具えてなり、前記ビード保持部に保持させた前記ビードコア部材の外周面上に、ビードフィラー部材を形成するビードフィラー成形装置および成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グリーンタイヤの成型工程では、成型ドラム上で円筒状に形成したインナーライナ部材の外周側に、これも円筒状をなすカーカスプライ部材を配設し、そして、そのカーカスプライ部材の幅方向の両端部分のそれぞれの外周側に、ビードフィラー部材を外周側に予め配設した一対の環状のビードコア部材のそれぞれを配置した後、カーカスプライ部材の前記両端部分のそれぞれを、各ビードコア部材の周りに折り返して、グリーンケースを成型することが一般に行われている。
なお、かかるグリーンケースはその後、外周側に配置したベルト・トレッドバンドに向けて、幅方向の中央部分を膨出変形させるとともに、該ベルト・トレッドバンドに圧着させて、グリーンタイヤの成型に供される。
【0003】
ここで従来は、環状のビードコア部材の外周面上に、それの全周にわたるビードフィラー部材を形成するに当り、円周方向に並べて配置されて、ビードコア部材が巻きかけられる複数個の駆動ローラおよびテンションローラと、ゴムストリップを押出成形する押出機と、押出機の先端に取り付けられて、押し出されたゴムストリップに所要の横断面形状を付与する口金と、該ゴムストリップを口金からビードコア部材の外周面まで案内するための、複数個のガイドローラを有するサーバと、サーバにより案内されたゴムストリップをビードコア部材の外周面上に圧着させる圧着ローラと、ビードコア部材の外周面上に配設されたゴムストリップを所要の長さで切断するカッターとを具える装置を用いていた。
【0004】
このような装置を用いて、ビードコア部材の外周面上にゴムストリップを一周させて巻き付けた後は、オペレータによる手作業により、ビードコア部材の外周面上のゴムストリップの巻始端と巻終端とを相互に重ね合わせて接合して、ビードフィラー部材を形成していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ビードフィラー部材を形成するための上述した装置では、ビードコア部材ないしビードフィラー部材のサイズの切替え時に、サーバを構成するガイドローラ等の位置の変更その他の調整作業が必要となるので、オペレータに高い技量が求められる他、生産性が低下するという問題があった。
【0006】
またこの装置では、高さないし幅を小さくしたビードフィラー部材を形成する際に、サーバから案内されるゴムストリップの断面積が小さくなり、ゴムストリップの先端の位置とビードコア部材の位置とを高い精度で位置合わせすることは困難であった。
しかもこの装置では、ビードコア部材の外周面上に巻き付けたゴムストリップの巻始端と巻終端との相互を、とくに手作業で重ね合わせて接合することから、当該接合部でのビードフィラーの厚みが、他の部分に比して厚くなり、それにより、それを用いて製造するタイヤのユニフォミティを悪化させる懸念があった。
【0007】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、ビードコア部材ないしビードフィラー部材のサイズの切替え時に要する調整作業を減らすとともに、高さおよび幅を小さくしたビードフィラー部材の形成を可能とし、しかも、ビードコア部材の外周面上に配設したビードフィラー部材の接合部での厚みの増大を小さく抑えることのできるビードフィラー成形装置および成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のビードフィラー成形装置は、環状のビードコア部材を保持するビード保持部と、ビードフィラー部材を形成するためのフィラーゴムを押し出す押出機とを具えてなり、前記ビード保持部に保持させた前記ビードコア部材の外周面上に、ビードフィラー部材を形成するものであって、前記ビード保持部の側面に、該ビード保持部とともに前記ビードコア部材の中心軸線の周りに回転可能な成形ディスクを取り付けて配設し、前記成形ディスクに近接配置されて、該成形ディスクおよび、前記ビードコア部材の外周面とともに、ビードフィラー部材の横断面形状に対応する空間を区画し、かつ、該空間にフィラーゴムを吐出する吐出口を有する口金を設けてなり、前記口金の吐出面の、前記吐出口から前記成形ディスクの回転方向の後方側に位置する側縁に至るまでの表面領域に、該吐出面から窪んだ凹部を設けるものである。
【0009】
ここで好ましくは、前記ビードコア部材の外周面上に形成する前記ビードフィラー部材が、直角三角形の横断面形状となる外周側部分を有し、前記口金の、前記空間の一部を区画する吐出面を、前記ビードフィラー部材の、直角三角形となる前記外周側部分の斜辺に平行とする。
【0010】
また好ましくは、前記成形ディスクが、前記ビードフィラー部材の横断面形状を規定する着脱可能なアタッチメントを備える。
【0011】
なお好ましくは、前記ビード保持部を、前記ビードコア部材の半径方向に拡縮変形可能とする。
【0012】
また、この発明のビードフィラー成形方法は、ビード保持部に保持させた環状のビードコア部材の外周面上に、押出機から押し出されたフィラーゴムを配設して、該外周面上にビードフィラー部材を形成するに当り、
前記押出機に設けた吐出口からフィラーゴムを押し出すとともに、該フィラーゴムを、前記ビード保持部の側面に取り付けられた成形ディスクに近接配置した口金に向けて送給し、
前記口金により、前記成形ディスクと前記ビードコア部材の外周面と前記口金とで区画される空間に、前記フィラーゴムを吐出させるとともに、該空間で該フィラーゴムに所要の横断面形状を付与しつつ、前記成形ディスクを前記ビード保持部とともに回転させて、前記ビードコア部材の外周面の全周にわたる前記ビードフィラー部材を形成し、前記口金の吐出面の、前記吐出口から前記成形ディスクの回転方向の後方側に位置する側縁に至るまでの表面領域に、該吐出面から窪んだ凹部を設けることにある。
【発明の効果】
【0013】
この発明のビードフィラー成形装置によれば、前記成形ディスクに近接配置されて、該成形ディスクおよび、前記ビードコア部材の外周面とともに、ビードフィラー部材の横断面形状に対応する空間を区画し、かつ、該空間にフィラーゴムを吐出する口金を設けたことにより、ビードコア部材ないしビードフィラー部材のサイズの切替えには、ビード保持部の調整およびマシンパラメータの変更だけで対応することができるので、そのような切替え時に要する調整作業を減らすことができる。なおマシンパラメータとは、成形ディスクの回転速度、成形ディスクの設置面に対する水平二軸方向および/または垂直方向の位置、押出機のスクリューの回転速度、押出機の歯車ポンプの回転速度等である。
【0014】
またこの装置では、フィラーゴムを吐出する口金を、ビード保持部の側面に取り付けた成形ディスクに近接させて配置することにより、従来技術のような、ゴムストリップを口金からビードコア部材の外周面まで案内するサーバの配設が不要となって、口金から吐出されたフィラーゴムに、前記空間で所要の横断面形状を付与しつつ、該フィラーゴムを直接的にビードコア部材の外周面上に配設することができるので、高さおよび幅の小さいビードフィラー部材を形成することが可能になる。
【0015】
そしてまた、この発明では、上述した口金を設けたことにより、従来技術で行っていたような、ゴムストリップを所要の長さで切断してそれらの巻始端と巻終端とを接合させる作業をなくすことが可能となるので、ビードフィラー部材の接合部での厚みの増大を小さく抑えることができる。
【0016】
ここで、前記口金の、前記空間の一部を区画する吐出面を、ビードフィラー部材の、直角三角形となる前記外周側部分の斜辺に平行としたときは、簡易な構成で、ビードコア部材の外周面上へのビードフィラー部材の形成を行うことができる。
【0017】
ここで、前記成形ディスクが、前記ビードフィラー部材の横断面形状を規定する着脱可能なアタッチメントを備えるときは、ビードフィラー部材の横断面形状を簡単に様々なものとすることができる。
【0018】
ここにおいて、前記ビード保持部を、前記ビードコア部材の半径方向に拡縮変形可能としたときは、ビードコア部材ないしビードフィラー部材のサイズ変更に対して、より容易に対応することが可能となる。
【0019】
また、この発明のビードフィラー成形方法によれば、先に述べた成形装置と同様に、ビードコア部材ないしビードフィラー部材のサイズの切替え時に要する調整作業を減らすことができるとともに、高さおよび幅を小さくしたビードフィラー部材の形成を可能とし、しかも、ビードコア部材の外周面上に配設したビードフィラー部材の接合部での厚みの増大を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明のビードフィラー成形装置の一の実施形態を示す概略側面図である。
図2図1に示す装置が具えるビード保持部の正面図である。
図3図1の装置から取り外した口金の斜視図である。
図4図1の装置が具える口金の、成形ディスクへの近接配置の態様を示す要部拡大斜視図((a))および、そのb−b線に沿う断面図((b)および(c))である。
図5】実施例におけるビードフィラー部材の高さおよび幅の測定箇所を示す、ビードフィラー部材を配設したビードコア部材の側面図および断面図である。
図6】各測定箇所でのビードフィラー部材の高さおよび幅のそれぞれの測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に示すところにおいて、図中1は、たとえば、一本もしくは複数本のゴム被覆コードを、周方向に向けて幅方向に巻き回すとともに半径方向外側に巻き重ねて、四角形、六角形その他の多角形または円形等の横断面形状に形成される環状のビードコア部材を保持するビード保持部を示し、また2は、ビードコア部材の外周側にビードフィラー部材を形成するためのフィラーゴムを押し出す押出機を示す。
【0022】
ここで、図示の実施形態では、たとえば、設置面に対して垂直な姿勢で配置されるビード保持部1は、図2に、その正面図で示すように、円周方向に分割されて、外周側にビードコア部材50が配置される複数個、たとえば六個のセグメント1aからなり、これらの各セグメント1aは、図2に示す正面視で、ビードコア部材50の内周面に当接する円弧状の外周面を有する。
【0023】
ビード保持部1を、上述したような複数個のセグメント1aで構成した場合は、たとえば、それらの各セグメント1aを相互の同期下で半径方向に変位させる保持部拡縮手段3を設けることにより、ビード保持部1を、ビードコア部材50の半径方向に拡縮変形させることができる。なお、ビード保持部1による、サイズの異なるビードコア部材50の保持を可能とするこの保持部拡縮手段3は、たとえば、ビードコア部材50の中心軸線方向への往復運動をもたらす図示しないピストンの周囲に、該ピストンと各セグメント1aとをヒンジ連結するそれぞれのアーム部材3aを取り付けて構成することができる。
【0024】
またここでは、押出機2は、詳細は図示しないが、たとえば、未加硫のゴム材料を押出機シリンダー内へ供給するためのホッパーと、ホッパーから供給されたゴム材料が通過する、図1では左右方向に延びる内部通路と、内部通路に配置されて、モータ等による回転駆動力の付与の下、ゴム材料の混錬および送給に寄与するスクリューとで構成する。
【0025】
そして、この押出機2の先端側には、図1に示すように、押出機2から押し出されたフィラーゴムを、ビードコア部材50の外周面に向けて吐出する、金属材料の削り出し等により形成する口金4を、たとえば、それらの間に、口金4側へのフィラーゴムの定量押出しを実現するための、相互に噛合する一対の歯車等からなる歯車ポンプ5を介在させて取り付ける。
【0026】
ここで、この実施形態では、押出機2から押し出されるフィラーゴムの送給方向(図1では左右方向)に沿って延びるブロック状の口金4の先端面を、図3に斜視図で示すように、前記送給方向の前方側に突出する、その送給方向に対して垂直な平坦突出面4aと、その平坦突出面4aに隣接して位置して、平坦突出面4aに対して傾斜し、かつフィラーゴムの吐出口4bが存在する吐出面4cと、前記平坦突出面4aよりも送給方向の後方側に奥まって位置して前記吐出面4cに隣接する、平坦突出面4aと略平行な後方平坦面4dとで形成している。
【0027】
ここにおいて、この発明では、先述したビード保持部1の側面に、そのビード保持部1よりも外径の大きい円盤状の成形ディスク6を、ビード保持部1と同様に設置面に対する垂直姿勢で取り付け、そして、押出機2の先端側に取り付けた口金4を、図4に示すように、ビード保持部1に配置したビードコア部材50の外周側で、成形ディスク6に近接させて配置する。なおここでは、この成形ディスク6を、ビード保持部1とともに、環状ビードコア部材50の中心軸線の周りに回転させるためのモータその他の、図示しない回転駆動手段を設ける。
【0028】
より詳細には、図示の実施形態では、上述したような先端面形状を有する口金4の平坦突出面4aを、ビードコア部材50の外周側の、成形ディスク6の平坦な表面に、たとえば相互の接触状態で対向させるとともに、ビードコア部材50の外周面と、成形ディスク6の表面と、口金4の前記吐出面4cおよび後方平坦面4dとで取り囲まれる空間Sを区画形成するべく、口金4を、成形ディスク6の表面および、ビードコア部材50の外周面のそれぞれに十分に接近させて配置する。また、この実施形態では、後方平坦面4dの一部は、ビードコア部材50の側面の一部と相互に接触して対向している。
ビードコア部材50の周方向の両側に開口するこの空間Sは、ビードコア部材50の周方向に直交する面で切断した断面が、図4(b)に示すように、ビードコア部材50の外周側に形成する図示しないビードフィラー部材の横断面形状に対応する形状を有する。
【0029】
このような装置を用いてビードフィラー部材を形成するに当っては、はじめに、押出機2のスクリューおよび、歯車ポンプ5の作動の下、押出機2からフィラーゴムを、たとえば定量で押し出すとともに、押出機2の先端側に取り付けた口金4に向けて送給する。
【0030】
次いで、成形ディスク6に近接配置した口金4を通過したフィラーゴムは、図4(b)に示すように、当該口金4から、成形ディスク6の表面とビードコア部材50の外周面と口金4の先端面とで区画される空間Sに吐出されることになるも、その空間Sの全体にフィラーゴムが充填されるまで、口金4からフィラーゴムを吐出させ続ける。
【0031】
そして、空間Sにフィラーゴムが充填された後は、口金4による該空間Sへのフィラーゴムの吐出状態を維持したまま、たとえば、設置面に対して固定させて配置することのできる押出機2および口金4は変位させずに、成形ディスク6をビード保持部1とともに、図4(a)に矢印Xで示すように、ビードコア部材50の中心軸線の周りに、所要の速度で回転駆動させて、空間Sを、ビードコア部材50の周方向に沿って、その外周面の全周にわたって移動させる。
このように、成形ディスク6およびビード保持部1を回転させることで、口金4をビードコア部材50の周りで略一周させたときは、口金4が、成形ディスク6を回転させる前の吐出開始位置に到達する手前で、その回転を停止させることができ、この場合、押出機2内での、フィラーゴムを送給するための残留圧力により、フィラーゴムが、ビードコア部材50の外周側の吐出開始位置に達するまで流動して、フィラーゴムの巻始端と巻終端との相互が接合されることになる。
【0032】
この結果として、空間Sで、成形ディスク6の表面、ビードコア部材50の外周面および、口金4の先端面によって、所要の横断面形状を付与されたフィラーゴムが、ビードコア部材50の外周面の全周にわたって配設されて、ビードコア部材50の外周面上に、環状をなす所要の横断面形状のビードフィラー部材を形成することができる。
【0033】
なお、グリーンケースの成型に用いるビードフィラー部材の横断面形状は一般に、直角三角形状となる外周側部分を含む台形状をなすことから、口金4の、空間Sの一部を区画する吐出面4cは、図4(b)に示すように、ビードフィラー部材の周方向に直交する断面で、そのようなビードフィラー部材の外周側部分の斜辺に平行となるように、口金4を配置することが好ましい。
このことによれば、ビードフィラー部材の、直角三角形の横断面形状を有する外周側部分の、軸線方向の外側を向く二つの側面である傾斜側面および直立側面のうちの、前記斜辺に対応する傾斜側面が、口金4の前記吐出面4cによって形成されるとともに、その外周側部分の直立側面が、成形ディスク6の表面によって形成されることになり、そのような形状のビードフィラー部材を容易に形成することができる。なおここで、ビードフィラー部材の横断面形状を変更する場合は、成形ディスク6が、ビードフィラー部材の横断面形状を規定する着脱可能なアタッチメントを備えることで、ビードフィラー部材の横断面形状を簡単に様々なものとすることができる。例えば、図4(c)に示すように、成形ディスク6が、前記外周側部分の直立側面を形成する領域の全周にわたって、外周側部分の該直立側面に所要の角度を付与するためのアタッチメント6aを備えることができる。
【0034】
このような装置によれば、ビードコア部材50ないしビードフィラー部材のサイズの切替えに対しては、ビード保持部1を、たとえば、先述した保持部拡縮手段3により拡縮変形させること、および、ビードコア部材50の外周側で成形ディスク6に近接配置する口金4の、成形ディスク6の表面に対する位置を変化させるべく、成形ディスク6およびビード保持部1を、設置面に対し、水平二軸方向、および/または、垂直方向に変位させること等により対応することができるので、サイズ切替え時の作業工数を減らすことができる。なお、ビードフィラーの横断面形状ないし寸法を変更する場合は、所要の吐出面形状を有する口金に取り換えることができる。
【0035】
なお、サイズの切替えに際する、口金4の、成形ディスク6の表面に対する相対位置の変化を可能とするためには、押出機2を口金4とともに、水平ないし垂直方向に変位させることも可能であるが、それよりも重量の小さい成形ディスク6およびビード保持部1を変位させるほうが好ましい。
【0036】
ここで、成形ディスク6の、回転駆動手段ならびに、水平二軸方向および垂直方向への往復駆動手段のそれぞれには、それらを相互に同期させて作動させるため、サーボモータを用いることが好ましく、また、押出機のヘッド、スクリュー及び/又は歯車ポンプには圧力センサを取り付けることが好ましい。
上述した装置は、たとえば、内径が、13インチ(330.2mm)〜19インチ(482.6mm)、必要に応じて12インチ(304.8mm)〜24インチ(609.6mm)のビードコア部材、および、半径方向に沿う高さが6mm〜20mmのビードフィラー部材のサイズに対応することができる。
【0037】
また、この装置では、口金4を成形ディスク6に近接配置し、口金4から吐出されるフィラーゴムを、サーバ等を介することなしに直接的に、その口金4と成形ディスク6とビードコア部材50の外周面とで区画される空間Sに吐出するものとしたので、形成する環状のビードフィラー部材の中心位置と、ビード保持部1の中心位置との位置合わせを、より確実かつ容易に行うことができて、たとえば7mm未満の高さを有する、高さおよび幅の小さいビードフィラー部材であっても形成することができる。
【0038】
しかも、従来の装置では、そのような高さおよび幅の小さいビードフィラー部材を形成する場合、手作業で行うゴムストリップの巻始端と巻終端との重ね合わせ接合により、その接合部での厚みが、他の部分の厚み(幅)よりもかなり大きくなるが、この発明では、フィラーゴムの巻始端と巻終端との接合を、上述したように、それらの相互の重ね合わせなしに、口金4の吐出面4c等で均しつつ行うことが可能であるので、その接合部での厚みの増大を有効に抑制することができる。
【0039】
ここで、ビードコア部材50の外周面上に形成するビードフィラー部材の前記接合部の側面を、より滑らかなものとするため、図3に示すように、成形ディスク6に近接配置される口金4の吐出面4cの、吐出口4bから、成形ディスク6の回転方向Xの後方側に位置する側縁Eに到るまでの表面領域に、該吐出面4cから窪ませてなる凹部4eを設けることが好ましい。これにより、口金4からのフィラーゴムの吐出量の制御、および、成形ディスク6の回転速度の制御下で、ビードコア部材50の外周側に形成するビードフィラー部材の接合部の側面を、そこでの局所的な厚みの増大なしに、より平滑なものとして、タイヤのユニフォミティの悪化を防止することができる。
【0040】
なお、このような装置では、成形ディスク6の背面側に、図1に示すように、他の成型ディスク16および他のビード保持部11等を設けることができ、この場合、一個の回転駆動手段により、両成形ディスク6,16および両ビード保持部1,11を回転駆動させることが可能となるので、一の成形工程で、二本分のビードフィラー部材を形成することができる。
【実施例】
【0041】
以上に述べたようなビードフィラー成形装置を用いて、図5に示すような、内径18インチ(457.2mm)のビードコア部材の外周側に、半径方向に沿う高さ6mmのビードフィラー部材を形成し、そのビードフィラー部材の周上の八箇所で、ビードフィラー部材の前記高さおよび、ビードフィラー部材の、軸線方向に沿う幅のそれぞれを測定したところ、図6(a)および(b)に示す結果を得た。
【0042】
ここで、そのビードフィラー部材の形成に際して、成形ディスクの回転数、および歯車ポンプの回転数を互いに同期させている。ここで、成形ディスクの回転数、押出機スクリューの回転数および圧力、押出機ヘッド内の圧力、歯車ポンプの回転数のそれぞれを測定した。
【0043】
図6、並びに、成形ディスクの回転数、押出機スクリューの回転数および圧力、押出機ヘッド内の圧力、歯車ポンプの回転数の測定結果から、このビードフィラー成形装置によれば、成形ディスクおよび歯車ポンプのそれぞれの回転数を互いに同期させることで、押出機ヘッド内の圧力の低下を抑えることができ、その結果として、ビードコア部材の外周面上に、安定した横断面形状のビードフィラー部材を形成できることが解かった。
【0044】
またこの装置で、高さが6mm〜20mmの範囲内で異なるサイズのビードフィラー部材を形成したところ、いずれのサイズのビードフィラー部材においても、接合部での厚みは、他の部分の120%以下となり、従来の装置で形成したビードフィラー部材よりも接合部の厚みを抑えることができ、しかも、この装置では、そのようなサイズの切替えに当って、オペレータに高い技量を必要とすることなしに、サイズ切替えに要する時間を短縮させることができた。
【符号の説明】
【0045】
1,11 ビード保持部
1a セグメント
2 押出機
3 保持部拡縮手段
3a アーム部材
4 口金
4a 平坦突出面
4b 吐出口
4c 吐出面
4d 後方平坦面
4e 凹部
5 歯車ポンプ
6,16 成形ディスク
6a アタッチメント
E 口金吐出面の側縁
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6