(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る空気調和システムについて説明する。
<実施の形態1>
本発明に係る空気調和システムの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<構成>
本実施の形態においては、本発明に係る空気調和システムを店舗に設ける場合の一例を説明する。なお、本実施の形態1においては、時期的に暑い季節に店舗内を冷却する必要のある状態を想定して記載する。即ち、店舗外の外気温は、店舗内の室内温度よりも高い状態である。
【0010】
図1は、空気調和システムを備えた一店舗の一点透視図であって、一部切欠斜視図である。また、
図2は、当該店舗を天頂方向から見た場合の平面図であり、
図3は、
図1に示す状態の店舗を右側から見た場合の側面図である。なお、本明細書においては、店舗1の構成を示す図面については、図面を見やすくするために、必要最小限の内容のみを記載していることに留意されたい。
【0011】
図1〜
図3に示すように、本発明に係る空気調和システムにおいては、ドア10側の天上部分に、他の天井部分よりも一段高くなるように構成されたトラップ部120を備える。トラップ部120は、他の天井部分よりも高く構成されているため、温度の高い空気は上昇するという自然法則により、店舗1内の他の部分に比して、より温度の高い空気が滞留しやすい構造となる。より温度の高い空気が滞留する構造とするために、トラップ部120は、ドア10から見た店舗1の室内の横幅よりも狭い領域に設けられるのが望ましい。トラップ部120は、一例として、例えば、天井の一部(天井板)を取り払い、残された天井板と、天井板を取り払うことで見える天井とをつなぐようにして側壁の板を貼接することで形成できる。
【0012】
当該店舗においては、トラップ部120よりも一段低く構成されている天井部分の天井裏に空気調和機100が設けられる。
そして、トラップ部120に接する(面する)ように空気調和機100の吸気口101が設けられる。こうすることで、トラップ部120に滞留する店舗1内のより温度の高い空気を吸い込んで冷却することができるので、冷却効率が高くなる。
【0013】
空気調和機100は、冷却機能を有する一般的な空調設備と同等の機能を有するものであり、吸気口101から吸い込まれた温度の高い空気が、空気調和機内部を通って、冷却され、冷風が送風口105から送出される。この場合、吸気口101はトラップ部120側、送風口105は、トラップ部120とは反対側に構成することで、トラップ部120に集めた店舗1内の温度の高い空気をかき乱すことなく、トラップ部120に滞留する店舗1内のより温度の高い空気を吸い込んで冷却することができる。
【0014】
店舗1のドア10から見て奥側には冷却機能付きのショーケース110が設けられる。冷却機能付きのショーケース110は、庫内の商品の温度を一定に保つ必要があるため、急激な温度変化が予測されるドア10付近よりも、店舗1の奥の方に配されるのが望ましい。つまり、ショーケース110が店舗1の奥に設けられるのは、出入口から流入する熱気の影響をできるだけ受けないようにするためである。また、ショーケース110がオープンケースの場合、前面上部から冷却された空気を下方に向けて噴出してエアーカーテンを形成して庫内を冷却しているが、このエアーカーテンを補強するように冷風を送風口105から送出して、エアーカーテン効果を高めることもできる。
【0015】
空気調和機100の送風口105は、ショーケース110の上方に設けられる。これは、送風口105から送出された冷風により、ショーケース110周辺の空気の温度を下げるためである。これにより、ショーケース110周辺の急激な温度上昇というような事態を招く可能性を低くすることができる。
トラップ部120には、更に、そこに接するように温度センサ130、湿度センサ140が設けられており、トラップ部120に滞留する空気の温度および湿度を検出する。検出した温度や湿度は、空気調和機100およびショーケース110に伝達され、冷却処理等の処理の際に参照され、制御が行われる。
【0016】
図1においては、温度センサ130、湿度センサ140は吸気口101横に配しているが、これは、その限りではなく、トラップ部120に滞留する空気の状態を検出できるのであれば、その配置箇所は吸気口101横に限定されるものではなく、トラップ部120に接するように設けられていればよい。
図4は、空気調和システムのシステム構成を模式的に示したシステム図である。
図4に示すように空気調和システムは、空気調和機100と、ショーケース110と、トラップ部120と、温度センサ130と、湿度センサ140とから構成される。
【0017】
図4に示すように、空気調和機100は、トラップ部120に設けられている温度センサ130と、湿度センサ140と、ショーケース110と通信可能なように接続される。当該接続は、有線接続であっても無線接続であってもよい。
また、ショーケース110は、トラップ部120に設けられている温度センサ130と、湿度センサ140と、空気調和機100と通信可能なように接続される。当該接続は、有線接続であっても無線接続であってもよい。
【0018】
温度センサ130は、トラップ部120に設けられ、トラップ部120の空気の温度を検出し、逐次、空気調和機100およびショーケース110に検出した温度を伝達する機能を有する。
湿度センサ140は、トラップ部120に設けられ、トラップ部120の空気の湿度を検出し、逐次、空気調和機100およびショーケース110に検出した湿度を伝達する機能を有する。
図5は、空気調和機100の内部構成の簡略図である。
【0019】
空気調和機100は、吸気口101から吸入された空気が、内部を通過して、送風口105から送出できるように構成されている。
図5に示すように、吸気口101から流入した空気は、フィルタ102で空気中の埃やごみが濾過された後、冷却器103(冷却コイルともいう)により冷却される。そして、冷却された空気は、送風ファン104が回転することにより、空気の流れが形成され、送風口105から送出される。送風ファン104の回転数により、吸気口101からの吸気度合や、送風口105からの送出度合が定まる。即ち、回転数が高いほど、吸気度合および送出度合が高くなる。また、冷却器103による冷却度合により送風口105から送出される空気の温度が定まる。
【0020】
図6は、空気調和機100の機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、空気調和機100は、冷却器103と、送風ファン104と、通信部601と、記憶部602と、制御部605とを含んで構成される。
冷却器103は、内部を通過する冷媒により、冷却器103に触れる空気を冷却する。冷却の度合いの制御(温度制御)については、従来と同様であるので、詳細については割愛する。
【0021】
送風ファン104は、制御部605からの指示に従って、モーターが駆動して、回転する機能を有し、送風ファン104が回転することにより、送風口105から冷却された空気が送出される。また、この回転により、空気調和機100内部の空気の流れ(吸気口101から送風口105までの流れ)を形成する。したがって、送風ファン104の回転数により、吸気口101から吸い込む空気の量が変わる。
【0022】
通信部601は、空気調和機100と接続されている各機器と通信を実行する機能を有する。通信部601は、温度センサ130から温度に関する情報を含む信号を受信し、復調して、制御部605に伝達する。また、通信部601は、湿度センサ140から湿度に関する情報を含む信号を受信し、制御部605に伝達する。そして、通信部601は、ショーケース110から防露ヒーター112あるいは除霜ヒーター113、照明装置116の稼働を示す信号を受信して、制御部605に伝達する。
【0023】
記憶部602は、空気調和機100が動作上必要とするプログラムやデータを記憶する機能を有し、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)などにより実現される。
制御部605は、プロセッサであり、空気調和機100の各部を制御する機能を有する。制御部605は、店舗1内の温度状況や、湿度状況に応じて、冷却処理や湿度調整処理等の一般的な空気調和機が実行可能な処理の他、特に以下の処理を実行する機能を有する。
【0024】
制御部605は、温度センサ130から伝達された温度、湿度センサ140から伝達された湿度について、それぞれに対して設定された閾値との比較を行って、その比較結果に応じた冷却処理の制御を行う機能を有する。
具体的には、制御部605は、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値TA1とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値HA1とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値TA1以上、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値HA1以上を満たす場合に、制御部605は空気調和機100の冷却能力を強める。冷却能力を強める手法については、従来から空気調和機で利用されている技術を利用するものとし、ここではその詳細については説明を割愛する。
【0025】
また、制御部605は、上述の条件を満たさない場合に、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値TA2とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値HA2とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値TA2未満、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値HA2未満を満たす場合に、制御部605は空気調和機100の冷却能力を弱める。冷却能力を弱める手法については、従来から空気調和機で利用されている技術を利用するものとし、ここではその詳細については説明を割愛する。
【0026】
また、制御部605は、その他に、ショーケース110から、防露ヒーター112あるいは除霜ヒーター113、照明装置116を稼働させる旨を伝達された場合には、冷却能力を強める機能も有する。ショーケース110が防露ヒーター112や除霜ヒーター113、照明装置116を稼働させる場合には、ショーケース110に熱負荷が発生してショーケース110の冷却能力が低下するので、空気調和機100がより強く冷却することで、ショーケース110の冷却能力を補うことができる。
図7は、ショーケース110の外観図であり、
図8は、ショーケース110を
図7に示す状態の右側面から見た場合の側面図を示している。なお、
図8に示す側面図は、ショーケース110における空気の流れを示すために断面の簡略図を記載している。
【0027】
図8に示すように、ショーケース110は、冷却器111と、防露ヒーター112と、除霜ヒーター113、照明装置116、送風ファン117と、吸入ファンとを含んで構成される冷却機能付きのショーケースである。
ショーケース110においては、吐出口114から冷却された空気が噴出される。吐出口114から噴出した冷却された空気は、一種のエアーカーテン効果により、外部から比較的温度の高い空気の庫内への流入を防止するとともに、この冷却された空気が庫内を循環することで、ショーケース内は冷却され一定の温度に保たれる。
【0028】
吐出口114から噴出した空気は、下方にいけばいくほど、エアーカーテン効果が薄れるため、下部側では、外部の比較的温度の高い空気が流入しやすくなる。しかし、その比較的温度の高い空気は吸込口115から吸い込まれ、ショーケース110内のパイプを通過し、冷却器111に触れることで冷却され、吐出口114から噴出されることになる。
図9は、ショーケース110の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
図9に示すようにショーケース110は、冷却器111と、防露ヒーター112と、除霜ヒーター113と、通信部901と、記憶部902と、制御部906とを含んで構成される。
冷却器111は、
図8に示すように、冷却器111付近を通過する空気を冷却する。
防露ヒーター112は、ショーケース110において商品を陳列する上で見栄えが悪くならないように、また、結露による水滴が商品を濡らさないように、結露しやすい箇所に設けられ、制御部906により、適宜、加熱されて結露を防止する。
図8においては、一例として、吐出口114周辺の金属部品に、防露ヒーター112を備える場合を図示しているが、結露しやすい箇所であれば商品の冷却に支障を来さない範囲で、どこに設置されてもよい。防露ヒーター112は例えば、電熱線により実現される。
【0030】
除霜ヒーター113は、ショーケース110において、温度が低下しすぎて、霜が発生しないように、霜が発生しやすい箇所に設けられ、制御部906により、適宜、加熱されて、霜の発生を防止する。
図8においては、一例として、冷気が当たりやすく霜が発生しやすい吸込口115付近と、最も冷却され霜が発生しやすい冷却器111付近に除霜ヒーター113を備える場合を図示している。なお、除霜ヒーター113も防露ヒーター112と同様に、霜が発生しやすい箇所であれば、商品の冷却に支障を来さない範囲で、どこに設置されてもよい。除霜ヒーター113は例えば、電熱線により実現される。
【0031】
照明装置116は、ショーケース110の庫内を照らす機能を有する。照明装置116は、例えば、蛍光灯や、LED等により実現され、その点灯、消灯は、制御部906により制御される。ここでは、照明装置116は、複数の蛍光灯もしくはLED電球からなり、個々に点灯、消灯を制御できるものとする。
送風ファン117は、その回転により、ショーケース110の庫内を通り、冷却器111での冷却を経た冷風を吐出口114から送出する機能を有する。送風ファン117の回転は、制御部906により制御される。
【0032】
吸入ファン118は、その回転により、ショーケース110の庫内に冷却する対象となる空気を、吸込口115から吸い込む機能を有する。吸入ファン118の回転は、制御部906により制御される。
送風ファン117および吸入ファン118の働きにより、空気が庫内に吸い込まれ、冷却器111で冷却されて、商品棚に陳列する物品を冷やすための冷風が吐出口114から吹き出されるという空気の流れが形成される。
【0033】
通信部901は、ショーケース110と接続されている各機器と通信を実行する機能を有する。
記憶部902は、ショーケース110が動作上必要とするプログラムやデータを記憶する機能を有し、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、HDDなどにより実現される。
【0034】
制御部906は、プロセッサであり、ショーケース110の各部を制御する機能を有する。制御部906は、ショーケース110の庫内の温度状況や、湿度状況に応じて、冷却処理や湿度調整処理等の一般的な冷却機能付きのショーケース110が実行可能な処理の他、特に以下の処理を実行する機能を有する。
制御部906は、温度センサ130から伝達された温度、湿度センサ140から伝達された湿度について、それぞれに対して設定された閾値との比較を行って、その比較結果に応じた冷却処理、除霜処理、防露処理、照明制御処理の制御を行う機能を有する。
【0035】
まず、冷却処理の具体的内容について説明する。なお、ここでは、ショーケース110は、冷却器の冷却度合について、弱、中、強の三段階の制御ができるものとして記載するが、より細かい温度設定ができてもよい。
制御部906は、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値T1とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値H1とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値T1以上、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値H1以上を満たす場合に、制御部906はショーケース110の冷却能力の設定値を強に設定する。これは、温度が閾値T1を超え、湿度が閾値H1を超えるということは、店舗1内が高温多湿になる可能性が高いことを意味する。従って、そのような場合には、ショーケース110においては、冷却処理の能力を強め、店舗1内が高温多湿になる状態に事前に対応し、設定温度を維持することができる。
【0036】
冷却能力の制御手法については、従来から冷却機能付きのショーケースで利用されている技術を利用するものとし、ここではその詳細については説明を割愛する。
また、制御部605は、上述の条件を満たさない場合に、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値T2とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値H2とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値T2未満、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値H2未満を満たす場合に、制御部906はショーケース110の冷却能力を弱に設定する。
【0037】
そして制御部906は、トラップ部120の温度と湿度が上述の二つの閾値T1、T2、H1、H2に関する条件を満たさない場合には、ショーケース110の冷却能力を中に設定する。
次に、除霜処理の制御について説明する。
ここでは、除霜処理は、一定期間置きに実行されることとし、霜取り実行期間の間隔はt1、t2の2種が設定できるものとし、t1>t2、即ち、t1の方がt2よりも長いものとする。また、ここで、t2は、ショーケース110において、通常行う霜取りの実行期間の間隔である。
【0038】
制御部906は、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値T3とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値H3とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値T3以上、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値H3以上を満たす場合に、制御部906は除霜ヒーター113の霜取り間隔をt1に設定する。そして、それ以外の場合にはt2に設定する。これは、温度が閾値T3を超え、湿度が閾値H3を超えるということは、店舗1内が高温多湿になる状態になる可能性が高いことを意味し、従って、そのような場合には、ショーケース110においては、冷却処理の方により電力を回すことになるため、その分霜取りに回す電力を抑制する(霜取りを行わない期間を長くする)ことで、ショーケース110の省エネを図ることができる。
【0039】
また、制御部906は、設定された霜取り間隔で霜取りを開始する際には、除霜ヒーター113を稼働させることを空気調和機100に伝達する。
次に防露処理の制御について説明する。
制御部906は、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値T4とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値H4とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値T4以上、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値H4以上を満たす場合に、店舗1内が高温多湿になる可能性が高まり、結露が発生しやすくなるので、制御部906は防露ヒーター112を稼働させる。それ以外の場合には、防露ヒーター112は稼働させない。
【0040】
また、制御部906は、防露ヒーター112を稼働させる際には、防露ヒーター112を稼働させることを空気調和機100に伝達する。
最後に、ショーケース110の庫内を照らす照明の制御処理について説明する。
制御部906は、温度センサ130から伝達された温度と、予め設定されている閾値T5とを比較するとともに、湿度センサ140から伝達された湿度と、予め設定されている閾値H5とを比較する。そして、温度センサ130から伝達された温度が閾値T5以上、かつ、湿度センサ140から伝達された湿度が閾値H5以上を満たす場合に、制御部906は照明装置116の一部または全部を消灯する。それ以外の場合は、点灯させておく。これは、店舗1内が高温多湿になる可能性が高い場合には、ショーケース110の冷却能力を高める必要があり、冷却処理に電力をより多く回し、省エネを実現するための構成である。また、照明装置116も点灯しておくことによって、発熱するので、これを消灯することで、庫内温度の上昇を抑制することができる。
<動作>
ここから、空気調和システムの動作について説明する。
【0041】
まず、
図10を用いて空気調和機100の動作を説明する。
図10は、空気調和機100の冷却処理に関する動作を示すフローチャートである。
図10に示すように、空気調和機100の制御部605は、温度センサ130および湿度センサ140から逐次送信されてくる温度情報および湿度情報により、トラップ部120の空気の温度および湿度を測定する(ステップS1001)。
【0042】
制御部605は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値TA1および閾値HA1と比較する。その比較の結果、温度が閾値TA1以上、かつ、湿度が閾値HA1以上である場合には(ステップS1002のYES)、店舗1内が、より暑く湿気が強くなる可能性があるので、制御部605は、空気調和機100の冷却能力を強める(ステップS1003)。
【0043】
温度が閾値TA1以上かつ湿度が閾値HA1以上でない場合に(ステップS1002のNO)、制御部605は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値TA2と閾値HA2と比較する(ステップS1004)。その比較の結果、温度が閾値TA2未満、かつ、湿度が閾値HA2未満である場合には(ステップS1004のYES)、店舗1内の温度が低下しすぎていることになるので、制御部605は空気調和機100の冷却能力を弱める(ステップS1005)。
【0044】
次に、制御部605は、ショーケース110から除霜ヒーター113または防露ヒーター112がONされたことを示す通知を受け付けているかを検出する(ステップS1006)。
ショーケース110から除霜ヒーター113または防露ヒーター112のONの通知を受け付けた場合には(ステップS1006のYES)、制御部605は、空気調和機100の冷却能力を強める。ショーケース110から除霜ヒーター113または防露ヒーター112のONの通知を受け付けていない場合には(ステップS1006のNO)、制御部605は、その時点の稼働状態を維持する。
【0045】
制御部605は、
図10に示す処理を繰り返し実行する。これにより、制御部605は、トラップ部120の状態に応じた制御を実行し、店舗1内の状況がその後どのように変化するかを予測した制御が実行できる。即ち、本実施の形態によると、ドア10から流入する店舗1内の室内温度よりも温度が高い空気は、上昇し、店舗1内においてトラップ部120にいち早く滞留することになる。したがって、トラップ部120の温度変化や湿度変化を検出することで、店舗1内が今後どのように変化するかの推察が可能になり、起こり得る変化に事前に対応した制御が実行できる。
次に、
図11〜
図14を用いてショーケース110の動作を説明する。
【0046】
図11は、ショーケース110の冷却処理に関する動作を示すフローチャートである。
ショーケース110の制御部906は、温度センサ130および湿度センサ140から逐次送信されてくる温度情報および湿度情報により、トラップ部120の空気の温度および湿度を測定する(ステップS1101)。
制御部906は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値T1と閾値H1と比較する。その比較の結果、温度が閾値T1以上、かつ、湿度が閾値H1以上である場合には(ステップS1102のYES)、店舗1内が、より暑く湿気が強くなる可能性があり、その影響を受けてショーケース110の庫内の温度も上がる可能性があるので、制御部906は、ショーケース110の冷却能力を強に設定する(ステップS1103)。
【0047】
温度が閾値T1以上かつ湿度が閾値H1以上でない場合に(ステップS1102のNO)、制御部906は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値T2と閾値H2と比較する(ステップS1105)。その比較の結果、温度が閾値T2未満、かつ、湿度が閾値H2未満である場合には(ステップS1105のYES)、店舗1内の温度が低下しすぎていることになるので、この場合は、ショーケース110をそれほど強く冷却せずとも商品の品質の維持が可能になるので、制御部906はショーケース110の冷却能力を弱に設定する(ステップS1106)。
【0048】
温度が閾値T2未満かつ湿度が閾値H2未満でない場合に(ステップS1105のNO)、制御部906はショーケース110の冷却能力を中に設定する(ステップS1107)。
そして、ショーケース110は制御部906により設定された内容での冷却を実行する(ステップS1104)。
【0049】
制御部906は、
図11に示す処理を繰り返し実行する。これにより、ショーケース110は、トラップ部120の状態に応じた制御を実行し、店舗1内の状況がその後どのように変化するかを予測した制御が実行できる。
図12は、ショーケース110の除霜処理に関する動作を示すフローチャートである。
【0050】
ショーケース110の制御部906は、温度センサ130および湿度センサ140から逐次送信されてくる温度情報および湿度情報により、トラップ部120の空気の温度および湿度を測定する(ステップS1201)。
制御部906は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値T3と閾値H3と比較する。その比較の結果、温度が閾値T3以上、かつ、湿度が閾値H3以上である場合には(ステップS1202のYES)、店舗1内がより暑く湿気が強くなる可能性があり、その影響を受けてショーケース110の庫内の温度も上がる可能性があるので、冷却を実行する必要があるため、その冷却に電力を回すために、制御部906は、ショーケース110の除霜ヒーター113による霜取り間隔をt1に設定する(ステップS1203)。即ち、ショーケース110において除霜ヒーターをONにする間隔を長くなるように設定する。
【0051】
温度が閾値T3以上、かつ、湿度が閾値H3以上でない場合には(ステップS1202のNO)、制御部906は、霜取り間隔をt2に設定する(ステップS1204)。つまり、ショーケース110において除霜ヒーター113をONにする間隔をt1よりも短くなるように設定する。
そして、制御部906は、設定した間隔に従って、除霜ヒーター113をONして霜取りを実行する(ステップS1205)。
【0052】
除霜ヒーター113がONされた場合、即ち、制御部906が除霜ヒーター113のONを指示した場合には(ステップS1206のYES)、制御部906は、除霜ヒーター113をONにすることを空気調和機100に通知する(ステップS1207)。
制御部906は、
図12に示す処理を繰り返し実行する。これにより、ショーケース110は、トラップ部120の状態に応じた制御を実行し、店舗1内の状況がその後どのように変化するかを予測した制御が実行できるとともに、除霜処理を実行することによる冷却能力の低下を、空気調和機による冷却により補填することができる。
図13は、ショーケース110の防露処理に関する動作を示すフローチャートである。
【0053】
ショーケース110の制御部906は、温度センサ130および湿度センサ140から逐次送信されてくる温度情報および湿度情報により、トラップ部120の空気の温度および湿度を測定する(ステップS1301)。
制御部906は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値T4と閾値H4と比較する。その比較の結果、温度が閾値T4以上、かつ、湿度が閾値H4以上である場合には(ステップS1302のYES)、店舗1内がより暑く湿気が強くなる可能性があり、その影響を受けてショーケース110に結露が発生しやすくなるため、制御部906は、ショーケース110の防露ヒーター112をONにする(ステップS1303)。
【0054】
そして、制御部906は、防露ヒーター112をONにしたことを空気調和機100に通知する(ステップS1304)。
温度が閾値T4以上、かつ、湿度が閾値H4以上でない場合には(ステップS1302のNO)、制御部906は、防露ヒーター112をOFFにする(ステップS1305)。
【0055】
制御部906は、
図13に示す処理を繰り返し実行する。これにより、ショーケース110は、トラップ部120の状態に応じた制御を実行し、店舗1内の状況がその後どのように変化するかを予測した制御が実行できるとともに、防露処理を実行するによる冷却能力の低下を、空気調和機による冷却により補填することができる。
図14は、ショーケース110の照明制御処理に関する動作を示すフローチャートである。
【0056】
ショーケース110の制御部906は、温度センサ130および湿度センサ140から逐次送信されてくる温度情報および湿度情報により、トラップ部120の空気の温度および湿度を測定する(ステップS1401)。
制御部906は、測定した温度と湿度について、それぞれを、閾値T5と閾値H5と比較する。その比較の結果、温度が閾値T5以上、かつ、湿度が閾値H5以上である場合には(ステップS1402のYES)、店舗1内がより暑く湿気が強くなる可能性があり、そのためショーケース110は、冷却処理により多くの電力を消費することになるため、ショーケース110の冷却を妨げないように、制御部906は、熱負荷となる照明装置116の一部または全部を消灯する(ステップS1403)。
【0057】
温度が閾値T5以上かつ湿度が閾値H5以上でない場合には(ステップS1402のNO)、制御部906は、照明装置116のうち、点灯していないものがある場合には、それを点灯させ、点灯していないものがない、もしくは、一定以上の個数の照明が点灯している場合には、何もせずに処理を終了する。
制御部906は、
図14に示す処理を繰り返し実行する。これにより、ショーケース110は、トラップ部120の状態に応じた制御を実行し、店舗1内の状況がその後どのように変化するかを予測した制御が実行できる。照明装置116を点灯していると、電力を消費するとともに、点灯による熱が発生する。そのため冷却能力を上げる場合には、照明装置116に回している電力を抑制するとともに、消灯により発熱も抑制することができる。
<まとめ>
本発明に係る空気調和システムにおいては、建物内部において比較的温度の高い空気を集める(滞留させることのできる)トラップ部を設け、そのトラップ部に滞留した温度の高い空気を空気調和機に吸い込ませて冷却させることで、冷却効率を高めることができる。
【0058】
また、空気調和機から冷風を吹き出す送風口の位置をショーケース付近に設けることで、ショーケース付近を他よりも優先的に冷却することができる。そのため、ショーケースが陳列される商品を冷却する負荷が軽減され、ショーケースの消費電力を節減できる。したがって、ショーケースは陳列される物品を効果的に冷却することができる。
また、トラップ部に温度センサ、湿度センサを設けることで、空気調和機およびショーケースはいち早く流入する外気の状態を知ることができ、それに応じて冷却能力を高めたりすることができる。
【0059】
したがって、出入口からの人の出入りが多くなり、高温多湿の空気がより多く流入したとしても、空気調和機やショーケースの冷却能力により、ショーケース内の商品の品質は一定に保たれることになる。
<変形例>
上記実施の形態に従って、本発明に係る空気調和システムについて説明してきたが、本発明はこれに限られるものではない。以下、本発明の思想として含まれる各種変形例について説明する。
【0060】
(1)上記実施の形態においては、トラップ部120は、天井部分において一段高い天井を設けることで形成している。しかし、これは他よりも高い温度の空気が集まりやすい(滞留しやすい)構造になっていれば、その他の構造であってもよい。以下に、トラップ部として取り得る構成例について、何点か説明する。
トラップ部120は、基本的に、ドア10から流入してくる店舗1内部よりも温度の高い空気が滞留する構造になっていればよい。したがって、天井を一段高くする構造以外でもよく、
図15に示すように、ドア10から天井を伝って店舗1奥方向に流入しようとする温度の高い空気をせき止めるように、天井の途中に衝立1500を設け、その衝立1500により区切られる区域のドア10側をトラップ部120としてもよい。
【0061】
このようにした場合、衝立1500付近では、温度の高い空気がループするようになるとともに、空気調和機100が吸気口101から、その温度の高い空気を吸い込んで冷却するので、衝立1500を超えて店の奥方向に流入する温度の高い空気の流入量を減少させることができる。
図15のように、トラップ部120を形成するために、衝立1500を用いるような場合には、空気調和機100は天井裏に設置することができる。ただし、この場合にも、吸気口101はトラップ部120側、送風口105は、トラップ部120とは反対側に構成する。これにより、送風口105をトラップ部120側に設けた場合のように、せっかくトラップ部120に集めた店舗1内の温度の高い空気をかき乱し、その結果、温度の高い空気と、冷風とが混ざってしまい、吸気口101から吸入する気体は、冷風により温度が中和された空気になってしまい、店舗1内の冷却効率の低下を防止できる。
【0062】
図15に示す衝立1500は取り外しができるように構成されていてもよいし、あるいは、機械仕掛けで、伸縮自在に伸ばして、衝立になるようにしたり、格納して、空気が素通りできるようにしたりしてもよい。
また、あるいは、トラップ部120は、上記実施の形態においては、出入口側から見て左右に全面一段高くする構造にしているが、これは全面である必要はなく、単に天井が一段高くなっている構造になっていればよいので、
図16(a)に示すように、天井の一部が一段高くなる構造部分をトラップ部120としてもよい。また、この凹みの形状も立方体形状である必要はなく、三角柱や円柱状であってもよい。
【0063】
また、
図16(b)および
図17に示すように、
図1に示すトラップ部120を、吸気口部分だけ、更に凹ませるような、コの字型に形成してもよい。また、吸気口101の前部分をトラップ部120の中でも更に高くなるように構成して、より温度の高い空気が吸気口101前に集まるように構成してもよい。なお、
図17は、
図16(b)に示すトラップ部の構成を示す店舗1の平面図である。
【0064】
なお、
図16(a)および
図16(b)は、店舗1を出入口側下側から見た場合の図を示している。
このようなトラップ部120は、店舗1を建築する段階から構成することとしてもよいし、既にある店舗1の天井の一部を取り払い、取り払った箇所に側壁を設ける形で形成してもよい。
【0065】
(2)上記実施の形態1に示したように、オープン型のショーケース110の場合には、ショーケース110の庫内の冷却は、冷風が吐出口114から吹き降ろすことにより形成されるエアーカーテンによるところが大きい。そのため、そのエアーカーテンが送風口105から送出される冷風によりかき乱される場合には、冷却効果が低下する可能性があるため、好ましくない。
【0066】
そこで、送風口105からの冷風が直接ショーケース110にあたらないように、空気調和システムは、その冷風をある程度遮へいする遮へい部を設けていてもよい。
即ち、例えば、
図18に示すように、天井部分に、送風口105とショーケース110との間に衝立1801を遮へい部として設けることとしてもよい。
あるいは、
図19に示すように、ショーケース110に庇1901を設け、これを遮へい部とすることとしてもよい。
【0067】
このように、冷風が直接あたらないようにする遮へい部を設けることで、ショーケース110のエアーカーテン効果を損なう可能性を低減することができる。
なお、遮へい部を設けることができない場合などには、送風口105から送出される冷風が、なるべく、ショーケース110の吐出口114から吹き出す冷風と同方向に吹き出すように、送風口105の配置箇所および送風口105からの冷風の吹き出し方向を調整するとよい。
【0068】
(3)上記実施の形態においては、空気調和システムを備える店舗1においては、単に、天井が他の天井よりも一段高くなっている部分を設けてトラップ部120を構成したが、より吸気口101付近に、店舗1内において温度の高い空気が集まるような構成を備えてもよい。
例えば、
図20に示すように、
図3に示した空気調和システムにおいて、トラップ部120の天井を傾斜させて、店舗1内の温度の高い空気を、より吸気口101付近に集まりやすくなるように構成してもよい。なお、この傾斜させている天井は、湾曲させてもよい。
【0069】
(4)上記実施の形態においては、空気調和機100およびショーケース110は、トラップ部120の温度と湿度双方が閾値条件を満たした場合に、冷却処理や防露処理等の設定値の変更を行うこととしている。
しかし、この制御はあくまで一例であり、店舗1内が快適に保たれ、ショーケースの庫内の商品の品質を保つ方向の制御でありさえすれば、双方の閾値が条件を満たさなくともよく、店舗1の環境に応じて、温度あるいは湿度の一方の条件が満たされただけで、制御を実行することとしてもよい。
【0070】
また、あるいは、店舗1の空気調和システムのオペレーターが、温度と湿度を入力とし、顧客が店内にいて快適と感じるように、かつ、ショーケース110内の商品の品質が一定に保たれるように、冷却器の温度を設定値および送風ファンの回転数の設定値を出力する関数を、空気調和機100やショーケース110の制御部に設定して、その関数の出力値に基づく空気調和機100やショーケース110の制御を実行することとしてもよい。
【0071】
当該条件は、空気調和システムのオペレーターが適宜空気調和機100やショーケース110に設定するとよい。
また、上記実施の形態においては、空気調和機100およびショーケース110は、トラップ部120の温度と湿度によって、冷却処理等の動作を制御するとしているが、トラップ部120から得られる情報以外、即ち、ショーケース110の庫内温度、あるいは、庫内湿度、設定温度などの情報も用いて冷却処理等の動作を制御してもよいことはいうまでもない。
【0072】
(5)上記実施の形態においては、空気調和機100は吸気口101および送風口105と直接接続されるような構成を示しているが、これはその限りではない。吸気口から吸い込まれた空気が空気調和機100内部を通過し、送風口105から送出される構造にさえなっていればよく、例えば、吸気口101と空気調和機100とをダクトで接続、あるいは、空気調和機100と送風口105とをダクトで接続するというような構成をとってもよい。この場合、空気調和機100の設置個所の自由度をあげることができる。
【0073】
(6)上記実施の形態においては、トラップ部120に設けた温度センサ130および湿度センサ140からの情報に基づいて、空気調和機100やショーケース110は冷却処理等を行う例を示した。しかし、これはその限りではなく、店舗1内の温度や湿度の変化が予め推定できる要素をもった情報であれば、温度センサ130や湿度センサ140以外の情報を用いてもよい。
【0074】
例えば、出入口の開閉を検出する開閉センサを扉に設け、開閉センサが開いたことを検出するとその旨を空気調和機100やショーケース110に通知する。そして、開閉センサが出入口が開いたことを検出すると、空気調和機100は、吸気口101から吸気する量を増やしたり、ショーケース110は冷却能力を強めたりする制御を行ってもよい。
あるいは、出入口が開く都度ではなく、開閉センサが所定時間内の「開」を通知した回数に応じて制御を行うこととしてもよい。例えば開閉回数が一定数以上である場合には、温かい外気が多く流入することになるので、空気調和機100やショーケース110は、より強く冷却するように制御を行えばよい。逆に開閉回数が一定数以下である場合には、温かい外気はそれほど多く流入しないことになるので、それまでの店舗内温度に応じて冷却の度合いを維持したり弱めたりする制御を行ってもよい。
【0075】
(7)上記実施の形態において、トラップ部120が必要となるのは、主として、店舗1外が暑い季節になる。したがって、そうでない季節においては、トラップ部120を隠すように天井を設けてもよい。例えば、トラップ部120を隠して他の天井部分と同じ高さとするような蓋や、引き戸を設けてもよい。また、そのような場合であって、空気調和機100を暖房機として用いる場合には、その天井に空気穴を設けて、店舗1内の空気を暖めることとしてもよい。
【0076】
(8)上記実施の形態においては、空気調和機100の冷却処理について、温度と湿度の閾値の比較と、ショーケース110からの除霜ヒーターあるいは防露ヒーターの稼働の通知とが連動しているように記載しているが、これらは独立に処理されてもよいことはいうまでもない。
(9)上記実施の形態においては、空気調和機100やショーケース110が冷却処理の制御や防露処理の制御等を行うためのトリガとして、温度や湿度を予め定めた閾値との比較結果をトリガとしていた。しかし、これはその限りではない。
【0077】
例えば、トラップ部120に滞留する空気の、単位時間当たりの温度上昇(下降)率、あるいは単位時間当たりの湿度上昇(下降)率の度合いに応じた制御を行うこととしてもよい。
もしくは、もう少し単純化して、最新の温度と湿度とを、その一つ前で測定した温度と湿度とで比較し、その差分(上昇幅)が予め定めた閾値を超えたか否かに応じた制御を行うこととしてもよい。
【0078】
(10)上記実施の形態においては、ショーケース110の照明制御処理について、そのON/OFFで説明したが、消灯は減灯であってもよい。即ち、照明装置116に回す電力を抑制できるのであれば、照明の照度を低減させる(照明の明るさを暗くする)処理であってもよい。
(11)上記実施の形態においては、1つの部屋を有する1店舗に空気調和システムを構成する例を示したが、これはその限りではない。複数の部屋から構成される建物の各部屋に構成することとしてもよいし、一部の部屋にのみ構成することとしてもよい。
【0079】
(12)上記実施の形態においては、ショーケース110から除霜ヒーター113あるいは防露ヒーター112ONの通知を受けて、空気調和機100が冷却能力を高めることを記載しているが、空気調和システムでは、更に、ショーケース110が除霜ヒーター113あるいは防露ヒーター112OFFを通知し、空気調和機100が当該通知に対応して、冷却能力を元に戻す(弱める)構成も備えていても良いことは言うまでもない。
【0080】
(13)上記実施の形態においては、空気調和機100において、送風口105付近に送風ファン104を設ける構成を示した。この送風ファン104は、上述の通り、空気調和機100内の空気の流れを作るためのものであり、配置箇所は、送風口105付近とは限らない。例えば、送風ファン104に換えて、吸気口101付近に、吸気ファンを設けてこれを回転させることで、吸気口101から空気を吸い込み、送風口105から冷風を送り出す流れを形成してもよい。また、送風ファンと吸気ファンの双方を設ける構成にしてもよいし、ファンをフィルタの後段、冷却器の前段の位置に設けることとしてもよい。
【0081】
(14)上記実施の形態においては、空気調和機100とショーケース110はそれぞれの制御部が各機器の制御を行うこととしているが、上記実施の形態で示した各機器の動作(
図10〜
図14参照)を制御でき、空気調和機100及びショーケース110と通信可能な管理サーバを空気調和システムに設け、当該管理サーバが空気調和機100およびショーケース110を制御するように構成してもよい。
【0082】
(15)上記実施の形態においては、冷却システムは空気調和機100を含むこととしているが、空気調和機100は必ずしも必要ではない。冷却システムは、建物内に流入する暖かい外気(建物内で比較的温度の高い空気)を効率よく収集(滞留)させることのできるトラップ部120と、トラップ部120の空気の温度を検出し、逐次、ショーケース110に検出した温度を伝達する温度センサ130、及び/または、トラップ部120の空気の湿度を検出し、逐次、ショーケース110に検出した湿度を伝達する湿度センサ140と、ショーケース110があればよい。
【0083】
(16)上述の実施形態で示した空調処理に係る動作、ショーケースの冷却処理等(
図10〜14参照)を空気調和機やショーケース等のプロセッサ、及びそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるためのプログラムコードからなる制御プログラムを、記録媒体に記録すること、又は各種通信路等を介して流通させ頒布させることもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM等がある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出され得るメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより、実施形態で示したような各種機能が実現されるようになる。
【0084】
(17)上記実施の形態に示した空気調和機100やショーケース110の各機能部は、その機能を実行する回路として実現されてもよいし、1または複数のプロセッサによりプログラムを実行することで実現されてもよい。また、上記実施の形態の蓄電池パックは、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)その他の集積回路のパッケージとして構成されるものとしてもよい。このパッケージは各種装置に組み込まれて利用に供され、これにより各種装置は、各実施形態で示したような各機能を実現するようになる。
【0085】
なお、各機能ブロックは典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0086】
(18)上記実施の形態および変形例に示す各種変形例を組み合わせることとしてもよい。
<補足>
本発明の一実施形態に係る冷却システムおよびその効果について説明する。
【0087】
(A)本発明の一実施形態に係る冷却システムは、建物を構成する部屋の天井面の一部分に、前記部屋内の温度の高い空気が滞留するように形成したトラップ部と、前記トラップ部に滞留している空気に関する情報を取得するセンサと、前記部屋内に設置される冷却装置付きのショーケースと、を備え、前記ショーケースは、前記センサが取得する情報を用いて、庫内の冷却に関する動作を制御することを特徴とする。
【0088】
ここで、部屋内の温度の高い空気とは、部屋内において、空気の温度が一様でない場合においてその中でも比較的温度が高い空気のことであり、トラップ部が天井面の一部分に設けられることにより自然と滞留することになる空気のことである。例えば、部屋内で冷房を効かせているときに、出入口から外の暖かい外気が流入する場合などに、その外気が、元の部屋内の空気よりも滞留しやすくなる。
【0089】
これにより、店舗内に流入する高温の外気は、店舗内に拡散する前にトラップ部に滞留する。従って、ショーケースは、トラップ部に滞留する空気に関する情報を取得することで、店舗内に流入する高温の外気に対して、ショーケースの周囲の温度が上昇する前に、対応することができる。
(B)上記(A)に記載の冷却システムにおいて、前記部屋は壁面を有し、当該壁面には、出入口が設けられ、前記トラップ部は、前記出入口付近であって、前記出入口の上方に設けられ、前記トラップ部には、前記出入口から前記部屋内に流入した前記部屋内にあった空気よりも温度の高い空気を滞留することとしてもよい。
【0090】
これにより、トラップ部を出入口付近上方に形成することで、出入口から流入する温度の高い空気を効果的に滞留させることができる。
(C)上記(A)または(B)に記載の冷却システムにおいて前記トラップ部は、前記天井面の一部を窪ませて形成されることとしてもよい。
この構成により、天井の一部を窪ませているので、天井全体で見た場合に、一段高い天井があることになる。従って、店舗内の空気との温度差により上昇する温度が高い空気を効果的に滞留させることができる。
【0091】
(D)上記(B)に記載の冷却システムにおいて、前記トラップ部は、前記出入口から流入し、前記天井を伝って前記部屋の奥方向に流入する空気をせき止める衝立を、建物の天井面に設けて形成されることとしてもよい。
この構成により、天井に衝立を設けているので、出入口から流入する空気をせき止めることができる。温度の高い空気は、この衝立で一旦せき止められ、一部は下降してしまうが、温度が周囲よりも高いために再度上昇し、トラップ部でループする形で、トラップ部に留まることになる。その結果、トラップ部に温度が高い空気を効果的に滞留させることができる。
【0092】
(E)上記(A)〜(D)の何れかに記載の冷却システムにおいて、前記センサは、前記トラップ部に滞留している空気の温度、及び/又は、湿度を測定し、前記ショーケースは、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度を用いて、庫内の冷却に関する動作を制御することとしてもよい。
これにより、トラップ部に滞留する空気の温度又は湿度に応じて、ショーケース周囲の温度及び/又は湿度が上昇する前にショーケースの庫内の冷却に関する動作を制御することができる。
【0093】
(F)上記(E)に記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、さらに、前記ショーケースで発生する結露を防ぐ防露装置を備え、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度が所定値以上の場合、前記防露装置の防露能力を増大させることとしてもよい。
この構成により、ショーケースの周囲の温度又は湿度が上昇による、ショーケースでの結露の発生を低減することができる。
【0094】
(G)上記(E)または(F)に記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度が所定値以上の場合、前記冷却装置の冷却能力を増大させることとしてもよい。
この構成により、ショーケースの周囲の温度又は湿度が上昇する前に冷却装置の冷却能力を増大させ、庫内に陳列されている商品の温度上昇を低減することができる。
【0095】
(H)上記(E)〜(G)の何れかに記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、さらに、ショーケース内部の除霜を行う除霜装置を備え、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度が所定値以上の場合、通常時よりも長い除霜間隔で前記除霜装置を動作させることとしてもよい。
この構成により、消費電力の大きい霜取り動作を行う間隔が長くなるので、ショーケースの消費電力が節減される。
【0096】
(I)上記(E)〜(H)の何れかに記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、さらに、庫内を照らす照明装置を備え、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度が所定値以上の場合、前記照明装置を減灯させることとしてもよい。
照明装置を減灯させることでショーケースの消費電力が節減される。さらに、照明装置の発熱量が低減するため、庫内の商品を冷却するための負荷が軽減される。
【0097】
(J)上記(E)に記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、さらに、前記ショーケースで発生する結露を防ぐ防露装置を備え、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度の上昇幅が所定値以上の場合、前記防露装置の防露能力を増大させることとしてもよい。
この構成により、ショーケースの周囲の温度又は湿度が上昇による、ショーケースでの結露の発生を低減することができる。
【0098】
(K)上記(E)または(J)に記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度の上昇幅が所定値以上の場合、前記冷却装置の冷却能力を増大させることとしてもよい。
この構成により、ショーケースの周囲の温度又は湿度が上昇する前に冷却装置の冷却能力を増大させ、庫内に陳列されている商品の温度上昇を低減することができる。
【0099】
(L)上記(E)、(J)または(K)に記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、さらに、ショーケース内部の除霜を行う除霜装置を備え、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度の上昇幅が所定値以上の場合、通常時よりも長い除霜間隔で前記除霜装置を動作させることとしてもよい。
この構成により、消費電力の大きい霜取り動作を行う間隔が長くなるので、ショーケースの消費電力が節減される。
【0100】
(M)上記(E)、(J)〜(L)の何れかに記載の冷却システムにおいて、前記ショーケースは、さらに、庫内を照らす照明装置を備え、前記センサが測定した温度、及び/又は、湿度の上昇幅が所定値以上の場合、前記照明装置を減灯させることとしてもよい。
照明装置を減灯させることでショーケースの消費電力が節減される。さらに、照明装置の発熱量が低減するため、庫内の商品を冷却するための負荷が軽減される。
【0101】
(N)本発明に係る建築物は、部屋と、前記部屋の天井面の一部分に、前記部屋内の温度の高い空気が滞留するように形成したトラップ部と、前記トラップ部に滞留している空気に関する情報を取得するセンサと、前記部屋内に設置される冷却装置付きのショーケースと、を備え、前記ショーケースは、前記センサが取得する情報を用いて冷却に関する動作を制御することとしてもよい。
【0102】
また、前記建築物において、前記部屋は壁面を有し、当該壁面には、出入口が設けられ、前記トラップ部は、前記出入口付近であって、前記出入口の上方に設けられ、前記トラップ部には、前記出入口から前記部屋内に流入した前記部屋内にあった空気よりも温度の高い空気を滞留することとしてもよい。
また、前記建築物において、前記トラップ部は、前記天井面の一部を凹ませて形成されることとしてもよい。
【0103】
また、前記建築物において、前記トラップ部は、前記出入口から前記天井を伝って前記部屋の奥方向に流入する空気をせき止める衝立を、建物の天井面に設けて形成されることとしてもよい。
これらの構成によれば、店舗内に流入する高温の外気は、店舗内に拡散する前にトラップ部に滞留する。従って、ショーケースは、トラップ部に滞留する空気に関する情報を取得することで、店舗内に流入する高温の外気に対して、ショーケースの周囲の温度が上昇する前に、対応することができる。