【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1に係るトンネル掘削機の構造について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0026】
図3に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体としての円筒形状を成すスキンプレート10と、スキンプレート10の前方部(
図3における左方側)に回転自在に装着される円盤形状のカッタヘッド11と、スキンプレート10の後方部(
図3における右方側)に設けられる推進ジャッキ(推進手段)12およびエレクタ装置13とから構成されている。
【0027】
カッタヘッド11は、その後方に配置されるカッタ旋回モータ14と図示しないリングギヤ等のギヤ機構を介して連結されている。カッタ旋回モータ14を駆動することにより、図示しないギヤ機構を介してカッタヘッド11を回転駆動し、前方(
図3における左方側)の地山を掘削することができるようになっている。
【0028】
また、スキンプレート10には、カッタヘッド11の後方に位置してバルクヘッド15が取り付けられており、カッタヘッド11とバルクヘッド15との間にチャンバ10aが形成されている。なお、カッタヘッド11、カッタ旋回モータ14および図示しないギヤ機構は、バルクヘッド15を介してスキンプレート10に支持されている。
【0029】
スキンプレート10の内部には、スクリューコンベア16が配設され、カッタヘッド11で掘削された土砂をトンネル100の後方へ排出可能になっている。すなわち、スクリューコンベア16の前端部(取り出し口)61がバルクヘッド15を貫通してチャンバ10aに開口すると共に、後方部に設けた図示しない排出口がトンネル100内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベア上に位置する。このスクリューコンベア16は、後上がりに傾斜して配置された円筒管の内部に、図示しない駆動モータによって回転可能にスクリュー翼62が装着されて成る。
【0030】
推進ジャッキ(推進手段)12は、スキンプレート10の内側に設置され、覆工部材としてトンネル100の内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメントSに対して伸縮することにより、スキンプレート10すなわちトンネル掘削機1を掘進させるための反力を得ることができる。なお、推進ジャッキ12は、スキンプレート10の円周方向に所定間隔離間して多数配設されている(
図4参照)。
【0031】
図1に示すように、推進ジャッキ12には、後方(
図1における右方側)へ延出する駆動ロッド21が設けられ、駆動ロッド21の先端部(
図1における右方側端部)には、スプレッダ22が設けられている。また、スプレッダ22の押し当て面(当て付け面)22aには緩衝部材としての緩衝ゴム23が着脱可能に取り付けられている。なお、図示は省略するが、本実施例における緩衝ゴム23は、薄い金属板に弾性部材のウレタンゴムが溶着されて成る平板形状であり、緩衝ゴム23のスプレッダ22への着脱は、金属板側の面をスプレッダ22の押し当て面22aに対接させた状態で図示しないボルトによってなされる。
【0032】
本実施例に係るトンネル掘削機1によるトンネル掘削工事において、鋼製のセグメントSを既設トンネル100の内壁面に組み付ける場合には、スプレッダ22の押し当て面22aに緩衝ゴム23を装着せずに(取り外して)施工し、コンクリート製のセグメントSを既設トンネル100の内壁面に組み付ける場合には、スプレッダ22の押し当て面22aに緩衝ゴム23を装着して(取り付けて)施工する。なお、緩衝ゴム23をスプレッダ22における押し当て面22aへ着脱する作業は、後述する緩衝ゴム収納装置(収納手段)17をエレクタ装置13に装着して行われる。
【0033】
図3および
図4に示すように、エレクタ装置13は、リング駆動モータ31と連結する旋回リング32と昇降ジャッキ33と連結するU字アーム34を備えると共に、セグメントSおよび後述する緩衝ゴム収納装置17を保持するグリッパ装置18を備えている。エレクタ装置13およびグリッパ装置18の動作によって、セグメントSおよび緩衝ゴム収納装置17を、スキンプレート10の周方向、径方向および軸方向に移動させることができる。
【0034】
図3に示すように、スキンプレート10の後方部にはリング形状の支持フレーム19が固定され、支持フレーム19にはブラケット19aを介して回転自在な複数の支持ローラ35が周方向に沿って取り付けられている(
図4参照)。旋回リング32は、その外周部が複数の支持ローラ35に当接し、回転自在に支持されている。なお、旋回リング32の内周部には、内歯32aが形成されている。
【0035】
また、支持フレーム19にはブラケット19bを介してリング駆動モータ31が固定され、このリング駆動モータ31の駆動ギヤ31aが旋回リング32の内歯32aに噛み合っている。したがって、リング駆動モータ31を駆動して駆動ギヤ31aを回転駆動すると、この駆動ギヤ31aが噛み合う内歯32aを介して旋回リング32を旋回することができる。
【0036】
このように支持された旋回リング32には、左右一対の固定台36が固定され、各固定台36には、ガイドロッド37が移動自在に支持されている(
図3および
図4参照)。各ガイドロッド37の一端(
図4における下方端)には、U字形状を成すU字アーム34の左右端部が連結され、ガイドロッド37と共に移動自在に支持されている。また、U字アーム34の左右端部には、固定台36に固定された昇降ジャッキ33の先端部が連結され、昇降ジャッキ33の伸縮動作によって、U字アーム34およびガイドロッド37が昇降(スキンプレート10の径方向への移動)自在となっている。
【0037】
U字アーム34の中央部には、グリッパ装置18が固定されている。グリッパ装置18は、セグメントSを保持するグリッパ本体部81と、グリッパ本体部81をトンネル軸方向へ移動させるためのスライドジャッキ82と、グリッパ本体部81をトンネル軸方向へ移動させる際のガイドとしての二本のガイドロッド83とを備えている。
【0038】
グリッパ本体部81には、取り付けブラケット84が設けられ、当該取り付けブラケット84には、セグメントSとピン結合する際に連結ピン85を通すための通し穴84aが形成されている(
図1および
図2参照)。連結ピン85を、セグメントSにおける取り付けブラケット(図示せず)の通し穴およびグリッパ本体部81における取り付けブラケットの通し穴84aに挿通させることによって、セグメントSは、エレクタ装置13におけるグリッパ装置18に保持される。
【0039】
スライドジャッキ82を駆動するとU字アーム34に対してグリッパ装置18のグリッパ本体部81が移動し、グリッパ装置18のグリッパ本体部81によって保持したセグメントSをトンネル軸方向に移動させることができる。また、前述の昇降ジャッキ33を駆動するとU字アーム34を介してグリッパ装置18が移動し、グリッパ装置18によって保持したセグメントSを径方向に移動させることができる。また、前述のリング駆動モータ31を駆動して旋回リング32を旋回すると、グリッパ装置18によって保持したセグメントSをトンネル100の内壁面に沿う周方向に移動させることができる。
【0040】
また、グリッパ本体部81には、セグメントSを保持する際のサポートとして、取り付けブラケット84を中心としてスキンプレート10の周方向両側および軸方向両側(放射状)にサポートジャッキ(サポート部材)86a,86bが備えられている(
図1および
図2参照)。
【0041】
グリッパ装置18によってセグメントSを保持している際には、サポートジャッキ86a,86bの先端部がセグメントSの内周面に当接した状態となっている。よって、各サポートジャッキ86a,86bを伸縮させることによって、グリッパ装置18によるセグメントSの保持姿勢、すなわち、グリッパ装置18に対するセグメントSの保持角度を調整することができる。
【0042】
もちろん、本発明におけるサポート部材は、本実施例における計四本のサポートジャッキ86a,86bに限定されない。例えば、スキンプレート10の周方向両側に設置される二本のサポートジャッキ86aまたはスキンプレート10の軸方向両側に設置される二本のサポートジャッキ86bによって周方向または軸方向のいずれかの保持角度を調整するようにしても良く、スキンプレート10の周方向両側または軸方向両側に伸縮しない棒状部材(サポートロッド)を備えることによって周方向または軸方向の保持角度を制限し、手動で保持角度を調整するようにしても良い。
【0043】
本実施例に係るトンネル掘削機1は、エレクタ装置13におけるグリッパ装置18に取り付け可能な緩衝ゴム収納装置17を備えている(
図1参照)。
図1に示すように、緩衝ゴム収納装置17は、緩衝ゴム23の略中央に形成された通し穴(挿通孔)23aに挿通させて当該緩衝ゴム23を支持する挿通棒(挿通部材)71と、当該挿通棒71を保持する棒支持部72(保持部)とエレクタ装置13におけるグリッパ装置18と連結可能な連結部73とから成る断面略L字形状の収納装置本体部(保持部材)74とを備えている。
【0044】
ここで、棒支持部72は、挿通棒71がスキンプレート10の軸方向を向くように挿通棒71を保持して成り、連結部73は、棒支持部72の端部(
図1における下端部)から挿通棒71と略平行すなわちスキンプレート10の軸方向に延設されて成る。
【0045】
挿通棒71は、その先端部(
図1における左方側端部)に先細りのテーパ部71aが形成されている。よって、挿通棒71をスプレッダ22に取り付けられた緩衝ゴム23の通し穴23aおよびスプレッダ22に形成された逃がし穴22bに挿入する際には、相互の中心軸のずれが許容されるので、容易に挿入することができる。
【0046】
また、挿通棒71の基端部(
図1における右方側端部)には、ねじ部71bが形成され、収納装置本体部74の棒支持部72には、ねじ切りされた取り付け穴72aが形成されている。よって、挿通棒71のねじ部71bを、収納装置本体部74における棒支持部72の取り付け穴72aにねじ込むことにより、挿通棒71と収納装置本体部74とが組付けられるようになっている。
【0047】
収納装置本体部74における連結部73には、エレクタ装置13のグリッパ装置18と連結するための取り付けブラケット75が設けられ、取り付けブラケット75には、連結ピン85を通すための通し穴75aが形成されている(
図1および
図2参照)。つまり、エレクタ装置13におけるグリッパ装置18は、セグメントSだけでなく、緩衝ゴム収納装置17を保持することができ、セグメントSと同様に、緩衝ゴム収納装置17をスキンプレート10の周方向、径方向および軸方向に移動することができる。
【0048】
また、収納装置本体部74における連結部73は、グリッパ装置18に対する収納装置本体部74すなわち緩衝ゴム収納装置17の保持角度等を調整することができるように、グリッパ装置18のサポートジャッキ86a,86bと当接し得る当接面(当接部)73aを有する平板形状となっている。
【0049】
本実施例においては、緩衝ゴム収納装置17に収納した緩衝ゴム23が挿通棒71から抜けないように、抜け止め部材(引っ掛かり手段)76を備えている(
図2参照)。抜け止め部材76は、挿通棒71の先端部近傍に設けられ、連結部73に図示しないボルト等によって固定される。緩衝ゴム収納装置17に緩衝ゴム23を収納した後に、挿通棒71の先端側から抜け止め部材76を装着することにより、緩衝ゴム23は抜け止め部材76に引っ掛かり、挿通棒71から抜け落ちることはない。
【0050】
もちろん、本発明における引っ掛かり手段は、本実施例における抜け止め部材76に限定されず、挿通部材(挿通棒71)に挿通させた緩衝部材(緩衝ゴム23)が引っ掛かる突出部または溝部を有するものであれば良い。例えば、挿通棒71の先端部にねじ切り加工を施して図示しないナットを取り付けることにより緩衝ゴム23がナットに引っ掛かるようにしても良く、挿通棒71の先端部に凹状の溝を形成して緩衝ゴム23が当該溝の段差に引っ掛かるようにしても良い。
【0051】
また、
図5に示すように、複数の緩衝ゴム23を収納する際に、緩衝ゴム23同士の間に抜け止め部材76と同様の仕切り部材77を設けるようにしても良い。なお、仕切り部材77には、挿通棒71を挿通させるための通し穴77aを設け、収納装置本体部74の連結部73にボルト等によって固定する。このように仕切り部材77を設けることにより、多数の緩衝ゴム23を収納した際に、緩衝ゴム23の傾きを抑えることができると共に、挿通棒71を補強する役割を持たせることもできる。
【0052】
本発明の実施例1に係るトンネル掘削機1における緩衝ゴム23を着脱する動作について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0053】
図1および
図2に示すように、エレクタ装置13におけるグリッパ装置18に緩衝ゴム収納装置17を取り付ける。すなわち、グリッパ装置18の取り付けブラケット84に、緩衝ゴム収納装置17における収納装置本体部74の取り付けブラケット75を合わせて、連結ピン85を、グリッパ装置18の取り付けブラケット84の通し穴84aおよび緩衝ゴム収納装置17における収納装置本体部74の取り付けブラケット75の通し穴75aに挿通させることによって連結する。
【0054】
このようにエレクタ装置13のグリッパ装置18に緩衝ゴム収納装置17を装着することにより、エレクタ装置13の動作を利用して緩衝ゴム収納装置17をスキンプレート10の周方向に複数並べて設置した推進ジャッキ12の各々の設置位置に対応して緩衝ゴム収納装置17を移動させることができる。
【0055】
つまり、リング駆動モータ31を駆動して旋回リング32を旋回することにより、保持した緩衝ゴム収納装置17をスキンプレート10の周方向に移動させると共に、昇降ジャッキ33を駆動して駆動ロッド21を伸縮することにより、U字アーム34を介して緩衝ゴム収納装置17をスキンプレート10の径方向に移動させ、緩衝ゴム収納装置17を各推進ジャッキ12の近傍に移動させることができる(
図1および
図4参照)。
【0056】
このようにして、緩衝ゴム収納装置17を周方向に複数設置した推進ジャッキ12の近傍に移動させた後、スライドジャッキ82を駆動してガイドロッド83に沿って緩衝ゴム収納装置17をスキンプレート10の軸方向に移動させ、緩衝ゴム収納装置17における挿通棒71を、緩衝ゴム23に形成された通し穴23aおよびスプレッダ22の押し当て面22aに形成された逃がし穴22bに挿入することができる。
【0057】
このとき、緩衝ゴム収納装置17における挿通棒71の先端にテーパ部71aを形成していることにより、スプレッダ22に対する緩衝ゴム収納装置17の位置のずれが許容される、すなわち、緩衝ゴム23の挿通穴23aおよびスプレッダ22の逃がし穴22bの軸心に対する挿通棒71の軸心のずれが許容されるので、挿通棒71を緩衝ゴム23の挿通穴23aおよびスプレッダ22の逃がし穴22bに容易に挿入することができる。
【0058】
緩衝ゴム23に形成された通し穴23aおよびスプレッダ22の押し当て面22aに開口する逃がし穴22bに緩衝ゴム収納装置17における挿通棒71を挿入した状態で、スプレッダ22に装着された緩衝ゴム23を取り外す。このとき、緩衝ゴム23は、緩衝ゴム収納装置17における挿通棒71に支持されているので、落下することはない。よって、作業員の安全を確保することができる。
【0059】
そして、スライドジャッキ82を駆動すると、U字アーム34に対してグリッパ本体部81が移動、すなわち、保持した緩衝ゴム収納装置17が軸方向に移動され、緩衝ゴム収納装置17における挿通棒71をスプレッダ22の当て付け面22aに形成された逃がし穴22bから抜くことができる。
【0060】
また、緩衝ゴム収納装置17における挿通棒71を、スプレッダ22の押し当て面22aに形成された逃がし穴22bから抜くと共に、挿通棒71の先端側に抜け止め部材76を取り付ける(
図2参照)。
【0061】
このようにして、緩衝ゴム収納装置17に緩衝ゴム23を収納し、挿通棒71の先端側に抜け止め部材76を取り付けることにより、緩衝ゴム収納装置17を移動させる際に収納した緩衝ゴム23が落下することを防止することができる。
【0062】
同様にして、スキンプレート10の周方向に並べて設置された複数の推進ジャッキ12の先端部に装着された複数の緩衝ゴム23を、作業員の安全を確保しつつ容易に取り外し、緩衝ゴム収納装置17に収納することができる。
【0063】
なお、上述と逆の手順によって、推進ジャッキ12の各々の設置位置に対応して緩衝ゴム収納装置17を移動させることによって、緩衝ゴム収納装置17に収納した複数の緩衝ゴムを、スキンプレート10の周方向に並べて設置された複数の推進ジャッキ12の先端部にそれぞれ装着することができる。
【0064】
また、緩衝ゴム収納装置17に収納した緩衝ゴム23が劣化または損傷等によって交換の必要が生じていた場合には、挿通棒71を複数枚並べられた緩衝ゴム23における通し穴23aから抜いて収納装置本体部74から取り外すことにより、緩衝ゴム23の交換を容易に行うことができる。
【0065】
このとき、複数の緩衝ゴム23における通し穴23aを揃えることにより、容易に挿通棒71を緩衝ゴム23の通し穴23aに対して抜き差しすることができる。つまり、複数枚並べられた緩衝ゴム23に異なる二方向からの圧力を作用させて、緩衝ゴム23の通し穴23aの中心軸の位置合わせを行うことにより、容易に複数の緩衝ゴム23の通し穴23aを揃えることができると共に、容易に挿通棒71を緩衝ゴム23の通し穴23aに対して抜き差しすることができる。
【0066】
例えば、
図2に示すように複数の緩衝ゴム23の一端(
図2における下端)が緩衝ゴム収納装置17の連結部73によって揃えられた状態で、緩衝ゴム23を異なる方向(
図2における左方または右方)から押えることにより、緩衝ゴム23の通し穴23aの中心軸の位置合わせを行うことができる。
【0067】
以上のようにして、本実施例に係るトンネル掘削機1によれば、コンクリート製セグメントと鋼製セグメントとを使い分ける場合においても、スプレッダ22の押し当て面22aへの緩衝ゴム23の着脱作業を容易に行うことができるので、作業員に掛かる負荷の増加および工期の長期化を抑えることができる。