特許第6227931号(P6227931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227931
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】二段燃焼型の二液スラスタ
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/62 20060101AFI20171030BHJP
   F02K 9/64 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F02K9/62
   F02K9/64
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-171217(P2013-171217)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40489(P2015-40489A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】中 友美
(72)【発明者】
【氏名】松田 奈緒己
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−338313(JP,A)
【文献】 米国特許第03597923(US,A)
【文献】 特開昭49−108414(JP,A)
【文献】 米国特許第03828551(US,A)
【文献】 米国特許第04831818(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/62
F02K 9/64
F02K 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体酸化剤と液体燃料とを反応させることにより燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスを外部へ噴出することにより推力を得る二段燃焼型の二液スラスタであって、
液体燃料と液体酸化剤が供給される副燃焼室と、
副燃焼室に液体燃料を供給する燃料供給構造と、
副燃焼室に液体酸化剤を供給する酸化剤供給構造と、を備え、
副燃焼室において、前記液体酸化剤は、前記液体燃料の一部と反応することにより一次燃焼ガスを生成するとともに、一次燃焼ガスの熱で、残りの前記液体燃料が未反応燃料ガスにされ、
副燃焼室から一次燃焼ガスと未反応燃料ガスが供給される主燃焼室と、
主燃焼室に酸化剤を供給する蒸発酸化剤流路と、を備え、
主燃焼室において、前記未反応燃料ガスと、前記蒸発酸化剤流路からの酸化剤とから二次燃焼ガスが生成され、この燃焼ガスが外部に噴出され、
前記蒸発酸化剤流路は、外部から酸化剤を受け、主燃焼室の熱により蒸発された該酸化剤を、ガスの状態で、副燃焼室を経由させず主燃焼室へ直接流入させ、
酸化剤を流す流路と燃料を流す流路のうち、酸化剤を流す流路のみが、前記蒸発酸化剤流路として、主燃焼室の壁面内に形成されている、ことを特徴とする二段燃焼型の二液スラスタ。
【請求項2】
液体酸化剤と液体燃料とを反応させることにより燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスを外部へ噴出することにより推力を得る二段燃焼型の二液スラスタであって、
液体燃料と液体酸化剤が供給される副燃焼室と、
副燃焼室に液体燃料を供給する燃料供給構造と、
副燃焼室に液体酸化剤を供給する酸化剤供給構造と、を備え、
副燃焼室において、前記液体酸化剤は、前記液体燃料の一部と反応することにより一次燃焼ガスを生成するとともに、一次燃焼ガスの熱で、残りの前記液体燃料が未反応燃料ガスにされ、
副燃焼室から一次燃焼ガスと未反応燃料ガスが供給される主燃焼室と、
主燃焼室に酸化剤を供給する蒸発酸化剤流路と、を備え、
主燃焼室において、前記未反応燃料ガスと、蒸発酸化剤流路からの酸化剤とから二次燃焼ガスが生成され、この燃焼ガスが外部に噴出され、
蒸発酸化剤流路は、外部から酸化剤を受け、主燃焼室の熱により蒸発された該酸化剤を、ガスの状態で、副燃焼室を経由させず主燃焼室へ直接流入させ、
蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の壁面内に形成されており、
前記蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の壁面内において、主燃焼室の下流側から上流側へ酸化剤を流し、主燃焼室の上流側で、酸化剤を主燃焼室へ流入させ、
主燃焼室において、上流側で、前記未反応燃料ガスが、前記蒸発酸化剤流路からのガス酸化剤と混合され、これにより互いに反応して生じた前記二次燃焼ガスが、下流側で外部へ噴出され、
前記主燃焼室の断面積は、主燃焼室の下流側部分において、下流側に移行するに従って小さくなっており、
蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の下流端部から上流端部へ延びていることにより、外部からの酸化剤を、主燃焼室の壁面内において、主燃焼室の下流端部から上流端部へ流す、ことを特徴とする二段燃焼型の二液スラスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体酸化剤と液体燃料とを混合して互いに反応させることにより燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスを噴出することにより推力を得る二液スラスタに関する。
【背景技術】
【0002】
スラスタは、例えば人工衛星に搭載され、推力を発生させることにより人工衛星の軌道や姿勢を調節する。
【0003】
図1は、二液スラスタの概略構成を示す。図1に示すように、二液スラスタ30は、燃料供給機構31と、酸化剤供給機構33と、燃焼室35と、ノズル37とを備える。図1の例では、燃料供給機構31と酸化剤供給機構33は、それぞれ、液体燃料と液体酸化剤を互いに衝突するように、燃焼室35に噴射する。これにより、液体燃料と液体酸化剤を微粒化させ、両者の混合を促進させる。混合された液体燃料と液体酸化剤は、互いに反応する。その結果、液体燃料と液体酸化剤から燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは、ノズル37から噴射され、これにより推力を得る。なお、液体燃料として、例えばヒドラジンが用いられ、液体酸化剤として、例えば四酸化二窒素が用いられる。このような二液スラスタは、例えば、下記の特許文献1、2に開示されている。
【0004】
二液スラスタでは、燃焼ガスは、3000Kにも達するため、燃焼室35には、冷却手段を設けている。冷却手段は、多くの場合、フィルム冷却と輻射冷却の組み合わせである。
【0005】
フィルム冷却は、図1の矢印Aで示すように、燃料供給機構31により燃料の一部を燃焼室35の内壁面へ噴射することによりなされる。すなわち、燃焼室35の内壁面に噴射された燃料は、図1の矢印Bで示すように内壁面に沿って流れることにより、内壁面と、燃焼室35内の燃焼ガスや火炎との間に形成される冷却層となる。この冷却層により、燃焼室35の燃焼ガスから、燃焼室35の内壁へ熱が伝達することを抑制する。
【0006】
輻射冷却は、上述の冷却層を通して燃焼室35の内壁に伝わった熱を輻射することによりなされる。この輻射は、燃焼室35を形成する構造体の外面から外部へなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−085159号公報
【特許文献2】特表2012−533701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来において、燃焼室を、次のように長くする必要があった。図1の場合、液体燃料と液体酸化剤は、上述のように、燃焼室35へ噴射されて互いに衝突することにより、それぞれ微粒化する。これにより、液体燃料と液体酸化剤の混合と反応が促進されて、液体燃料と液体酸化剤から燃焼ガスが生成される。このような過程で、燃焼ガスが生成される。したがって、このような過程を行わせることにより燃料を十分に燃焼させるには、燃焼室を、ガスの流れ方向に長くする必要がある。
【0009】
また、燃焼室が長いと、次のように燃焼効率が下がる。燃焼室が長いと、燃焼室の内壁に冷却層を形成するための燃料の量が増える。冷却層を形成する燃料は、燃焼に寄与しにくい。したがって、冷却層用の燃料が増えると、燃焼効率が下がる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、燃焼室を短くでき、燃焼効率を高められる二段燃焼型の二液スラスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によると、液体酸化剤と液体燃料とを反応させることにより燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスを外部へ噴出することにより推力を得る二段燃焼型の二液スラスタであって、
液体燃料と液体酸化剤が供給される副燃焼室と、
副燃焼室に液体燃料を供給する燃料供給構造と、
副燃焼室に液体酸化剤を供給する酸化剤供給構造と、を備え、
副燃焼室において、前記液体酸化剤は、前記液体燃料の一部と反応することにより一次燃焼ガスを生成するとともに、一次燃焼ガスの熱で、残りの前記液体燃料が未反応燃料ガスにされ、
副燃焼室から一次燃焼ガスと未反応燃料ガスが供給される主燃焼室と、
主燃焼室に酸化剤を供給する蒸発酸化剤流路と、を備え、
主燃焼室において、前記未反応燃料ガスと、蒸発酸化剤流路からの酸化剤とから二次燃焼ガスが生成され、この燃焼ガスが外部に噴出され、
蒸発酸化剤流路は、外部から酸化剤を受け、主燃焼室の熱により蒸発させることで該酸化剤をガスの状態で主燃焼室へ流入させ、
蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の壁面内に形成されている、ことを特徴とする二段燃焼型の二液スラスタが提供される。
【0012】
本発明の構成例を、以下に述べる。
【0013】
蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の壁面内において、主燃焼室の下流側から上流側へ酸化剤を流し、主燃焼室の上流側で、酸化剤を主燃焼室へ流入させ、
主燃焼室において、上流側で、前記未反応燃料ガスが、蒸発酸化剤流路からのガス酸化剤と混合され、これにより互いに反応して生じた前記二次燃焼ガスが、下流側で外部へ噴出される。
【0014】
前記主燃焼室の断面積は、主燃焼室の下流側部分において、下流側に移行するに従って小さくなっており、
蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の下流端部から上流端部までへ延びていることにより、外部からの酸化剤を、主燃焼室の壁面内において、主燃焼室の下流端部から上流端部へ流す。
【0015】
蒸発酸化剤流路は、前記主燃焼室の内壁面の近傍に位置しつつ、前記主燃焼室の内壁面に沿って延びている。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によると、蒸発酸化剤流路は、主燃焼室の熱により酸化剤をガスの状態で主燃焼室へ流入させるので、主燃焼室内で液体酸化剤をガス化させる過程を省略できる。したがって、主燃焼室を短くできる。
【0017】
また、副燃焼室で、液体燃料と液体酸化剤から一次燃焼ガスと未反応燃料ガスを生成し、この未反応燃料ガスが、主燃焼室で、蒸発酸化剤流路からのガス酸化剤と混合する。このように、未反応燃料ガスと、既にガス化している酸化剤とを混合して燃焼させるので、燃焼が速やかになされる。その結果、高い燃焼効率が得られる。
【0018】
さらに、酸化剤タンクからの酸化剤が、主燃焼室の内壁面形成体における蒸発酸化剤流路に供給されるので、酸化剤タンクからの酸化剤により内壁面形成体を冷却できる。したがって、上述の冷却層を、無くし、または減らすことができるので、燃焼に寄与しにくい燃料を、無くし、または減らすことができる。その結果、さらに高い燃焼効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来のスラスタの構成を示す。
図2】本発明の実施形態による二段燃焼型の二液スラスタの構成を示す。
図3】(A)は、図2のIIIA−IIIA線断面図であり、(B)は、図2のIIIB−IIIB線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態による二段燃焼型の二液スラスタ10の構成を示す。二液スラスタ10は、液体酸化剤と液体燃料とを混合して互いに反応させることにより燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスを外部へ噴出することにより推力を得る。図2に示すように、二段燃焼型の二液スラスタ10は、燃料供給構造3と、酸化剤供給構造5と、副燃焼室7と、蒸発酸化剤流路9と、主燃焼室11とを備える。
【0022】
燃料供給構造3は、副燃焼室7に液体燃料(すなわち、液体状態の燃料)を供給する。本実施形態では、燃料供給構造3は、燃料供給源1(図2の例では、燃料タンク1)から液体燃料を受ける燃料流路である。図2の例では、燃料流路3は、燃料タンク1から燃料管2を通して液体燃料を受ける。燃料タンク1は、液体燃料(例えば、ヒドラジン)を蓄積する。燃料タンク1の気相部分は、加圧ガス(例えば、ヘリウムガス)が充填されたガスタンク(図示せず)に連通している。燃料管2には、遮断弁13が設けられている。この遮断弁13が開かれると、燃料タンク1内における加圧された気相部分により、液体燃料が燃料管2に流入する。燃料管2は、このように燃料タンク1から受けた液体燃料を、遮断弁13を開いた後に開かれた別の遮断弁15(推薬弁)を通して燃料流路3へ導入する。燃料流路3は、図2の例では、副燃焼室7の上流側端面7aを形成する端面形成体17の中実内部(すなわち、副燃焼室7の壁面内)に形成されている。燃料流路3は、液体燃料を副燃焼室7に流入させる。好ましくは、燃料流路3には、液体燃料を副燃焼室7に噴射する燃料ノズル孔3aが設けられている。
【0023】
酸化剤供給構造5は、副燃焼室7に液体酸化剤(すなわち、液体状態の酸化剤)を供給する。酸化剤供給構造5は、酸化剤供給源4(図2の例では、酸化剤タンク4)から液体酸化剤を受ける。酸化剤供給構造5は、図2の例では、酸化剤タンク4から第一の酸化剤管6を通して液体酸化剤を受ける液体酸化剤流路である。酸化剤タンク4は、液体酸化剤(例えば、四酸化二窒素)を蓄積する。酸化剤タンク4の気相部分は、加圧ガス(例えば、ヘリウムガス)が充填されたガスタンク(図示せず)に連通している。第一の酸化剤管6には、遮断弁19が設けられている。この遮断弁19が開かれると、酸化剤タンク4内における加圧された気相部分により、液体酸化剤が第一の酸化剤管6に流入する。第一の酸化剤管6は、このように酸化剤タンク4から受けた液体酸化剤を、遮断弁19を開いた後に開かれた別の遮断弁21(推薬弁)を通して液体酸化剤流路5へ導入する。液体酸化剤流路5は、図2の例では、副燃焼室7の端面形成体17における中実内部(すなわち、副燃焼室7の壁面内)に形成されている。液体酸化剤流路5は、液体酸化剤を副燃焼室7に流入させる。好ましくは、液体酸化剤流路5には、液体酸化剤を副燃焼室7に噴射する酸化剤ノズル孔5aが設けられている。
【0024】
また、好ましくは、液体酸化剤流路5(図2の例では、酸化剤ノズル孔5a)は、燃料流路3(図2の例では、燃料ノズル孔3a)から副燃焼室7に噴射された液体燃料に向けて液体酸化剤を副燃焼室7に噴射する。これにより、液体酸化剤を、液体燃料に衝突させ、液体燃料と液体酸化剤を微粒化させ、両者の混合を促進させる。なお、液体燃料(例えば、ヒドラジン)は、液体酸化剤と混合されると、液体酸化剤(例えば、四酸化二窒素)と反応して燃焼する。
【0025】
副燃焼室7において、上述のように、液体燃料と液体酸化剤が供給されることにより、液体酸化剤は、液体燃料の一部と反応することにより一次燃焼ガスを生成するとともに、一次燃焼ガスの熱で、残りの液体燃料が未反応燃料ガスにされる。副燃焼室7で生成された一次燃焼ガスと未反応燃料ガスは、主燃焼室11へ流入する。図2の例では、一次燃焼ガスと未反応燃料ガスは、連通路23を通して副燃焼室7から主燃焼室11へ流入する。この連通路23は、副燃焼室7における下流側端面7bに形成された開口と、主燃焼室11における上流側端面11aに形成された開口とを有する。副燃焼室7は、例えば、円柱形であり、副燃焼室7の内周面は、副燃焼室形成体25により形成されている。副燃焼室7の温度は、一次燃焼ガスの生成により、例えば、800℃〜900℃になる。図2の例では、連通路23は、後述の内壁面形成体27の中実内部に形成されている。
【0026】
単位時間の間に燃料流路3から副燃焼室7へ供給される液体燃料の量(質量)に対する、同じ単位時間の間に液体酸化剤流路5から副燃焼室7へ供給される液体酸化剤の量(質量)の割合は、0.1以上であって0.2以下に維持されるのが好ましい。このような割合を得るために適宜の制御を行うことができる。
【0027】
なお、本実施形態において、副燃焼室7の上流側とは、円柱形の副燃焼室7の中心軸と平行な方向(この中心軸に沿った方向)における上流側(図2では、左側)を意味し、副燃焼室7の下流側とは、副燃焼室7の中心軸と平行な方向における下流側(図2では、右側)を意味する。
【0028】
蒸発酸化剤流路9は、主燃焼室11にガス酸化剤(すなわち、ガス状態の酸化剤)を供給する。蒸発酸化剤流路9は、外部(すなわち、酸化剤供給源4)から酸化剤を受け、主燃焼室11の熱により蒸発させることで該酸化剤をガスの状態で主燃焼室11へ流入させる。図2の例では、蒸発酸化剤流路9は、第一の酸化剤管6と液体酸化剤流路5と第二の酸化剤管8を通して、酸化剤タンク4から酸化剤を受ける。第二の酸化剤管8は、液体酸化剤流路5と蒸発酸化剤流路9とを連通させる。
【0029】
主燃焼室11において、副燃焼室7からの未反応燃料ガスと、蒸発酸化剤流路9からのガス状態の酸化剤とから二次燃焼ガスが生成され、この二次燃焼ガスが、上述の一次燃焼ガスとともに、二液スラスタ10のノズル29を通して外部に噴射される。これにより、二液スラスタ10が搭載された装置(例えば、人工衛星)は推力を得る。なお、ノズル29は、図2の例では、内壁面形成体27と一体となっているが、内壁面形成体27とは別に形成され、その後で内壁面形成体27に結合されてもよい。
【0030】
好ましくは、蒸発酸化剤流路9は、主燃焼室11の内壁面を形成する内壁面形成体27の中実内部(すなわち、主燃焼室11の壁面内)において、主燃焼室11の下流側から上流側へ酸化剤を流し、主燃焼室11の上流側で、酸化剤を主燃焼室11へ流入させる。主燃焼室11において、上流側で、未反応燃料ガスが、蒸発酸化剤流路9からのガス酸化剤と混合され、ガス酸化剤と反応しながら下流側へ流れる。したがって、主燃焼室11において、下流側の温度は、上流側の温度よりも高くなっている。
【0031】
なお、本実施形態において、主燃焼室11の上流側とは、主燃焼室11の中心軸と平行な方向における上流側(図2では、左側)を意味し、主燃焼室11の下流側とは、主燃焼室11の中心軸と平行な方向における下流側(図2では、右側)を意味する。ここで、本実施形態では、主燃焼室11は、その中心軸と平行な方向の各位置において、その中心軸と直交する平面による断面が円形になっている。
【0032】
本実施形態では、図2に示すように、主燃焼室11の断面積は、主燃焼室11の下流側部分において、下流側に移行するに従って小さくなっている。主燃焼室11の温度は、主燃焼室11の下流端(図2の破線で示す位置Pd)で最も高くなっている。そこで、蒸発酸化剤流路9は、主燃焼室11の内壁面の近傍に位置しつつ、内壁面に沿って、主燃焼室11の下流端部から上流端部まで延びる。図2の例では、蒸発酸化剤流路9は、主燃焼室11の下流端部から主燃焼室11の上流側端面11aの開口11a1まで延び、この開口からガス酸化剤を主燃焼室11へ流入させる。
【0033】
好ましくは、蒸発酸化剤流路9には、ガス酸化剤を主燃焼室11に噴射する酸化剤ノズル孔9aが設けられている。図2の例では、この酸化剤ノズル孔9aは、上述の開口11a1を有する。この場合、さらに、好ましくは、酸化剤ノズル孔9aは、主燃焼室11において、副燃焼室7からの未反応燃料ガスに向けてガス酸化剤を噴射する。これにより、ガス酸化剤を未反応燃料ガスに衝突させる。この場合、例えば図2のように、上述の連通路23は、主燃焼室11の中心軸と平行な方向に延びて、この方向に、未反応燃料ガスを主燃焼室11へ流入させ、酸化剤ノズル孔9aは、この中心軸と平行な方向から傾いた方向に、主燃焼室11の中心軸へ向かって、ガス酸化剤を主燃焼室11へ噴射する。
【0034】
図3は、本実施形態による図2の蒸発酸化剤流路9の構成を示す。図3(A)は、図2のIIIA−IIIA線断面図であり、図3(B)は、図2のIIIB−IIIB線断面図である。図3では、蒸発酸化剤流路9は、内壁面形成体27の外面の開口から、主燃焼室11の半径方向に、主燃焼室11の内壁面の近傍位置まで延び、さらに、この近傍位置から複数の分岐流路9bに分岐し、これらの分岐流路9bが、主燃焼室11の内壁面の近傍に位置しつつ、この内壁面に沿って、複数の酸化剤ノズル孔9aまで延びている。ただし、蒸発酸化剤流路9は、他の形状を有していてもよい。
【0035】
上述した端面形成体17と副燃焼室形成体25と内壁面形成体27とは、別々に形成され、その後、互いに結合されてもよいし、最初から一体で形成されてもよい。
【0036】
上述した本発明の実施形態による二段燃焼型の二液スラスタ10では、以下の効果(A)〜(H)が得られる。
【0037】
(A)蒸発酸化剤流路9は、主燃焼室11の熱により酸化剤をガスの状態で主燃焼室11へ流入させるので、主燃焼室11内で液体酸化剤をガス化させる過程を省略できる。したがって、主燃焼室11を短くできる。
【0038】
(B)副燃焼室7で、液体燃料と液体酸化剤から一次燃焼ガスと未反応燃料ガスを生成し、この未反応燃料ガスが、主燃焼室11で、蒸発酸化剤流路9からのガス酸化剤と混合する。このように、未反応燃料ガスと、既にガス化している酸化剤とを混合して燃焼させるので、燃焼が速やかになされる。その結果、高い燃焼効率が得られる。
【0039】
(C)液体酸化剤を蓄積した酸化剤タンク4から、酸化剤が主燃焼室11の壁面内に形成された蒸発酸化剤流路9へ導入される。したがって、この酸化剤により内壁面形成体27を冷却できるので、主燃焼室11のフィルム冷却を、無くし、または、減らすことができる。その結果、さらに高い燃焼効率が得られる。
【0040】
(D)蒸発酸化剤流路9に液体の酸化剤が流入し、この酸化剤が、蒸発酸化剤流路9において、主燃焼室11からの熱で蒸発する構成により、内壁面形成体27の冷却効果が一層高まる。すなわち、主燃焼室11からの熱を、液体酸化剤の気化熱に変換することにより、内壁面形成体27の冷却効果が高まる。例えば、内壁面形成体27の温度を1000℃以下に抑えることができる。
【0041】
(E)さらに、蒸発酸化剤流路9により、燃焼効率を高めるための液体酸化剤のガス化を、内壁面形成体27の冷却に利用することが可能となる。
【0042】
(F)主燃焼室11において、上流側で、未反応燃料ガスが、蒸発酸化剤流路9からのガス酸化剤と混合され、ガス酸化剤と反応しながら下流側へ流れる。したがって、主燃焼室11において、下流側の温度は、上流側の温度よりも高くなっている。そこで、本実施形態では、主燃焼室11の壁面内において、主燃焼室11の下流側から上流側へ酸化剤を流し、主燃焼室11の上流側で、酸化剤を主燃焼室11へ流入させることにより、相対的に低温の酸化剤により、相対的に高温の内壁面形成体27の下流側部分を冷却できる。これにより、酸化剤による内壁面形成体27の冷却効果が高まる。
【0043】
(G)酸化剤タンク4からの液体酸化剤は、蒸発酸化剤流路9において、最初に最も高温の主燃焼室11の下流端部に流入し、その後、主燃焼室11の上流側へ流れるので、最も高温の主燃焼室11の下流端部を、より効果的に冷却できる。
【0044】
(H)上述のように内壁面形成体27を冷却できるので、主燃焼室11を形成する内壁面形成体27を、耐熱温度が1000℃以下である一般的な金属材料で構成できる。したがって、スラスタ10の製造コストを下げることができる。
【0045】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1〜3のいずれかを採用してもよいし、変更例1〜3のうち、任意の2つまたは全てを組み合わせて採用してもよい。この場合、他の点は、上述と同じである。
【0046】
(変更例1)
燃料供給構造3は、燃料供給源から液体燃料を受けて、この液体燃料を副燃焼室7に供給する構造であれば、上述の燃料流路に限定されず、他の構造であってもよい。
【0047】
(変更例2)
酸化剤供給構造5は、酸化剤供給源から液体酸化剤を受けて、この液体酸化剤を副燃焼室7に供給する構造であれば、上述の液体酸化剤流路に限定されず、他の構造であってもよい。
【0048】
(変更例3)
第二の酸化剤管8は、第一の酸化剤管6から分岐して蒸発酸化剤流路9まで延びていてもよいし、酸化剤タンク4から蒸発酸化剤流路9まで延びていてもよい。後者の場合、第一の酸化剤管6と第二の酸化剤管8とは、それぞれ、異なる2つの酸化剤タンクから延びていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 燃料供給源(燃料タンク)
2 燃料管
3 燃料供給構造(燃料流路)
3a 燃料ノズル孔
4 酸化剤供給源(酸化剤タンク)
5 酸化剤供給構造(液体酸化剤流路)
5a 酸化剤ノズル孔
6 第一の酸化剤管
7 副燃焼室
7a 上流側端面
7b 下流側端面
8 第二の酸化剤管
9 蒸発酸化剤流路
9a 酸化剤ノズル孔
9b 分岐流路
10 二液スラスタ
11 主燃焼室
11a 上流側端面
11a1 開口
13,15 遮断弁
17 端面形成体
19,21 遮断弁
23 連通路
25 副燃焼室形成体
27 内壁面形成体
29 ノズル
図1
図2
図3