特許第6228027号(P6228027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228027
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】スクロール膨張機
(51)【国際特許分類】
   F01C 20/26 20060101AFI20171030BHJP
   F01C 1/02 20060101ALI20171030BHJP
   F01C 20/10 20060101ALI20171030BHJP
   F01C 20/28 20060101ALI20171030BHJP
   F01C 21/10 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F01C20/26
   F01C1/02 B
   F01C20/10
   F01C20/28
   F01C21/10
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-24454(P2014-24454)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-151892(P2015-151892A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄太
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−189930(JP,A)
【文献】 特開2010−236360(JP,A)
【文献】 特開2005−30386(JP,A)
【文献】 特許第4689498(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 1/02,20/10,20/26,20/28,21/10
F02B 53/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールと可動スクロールと間に形成される膨張室で作動流体が膨張することによって前記可動スクロールが駆動されるスクロール膨張機であって、
高圧の作動流体が流入すると共に流入した作動流体を前記膨張室に導く吸入ポートと、
前記膨張室で膨張して低圧となった作動流体が流出する吐出ポートと、
前記膨張室を迂回して前記吸入ポートと前記吐出ポートとを連通させるバイパス路と、
前記バイパス路を開閉するバイパス弁と、を有し、
前記吸入ポート、前記バイパス路、及び前記バイパス弁を取り付けるためのバイパス弁取付部が、前記固定スクロールの基板に形成されている、スクロール膨張機。
【請求項2】
前記吐出ポートは、前記固定スクロールが取り付けられると共に前記可動スクロールを収容するハウジングの周壁に形成されている、請求項1に記載のスクロール膨張機。
【請求項3】
前記固定スクロールの基板には、前記吸入ポートに流入した作動流体の状態を検出する状態検出センサを取り付けるためのセンサ取付部がさらに形成されている、請求項1又は2に記載のスクロール膨張機。
【請求項4】
前記吸入ポート及び前記バイパス路は、前記固定スクロールの基板のスクロール壁が形成されたスクロール形成面とは反対側のスクロール非形成面に沿って延びた後に屈曲して前記固定スクロールの基板を貫通して前記スクロール形成面に至るように形成され、
前記バイパス弁取付部は、前記固定スクロールの基板の前記スクロール非形成面に沿って延びて前記バイパス路に連通すると共に前記バイパス弁が挿入される穴部として形成されている、請求項1〜3に記載のスクロール膨張機。
【請求項5】
前記固定スクロールの基板の前記スクロール非形成面において、前記バイパス路は前記吸入ポートに交差すると共にその一端が外部に開口して形成され、
前記バイパス路の外部開口端は、前記吸入ポートから流入した作動流体の状態を検出する状態検出センサによって閉塞されている、請求項4に記載のスクロール膨張機。
【請求項6】
前記吸入ポートは、一端が前記固定スクロールの基板の前記スクロール非形成面の周縁部近傍にて外部に開口すると共に、他端が前記固定スクロールの基板の前記スクロール形成面の中央部に開口し、
前記バイパス路は、一端が前記固定スクロールの前記スクロール非形成面の中央部近傍にて外部に開口すると共に、他端が前記固定スクロールの基板の前記スクロール形成面の前記スクロール壁の外側に開口し、
前記バイパス弁取付部は、前記固定スクロールの基板の前記スクロール非形成面の周縁部近傍にて開口している、請求項5に記載のスクロール膨張機。
【請求項7】
前記固定スクロールの基板の前記スクロール非形成面において、前記吸入ポートと前記バイパス弁取付部とは平行に形成されている、請求項6に記載のスクロール膨張機。
【請求項8】
前記スクロール膨張機を回転軸の軸心方向から見たときに、前記吸入ポートの外部開口端、前記バイパス弁取付部の開口端、及び前記吐出ポートの外部開口端が、前記スクロール膨張機の同じ一方側に配置されている、請求項6又は7に記載のスクロール膨張機。
【請求項9】
前記固定スクロールの基板の前記スクロール非形成面において、前記吸入ポート、前記バイパス路、及び前記バイパス弁取付部が形成されていない領域には少なくとも一つのリブ及び厚肉部の少なくとも一方が形成されている、請求項4〜8のいずれか一つに記載のスクロール膨張機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール膨張機に関し、特にランキンサイクルに組み込まれて好適なスクロール膨張機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクロール膨張機として、特許文献1に記載されたスクロール膨張機が知られている。この特許文献1に記載のスクロール膨張機は、高圧の作動流体(冷媒)が流入する高圧部、この高圧部からの作動流体の膨張によって駆動される駆動部、この駆動部で膨張して低圧となった作動流体を外部に流出させる低圧部、前記駆動部を迂回して前記高圧部と前記低圧部とを連通させる連通路(バイパス路)、及び、前記連通路を開閉する弁機構(バイパス弁)を一体的に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4689498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来のスクロール膨張機においては、固定スクロールの基板の背面側に当該固定スクロールとは別にハウジングが設けられ、このハウジングと前記固定スクロールの基板との間に前記高圧部が形成されている。また、前記弁機構は、前記ハウジングに取り付けられている。このため、前記従来のスクロール膨張機では、その軸方向の長さが増大してしまうという課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、連通路(バイパス路)及びこれを開閉する弁機構(バイパス弁)を一体的に備えつつ、その軸方向の長さの増大を抑制することのできるスクロール膨張機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、固定スクロールと可動スクロールとの間に形成される膨張室で作動流体が膨張することによって前記可動スクロールが駆動されるスクロール膨張機は、高圧の作動流体が流入すると共に流入した作動流体を前記膨張室に導く吸入ポートと、前記膨張室で膨張して低圧となった作動流体が流出する吐出ポートと、前記膨張室を迂回して前記吸入ポートと前記吐出ポートとを連通させるバイパス路と、前記バイパス路を開閉するバイパス弁と、を有する。そして、前記吸入ポート、前記バイパス路、及び前記バイパス弁を取り付けるためのバイパス弁取付部が、前記固定スクロールの基板に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
前記スクロール膨張機によれば、前記吸入ポート、前記バイパス路、及び前記バイパス弁取付部が前記固定スクロールの基板に形成されているので、これらを設けるために前記固定スクロールの基板の背面側にハウジングなどの別部材を設ける必要がなく、その軸方向の長さの増大を抑制してスクロール膨張機全体の小型化、軸方向の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態によるスクロール膨張機が適用された車両用廃熱回収装置の概略構成を示す図である。
図2】前記スクロール膨張機の分解斜視図である。
図3】前記スクロール膨張機を固定スクロール側から見た斜視図である。
図4図3のA視図である。
図5】前記スクロール膨張機の固定スクロールを基板のスクロール非形成面側から見た図である。
図6】前記固定スクロールを基板のスクロール形成面側から見た斜視図である。
図7】前記固定スクロールに形成された吸入ポート、バイパス路、及びバイパス弁取付部の概略形状を示す断面図である。
図8図7のX−X断面図である。
図9】前記スクロール膨張機の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるスクロール膨張機が適用された車両用廃熱回収装置1の概略構成を示している。この車両用廃熱回収装置1は、車両に搭載されて、当該車両のエンジン10の廃熱(排熱を含む)を回収して利用する装置である。
【0010】
車両用廃熱回収装置1は、ランキンサイクル2と、伝達機構3と、制御ユニット4とを含む。また、エンジン10は、水冷式エンジンであり、冷却水流路(循環路)11を循環するエンジン冷却水によって冷却される。冷却水流路11には、後述するランキンサイクル2の構成要素である加熱器22が配置されており、エンジン10から熱を吸収した(高温の)エンジン冷却水が加熱器22内を流通するようになっている。
【0011】
ランキンサイクル2は、前記エンジン冷却水からエンジン10の廃熱を回収して動力(駆動力)に変換して出力する装置である。ランキンサイクル2は、作動流体としての冷媒が循環する冷媒循環路21を有しており、この冷媒循環路21には、加熱器22、膨張機23、凝縮器24、及びポンプ25が、前記冷媒の循環方向に沿って、この順に配設されている。
【0012】
加熱器22は、エンジン10から熱を吸収した(高温の)前記エンジン冷却水とランキンサイクル2の前記冷媒との間で熱交換を行わせ、これにより、当該冷媒を加熱して高圧の過熱蒸気とするための熱交換器である。なお、ここでの図示は省略するが、前記エンジン冷却水に代えて、エンジン10の排気が加熱器22内を流通するようにして、エンジン10の排気と前記冷媒との間で熱交換を行わせるように加熱器22を構成してもよい。
【0013】
膨張機23は、スクロール膨張機であり、加熱器22で加熱されて高圧の過熱蒸気となった冷媒(以下単に「蒸気冷媒」という)を膨張させて駆動力を発生する。詳細は後述するが、膨張機23は、固定スクロールと可動スクロールを有し、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの間に形成される膨張室で前記蒸気冷媒が膨張することよって前記可動スクロールが駆動されるように構成されている。駆動された前記可動スクロールは旋回運動を行い、この可動スクロールの旋回運動が出力軸の回転運動に変換されて駆動力として出力される。
【0014】
凝縮器24は、膨張機23から流出した冷媒、すなわち、膨張機23を通過して低圧となった冷媒と外気との間で熱交換を行わせ、これにより、当該冷媒を冷却して凝縮(液化)させる熱交換器である。ここで、図には示されていないが、凝縮器24に向かって外気を送風するファンが設けられてもよい。
【0015】
ポンプ25は、機械式のポンプであり、その作動によって凝縮器24で液化された冷媒を加熱器22へと圧送する。そして、ポンプ25が作動することで、前記冷媒がランキンサイクル2の各要素、すなわち、加熱器22、膨張機23、及び凝縮器24を循環することになる。
【0016】
ここで、本実施形態においては、膨張機(スクロール膨張機)23とポンプ(機械式ポンプ)25とが回転軸26aによって一体的に連結されてポンプ一体型膨張機26として構成されている。すなわち、ポンプ一体型膨張機26の回転軸26aは、膨張機23の出力軸としての機能及びポンプ25の駆動軸としての機能を有している。また、本実施形態において、膨張機23は、前記膨張室を迂回して前記冷媒を循環させるためのバイパス路27と、バイパス路27を開閉するバイパス弁28とを一体的に備えている(詳細は後述する)。バイパス弁28の作動、すなわち、バイパス路27の開閉は、制御ユニット4によって制御される。
【0017】
伝達機構3は、エンジン10とランキンサイクル2との間で動力を伝達する。具体的には、伝達機構3は、エンジン10の出力トルクをポンプ一体型膨張機26(ポンプ25)に伝達すると共に、ランキンサイクル2の出力であるポンプ一体型膨張機26のトルク(軸トルク)をエンジン10に伝達する。伝達機構3は、ポンプ一体型膨張機26の回転軸26aの端部に電磁クラッチ31を介して取り付けられたプーリ32と、エンジン10のクランクシャフト12に取り付けられたクランクプーリ33と、プーリ32及びクランクプーリ33に巻回されたベルト34と、を有する。そして、電磁クラッチ31がON(締結)されると、エンジン10とランキンサイクル2(ポンプ一体型膨張機26)との間で動力の伝達が行われ、電磁クラッチ31がOFF(解放)されると、エンジン10とランキンサイクル2(ポンプ一体膨張機26)との間の動力の伝達が遮断される。伝達機構3の作動、すなわち、電磁クラッチ31のON(締結)/OFF(解放)は、制御ユニット4によって制御される。
【0018】
制御ユニット4は、バイパス弁28の作動及び電磁クラッチ31のON/OFFを制御し、これにより、ランキンサイクル2の作動を制御する。例えば、制御ユニット4は、ランキンサイクル2を起動させる場合には、まずバイパス弁28を開くと共に電磁クラッチ31をON(締結)してエンジン10によってポンプ25を駆動する。これにより、ランキンサイクル2では前記冷媒が膨張機23の前記膨張室を迂回して循環する。そして、制御ユニット4は、例えば膨張機23前後の圧力差が所定値以上となると、バイパス弁28を閉じる。これにより、ランキンサイクル2では、前記冷媒が膨張機23の前記膨張室を経由して循環することとなって、膨張機23が駆動力を発生し始める。その後、膨張機23が十分な駆動力を発生するようになると、膨張機23で発生した駆動力の一部がポンプ25を駆動し、その余の駆動力が伝達機構3を介してエンジン10に伝達されてエンジン10の出力(駆動力)をアシストする。また、制御ユニット4は、ランキンサイクル2を停止させる場合には、電磁クラッチ31をOFF(解放)し、ポンプ25を停止(すなわち、前記冷媒の循環を停止)させる。
【0019】
次に、本実施形態における膨張機(スクロール膨張機)23、すなわち、ポンプ一体型膨張機26の膨張機部分について説明する。なお、ポンプ25(ポンプ一体型膨張機26のポンプ部分)についての説明は省略するが、ポンプ25には、回転軸26aによって膨張機23と連結可能な公知の機械式ポンプ(ギヤポンプやベーンポンプなど)を採用することができる。
【0020】
図2は、膨張機23の分解斜視図である。
図2に示すように、膨張機23は、固定スクロール51と、可動スクロール(図示省略)を収容したハウジング52とを含む。
固定スクロール51は、円盤状の基板511と、基板511の一端面に形成されたスクロール壁512とを有する。ハウジング52は、前記可動スクロールを収容する円筒部521と、円筒部521の一端側に形成されたフランジ部522とを有する。なお、前記可動スクロールも、固定スクロール51と同様、基板と、この基板の一端面に形成されたスクロール壁とを有している。
【0021】
そして、前記可動スクロールを円筒部521に収容したハウジング52のフランジ部522に対して、固定スクロール51を例えばボルト53によって締結固定することで膨張機23が構成される。ここで、膨張機23においては、固定スクロール51のスクロール壁512と前記可動スクロールのスクロール壁とは互いに噛み合わせられており、両スクロールのスクロール壁の間に前記膨張室が形成される。
また、図には示されていないが、ハウジング52の円筒部522に収容された前記可動スクロールは、ボールカップリングなどの自転阻止機構によってその自転が阻止されていると共に、偏心軸受や従動クランク機構などを介して膨張機23の出力軸(すなわち、ポンプ一体型膨張機26の回転軸26a)に連結されるように構成されている。
【0022】
上述のように、膨張機23においては、固定スクロール51(のスクロール壁512)と前記可動スクロール(のスクロール壁)との間に膨張室が形成され、この膨張室で前記蒸気冷媒(すなわち、高圧の冷媒)が膨張することによって前記可動スクロールが駆動される。駆動された前記可動スクロールは旋回運動を行い、この前記可動スクロールの旋回運動が前記偏心軸受や前記従動クランク機構などにより回転軸26aの回転運動に変換される。また、前記膨張室は、中央部から周辺部へと容積を増加させながら移動し、前記膨張室で膨張して低圧となった(周辺部に移動した)冷媒が膨張機23から流出するようになっている。
【0023】
図3は、膨張機23を固定スクロール51側から見た斜視図であり、図4は、図3のA視図である。図3に示すように、本実施形態では、高圧の冷媒(前記蒸気冷媒を含む)が流入すると共に流入した冷媒を前記膨張室に導く吸入ポート513、上述のバイパス路27、及び上述のバイパス弁28が、固定スクロール51に一体的に設けられている。より具体的には、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁取付部514が、固定スクロール51の基板511に形成されており、バイパス弁取付部514にバイパス弁28が取り付けられている。なお、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイバス弁取付部514の構成については後述する。
【0024】
また、図3図4に示すように、本実施形態において、前記膨張室で膨張して低圧となった冷媒(周辺部に移動した冷媒)が流出する吐出ポート523は、ハウジング52に設けられている。より具体的には、吐出ポート523は、ハウジング52の円筒部521の周壁に突出形成され、外部に開口する外部開口端523aと、円筒部521の内周面に開口する内部開口端523bとを有している。そして、吐出ポート523の外部開口端523aには、一端が凝縮器24に接続された冷媒配管の他端が接続され、これにより、吐出ポート523から流出した低圧の冷媒が凝縮器24へと導かれるようになっている。
【0025】
次に、図5図8を参照して固定スクロール51の基板511に形成された吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁取付部514の構成について説明する。
図5は、固定スクロール51を基板511の前記スクロール非形成面側から見た図であり、図6は、固定スクロール51を基板511の前記スクロール形成面側から見た斜視図である。また、図7図8は、吸入ポート513及びバイパス路27、及びバイパス弁取付部514の概略形状を示す断面図である。以下の説明において、固定スクロール51の基板511のスクロール壁512が形成された面を「スクロール形成面」といい、その反対側の面を「スクロール非形成面」という。
【0026】
吸入ポート513は、一端が基板511の前記スクロール非形成面の周縁部近傍にて基板511の径方向外方に向かって(すなわち、外部に)開口すると共に、他端が基板511の前記スクロール形成面の中央部(スクロール壁512の中心部)に開口している。具体的には、吸入ポート513は、基板511の前記スクロール非形成面の周縁部近傍に位置する外部開口端513aから前記スクロール非形成面に沿って基板511の中央部近傍まで延びた後に屈曲し、基板511を貫通して基板511の前記スクロール形成面の中央部に位置する内部開口端513bに至るように形成される。そして、吸入ポート513の外部開口端513aには、一端が加熱器22に接続された冷媒配管の他端が接続され、これにより、加熱器22からの高圧の冷媒が前記膨張室へと導かれる。なお、吸入ポート513のポート壁、具体的には、吸入ポート513の前記スクロール非形成面に沿って延びる部分のポート壁は、前記スクロール非形成面から隆起している。
【0027】
ここで、本実施形態においては、膨張機23をその回転軸(出力軸)26aの軸心方向から見たときに、吸入ポート513の外部開口端513aと吐出ポート523の外部開口端523aとは膨張機23の同じ一方側に配置されている。例えば、膨張機23を固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面側から見たときには、吸入ポート513の外部開口端513aと吐出ポート523の外部開口端523aは、いずれも膨張機23の左側に配置されている(図3参照)。このため、膨張機23への冷媒配管の接続作業を一方側から行うことができ、当該接続作業が比較的容易になっている。
【0028】
バイパス路27は、前記膨張室を迂回して吸入ポート513とハウジング52の吐出ポート523とを直接的に連通させる連通路として形成されている。本実施形態において、バイパス路27は、一端が基板511の前記スクロール非形成面の中央部近傍にて基板511の径方向外方に向かって(すなわち、外部に)開口すると共に、他端が基板511の前記スクロール形成面のスクロール壁512の外側で開口している。具体的には、バイパス路27は、基板511の前記スクロール非形成面の中央部近傍に位置する外部開口端27aから前記スクロール非形成面に沿って吸入ポート513と交差するように基板511の周縁部近傍まで延びた後に屈曲し、基板511を貫通して基板511の前記スクロール形成面のスクロール壁512の外側に位置する内部開口端27bに至るように形成されている。
【0029】
そして、バイパス路27の外部開口端27aは、吸入ポート513に流入した前記冷媒の状態を検出する状態検出センサ515が図5中の矢印B方向に装着されて閉塞されている。つまり、バイパス路27の外部開口端27aは、状態検出センサ515を取り付けるためのセンサ取付部としての機能を有しており、固定スクロール51には、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁28に加えて、状態検出センサ515も一体的に設けられることになる。
【0030】
状態検出センサ515は、吸入ポート513とバイパス路27との交差部にて吸入ポート513に流入した冷媒の状態を検出するように構成される。状態検出センサ515は、例えば、膨張機23入口部の冷媒圧力P及び冷媒温度Tを検出する圧力/温度センサ(PTセンサ)とすることができる。ここで、本実施形態において、バイパス路27の外部開口端27aは、基板511の前記スクロール非形成面の中央部近傍に位置しており、そこに装着される状態検出センサ515が、基板511の範囲内に収まるように、すなわち、基板511の外縁部よりも外側に突出しないようになっている(図3参照)。
なお、吸入ポート513と同様に、バイパス路27の管壁、具体的には、バイパス路27の前記スクロール非形成面に沿って延びる部分の管壁は、前記スクロール非形成面から隆起している。
【0031】
バイパス弁取付部514は、バイパス弁28が挿入される穴部として形成されている。具体的には、バイパス弁取付部514は、基板511の前記スクロール非形成面の周縁部近傍にて基板511の側方(外方)に向かって開口する開口端514aを有し、この開口端514aから前記スクロール非形成面に沿って延びてバイパス路27に連通するように形成されている。ここで、本実施形態では、基板511の前記スクロール非形成面において、バイパス弁取付部514は吸入ポート513と平行に形成され、吸入ポート513の外部開口端513aとバイパス弁取付部514の開口端514aとは同じ方向を向いている。つまり、本実施形態においては、膨張機23をその回転軸(出力軸)26aの軸心方向から見たときに、吸入ポート513の外部開口端513a及び吐出ポート523の外部開口端523aに加えて、バイパス弁取付部514の開口端514aも膨張機23の同じ一方側(例えば図2においては左側)に配置されている。
なお、吸入ポート513やバイパス路27と同様に、バイパス弁取付部514の周壁は、基板511の前記スクロール非形成面から隆起している。
【0032】
バイパス弁28は、先端部281と、本体部282とを有しており、先端部281がバイパス弁取付部514の開口端514aに図5中の矢印C方向に挿入された状態でバイパス弁取付部514に取り付けられる。ここで、バイパス弁取付部514の開口端514aが基板511の周縁部近傍に位置しているので、バイパス弁取付部514から露出するバイパス弁28の本体部282は、固定スクロール51の基板511の側方(外方)に配置される。
【0033】
先端部281は、バイパス路27の途中に位置するように構成されている。先端部281の先端には開口部281aが形成され、また、先端部281には、開口部281aに連通すると共にバイパス路27の一部を構成する流路281bが形成されている(図7図8参照)。また、図では省略しているが、本体部282には、先端部281の先端に形成された開口部281aに向かって進退可能な弁体と、この弁体を駆動する弁駆動部(アクチュエータ)とが内蔵されている。
【0034】
そして、バイパス弁28は、制御ユニット4からの指令に応じて前記弁駆動部が前記弁体を進出させて当該弁体が流路281bを閉塞することによってバイパス路27を閉じ、前記弁駆動部が前記弁体を後退させて流路281bを開放することによってバイパス路27を開く。バイパス路27が閉じられた状態では、図7図8に実線で示すように、吸入ポート513に流入した冷媒は、吸入ポート513を通過し、吸入ポート513の内部開口端513bを介して前記膨張室へと導かれることになる。一方、バイパス路27が開かれた状態では、図7図8に破線で示すように、吸入ポート513に流入した冷媒は、バイパス路27を通過して(すなわち、前記膨張室を迂回して)、バイパス路27の内部開口端27bを介して低圧側の吐出ポート523へと導かれることになる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態による膨張機(スクロール膨張機)23では、高圧の冷媒(作動流体)が流入すると共に流入した冷媒を前記膨張室に導く吸入ポート513、前記膨張室を迂回して吸入ポート513と吐出ポート523とを連通させるバイパス路27、及びバイパス路27を開閉するバイパス弁28が、固定スクロール51に一定的に設けられている。具体的には、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁28を取り付けるためのバイパス弁取付部514が、固定スクロール51の基板511に形成されている。これにより、これらを膨張機に一体的に設けるために固定スクロール51の基板511の背面側にハウジング等の別部材を設ける必要がなく、従来のスクロール膨張機に比べて、その軸方向の長さを小さくすることができる。
【0036】
また、吸入ポート513及びバイパス路27は、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面に沿って延びた後に屈曲して固定スクロール51の基板511を貫通して前記スクロール形成面に至るように形成され、バイパス弁取付部514は、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面に沿って延びてバイパス路27に連通すると共にバイパス弁28が挿入される穴部として形成されている。これにより、固定スクロール51の基板511に、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁取付部514を形成したことに伴う膨張機23の軸方向の長さの増大を抑制できる。
【0037】
ここで、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面において、バイパス路27は、吸入ポート513に交差すると共にその一端が外部に開口して形成され、当該バイパス路27の外部開口端27aは状態検出センサ515によって閉塞されている。これにより、前記一端を閉塞端とする場合に比べて、固定スクロール51の基板511にバイパス路27を比較的容易に形成することができる。また、同時に固定スクロール51の基板511に状態検出センサ515を取り付けるためのセンサ取付部が形成されることにもなり、便宜である。
【0038】
本実施形態において、吸入ポート513は、一端が固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面の周縁部近傍にて外部に開口すると共に、他端が固定スクロール51の基板511の前記スクロール形成面の中央部に開口している。また、バイパス路27は、一端が固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面の中央部近傍にて外部に開口すると共に、他端が固定スクロール51の基板511の前記スクロール形成面のスクロール壁512の外側に開口している。さらに、穴部として形成されたバイパス弁取付部514は、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面の周縁部近傍に開口している。そして、固定スクロール51の基板の511の前記スクロール非形成面において、吸入ポート513とバイパス弁取付部514とが平行に形成されている。
【0039】
このような構成により、固定スクロール51の基板511に、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁取付部514を効率的に配置でき、また、これらを一体的に備えた固定スクロール51を比較的容易に形成することが可能となる。さらに、バイパス弁28の弁駆動部を内蔵する本体部282を、固定スクロール51の基板511の側方(外方)に配置できるので、バイパス弁28を固定スクロール51の基板511に取り付けたことによる膨張機23の軸方向の長さの増大も抑制することができる。
【0040】
さらに、本実施形態においては、膨張機23をその回転軸(出力軸)26aの軸心方向から見たときに、吸入ポート513の外部開口端513a、バイパス弁取付部514の開口端514a、及び吐出ポート523の外部開口端523aが、膨張機23の同じ一方側に配置されている。このため、膨張機23の配管接続部や突出部分が膨張機23の側部の一方側に集中することとなり、膨張機23に対する冷媒配管の接続作業が容易に行えると共に、膨張機23の設置スペースの確保も比較的容易になる。
【0041】
ところで、上述の実施形態においては、吸入ポート513のポート壁、バイパス路27の管壁、及びバイパス弁取付部514の周壁が、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面から隆起している。このため、固定スクロール51の基板511の剛性を偏りが生じるおそれがある。基板511には前記冷媒の膨張圧力がかかるため、基板511の剛性に偏りがあると基板511が偏った変形をすることになる。基板511が偏った変形をすると、固定スクロール51と前記可動スクロールとの間のクリアランスが変動し、例えば前記冷媒の漏れが増加して膨張機23の性能が低下してしまうことになる。
ここで、基板511の厚さを十分に確保すれば、前記冷媒の膨張圧力による基板511の偏った変形を抑制することが可能であるが、そうすると、膨張機23の重量が増加したり、コストが上昇したりするため好ましくない。
【0042】
そこで、基板511の剛性の偏りを抑制するため、あるいは、基板511の厚さをより小さくすることを可能とするために、図9に示す変形例のように、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面上にリブ61を形成するようにしてもよい。具体的には、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面において、吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁取付部514が形成されていない領域に、少なくとも一つリブ61を形成する。リブ61の配置や個数は適宜選択することができるが、例えば、吸入ポート513のポート壁又はその近傍から吸入ポート513の外部開口端とは反対側に延びるリブ61を形成したり、バイパス路27の外部開口端27a又はその近傍からバイパス路27とは反対側に延びるリブ61を形成したりすることができる。
このようにすると、基板511の厚さの増大を抑制しつつ基板511の剛性を確保することができ、また、剛性の偏りも抑制することができる。
【0043】
また、固定スクロール51の基板511の前記スクロール非形成面にリブ61を形成することに加えて又は代えて、基板511の厚さを部分的に異ならせることによって、基板511の剛性に偏りを抑制するようにしてもよい。この場合、例えば、固定スクロール51の基板511における吸入ポート513、バイパス路27、及びバイパス弁取付部514が形成されていない領域に、他の領域とは厚さの異なる厚肉部及び/又は薄肉部を設けるようにすることができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形等が可能であることはもちろんである。
例えば、上述の実施形態において、膨張機23はポンプ25を一体的に備えているが、ポンプ25に代えて又は加えて発電機を一体的に備えてもよく、ポンプ25や発電機等を備えない構成(すなわち、膨張機23単独の構成)としてもよい。また、膨張機23は、ランキンサイクル2に組み込まれるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1…車両用廃熱回収装置、2…ランキンサイクル、21…冷媒循環路、22…加熱器、23…膨張機(スクロール膨張機)、24…凝縮器、25…ポンプ、26…ポンプ一体型膨張機、26a…回転軸、27…バイパス路、28…バイパス弁、51…固定スクロール、52…ハウジング、61…リブ、511…固定スクロールの基板、512…固定スクロールのスクロール壁、513…吸入ポート、514…バイパス弁取付部、515…状態検出センサ、523…吐出ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9