【実施例】
【0022】
本実施例においては、機器収納架としてサーバラックを二重床の上に設置する場合の荷重分散構造について説明する。
図2は、本実施例において、二重床の上にサーバラックを設置した状態の斜視図である。ここでの二重床とは、基礎となる床の上に複数の支柱を設置し、支柱の上に複数の床パネルを増設し、本来の床の上に新たな床を設置することによって、基礎となる床と新たな床との間に空間を持たせ、配線や配管が行えるようにしている構造の事をいう。二重床はフリーアクセスフロアとも呼ばれることもある。
【0023】
例えば、二重床構造の構成方法について
図2をもとに説明すると、まず、従来の基礎となる下面床40の上に複数の支柱50を同じ高さで等間隔格子状に下面床40に固定して設置する。そして、略正方形の床パネル31を、頂点付近4点がそれぞれ異なる支柱50で支えられるように複数枚敷き詰める。このように床パネル31を支柱50で支えることによって、上面床30が形成される。このように二重床構造は形成される。
【0024】
次に、このように構成されている二重床の上面床30の上にサーバラック10を設置する場合を考える。例えば、サーバラック10の重量が300Kgあり、サーバラック10の積載容量が600Kgであるとする。そして、床パネル31の1枚辺りの耐荷重量が150Kgであるとする。このような場合に、サーバラック10を4枚の床パネル31で支えるように設置した場合、最初にサーバラック10の本体のみを上面床30の上に設置した場合は、サーバラック10の重量は300Kgであるため、床パネル31に掛かる重量は1枚辺り75Kgとなり、床パネル31の1枚辺りの耐荷重量を下回るため、特に問題なく上面床30の上にサーバーラック10を設置することができる。
【0025】
しかし、サーバラック10にサーバ装置や無停電電源装置、ストレージ装置などを格納していき、収納装置の総重量がサーバラック10の積載容量の最大値である600Kgとなった場合、サーバラック10の総重量は900Kgとなり、床パネル31に掛かる重量1枚辺り225Kgとなる。そうなると、床パネル31の1枚辺りの耐荷重量を大幅に上回ってしまうため、上面床30はサーバラック10の荷重に耐えられずに沈下したり陥没したりしてしまう可能性がある。さらには、下床面40の所定領域の耐荷重量をも上回ってしまった場合には、下床面40までをも沈下させたり陥没させてしまう危険性がある。
【0026】
このような場合に、サーバラック10の総重量900Kgの荷重を分散して1枚辺りの床パネル31に掛かる重量を、床パネル31の1枚辺りの耐荷重量が150Kg以下にしなければならない。本実施例においては、このような場合における、荷重分散構造について説明する。
【0027】
図3は、本願発明における機器収納架の荷重分散構造を適用してサーバラック10を二重床の上に設置した場合の側断面図であり、
図4は上面図である。本願発明における荷重分散構造では、荷重分散用鋼材60を荷重分散用ボルト70と鋼材係止用ナット71を利用して二重床の上面床の床パネル31の下に吊り下げることによって、荷重分散用鋼材60に掛かる荷重を鋼材係止用ナット71および荷重分散用ボルト70の頭部を通して床パネル31に掛かるようにする。
【0028】
例えば、サーバラック10がサーバラック10の下面4隅に備えられた支柱脚11によって支えられる場合においては、
図4に示されているように、直線上にある2つの支持脚11の下を通るように略長方形状の荷重分散用鋼材60を吊り下げるようにする。したがって、サーバラック10の下部4隅の支柱脚11を全て通るようにするためには、2本の荷重分散用鋼材60を吊り下げるようになる。支持脚11の数が本実施例と異なる場合は、支持脚11の数に合わせて、支柱脚11の下を通るように複数本の荷重分散用鋼材60を吊り下げるようにすることも可能である。
【0029】
次に、荷重分散用鋼材60の吊り下げ方法について詳述する。床パネル31および荷重分散用鋼材60に荷重分散用ボルト70を挿通させるための挿通穴が設けられる。1枚の床パネル31には挿通穴が1つであることが望ましいが、支持脚11の配置に応じて荷重分散用鋼材60を複数本設置する場合には、1枚の床パネル31に複数の挿通穴が設けられていてもよい。
【0030】
荷重分散用鋼材60の挿通穴は床パネル31に設けられた挿通穴と重なるように複数設けられ、荷重分散用ボルト70は頭部が上面になるように床パネル31の挿通穴に挿入され、軸部が荷重分散用鋼材60の挿通穴を貫くように挿入される。そして、荷重分散用鋼材60の挿通穴を貫いた荷重分散用ボルト70の軸部に鋼材係止用ナット71を螺合する。
【0031】
このように、床パネル31および荷重分散用鋼材60に設けられた複数の挿通穴それぞれに荷重分散用ボルト70を挿通し、当該ボルトに鋼材係止用ナット71を螺合することによって、荷重分散用鋼材60は複数の鋼材係止用ナット71で係止された状態となり、床パネル31と荷重分散用鋼材60は荷重分散用ボルト70と鋼材係止用ナット71によって連結される。
【0032】
この場合、鋼材係止用ナット71に掛かる荷重分散用鋼材60の重量は、荷重分散用ボルト70の頭部を通して床パネル31で支えられることになり、荷重分散用鋼材60は、二重床の上面床30の下に吊り下げられた状態となる。
【0033】
このように荷重分散用鋼材60を複数の床パネル31で吊り下げるように設置することによって、荷重分散用鋼材60に掛かる荷重は、荷重分散用ボルト70によって連結された複数の床パネル31に分散して掛かるようになる。この場合、床パネルから荷重分散用鋼材60までの距離が均一になるように鋼材係止用ナット71を荷重分散用ボルト70に螺合することによって、荷重を均一に分散させることができる。
【0034】
次に、二重床の上面床30の下に吊り下げられた荷重分散用鋼材60でサーバラック10の荷重を支える構造について説明する。
図5は、サーバラック10の支持脚11が荷重分散用鋼材60に連結された状態を示す正面断面図である。床パネル31および荷重分散用鋼材60には支持脚11を挿通させるための挿通穴が設けられる。
【0035】
まず、サーバラック10の支持脚11は床パネル31の挿通穴に挿入される。そして、支持脚11は螺合されている鋼材挟持支持脚用上ナット82が荷重分散用鋼材60の上面側になるように、荷重分散用鋼材60の挿通穴に挿入する。こうする事によって、支持脚11に掛かるサーバラックの荷重は鋼材挟持支持脚用上ナット82を通して荷重分散用鋼材60に掛かる事となる。
【0036】
このように、荷重分散用鋼材60にサーバラック10のそれぞれの支持脚11を荷重分散用鋼材60に連結する。それによって、サーバラック10の荷重は荷重分散用鋼材60に掛かり、荷重分散用鋼材60に掛かった荷重は、荷重分散用ボルト70と鋼材係止用ナット71を通じて、複数の床パネル31に分散して掛かるようになる。
【0037】
例えば、サーバラック10の支持脚11が4箇所あり、総重量が900Kgの場合で考えると、単純にサーバラック10を上面床30の上に設置した場合、床パネル31に掛かる荷重は1枚辺り225Kgとなる。これに対して、本実施例での荷重分散構造を用いた場合で考える。例えば、
図4に示すように、2本の荷重分散用鋼材60にそれぞれ5つの荷重分散用ボルト70と鋼材係止用ナット71を連結して、それぞれ5枚ずつの床パネル31に吊り下げるように設置し、サーバーラック10の支持脚11を2箇所づつ2本の荷重分散用鋼材60にそれぞれ連結し、それぞれの鋼材挟持支持脚用上ナット82を通じてサーバラック10の荷重が荷重分散用鋼材60に掛かるように設置する。これによって、サーバラック10の荷重は10枚の床パネル31に分散して掛かる事となり、床パネル31に掛かる荷重は1枚当たり90Kgとなる。これによって、例えば、床パネル31の1枚辺りの耐荷重量が150Kgしかない場合であっても、総重量が900Kgあるサーバラック10の荷重を分散して支えることができるようになる。
【0038】
また、
図1の従来の設置方法で示されているように、設置する機器収納架と二重床の上面との間に平鋼20を設置する必要もないため、荷重分散用ボルト70やサーバラック10の支持脚11が挿入されている以外の床パネルは自由に開閉することができ、さらに平鋼20を設置したときのような床面の凸凹の発生も防止することができる。さらには、支柱50に掛かる荷重も分散されるため、下床面40の所定領域の耐荷重量がサーバラック10の重量に耐えられない場合であっても、下床面40に掛かる荷重が分散される。
【0039】
さらに、効果的な荷重分散構造としては、床パネル31を貫通する荷重分散用ボルト70の軸部の床パネル31の下面側に床パネル挟持用ナット73を螺合し、荷重分散用ボルト70の頭部と床パネル挟持用ナット73とで床パネル31を挟持して接合するように固定する構造を取ることもできる。これによって、より確実に荷重分散用鋼材60に掛かる荷重を床パネル31で支えることができるようになる。
【0040】
また、荷重分散用鋼材60を貫通する荷重分散用ボルト70の軸部の荷重分散用鋼材60の上面側に鋼材挟持用ナット72を螺合し、鋼材係止用ナット71と鋼材挟持用ナット72とで、荷重分散用鋼材60を挟持して接合するように固定する構造を取ることもできる。これによって、床パネル31と荷重分散用鋼材60との距離が一定になるように調整することが可能となり、荷重分散用鋼材60に掛かる荷重を効率的にバランスよく床パネル31に伝えることができるようになる。
【0041】
また、床パネル31を貫通するサーバーラック10の支持脚11に螺合された床挟持支持脚用上ナット80と床挟持支持脚用下ナット83とで床パネル31を挟持して止着するようにし、荷重分散用鋼材60を貫通するサーバーラック10の支持脚11に螺合された鋼材挟持支持脚用上ナット82と鋼材挟持支持脚用下ナット81とで荷重分散用鋼材60を挟持して止着するようにし、支持脚11と床パネル31と荷重分散用鋼材60とが固定された構造を取ることもできる。こうすることによって、床パネル31と荷重分散用鋼材60との距離を一定に保つように調整する事が可能となり、サーバーラック10の荷重を効率的にバランス良く荷重分散用鋼材60に伝えることができるようになる。
【0042】
本実施例においては、サーバラック10の支持脚11が荷重分散用鋼材60に直接接合される場合の構造について説明を行ったが、機器支持用ボルトを床パネル31の上面から挿入し、支持脚11の代わりとすることも可能である。この場合は、サーバラック10の支持脚11は機器支持用ボルトの上面に置かれるように設置されることによって、サーバラック10の荷重を機器支持用ボルトに掛かるようにし、本実施例で述べた荷重分散構造と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、
図3および
図4において、荷重分散用鋼材60は略長方形の平鋼である場合を図示しているが、荷重分散用鋼材60にはH形鋼または等辺山形鋼またはI形鋼または溝形鋼を用いることによって、鋼材の形状の特性により荷重分散用鋼材60が撓む事を防止し、荷重分散用鋼材60に掛かる荷重をより確実に荷重分散用ボルト70を通して床パネル31に伝えることができるようになる。
【0044】
以上、図面を用いながら本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術範囲は前述した実施形態に左右されるものではなく、当業者であれば特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において想到することが明らかである変更例についても当然に本発明の技術的範囲に属するものである。