特許第6228039号(P6228039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228039
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/48 20060101AFI20171030BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   H05B3/48
   H05B3/14 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-40572(P2014-40572)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-167071(P2015-167071A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三堂 誠
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−183371(JP,A)
【文献】 特開平10−220876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B3/02−3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状または筒状のセラミック体と、該セラミック体の内部に設けられた発熱抵抗体と、前記セラミック体が挿入された環状の金具とを備えており、
前記セラミック体は外周面に長さ方向に延びる溝部を有しており、前記金具は内周面に先端に向かうにつれて細くなる凸部を有するとともに該凸部が前記溝部に嵌まっており、
該溝部と前記凸部との間には隙間があり、
該隙間が、前記凸部の先端に向かうにつれて大きくなっていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記凸部の突出する方向と前記凸部の側面とのなす角が、前記凸部の先端に向かうにつれて大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体加熱用ヒータ、粉体加熱用ヒータ、気体加熱用ヒータ、酸素センサ用ヒータまたは半田ごて用ヒータ等に用いられる管状ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体加熱用ヒータ等に用いられるヒータとして、例えば特許文献1に記載された管状ヒータが知られている。特許文献1に記載の管状ヒータは、内部の空間が液体の流路となる管状のセラミック体と、このセラミック体の内部に設けられた発熱抵抗体とを備えている。この発熱抵抗体に電流を流して発熱させることによって、流路を流れる液体を加熱することができる。特許文献1に記載された管状ヒータは、セラミック成形体に電極パターンが印刷されたシリコーンラバーを巻き付けることによって、円筒状のセラミック体を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−185929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された管状ヒータにおいては、セラミック成形体に電極パターンが印刷されたシリコーンラバーを巻き付ける際に、シリコーンラバーの繋ぎ目に隙間ができてしまう傾向があった。その結果、セラミック体の表面に長さ方向に延びる溝が形成される場合があった。管状ヒータは、例えば、セラミック体が環状の金具に挿入された状態で外部機器に取り付けられて用いられるが、セラミック体の表面に溝が形成されていると、セラミック体と環状の金具との間に隙間が形成されてしまうことになる。そして、外部機器に取り付けた際に、セラミック体と金具との間に隙間が形成されていることによって、その隙間から水漏れまたは空気漏れ等が生じるという問題点があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミック体と金具との間の隙間から水漏れまたは空気漏れが生じることを抑制できるヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のヒータは、柱状または筒状のセラミック体と、該セラミック体の内部に設けられた発熱抵抗体と、前記セラミック体が挿入された環状の金具とを備えており、前記セラミック体は外周面に長さ方向に延びる溝部を有しており、前記金具は内周面に先端に向かうにつれて細くなる凸部を有するとともに該凸部が前記溝部に嵌まっており、該溝部と前記凸部との間には隙間があり、該隙間が、前記凸部の先端に向かうにつれて大きくなっている
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のヒータによれば、金具が内周面に凸部を有するとともに、この凸部がセラミック体の外周面における溝部に嵌まっていることから、セラミック体と金具との間における隙間を小さくできる。これにより、セラミック体と金具との間の隙間から水漏れまたは空気漏れが生じる可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のヒータの一実施形態の側面図である。
図2図1に示すヒータの断面図である。
図3図1に示すヒータのセラミック体を示す斜視図である。
図4図1に示すヒータの金具を示す斜視図である。
図5図2に示すヒータをA−A’線で切断した断面図である。
図6】本発明のヒータの変形例を示す断面図である。
図7】本発明のヒータの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るヒータ100について、図面を参照しながら説明する。図1はヒータ100を示す側面図である。図1に示すように、ヒータ100は、セラミック体1と金具5とを備えている。ヒータ100は、例えば、流体である液体(水等)を被加熱物とする液体加熱用ヒータとして用いることができる。
【0010】
図2に示すように、セラミック体1は、内側の空間が流体の流路10となる管状の部材である。なお、本実施形態のヒータ100においては、セラミック体1が筒状であるが、これに限られない。具体的には、セラミック体1が柱状であってもよい。この場合には、ヒータは、セラミック体1の外周面に被加熱物を接触させて、発熱抵抗体2から発せられた熱をセラミック体1の外周面から伝えることによって、被加熱物を加熱するようにして用いられる。
【0011】
本実施形態のヒータ100におけるセラミック体1は、長さ方向を有する円筒状の部材である。セラミック体1は、例えば酸化物セラミックス、窒化物セラミックスまたは炭化物セラミックス等の絶縁性のセラミックスから成る。具体的には、セラミック体1は、アルミナ質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックスまたは炭化珪素質セラミックス等のセラミックスから成る。中でも、耐酸化性の観点から、アルミナ質セラミックスを用いることが好ましい。
【0012】
セラミック体1の寸法は、例えば以下の通りに設定することができる。具体的には、長さ方向の全長を40〜150mm程度に、外径を4〜30mm程度に、内径を1〜28mm程度に設定することができる。
【0013】
図2に示すように、セラミック体1の内部には発熱抵抗体2が設けられている。発熱抵抗体2は、抵抗体に電流が流れることによって発熱するものである。図2に示すように、発熱抵抗体2は、セラミック体1の内部に流路10に沿って埋設されている。なお、図2には示していないが、発熱抵抗体2は、セラミック体1の先端側(図中の左側)において、セラミック体1の外周面に沿って周方向にも設けられている。
【0014】
発熱抵抗体2は、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)またはレニウム(Re)等の高融点の金属を主成分とした導電体から成る。発熱抵抗体2の寸法は、例えば、幅を0.3〜2mm程度に、厚みを0.01〜0.1mm程度に、全長を500〜5000mm程度に設定することができる。これらの寸法は、発熱抵抗体2の発熱温度および発熱抵抗体2に加える電圧等によって適宜設定される。
【0015】
セラミック体1の後端側(図中の右側)の表面には、電極3が設けられている。電極3は、外部の電源と発熱抵抗体2とを電気的に接続するための部材であって、セラミック体1の一端側の2か所にそれぞれ設けられている。電極3は、発熱抵抗体2に電気的に接続されている。電極3は、例えばタングステンまたはモリブデン等の金属材料から成る。
【0016】
金具5は、セラミック体1を外部機器に取り付けやすくするための部材である。外部機器としては、例えばシャワートイレ等が挙げられる。本実施形態のヒータ100がシャワートイレに用いられる場合には、シャワートイレにおけるシャワー用の水がセラミック体
1の内部の流路10を通過して加熱されることによって温水になるように用いられる。具体的には、例えば、セラミック体1の後端側から水が導入され、この水がセラミック体1の内部の流路10を通過する間に発熱抵抗体2によって加熱された後に、セラミック体1の先端側から温水となって放出される。このとき、セラミック体1の先端側から放出される温水は、セラミック体1の外表面に付着する可能性があるが、この水がセラミック体1の後端側に設けられた電極3に触れてしまうことによって漏電が生じることを防ぐ必要がある。そのためには、シャワートイレにヒータ100が取り付けられた際に、セラミック体1と金具5との間で水漏れが生じることのないようにしておく必要がある。
【0017】
金具5は、環状の部材であって、セラミック体1が挿入されている。金具5は、例えばステンレス鋼または鉄−コバルト−ニッケル合金等の金属材料から成る。特に耐腐食性の観点からは、ステンレス鋼から成ることが好ましい。金具5の寸法は、例えば以下の通り設定することができる。具体的には、内径をセラミック体1の外径とほぼ等しく、外径を8mm〜50mm程度に設定することができる。また、セラミック体1の長さ方向における長さは、例えば0.3mm〜5mm程度に設定できる。
【0018】
ここで、図3に示すように、セラミック体1は外周面に長さ方向に延びる溝部11を有している。溝部11は、例えば、セラミック体1を以下の方法によって製造することによって形成することができる。以下では、セラミック体1がアルミナ(Al)を主成分とする例を用いて説明する。
【0019】
まず、Alを主成分として、SiO、CaO、MgOおよびZrOが合計で10質量%以下になるように調製したアルミナ質セラミックグリーンシートを作製する。
【0020】
次に、このアルミナ質セラミックグリーンシートの表面に、発熱抵抗体2となる所定の抵抗体パターンを形成する。発熱抵抗体2の形成方法としては、抵抗体となる導電性ペーストを使ったスクリーン印刷法等を用いることができる。すなわち、アルミナ質セラミックグリーンシートの表面に発熱抵抗体2となる抵抗体パターンを形成する。
【0021】
発熱抵抗体2となる抵抗体パターンは、ヒータ100の長さ方向に沿って伸びた複数の直線部と、これらの直線部を繋ぐ複数の折り返し部とを備えている。アルミナ質セラミックグリーンシートには、内部の発熱抵抗体2と表面の電極3とを電気的に接続するためのスルーホール導体も設ける。スルーホール導体には、例えばタングステン、モリブデンまたはレニウム等の高融点金属を主成分とする導電性ペーストを用いることができる。
【0022】
また、アルミナ質セラミックグリーンシートとは別に、円筒状のアルミナ質セラミック成型体を成型する。そして、この円筒状のアルミナ質セラミック成型体に、抵抗体パターンを形成したアルミナ質セラミックグリーンシートを、抵抗体パターンを形成した面がアルミナ質セラミック成型体に接触するように巻き付ける。このとき、同一の組成のアルミナ質セラミックスを分散させた密着液をアルミナ質セラミックグリーンシートに塗布しておいてアルミナ質セラミックグリーンシートとアルミナ質セラミック成型体とを密着させることで、アルミナ質一体成型体を得ることができる。
【0023】
こうして得られた、アルミナ質一体成型体を1500〜1600℃の窒素雰囲気中で焼成することによって、内部に発熱抵抗体2を有するセラミック体1を得ることができる。
【0024】
上述の工程の中で、アルミナ質セラミックグリーンシートをアルミナ質セラミック成型体に巻き付けるときに、アルミナ質セラミックグリーンシートをアルミナ質セラミック成型体の全周に隈なく巻き付けようとすると、アルミナ質セラミックグリーンシートの一部が重なるようにしてアルミナ質セラミック成型体に巻き付けられてしまう場合がある。そ
うすると、セラミック体1の外周面の形状が所望の滑らかな形状ではなくなるおそれが生じる。そこで、アルミナ質セラミックグリーンシートを巻き付ける際には、巻き付けの始めと終わりとに当たるアルミナ質セラミックグリーンシートの端部と端部との間に微小な隙間ができるように巻き付けることが好ましい。そうすると、この隙間が、図3に示すように、セラミック体1の外周面に溝部11として残ることになる。
【0025】
本実施形態のヒータ100においては、図4に示すように、金具5は内周面に凸部51を有している。そして、この凸部51がセラミック体1の溝部11に嵌まっている。これにより、セラミック体1と金具5との間に形成される隙間を減らすことができるので、セラミック体1と金具5との間で隙間から水漏れまたは空気漏れ等が生じる可能性を低減できる。凸部51の形状および寸法は、溝部11に対応して設定される。具体的には、溝部11の断面形状が三角形状である場合には、凸部51の断面形状もそれに合わせた三角形状にすることができる。また、溝部11の深さ(セラミック体1の外周面から底までの距離)が0.5mm程度および溝部11の幅が0.5mm程度の場合には、例えば、凸部51の高さ(金具5の内周面から頂部までの距離)を0.4mm程度、凸部51の幅を0.4mm程度に設定できる。また、セラミック体1の長さ方向における凸部51の長さは、0.5mm程度に設定できる。
【0026】
ここでいう、「凸部51がセラミック体1の溝部11に嵌まっている」とは、必ずしも凸部51とセラミック体1とが密着している必要はない。具体的には、凸部51が溝部11の内部に入り込んでいればよく、凸部51と溝部11との間にろう材等が存在していてもよい。
【0027】
図3および図5に示すように、本実施形態のヒータ100においては、セラミック体1の外周面のうち金具5が取り付けられる領域にメタライズ層4が形成されているとともに、このメタライズ層4と金具5とがろう材によって接合されている。メタライズ層4は、溝部11以外の領域だけではなく、溝部11の内部にも設けられている。これにより、ろう材によってセラミック体1と金具5とを接合するときに、溝部11の内部においてもろう材を濡れ広がらせやすくすることができる。その結果、セラミック体1と金具5との接合強度を向上させることができる。メタライズ層4としては、例えばタングステンまたはモリブデンを用いることができる。メタライズ層4の厚みは、例えば0.01mm〜0.1mm程度に設定できる。また、ろう材としては、例えば銀または銀−銅等を用いることができる。また、メタライズ層4にめっき等の手法でニッケル層を設けることにより、ろう材との濡れ性が向上し、セラミック体1と金具5との接合強度がさらに向上する。
【0028】
本実施形態のヒータ100においては、金具5に設けられた凸部51が断面形状において先端に向かうにつれて細くなっていて、溝部11との間に隙間がある。これにより、金具5が高温になった場合に、溝部11の底部付近において凸部51の熱膨張量を低減することができる。そのため、溝部11の底部付近において凸部51が周方向に熱膨張して溝部11の壁面を圧迫する可能性を低減できる。その結果、溝部11の壁面が圧迫されることによって生じるクラックの発生を低減できる。特に、溝部11の壁面と凸部51の側面との間の隙間が凸部51の先端に向かうにつれて大きくなっていくことが好ましい。これにより、溝部11の壁面が圧迫されることによって生じるクラックの発生をさらに低減できる。
【0029】
本実施形態のヒータ100においては、凸部51の断面形状が三角形状であったがこれに限られない。例えば、図6に示すように凸部51の先端が平坦面であってもよい。これにより、凸部51が三角形状である場合と比較して、凸部51の先端の鋭さを抑えることができる。そのため、ヒートサイクル下において凸部51が熱膨張することによって、凸部51の先端がセラミック体1の底部を圧迫することによって、セラミック体1の底部を
損傷させてしまう可能性を低減できる。
【0030】
また、図7に示すように、凸部51の断面形状が先端に向かうにつれて細くなる形状であるとともに、先端近傍において凸部51の突出する方向と凸部51の側面との成す角が大きくなるように変化していてもよい。これにより、凸部51の先端の鋭さを抑えつつも、凸部51の先端が平坦面である場合と比較して、溝部11の奥にまで凸部51を入れることができることから、セラミック体1と金具5との間に形成される隙間を効果的に減らすことができる。
【0031】
また、本実施形態のヒータ100においては、凸部51は、セラミック体1の長さ方向における金具5の一部のみに設けられていたが、これに限られない。具体的には、凸部51が、セラミック体1の長さ方向における金具5の全体に設けられていてもよい。これにより、セラミック体1と金具5との間の隙間から水漏れまたは空気漏れが生じる可能性をより効果的に低減することができる。
【0032】
また、本実施形態のヒータ100においては、凸部51と溝部11との間にメタライズ層4およびろう材が設けられていたが、これに限られない。例えば、メタライズ層4およびろう材を設けずに樹脂材料から成る接着剤を凸部51と溝部11との間に設けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:セラミック体
10:流路
11:溝部
2:発熱抵抗体
3:電極
4:メタライズ層
5:金具
51:凸部
100:ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7