(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228022
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】電動工具のベース用シート、ベース用シートを装着した電動工具
(51)【国際特許分類】
B27B 9/04 20060101AFI20171030BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
B27B9/04
B25F5/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-10104(P2014-10104)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-136873(P2015-136873A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 学
(72)【発明者】
【氏名】河内山 勝利
(72)【発明者】
【氏名】岡田 厚人
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0229404(US,A1)
【文献】
特開2006−289869(JP,A)
【文献】
特開2001−315075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 9/00−9/04
B25F 5/00
B23D 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具のベースの下面側に装着される摺動性向上を目的としたシートであって、
前記ベースの下面側には被加工材に摺接する摺接領域が形成されており、
前記シートの輪郭は、前記摺接領域の輪郭に対して前記摺接領域の内側に後退して形成されており、
前記シートの側部に形成されている少なくとも1つの逃がし形状部の輪郭は、前記電動工具の進行方向に直交する線に対して傾斜していることを特徴とするシート。
【請求項2】
前記電動工具は、鋸刃を備える携帯用丸鋸であり、
前記逃がし形状部は、前記鋸刃の刃先の前側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
摺動性向上を目的としたシートをベースの下面側に装着した電動工具であって、
前記ベースの下面側には被加工材に摺接する摺接領域が形成されており、
前記シートの輪郭は、前記摺接領域の輪郭に対して前記摺接領域の内側に後退して形成されており、
前記シートの側部に形成されている少なくとも1つの逃がし形状部の輪郭は、前記電動工具の進行方向に直交する線に対して傾斜していることを特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用丸鋸等の電動工具のベースに装着される摺動性向上を目的としたベース用シート、およびベース用シートを装着した電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材等の加工に使用される携帯用丸鋸等の電動工具が知られている。この種の電動工具はベースを備えており、ベースが被加工材上を摺接しながら移動することで、回転刃等の加工具が所定の加工を行うように構成されている。
【0003】
また、下記特許文献1には、被加工材上の電動工具の摺動性向上を目的として、ベースの下面側に摺動抵抗の小さいシートを接着する電動工具の発明が記載されている。また、本文献においては、ベースの端面を覆うようにシートを接着することで、シートの剥がれを防止する形態も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このようなシートは、伸縮性を有しているため、使用時にベースと被加工材との間で扱かれることで伸びが発生する場合がある。この伸びは、電動工具の進行方向の後方にのみ発生するのではなく、進行方向の前方および両側方向(左右方向)にも発生する。伸びの発生によりシートがベースの側端面からはみ出した場合は、ベース側端面を加工基準として使用することが困難となり、作業性の低下を招いていた。また、特許文献1のように、ベースの端面を覆うようにシートを接着している場合は、シートの伸びにより弛み(浮き)が発生することになり、弛み(浮き)の修正のための貼り直しが必要となることから、作業性の低下を招いていた。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、伸びが発生しても作業性が低下しない電動工具のベース用シート、およびベース用シートを装着した電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシートは、電動工具のベースの下面側に装着される摺動性向上を目的としたシートであって、前記ベースの下面側には被加工材に摺接する摺接領域が形成されており、前記シートの輪郭は、前記摺接領域の輪郭に対して前記摺接領域の内側に後退して形成されて
おり、前記シートの側部に形成されている少なくとも1つの逃がし形状部の輪郭は、前記電動工具の進行方向に直交する線に対して傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るシートにおいては、前記電動工具は、鋸刃を備える携帯用丸鋸であり、前記逃がし形状部は、前記鋸刃の刃先の前側に形成することができる。
【0010】
本発明に係る電動工具は、摺動性向上を目的としたシートをベースの下面側に装着した電動工具であって、前記ベースの下面側には被加工材に摺接する摺接領域が形成されており、前記シートの輪郭は、前記摺接領域の輪郭に対して前記摺接領域の内側に後退して形成されて
おり、前記シートの側部に形成されている少なくとも1つの逃がし形状部の輪郭は、前記電動工具の進行方向に直交する線に対して傾斜して形成されていることを特徴とす
る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、伸びが発生しても作業性が低下しない電動工具のベース用シート、およびベース用シートを装着した電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸の右側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸の左側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸の底面図であり、一部省略している。
【
図6】本発明の実施形態に係るシートを携帯用丸鋸に装着した状態を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸で被加工材を加工する状態を説明する平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸で被加工材を加工する状態を説明する左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
なお、以下の説明は、本発明の実施形態に係るシートを電動工具である携帯用丸鋸に装着する場合を例に説明する。また、本明細書では、携帯用丸鋸による加工作業時の進行方向に基づき、「前、後、左、右、上、下」を図中に示すように規定して説明する。
【0015】
まず、
図1〜4を参照して、本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸について説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸1は、左右方向の軸線まわりに回転する鋸刃11を備えた本体部10と、被加工材に摺接し、被加工材の上面に沿って案内するためのベース51とを備えている。本体部10は、鋸刃11を回転駆動するための駆動源であるモータ(不図示)を収容するモータケース12と、モータケース12の右側に配置され、モータの回転駆動を減速して鋸刃11に伝達するための歯車等からなる駆動伝達部(不図示)を収容するギヤケース21と、切断作業時等に携帯用丸鋸1を把持するための前後方向に延びるハンドル13と、ギヤケース21の右側に配置され、鋸刃11の上方を覆うソーカバー31と、切断作業を行わないときに鋸刃11を下側から覆うロアガード61とを備えている。ハンドル13は、ベース51の左側部の上方に位置しており、その前側下面には携帯用丸鋸1の作動・停止を制御するスイッチ14が配置されている。
【0017】
ベース51には鋸刃11およびロアガード61を下方に突出させるための主開口52が形成されている。ロアガード61は、鋸刃11の回転軸周りに回動自在に設置されており、
図2中において、反時計回りに不図示のバネにより付勢されている。
【0018】
本体部10は、ソーカバー31の前端部が、左右方向の軸線を持つネジ軸54に回動自在に支持されることで、ベース51に対してネジ軸54の軸線まわりに上下に傾動可能となっている。本体部10の後部には、切り込み深さ調整機構70が備えられており、切り込み深さ調整機構70により、ベース51に対する本体部10の傾動量を調整することで、ベース51の下面からの鋸刃11の突出量を変更可能に構成されている。なお、切り込み深さ調整機構70は、従来公知のものであるので、詳細な説明は省略する。
【0019】
本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸1は、ベース51に平行定規81が装着可能に構成されている。平行定規81は、被加工材の端面から所定の距離を平行に切断する場合に使用されるものである。平行定規81は、ベース51の側面と平行な案内部82と、案内部82から左右方向に延びる脚部83とを備えており、脚部83を、ベース51に形成された挿入部に挿入し、ベース51の左側上面に配置される平行定規固定手段84で固定することで、所定の位置に取り付けることができる。平行定規固定手段84は、カムレバー85を備えており、カムレバー85を操作することで、脚部83の固定および固定解除が可能になっている。本実施形態の携帯用丸鋸1においては、平行定規固定手段84は前後2箇所に配設されており、この位置のベース51には、
図4に示すように、開口53,53が形成されている。この開口53,53から平行定規固定手段84,84の内部に進入した切粉が排出できるので、清掃作業を容易にすることができる。
【0020】
本発明の実施形態に係るシートを装着可能な携帯用丸鋸1には、ベース51の前端部に墨線ガイド91が取り付けられている。そこで、この墨線ガイド91について、
図7及び
図8を参照図面に加えて説明する。
【0021】
墨線ガイド91は、被加工材に描かれた墨線93に沿って切断する場合に使用されるものである。使用方法としては、まず、被加工材の端部において、墨線93に鋸刃11の刃先を合わせる。なお、墨線93に鋸刃11の刃先を合わせる際は、ソーカバー31の両側面の前側下方とベース51との間に形成されている目視用開口31a,31aを通して鋸刃11の刃先を目視することになる。次に、鋸刃11の刃先を墨線93に合わせた状態を維持したまま、携帯用丸鋸1を移動させて墨線ガイド91の合わせ面92と墨線93とを合わせる。この状態で携帯用丸鋸1を前方に進行させながら切断することで、墨線93に沿っての切断が可能となる。なお、墨線93に鋸刃11の刃先を合わせる際は、
図8に示されるように、携帯用丸鋸1を傾けて、ベース51の前端部を被加工材から浮かせて行うと作業性が良い。
【0022】
ベース51の下面は、
図4に示されるように、主開口52、開口53,53および雌ネジ等の開口が形成されており、ベース51の下面の各縁部には面取り加工が行われている。したがって、ベース51の下面において被加工材に摺接する摺接領域Sは、
図4中にハッチングにて示される平面として形成される範囲となる。面取り加工の大きさは、ベース51の前縁は大きく設定されているが、それ以外の縁部は比較的小さく設定されている。なお、ここで言う縁部とは、ベース51の各側部の縁部と、各開口の縁部のことである。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係るシート100について、
図5および
図6を参照図に加えて説明する。
【0024】
シート100は、合成樹脂シートからなり、片面には接着剤が塗布されている。本実施形態においては、シート100は、厚さが0.25mmのポリエチレンシートを素材として製造されている。シート100の接着剤が塗布された面は、剥離紙で覆われており、剥離紙を剥がして、ベース51の下面側に接着する。なお、剥離紙は、
図5に示すように、前後方向で3分割されており、ベース51の下面側に接着する際は、まず、前側剥離紙101を剥がして、ベース51の所定の位置に位置決めした後、中央剥離紙102と後側剥離紙103を順次剥がしながら接着していくことで、精度よく所定の位置に貼り付けることができる。また、この手順で貼り付けることで気泡の発生を抑制することができる。
【0025】
シート100の形状は、
図6に示されるように、ベース51の摺接領域Sの形状に対応した形状となっている。摺接領域Sにシート100を接着した状態では、シート100の輪郭は、摺接領域Sの輪郭に対して、摺接領域Sの内側に後退している。なお、本実施形態においては、シート100の輪郭の摺接領域Sの輪郭に対する摺接領域S内側への後退量Aは、概ね4mmとなっている。これにより、ベース51と被加工材との間で扱かれることによってシート100の伸びが発生した場合でも、シート100がベース51の摺接領域Sの輪郭からはみ出すことがない。したがって、シート100がベース51の側端面からはみ出すことはない。よって、ベース51の側端面を加工基準として使用できるので、作業性の低下を招くことがない。また、ベース51の端面を覆うようにシート100を接着していないので、シート100の伸びにより弛み(浮き)が発生することがない。したがって、弛み(浮き)が発生した場合に必要となる貼り直し作業が不要となる。また、シート100が伸びて縁部の面取り加工部まで達した場合は、その部分からシート100が剥がれ易くなるが、本実施形態に係るシート100の輪郭は、摺接領域Sの輪郭に対して、摺接領域Sの内側に後退しているので、シート100が伸びた場合でも、平面として形成されている摺接領域Sの範囲からはみ出すことがない。したがって、良好な接着状態が維持できるので、容易に剥げることがない。
【0026】
また、ベース51の下面に形成されている開口53,53の左右方向の輪郭53a,53b,53cに対応するシート100の逃がし形状部の輪郭100a,100b,100cは、
図6中に符号α,β,γで示すように、左右方向の軸線に対して傾斜している。このように、ベース51の左側部に形成されている逃がし形状部の輪郭を左右方向の軸線に対して傾斜させることで、携帯用丸鋸1が被加工材上を摺動する際の引っ掛かりを効果的に防止することができる。特に、本実施形態での携帯用丸鋸1は、開口53,53の上方にハンドル13が配置されているため、ハンドル13に付与される使用者からの押圧力が、ベース51の左方側に伝達される傾向にあり、このため、ベース51の左端部に形成されている開口53,53に対応する逃がし形状部の輪郭100a,100b,100cを傾斜させることは、引っ掛かり防止において顕著な効果がある。なお、本実施形態においては、αは5度、βは15度、γは5度に設定されている。
【0027】
また、特に、前側の開口53の輪郭53a,53bに対応する逃がし形状部の輪郭100a,100bの位置は、鋸刃11の刃先の前側に位置しており、墨線ガイド91を使用して墨線93に沿って切断する場合、
図8で示すように、被加工材の角部が当接する位置付近となるため、この位置で引っ掛かり等が発生する場合は、鋸刃11の刃先と墨線93の位置合わせ作業が困難となるが、本実施形態に係るシート100においては、この位置に形成されている逃がし形状部の輪郭100a,100bを左右方向の軸線に対して傾斜させているので、鋸刃11の刃先と墨線93との位置合わせ作業の障害とはなり難い。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々なる形態に変更することが可能である。
【0029】
たとえば、本発明の実施形態に係るシート100は、厚さが0.25mmのポリエチレンシートから形成したが、これに限定されない。摺動性向上を可能とするシートであれば良い。
【0030】
また、たとえば、本発明の実施形態に係るシート100を携帯用丸鋸に装着する場合について説明したが、本発明の電動工具は携帯用丸鋸に限定されない。例えば、ジグソー、鉋盤等でも良い。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯用丸鋸、10 本体部、11 鋸刃、12 モータケース、13 ハンドル、14 スイッチ、21 ギヤケース、31 ソーカバー、31a 目視用開口、51 ベース、52 主開口、53 開口、53a 輪郭、53b 輪郭、53c 輪郭、54 ネジ軸、61 ロアガード、70 切込み深さ調整機構、81 平行定規、82 案内部、83 脚部、84 平行定規固定手段、85 カムレバー、91 墨線ガイド、92 合わせ面、93 墨線、100 シート、100a 輪郭、100b 輪郭、100c 輪郭、101 前側剥離紙、102 中央剥離紙、103 後側剥離紙