特許第6227994号(P6227994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000002
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000003
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000004
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000005
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000006
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000007
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000008
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000009
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000010
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000011
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000012
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000013
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000014
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000015
  • 特許6227994-反射型液晶表示装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6227994
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】反射型液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20171030BHJP
【FI】
   G02F1/1335 510
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-256986(P2013-256986)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-114529(P2015-114529A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100184479
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】大類 知生
(72)【発明者】
【氏名】所司 悟
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−202415(JP,A)
【文献】 特開2012−141593(JP,A)
【文献】 特開平11−344702(JP,A)
【文献】 特開平10−260403(JP,A)
【文献】 特開2000−180835(JP,A)
【文献】 特開2000−047194(JP,A)
【文献】 中国特許第101681044(CN,B)
【文献】 中国特許出願公開第102565894(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335,1/13363
G02B 5/00−5/136
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収型偏光素子と、液晶素子と、光拡散素子と、反射型偏光素子と、内部光源と、を順次含んでなる反射型液晶表示装置であって、
前記光拡散素子が、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムであり、
位相差板として、可変1/4λ板、あるいは可変1/2λ板をさらに設けることを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】
前記光拡散フィルムにおいて、前記屈折率が相対的に低い領域中に、前記屈折率が相対的に高い領域として、複数の柱状物をフィルムの膜厚方向に林立させてなるカラム構造を有することを特徴とする請求項1に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記光拡散フィルムにおける一方の表面から、光拡散フィルムの反対面に向かって、柱状物の直径が増加または柱状物の形状が変化していることを特徴とする請求項2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記光拡散素子用組成物が、(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(C)成分としての光重合開始剤と、を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項5】
前記吸収型偏光素子を第1の吸収型偏光素子としたときに、前記反射型偏光素子と、前記内部光源と、の間に、第2の吸収型偏光素子として、前記反射型偏光素子と同一の透過軸を有する吸収型偏光素子を設けることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項6】
前記内部光源における反射型偏光素子と対向する側と反対側に、前記反射型偏光素子と異なる透過軸を有する第3の吸収型偏光素子を設けることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項7】
前記内部光源が、端部にLEDを備えた導光板または有機ルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の反射型液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型液晶表示装置に関し、特に、所定の光拡散素子を用いてなる、夜間等における内部光源による透過表示時はもちろんのこと、昼間等における外光による反射表示時であっても、明るい画像表示が可能であって、かつ、コントラストが高い画像表示が得られる反射型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光拡散特性を有する面や鏡面反射面に対して文字や画像を印刷したり、あるいは、これらの面に対して文字や画像を印刷した透明もしくは半透明のフィルムを貼合したりしてなる外光利用型の表示体(以下、外光利用型表示体と称する。)が、看板や標識として用いられている。
かかる外光利用型表示体は、太陽直射光や拡散天空光、あるいは、建造物、路面、樹木等からの二次的散乱光といった外光を光源として利用し、所望の表示光を散乱させて反射することを特徴としている。
【0003】
また、このような外光利用型表示体としては、所望の図柄等が印刷された装飾層の前面に、樹脂中に微粒子を分散させてなる光拡散フィルムを積層してなる看板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図14(a)〜(b)に示すように、少なくともどちらか一方の表面に凹凸が形成された、全光線透過率が90%以上で、ヘイズ値が20%以下である、透明基板302と、それに積層された光拡散層303と、からなる看板用前面板301を含んで構成された外光利用型表示体(看板)300である。
そして、光拡散層303の表面における凹凸面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜0.7μmの範囲内の値、かつ、10点平均粗さ(Rz)が1〜7μmの範囲内の値に、それぞれ制限されており、看板用前面板301の背面側には、表示体320が配置されており、さらにそれらの周囲が、保護枠321でカバーされてなる外光利用型表示体(看板)300である。
【0004】
一方、外光利用型表示体として、外光および内部光源から出射された光の両方を利用する反射型液晶表示装置(半透過反射型液晶表示装置と称する場合もある。)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図15に示すように、上方から下方に向かって、上側偏光板(吸収型偏光板)401と、上側ガラス基板402と、液晶素子410と、下側ガラス基板404と、反射型偏光板406と、半透過型光吸収層(光拡散層)407と、内部光源408と、を順次積層してなる反射型液晶表示装置400であって、透過偏光軸の変化特性を光源の点灯および非点灯に応じて切り換える駆動特性切換手段(図示せず)と、を備えることを特徴としている。
なお、図15中、ラインAおよびA´が、外光を利用した反射表示時における視認状態を表しており、ラインBおよびB´が、内部光源を利用した透過表示時における視認状態を表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−109414号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許3627246号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の看板用前面板を用いてなる看板の場合、想定される外光の入射角度に対して、看板の観察角度を調節する旨を考慮していないことから、想定される外光の入射角度によっては、十分な視認性を得るために、看板自体の設置角度を調節しなければならないという問題が見られた。
また、かかる看板の場合、表示光の出射角は、外光の入射角に単純に依存するのみであることから、外光の入射角度が変化した場合に、一定の表示特性を安定的に保持することが困難になるという問題が見られた。
さらにまた、かかる看板における光拡散層の光拡散特性は、ガウス分布型の光拡散特性であるため、視野角内における表示光の輝度の均一性が低くなり、特に表示体が大面積である場合には、表示光の輝度ムラが著しくなるという問題が見られた。
【0007】
一方、特許文献2に記載の反射型液晶表示装置は、光の利用効率が低く、特に、外光を利用した反射表示時には、表示画面が暗くなり、かつ、コントラストが低下しやすいという問題が見られた。
また、かかる反射型液晶表示装置の場合、「ポジネガ反転」という現象が生じ、着色層を介して、カラー表示した場合に、特にネガ表示の際の表示色が、現実の色とかけ離れてしまうという新たな問題が見られた。
そのため、内部光源の点灯及び非点灯に応じて、画像データに対する透過偏光軸の変化特性を切り替える駆動特性切換手段が、別途必要になるという問題が見られた。
【0008】
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、反射型偏光素子/光拡散素子を順次用いてなる反射型液晶表示装置において、光拡散素子として、偏光特性を基本的に変化させない、内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムを用いることによって、透過表示時はもちろんのこと、反射表示時であっても、それぞれ明るい画像表示が可能であって、かつ、コントラストが高い画像表示が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、簡易な構成であっても、内部光源から出射された光のみならず、外光の偏光性を阻害することなく、それぞれ有効利用することが可能な反射型液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、吸収型偏光素子と、液晶素子と、光拡散素子と、反射型偏光素子と、内部光源と、を順次含んでなる反射型液晶表示装置であって、光拡散素子が、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムであり、位相差板として、可変1/4λ板、あるいは可変1/2λ板をさらに設けることを特徴とする反射型液晶表示装置が提供され、上述した問題点を解決することができる。
【0010】
すなわち、本発明の反射型液晶表示装置であれば、簡易な構成であっても、所定の光拡散素子を用いることによって、透過型表示時はもちろんのこと、反射型表示時であっても、明るい画像表示が可能であって、かつ、コントラストが高い画像表示を得ることができる。
また、所定の光拡散素子/反射型偏光素子の組み合わせ等により、外光の入射角度が変化した場合であっても、一定の表示特性を安定的に保持することができ、かつ、視野角内における表示光の輝度が均一化された反射型液晶表示装置とすることができる。
なお、内部光源側から反射型偏光素子/光拡散素子の積層順を、光拡散素子/反射型偏光素子の順に入れ替えると、特に、反射表示において、外光が拡散せずに反射し、結果として、表示特性が低下することが、別途判明している。
【0011】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、光拡散フィルムにおいて、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い領域として、複数の柱状物をフィルムの膜厚方向に林立させてなるカラム構造を備えることが好ましい。
このようにカラム構造を備えた構成にすることによって、周囲から入射した外光を効率良く視認者方向に拡散させ、かつ、所定の範囲内で外光入射光が変化しても同様な光学特性が得られることから、外光等の利用効率が高い反射型液晶表示装置とすることができる。
すなわち、内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムとして、上述したカラム構造や、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に沿って交互に配列してなるルーバー構造等が挙げられるが、いずれの方向から光を入射させた場合であっても、所定の拡散光が安定的に得られることから、上述したカラム構造を備えることが、より好ましいと言える。
【0012】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、光拡散フィルムにおける一方の表面から、反対面に向かって、柱状物の直径が増加または柱状物の形状が変化していることが好ましい。
このように柱状物を、いわゆる変形柱状物として構成することにより、光拡散素子としての光拡散フィルムに入射して、透過する光の屈折方向をより安定的に制御することができ、外光等の利用効率がさらに高い反射型液晶表示装置とすることができる。
また、このような光拡散フィルムであれば、表裏を入れ替えても、同等の光拡散効果が得られるため、上述した光拡散フィルムの一方の表面を、液晶素子側に対向するように配置して使用することもできるし、あるいは、上述した光拡散フィルムの一方の表面を、光拡散素子側に対向するように配置して使用することができる。
【0013】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、光拡散素子用組成物が、(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(C)成分としての光重合開始剤と、を含むことが好ましい。
このように構成することによって、所定の内部屈折率分布構造を備え、偏光特性への影響がさらに少ない光拡散フィルムを迅速かつ安定的に形成することができる。
すなわち、(A)成分と、(B)成分とを効率的に相分離させながら光硬化させて、光拡散フィルムを形成できることから、表面平滑性に優れるとともに、柱状物等を構成する内部屈折率分布構造の制御がより安定的になり、ひいては、外光等の利用効率が高い反射型液晶表示装置を容易に得ることができる。
【0014】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、吸収型偏光素子を透過した光(偏光)の透過軸を90°回転させるための可変1/4λ板、あるいは可変1/2λ板をさらに設けることが好ましい。
このように位相板としての可変1/4λ板、あるいは可変1/2λ板を、所定場所にさらに含んで構成することにより、いわゆる白黒反転表示が可能となって、外光による白黒表示と、内部光源による白黒表示と、を一致させることができる。
【0015】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、吸収型偏光素子を第1の吸収型偏光素子としたときに、反射型偏光素子と、内部光源と、の間に、第2の吸収型偏光素子として、反射型偏光素子と同一の透過軸を有する吸収型偏光素子を設けることが好ましい。
このように構成することによって、外光表示の際に、内部光源付近で偏光状態が乱されて、液晶素子に向かって反射する光が一部あったとしても、第2の吸収型偏光素子によって、そのような反射光を確実に遮断することができる。したがって、画像表示におけるコントラストを著しく高めることができる。
【0016】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、内部光源における反射型偏光素子と対向する側と反対側に、反射型偏光素子と異なる透過軸を有する第3の吸収型偏光素子を設けることが好ましい。
このように構成することによって、内部光源の下方に向かって、外部に出ていくような光があった場合であっても、それを効率的に吸収し、外光による白表示が、黒っぽくなる現象を有効に防止することができる。
【0017】
また、本発明の反射型液晶表示装置によれば、内部光源が、端部にLEDを備えた導光板または有機ルミネッセンス素子であることが好ましい。
このように構成することによって、内部光源自体による偏光状態の乱れを少なくすることができ、透過型表示時はもちろんのこと、反射型表示時であっても、より明るい画像表示が可能であって、かつ、コントラストが高い画像表示を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の反射型表示装置(第1実施形態)における反射表示時の視認状態を説明するために供する図である。
図2図2は、本発明の反射型表示装置(第1実施形態)における透過表示時の視認状態を説明するために供する図である。
図3図3(a)は、本発明の反射型表示装置(第1実施形態)における反射表示時の視認状態を説明するために供する図であり、図3(b)は、同様に透過表示時の視認状態を説明するために供する図であり、図3(c)は、同様に透過表示時の白黒表示を反転させた状態の視認状態を説明するために供する図である。
図4図4は、光拡散素子における外光の入射角θ1と、光拡散素子の正面における輝度との関係を説明するために供する図である。
図5図5(a)〜(b)は、光拡散素子における光拡散特性の原理について説明するために供する図である(その1)。
図6図6(a)〜(b)は、光拡散素子における光拡散特性の原理について説明するために供する図である(その2)。
図7図7(a)〜(b)は、それぞれ光拡散素子における柱状物の変形例を説明するために供する図である。
図8図8(a)〜(b)は、それぞれ光拡散素子における製造例を説明するために供する別の図である。
図9図9(a)〜(d)は、それぞれ光拡散素子における製造例を説明するために供する別の図である。
図10図10は、本発明の反射型表示装置(第2実施形態)における反射表示時の視認状態を説明するために供する図である。
図11図11は、本発明の反射型表示装置(第2実施形態)における透過表示時の視認状態を説明するために供する図である。
図12図12は、本発明の反射型表示装置(第3実施形態)における反射表示時の視認状態を説明するために供する図である。
図13図13は、本発明の反射型表示装置(第3実施形態)における透過表示時の視認状態を説明するために供する図である。
図14図14(a)〜(b)は、従来の光拡散フィルムを用いてなる外光利用型表示体(看板)を説明するために供する図である。
図15図15は、反射型偏光板および半透過型光吸収層を用いてなる従来の反射型液晶表示装置を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、図1および図2に例示するように、吸収型偏光素子12と、液晶素子20(TFT基板14、液晶層16、対向基板18)と、光拡散素子22と、反射型偏光素子24と、内部光源26と、を順次含んでなる反射型液晶表示装置10であって、光拡散素子22が、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムであることを特徴とする反射型液晶表示装置10である。
以下、適宜図面を参照しつつ、第1実施形態の反射型液晶表示装置について、具体的に説明する。
【0020】
1.反射型液晶表示装置の基本構成及び動作
最初に、本発明の反射型液晶表示装置の基本構成を説明すると、図1および図2に示すように、上方(視認者側)から下方(内部光源側)に向かって、反射型液晶表示装置10は、吸収型偏光素子12と、液晶素子20と、光拡散素子22と、反射型偏光素子24と、内部光源26と、を順次含んでなる反射表示および透過表示の両方が可能な反射型液晶表示装置10である。
【0021】
そして、例えば、照度が100Luxを超えて、1000Lux程度である昼間の場合は、図1に示すように、上方である画像表示面側から入射した外光(A、B)を利用して、液晶素子20のスイッチング(偏光の90°回転)を利用し、白表示および黒表示を組み合わせて、所定画像を反射表示する(外光表示と称する場合もある。)ことが可能である。
すなわち、外光を利用して白表示させる場合については、液晶素子20に所定電圧を印加せず(図中、電圧Oと示してある。)、吸収型偏光素子12を介して透過する偏光につき、液晶層16による偏光軸の90°回転を行った後、反射型偏光素子24によって、一部の偏光を完全に反射させることにより、白表示画像を外部から視認することができる。
なお、外部からの入射光を100%としたとき、そのうち約50%の光量が、吸収型偏光素子12によって吸収され、その他の部材ではほとんど吸収されないと仮定すると、白表示の光(A´)の光量につき、一例であるが、50%となるため、そのように図中、表記してある。
【0022】
一方、外光を利用して黒表示させる場合については、液晶素子20の所定箇所に所定電圧を印加することにより(図中、電圧+と示してある。)、一部の入射光については、液晶層16による偏光の90°回転を行なわないものとすることができる。
したがって、光拡散素子22および反射型偏光素子24を介して、内部光源26に到達するように、外光(B)が光透過されるものの、それを外部に反射させないことにより、外部から黒表示として視認される。
なお、吸収型偏光素子12の配置方向を考慮して、偏光軸を90°変えたり、後述するように、吸収型偏光素子12の下方に、位相差板を設けたり、あるいは、電圧の配線状態を変化させることによって、上述したのと逆に、所定箇所に対して、所定電圧を印加した場合に限って、液晶層16による偏光の90°回転を行なわせることもできる(以下、同様である。)。
【0023】
その他、外部から内部光源26に到達した外光(B)は、一部、内部光源26の内部で偏光が乱れる場合がある。
そうすると、図1に示すように、偏光が乱れた光が、下方から反射型偏光素子24および光拡散素子22を介して、液晶素子20を透過し、さらに吸収型偏光素子12を透過して、灰色がかった黒表示(B´)として外部から視認される場合がある。
そのため、入射光量を100%としたときに、黒表示の光(B´)の光量を、一例であるが、図中、25%と表記してある。
いずれにしても、昼間の場合には、外光(A、B)を利用し、かつ、液晶素子20のスイッチング(液晶層による偏光の90°回転)等を組み合わせることにより、図1に示すように、部分的に、白表示および黒表示が可能となり、ひいては、これらを組み合わせて所定画像を反射表示することができる。
【0024】
一方、例えば、照度が100Lux未満のような夜間の場合には、図2に示すように、背面側に設けられた内部光源26を利用し、それから出射された光(A´´、B´´)を利用して、やはり、液晶素子20のスイッチング(液晶層による偏光の90°回転)等により、白表示および黒表示を組み合わせて、所定画像を透過表示する(内部光源表示と称する場合もある。)ことが可能である。
すなわち、内部光源26を利用して黒表示する場合には、液晶素子20に所定電圧を印加せず(図中、電圧Oと示してある。)、液晶層16による偏光の90°回転を行うことから、一部の出射光(A)については、偏光軸があわずに、吸収型偏光素子12を透過できず、途中で遮断(X表示)されることにより、外部から黒表示と視認することができる。
なお、内部光源からの出射光を100%としたとき、液晶層16による偏光の90°回転が行なわれない場合には、吸収型偏光素子12によって完全に吸収されると推定されるため、黒表示の光(A´´)の光量につき、一例であるが、0%と図中表記してある。
【0025】
また、内部光源26を利用して白表示する場合には、液晶素子20の所定箇所に所定電圧を印加し(図中、電圧+と示してある。)、内部光源26からの出射光(B´´)について、90°回転が行われないことから、液晶素子20および吸収型偏光素子12をそれぞれ透過可能となり、ひいては、外部から白表示を視認することができる。
なお、内部光源26からの出射光を100%としたとき、吸収型偏光素子12を透過する光の光量は、約50%であると推定される。そのため、白表示の光(B´´)の光量につき、一例であるが、50%となることから、そのように図中表記してある。
よって、夜間の場合であっては、内部光源26を利用するとともに、液晶素子20のスイッチング(偏光の90°回転)等を組み合わせることにより、図2に示すように、部分的に、白表示および黒表示が可能となり、ひいては、これらを組み合わせて所定画像を透過表示することができる。
【0026】
2.吸収型偏光素子
次いで、図1および図2に示す吸収型偏光素子12について説明すると、当該吸収型偏光素子12は、所望の偏光軸に沿った直線偏光成分を透過させる一方、他の異なる直線偏光成分を吸収し、すなわち、各種偏光が混じり合った外光を、所定の直線偏光のみに変換する機能を有している。
かかる吸収型偏光素子の態様については特に制限されるものではないが、例えば、ヨウ素等のハロゲン物質や二色性染料を吸着させたPVA(ポリビニルアルコール)の高分子フィルムを延伸したものを、TAC(トリアセチルセルロース)で挟み込むことにより、吸収型偏光素子として、好適に構成することができる。
【0027】
3.液晶素子
次いで、反射型液晶表示装置10の主要構成成分である液晶素子(表示パネルと称せられる場合もある。)20について説明する。
当該液晶素子20は、図1に示すように、基本的に、所定の間隙を介して、TFT(薄膜トランジスタ)が設けられた回路付きガラス基板(以下、TFT基板と称する)14と、これに対向する回路付きガラス基板(以下、対向基板)18と、これらTFT基板14と対向基板18との間に挟持された液晶層16と、を備えている。
したがって、かかる液晶素子20は、他の吸収型偏光素子12等との作用を併せて、各画素に対応した電気スイッチのオン/オフにより、液晶層16における所定電圧を印加/無印加状態とし、任意場所における光の90°偏光が可能となることから、結果として、所定画像を高速で表示することが可能である。
なお、液晶素子20の態様は、各種提案されて、公知化されているが、いずれの態様であっても適用して、反射型液晶表示装置10を構成することができる。
【0028】
4.光拡散素子
(1)内部屈折率分布構造
光拡散素子22は、基本的に、入手光を拡散光とする機能を有し、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムであることを特徴とする。
すなわち、このような内部屈折率分布構造を有する光拡散フィルムであれば、簡易な構成でありながら、所定の光拡散素子/反射型偏光素子の組み合わせ等により、外光の入射角度が変化した場合であっても、一定の表示特性を安定的に保持することができ、かつ、視野角内における表示光の輝度が均一化された反射型液晶表示装置とすることができる。
【0029】
そして、このような光拡散素子を、液晶素子と、反射型偏光素子との間に設けることによって、特に、反射表示において、反射方向を特定方向に限定できることから、結果として、外光の利用効率をさらに高めることができる。
したがって、図3(b)に示されるように、内部光源26による透過表示時はもちろんのこと、図3(a)に示されるように、外光による反射表示時であっても、明るい画像表示が可能であって、かつ、コントラストが高い画像表示を得ることができる。
【0030】
但し、図3(a)に示されるように、外光による反射表示時の場合、黒表示につき、若干白味がかっているのは、一部上述したように、外部から内部光源26に到達した外光(B)の一部が、内部光源26の内部で偏光が乱れ、その光が、下方から反射型偏光素子24および光拡散素子22を介して、液晶素子20を透過し、さらに吸収型偏光素子12を透過して、灰色がかった黒表示(B´)として外部から視認されることを表している。
【0031】
一方、内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムとして、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い領域として、複数の柱状物をフィルム面のフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造や、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に沿って交互に配列してなるルーバー構造等が挙げられるが、いずれの方向から光を入射させた場合であっても、所定の拡散光が安定的に得られることから、カラム構造を備えることが、より好ましいと言える。
【0032】
すなわち、より詳細に後述するように、カラム構造を備えた光拡散フィルムであれば、例えば、外光の入射角にもよるが、図4に示すように、光拡散素子における外光の入射角(θ1)と、光拡散素子の正面における輝度との関係が得られることが判明している。
したがって、光拡散素子22として、所定のカラム構造を備えた光拡散フィルムを用いることによって、外光の入射角の問題もあるが、幅広く外光を利用して、画像表示時であっても、優れた輝度が得られることが理解される。
それに対して、従来の粒子分散型の光拡散素子は、このような光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムと比較して、偏光特性を阻害することが知られており、図3(a)〜(c)のような明るく、コントラストに優れた画像表示ができないと言える。
【0033】
(2)拡散原理
次いで、図5図6を用いて、カラム構造またはルーバー構造を有する光拡散素子22(図5図6中、便宜上、光拡散素子22を光拡散フィルム100と称する。)の拡散原理について、カラム構造を有する光拡散素子22を例にとって説明する。
まず、図5(a)には、光拡散フィルム100の上面図(平面図)が示してあり、図5(b)には、図5(a)に示す光拡散フィルム100を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印方向に眺めた場合の光拡散フィルム100の断面図が示してある。
また、図6(a)には、光拡散フィルム100の全体図を示してあり、図6(b)には、図6(a)の光拡散フィルム100をX方向から見た場合の断面図を示してある。
【0034】
かかる図5(a)の平面図に示すように、光拡散フィルム100は、屈折率が相対的に高い柱状物112と、屈折率が相対的に低い領域(低屈折率領域)114と、からなるカラム構造113を有している。
また、図5(b)の断面図に示すように、光拡散フィルム100の垂直方向においては、屈折率が相対的に高い柱状物112と、低屈折率領域114は、それぞれ所定の幅を有して交互に配置された状態となっている。
【0035】
これにより、図6(a)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が、光拡散フィルム100によって、所定方向に拡散されると推定される。
すなわち、図5(b)に示すように、光拡散フィルム100に対する入射光の入射角が、カラム構造113の境界面113aに対し、平行から所定の角度範囲の値、つまり、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光152、154は、カラム構造内の相対的に高屈折率の柱状物112の内部を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
【0036】
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が光拡散フィルム100によって拡散され、拡散光(152´、154´)になると推定される。
一方、光拡散フィルム100に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、図5(b)に示すように、入射光156は、光拡散フィルムによって拡散されることなく、そのまま光拡散フィルム100を透過し、透過光156´になるものと推定される。
したがって、カラム構造113を備えた光拡散フィルム100は、例えば、図6(a)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
【0037】
そして、図5図6に示すカラム構造113を有する光拡散フィルム100は、通常、拡散において、「等方性」を有することになる。
ここで、本発明において「等方性」とは、図6(a)に示すように、入射光が光拡散フィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルム面に沿った方向での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって変化しない性質を有することを意味する。
より具体的には、図6(a)に示すように、入射光が光拡散フィルム100によって、「等方性」として拡散された場合、拡散された出射光は、フィルム面に沿った方向、すなわち、フィルムと平行な面内において、均一かつ円状に拡散されることになる。
なお、拡散の「等方性」に対して、拡散された出射光が、不均一かつ非円状(楕円状、線状、四角状、ダイヤモンド状、複数拡散領域を有する場合等)に拡散される場合、拡散の「異方性」を有すると呼ばれることになる。
【0038】
(3)カラム構造
また、図5(a)〜(b)や図6(a)〜(b)に示すように、屈折率が相対的に低い領域114中に、屈折率が相対的に高い領域として、複数の柱状物112をフィルム面の膜厚方向に林立させてなるカラム構造113を備えることが好ましい。
この理由は、このように複数の柱状物112をフィルムの膜厚方向に林立させてなるカラム構造113とすることによって、光拡散フィルム100に入射して、拡散しながら透過してくる光の屈折方向をより安定的に制御して、さらに外光等の利用効率が高い反射型液晶表示装置10とすることができるためである。
なお、このようにカラム構造を備えた光拡散フィルムであれば、いずれの方向から光を入射させた場合であっても、所定の拡散光が安定的に得られることから、ルーバー構造を有する光拡散フィルムよりも、使い勝手が良く、反射型液晶表示装置10に適用する上で、より好ましいと言える。
【0039】
また、図6(a)〜(b)に示すように、カラム構造を備えた光拡散フィルム100において、その主要面としての表面(第1の面115)から、裏面(第2の面116)に向かって、柱状物112の直径が増加または柱状物の形状が変化していることが好ましい。
この理由は、このように柱状物を変形柱状物として構成することにより、光拡散フィルムに入射して、透過する光の屈折方向をより安定的に制御して、さらに外光等の利用効率が高い反射型液晶表示装置とすることができるためである。
【0040】
さらに言えば、図7(a)に示すように、カラム構造113´を備えた光拡散フィルム100´において、屈折率の低い光硬化物中に、二つの傾斜角度を有する所定柱状物112´からあたかも構成されているように、所定柱状物112´の途中、例えば、中間位置に、傾斜角が変化するような屈曲部112a´を設けることも好ましい。
その場合、かかる所定柱状物112´における屈曲角を、100〜175°の範囲内の値とすることが好ましく、120〜170°の範囲内の値とすることがより好ましく、130〜160°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
また、図7(b)に示すように、傾斜角が異なる複数(二種)の柱状物(第2の柱状物112a´´、第1の柱状物112b´´)を垂直方向に組み合わせて、所定柱状物112´´を含むカラム構造113´´とすることも好ましい。
その場合、かかる第2の柱状物112a´´の傾斜角を、鉛直方向に対して、5〜45°の範囲内の値とすることが好ましく、一方で、第1の柱状物112b´´の傾斜角を、鉛直方向に対して、0〜4°の範囲内の値とすることが好ましい。
いずれにしても、カラム構造113´、113´´にそれぞれ含まれる所定柱状物112´、112´´として、所定の屈曲部112a´を設けたり、傾斜角が異なる複数(二種)の柱状物112a´´、112b´´を組み合わせたりすることにより、このようなカラム構造113´、113´´を備えた光拡散フィルム100´、100´´において、さらに安定的に、良好な光拡散特性を発揮することができる。
【0042】
(4)光拡散素子用組成物
また、光拡散素子を形成する光拡散素子用組成物が、(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(C)成分としての光重合開始剤と、を含むことが好ましい。
この理由は、このように構成することによって、所定の内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムを迅速かつ安定的に形成することができるためである。
すなわち、(A)成分と、(B)成分とを効率的に相分離させながら光硬化させて、光拡散フィルムを形成できることから、柱状物等を構成する内部屈折率分布構造の制御がより安定的になり、ひいては、外光等の利用効率が高い反射型液晶表示装置を容易に得ることができる。
以下、光拡散素子用組成物の配合成分である(A)成分、(B)成分、およびその他の成分((C)成分や(D)成分等)について、さらに詳細に説明する。
【0043】
(4)−1 (A)成分
光拡散素子用組成物は、(A)成分として、重量平均分子量が、200〜2,500である複数の芳香環(ビフェニル環等)を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
この理由は、かかる特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、(A)成分の重合速度を、(B)成分の重合速度よりも速くして、これらの成分間における重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率よく形成することができる。
【0044】
このような(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、若しくは、芳香環上の水素原子の一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等の一種単独または二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0045】
また、(A)成分(硬化前)の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、有効な光拡散角度領域を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(B)成分との見かけ上の相溶状態さえも形成する事が困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の屈折率を、1.52〜1.62の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(A)成分の屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる(以下、同様である)。
【0046】
また、(A)成分の含有量を、後述する(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、カラム構造における(A)成分に由来した柱状物の幅が過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの膜厚方向における柱状物の長さが不十分になり、所定の光拡散特性を示さなくなる場合があるためである。
一方、(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が多くなって、(A)成分に由来した柱状物の幅が過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの膜厚方向における柱状物の長さが不十分になり、所定の光拡散特性を示さなくなる場合があるためである。
したがって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
(4)−2 (B)成分
また、光拡散素子用組成物は、(B)成分として、重量平均分子量が3,000〜20,000の範囲であるウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
この理由は、ウレタン(メタ)アクリレートであれば、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
【0048】
また、(B)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率よく形成することができる。
【0049】
ここで、このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(B1)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(B2)ポリオール化合物、好ましくはジオール化合物、特に好ましくはポリアルキレングリコール、および(B3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の一種単独または二種以上の組み合わせからなる反応物を挙げることができる。
また、(B1)〜(B3)成分によるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って実施することができる。
このとき(B1)〜(B3)成分の配合割合を、モル比にて(B1)成分:(B2)成分:(B3)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(B2)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(B1)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに2つの(B1)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(B3)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
【0050】
また、(B)成分の屈折率(硬化前)を1.4〜1.55の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(A)成分との相溶性が極端に悪化し、カラム構造を形成することができないおそれがあるためである。一方、(B)成分の屈折率が1.55を超えた値となると、(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の屈折率を、1.45〜1.54の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.52の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(B)成分の屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0051】
その他、上述した(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を所定の範囲内の値とすることにより、光の透過と拡散におけるより良好な入射角度依存性、およびより広い光拡散入射角度領域を有する光拡散フィルムを得ることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、光拡散における開き角が過度に狭くなる場合があるためである。
一方、かかる屈折率の差が過度に大きな値となると、(A)成分と(B)成分の相溶性が悪化しすぎて、カラム構造を形成できないおそれがあるためである。
したがって、(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.05〜0.5の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう(A)成分および(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分および(B)成分の屈折率を意味する。
【0052】
また、光拡散素子用組成物における(B)成分の含有量を、光拡散素子用組成物の全体量100重量部に対して、10〜75重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の含有量が10重量部未満の値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が少なくなって、(B)成分に由来した領域が、(A)成分に由来した領域と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、(B)成分の含有量が75重量部を超えた値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が多くなって、(B)成分に由来した領域が、(A)成分に由来した領域と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の含有量を、光拡散素子用組成物の全体量100重量部に対して、20〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0053】
(4)−3 (C)成分
また、光拡散素子用組成物は、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光拡散素子用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を形成することができるためである。
【0054】
ここで、(C)成分としての光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
したがって、かかる光重合開始剤の種類は特に制限されるものではないが、例えば、α−ヒドロキシアセトフェノン型光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン型光重合開始剤およびアシルフォスフィンオキサイド型重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらの光重合開始剤であれば、カラム構造に、より明確に屈曲を生じさせることができることから、得られる光拡散フィルムにおける拡散光の開き角を、より効果的に拡大することができるためである。
すなわち、これらの光重合開始剤であれば、屈曲したカラム構造の形成に際し、(A)成分および(B)成分に由来した領域の屈折率差がより大きくなるよう、これらの成分の分離を促しつつ硬化させることに寄与していると推測されるためである。
【0055】
そして、光重合開始剤の具体例として、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン]等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0056】
また、(C)成分としての光重合開始剤の含有量を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、0.2〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(C)成分の含有量が0.2重量部未満の値となると、十分な入射角度依存性を有する光拡散フィルムを得ることが困難になるばかりか、重合開始点が過度に少なくなって、フィルムを十分に光硬化させることが困難になる場合があるためである。
一方、(C)成分の含有量が20重量部を超えた値となると、塗布層の表層における紫外線吸収が過度に強くなって、かえってフィルムの光硬化が阻害されたり、臭気が過度に強くなったり、あるいはフィルムの初期の黄色味が強くなったりする場合があるためである。
【0057】
(4)−4 (D)成分
また、光拡散素子用組成物は、図7(a)〜(b)に示すように、所定柱状物113´の途中において屈曲部を有する変形柱状物とする場合には、(D)成分として、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、2重量部未満(但し、0重量部を除く。)となるように含むことが好ましい。
この理由は、かかる紫外線吸収剤を比較的少量含むことにより、活性エネルギー線を照射した際に、所定波長の活性エネルギー線を、所定の範囲で選択的に吸収することができるためである。
その結果、光拡散素子用組成物の硬化を阻害することなく、フィルム内に形成されるカラム構造に屈曲を生じさせることができ、これにより、得られる光拡散フィルムに対し、より安定的に所定の光拡散特性を付与することができる。
【0058】
(4)−5 他の添加剤
また、本発明の効果を損なわない範囲で、光拡散素子用組成物中に、適宜、上述した化合物以外の添加剤を添加することができる。
このような添加剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、このような添加剤の含有量は、一般に、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0059】
(5)膜厚
また、光拡散素子(光拡散フィルム)の膜厚については、特に制限されるものでないが、通常、20〜1,500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる光拡散素子の膜厚が20μm未満の値になると、機械的強度や耐久性が低下したり、あるいは、内部に形成される柱状物の形態が過度に小さくなるばかりか、安定的に製造することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる光拡散素子の膜厚が1,500μmを超えた値になると、取り扱いが困難となるばかりか、やはり、内部に形成される柱状物の形態の制御困難になって、安定的に製造することが困難となる場合があるためである
したがって、光拡散素子(光拡散フィルム)の膜厚を、50〜1,000μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜800μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
一方、光拡散素子(光拡散フィルム)の内部に形成される複数の柱状物については、通常、膜厚に沿った垂直方向の長さ(L)を50〜700μmの範囲内の値とすることが好ましく、100〜400μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、カラム構造の垂直方向の長さ(L)を所定範囲内の値とすることにより、膜厚方向に林立する柱状物の長さを安定的に確保して、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、カラム構造に由来した光拡散角度領域内における拡散光の強度の均一性をさらに向上させることができるためである。
さらにまた、光拡散素子(光拡散フィルム)の内部に形成される複数の柱状物について、通常、その直径(円相当径)を0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかる柱状物の直径を所定範囲内の値とすることにより、製造安定性を得るとともに、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、カラム構造に由来した入射角度依存性を、より効果的に向上させることができるためである。
その他、光拡散素子(光拡散フィルム)の内部に形成される複数の柱状物について、隣接する柱状物における、中心間距離(CTC)を、通常、0.2〜30μmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜20μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、光拡散素子(光拡散フィルム)の内部に形成される複数の柱状物についての長さ、直径、中心間距離については、例えば、電子顕微鏡写真から実測することができる。
【0061】
(6)製造方法
光拡散素子として、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムは、一例であるが、以下のように塗布工程と、照射工程とを組み合わせて実施することにより、好適に形成することができる。
【0062】
(6)−1 塗布工程
塗布工程として、図8(a)に示すように、光拡散素子用組成物を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム等の工程シート102に対して塗布し、塗布層101を形成する。
すなわち、工程シート上に、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等、従来公知の方法により、光拡散素子用組成物を塗布することができる。
【0063】
(6)−2 照射工程
照射工程は、図8(b)に示すように、形成した塗布層101に対して、活性エネルギー線照射(紫外線照射)を行い、光拡散素子用組成物からなる塗布層101の内部に、例えば、カラム構造やルーバー構造、あるいはそれらの組み合わせを形成し、光拡散フィルムとする工程である。
【0064】
より具体的には、カラム構造を安定的に形成するためには、活性エネルギー線の照射工程においては、工程シート102の上に形成された塗布層101に対し、光線の平行度が高い平行光を照射することが好ましい。
次いで、市販品である線状の高圧水銀ランプ(直径25mm)に集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(例えば、アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX)を準備する。
より具体的には、図9(b)に示すように、線状の紫外線ランプ125の所定場所に、熱線カットフィルター(図示せず)および遮光板(図示せず)を配置するとともに、線状の紫外線ランプ125と、塗布層101との間に、複数の板状部材210aをそれぞれ平行配置して構成された照射光平行化部材200aを配置し、その状態で、平行化された紫外線50を工程シート102の上に形成された、コンベア(図示せず)上を移動する塗布層101に対し、照射して、カラム構造を有する光拡散素子とすることができる。
【0065】
一方、ルーバー構造を形成する場合には、工程シートの上に形成された塗布層の上面に対し、線状光源を用いて、紫外線を線状に照射するだけで、安定的に形成することができる。
より具体的には、線状の紫外線ランプに集光用のコールドミラーが設けられた紫外線照射装置として、一例であるが、市販品であるECS−4011GX(アイグラフィックス(株)製)の所定場所に、熱線カットフィルターおよび遮光板を配置することにより、照射角度の制御された直接光のみからなる紫外線を取り出し、それを工程シートの上に形成された塗布層に対し、照射して、ルーバー構造を有する光拡散素子とすることができる。
【0066】
ここで、平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。
より具体的には、例えば、図9(a)に示すように、点光源202からの照射光50をレンズ204によって平行光60とした後、塗布層101に対して照射することが好ましい。
また、図9(b)に示すように、線状光源125からの照射光50を、複数のスリット状遮光部材(板状部材)210aからなる照射光平行化部材200(200a)によって、平行光60とした後、塗布層101に対して照射することが好ましい。
さらに、図9(c)に示すように、線状光源125からの照射光50を、グリッド状遮光部材(筒状部材)210bからなる照射光平行化部材200(200b)によって、平行光60とした後、塗布層101に対して照射することも好ましい。
【0067】
また、より具体的には、平行光としての照射光の平行度を10°以下の値とすることが好ましい。
この理由は、照射光の平行度をかかる範囲内の値とすることにより、カラム構造を効率的、かつ、安定的に形成することができるためである。
したがって、照射光の平行度を5°以下の値とすることがより好ましく、0〜2°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0068】
また、照射光の照射角としては、塗布層の表面に対する法線の角度を0°とした場合の照射角(θ3)を、通常、−80〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照射角が−80〜80°の範囲外の値となると、塗布層の表面での反射等の影響が大きくなって、十分なカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
【0069】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、紫外線を用いることがより好ましい。
この理由は、電子線の場合、重合速度が非常に速いため、重合過程で(A)成分と(B)成分が十分に相分離できず、カラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、可視光等と比較した場合、紫外線の方が、その照射により硬化する紫外線硬化樹脂や、使用可能な光重合開始剤のバリエーションが豊富であることから、(A)成分および(B)成分の選択の幅を広げることができるためである。
【0070】
また、紫外線の照射条件としては、塗布層表面におけるピーク照度を0.1〜10mW/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるピーク照度が0.1mW/cm2未満の値となると、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかるピーク照度が10mW/cm2を超えた値となると、(A)成分および(B)成分の相分離が進む前に硬化してしまい、逆に、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、紫外線照射における塗布層表面のピーク照度を0.3〜8mW/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜6mW/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0071】
また、紫外線照射における塗布層表面における積算光量を5〜200mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる積算光量が5mJ/cm2未満の値となると、カラム構造を上方から下方に向けて十分に伸長させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる積算光量が200mJ/cm2を超えた値となると、得られる光拡散フィルムに着色が生じる場合があるためである。
したがって、紫外線照射における塗布層表面における積算光量を7〜150mJ/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜100mJ/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0072】
なお、図7(b)に示す光拡散フィルム100´´において、第1の面(表面)115´´の側に位置する第2の柱状物112a´´と、第2の面(裏面)116´´の側に位置する第1の柱状物112b´´との組み合わせである変形柱状物112´´を含んでなるカラム構造113´´を形成する場合には、紫外線照射を2段階に分けて行うことが好ましい。
この理由は、第1段階の紫外線照射によって、低屈折率の光硬化樹脂中に、林立した複数の第1の柱状物112b´´を形成し、ついで、未形成領域が残っているため、そこに、第2段階の紫外線照射によって、低屈折率の光硬化樹脂中に、林立した複数の第2の柱状物112a´´を形成することができるためである。
【0073】
(7)ヘイズ値
拡散フィルム面の法線に対する入射光の入射角を、光拡散素子用組成物をフィルム状に塗布してなる塗布層を光硬化する際の当該塗布層の移動方向に沿って、−70〜70°の範囲で変えた場合に、各入射角に対するヘイズ値が70%以上の値であることが好ましい。
より具体的には、拡散フィルム面の法線に対する入射角θ1を、塗布層の移動方向に沿って、−70〜70°の範囲で変えながら、各入射角θ1に対するヘイズ値(%)をASTM D 1003に準じて測定した。
そして、かかるヘイズ値の測定は、一例として、BYK(株)製のヘイズ測定装置を用いて、通常、一体となっているステージと、積分球とを分離し、ステージおよび積分球の間隔が62mmとなるように配置した状態で、ステージを回転させて行った。
その結果、−70〜70°の範囲で変えた場合に、各入射角に対するヘイズ値が70%以上の値であれば、広範囲の角度から入射して来る外光を、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射できることが判明した。
【0074】
なお、測定した拡散フィルム(実施例1相当)の場合、入射角(θ1)=−2〜34°は、光拡散入射角度領域内に該当することから、円形の等方性光拡散が生じており、入射角(θ1)=−70〜−18°、−18〜−2°、34〜44°および44〜70°の範囲においては、光拡散入射角度領域外に該当することから、円形の等方性光拡散が生じずに、三日月型の光拡散が生じていることが判明している。
【0075】
5.反射型偏光素子
反射型偏光素子は、所定の偏光軸と一致させる偏光のみを透過させる偏光板と、それ以外の偏光軸を有する光については反射する機能を有する部材である。
したがって、直交する直線偏光の内の一方を透過し、他方を選択的に反射する直線偏光型の反射型偏光素子等が好適に使用可能である。
より具体的には、このような反射型偏光素子として、市販の反射型偏光フィルム、例えば、SHC−115R、SHC−125M、SHC−215M、EHC−125R(いずれも、ポラテクノ(株)製)や、ワイヤグリッドAsahikaseiWGF(旭化成イーマテリアルズ(株)製)、DBEF(住友スリーエム(株)製)等を好適に使用することができる。
【0076】
6.内部光源
図1に示す反射型液晶表示装置10において、内部光源26として、端部にLEDを備えた導光板または有機ルミネッセンス素子を備えることが好ましい。
このような内部光源26であれば、内部光源自体による偏光状態の乱れを少なくすることができ、後述する第2実施形態や第3実施形態において、特に好適に使用することができる。
【0077】
7.その他
本発明の反射型液晶表示装置10において、吸収型偏光素子12を透過した光(偏光)の透過軸を調整するための位相差板(図示せず)をさらに設けることが好ましい。
すなわち、図1に示す反射型液晶表示装置10によれば、吸収型偏光素子12を透過した光(偏光)の透過軸を90°回転させるための位相差板(可変λ/4板あるいは可変λ/2板)を、吸収型偏光素子12の裏面側(液晶セル側)にさらに設けることによって、いわゆる白黒反転表示が可能となる。
したがって、これにより、外光による白黒表示と、内部光源による白黒表示と、を容易に一致させることができる。
すなわち、例えば、可変λ/4板を、反射型液晶表示装置10の所定場所、例えば、図1に示す吸収型偏光素子12の下方に位置する液晶セル側に貼付することによって、いわゆる白黒反転が可能となって、図3(b)に示される画像表示を、図3(c)に示されるように、電圧印加部分が黒表示、電圧非印加部分を白表示と、それぞれ反転させることができる。
【0078】
ここで、位相差板である可変λ/4板として、例えば、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる一軸延伸フィルムを用いることが好ましい。そして、そのリタデーションとしては、例えば、0.1〜0.2μmの範囲であり、可視光で最も視感度が高い緑色光波長の約1/4に相当することが好ましい。
また、別の位相差板である可変λ/2板として、例えば、ポリカーボネート樹脂製の一軸延伸フィルムであることが好ましい。そして、そのリタデーションとしては、例えば、0.2〜0.3μmの範囲であり、可視光で最も視感度が高い緑色光波長の約1/2に相当することが好ましい。
【0079】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、図10および図11に示すように、第1実施形態と同様に、吸収型偏光素子12と、液晶素子20(14、16,18)と、光拡散素子22と、反射型偏光素子24と、内部光源26と、を順次含んでなる反射型液晶表示装置10´であって、光拡散素子22が、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムである反射型液晶表示装置10´である。
そして、第2実施形態は、図10および図11に示すように、吸収型偏光素子12を第1の吸収型偏光素子としたときに、光拡散素子22と、内部光源26と、の間に、第2の吸収型偏光素子として、反射型偏光素子と同一の透過軸を有する吸収型偏光素子12bを設けることを特徴とする反射型液晶表示装置10´である。
以下、第2実施形態の反射型液晶表示装置10´につき、第1実施形態と異なる点を中心に図面を参照して、具体的に説明する。
【0080】
1.基本的構成
第2実施形態の反射型液晶表示装置10´の基本的構成は、第1実施形態と同様であるが、吸収型偏光素子12を第1の吸収型偏光素子としたときに、当該第1の吸収型偏光素子12のほかに、第2の吸収型偏光素子として、反射型偏光素子と同一の透過軸を有する吸収型偏光素子12bを、光拡散素子22と、内部光源26との間に、設けることを特徴としている。
【0081】
2.作用効果
第2実施形態の反射型液晶表示装置10´の場合、例えば、照度が100Luxを超え、1000Lux程度の昼間(デジタル照度計による測定値)においては、図10に示すように、上方から入射した外光(A、B)を利用して、液晶素子20のスイッチング等により、反射型偏光素子24により効率的に反射光(A´)として、外部から視認され、白表示させることができる。
なお、外光を100%としたとき、白表示では、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれることから、吸収型偏光素子12によって約50%吸収されるのみで、反射型偏光素子24によって、そのまま反射されると推定されるため、白表示の光(A)の光量につき、一例であるが、50%になると表記してある。
【0082】
一方、外光を利用して黒表示する場合には、所定電圧を液晶層16に印加し、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれないことから、反射型偏光素子24および第2の吸収型偏光素子12bを透過させるだけで、偏光軸との関係で、第2の吸収型偏光素子12bを透過せず、反射光とすることができずに、最終的には、外部にて視認できないことになる。
すなわち、反射表示の場合であって、かつ、黒表示の場合に、第2の吸収型偏光素子12bは反射光の生成を防止しており、画像表示の輝度向上等に寄与していると言える。
【0083】
一方、例えば、照度が10Lux未満の夜間等の場合は、図11に示すように、背面側に設けられた内部光源26を利用し、それから出射された光(A´´、B´´)を利用して、やはり、液晶素子20のスイッチング等により、一部は完全に途中で遮断(X表示)して黒表示させるとともに、一部はほとんど透過(B´´)させて、白表示をし、それらを組み合わせて、所定の画像表示をすることができる。
すなわち、内部光源26を利用し、かつ、黒表示をする場合、内部光源26から出射された光(A´´)の一部は、第2の吸収型偏光素子12bを偏光として透過するものの、液晶素子20で、偏光の90°回転が行なわれ、偏光軸との関係で、第1の吸収型偏光素子12を透過しないことから、黒表示が可能となる。
【0084】
逆に、内部光源26を利用し、かつ、白表示をする場合、内部光源26から出射された光(B´´)の少なくとも一部は、第2の吸収型偏光素子12bを偏光として透過し、次いで、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれず、偏光軸との関係で、第1の吸収型偏光素子12を透過することから、外部から視認され、白表示が可能となる。
したがって、第2実施形態の反射型液晶表示装置10´において、内部光源26を利用した画像表示の場合であっても、高輝度で、良好なコントラストを得ることができる。
【0085】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、図12および図13に示すように、第1実施形態および第2実施形態と同様に、上方から下方に向かって、吸収型偏光素子12と、液晶素子20(14、16、18)と、光拡散素子22と、反射型偏光素子24と、内部光源26と、を順次含んでなる反射型液晶表示装置10´´であって、光拡散素子22が、光拡散素子用組成物に由来した光硬化物からなる光拡散フィルムであって、かつ、屈折率が相対的に低い領域と、屈折率が相対的に高い領域と、が分布してなる内部屈折率分布構造を備えた光拡散フィルムである反射型液晶表示装置10´´である。
そして、第3実施形態は、図12および図13に示すように、吸収型偏光素子12を第1の吸収型偏光素子としたときに、内部光源26の下方(背面側)に、第3の吸収型偏光素子として、反射型偏光素子24と異なる透過軸を有する吸収型偏光素子12cを設けた反射型液晶表示装置10´´である。
以下、第3実施形態の反射型液晶表示装置10´´につき、第1実施形態および第2実施形態と異なる点を中心に図面を参照して、具体的に説明する。
【0086】
1.基本的構成
第3実施形態の反射型液晶表示装置10´´の基本的構成は、第1実施形態および第2実施形態と同様であるが、吸収型偏光素子12を第1の吸収型偏光素子としたときに、当該第1の吸収型偏光素子のほかに、第3の吸収型偏光素子として、反射型偏光素子と異なる透過軸を有する吸収型偏光素子12cを、内部光源26の下方(背面側)に設けることを特徴としている。
【0087】
2.作用効果
第3実施形態の反射型液晶表示装置10´´の場合、例えば、照度が100Lux程度の昼間の場合には、図12に示すように、上方から入射した外光(A、B)を利用して、液晶素子20のスイッチング等により、反射型偏光素子24により効率的に反射光(A´)として視認され、白表示させることができる。
すなわち、外光を利用して、白表示させる場合には、外光(B)が、第1の吸収型偏光素子12に、一部吸収されながら偏光として透過するものの、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれることから偏光軸が変化し、光拡散素子22を透過した後、反射型偏光素子24で反射させることから、白表示として、外部で視認することができる。
【0088】
一方、外光を利用して、黒表示させる場合には、外光(B)が、第1の吸収型偏光素子12に、一部吸収されながら偏光として透過するものの、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれないことから偏光軸が変化せず、外光(B)のほとんどは、光拡散素子22および反射型偏光素子24を透過してしまい、反射光とすることができず、最終的には、内部光源26、ひいては、第3の吸収型偏光素子12cにて、完全に吸収されて、外部で視認されずに、黒表示されることになる。
したがって、第3実施形態の反射型液晶表示装置10´´において、外光を利用した画像表示の場合、高輝度で、良好なコントラストを得ることができる。
そして、外光を利用した画像表示の場合であって、かつ、黒表示の場合に、第3の吸収型偏光素子12cは、反射光の生成を効果的に防止しており、画像表示の輝度向上等に寄与していると言える。
【0089】
一方、例えば、照度が10Lux未満の夜間等の場合は、図13に示すように、背面側に設けられた内部光源26を利用し、それから出射された光(A´´、B´´)を利用して、やはり、液晶素子20のスイッチング等により、反射型偏光素子24と、液晶素子20によって、完全に途中で遮断(X表示)され、外部で視認されずに黒表示されるとともに、一部の光(B´´)は、反射型偏光素子24と、光拡散素子22と、液晶素子20と、を透過し、外部で視認されて、白表示とすることができる。
すなわち、内部光源26を利用して白表示させる場合には、反射型偏光素子24により、一部反射されながら偏光として透過するものの、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれないことから偏光軸が変化せず、第1の吸収型偏光素子12を透過し、白表示として、外部で視認することができる。
【0090】
さらに、内部光源26を利用して、黒表示させる場合には、反射型偏光素子24により、一部反射されながら偏光として透過するものの、液晶素子20における偏光の90°回転が行なわれることから偏光軸が変化し、最終的には、第1の吸収型偏光素子12を透過することができず、外部から視認されずに黒表示することが可能である。
すなわち、第3実施形態の反射型液晶表示装置10´´において、内部光源を利用した透過表示の場合であっても、高輝度で、コントラストが良好な所定の画像表示をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上、詳述したように、本発明の反射型液晶表示装置によれば、内部光源を利用した透過表示はもちろんのこと、外光による反射表示において、特に、広範囲の角度から入射して来る外光を、効率的に画像表示するための反射光として利用し、偏光特性を変化させずに、反射型液晶表示装置の正面に対して、拡散出射することができるようになった。
したがって、本発明の反射型液晶表示装置は、スマートフォン、屋外用テレビ、デジタルサイネージ等、屋外で使用される液晶製品等に好適に適用することができ、これらの高品質化に著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0092】
10:反射型液晶表示装置、12、12b、12c:吸収型偏光素子、20:液晶素子(14、16、18)、22:光拡散素子、24:反射型偏光素子、26:内部光源、50:光源からの照射光、60:平行光、100:光拡散フィルム、101:塗布層、102:工程シート、112、112´:柱状物、112a´:屈曲部、112a´´:第2の柱状物、112b´´:第1の柱状物、113、113´、113´´:カラム構造、113a:カラム構造の境界面、114:低屈折率領域、115:第1の面、116:第2の面、200:照射光平行化部材、202:点光源、204:レンズ、210:遮光部材、210a:板状部材、210b:筒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15