(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続部が、前記ケースの第1の側壁と第2の側壁とを接続する第3の側壁の外側から前記フィンに向かって傾斜した傾斜面を、さらに有する請求項1記載の半導体装置。
前記排出口の開口の高さが、前記排出路の高さよりも高く、該排出口と該排出路との接続部に、排出路の長手方向に底面から傾斜した傾斜面を有する請求項1記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体装置の実施形態を、図面を用いて具体的に説明する。以下の説明に表れる「上」、「下」、「底」、「前」、「後」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
図1は本発明の半導体装置の一実施形態である、半導体モジュールの一例の外観を示す斜視図である。
図2(a)は、
図1の半導体モジュールをII−II線矢視断面で示す模式図であり、
図2(b)は、
図2(a)の拡大部分模式図である。
【0015】
半導体モジュール1は、
図1及び
図2(a)、(b)に示すように複数の回路素子部11A〜11F、12A〜12Fと、これらの回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接続された冷却器20とを備えている。
各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fは、いずれも絶縁回路基板13上に2種類の半導体素子14、15を2個ずつ、計4個搭載した構成を有する。絶縁回路基板13は、
図2(b)で分かるように、絶縁基板13aの両面に導体パターン層13b、13cが形成された構成である。
【0016】
絶縁回路基板13の絶縁基板13aは、例えば窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の絶縁性のセラミック基板を用いることができる。導体パターン層13b、13cは、銅やアルミニウム等の金属(例えば、銅箔)を用いて形成することができる。
【0017】
半導体素子14、15は、はんだ等の接合層16を用いて絶縁回路基板13の導体パターン層13b側に接合され、この接合層16を通して、又はボンディングワイヤ(図示せず)を介して、その導体パターン層13bに電気的に接続される。半導体素子14、15を搭載した絶縁回路基板13は、もう一方の導体パターン層13c側で、接合層17を介して冷却器20の放熱基板21上に接合される。
【0018】
こうして、絶縁回路基板13及び半導体素子14、15は、冷却器20に対し熱伝導可能に接続された状態になる。なお、導体パターン層13b、13cにおける露出された表面や、半導体素子14、15と導体パターン層13bとを電気的に接続するボンディングワイヤ(図示せず)の表面には、それらの表面を汚れ、腐食、外力等から保護するためにニッケルめっき等の保護層を形成するようにしてもよい。
【0019】
このような絶縁回路基板13上に搭載される半導体素子14、15として、図示した例では、パワー半導体素子を用いている。これらのパワー半導体素子のうち、一方の半導体素子14をフリーホイールダイオード(FreeWheeling Diode;FWD)とし、他方の半導体素子15を絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(InsulatedGate Bipolar Transistor:IGBT)としている。
【0020】
半導体モジュール1は、
図3に示すような、6個の回路素子部11A〜11Fによってインバータ回路31を構成することが可能であり、また、6個の回路素子部12A〜12Fによってインバータ回路32を構成することが可能である。
【0021】
図3のインバータ回路31、32は、直流電流を交流電流に変換して三相交流モータ33、34に供給するインバータ回路を例示している。インバータ回路31は、回路素子部11A〜11Cを上アーム、11D〜11Fを下アームとし、ワイヤーボンディングやバスバー等による配線(図示せず)を接続することで入出力や制御を行う構成である。また、インバータ回路32は、12A〜12Cを上アーム、12D〜12Fを下アームとし、ワイヤーボンディングやバスバー等による配線(図示せず)を接続することで入出力や制御を行う構成である。これらのインバータ回路31、32は、U相、V相、W相の三相についてそれぞれ、IGBTである半導体素子15と、FWDである半導体素子14とのブリッジ回路を備える。半導体素子15のスイッチング制御を行うことで、直流電流を交流電流に変換し、三相交流モータ33、34を駆動することができるようになっている。
【0022】
図3に示した電力変換回路は、6個の回路素子部11A〜11F又は6個の回路素子部12A〜12Fにより、インバータ回路31又は32を構成している。しかし、
図1に12個の回路素子部11A〜11F及び12A〜12Fを示すように、冷却器20に搭載される回路素子部の個数は6個に限定されない。
図1では、2つのモータ33及び34を制御するためのインバータ回路であって、インバータ回路31は、11A〜11Cを上アームとして、11D〜11Fを下アームとして冷却器20上に搭載し、インバータ回路32は、12A〜12Cを上アーム、12D〜12Fを下アームとして、それぞれ冷却器20上に搭載し計12個の回路素子部を有する構成としている。別の構成として、昇降圧制御を行う所定数のIGBTとFWDを用いた回路素子部を冷却器上に搭載した構成などがある。いずれの構成においても、回路素子部の配置エリアに適合する大きさになる冷却器20を用いる。
【0023】
冷却器20は、上方に開口が設けられた、箱形状を有するケース22と、このケース22の側壁の上端と液漏れなく接続する平板形状を有する放熱基板21と、この放熱基板21における各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接合された面とは反対側の面に取り付けられ、ヒートシンクとしての熱交換性能を持つフィン23と、を有する。複数のフィン23はケース22の内部に収容され、ケース22と放熱基板21とは、互いに金属的に接合されることにより、又は、それらの間にシール部材を介在させることにより密閉される。ケース22と放熱基板21との金属的な接合作業を容易にするため、ケース22および放熱基板21のそれぞれの接合部は平坦であることが望ましい。
【0024】
図3を用いて先に述べた電力変換回路の動作時に、各回路素子部11A〜11F、12A〜12Fで発生した熱は、接合層17を通じて放熱基板21へと伝わり、更にフィン23へと伝わる。冷却器20内のフィン23は、後述する冷却用流路内に配置されるから、この冷却用流路に冷却液が流通されることで、フィン23が冷却される。発熱する回路素子部11A〜11F、12A〜12Fは、このようにして冷却器20により冷却される。
図4は、冷却器20のケース22の要部構成を示す斜視図であって、矢印は冷却液の流れる方向を示す。なお、同図には説明の便宜上、放熱基板21に取り付けられているフィン23が描かれている。
図5は、
図4に示した冷却器20の内部構造を示す平面図である。
【0025】
図4、
図5に示すように、冷却器20のケース22の外形は、底壁22a及び側壁22bを有する略直方体形状である。ケース22の内部には、冷却液をフィン23に向けて導入するための導入路24、フィン23を通した冷却液を排出するための排出路25及びフィン23を配置する冷却用流路26が形成されている。更に、ケース22の側壁22bのうちの短辺側の一つの側壁22b1(第1の側壁)には、ケース22の内部に冷却液を導入するための導入口27が設けられ、ケース22の短辺側の他の側壁22b2(第2の側壁)には、ケース22の内部から外部に冷却液を排出するための排出口28がそれぞれ設けられている。導入口27と排出口28とは、ケース22の対角の位置に設けられている。導入口27および排出口28の軸線は、冷却用流路26の長手方向、すなわち、冷却用流路26において冷却液が流通する方向(
図4の矢印で示す方向)と略平行である。
【0026】
導入路24は、導入口27が設けられたケース22の短辺側の一つの側壁22b1の内面に沿って形成される。また、導入路24は、導入口27とは、冷却液を導入するための配管が接続される接続部271を介して接続され、冷却用流路26に冷却液を分散し流れるように形成されている。接続部271は、導入路24の長手方向と導入口27の軸線が交差する角に位置している。
【0027】
排出路25は、排出口28が設けられたケース22の短辺側の側壁22b2の内面に沿って形成される。また、排出路25は、排出口28とは、冷却液を排出するための配管が接続される接続部281を介して接続され、冷却用流路26を経た冷却液を排出口28から排出するように形成されている。
【0028】
冷却用流路26は、導入路24と排出路25との間で、フィン23が収容される位置に形成され、これにより、ヒートシンクとしてのフィン23の冷却に必要な部分に冷却液を流すよう構成される。導入路24及び排出路25が、ケース22の短辺側の側壁22b1、22b2に沿って形成されていることから、冷却用流路26は、冷却液の流通方向の長さが、導入路24及び排出路25における冷却液の流通方向の長さよりも長い。このことにより、冷却器20の小型化に有利である。
【0029】
また、冷却用流路26は、回路素子部の位置に合わせて、複数の流路に分割することも可能である。例えば、
図4に示した本実施形態では、導入路24と排出路25とに接続する仕切り22cによって、冷却用流路26が二分割されている。導入路24および排出路25の長手方向は冷却用流路26の長手方向とほぼ直交している。
【0030】
放熱基板21において、半導体素子14、15が搭載された回路素子部11A〜11F、12A〜12Fが接合されている位置が発熱する。そこで、冷却用流路26を二分割して、その分割した流路を、インバータ回路の上アームの回路素子部11A〜11C、12A〜12Cと、下アームの回路素子部11D〜11F、12D〜12Fとのそれぞれに対応させている。換言すれば、それらの回路素子部の直下に各々平行して流れる2つの冷却用流路を形成している。このことにより冷却効率を向上することが可能である。
【0031】
冷却用流路26には、複数のフィン23が設けられる。複数のフィンからなるヒートシンクは、その外形が略直方体であり、冷却用流路26内を冷却液が流れる方向に平行に配設されている。
【0032】
図6は、フィンの形状の説明図である。冷却器2のフィン23は、例えば
図6(a)に示すように、板状のフィンが並設された複数のブレードフィン23aとして形成することができる。ブレードフィン23aは、冷却用流路26に配置され、冷却液が
図6(a)に矢印で示す方向に流通する。ブレードフィン23aは、放熱基板21に固定されて一体化している。冷却器2のフィン23は、
図6(a)のブレードフィン23aに限定されず、
図6(b)に示すコルゲートフィン23bを用いることもできる。
【0033】
ブレードフィン23aは、放熱基板21と一体化してケース22内に設けられたときに、その先端とケース22の底壁22aとの間に一定のクリアランスCが存在するような寸法(高さ)に形成される。またコルゲートフィン23bの場合は、ロウ付けによりケース22と一体化することでクリアランスCが存在しない形状に形成される。
【0034】
フィン23のフィン形状については、従来公知の様々な形状のものを用いることが可能である。もっとも、フィン23は、冷却用流路26内を流れる冷却液の抵抗となるので、冷却液に対する圧力損失が小さいものが望ましく、よって上述したブレードフィン23aやコルゲートフィン23bが好ましい。また、フィン23の形状及び寸法は、冷却液の冷却器20への導入条件(すなわち、ポンプ性能等)、冷却液の種類(粘性等)、目的とする除熱量等を考慮して、適宜設定することが好ましい。また、フィン23からなるヒートシンクの外形は略直方体であり、好ましくは直方体であり、発明の効果を損ねない範囲で面取りや変形された形状であってもよい。
【0035】
冷却器20の使用時には、例えば導入口27に、導入口27の上流側に設けられるポンプ(図示せず)と接続される配管が接続され、排出口28に、排出口28の下流側に設けられる熱交換器(図示せず)に接続される配管が接続され、熱交換器で熱交換された後の冷却液がポンプに導かれることで、これら冷却器20、ポンプ及び熱交換器を含む閉ループの冷却液流路が構成される。冷却液は、このような閉ループ内をポンプによって強制循環される。
【0036】
ケース22の側壁22b1、22b2に設けられた導入口27、排出口28の開口の高さ(直径)は、所定の流量の冷却液を低負荷でケース22内に導入し、またケース22内から排出できるように、所定の大きさを有している。また、ケース22内の導入路24、排出路25及び冷却用通路26は、所定の冷却能を有する範囲内で、できるだけ小型化、薄肉化される。このため、
図1に示すように冷却器20は、導入口27の開口の高さが、導入路24の高さよりも高くなっている。
【0037】
図7に、
図5におけるポンプ側の図示しない配管とケース22本体とを接続する導入口27の接続部271の模式的なVII−VII線矢視断面図を示す。
図8は、
図5のケースの内部構造をVIII−VIII線矢視断面で示す模式図である。
図7、8では、フィン23とともに放熱基板21も示している。導入口2の開口の高さがh1であり、導入路24の高さがh2である。接続部271は、導入口27から見て奥行き方向(冷却用流路26の長手方向)に底面から傾斜して導入路24の底面に接続する第1の傾斜面271aを有している。
図7の例では、h1>h2であり、導入口2の底面が、導入路24および冷却用流路26の底面よりフィン23の先端から冷却器20の厚み方向に離れて形成されている。第1の傾斜面271aは、ケース22の底壁22aの外側から、冷却器20の上方、フィン23へ向かって傾斜している。また、接続部271は、導入路24の長手方向に底面から傾斜して導入路24の底面に接続する第2の傾斜面271bを有している。第2の傾斜面271bも冷却器20の上側へ向かって傾斜している。冷却器20の上面と第2の傾斜面271bのなす角は90度より小さい。
接続部271が、第1の傾斜面271aを有することにより、導入口27から導入された冷却液は、第1の傾斜面271aに沿って流れ、この流動方向の流路断面積が次第に減少されつつ導入路24及び冷却用通路26に導かれる。したがって、接続部271が、第1の傾斜面271aのみを有する場合には、この接続部271における圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0038】
そこで、接続部271は、第2の傾斜面271bを有している。この第2の傾斜面271bを有することにより、導入口27から導入された冷却液は、導入路24の長手方向には、第2の傾斜面271bに沿って流れ、この流動方向の流路断面積が次第に拡大されつつ導入路24に導かれる。したがって、接続部271が、第1の傾斜面271aのみならず第2の傾斜面271bを有していることにより、第1の傾斜面271aのみを有する場合に比べて接続部271の流路を部分的に広げることができ、よって接続部271における圧力損失を効果的に低減させることができる。これにより、冷却器20の放熱基板21に接合された回路素子部11A〜11F、12A〜12Fの半導体素子14、15を効果的に冷却でき、冷却液を循環するポンプへの負荷を低減し、また半導体素子の安定した動作が可能になる。
【0039】
さらに、接続部271は、第3の傾斜面271cを有している。導入路24の長手方向において、導入口27の2つの側面のうち一方の側面は、ケース22の側壁22bのうちの長辺側の一つの側壁22b3(すなわち、第1の側壁22b1と第2の側壁22b2とを接続する第3の側壁)の内面よりフィン23から離れて形成されている。第3の傾斜面271cは、ケース22の長辺側の側壁22b3の外側からフィン23に向かって傾斜している。第3の傾斜面271cは、第2の傾斜面271bに対向する位置に形成されている。第2の傾斜面271bに加え、第3の傾斜面271cを備えることにより、導入口27から導入された冷却液は、導入路24の長手方向に誘導され、第2の傾斜面271bに沿って流れる。したがって、多数のパワー半導体素子をほぼ等しく冷却できる。
【0040】
また、接続部271は、第3の傾斜面271cに接続して当該第3の傾斜面271cの下方に、ケース22の底壁22aの外側からフィン23に向かって傾斜した傾斜面を有している。この傾斜面を第3の傾斜面271cに加えて備えることにより、導入口27から導入された冷却液は、導入路24の長手方向に誘導され、第2の傾斜面271bに沿って流れる。したがって、多数のパワー半導体素子をほぼ等しく冷却できる。
【0041】
図7では、導入口27の接続部271について図示しているが、排出口28の接続部281においても同様に、第1の傾斜面281a及び281bを有する構成とすることができる(
図5参照)。排出口28の接続部281が第1の傾斜面281a及び第2の傾斜面281bを有することにより、接続部281における圧力損失を効果的に低減させることができる。
【0042】
導入口27及び排出口28は、ケース22の対角の位置に設けられ、これにより、導入口27に接続された配管から導入される冷却液が、直線的にフィン23に当たることを防止して、冷却用流路26における流量を均一化することができる。
図4、
図5に示したケースは、平面図で見て導入口27に接続された配管の軸線方向がケース22の長辺側の側壁22b3に向かうように、導入口27がケース22の短辺側の側壁22b1において、より幅端側に延びた位置に設けられている。このような位置に導入口27が設けられた場合は、導入口27の接続部271において、圧力損失の増大の懸念が大きい。この点、本実施形態では、接続部271が、上述したように第2の傾斜面271bを有することから、効果的に圧力損失を低減することができる。
【0043】
また、導入路24は、導入路24の下流側で導入路24の断面積が低減するように、導入路24の下流側に行くに従って流路幅が漸減する形状に形成されている。これにより、導入路24の下流側と接続する冷却用通路26と、導入路24の上流側と接続する冷却用通路26とで、冷却液の流速分布を均一化することができる。
【0044】
このような構成を有するケース22は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料を用いて形成することができる。例えば、A1050やA6063等の材料が好ましく、周辺部材、特に固定部やパワーモジュールを収めるインバータケースとのシールが必要な場合はADC12やA6061等の材料が好ましい。またケース22をダイカストで製造し、かつ、熱伝導性が求められる場合は、三菱樹脂株式会社のダイカスト用高熱伝導アルミニウム合金であるDMSシリーズの材料を適用することも可能である。このような金属材料を用いてケース22を形成する場合、例えばダイキャストによって、上記のような導入路24、排出路25、冷却用流路26、導入口27及び接続部271、排出口28及び接続部281を形成することができる。接続部271及び接続部281は複雑形状になるが、ダイキャストによれば、このような複雑形状のケース22を容易に作製することができる。ケース22は、この他、カーボンフィラーを含有する金属材料を用いることもできる。また、冷却液の種類やケース22内に流れる冷却液の温度等によっては、セラミック材料や樹脂材料等を用いることも可能である。
【0045】
フィン23及び放熱基板21は、ケース22と同様に、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属材料を用いて形成することができる。例えばA1050、A6063等が望ましい。より好ましくは、熱伝導率が200W/mK以上のアルミニウムを用いることができる。フィン23と放熱基板21とは、同種の金属材料であってもよいし、異種の金属材料であってもよい。フィン23は、上述したブレードフィン23aやコルゲートフィン23b等以外にも例えば金属材料を用いて形成された所定のピンや板体を金属製の基材26に接合することによって形成することができる。また、フィン23は、ダイキャストやロウ付けするなどにより、放熱基板21自体と一体的に形成することができる。更に、フィン23は、ダイキャストによって放熱基板21からフィン23が形成される部分を凸形状に形成した後、その部分をワイヤーカット法によりフィン形状に切削することにより形成することも可能である。
【0046】
ケース22の側壁22bの上端と放熱基板21の端部とは、Oリング等を介在させて封止することも可能であるが、側壁22bに沿って金属的に接合されていることが、液漏れを確実に防止できることから好ましい。この金属的な接合は、摩擦攪拌接合法(Friction Stir Welding)であることが、より好ましい。摩擦攪拌接合法による接合部は、摩擦攪拌接合法に特有の金属組織を有している。摩擦攪拌接合法であることにより、ケース22の側壁22bの上端と放熱基板21の端部との接合を、確実にすることができる。また摩擦攪拌接合法は、ケース22の底面を支持しながら、ケース22と放熱基板21との接合界面に向けて摩擦攪拌接合法のツールを上方から当てて接合できるので、より確実な接合が可能となる。更に、摩擦攪拌接合法により接合することにより、放熱基板21の材料として、例えばA6063およびDMSシリーズの合金、大紀アルミニウム工業所のダイカスト用高熱伝導アルミニウム合金であるHT−1等の熱伝導率の高い材料を用い、放熱性を向上することができる。つまり、放熱基板21の材料を、ケース22の材料とは異なる組成の材料として、ケース22よりも熱伝導率の高い材料とすることにより、放熱性を向上させることができる。
【0047】
ケース22が、仕切り22cを有する場合には、この仕切り22cについても放熱基板21と摩擦攪拌接合法により接合することが、放熱基板21の熱変形によるフィン23とケース22の底壁22aとのクリアランスCの拡大を防止できるので好ましい。
【0048】
ケース22と放熱基板21とを摩擦攪拌接合法により接合する場合には、ケース22の側壁22bの上端および放熱基板21の端部が少なくとも平坦であり、好ましくは放熱基板21が平板形状であることが、接合作業を容易にすることから好ましい。また、放熱基板21は、所定の厚さを有することにより、熱変形に対する信頼性と、良好な放熱性を具備することができる。放熱基板21の厚さは、例えばフィンが接合される領域において、1〜3mmが望ましい。さらに、導入口27の上面が放熱基板21の底面より下側になるよう導入口27を配置することにより、導入口27と接続部271で生じる乱流を小さくできるので、接合作業を容易にし、かつ冷却効率を向上できる。
このように、導入口27の軸線が、フィン23の頂部から見てケースの外側へ偏しており、少なくとも第2の傾斜面271bを有する接続部271を有する冷却器20により、冷却効率を向上できる。
【0049】
(実施例及び比較例1)
図9は、比較例1の半導体モジュールとして、冷却器の要部構成を示した平面図である。
図9の冷却器120は、2つの冷却用流路126を直列に繋いだ構成であり、
図5に示した、実施例の冷却器20と対比される。実施例及び比較例1は、いずれも半導体モジュールの回路素子部が、各回路を構成する上アーム側と下アーム側との2つの列に分け、それぞれの列の回路素子部直下に冷却用流路が設けられている点で共通している。
【0050】
図10に、比較例1と実施例とについて、冷却液の導入口と排出口との間での圧力差を調べた結果をグラフで示す。
図10から分かるように、複数の冷却用流路を直列で繋いだ比較例と、二分割された冷却用流路26を並列に繋いだ実施例とでは、流路内で発生する圧力差が大きく異なり、熱流体シミュレーションによる比較結果によれば、10L/minの冷却液を流した場合、比較例1では23.5kPa、実施例は9kPaである。
図10の結果は、冷却液が2つの冷却用流路を同時に流れるときの流路断面積の差が表れており、圧力差の小さい実施例は、冷却液を循環するためのポンプへの負荷を小さくすることが可能となる。また、複数の回路素子部が冷却器に設けられ、これらの回路素子部の配列方向に沿って冷却液を流し冷却する場合、半導体素子からの熱を冷却液が受けるため、冷却液自体の温度が上昇する。よって、半導体素子の数に依存した冷却液の温度上昇が起こる。そのときの冷却性能は、冷却液の温度と流路構成とに依存する。冷却性能のなかで、半導体素子の最大温度は、冷却用流路を流れる冷却液の流速と、冷却液自体の温度によって決定される。比較例1と実施例とは、半導体素子の発熱量を鑑みたとき、最大温度が同等であり、ポンプ負荷を低減できる実施例が、冷却特性として良好であることがわかる。
【0051】
冷却液の導入口27と排出口28との間での圧力差は、冷却用流路26内に配置されるフィン23の形状だけでなく、導入路24、排出路25、冷却用流路26の断面積にも依存する。例えば導入路24の流路断面積(流路幅)を、小型化や冷却用流路26を流れる冷却液の流速分布の調整を目的として、冷却液が流れる方向に沿って下流側で減少させた場合、冷却液の導入口27と排出口28との間での圧力差は大きくなり、ポンプへの負荷は増大してしまう。この点、実施例は、上述したように導入口27の接続部271が第2の傾斜面271bを有していることから、接続部271での圧力損失を低減させ、よってポンプへの負荷を減少させることができる。
【0052】
また、
図1、
図2に示した半導体モジュール1の構成は、放熱基板21とケース22とが摩擦攪拌接合法により接合されて一体化された構造を示しているが、ケース22とフィン23を有する放熱基板21とが別体から構成され、両者を、Oリングを介して封止したモジュール構造の場合であっても、実施例の流路のように冷却用流路26を2つ平行に並べる構成にすることで、ポンプ負荷を低減することが可能である。
これらは、いずれも冷却液自体の性質(冷却液特性)と冷却性能をシミュレーションすることによって検証された結果に基づいている。
【0053】
(実施例及び比較例2)
上述した実施例は、冷却器の小型化の両立を目的として、冷却器20の導入口27と排出口28の冷却液が流れるときの圧力差を低減するため、導入口27の接続部271及び排出口28の接続部281について、傾斜面271b、281bを有している。この傾斜面271b、281bの有無による形状比較について説明する。
【0054】
図11は比較例2の半導体モジュールとして、冷却器220の導入口57の接続部の断面図を示している。
図11の接続部571は、当該接続部571に傾斜面571aが導入路224とは重ならない位置に設けられた構成であり、
図7に示した、実施例の接続部271と対比される。
【0055】
図7の実施例の接続部271及び
図11の比較例2の接続部571は、共に導入口27、57の高さと冷却用流路26、226の高さとが異なり、形状の制約から繋ぎ部には第1の傾斜面271a、傾斜面571aが設けられている。実施例は、第1の傾斜面271aのみならず第2の傾斜面271bが設けられている。これに対し、比較例2は、傾斜面571aが導入路224とは重ならない位置に設けられ、かつ、導入路224の長手方向に底面から傾斜した傾斜面を有しない。
【0056】
実施例及び比較例2では、導入口27、57の接続部流路高さを20mm、フィン23高さを8mmとし、接続部271、571の底から冷却用流路26までの差12mmは、ケースの形状に15°〜75°の範囲の所定の傾斜を設けて繋がれる。導入路24、224の接続部幅により傾斜は決められるが、実施例では40°、比較例2では45°の構造を例にあげ、流路で発生する圧力損失を導入口27、57と排出口28、58間の圧力差で比較した。
【0057】
図12に、実施例と比較例2とについて、冷却液の導入口と排出口との間での圧力差をシミュレーションで調べた結果をグラフで示す。
図12から分かるように、各々冷却液を10L/minの流量で導入した場合、実施例で導入口27と排出口28間の圧力差はおおよそ9kPa、比較例2で導入口57と排出口58間の圧力差は14kPaであり、約35%の低減が見込める。なお、
図1に示す回路素子部を冷却器上に配置し、発熱の状況をシミュレーションにて確認したが、冷却性能は同等であった。
以上の結果から、実施例によれば、小型化を図り、かつポンプ負荷の低い低圧力損失の両立が可能である。