特許第6227940号(P6227940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227940
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】カップ付衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/08 20060101AFI20171030BHJP
   A41C 3/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   A41C3/08
   A41C3/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-182608(P2013-182608)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-63764(P2015-63764A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-179398(P2013-179398)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】石原 陽子
(72)【発明者】
【氏名】澤井 時彦
(72)【発明者】
【氏名】増井 孝則
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−157709(JP,U)
【文献】 特開2010−013774(JP,A)
【文献】 特開2009−189621(JP,A)
【文献】 特開平10−037003(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3010471(JP,U)
【文献】 特開2005−154913(JP,A)
【文献】 特開2008−248465(JP,A)
【文献】 特開2007−154370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/00−5/00
A41B 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性の身生地で構成される前身頃及び後身頃と、左右のカップ部と、を備えているカップ付衣類であって、
前身頃を構成する身生地の肌側面のうち着用者のバストを覆う領域に左右のカップ部を収容するための切替え生地が、身生地と一体に伸縮可能な状態となるように、身生地及び切替え生地の伸縮方向に沿った所定幅の帯状領域で伸縮方向と繰り返し交差するように付着される線状の接着パターンを介して、連続的に接合されているカップ付衣類。
【請求項2】
身生地と切替え生地とで区画されるカップ部の収容空間に収容された左右のカップ部の位置ずれを抑制する位置ずれ防止部が設けられている請求項1記載のカップ付衣類。
【請求項3】
前記位置ずれ防止部が、切替え生地の上下幅が左右中央部で絞られた絞り部で構成されている請求項記載のカップ付衣類。
【請求項4】
前記位置ずれ防止部が、左右のカップ部の間で身生地と切替え生地とを前記接着剤で接合した接合部で構成されている請求項記載のカップ付衣類。
【請求項5】
身生地と切替え生地とで区画されるカップ部の収容空間にカップ部を装着または離脱する開口となる非接合部が設けられている請求項1からの何れかに記載のカップ付衣類。
【請求項6】
身生地と切替え生地とで区画されるカップ部の収容空間から塵を除去する塵排除口となる非接合部が設けられている請求項1からの何れかに記載のカップ付衣類。
【請求項7】
非接合部の直近に形成される接着パターンの端部に切返し部が設けられている請求項または記載のカップ付衣類。
【請求項8】
切替え生地が、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸を熱変形させることにより解れ止め加工した編地で構成され、端縁が切りっ放し処理されている請求項1からの何れかに記載のカップ付衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性の身生地で構成される前身頃及び後身頃と、左右のカップ部と、を備えているカップ付衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タンクトップ、キャミソールやチュニック等、身生地の肌側面に左右のカップ部を取り付けたカップ付衣類が多用され、特に夏季には上着としても活用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、胸部左右にそれぞれ設けたポケットと、該ポケットに装脱可能に構成した整胸用パッドとを備えた下着が提案されている。下着を構成する身生地の裏面でバストを被う部分に、それぞれ布片を用いてポケットが設けられ、このポケットの中に、それぞれカップと呼ばれる整胸用パッドを上方から挿入するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、カップ布とフロント布と脇布とバック布からなるブラジャーと、その上に着用するストラップ付き外衣とから構成され、ブラジャーの両カップ布の頂部から外側縁、脇布およびバック布の上端縁をストラップ付き外衣の内面に縫着一体化し、他の部分を縫着せず遊離してなる女性用衣類が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−172503号公報
【特許文献2】特開2000−144503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された下着は、身生地に布片を縫着することによってカップを挿入するポケットが構成されているので、布片の周囲を解れ止め処理する必要があり、その部位が厚手になりゴワツキ感が生じるという問題があった。
【0007】
また、下着として着用する場合には、上着の着用が前提になるため、問題は生じないのであるが、タンクトップ、キャミソールやチュニック等を上着として着用する場合もあり、そのような用途に用いられるタンクトップ等に特許文献1に記載されたポケット構造を採用すると、表側からポケットの縫着状態が目視されて美観が損なわれるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された女性用衣類は、外衣のネックラインに両カップ布の頂部から内側縁が沿うように、またアームホールに両カップ布の頂部から外側縁を沿わせ、ブラジャーの一方のカップ布の頂部から縫着していき、外側縁を経て脇布の上端縁およびバック布の上端縁を縫着し、他方のカップ布の外側縁から頂部にかけて外衣の内面に縫着しているため、ブラジャーが外衣のネックラインからアームホールにかけて一体的に縫着され、その結果、上着からはみ出して美観を損なうということはない。
【0009】
しかし、特許文献2に記載された女性用衣類は、ブラジャーが外衣と一体化され、ブラジャーを構成する伸縮性を備えた脇布及びバック布で胸部が覆われるために、胸部が締め付けられて開放感を味わうことができないという問題や、身生地とブラジャーを構成する生地の二重で胸周りが覆われるため、暑苦しく不快に感じるという問題もあり、特にこのような衣類が多用される夏季に不快に感じる場合が多いという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、バストのシルエットを整える機能を備えながらも、胸部を締め付けることなく楽に着用でき、しかも美観を損なうことがないカップ付衣類を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によるカップ付衣類の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、伸縮性の身生地で構成される前身頃及び後身頃と、左右のカップ部と、を備えているカップ付衣類であって、
前身頃を構成する身生地の肌側面のうち着用者のバストを覆う領域に左右のカップ部を収容するための切替え生地が、身生地と一体に伸縮可能な状態となるように、身生地及び切替え生地の伸縮方向に沿った所定幅の帯状領域で伸縮方向と繰り返し交差するように付着される線状の接着パターンを介して、連続的に接合されている点にある。
【0012】
前身頃の身生地と切替え生地が接着剤を介して伸縮可能な状態で接合されているので、縫い糸を用いた場合に顕れる縫製痕が存在しないので美観を損なうことがなく、左右のカップ部によってバストのシルエットが適切に整えられるようになる。また、着用者の身体の動きによって身生地と切替え生地が伸縮するように接着されているので、接着位置で身生地が自然に伸縮し、引きつれるようなこともない。しかも、前身頃側の身生地の肌側面のうち着用者のバストを覆う領域にのみ切替え生地が配され、後身頃には配されることがないので、暑苦しさや胸周りの強い締付け感からも解放され、清涼感を味わうことができるようになる。
【0013】
ところで、身生地及び切替え生地の伸縮方向に沿って面状に接着剤が配されると、接着剤によって身生地及び切替え生地の伸縮が抑制されるので、接着部とその他の領域で伸縮状態が変わり、着用時に接着部で身生地が引きつれるようになり、美観を損なうばかりか着用感が悪くなる虞がある。しかし、上述の構成によれば、帯状領域で伸縮方向と繰り返し交差するように付着される線状の接着パターンで身生地と切替え生地とが連続的に接合され、伸縮方向に沿った任意の直線上に接着位置が点状に分布するようになるので、身生地及び切替え生地が点状の接着位置の間で自由に伸縮できるようになり、全体として伸縮性が損なわれることがない。
【0014】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、身生地と切替え生地とで区画されるカップ部の収容空間に収容された左右のカップ部の位置ずれを抑制する位置ずれ防止部が設けられている点にある。
【0015】
位置ずれ防止部によって左右のカップ部の位置ずれが抑制されるので、着用時に左右のカップ部が左右のバストから大きく位置ずれすることがなく、着用者に不快感を与えることがない。また、逆に左右のカップ部の位置をある程度調整できるようになるので、着用者毎に適切な位置に調整してバストのシルエットを適切に整えることができるようになる。
【0016】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第の特徴構成に加えて、前記位置ずれ防止部が、切替え生地の上下幅が左右中央部で絞られた絞り部で構成されている点にある。
【0017】
上述の構成によれば、左右中央部の絞り部で左右のカップ部の位置変動が抑制されるようになる。
【0018】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第の特徴構成に加えて、前記位置ずれ防止部が、左右のカップ部の間で身生地と切替え生地とを前記接着剤で接合した接合部で構成されている点にある。
【0019】
上述の構成によれば、左右のカップ部の間の接合部で左右のカップ部の位置変動が抑制されるようになる。
【0020】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、身生地と切替え生地とで区画されるカップ部の収容空間にカップ部を装着または離脱する開口となる非接合部が設けられている点にある。
【0021】
非接合部で構成される開口を介してカップ部を装着し或いは離脱することができるようになるので、カップ部を取り外して洗濯したり、着用時に着用者に合った形状のカップ部を装着したりすることが可能になる。
【0022】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、身生地と切替え生地とで区画されるカップ部の収容空間から塵を除去する塵排除口となる非接合部が設けられている点にある。
【0023】
洗濯等によってカップ部の収容空間に糸くずや埃等の塵が溜まることがあり、そのような塵が多くなると団子状になって肌触りを悪くしたり美観を損ねたりする虞があるが、そのような場合でも非接合部で構成される塵排除口から容易に塵を取り除くことができるようになる。
【0024】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第または第の特徴構成に加えて、非接合部の直近に形成される接着パターンの端部に切返し部が設けられている点にある。
【0025】
例えば洗濯時に非接合部を介してカップ部を出し入れし、或いは非接合部を介して除塵するような操作が繰り返されると、非接合部の近傍の接着部で身生地から切替え生地が次第に剥がれるようになる虞がある。そのような場合でも、非接合部の直近の接着パターンの端部に切返し部が形成されていると、十分に接着強度が確保され、身生地から切替え生地が剥がれるようなことが回避できるようになる。
【0026】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、切替え生地が、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸を熱変形させることにより解れ止め加工した編地で構成され、端縁が切りっ放し処理されている点にある。
【0027】
切替え生地として、このような解れ止め加工を施した編地を採用すれば、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維が解れるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、例えば端部を折り返して縫着するような従来の解れ止め加工が不要になるので、従来の解れ止め処理による端部の厚み等に起因する肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい衣類が提供できるようになる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した通り、本発明によれば、バストのシルエットを整える機能を備えながらも、胸部を締め付けることなく楽に着用でき、しかも美観を損なうことがないカップ付衣類を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は本発明によるカップ付衣類の一例であるタンクトップの正面表側から視た説明図、(b)は同背面表側から視た説明図
図2】(a)は本発明によるカップ付衣類の一例であるタンクトップの正面裏側から視た説明図、(b)は身生地と切替え生地の接合状態の説明図
図3】(a)はカップ付衣類の一例であるタンクトップの着用状態を示す説明図、(b)はカップ付衣類の他の例であるキャミソールの着用状態を示す説明図
図4】(a)から(c)はそれぞれ別実施形態を示し、身生地と接合される切替え生地の形状及び接着パターンの説明図
図5】(a)から(d)はそれぞれ接着パターンの態様の説明図
図6】(a)は別実施形態を示すカップ付衣類の接着パターンの説明図、(b),(c)は接着パターンの切返し部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明によるカップ付衣類の一例であるタンクトップを図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)、図2(a)及び図3(a)に示すように、カップ付衣類1は、伸縮性の身生地10で構成される前身頃2及び後身頃3と、左右のカップ部4,5とを備えて構成されている。
【0031】
前身頃2となる身生地10の肌側面のうち着用者のバストを覆う領域に左右のカップ部4,5を収容するための切替え生地20が、接着剤を介して身生地10と共に伸縮可能な状態で接合されている。接着剤として、熱可塑性樹脂で構成され、加熱溶融された接着剤やホットメルトが好適に用いられるが、樹脂を溶剤に溶かして形成した接着剤を用いることも可能である。
【0032】
前身頃2の身生地10と切替え生地20とを縫い糸を用いて接合した場合に顕れる縫製痕が存在しないので、上着として着用する場合であっても美観を損なうことがなく、左右のカップ部4,5によってバストのシルエットが適切に整えられるようになる。
【0033】
また、着用者の身体の動きによって身生地10と切替え生地20が伸縮するように接着されているので、接着位置で身生地が自然に伸縮し、引きつれるようなこともない。しかも、前身頃2側の身生地10の肌側面のうち着用者のバストを覆う領域にのみ切替え生地20が配され、後身頃3側の身生地には配されることがないので、暑苦しさや胸周りの強い締付け感からも解放され、清涼感を味わうことができるようになる。
【0034】
身生地10を編成する原糸として綿等の天然繊維が好適に用いられる。また、天然繊維以外に、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエステル等の合成繊維等を用いることができる。身生地10としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編み等の緯編地や、ラッセル編み等の経編地を好適に用いることができる。また、ポリウレタン等の弾性糸を地組織に編成することにより、伸縮性に富んだ衣類が得られる。身生地10に緯編地を用いる場合には、コース方向が身幅に沿うように、そしてウェール方向が着丈に沿うように用いられることが好ましい。
【0035】
切替え生地20として、肌触りがよく吸水性に優れたセルロース繊維またはセルロース繊維を含む混紡糸を用いた編地が好適に用いられ、編組織として、上述したフライス編み、スムース編み、天竺編み等の緯編地が好適に用いられる。そして、身生地と同様にコース方向が身幅に沿うように、そしてウェール方向が着丈に沿うように用いられることが好ましい。
【0036】
切替え生地20として、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸を熱変形させることにより解れ止め加工した編地で、端縁が切りっ放し処理されている編地を用いることがさらに好ましい。
【0037】
このような解れ止め加工を施した編地を採用すれば、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維が解れるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、例えば端部を折り返して縫着するような従来の解れ止め加工が不要になるので、従来の解れ止め処理による端部の厚み等に起因する肌触りの悪化による不快感を招くことがなく、肌に優しい衣類が提供できるようになる。
【0038】
プレーティング編みは添え糸編みともいい、既存の編成方法を採用することができる。例えば複数本の糸をそれぞれ別の給糸口から、編み針に給糸する編成方法を用いると編成ループそれぞれの糸の配置が安定的に定まるため、特に好ましい。従って、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸とを別の給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける熱変形性弾性糸とそれ以外の糸との配置が安定しているため、全てのループに熱変形性弾性糸を隣接させることができ、ヒートセット加工等により熱変形性弾性糸を熱変形させれば、編地の全てのループで確実に解れ止め機能が実現できるようになる。
【0039】
具体的に、熱変形性弾性糸に低融点ポリウレタン弾性糸、それ以外の糸に綿糸とレーヨンの混紡糸を選択し、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地をヒートセット加工することにより、低融点ポリウレタン弾性糸が溶融して互いに融着することで、解れ止め機能が実現される。
【0040】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールや解れが抑制された編地を得ることができる。つまり、加熱処理により溶融し或いは圧縮変形するような特性を備えた熱変形性弾性糸であればこれらに限るものではない。
【0041】
接着剤となる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも反応型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0042】
図2(b)に示すように、両生地10,20の伸縮方向、好ましくは最大伸縮方向10d,20dに沿った所定幅Wの帯状領域R(図中、ハッチングで示す領域)で伸縮方向と繰り返し交差するように付着される線状の接着パターンを有する接着層を介して、身生地10と切替え生地30が連続的に接合される。
【0043】
最大伸縮方向とは、コース方向及びウェール方向の何れか一方での伸縮率がそれと直交する他方向よりも大きい方向をいい、緯編地の場合にはコース方向が最大伸縮方向となる。なお、緯編地の場合のコース方向とは、編み立て方向をいい、ウェール方向とは編み立て方向と直交する方向をいう。
【0044】
図5(a)〜(e)には、接着層を形成する線状の接着パターンが例示されている。身生地10の肌側面で身生地10の伸縮方向10dに沿う直線Lに対して、所定の繰返しピッチBp、所定の振幅Ba(=W)で交差するように加熱溶融された接着剤30が塗布され、その後、切替え生地20と重畳されて冷却されることにより両生地10,20が接着される。
【0045】
身生地10の伸縮方向10dに沿う任意の直線Lと線状の接着パターンとの交点に注目すると、所定ピッチBpの2倍のピッチで接着剤が塗布された接着点Bと、隣接する接着点Bの間の非接着領域NBが交互に配列されるようになる。つまり、伸縮方向10dに沿った任意の直線L上に接着位置が点状に分布する。このような関係が所定幅Wの帯状領域R(図2(b)参照)で維持されることにより、身生地10の伸縮方向10dに沿う任意の直線Lに沿って接着点Bでは伸縮が抑制されるものの、大半の非接着領域NBで伸縮が許容され、全体として伸縮が許容されながらも、両生地10,20が強固に接着されるようになる。
【0046】
接着パターンとして、図5(a),(b),(c)に示すようなジグザグパターンや、図5(d)に示すようなサインカーブのような曲線の繰返しパターンや、図5(e)に示すような菱形の繰返しパターン等、伸縮方向10dに沿った任意の直線L上で接着位置が非接着領域を挟んで点状に分布するような任意のパターンを採用することができる。ここで、繰返しピッチBpや振幅Baは、接着対象となる生地特性や目標とする接着強度等に基づいて適宜設定される値である。
【0047】
上述の接着パターンで接着剤が塗布される帯状領域Rは、最大伸縮方向に限るものではなく、両生地10,20の伸縮方向に沿って形成されていればよく、例えば、図2(c)に示すように、最大伸縮方向と傾斜する方向に沿って帯状領域Rが形成されていてもよい。また、帯状領域Rは直線状である必要はなく、曲線状であってもよい。
【0048】
図2(c)に示す帯状領域R1のように、最大伸縮方向と直交する方向では、必ずしも上述の接着パターンで接着剤を塗布する必要はなく、接着剤を帯状領域R1の長手方向に沿って直線状に塗布してもよいし、ホットメルト樹脂などで構成された接着樹脂テープを用いて接合してもよい。本来的に伸縮性が少ない方向であるため大きな不都合が生じることがない。しかし、身生地10や切替え生地20がコース方向にもウェール方向にも伸縮性を備えた生地では、他の帯状領域Rと同様の接着パターンで接着剤を塗布することが好ましい。
【0049】
図4(a)〜(c)に示すように、切替え生地20の形状は特に制限されるものではなく、左右のカップ部4,5を収容可能なサイズであれば、矩形であっても、多角形であっても、円形であってもよい。
【0050】
左右のカップ部4,5は弾性樹脂製であることが好ましいが、素材は特に限定されるものではない。身生地10と切替え生地20とで区画されるカップ部の収容空間に収容された左右のカップ部4,5の位置ずれを抑制する位置ずれ防止部が設けられていることが好ましい。
【0051】
位置ずれ防止部によって収容空間内での左右のカップ部4,5の位置ずれが抑制されるので、着用時に左右のカップ部4,5が左右のバストから大きく位置ずれすることがなく、着用者に不快感を与えることがない。また、逆に左右のカップ部4,5の位置をある程度調整できるようになるので、着用者毎に適切な位置に調整してバストのシルエットを適切に整えることができるようになる。
【0052】
図2(b),(c)及び図4(a),(c)には、切替え生地20の上下幅が左右中央部で絞られた絞り部50で位置ずれ防止部40が構成された例が示されている。切替え生地20の上下両辺が左右中央部に向かって幅狭になるように傾斜して絞り部50が構成される態様、切替え生地20の上下何れか一方の辺が左右中央部に向かって幅狭になるように傾斜して絞り部50が構成される態様の何れでもよく、絞り部50によって左右のカップ部4,5の位置変動が抑制されるようになる。
【0053】
図4(b)には、左右のカップ部4,5の間で身生地10と切替え生地20とを接着剤で接合した接合部60で位置ずれ防止部40が構成された例が示されている。接合部60は必ずしも左右のカップ部4,5の中央部に形成される必要はなく、図2(b),(c)に示すように、切替え生地20の上下両辺に形成され、左右のカップ部4,5が左右反対側に移動するのを抑制する帯状領域Rで接合部60が構成されていてもよい。
【0054】
図2(b),(c)に示すように、身生地10と切替え生地20とで区画されるカップ部4,5の収容空間にカップ部4,5を装着または離脱する開口70となる非接合部が設けられていることが好ましい。当該開口70を介してカップ部4,5を装着し或いは離脱することができるようになるので、カップ部4,5を取り外して洗濯したり、着用時に着用者に合った形状のカップ部4,5を装着したりすることが可能になる。当該開口70は、位置ずれ防止部40と干渉しないように、カップ部4,5の収容空間の左右端部上方に形成されていることが好ましい。
【0055】
同様に、カップ部4,5の収容空間から塵を除去する塵排除口80となる非接合部が設けられていることが好ましい。洗濯等によってカップ部4,5の収容空間に糸くずや埃等の塵が溜まっても、塵排除口80から容易に塵を取り除くことができるようになる。当該、塵排除口80は、着用時でも収容空間から塵が自然に離脱するように、カップ部4,5の収容空間の左右端部下方に形成されていることが好ましい。尚、上述したカップ部4,5を装着または離脱する開口70に塵排除口80としての機能を持たせてもよい。
【0056】
図6(a)には、身生地10と切替え生地20の双方に解れ止め加工を施した編地が用いられたタンクトップタイプのカップ付衣類1が示されている。当該カップ付衣類1は、首刳り部、腕刳り部、裾部の何れもが切りっ放し処理され、パイピング処理等の特段の解れ止め処理はなされていない。図6(a)は正面裏側から視た説明図であるが、接着パターンを強調するため、切替え生地20の端部は敢えて破線で示している。
【0057】
当該カップ付衣類1では、切替え生地20の曲線形状の上縁及び下縁に、夫々縁部に沿って曲線状に変化するジグザグの接着パターンが形成されている。また、下縁中央部には左右のジグザグパターンの振幅(本実施例5mm程度)よりも大きな振幅(本実施例30mm程度)の一つの山状のパターンが形成され、この中央部の山状パターンの接合部60で位置ずれ防止部40が形成されている。
【0058】
切替え生地20の左右端部には、直線状の細幅の接着パターンR2が形成されている。身生地10と切替え生地20の最大伸縮方向が身幅方向に設定され、着丈方向の伸縮率は小さいため、特段の不都合は生じない。
【0059】
切替え生地20の左右上端部には、カップ部4,5の収容空間にカップ部4,5を装着または離脱する開口70となる非接合部が設けられている。また、切替え生地20の左右下端部には、塵排除口80となる非接合部が設けられている。当該開口70の直近に形成される接着パターンのうち、直線状の接着パターンR2の端部には三角形状の切返し部90が設けられている。
【0060】
洗濯時に開口70を介してカップ部4,5を出し入れするような操作が繰り返されると、開口70の近傍の接着部で身生地10から切替え生地20が次第に剥がれる虞があるが、開口70の直近の接着パターンR2の端部に切返し部90が形成されていると、十分に接着強度が確保されるようになる。
【0061】
切返し部90の形状は特に限定されることはなく、図6(b)のように三角形であってもよいし、図6(c)のように半円形であってもよい。また、その大きさも適宜設定可能である。尚、塵排除口80となる非接合部の端部にも切返し部90が設けられていてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、接着剤として、主に熱可塑性樹脂で構成され、加熱溶融された接着剤を用いた例を説明したが、樹脂を溶剤に溶かした接着剤を用いる場合には、常温環境下で上述の接着パターンを接着対象生地の一方にスクリーン印刷して他方の接着対象生地とを接着することも可能である。
【0063】
また、複数の樹脂を溶剤に溶かして1つの接着剤として形成することも可能であり、例えば、溶剤に溶かした樹脂を生地上にベース層として形成し、溶剤に溶かした異なる樹脂をその上から印刷又は塗布することで、1つの接着剤として機能させることも可能である。これらの接着剤形成方法については特に限定されるものでなく、複数の樹脂を溶剤に溶かして1つの接着剤として用いることで、それらの反応により固化速度を制御できるメリットがある。
【0064】
以上、タンクトップを例に本発明によるカップ付衣類を説明したが、本発明によるカップ付衣類は、タンクトップに限定されるものではなく、図3(b)に示すようなキャミソール、さらにはチュニック、袖付衣類等の他の形態の衣類にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によるカップ付衣類は、バストのシルエットを整える機能を備えながらも、胸部を締め付けることなく楽に着用でき、しかも美観を損なうことがない女性用衣類として、特に春から秋にかけての部屋着として活用される。
【符号の説明】
【0066】
1:カップ付衣類
2:前身頃
3:後身頃
10:身生地
20:切替え生地
30:接着剤
40:位置ずれ防止部
50:絞り部
60:接合部
70:開口
80:塵排除口
図1
図2
図3
図4
図5
図6