(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板の前記第1の実装面の裏面である第2の実装面に取り付けられ、前記第1の実装面の前記発熱部品が実装される領域に対応する前記第2の実装面の領域を覆うと共に、前記収容ケースの内部に充填された前記樹脂により前記収容ケース内に封止される金属製の第2の熱拡散カバーを更に備えることを特徴とする請求項1記載の車両用電子制御装置。
前記第1の熱拡散カバーと前記第2の熱拡散カバーとを前記基板を介して互いに締結する樹脂製の締結部材を更に備えることを特徴とする請求項2記載の車両用電子制御装置。
前記第1の熱拡散カバー及び前記第2の熱拡散カバーの内部に充填された前記樹脂が、前記基板に実装される他の電子部品に沿いながら前記発熱部品に対して偏在して前記収容ケース内に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用電子制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、回路基板上に実装された発熱部品から発生した熱は、収容ケース内に充填された樹脂を介して収容ケースに伝わり、収容ケースより外部に放熱されため、電子制御装置における温度上昇を抑制することができるものであるが、収容ケース内に充填された樹脂が伝熱できる熱量を超える熱量を発熱部品で生じることがあり、その結果、収容ケース内に充填された樹脂に熱が籠ることにより局所的に高温になる領域が生じる傾向があることが判明した。
【0007】
また、かかる傾向は、発熱素子が高速にスイッチング動作されるFET等であるとより顕著となり、特に、複数のFETが密集した状態で回路基板に実装されることが多い現状では、モータ等を駆動している際に複数のFETから生じた熱により温度が上昇し易く、局所的に高温になる領域が生じる傾向が甚だ顕著なものとなる。
【0008】
つまり、現状では、スイッチング素子等の発熱部品において発生する熱により、局所的に高温になる領域が生じることを確実に抑制できる新規な構成の車両用電子制御装置の実現が待望された状況にある。
【0009】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、発熱部品から発生する熱を効率よく伝熱
させて外部に放熱することにより、局所的に高温になる領域が生じることを抑制できる車両用電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成すべく、本発明は、発熱部品と、前記発熱部品が実装された基板と、前記発熱部品及び前記基板を収容する収容ケースと、を有し、前記収容ケースの内部に充填された樹脂により、前記発熱部品及び前記基板を前記収容ケース内に封止する車両用電子制御装置において、前記発熱部品から所定間隔を設けて前記発熱部品を覆った状態で前記基板の第1の実装面に取り付けられると共に、前記収容ケースの内部に充填された前記樹脂により前記収容ケース内に封止される金属製の第1の熱拡散カバーを更に備えることを第1の局面とする。
【0011】
また本発明は、かかる第1の局面に加えて、前記基板の前記第1の実装面の裏面である第2の実装面に取り付けられ、前記第1の実装面の前記発熱部品が実装される領域に対応する前記第2の実装面の領域を覆うと共に、前記収容ケースの内部に充填された前記樹脂により前記収容ケース内に封止される金属製の第2の熱拡散カバーを更に備えることを第2の局面とする。
【0012】
また本発明は、かかる第2の局面に加えて、前記第1の熱拡散カバーと前記第2の熱拡散カバーとを前記基板を介して互いに締結する樹脂製の締結部材を更に備えることを第3の局面とする。
【0013】
また本発明は、かかる第1から第3の局面のいずれかに加えて、前記第1の熱拡散カバー及び前記第1の熱拡散カバーの内部に充填された前記樹脂が、前記基板に実装される他の電子部品に沿いながら前記発熱部品に対して偏在して前記収容ケース内に配置されることを第4の局面とする。
【0014】
また本発明は、かかる第1から第3の局面のいずれかに加えて、前記収容ケースの熱伝導率は、前記樹脂部の熱伝導率よりも大きいことを第5の局面とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の局面における構成によれば、本発明は、発熱部品と、発熱部品が実装された基板と、発熱部品及び基板を収容する収容ケースと、を有し、収容ケースの内部に充填された樹脂により、発熱部品及び基板を収容ケース内に封止する車両用電子制御装置において、発熱部品から所定間隔を設けて発熱部品を覆った状態で基板の第1の実装面に取り付けられると共に、収容ケースの内部に充填された樹脂により収容ケース内に封止される金属製の第1の熱拡散カバーを更に備えることにより、発熱部品から発生する熱を効率よく伝熱させて外部に放熱し、局所的に高温になる領域が生じることを抑制することができる。
【0016】
ここで、第1の熱拡散カバーと発熱部品との間隔が離間し過ぎていると、局所的に高温となる領域が生じる課題を解決できない。このため、予めシミュレーション等に基づいて、熱拡散カバーが無い状態で局所的に高温となる範囲内に熱拡散カバーを載設する。これにより、第1の熱拡散カバーが発熱部品で発生する熱を受熱すると共に、金属製の第1の熱拡散カバーの高い熱伝導率を以て、熱をその周囲のポッティング樹脂に拡散的に伝熱することができる。よって、第1の熱拡散カバーの周囲の温度が拡散的に上昇される一方で、第1の熱拡散カバー内の温度を下げることができ、局所的に高温になる領域を実用的に減少することができる。
【0017】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、基板の第1の実装面の裏面である第
2の実装面に取り付けられ、第1の実装面の発熱部品が実装される領域に対応する第2の実装面の領域を覆うと共に、収容ケースの内部に充填された樹脂により収容ケース内に封止される金属製の第2の熱拡散カバーを更に備えることにより、第1の実装面に実装された発熱部品で発生し、基板を介して第2の実装面に伝熱された熱を、第1の熱拡散カバーにおける作用と同様に効率よく伝熱させて外部に放熱し、局所的に高温になる領域が生じることを確実に抑制することができる。
【0018】
また、本発明の第3の局面によれば、第1の熱拡散カバーと第2の熱拡散カバーとを基板を介して互いに締結する樹脂製の締結部材を更に備えることにより、半田付けせずに第1の熱拡散カバーと第2の熱拡散カバーとを基板に取り付けることができるので、基板に半田付けするためのレイアウトの検討や半田付けのための基板のスペースが不要になって、電子部品の実装及び回路パターンの引き回しに自由度を持たせることができると共に、金属製の第1の熱拡散カバー及び第2の熱拡散カバーを加締めにより基板に取り付けないので、加締める際に第1の熱拡散カバー及び第2の熱拡散カバーから生じる金属粉により、基板上の回路が短絡する等の事象が生じる可能性を低減することができる。
【0019】
また、本発明の第4の局面によれば、第1の熱拡散カバー及び第1の熱拡散カバーの内部に充填された樹脂が、基板に実装される他の電子部品に沿いながら発熱部品に対して偏在して収容ケース内に配置されることにより、耐熱性の低い他の電子部品を避けて伝熱領域を増大することができ、耐熱性の低い他の電子部品に放射される熱量を低減することができる。
【0020】
また、本発明の第5の局面によれば、収容ケースの熱伝導率が、樹脂部の熱伝導率よりも大きく設定されることにより、収容ケースは、熱拡散カバー及び樹脂部を介して、発熱部品で生じた熱を効率よく拡散的に受熱して、収容ケースの外部により確実に放熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適宜参照して、本発明の各実施形態における車両用電子制御装置につき、詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、z軸の方向が上下方向に対応するものとする。
【0023】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における車両用電子制御装置につき、図面を適宜参照しながら、以下詳細に説明する。
【0024】
<車両用電子制御装置の構成>
まず、本実施形態における車両用電子制御装置の構成につき、
図1及び
図2を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0025】
図1(a)は、本実施形態における車両用電子制御装置を示す斜視図であり、その収容ケースの一部を破断した状態で示し、
図1(b)は、その熱拡散カバーを取り除いた状態で示す
図1(a)の部分拡大図である。また、
図2は、
図1のその収容ケースの一部を破断した状態でのA−A断面図である。なお、
図1(a)及び
図1(b)では、説明の便宜上、発熱部品及びコネクタ以外の電子部品及び樹脂部の図示を省略し、
図2では、説明の便宜上、熱拡散カバーの内部の樹脂部の図示を省略している。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本実施形態における車両用電子制御装置10は、発熱部品20と、基板30と、収容ケース40と、熱拡散カバー50と、樹脂部60と、コネクタ70と、を主として備える。
【0027】
発熱部品20は、典型的には駆動回路を構成する複数のFET等のスイッチング素子から成る。発熱部品20は、図示を省略するモータ等を駆動する際にスイッチング動作することにより発熱する。つまり、発熱部品20は、その動作時に発熱するものであり、かつ
図1(b)に示すように密集して基板30の第1の実装面30aに半田付け等により複数実装されているため、かかる発熱部品20が実装される領域は、その動作時に高温になり易い。
【0028】
基板30は、典型的にはガラスエポキシ基板等の回路基板であり、第1の実装面30aと、第1の実装面30aの裏面である第2の実装面30bと、を有している。第1の実装面30aには、複数の電子部品13a及び13b、発熱部品20、並びにコネクタ70が実装されていると共に、発熱部品20を覆う熱拡散カバー50が取り付けられている。一方で、第2の実装面30bには、複数の電子部品13cが実装されている。第1の実装面30aに実装される電子部品13aは、第1の実装面30aに実装される発熱部品20及び電子部品13b、並びに第2の実装面30bに実装される電子部品13cよりも上下方向の高さが高い背高部品である。
【0029】
収容ケース40は、典型的には樹脂製であり、電子部品13a、13b及び13c、発熱部品20、基板30、熱拡散カバー50、並びにコネクタ70の一部を収容している。収容ケース40は、外部に開放した開口部41を一端に有した袋状になっており、開口部41からコネクタ70の一部が外部に突出している。収容ケース40のy軸の方向の中央部には、開口部41からx軸の正方向に向かって延在する高頂壁部42が設けられ、高頂壁部42の下方には、背高部品であるコンデンサ等の電子部品13aが配置される。収容ケース40の高頂壁部42以外の上壁部は高頂壁部42よりも高さの低い低頂壁部43になっており、低頂壁部43の下方には、電子部品13aに比べて各々低背化された発熱部品20、電子部品13b及び電子部品13cが配置される。これにより車両用電子制御装置10を小型化すると共に、樹脂部60の容積を低減することができる。
【0030】
熱拡散カバー50は、典型的には鉄等の金属製であり、発熱部品20から所定間隔を設けて発熱部品20を覆った状態で、基板30の第1の実装面30aに半田付け等で取り付けられている。
【0031】
より詳しくは、熱拡散カバー50は、下方が開放された直方体状の箱型部材であり、発熱部品20を収納するための凹部51と、凹部51の周囲に設けられる4つの側壁部52a、52b、52c及び52dと、4つの側壁部52a、52b、52c及び52dの下端部53a、53b、53c及び53dより更に下方に延設され、基板30に形成されて
いる図示を省略する複数の孔部に対応して嵌装されて基板30に半田付け等で固定される複数の脚部54と、4つの側壁部52a、52b、52c及び52dの隣接するもの同士の間に対応して各々形成された複数の隙間部55と、天板部56と、を有している。凹部51は、4つの側壁部52a、52b、52c及び52、並びに天板部56により画成される。また、熱拡散カバー50を基板30に取り付けた際に、熱拡散カバー50の下端部53a、53b、53c及び53dと、基板30の第1の実装面30aと、の間には複数の隙間部90が各々形成される。隙間部55及び隙間部90は、熱拡散カバー50の内部に樹脂を流入させるために設けられている。
【0032】
なお、熱拡散カバー50は、直方体状の箱型に限らず、発熱部品20から所定の間隔を設けて発熱部品20を覆うことができるような任意の形状に設定してもよい。また、熱拡散カバー50には、熱拡散カバー50の内部に樹脂が流入し易いように、隙間部55及び隙間部90に加えて、熱拡散カバー50の外部と内部とを連通する貫通孔や切欠きを天板部56等に設けてもよい。
【0033】
樹脂部60は、収容ケース40の内部に充填された流動性を有する樹脂材料が熱拡散カバー50の内部及び外部に流れ込んだ後に硬化することにより形成される。この際、収容ケース40の内部に充填された流動性を有する樹脂材料は、熱拡散カバー50の隙間部55及び隙間部90から熱拡散カバー50の内部に流入する。樹脂部60は、熱拡散カバー50により覆われた発熱部品20を熱拡散カバー50の内部に封止して固定すると共に、電子部品13a、13b及び13c、基板30、熱拡散カバー50、並びにコネクタ70の一部を収容ケース40の内部に封止して固定する。
【0034】
ここで、熱拡散カバー50の形状や発熱部品20と熱拡散カバー50との間の間隔は、発熱部品20と熱拡散カバー50とが直接接触した部分が生じないように、発熱部品20と熱拡散カバー50との間に必ず樹脂部60を介在させた構成が実現されるように設定される。更に、樹脂製の樹脂部60、樹脂製の収容ケース40及び金属製の熱拡散カバー50の各々の熱伝導率は、熱拡散カバー50の熱伝導率が一番大きくなるように設定されている。
【0035】
これにより、発熱部品20で生じた熱が、その周辺に不要に籠もらず、熱拡散カバー50内部の樹脂部60を介して熱拡散カバー50に向かって拡散的に伝熱されて、熱拡散カバー50内部の樹脂部60に再び伝熱することを抑制された態様で熱拡散カバー50自体の部材内部を伝熱しながら、熱拡散カバー50を介して熱拡散カバー50と収容ケース40との間の樹脂部60に伝熱し、熱拡散カバー50と収容ケース40との間の樹脂部60を介して収容ケース40に拡散的に伝熱した後に、収容ケース40の外部に放熱されることができる。
【0036】
また、樹脂製の樹脂部60及び樹脂製の収容ケース40の各々の熱伝導率は、収容ケース40の熱伝導率が樹脂部60の熱伝導率よりも大きくなるように設定されることが好ましい。これにより、収容ケース40は、熱拡散カバー50及び樹脂部60を介して、発熱部品20で生じた熱を効率よく拡散的に受熱して、収容ケース40の外部により確実に放熱することができる。
【0037】
また、熱拡散カバー50の形状や発熱部品20と熱拡散カバー50との間の間隔は、熱拡散カバー50が無い状態で、第1の実装面30a側の所定温度以上の高温になる箇所を予めシミュレーションや実測により把握し、このように把握した高温になる箇所から伝熱させるべき領域を見定めて設定されるものである。
【0038】
具体的には、熱拡散カバー50の天板部56と発熱部品20との間には、所定の間隔r
1が設けられている。熱拡散カバー50の側壁部52aと発熱部品20との間には、所定の間隔r2が設けられていると共に、熱拡散カバー50の側壁部52cと発熱部品20との間には、所定の間隔r3が設けられている。ここで、これらの間隔r1、r2及びr3の間には、間隔r1<間隔r2<間隔r3となる関係があって、熱拡散カバー50及びその内部の樹脂部60が、発熱素子20を覆ってそれからx軸の正方向側に、電子部品13aに沿って偏在していることが好ましい。例えば、発熱素子20に対してy軸の正方向側に配置される電子部品13aが、耐熱性が相対的に低い電子部品だとすれば、このように間隔r1、r2及びr3の間の大きさの大小関係が設定されて熱拡散カバー50及びその内部の樹脂部60が偏在することにより、発熱部品20で生じた熱が、熱拡散カバー50内部の樹脂部60を介して、発熱部品20の周辺に不要に籠もらないように、かつ、電子部品13aを避けるかのように、x軸の正方向側にその伝熱領域を増大された態様で伝熱していきながら熱拡散カバー50に伝熱し、熱拡散カバー50自体の部材内部を伝熱しながら熱拡散カバー50から、収容ケース40と熱拡散カバー50との間の樹脂部60を介して収容ケース40に伝熱して、収容ケース40の外部に放熱されることができる。つまり、発熱素子20に近接した電子部品13aに対して放熱される熱量をより低減することができ、また、電子部品13aよりも発熱素子20から離間した電子部品13bに対して放熱される熱量もより低減することができる。
【0039】
なお、熱拡散カバー50の側壁部52bと発熱部品20との間、及び熱拡散カバー50の側壁部52dと発熱部品20との間には、図示を省略する所定の間隔が設けられていることはもちろんである。
【0040】
コネクタ70は、図示を省略する相手側コネクタが嵌合する凹部である嵌合部70aを有すると共に、長板上の金属部材を折り曲げて形成され、コネクタ70の外部に一部が突出する接続端子71を備える。コネクタ70は、接続端子71が基板30に半田付けされた状態で、基板30の第1の実装面30aに実装されている。つまり、接続端子71は、一端が基板30に形成された図示を省略するスルーホールに挿入されて半田付けされると共に、他端が嵌合部70aで露出して相手側コネクタの図示を省略する接続端子等に接続可能になっている。
【0041】
<車両用電子制御装置の組み立て方法>
次に、本実施形態における車両用電子制御装置10の組み立て方法につき、
図1及び
図2を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0042】
まず、基板30の第1の実装面30aに発熱部品20及び電子部品13a及び13bを半田付け等により実装すると共に、基板30の第2の実装面30bに電子部品13cを半田付け等により実装する。
【0043】
次に、熱拡散カバー50により発熱部品20を覆った状態で、熱拡散カバー50の複数の脚部54を基板30の第1の実装面30aの複数の孔部に各々対応して嵌装した後これらを基板30に半田付けし、熱拡散カバー50を基板30に取り付ける。なお、熱拡散カバー50の基板30への取り付けは、半田付けに限らず、締結や加締め等の取付け構造を用いてもよい。
【0044】
併せて、基板30に対してコネクタ70の接続端子71を半田付けして、コネクタ70を基板30に実装する。
【0045】
次に、電子部品13a、13b及び13c、発熱部品20並びにコネクタ70を実装すると共に熱拡散カバー50を取り付けた基板30を、収容ケース40の開口部41から収容ケース40の内部に収容する。
【0046】
最後に、開口部41から収容ケース40の内部に流動性を有する樹脂材料を流入させて充填した後に硬化させることにより、熱拡散カバー50により発熱部品20を覆った状態で、電子部品13a、13b及び13c、発熱部品20、基板30、熱拡散カバー50、並びにコネクタ70の一部を、収容ケース40内に封止して固定する。この際、収容ケース40の内部に充填された流動性を有する樹脂材料は、熱拡散カバー50の隙間部55及び隙間部90より熱拡散カバー50の内部にも流入して硬化することにより、発熱部品20を熱拡散カバー50の内部に封止して固定する。
【0047】
<発熱部品が発熱した際の発熱状態>
次に、本実施形態における車両用電子制御装置10における発熱部品20が発熱した際の発熱状態につき、更に
図3をも参照しながら、以下詳細に説明する。
【0048】
図3(a)は、本実施形態における車両用電子制御装置の発熱部品で生じた熱が外部に伝熱する様子を示す模式図であり、位置的には
図2に相当する。また、
図3(b)は、本実施形態における車両用電子制御装置の熱拡散カバーにより発熱部品を覆った状態での発熱部品の周囲の温度分布を示す上面図であり、
図3(c)は、本実施形態における車両用電子制御装置の熱拡散カバーにより発熱部品を覆っていない状態での発熱部品の周囲の温度分布を示す上面図である。なお、
図3(a)では、説明の便宜上、発熱部品20、基板30、熱拡散カバー50及び非発熱部品80のみを示し、
図3(b)及び
図3(c)では、発熱部品20、基板30及び熱拡散カバー50のみを示している。
【0049】
図3(a)に示すように、発熱部品20で生じた熱は、
図3(a)の矢印D1で示すように放射状に熱拡散カバー50内部の樹脂部60を伝熱し、熱拡散カバー50に到達する。この際、熱拡散カバー50内部の樹脂部60に対する発熱部品20の接触面積は、基板30に対する発熱部品20の接触面積よりも相対的に大きいため、発熱部品20で生じた熱が基板30に伝熱される割合は相対的に低い。なお、
図3(a)中では、説明の便宜上、下方に向く伝熱は図示を省略している。
【0050】
熱拡散カバー50に到達した熱は、
図3(a)の矢印D2で示すように熱拡散カバー50自体の部材内部を伝熱する。この際、熱拡散カバー50内部の樹脂部60の熱伝導率は熱拡散カバー50の熱伝導率よりも低いため、熱拡散カバー50自体の部材内部を伝熱する熱が熱拡散カバー50内部の樹脂部60に再び伝熱されることは、確実に抑制されている。
【0051】
熱拡散カバー50自体の部材内部を伝熱する熱は、
図3(a)の矢印D3で示すように熱拡散カバー50から熱拡散カバー50外部の樹脂部60に放射状に伝熱し、収容ケース40に到達する。
【0052】
そして、収容ケース40に到達した熱は、収容ケース40の外部に放熱される。この際、収容ケース40が受熱する熱は、発熱部品20で生じた熱が熱拡散カバー50内部の樹脂部60、熱拡散カバー50及び熱拡散カバー50外部の樹脂部60を介して拡散的に伝熱されてきたものであるため、収容ケース40の外部に放熱される熱は、熱拡散カバー50の外部に存在する電子部品13a及び13b等の非発熱部品80に対して集中的に放熱されることはなく、非発熱部品80に対して与える熱影響を低減することができる。
【0053】
次に、車両用電子制御装置10の発熱部品20が発熱した場合の温度分布について、
図3(b)及び
図3(c)を参照して、詳細に説明する。
【0054】
ここで、
図3(b)及び
図3(c)において、温度t1、t2、t3…の順番に等温度
差で温度が高くなっていることを示す。また、
図3(b)と
図3(c)とは、熱拡散カバー50の有無以外は、同一条件で発熱部品20を発熱させた際の温度分布を示す。
【0055】
発熱部品20を熱拡散カバー50で覆った
図3(b)に示す車両用電子制御装置10では、発熱部品20に近づくほど温度が上昇するものの、その温度分布は熱拡散カバー50の配置領域に対応して相対的に均等化されており、発熱部品20が実装されている最も温度の高い領域の温度はt5程度である。
【0056】
一方で、発熱部品20を熱拡散カバー50で覆わない
図3(c)に示す車両用電子制御装置では、発熱部品20に近づくほど温度が急峻に上昇して、発熱部品20が実装されている最も温度の高い領域の温度はt10である。
【0057】
以上より、温度t5は温度t10よりも低温度であるため、発熱部品20を熱拡散カバー50で覆う場合には、発熱部品20を熱拡散カバー50で覆わない場合に比較して、発熱部品20が発熱した際の熱を拡散しながら伝熱して均等化し、車両用電子制御装置10の最高温度を低下させることができていることが分かる。なお、
図3(b)及び
図3(c)は、基板30の第1の実装面30aについての温度分布を示すが、基板30の第2の実装面30bについての温度分布の傾向も同様であった。
【0058】
以上の本実施形態の構成によれば、発熱部品20と、発熱部品20が実装された基板30と、発熱部品20及び基板30を収容する収容ケース40と、を有し、収容ケース40の内部に充填された樹脂部60により、発熱部品20及び基板30を収容ケース40内に封止する車両用電子制御装置10において、発熱部品20から所定間隔を設けて発熱部品20を覆った状態で基板30の第1の実装面30aに取り付けられると共に、収容ケース40の内部に充填された樹脂部60により収容ケース40内に封止される金属製の熱拡散カバー50を更に備えることにより、発熱部品20から発生する熱を効率よく伝熱させて外部に放熱し、局所的に高温になる領域が生じることを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の構成によれば、熱拡散カバー50及び熱拡散カバー50内部に充填された樹脂部60が、基板30に実装される他の電子部品13aに沿いながら発熱部品20に対して偏在して収容ケース40内に配置されることにより、耐熱性の低い他の電子部品13aを避けて伝熱領域を増大することができ、耐熱性の低い他の電子部品13aに放射される熱量を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態の構成によれば、収容ケース40の熱伝導率が、樹脂部60の熱伝導率よりも大きく設定されていることにより、収容ケース40は、熱拡散カバー50及び樹脂部60を介して、発熱部品20で生じた熱を効率よく拡散的に受熱して、収容ケース40の外部により確実に放熱することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態における車両用電子制御装置につき、図面を適宜参照しながら、以下詳細に説明する。
<車両用電子制御装置の構成>
まず、本実施形態における車両用電子制御装置の構成につき、
図4を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0062】
図4は、本実施形態における車両用電子制御装置のその収容ケースの一部を破断した状態での断面図であり、位置的には
図2に相当する。
【0063】
図4に示すように、本実施形態における車両用電子制御装置100においては、第1の
実施形態における車両用電子制御装置10における熱拡散カバー50の代わりに、熱拡散カバー110及び熱拡散カバー120を設けたことが主たる相違点である。よって、本実施形態においては、かかる相違点に着目して説明することとし、第1の実施形態と同一な構成要素には同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。なお、
図4では、説明の便宜上、熱拡散カバー110の内部及び熱拡散カバー120の内部の樹脂部60の図示を省略している。
【0064】
本実施形態における車両用電子制御装置100は、発熱部品20と、基板30と、収容ケース40と、樹脂部60と、コネクタ70と、熱拡散カバー110及び120と、締結部材130と、を主に備える。
【0065】
熱拡散カバー110は、典型的には鉄等の金属製で、下方が開放された直方体状の箱型部材であり、発熱部品20から所定間隔を設けて発熱部品20を覆うものであるが、締結部材130により基板30の第1の実装面30aに取り付けられていることが、車両用電子制御装置10における熱拡散カバー50の構成と相違するものである。つまり、熱拡散カバー110は、その天板部56に締結部材130を挿通するための板厚方向に貫通する貫通孔111が形成されていること以外は、車両用電子制御装置10における熱拡散カバー50の構成と同一である。
【0066】
熱拡散カバー120は、熱拡散カバー110と同様に典型的には鉄等の金属製の直方体状の箱型部材であるが、発熱部品20を実装した第1の実装面30aの領域に対応する第2の実装面30bの領域を覆った状態で、締結部材130により第2の実装面30bに取り付けられている。かかる熱拡散カバー120は、発熱部品20を実装した第1の実装面30aの領域を、上方から下方に見て第2の実装面30bに投影した投影領域を覆った状態で、第2の実装面30bに取り付けられている。ここで、熱拡散カバー120により覆われる領域は、かかる投影領域に一致する場合に限らず、
図4に示すように、かかる投影領域を含んでいればそれよりも大きい領域であってもよい。
【0067】
より詳しくは、熱拡散カバー120は、上方が開放された直方体状の箱型部材であり、凹部121と、凹部121の周囲に設けられる4つの側壁部122a、122b、122c及び122dと、4つの側壁部122a、122b、122c及び122dの上端部123a、123b、123c及び123dより更に上方に延設され、基板30に形成されている図示を省略する複数の孔部に対応して嵌装される複数の脚部124と、4つの側壁部122a、122b、122c及び122dの隣接するもの同士の間に対応して各々形成された複数の隙間部125と、底板部126と、を有している。凹部121は、4つの側壁部122a、122b、122c及び122d、並びに底板部126により画成される。また、熱拡散カバー120を基板30に取り付けた際に、熱拡散カバー120の上端部123a、123b、123c及び123dと、基板30の第2の実装面30bと、の間には複数の隙間部190が各々形成される。隙間部125及び隙間部190は、熱拡散カバー120の内部に樹脂を流入させるために設けられている。底板部126には、締結部材130を挿通するための板厚方向に貫通する貫通孔127が形成されている。
【0068】
熱拡散カバー120を基板30の第2の実装面30bに取り付けた際の熱拡散カバー120の第2の実装面30bからの高さh2は、第2の実装面30bに発熱部品20を実装していないため、熱拡散カバー110を基板30の第1の実装面30aに取り付けた際の熱拡散カバー110の第1の実装面30aからの高さh1よりも低く設定される。これにより、基板30の第2の実装面30bと収容ケース40との間隔を小さくすることができるので、車両用電子制御装置10を小型化することができる。なお、熱拡散カバー120内では、別の発熱部品等の電子部品が基板30の第2の実装面30bに実装されていてもよい。また、熱拡散カバー120は、熱拡散カバー110と同じ材料製であることがコス
ト面等の利点が大きいが、収容ケース40及び樹脂部60の熱伝導率よりも熱伝導率が大きいものであれば、熱拡散カバー110の金属材料とは異種の金属材料を用いて形成してもよい。
【0069】
樹脂部60は、収容ケース40の内部に充填された流動性を有する樹脂材料が熱拡散カバー110及び熱拡散カバー120の内部及び外部に流れ込んだ後に硬化することにより形成される。この際、収容ケース40の内部に充填された流動性を有する樹脂材料は、熱拡散カバー110の隙間部55及び隙間部90から熱拡散カバー110の内部に流入すると共に、熱拡散カバー120の隙間部125及び隙間部190から熱拡散カバー120の内部に流入する。樹脂部60は、熱拡散カバー110により覆われた発熱部品20を熱拡散カバー110の内部に封止して固定すると共に、電子部品13a、13b及び13c、基板30、コネクタ70、熱拡散カバー110、熱拡散カバー120、並びにコネクタ70の一部を、収容ケース40の内部に封止して固定する。
【0070】
締結部材130は、典型的には樹脂製であり、一端に貫通孔127の径より大きな径を有する頭部130aを有すると共に、他端に締結部130bを有している。締結部材130は、熱拡散カバー110に形成された貫通孔111、基板に形成された図示を省略する貫通孔、及び熱拡散カバー120に形成された貫通孔127に挿通されて、頭部130aが熱拡散カバー120の貫通孔127の周りの底板部126に当接された状態で、締結部130bが圧入や螺合等により熱拡散カバー110の貫通孔111の周りの天板部56と締結されることにより、熱拡散カバー110と熱拡散カバー120とを基板30に対して固定する。また、締結部材130の熱伝導率は、樹脂部60の熱伝導率と同程度に設定され、熱拡散カバー110及び熱拡散カバー120の各々の熱伝導率よりも小さく設定される。
【0071】
<車両用電子制御装置の組み立て方法>
次に、本実施形態における車両用電子制御装置100の組み立て方法につき、
図4を参照しながら、以下詳細に説明する。なお、本実施形態における車両用電子制御装置の組み立て方法において、第1の実施形態における車両用電子制御装置の組み立て方法と同一である工程については、その説明を省略又は簡略化する。
【0072】
まず、基板30の第1の実装面30aに発熱部品20及び電子部品13a及び13bを半田付け等により実装すると共に、基板30の第2の実装面30bに電子部品13cを半田付け等により実装した後で、発熱部品20を実装した第1の実装面30aの領域を、上方から下方に見て第2の実装面30bに投影した投影領域を、熱拡散カバー120で覆った状態で、熱拡散カバー110と熱拡散カバー120とを基板30を介して締結部材130により基板30に取り付ける。
【0073】
具体的には、熱拡散カバー120の貫通孔127に対して、熱拡散カバー120の外方より締結部材130の締結部130bを挿通する。
【0074】
続いて、熱拡散カバー110の貫通孔111に対して、熱拡散カバー110の内部より、貫通孔127及び基板の貫通孔を順次挿通した締結部材130の締結部130bを、締結部材130の頭部130aが熱拡散カバー120の貫通孔127の周りの底板部126に当接するまで挿通する。
【0075】
この際、締結部材130の締結部130bを、圧入や螺合等により熱拡散カバー110の貫通孔111の周りの天板部56と締結することにより、熱拡散カバー110と熱拡散カバー120とを基板30に対して固定して取り付ける。
【0076】
次に、コネクタ70を実装すると共に電子部品13a、13b及び13c、発熱部品20、熱拡散カバー110並びに熱拡散カバー120を取り付けた基板30を、収容ケース40の開口部41から収容ケース40の内部に収容する。
【0077】
最後に、開口部41から収容ケース40の内部に樹脂材料を流入させて充填した後に硬化させることにより、熱拡散カバー110により発熱部品20を覆うと共に熱拡散カバー120により前述の投影領域を覆った状態で、電子部品13a、13b及び13c、発熱部品20、基板30、熱拡散カバー110及び熱拡散カバー120、並びにコネクタ70の一部を、収容ケース40内に封止して固定する。この際、収容ケース40の内部に充填された流動性を有する樹脂材料は、熱拡散カバー110の隙間部55及び隙間部90より熱拡散カバー110の内部に流入して硬化することにより、発熱部品20を熱拡散カバー110の内部に封止する。なお、熱拡散カバー120内で、別の発熱部品等の電子部品が基板30の第2の実装面30bに実装されている場合には、同様に、かかる電子部品も熱拡散カバー120の内部に封止する。
【0078】
<発熱部品が発熱した際の発熱状態>
次に、本実施形態における車両用電子制御装置100における発熱部品20が発熱した際の発熱状態につき、以下詳細に説明する。
【0079】
本実施形態における車両用電子制御装置100の発熱部品20が発熱した際の発熱状態の様子は、
図3(a)を参照しながら説明した内容と同様であると共に、車両用電子制御装置100の発熱部品20が発熱した場合の温度分布は、
図3(b)を参照しながら説明した内容と同様である。
【0080】
但し、本実施形態における車両用電子制御装置100では、熱拡散カバー110に加えて熱拡散カバー120が設けられているため、発熱部品20が発熱した際の熱を、基板30を介して熱拡散カバー120内部の樹脂部60にも伝熱する。このように熱拡散カバー120内部の樹脂部60に伝熱された熱は、熱拡散カバー120に向かって拡散的に伝熱して、熱拡散カバー120内部の樹脂部60に再び伝熱することを抑制された態様で熱拡散カバー120自体の部材内部を伝熱しながら、熱拡散カバー120を介して熱拡散カバー120と収容ケース40との間の樹脂部60に伝熱し、熱拡散カバー120と収容ケース40との間の樹脂部60を介して収容ケース40に拡散的に伝熱した後に、収容ケース40の外部に放熱される。これにより、発熱部品20が発熱した際の熱を、基板30を挟んでより拡散しながら伝熱して均等化し、車両用電子制御装置10の最高温をより低下させることができる。ここで、締結部材130の熱伝導率は、樹脂部60の熱伝導率と同程度に設定され、熱拡散カバー110及び熱拡散カバー120の各々の熱伝導率よりも小さく設定されているため、発熱部品20が発熱した際の熱を拡散して均等化する際に、不要な熱影響を及ぼさない。また、熱拡散カバー120内で、別の発熱部品等の電子部品が基板30の第2の実装面30bに実装されている場合にも、同様に、発熱部品20等が発熱した際の熱をより拡散して均等化し、車両用電子制御装置10の最高温をより低下させることができることはもちろんである。
【0081】
なお、本実施の形態において、熱拡散カバー120の内部には発熱部品を実装していないが、熱拡散カバー110の内部と熱拡散カバー120の内部との両方に発熱部品が各々実装されるようにしてもよい。
【0082】
以上の本実施形態の構成によれば、第1の実施形態の効果に加えて、基板30の第1の実装面30aの裏面である第2の実装面30bに取り付けられ、第1の実装面30aの発熱部品20が実装される領域に対応する第2の実装面30bの領域を覆うと共に、収容ケース40の内部に充填された樹脂部60により収容ケース40内に封止される金属製の熱
拡散カバー120を更に備えることにより、第1の実装面30aに実装された発熱部品20で発生し、基板を介して第2の実装面30bに伝熱された熱を、効率よく伝熱させて外部に放熱し、局所的に高温になる領域が生じることを確実に抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の構成によれば、熱拡散カバー110と熱拡散カバー120とを基板30を介して互いに締結する樹脂製の締結部材130を更に備えることにより、半田付けせずに熱拡散カバー110と熱拡散カバー120とを基板30に取り付けることができるので、基板30に半田付けするためのレイアウトの検討や半田付けのための基板のスペースが不要になって電子部品の実装及び回路パターンの引き回しに自由度を持たせることができると共に、金属製の熱拡散カバー110及び熱拡散カバー120を加締めにより基板に取り付けないので、加締める際に熱拡散カバーから生じる金属粉により基板上の回路が短絡する等の事象が生じる可能性を低減することができる。
【0084】
なお、本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。