(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のカーボン複合体はシリコン基板又はガラス基板の上面に形成されたグラフェンの表面にカーボンナノチューブを成長させている。このようにして成長させたカーボンナノチューブは、本発明者らの知見によると、カイラリティが不揃いである。つまり、このようにして成長させたカーボンナノチューブは、金属的性質を示す金属型と、半導体的性質を示す半導体型とが混在し、直径もばらばらである。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、同じ電気的特性を示す複数のカーボンナノチューブを有するカーボン複合
体の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカーボン複合体の製造方法は、グラファイト基板を強酸性溶液に浸漬して酸化し、このグラファイト基板の表面にシート状のグラフェンを生成する第1工程と、
前記グラフェンの表面に金属微粒子を高密度で存在させた中間体を製造する第2工程と、
所定の圧力でアルコールガスを供給した雰囲気中に前記中間体を配置し、前記金属微粒子が触媒として作用して前記グラフェンの表面に結合した複数の単層カーボンナノチューブを化学気相成長させる第3工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
グラファイト基板の表面に生成したシート状のグラフェンの表面に結合するように単層カーボンナノチューブを化学気相成長させると、直径が略等しく半導体的性質を有する単層カーボンナノチューブが得られることを本発明者らは発見した。これによって、直径が略等しく半導体的性質を有する複数の単層カーボンナノチューブを有するカーボン複合体を容易に製造することができる。
【0011】
したがって、
本発明のカーボン複合体の製造方法によって、同じ電気的特性を示す複数のカーボンナノチューブを有するカーボン複合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例のカーボン複合体の製造方法を示す概略図である。
【
図2】実施例のカーボン複合体を示すFESEMの画像であり、(a)及び(b)は、カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-2Paの圧力でアルコールガスを供給したものであり、(c)及び(d)は、カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-4Paの圧力でアルコールガスを供給したものである。
【
図3】カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-4Paの圧力でアルコールガスを供給した実施例のカーボン複合体を示すFESEMの画像である。
【
図4】実施例のカーボン複合体のラマンスペクトルを示し、(a)及び(b)は、カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-4Paの圧力でアルコールガスを供給したものであり、(c)及び(d)は、カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-2Paの圧力でアルコールガスを供給したものである。
【
図5】カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-4Paの圧力でアルコールガスを供給した実施例のカーボン複合体に対して、励起レーザ光の波長を変更して測定したラマンスペクトルを示している。
【
図6】カーボン複合体の製造方法における第3工程のアルコールガスの供給圧力とグラフェンの表面に化学気相成長した単層カーボンナノチューブの直径との関係を示すグラフである。
【
図8】カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-2Paの圧力でアルコールガスを供給したカーボン複合体のHR−TEM画像であり、単層カーボンナノチューブがグラフェンの表面に結合して成長している状態を示している。
【
図9】カーボン複合体の製造方法における第3工程において、1×10
-4Paの圧力でアルコールガスを供給したカーボン複合体のHR−TEM画像であり、(a)は単層カーボンナノチューブがグラフェンの表面に結合して成長している状態を示し、(b)は単層カーボンナノチューブの幾何学構造を追記したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、
本発明のカーボン複合体の製造方法を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施例>
実施例のカーボン複合体の製造方法は、
図1に示すように、先ず、グラファイト基板10を強酸性溶液に、1時間、浸漬して酸化し、グラファイト基板10の表面にシート状のグラフェン20を生成する第1工程を実行する(
図1(A)、(B)参照)。強酸性溶液は、60質量%の濃硝酸と35質量%の濃塩酸とを体積比で1:3に混合した王水である。次に、表面にシート状のグラフェン20を生成したグラファイト基板10を強酸性溶液から取り出し、脱イオン水、アセトン及びメタノールで洗浄し、乾燥させる。
【0017】
乾燥後、グラファイト基板10を化学気相成長装置のチェンバー内に配置し、5×10
-8Paの超高真空の環境下で、プラズマガンを使用して、平均膜厚が0.2nmとなるように金属微粒子である白金粒子(以下、「Pt30」という。)をグラファイト基板10及びグラフェン20の表面に蒸着させて中間体1を製造する第2工程を実行する(
図1(C)参照)。
【0018】
次に、Pt30の酸化を防ぐため、1×10
-3Paの圧力下でH
2ガスをチャンバー内に供給する。その後、チャンバー内を15°C/分の昇温スピードで700°Cに加温する。チャンバー内が700°Cに加温されると、H
2ガスの供給を止めて、1×10
-2Pa、若しくは1×10
-4Paの圧力で炭素源としてのアルコールガス(エタノール)をチャンバー内に1時間、供給する。すると、Pt30が触媒として作用し、グラフェン20の表面に結合した複数の単層カーボンナノチューブ(以下、「SWNT40」という。)が化学気相成長する。このようにして、第3工程を実行する(
図1(D)参照)。
【0019】
その後、チャンバー内を室温にまで急冷して、グラファイト基板10、その表面に生成したシート状のグラフェン20、及びグラフェン20の表面に結合して成長した複数のSWNT40からなるカーボン複合体をチャンバーから取り出す。
【0020】
次に、上述した製造方法によって製造された実施例のカーボン複合体について説明する。
【0021】
第3工程において、1×10
-2Paの圧力でアルコールガス(エタノール)を供給し、複数のSWNT40を化学気相成長させたカーボン複合体(以下、「サンプル1」という。)の電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)の画像を
図2(a)、(b)に示す。
【0022】
また、第3工程において、1×10
-4Paの圧力でアルコールガスを供給し、複数のSWNT40を化学気相成長させたカーボン複合体(以下、「サンプル2」という。)の電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)の画像を
図2(c)、(d)及び
図3に示す。各SWNT40は、
図3に示すように、グラフェン20の表面に結合してクモの巣状に成長している。各SWNT40は10〜150nmの長さである。シート状のグラフェン20は一辺が約600nmの略四角形状である。Pt30は細かい白点で示されている。Pt30はグラフェン20及びグラファイト基板10の表面に存在するが、SWNT40はグラフェン20の表面のみから成長しており、グラファイト基板10の表面から成長していない。
【0023】
波長が785nmの励起レーザ光を用いて、サンプル2のラマンスペクトル測定を行った結果を、
図4(a)、(b)及び
図5(a)、(b)に示す。横軸に示される周波数(ラマンシフト)が237cm
-1付近に、ラジアルブリ―ジングモード(RBM)と呼ばれるスペクトルが表れている。RBMのスペクトルのピークが位置する周波数ω(cm
-1)を以下「RBMラマンシフト値」という。RBMラマンシフト値ω(cm
-1)はSWNTの直径Dに反比例する。つまり、SWNT40の直径D(nm)は式1で示すことができる。
【0024】
直径D(nm)=248/RBMラマンシフト値ω(cm
-1) ・・・ 式1
【0025】
このため、サンプル2の各SWNT40の直径は、1.05nmと算出することができる。
【0026】
また、
図5(a)、(b)に示すように、励起レーザ光の波長を変えてラマンスペクトル測定をしても、波長が785nm以外の励起レーザ光でRBMのスペクトルが表れない。このため、サンプル2の各SWNT40はカイラリティが単一であると考えることができる。
【0027】
また、サンプル2は、
図5(B)に示すように、周波数が1590cm
-1付近で、グラファイトの物質に共通して表れるG−bandと呼ばれるスペクトルが表れている。さらに、周波数が1350cm
-1付近で、欠陥に起因するD−bandと呼ばれるスペクトルが表れている。ナノチューブに点欠陥等があると、D−bandのスペクトルが強くなるので、G−bandのスペクトルとの相対強度が欠陥量の目安になる。
【0028】
次に、波長が633nmの励起レーザ光を用いて、サンプル1のラマンスペクトル測定を行った結果を、
図4(c)、(d)に示す。横軸に示される周波数(ラマンシフト)が284cm
-1の付近にRBMのスペクトルが表れている。このため、サンプル1のSWNT40の直径は、0.84nmと算出することができる。
【0029】
サンプル1は、周波数が1590cm
-1付近で、G−bandのスペクトルが表れているが、周波数が1350cm
-1付近で、D−bandのスペクトルは表れていない。サンプル1のSWNT40も、波長が633nm以外の励起レーザ光でRBMのスペクトルが表れないため、カイラリティが単一であると考えられる。
【0030】
第3工程においてSWNT40を化学気相成長させる際のアルコールガスの供給圧力とグラフェン20の表面に化学気相成長したSWNT40の直径とは、
図6に示すように、相関関係があると考えられる。
【0031】
次に、ラマンスペクトル測定によって得られるRBMラマンシフト値(ラマンシフト値から計算されたSWNT40の直径)と励起レーザ光のエネルギーとの関係を示した片浦プロットを
図7に示す。この片浦プロットにおいて、黒点は半導体型カーボンナノチューブを示し、白抜き点は金属型カーボンナノチューブを示している。
【0032】
波長が785nmの励起レーザ光のエネルギーは1.58eVである。また、サンプル2に対して、波長が785nmの励起レーザ光を用いてラマンスペクトル測定を行った際のRBMラマンシフト値が237cm
-1(SWNT40の直径が1.05nm)である。これらの値を片浦プロットに当てはめると、
図7に示すように、丸Aで囲まれた部分に存在するSWNTが観測されたと考えられる。丸Aで囲まれたSWNTは黒点で示されているため、サンプル2のSWNT40は半導体型であることが判る。
【0033】
また、波長が633nmの励起レーザ光のエネルギーは1.96eVである。また、サンプル1に対して、波長が633nmの励起レーザ光を用いてラマンスペクトル測定を行った際のRBMラマンシフト値が284cm
-1(SWNT40の直径が0.84nm)である。これらの値を片浦プロットに当てはめると、
図7に示されるように、丸Bで囲まれた部分に存在するSWNTが観測されたと考えられる。丸Bで囲まれたSWNTは黒点で示されているため、サンプル1のSWNT40も半導体型であることが判る。
【0034】
次に、サンプル1及び2を高分解能透過電子顕微鏡(HR−TEM)で観察した結果を説明する。
【0035】
サンプル1は、
図8に示すように、Pt30の周囲のグラフェン20からSWNT40が成長している。このSWNT40は直径が0.84nmである。また、サンプル2も、
図9(a)、(b)に示すように、Pt30の周囲のグラフェン20からSWNT40が成長している。このSWNT40は、カイラル指数が(10,5)であり、直径が1.05nmである。グラフェン20は、
図9(b)において、点線で示されている。
【0036】
このように、サンプル1及び2は、シート状のグラフェン20と、グラフェン20の一方の面に結合して成長しており、直径が略等しく半導体的性質を有した複数のSWNT40(単層カーボンナノチューブ)と、グラフェン20の他方の面に連続したグラファイト基板とを有したカーボン複合体である。このカーボン複合体は、各SWNT40のカイラリティが単一であり、各SWNT40のバンドギャップの大きさが略等しい。このため、このカーボン複合体はこれらSWNT40の特性を活かして電子デバイス等にそのまま応用することができる。
【0037】
また、グラファイト基板10からグラフェン20を剥離してグラフェン20とSWNT40とからなるカーボン複合体にすることができる。このように、グラフェン20とSWNT40とからなるカーボン複合体にしても、SWNT40の特性を活かして電子デバイス等にそのまま応用することができる。
【0038】
したがって、実施例のカーボン複合体の製造方法によって製造されたカーボン複合体は同じ電気的特性を示す複数のカーボンチューブを有することができる。また、グラフェン20からSWNT40を分離してSWNT40のみにすることができる。このようにすれば、電気的特性が同じSWNT40を量産することができる。
【0039】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、グラファイト基板を酸化する際の強酸性溶液として王水を利用したが、濃硫酸、濃硝酸、過酸化水素水、及びこれらの酸の混合液であってもよい。
(2)実施例では、グラファイト基板の表面にシート状のグラフェンを生成するために1時間、王水に浸漬して酸化させたが、浸漬時間を適宜に変更してもよい。
(3)実施例では、グラフェンの表面にPtを存在させてSWNTの成長のための触媒としたが、Co等の他の金属微粒子をグラフェンの表面に存在させて触媒としてもよい。
(4)実施例では、カーボン複合体の製造方法の前記第2工程において、平均膜厚が0.2nmとなるようにPtをグラフェンの表面に蒸着させたが、平均膜厚が0.15nm〜0.25nmの厚さになるようにグラフェンの表面に蒸着させてもよい。
(5)実施例では、SWNTを化学気相成長させる際にチャンバー内を700°Cに加温したが、加温温度を適宜に変更してもよい。
(6)実施例では、SWNTを化学気相成長させる際にエタノールをチャンバー内に1時間、供給したが、エタノールの供給時間を適宜に変更してもよい。
(7)実施例では炭素源としてエタノールをチャンバーに供給したが、エタノール以外の炭素源を供給してもよい。