(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド体は、耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸して焼成した糸を編んだ組紐、または、耐熱性樹脂で構成された棒状体で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送ベルト。
【背景技術】
【0002】
食品や、電子部品などの工業製品を搬送する場合に、プーリに巻き掛けられて回転される無端状の搬送ベルトが用いられている。このような搬送ベルトでは、上記搬送物の位置決めを高精度に行うことが必要であり、搬送ベルトに蛇行が生じないことが求められている。そこで、従来から、搬送ベルトの長手方向に紐状の突起物を縫い付け、一方で、搬送ベルトを巻き掛けるプーリに、突起物と係合させるための溝が周方向に設けることにより、搬送ベルトに縫い付けられた突起物が、プーリの溝に係合して回転されるために、搬送ベルトの蛇行を防止する技術が開示されている。
【0003】
また、上記搬送物の搬送工程においては、単に搬送物を移動させるだけでなく、その途中で、焼成、乾燥といった加熱加工がおこなわれることが多い。この場合、焼成炉、乾燥炉などの内部に搬送ベルトが設置されることになり、搬送ベルト自体に100〜250℃程度の耐熱性が求められる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、耐熱性が良好な基材シート(ガラス繊維やアラミド繊維から成る)にフッ素樹脂を含浸させて焼成したベルト本体のプーリ側の裏面に、耐熱性が良好な基材繊維(ガラス繊維やアラミド繊維)にフッ素樹脂を含浸して焼成した繊維を編組した紐(ガイド体)を、フッ素樹脂を含浸して焼成した耐熱性の糸(ガラス繊維やアラミド繊維)で縫い付けた搬送ベルトが開示されている。特許文献1に示す搬送ベルトでは、ガイド体がプーリ表面に形成された溝に嵌合することで、ベルトの蛇行を防止することができる。
しかしながら、特許文献1では、搬送ベルトがローラー(プーリ)に巻き回されて使用する際に繰返し屈曲することにより生じる搬送ベルトの搬送面側とプーリ側の曲率の差に起因する力により、ガイド体が破損したり、縫い付け紐が破断したりする虞がある。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、ガラス繊維やアラミド繊維など耐熱性に優れた基材繊維にフッ素樹脂を含浸して焼成した糸を編組した丸型または多角形の断面形状を有する帯状のガイト体を縫い付けた搬送ベルトが開示されている。上記ガイド体は芯体と外皮から構成され、紐の編み角を芯体より外皮の方が小さく設定されているので、優れた変形性を示し、搬送ベルトがローラーに巻き回されて使用する際に繰返し屈曲することにより生じる搬送ベルトの搬送面側とプーリ側の曲率の差に起因する力を吸収できるので、ガイド体の損傷を防止できると記載されている。特許文献2において、搬送ベルトへのガイド体の取付けは、熱融着またはガイト体同様耐熱性に優れた基材繊維にフッ素樹脂を含浸して焼成した糸で縫付ける方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2では、熱融着の場合、接合力が十分では無くガイト体がはずれてしまう虞がある。また、縫付の場合、ガイド体を縫い付けるのに使用した糸は伸びが小さいため、通常のミシン縫いだと、ベルト全体が繰り返し伸縮するときに、切断してしまうので、ガイド体がベルトよりはずれてしまうという問題がある。
【0006】
更に、例えば、特許文献3には、耐熱性繊維にフッ素樹脂を含浸、焼成した複数の細い糸を編組した紐を縫付けた搬送ベルトが開示されている。このガイド体は複数の細い糸で編まれているので、ベルトが伸縮したときに搬送ベルトの搬送面側とプーリ側の曲率差による局所的な力を均一化できるため、ベルトが繰返し伸縮しても耐久性に優れると記載されている。
しかしながら、特許文献3では、ガイド体の構成によりベルト伸縮により生ずる力を緩和できてガイド体の破損を防止できるとしても、このガイド体は、縫付によりベルトに固着されるので、縫付け糸部に力がかかる虞がある。縫付け部が破損すると、ガイド体がベルトよりはずれてしまうので、蛇行防止できなくなる。尚、特許文献3には、ガイド体の縫付方法として、上糸と下糸の2つの糸で縫付けされた構造が
図10に記載されているが、
図10では、搬送ベルトの搬送面側の面(
図10で図示する上側の面)に配置された上糸が、搬送ベルトとガイド体を貫通して、搬送ベルトのプーリ側の面(
図10で図示する下側の面)に配置された下糸に絡み合うようにして縫い付けられているが、縫付方法について特に言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、繰返し屈曲による、縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れた搬送ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る搬送ベルトは、搬送面となる表面に搬送物が載せられると共に、裏面がプーリに巻き掛けられる無端状のベルト本体と、前記ベルト本体の裏面に、前記ベルト本体の幅方向に2列以上の縫い目を構成するように、前記ベルト本体の長手方向に沿って、縫い糸で縫い付けられた1つ以上のガイド体と、を備え
た搬送ベルトであって、プーリの周方向に形成された溝に対して、前記ガイド体が嵌合するように、プーリに巻き掛けられて回転され、前記縫い目は、前記ベルト本体の長手方向に一定の間隔で、前記搬送ベルトのプーリ側に位置する上糸となる縫い糸と、前記搬送ベルトの搬送面側に位置する下糸となる縫い糸とが、交互に絡み合って構成され、前記ガイド体の厚み方向における前記上糸と前記下糸の絡み合う位置が、前記2列以上の縫い目で異なることを特徴とする。
【0010】
本発明の搬送ベルトによれば、縫い目が2列以上になるようにガイド体をベルト本体に縫い付けることから、搬送ベルトの屈曲で生じる力が2列以上の縫い目で分散され、それぞれの縫い目を構成する縫い糸への負荷が分散される。これにより、搬送ベルトの繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れた搬送ベルトを提供することができる。
また、上糸と下糸の絡み合う位置が2列以上の縫い目で異なることから、搬送ベルトの屈曲時に搬送ベルトの搬送面側とプーリ側との曲率の差で生じる力による縫い糸への負荷が緩和されるとともに、上糸と下糸が伸ばされることによる縫い糸の切断が起こりにくくなり、搬送ベルトの繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止することができる。
【0012】
上記搬送ベルトにおいて、前記縫い目が2列であり、前記ガイド体の厚み方向における前記上糸と前記下糸の絡み合う位置が、一方の列の縫い目では、前記ガイド体の中心または前記ガイド体の中心より前記搬送ベルトの搬送面側に位置し、他方の列の縫い目では、前記ガイド体の中心より前記搬送ベルトのプーリ側に位置して良い。
上糸と下糸の絡み合う位置を、一方の列の縫い目で、ガイド体の厚み方向における中心または中心より搬送面側とし、他方の列の縫い目で、ガイド体の厚み方向における中心よりプーリ側にして、2列の縫い目で異なるようにしていることから、搬送ベルトの屈曲時に搬送ベルトの搬送面側とプーリ側との曲率の差で生じる力による縫い糸への負荷が緩和されるとともに、上糸と下糸が伸ばされることによる縫い糸の切断が起こりにくくなり、搬送ベルトの繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止することができる。
【0013】
上記搬送ベルトにおいて、前記ベルト本体の幅方向の端部に補強部材が配置され、前記ガイド体は、前記補強部材を介して、前記ベルト本体に縫い付けられて良い。
直接、ガイド体を縫い付けることが難しい耐熱性繊維の間隙が大きいベルト本体に対しても、補強部材を介して、ガイド体を縫い付けることができる。ここで、耐熱性繊維の間隙とは、織布で構成されているベルト本体についての織目の間隔を意味する。
【0014】
上記搬送ベルトにおいて、前記ベルト本体は、耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸して焼成して形成されて良い。また、前記ガイド体は、耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸して焼成した糸を編んだ組紐、または、耐熱性樹脂で構成された棒状体で形成されて良い。更に、前記縫い糸は、耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸して焼成して形成されて良い。
ベルト本体が、耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸して焼成して形成されていることから、耐熱性が要求される搬送ベルトに対応することができる。また、ガイド体が、耐熱性繊維に耐熱性樹脂を含浸して焼成した糸を編んだ組紐、または、耐熱性樹脂で構成された棒状体で形成されていることから、耐熱性が要求される搬送ベルトに対応することができる。また、縫い糸が、伸縮性が低いガラス繊維またはアラミド繊維などの耐熱性繊維で形成されたとしても、上記の通り、搬送ベルトの屈曲で生じる力による縫い糸への負荷が分散されていることから、縫い糸の破断を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、繰返し屈曲による、縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れた搬送ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る搬送ベルトがプーリに巻き掛けられた状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る搬送ベルトがプーリに巻き掛けられた状態を示す
図1のベルト本体の幅方向の断面図である。
【
図3】本実施形態に係る搬送ベルトがプーリに巻き掛けられた状態を示す
図1のガイド体の部分で切断したベルト本体の長手方向の断面図である。
【
図4A】本実施形態に係る搬送ベルトのベルト本体の幅方向の断面図である。
【
図4B】本実施形態に係る搬送ベルトの、
図4Cに示す1列目の縫い目におけるベルト本体の長手方向の断面図と、
図4Dに示す2列目の縫い目におけるベルト本体の長手方向の断面図とを重ね合わせて示す図である。
【
図4C】本実施形態に係る搬送ベルトの1列目の縫い目におけるベルト本体の長手方向の断面図である。
【
図4D】本実施形態に係る搬送ベルトの2列目の縫い目におけるベルト本体の長手方向の断面図である。
【
図5】他の実施形態に係る搬送ベルトを示すベルト本体の幅方向の断面図である。
【
図6】本実施例に係る搬送ベルトを示すベルト本体の幅方向の断面図である。
【
図7】本実施例に係る搬送ベルトの走行試験で用いたレイアウトを示す図である。
【
図8A】従来の搬送ベルトを示すベルト本体の幅方向の断面図である。
【
図8B】従来の搬送ベルトを示すベルト本体の長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る搬送ベルト1は、無端状のベルト本体20と、ベルト本体20の長手方向(X方向)に沿ってベルト本体20の裏面22に取り付けられたガイド体30とを備える。そして、本実施形態に係る搬送ベルト1は、適度な張力が与えられた状態でベルト本体20の裏面22が2つ以上のプーリ10に巻き掛けられて回転され、ベルト本体20の搬送面となる表面21に搬送物3を載せて搬送する。尚、
図1では、ベルト本体20の長手方向をX方向とし、ベルト本体20の幅方向をY方向として図示している。
【0019】
ベルト本体20は、無端状に形成された長尺の帯状の部材である。尚、ベルト本体20は、ベルト本体20の長手方向に両側に端部を有する長尺な帯状の部材を、その両端部を接合することにより、無端状に形成されてもよい。接合方法は、オーバーラップ、突合せ、インターオーブン、金具、ピンによる接合方法がある。オーバーラップによる接合方法とは、両端部の一部を重ねあせて熱融着や接着フィルムにより接合する方法である。突合せによる接合方法とは、両端を突合せ、突合せ部を熱融着や接着フィルムにより接合する方法である。尚、突合せ部裏面を補強部材(フッ素樹脂フィルム、フッ素樹脂ベルト(平面型ベルト))を貼り付けることにより、接合部を補強することもある。インターオーブンによる接合方法とは、両端部の一部の表面フッ素樹脂層を剥がし、芯体帆布を露出させ、横糸を抜き、重ねあわせて熱溶着や接着フィルムにより接合する方法である。金具による接合方法とは、ベルト両端に複数取り付けた先端輪状の金具を互い違いに突合せ、輪部にステンレス製のピンを通し接合する方法である。ピンによる接合方法とは、ベルト両端をフィンガー状に切断し、それぞれを折り返して先端輪状にした端部を互い違いに突き合わせ、輪部にフッ素樹脂製のピンを通し接合する方法である。
【0020】
ベルト本体20は、耐熱性繊維を基材とする織布の芯体帆布で構成される。耐熱性繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミックス繊維、PBO繊維、フッ素繊維等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れたアラミド繊維やガラス繊維が好ましい。また、ベルト本体20を構成する芯体帆布には、耐熱性樹脂が含浸されて、焼成される。耐熱性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の単体、ブレンド系または共重合体が挙げられる。中でも、耐熱性、低圧縮永久歪み性等が良好なフッ素樹脂が好ましい。また、搬送ベルト1で搬送する搬送物の滑りを防止したい際には、摩擦係数が高いシリコーン樹脂が好ましい。ここで、フッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などが挙げられるが、耐熱性の観点から、PTFEが特に好ましい。また、含浸処理には、フッ素樹脂微粒子を水に分散したディスパージョンを用いて良い。
【0021】
ベルト本体20には、メッシュ型ベルトと平面型ベルトの2種類がある。
メッシュ型ベルトとは、芯体帆布となる織布を構成する耐熱性繊維の間隙(即ち、織目の間隔)が大きく、耐熱性樹脂の含浸・焼成処理後にも間隙が存在し、織布を構成する耐熱性繊維の周囲に耐熱性樹脂の被膜が存在するものである。メッシュ型ベルトの場合、例えば、繊度(撚糸の総繊度)が440〜1670dtexのアラミド繊維またはガラス繊維を、厚みが0.45〜0.98mmとなるように平織または絡み織で織られた織布を芯体帆布とする。
また、平面型ベルトは、芯体帆布となる織布を構成する耐熱性繊維の間隙(即ち、織目の間隔)が小さく、耐熱性樹脂の含浸処理後に織布を構成する耐熱性繊維の間隙が無くなり、搬送面全体が耐熱性樹脂で覆われたものである。平面型ベルトの場合、例えば、繊度(撚糸の総繊度)が440〜1670dtexのアラミド繊維またはガラス繊維を、厚みが0.25〜1.06mmとなるように平織または綾織で織られた織布を芯体帆布とする。
【0022】
ベルト本体20が、メッシュ型ベルトの場合、後述する
図5に示すように、ベルト本体20の幅方向の両側縁、即ち、ベルト本体20の幅方向の両端部に、ベルト端部を覆うカバー(補強部材)40を配置する。カバー40は、ベルト本体20と同じ材質の芯体帆布を所定の寸法に裁断し、カバー40とほぼ同寸法の接着フィルム41を重ね合わせて、ベルト本体20のベルト端部で折り畳むことによりベルト端部を覆い、熱融着により接着フィルム41を介して、ベルト本体20に貼り合せる。カバー40は、例えば、厚みが0.075〜0.35mm(標準は0.15mm)で、ベルト端部を覆う幅が10〜50mm(標準は25mm)となるものが好ましい。そして、接着フィルム41は、耐熱性の観点から、PFA、PTFEなどのフッ素樹脂フィルムが好ましい。また、接着フィルム41は、例えば、厚みが0.05〜0.1mmで、幅がカバー40と同じサイズの10〜50mm(標準は25mm)となるものが好ましい。また、ベルト本体20が、平面型ベルトの場合も、ベルト本体20の幅方向の両端部にベルト端部を覆うカバーを配置しても良い。カバー40が配置されることにより、ベルト本体20が所定の幅になるように切断され、ベルト本体20の幅方向の両側縁に切断面が形成されていたとしても、ベルト本体20の側面への露出をなくして、ベルト両側縁がフレームなどに接触してもほつれを生じないようにして、ほつれ現象を防止することができる。
【0023】
ガイド体30は、アラミド繊維やガラス繊維などの耐熱性繊維に、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂を含浸して焼成した繊維、または、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂を基材とした長尺な棒状の部材である。例えば、ガイド体30は、アラミド繊維やガラス繊維などの耐熱性繊維にフッ素樹脂などの耐熱性樹脂を含浸して焼成した複数の繊維を編んだ、丸型または多角形(例えば、四角形)の断面形状を有する組紐である。断面形状が四角形の組紐をガイド体30とする場合、組紐径は、例えば、3〜5mm角となるものを使用する。フッ素樹脂は、ベルト本体20と同様のものを使用することができる。尚、組紐を構成する耐熱性繊維は、フッ素樹脂の含浸・焼成処理や、フッ素コーティングをしていない繊維を使用してもよい。尚、ガイド体30は、組紐に限らず、PTFE樹脂でできた棒状の桟で構成されても良い。
【0024】
ガイド体30は、1つ以上が、ベルト本体20の裏面22に対して、ベルト本体20の長手方向に沿って取り付けられる。本実施形態に係る搬送ベルト1では、2本のガイド体30が、ベルト本体20の幅方向(Y方向)の左右両側の、プーリ10の周方向に形成された2箇所のガイド溝11に嵌合する位置に取り付けられる。尚、ガイド体30の数と取り付ける位置は、ベルト本体20の幅や巻き掛けるプーリ10の形状に応じて決定される。例えば、ガイド体30は、ベルト本体20の幅方向の略中央に1つ取り付けるようにしても良い。
【0025】
ガイド体30は、ベルト本体20が接合により無端状に形成される前に、取り付けられて、ガイド体30が取り付けられた状態のベルト本体20を接合により無端状に形成されてよい。または、ガイド体30は、ベルト本体20が接合により無端状に形成された後に、取り付けられてもよい。
【0026】
図2及び
図3に示すように、2本のガイド体30がプーリ10に設けられたガイド溝11に嵌合することにより、プーリ10に巻き回された搬送ベルト1の蛇行が防止される。ここで、
図3に示すように、搬送ベルト1をプーリ10に巻き回して使用する際には、搬送ベルト1がプーリ10に沿って屈曲させられるために、搬送ベルト1の搬送面側とプーリ側の曲率の差に起因する力が生じる。即ち、
図3の矢印で示すように、搬送ベルト1の搬送面側では引張の力が生じ、搬送ベルト1のプーリ側では圧縮の力が生じる。
【0027】
次に、ガイド体30のベルト本体20への取り付けについて、
図4A〜
図4Dに基づいて、詳細に説明する。尚、
図4Aは、本実施形態に係る搬送ベルト1のガイド体30を含むベルト本体20の幅方向の断面図であり、
図1のZ部分の拡大図に相当する。
【0028】
図4Aに示すように、ベルト本体20の裏面22にベルト本体20の長手方向に沿って載置されたガイド体30は、後述する縫い糸を用いて、ミシンなどにより、ベルト本体20の幅方向において2列の縫い目31,32を構成するように、ベルト本体20に縫い付けられる。尚、縫い目は、ベルト本体20の幅方向において2列に限らず、3列以上で構成されてもよい。これにより、搬送ベルト1の繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れた搬送ベルト1を提供することができる。
【0029】
縫い糸は、アラミド繊維やガラス繊維などの耐熱性繊維に、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂を含浸して焼成した繊維が用いられる。例えば、縫い糸は、繊度(撚糸の総繊度)が1670〜2222dtexのアラミド繊維を用いる。フッ素樹脂は、ベルト本体20と同様のものを使用することができる。尚、縫い糸を構成する耐熱性繊維は、フッ素樹脂の含浸・焼成処理や、フッ素コーティングをしていない繊維を使用してもよい。
【0030】
また、
図4A及び
図4Bに示すように、縫い目31は、ベルト本体20の長手方向に一定の間隔で、搬送ベルト1のプーリ側(
図4A及び
図4Bの紙面上側)に位置する上糸となる縫い糸31aと、搬送ベルト1の搬送面側(
図4A及び
図4Bの紙面下側)に位置する下糸となる縫い糸31bとが、交互に絡み合って構成される。同様に、縫い目32は、ベルト本体20の長手方向に一定の間隔で、搬送ベルト1のプーリ側に位置する上糸となる縫い糸32aと、搬送ベルト1の搬送面側に位置する下糸となる縫い糸32bとが、交互に絡み合って構成される。
【0031】
ここで、
図4Bに示すように、ガイド体30の厚み方向において、1列目の縫い目31の上糸31aと下糸31bの絡み合う位置(図中の「1列目絡み位置」)Pと、2列目の縫い目32の上糸32aと下糸32bの絡み合う位置(図中の「2列目絡み位置」)Qは、相違している。これにより、搬送ベルト1の屈曲時に搬送ベルト1の搬送面側とプーリ側との曲率の差で生じる力による縫い糸31a,31b,32a,32bへの負荷が緩和されるとともに、上糸31a,32aと下糸31b,32bが伸ばされることによる縫い糸31a,31b,32a,32bの切断が起こりにくくなり、搬送ベルト1の繰返し屈曲による縫い糸31a,31b,32a,32bの破断を防止することができる。
【0032】
具体的には、
図4Cに示すように、1列目の縫い目31の上糸31aと下糸31bの絡み合う位置(図中の「1列目絡み位置」)Pは、ガイド体30の中心より搬送ベルト1のプーリ側(
図4Cの紙面上側)に位置している。尚、1列目絡み位置Pは、
図4Cに示す位置に限らず、ガイド体30の中心より搬送ベルト1のプーリ側の位置であればどこに位置していても良い。
【0033】
一方、
図4Dに示すように、2列目の縫い目32の上糸32aと下糸32bの絡み合う位置(図中の「2列目絡み位置」)Qは、ガイド体30のほぼ中心に位置している。尚、2列目絡み位置Qは、
図4Dに示す位置に限らず、ガイド体30の中心またはガイド体30の中心より搬送ベルトの搬送面側(
図4Dの紙面上側)の位置であればどこに位置していても良い。
【0034】
更に、1列目絡み位置Pと、2列目絡み位置Qは、
互いに異なっていればよく、ガイド体30のいずれの位置に位置していても良い。搬送ベルト1の屈曲で生じる力が2列の縫い目31,32で分散され、それぞれの縫い目31,32を構成する縫い糸31a,31b,32a,32bへの負荷が分散されるからである。
【0035】
尚、
図5に示すように、ベルト本体20の幅方向の端部に補強部材40が配置されている場合、ガイド体30は、ベルト本体20の幅方向において2列の縫い目31,32を構成するように、補強部材40を介して、ベルト本体20に縫い付けられる。縫い目31の上糸31aと下糸31bの絡み合う位置と、縫い目32の上糸32aと下糸32bの絡み合う位置については、上述の通りである。これにより、直接、ガイド体30を縫い付けることが難しい耐熱性繊維の間隙が大きいベルト本体20(メッシュ型ベルト)に対しても、補強部材40を介して、ガイド体30を縫い付けることができる。
【0036】
また、縫い目が3列以上ある場合は、ガイド体30の厚み方向において、それぞれの縫い目の上糸と下糸の絡み合う位置が相違していることが好ましい。搬送ベルト1の屈曲時に搬送ベルト1の搬送面側とプーリ側との曲率の差で生じる力による縫い糸への負荷が緩和されるとともに、上糸と下糸が伸ばされることによる縫い糸の切断が起こりにくくなり、搬送ベルト1の繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止することができるからである。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る搬送ベルト1によれば、1列目の縫い目31の上糸31aと下糸31bの絡み合う位置を、ガイド体30の厚み方向における中心よりプーリ側にし、2列目の縫い目32の上糸32aと下糸32bの絡み合う位置を、ガイド体30の厚み方向における中心として、2列の縫い目31,32で異なるようにしている。これにより、搬送ベルト1の屈曲時に搬送ベルト1の搬送面側とプーリ側との曲率の差で生じる力による縫い糸への負荷が緩和され、搬送ベルト1の繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止することができる。
【実施例】
【0038】
下記の手順により、
図6に示すような実施例1、
比較例1及び比較例
2に係る搬送ベルト1を形成した。
【0039】
まず、ガラス繊維からなる平織りの織布を所定の寸法(幅100mm×長さ1300mm×厚さ0.68mm)に切出し、フッ素樹脂を含浸・焼成してベルト本体20を得た。本実施例に係るベルト本体20は、平面型である。次に、アラミド繊維の撚り糸にフッ素樹脂を含浸・焼成して得られる糸を複数本、編組して組紐を形成した。そして、組紐をガイド体30として、
図6に示すように、ベルト本体20の中央にベルト本体20の長手方向に沿って縫付けた。最後に、ガイド体30が縫い付けられたベルト本体20の長手方向両端部を接合し、無端状の搬送ベルト1を得た。尚、補強部材40は配置しなかった。
【0040】
そして、ガイド体30として、アラミド繊維の撚り糸にフッ素樹脂を含浸・焼成して得られる糸を複数本編んで、所定の形状(断面四角形の径5mm角×長さ1300mm)とした組紐を形成し、ベルト本体20の中央に長手方向に沿って縫付けた。縫い糸は、アラミド繊維からなる撚り糸にフッ素樹脂を含浸・焼成した糸を用いた。
【0041】
ここで、本実施例1に係る搬送ベルト1においては、
図4A〜
図4Dに示すように、ベルト本体20の幅方向において2列の縫い目31,32を構成した。そして、1列目の縫い目31の上糸31aと下糸31bの絡み合う位置をガイド体30の厚み方向における中心よりプーリ側に位置し(より詳細には、ガイド体30の厚み方向において、中心よりプーリ側の端部までの厚みを1とすると、中心よりプーリ側に向かって約1/2〜2/3の厚みの位置)、2列目の縫い目32の上糸32aと下糸32bの絡み合う位置をガイド体30の厚み方向における中心に位置するように、ガイド体30をベルト本体20に縫い付けた。
【0042】
また、
比較例1に係る搬送ベルト1においては、
図4A〜
図4Dに示す本実施例1に係る搬送ベルト1と同様に、ベルト本体20の幅方向において2列の縫い目31,32を構成した。そして、1列目の縫い目31の上糸31aと下糸31bの絡み合う位置と、2列目の縫い目32の上糸32aと下糸32bの絡み合う位置とを、同じ位置であって、ガイド体30の厚み方向における中心に位置するように、ガイド体30をベルト本体20に縫い付けた。
【0043】
一方、比較例
2に係る搬送ベルト1においては、
図8A〜
図8Bに示すように、ベルト本体20の幅方向において1列の縫い目35を構成した。そして、縫い目35の上糸35aと下糸35bの絡み合う位置をガイド体30の厚み方向における中心に位置するように、ガイド体30をベルト本体20に縫い付けた。
【0044】
(走行試験)
そして、実施例1、
比較例1及び比較例
2に係る搬送ベルト1を、それぞれ、
図7に示すレイアウトで示す2軸のプーリ10,12に巻き掛けて走行させ、縫い糸の切断伸び発生までの走行時間を計測した。ここで、2軸のプーリ10,12のプーリ径は、それぞれ、90φである。また、張力が3kgf/cmとなるように2軸のプーリ10,12を配置し、ベルト速度が50m/minとなるように2軸のプーリ10,12を駆動させた。
【0045】
実施例1、
比較例1及び比較例
2に係る搬送ベルト1のそれぞれについて、縫い目の数及び上糸と下糸の絡み位置と、縫い糸の切断伸び発生までの走行時間の測定結果とを、表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
[考察]
上述の走行試験より、以下のことが明らかになった。
【0048】
表1の結果から、実施例1に係る搬送ベルト1が、比較例
2に係る搬送ベルト1よりも縫い糸の切断伸び発生までの走行時間が約8.8倍に延ばすことができ、搬送ベルト1の繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れていることが確認できた。これは、実施例1に係る搬送ベルト1が、2列の縫い目を構成するように、また、2列の縫い目の上糸と下糸の絡み合う位置が異なるように、ガイド体30がベルト本体20に縫い付けられており、搬送ベルト1の屈曲時に搬送ベルト1の搬送面側とプーリ側との曲率の差で生じる力による縫い糸への負荷が緩和されるとともに、上糸と下糸が伸ばされることによる縫い糸の切断が起こりにくくなっているからであると考えられる。
【0049】
また、
比較例1に係る搬送ベルト1が、比較例
2に係る搬送ベルト1よりも縫い糸の切断伸び発生までの走行時間が約4.9倍に延ばすことができ、搬送ベルト1の繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れていることが確認できた。これは、
比較例1に係る搬送ベルト1が、2列の縫い目を構成するように、ガイド体30がベルト本体20に縫い付けられており、搬送ベルト1の屈曲で生じる力が2列の縫い目で分散され、それぞれの縫い目を構成する縫い糸への負荷が分散されているからであると考えられる。
【0050】
以上より、繰返し屈曲による縫い糸の破断を防止して、耐久性に優れた搬送ベルトを提供するためには、2列以上の縫い目を構成するように、ガイド体30をベルト本体20に縫い付けて、搬送ベルト1を形成すれば良いことが明らかとなった。更に、2列以上の縫い目の上糸と下糸の絡み合う位置が異なるように、ガイド体30をベルト本体20に縫い付けて、搬送ベルト1を形成すればより良いことが明らかとなった。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。