特許第6228040号(P6228040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6228040排気の循環利用型安全キャビネット及び排気の循環利用型安全キャビネットを備えるクリーンルームの空気循環システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228040
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】排気の循環利用型安全キャビネット及び排気の循環利用型安全キャビネットを備えるクリーンルームの空気循環システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20171030BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   F24F7/06 C
   B01L1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-40633(P2014-40633)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-166646(P2015-166646A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】中澤 賢
(72)【発明者】
【氏名】中岡 将士
(72)【発明者】
【氏名】植村 聡
(72)【発明者】
【氏名】小吉 省吾
(72)【発明者】
【氏名】田代 尚史
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−001415(JP,A)
【文献】 特開平01−266857(JP,A)
【文献】 特開2000−104967(JP,A)
【文献】 特開2005−279575(JP,A)
【文献】 特開2009−095771(JP,A)
【文献】 特開2015−166645(JP,A)
【文献】 実開平01−091829(JP,U)
【文献】 実開平02−112331(JP,U)
【文献】 実公昭45−32066(JP,Y2)
【文献】 米国特許第5169217(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00
F24F 7/06
F24F 7/10
B01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気の循環利用型安全キャビネットであって、内部の作業空間へキャビネット送風機の吐出プレナムの下部に位置する給気用HEPAフィルタを介して清浄給気を供給し、前記作業空間の空気を再び前記キャビネット送風機により吸引して循環させ、前記作業空間から循環してきた空気の一部を前記吐出プレナムの上部に位置する排気用HEPAフィルタを介して外部に排出することで、前記作業空間が負圧に維持されて、前面のシャッター開口部から外部導入給気を取り入れてバリア空気とする安全キャビネット本体と、
前記安全キャビネット本体上に配置され、前記安全キャビネット本体から前記排気用HEPAフィルタを介して排出された空気を取り込む排気取込口を下面後部に備え、下面前部に前記排気取込口から取り込まれた空気を前記安全キャビネット本体の前面のシャッターに沿って下方に吹き出す排気吹出口を設けてなる排気還流ユニットとで構成され、
前記安全キャビネット本体前面のシャッターに沿って下降する空気が、シャッター下端の開口部から、負圧に維持された前記作業空間内に吸引されることによって、前記作業空間の空気が前記開口部から漏出するのを防止するバリア空気の全部又は一部として循環利用されてなることを特徴とする排気の循環利用型安全キャビネット。
【請求項2】
排気還流ユニットの排気吹出口に下降空気流を下向きの層流とする整流板を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の排気の循環利用型安全キャビネット。
【請求項3】
排気還流ユニットに、該排気還流ユニットを安全キャビネット本体に安全に配置し支持する4本の支持脚を設け、かつ左側の前後の支持脚間及び右側前後の支持脚間に間仕切りを立設してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気の循環利用型安全キャビネット。
【請求項4】
排気還流ユニットの排気取込口に取り込まれた安全キャビネット本体からの排気が、前記排気還流ユニット内部で滞流することなく、排気吹出口から吹き出せるよう前記排気還流ユニット内に空気の流れをガイドするガイド板を設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気の循環利用型安全キャビネット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気の循環利用型安全キャビネットを備えたクリーンルームであって、
安全キャビネット本体から排気用HEPAフィルタを介して排気される空気をバリア空気の全部又は一部として循環利用し、クリーンルームに供給される清浄空気の供給量を削減して運転されてなることを特徴とする排気の循環利用型安全キャビネットを備えたクリーンルームの空気循環システム。
【請求項6】
クリーンルームの天井またはクリーンルーム壁面から供給する清浄空気の削減量が、排気の循環利用型安全キャビネットの投影面積にクリーンルームの天井高を乗じた体積値に基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載の排気の循環利用型安全キャビネットを備えたクリーンルームの空気循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全キャビネット内の作業空間に上部からフィルタにより濾過されて供給される清浄空気と、作業空間内の負圧により当該安全キャビネットの前面から吸い込まれたバリア空気からなる作業空間内の空気の一部を、送風機により安全キャビネットの上部から設置空間に排出する安全キャビネットであって、前記安全キャビネットから排出される空気を前記安全キャビネット前面に降下させてバリア空気の全部または一部として循環利用する、排気の循環利用型安全キャビネットに関する。また、当該排気の循環利用型安全キャビネットを備えるクリーンルームの空気循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の研究施設、感染動物の飼育施設及び試験施設、また、医療での胚芽細胞取扱施設などでは、作業者や周囲環境の保護のため、病原体並びに組み換えDNAなどを取り扱う際に発生するエアロゾルを作業域内に封じ込めることを第1の目的とした1次バリア装置としてのバイオハザード対策用クラスIIキャビネット:安全キャビネットが使われることが多い。
また、このような施設においては、清浄な環境下で調剤作業や培地作業などを行えるように、クラス100〜クラス10000程度の清浄度の環境が形成できるクリーンルームが設けられていることがある。
前記クリーンルームはその清浄度を維持するため、フィルタ濾過した空気を大風量供給して、室内で発生した塵埃をいち早く還気して再濾過し、循環させるようにしている。一時間当たりのクリーンルームへの給気風量をルームの容積で除した換気回数で表すと、例えば30回〜150回の換気回数に相当する大風量である。さらに、クリーンルーム外部からの建屋隙間からの塵埃侵入を防ぐため、0.5〜1回換気分の陽圧外気を除塵して導入し、クリーンルームを陽圧にすることが通常である。
しかし、作業者や周囲環境保護のための1次バリア装置である安全キャビネットは、病原菌や遺伝子材料の拡散防止のため、周囲より陰圧を維持しなければならない。さらに、直近で作業する作業者に対しては、絶対的にエアロゾル拡散を防止するため、作業空間の前面シャッターの開口部からの吸い込み気流をバリア空気とすべく一定の風量を前記シャッター開口部から吸引しなければならない。
従来安全キャビネットは、病原菌など危険な微生物や、遺伝子材料などの試料を取り扱う作業空間を形成するために用いられるものであり、該安全キャビネットは、作業空間内へ実験器具の出し入れを容易に行え、さらに作業者が腕だけを作業空間に挿入し作業するために、作業空間の前面部には開閉可能なシャッターが設けられている。
空気の流れから追ってみると、まず、ほかの菌や細胞などが混入しないように、細菌も濾過できる給気用HEPAフィルタによって除塵された清浄空気を作業空間上部から供給する。しかし作業空間からの漏えいを防止するため、作業空間は安全キャビネット外よりも陰圧になっており、作業空間の前面部から作業空間内に所定の風速でシャッター開口部から吸引される気流で吸引された外部給気が導入される。この外部から作業空間への導入される空気(=外部給気)が、後述の作業空間内のエアロゾルを安全キャビネットの前面側へ漏出することを防ぐバリア空気となる。
作業空間上部からの給気とシャッター開口部からの外部給気とが混合された空気、つまり作業空間内の空気(以降、混合空気ともいう。)は、試料に接触し危険なエアロゾルが含まれる恐れがある。この混合空気は、作業空間の下部周囲の隙間や、作業空間床のパンチング孔から作業空間奥の循環系路を介して安全キャビネットのファンに吸い込まれる。 その後正圧になっているファン出口のプレナムから、作業空間上部からの給気は給気用の高性能フィルタである給気用HEPAフィルタにより清浄化して作業空間に吹き出すと共に、外部からの導入給気と同じ風量を排気用の空気として同じプレナムから排気用の高性能フィルタである排気用HEPAフィルタを介して安全キャビネット外に排出することにより、常に作業空間内の気圧を外部より低くして外部の空気を作業空間内に導き、それによって、作業空間内の試料と接触した空気が前記排気用HEPAフィルタを通らずに外部に排出されないように構成されている(特許文献1)。
そして安全キャビネットは、その構造と使用方法から、排気用HEPAフィルタから安全キャビネット外へ排出される排気を、建屋側排気ダクトに導いてクリーンルーム内に排気を出さないIIBタイプと、排気用HEPAフィルタにて危険なエアロゾルが除外されているので、前記排気をクリーンルーム室内に排出する室内排気のIIAタイプとに大きく形式が分かれる。一般に有毒ガスを取扱う場合やハザードレベルの高い封じ込めが必要な場合を除き、IIAタイプの安全キャビネットが使用されることが多い。
【0003】
図10は、そのような従来のIIAタイプの安全キャビネット50をバイオハザード対策用のクリーンルームに設置した場合の概要を示す側面断面図であり、同図に示すように、前記安全キャビネット50を設置するクリーンルーム70においては、上述した清浄度を維持するための循環ろ過空気を給気するため、上述した換気回数が確保できる風量を、給気ユニット71を介して図示しない循環空調機からの清浄給気a1として取り込むように管理されている。
そして、安全キャビネット50をクリーンルーム70に設置して使用する場合、前述のクリーンルームを正圧に保つ余剰外気に、さらに安全キャビネットの前面シャッター開口部から作業空間内に導入されるバリア空気を確保するための排気用HEPAフィルタ55からの排出空気量を加えた外気量を、図示しない循環空調機で除塵温調してクリーンルーム内に導入することとなる。この従来の安全キャビネット50の場合、排気用HEPAフィルタ55はキャビネット天蓋上部にその気流出口を上方に向けて位置しているので、排気用HEPAフィルタを介して安全キャビネット50外に排出された空気a3は、天井72等に高速でぶつかりその流れの向きがランダムに転換され、クリーンルーム70内を天井72に沿って流れて行くために、安全キャビネット50の前面シャッターの開口部に下降気流として取り込まれることが無く、クリーンルーム70の清浄度維持空気として混合され、クリーンルーム70の例えば壁下方に位置する還気口75から図示しない循環空調機へ空調機ファンによって吸引されて循環空調機へ戻され温調され、再び給気ユニット71へ送られる。
また、試料に接触した空気の一部の導入給気分が排気用HEPAフィルタ55を介して風量a3として安全キャビネット50外に排出される際に、天井72等に高速でぶつかりクリーンルーム70の天井を高速流で水平方向に流れ、クリーンルーム70の天井の給気ユニット71から吹かれた清浄度維持用の清浄給気a1の一部の天井に沿う気流成分と正面衝突してしまい、クリーンルーム70内で乱流が生じてしまう。これにより乱流の渦内に塵埃が閉じこまれ、クリーンルーム70内の清浄度維持が脅かされる。
また、導入給気分(a3)が排気用HEPAフィルタ55を介して安全キャビネット50外に排出される際に、天井72等に高速でぶつかりクリーンルーム70の天井を高速流で水平方向に流れ、当該水平気流が安全キャビネット50の前面外側の澱んだ空気を誘引することで、安全キャビネット50の前面に上昇気流を形成することもある。そして、このような気流が生じると、床から塵埃で汚れた空気が安全キャビネット50の前面をなめるように上昇気流をさらに強くし、作業空間53内で試料に接触した空気a2がこの上昇気流に誘引されて、前記作業空間53の前面開口部66から安全キャビネット50外に漏れ出してしまうことになる。これでは、作業者や周囲環境の保護のため、病原体並びに組み換えDNAなどを取り扱う際に発生するエアロゾルを作業域内に封じ込めることを第1の目的とした、1次バリア装置として機能が果たせなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3410389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全キャビネット内の作業空間に上部からフィルタにより濾過されて供給される清浄空気と、作業空間内の負圧により当該安全キャビネットの前面から吸い込まれたバリア空気からなる作業空間内の空気の一部を、送風機により安全キャビネットの上部から設置空間に排出する安全キャビネットで、前記安全キャビネット上部から排出される空気を前記安全キャビネット前面に降下させてバリア空気の全部または一部として循環利用する排気の循環利用型安全キャビネットを得ることを目的とする。また、当該排気の循環利用型安全キャビネットを備えるクリーンルームの空気循環システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)排気の循環利用型安全キャビネットであって、内部の作業空間へキャビネット送風機の吐出プレナムの下部に位置する給気用HEPAフィルタを介して清浄給気を供給し、作業空間の空気を再びキャビネット送風機により吸引して循環させ、作業空間から循環してきた空気の一部を前記吐出プレナムの上部に位置する排気用HEPAフィルタを介して外部に排出することで、作業空間が負圧に維持されて、前面のシャッター開口部から外部導入給気を取り入れてバリア空気とする安全キャビネット本体と、
前記安全キャビネット本体上に配置され、前記安全キャビネット本体から排気用HEPAフィルタを介して排出された空気を取り込む排気取込口を下面後部に備え、下面前部に前記排気取込口から取り込まれた空気を前記安全キャビネット本体の前面のシャッターに沿って下方に吹き出す排気吹出口を設けてなる排気還流ユニットとで構成され、
前記安全キャビネット本体前面のシャッターに沿って下降する空気が、シャッター下端の開口部から、負圧に維持された作業空間内に吸引されることによって、作業空間の空気が前記開口部から漏出するのを防止するバリア空気の全部又は一部として循環利用されてなることを特徴とする排気の循環利用型安全キャビネット。
(2)排気還流ユニットの排気吹出口に下降空気流を下向きの層流とする整流板を設けてなることを特徴とする前記(1)に記載の排気の循環利用型安全キャビネット。
(3)排気還流ユニットに、該排気還流ユニットを安全キャビネット本体に安全に配置し支持する4本の支持脚を設け、かつ左側の前後の支持脚間及び右側前後の支持脚間に間仕切りを立設してなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の排気の循環利用型安全キャビネット。
(4)排気還流ユニットの排気取込口に取り込まれた安全キャビネット本体からの排気が、前記排気還流ユニット内部で滞流することなく、排気吹出口から吹き出せるよう前記排気還流ユニット内に空気の流れをガイドするガイド板を設けてなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の排気の循環利用型安全キャビネット。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の排気の循環利用型安全キャビネットを備えたクリーンルームであって、
安全キャビネット本体から排気用HEPAフィルタを介して排気される空気をバリア空気の全部または一部として循環利用し、クリーンルームに供給される清浄空気の供給量を削減して運転されてなることを特徴とする排気の循環利用型安全キャビネットを備えたクリーンルームの空気循環システム。
(6)クリーンルームの天井またはクリーンルーム壁面から供給する清浄空気の削減量が、排気の循環利用型安全キャビネットの投影面積にクリーンルームの天井高を乗じた体積値に基づいて決定されることを特徴とする前記(5)に記載の排気の循環利用型安全キャビネットを備えたクリーンルームの空気循環システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の排気の循環利用型安全キャビネットにより下記の効果が発揮される。
前記(1)〜(4)記載の本発明の排気の循環利用型安全キャビネットによれば、安全キャビネットの空気排出路から排気される空気を、流れを均一に整えると共に風速が抑えられた整流として前記安全キャビネット本体の上方から安全キャビネット本体の前面に下方に向けて均一に吹き出すことができるので、安全キャビネット本体の空気排出路から排出される空気を清浄空気として再度作業空間の前面開口部から作業空間内に取り込むことができ、その清浄空気の量に応じて、バイオセーフテイ施設であるクリーンルームに取り込む清浄度維持清浄空気の量を減らすことができる。
また、排気用HEPAフィルタで除害された空気が排気還流ユニットを通り流れが均一に整えられると共に風速が抑えられた下向きの層流となって前記キャビネット本体の前面のシャッターに沿って上方から下方に向けて吹き出されるので、クリーンルーム内に乱流が生じることが無く、また作業空間内の試料に接触した空気が、前記作業空間の前面部から安全キャビネット外に漏出すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施例の排気の循環利用型安全キャビネットの説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面から見た横断面図である。
図2】本発明の第1実施例の排気の循環利用型安全キャビネットの外観斜視説明図である。
図3】本発明の排気の循環利用型安全キャビネットを構成する排気還流ユニットの第1実施例の構造図である。
図4】本発明の第2実施例の排気の循環利用型安全キャビネットの説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面から見た横断面図である。
図5】本発明の第2実施例の排気の循環利用型安全キャビネットの斜視説明図である。
図6】本発明の排気の循環利用型安全キャビネットを構成する排気還流ユニットの第2実施例の構造図である。
図7】本発明の第3実施例の排気の循環利用型安全キャビネットの斜視説明図である。
図8】本発明の排気の循環利用型安全キャビネットを構成する排気還流ユニットの第3実施例の構造図であり、(a)は左側面図、(b)は上面図である。
図9図4に示す本発明の第2実施例の排気の循環利用型安全キャビネットをバイオハザード対策用のクリーンルームに設置した場合の説明図である。
図10】従来の安全キャビネットをバイオハザード対策用のクリーンルームに設置した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の排気の循環利用型安全キャビネットを実施するための形態を実施例の図に基づいて説明する。
〔実施例1〕
図1は、本発明の第1実施例の排気の循環利用型安全キャビネットの説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面から見た横断面図である。
図において、50は排気の循環利用型安全キャビネット全体を示し、51は安全キャビネット本体、52は該安全キャビネット本体51の前面に設けられた透明な素材から成る前面に沿って開閉自在なシャッター、53は前記キャビネット本体51の内部に設けられた作業空間、54は該作業空間53の上部でかつ送風機吐出プレナム67の下面に設けられた給気用HEPAフィルタ、55は該給気フィルタ54の上方かつ送風機吐出プレナム67の上面に設けられた排気用の排気用HEPAフィルタ、56は前記給気用HEPAフィルタ54と排気用HEPAフィルタ55とに送風機吐出プレナム67を介して空気を圧送する送風機、57は前記作業空間の下部に配置された作業空間の底をなす作業台、58は前記作業空間53内の前方の空気を吸い込む前方吸込み孔、59は前記作業空間53内の後方の空気を吸い込む後方吸込み孔、60は安全キャビネット本体51の底板、61は作業空間53を構成する背面板、62は安全キャビネット本体51の背面板、63は前記作業台57と安全キャビネット本体51の底板60及び作業空間53を構成する背面板61と安全キャビネット本体51の背面板62により形成される空気連通路、64は前記排気用HEPAフィルタ55を介して前記安全キャビネット本体51の上部から前記安全キャビネット本体51外に空気を排出する空気排出路、65は該空気排出路64に設けられた整流板で、排気用の排気用HEPAフィルタ55を通過する風量(つまりバリア空気として作業空間53に安全キャビネット本体51の前面開口部から導入給気される量)を調整するとともに、給気用HEPAフィルタ54を介して作業空間に清浄空気A1として供給される風量をも調整している。66はキャビネット本体51の前面開口部であり、開閉自在なシャッター52の下端とキャビネット本体51の作業空間53の下端との隙間で形成される。
本実施例においては、前記整流板65として開口率10%のパンチングパネルを使用したが、これに限られるものではない。
【0010】
図2には、上記安全キャビネット本体51の天井にあたる外板上に、排気の循環利用型安全キャビネットの構成要素としての排気還流ユニット1を配置した状態の斜視図を排気還流ユニット1の筐体2を透視して内部構造がわかる状態で示した。
【0011】
本発明の排気の循環利用型安全キャビネット第1実施例の排気還流ユニットの形態は、チャンバ型であって、1は排気還流ユニット、2は排気還流ユニットの筐体、3は該排気還流ユニットの筐体2を構成する上板、4は同下板、5、6、7、8は同側板、9は前記下板4に設けられた排気取込口で、安全キャビネット50のキャビネット本体51の空気排出路64に対向する位置に設けられ、前記キャビネット本体51の空気排出路64から排出される空気を排気還流ユニット1の筐体2内に取込んでいる。
10は前記下板4に設けられた排気吹出口で、前記排気取込口9から取り込まれた空気を排気還流ユニット1から下方に向けて吹き出す。11は排気吹出口10に設けられた整流板で、前記排気吹出口10から吹き出される空気の流れを均一に整えると共に風速を抑えている。この整流させる仕組みとしては、ある程度の静圧圧損を設けることで、排気吹出口10の前面側に偏った流れをその動圧の整流板での圧損により風速の小さい側へ圧力で均したり、あるいは風向調整機構により風速を均一にしたりする仕組みを設けたりして行う。
なお、本実施の形態においては、整流板11として開口率10%のパンチングパネルを用いているがこれに限定されるものでなく、排気還流ユニット1で排気の流れる方向が変更されることで、上板3や側板6、8に沿って集まる高速流が発生しても、排気吹出口10から略均一に整えられた風速で吹き出されるような整流効果をもたらす開口率のものであればよい。
【0012】
〔実施例2〕
図4に本発明の排気の循環利用型安全キャビネットの第2実施例の構成図として(a)に正面図を(b)に側面から見た横断面図を、図5には図4に示した排気の循環利用型安全キャビネットの外観斜視図を、排気還流ユニット1の筐体2を透視して内部構造が分かる状態で示している。そして図6には、図4図5に示した排気の循環利用型安全キャビネットを構成する排気還流ユニットの第2実施例の構造を示した。
本発明の第2の実施の形態は、図6に見られるように、排気還流ユニット1を安全キャビネット本体51の天井板上に配置して支持する4本の支持脚と左側前後の支持脚間、及び右側前後の支持脚間に両支持脚に沿って間仕切りを設けた排気還流ユニットを用いている。
図4〜6において、21は排気還流ユニット1を支持する左前支持脚、22は左後支持脚、23は右前支持脚、24は右後支持脚、25は左前支持脚21と左後支持脚22と間に両支持脚21、22に沿って立設された間仕切り、26は右前支持脚23と右後支持脚24の間に両支持脚23、24に沿って立設された間仕切りあり、前記排気還流ユニット1の排気吹出口10から吹き出される空気がクリーンルーム内に漏れ出すのを両間仕切り25、26で防いでいる。
なお、本実施の形態においては、間仕切り25、26としてビニールカーテンを用いているがこれに限定されるものでなく、プラスチックや金属製のパネルを用いても良い。
この左前支持脚21、右前支持脚23、間仕切り25、26で形成される安全キャビネット本体51前の空間は、作業者の着座作業エリア76として位置づけられ、安全キャビネット本体51の作業空間53に安全キャビネット本体51の前面から吸引・導入されるバリア空気A2の量が、排気用HEPAフィルタ55を通過する風量であり、その風量が排気吹出口10から安全キャビネット本体51の前面を下降する気流となって、この着座作業エリア76に供給される。この風量は、バリア空気A2としての必要量は、例えば1500mm幅の安全キャビネットで520m/Hと大量であり、この着座作業エリア76の体積5〜10mからみると、1時間当たり50〜100回の換気量となり、着座作業エリア76に必要十分な清浄度維持風量となる。
また、上記のように清浄度維持風量が多いので、間仕切りがない形態であっても着座作業エリアに清浄度維持の濾過空気が満たされるので、間仕切りを設けなくてもよい。
そして、作業空間53に安全キャビネット本体51の前面から吸引・導入されるバリア空気A2は、その気流により排気用HEPAフィルタ55を通過した風量であっても良く、設置されているクリーンルーム内にあふれ出した排気用HEPAフィルタ55から吹き出された還流気流の一部とクリーンルーム内の清浄度維持空気の一部との入れ替わり空気を含む空気であっても良い。
【0013】
以下、図9に基づいて、本発明の第2実施例の排気の循環利用型安全キャビネットをバイオハザード対策用のクリーンルームに設置した場合について説明する。
同図において、70は天井下の室内が密閉されたクリーンルーム、71は該クリーンルーム70の天井72に設けられた給気ユニット、73は空調機(図示せず)に接続された給気分岐ダクト、74は前記給気ユニット71に設けられた天井給気HEPAフィルタ、75は図示しない循環空調機へ還気を戻す還気ダクトに接続される還気口である。
76は安全キャビネットの作業者が作業を行う着座作業エリアである。
前記クリーンルーム70に設置された排気の循環利用型安全キャビネット50を使用する作業者は、安全キャビネット50の操作盤(図示せず)を操作し送風機56を作動させた状態で、前面開口部66から腕を作業空間53内に差し込み、透明な板であるシャッター52から作業空間53を覗き見ながら作業空間53内で細菌・ウイルス等のエアロゾルが生じる危険性のある試料を取り扱う作業を行う。
このときクリーンルーム70内の空気は、前記送風機56の吸引負圧により陰圧となった作業空間53と外部クリーンルームとの圧力差により、安全キャビネット本体51の前面開口部66からバリア空気A2として作業空間53内に取り込まれ、作業空間53の上部の給気用HEPAフィルタ54から供給される降下気流としての清浄空気A1と混合され作業空間53を満たす。この混合空気は、作業空間53内で試料により汚染されたおそれがあり、作業台57に設けられた前面吸込み孔58及び背面吸込み孔59から前記送風機56により吸引され空気連通路63を通り、送風機56により送風機吐出プレナム67に吹き出された空気の一部は給気用HEPAフィルタ54により清浄化され作業空間53に供給され、残りは排気用HEPAフィルタ55により清浄化され、空気排出路64を通り排気還流ユニット1に設けられた排気取込口9から排気還流ユニット1の筐体2内に取り込まれる。
そして、排気還流ユニット1の筐体2内に取り込まれた空気は、排気還流ユニット1内を流れながら気流方向を180度転換されて、前記排気還流ユニット1の下板4に設けられた整流板11により均一な気流に整えられると共に風速が抑えられ、前記排気還流ユニット1の下板4に設けられた排気吹出口10から前記安全キャビネット本体51の上方から安全キャビネット本体51の前面に形成された着座作業エリア76に向けて排気され、再度清浄空気として、前記作業空間53の負圧によりキャビネット本体51の前面開口部66から作業空間53に取り込まれる。但し、左前支持脚21、右前支持脚23の間には間仕切りがなく開放されているので、前記バリア空気A2の一部はクリーンルーム内の清浄給気a1と常に入れ替わる状態となっており、清浄給気a1と入れ替わった排気吹出口10由来の空気は、クリーンルーム70側の図示しない排気装置によりクリーンルーム外へ排気される。
そして送風機56が作動されている間は、前記空気の流れが繰り返して行われる。
このように本実施の形態においては、安全キャビネット本体51から排気還流ユニット1に取り込まれた安全キャビネット本体51からの排出空気は、排気還流ユニット1の下板4に設けられた排気吹出口10から安全キャビネット本体51の上方から下方に向けて安全キャビネット本体51の着座作業エリア76に向けて吹き出され、吹き出された空気をバリア空気A2として前面開口部66から再度作業空間53内に取り込むことができ、除害された清浄空気によって着座作業エリア76が十分に清浄化できるので、排気の循環利用型安全キャビネット50の投影面積分の清浄空気A1は安全キャビネット本体51自身で供給していると見ることができ、通常、清浄空気の換気回数から必要な清浄給気a1の風量を決定するクリーンルーム70の循環する清浄度維持空気の計算から、安全キャビネットの投影面積に天井高を乗じた体積をクリーンルーム体積から減じた値を基準とすればよく、その分クリーンルーム70に図示しない循環空調機から供給する清浄給気a1の量を減らすことができる。
【0014】
また、排気還流ユニット1の排気吹出口10を介して前記安全キャビネット本体51の上方から吹き出される空気は、排気還流ユニット1の下板4に設けられた整流板11により流れを均一に整えられると共に風速が抑えられて安全キャビネット本体51の上方から下方の着座作業エリア76に向けて吹き出されるので、クリーンルーム70内を流れる給気ユニット71から下降する清浄給気a1と略同じ方向へ吹くこととなり、よって、ぶつかって発生する大きな乱流が防止でき、よって、安全キャビネット本体51の前面のシャッターに沿った上昇気流は発生せず、作業空間53内の試料に接触した空気が、前記作業空間53の前面部開口部66から速い上昇気流による誘引に起因した、安全キャビ ネット本体51の外に漏出するのを防止することができる。
さらに、第2の実施形態においては、前記排気還流ユニット1に該排気還流ユニット1を支持する4本の支持脚21〜24と左側前後の支持脚21、22間に間仕切り25が、また右側前後の支持脚23、24の間に間仕切り26が設けられているため安全キャビネット50の着座作業エリア76がクリーンルーム70内の清浄度維持空気による影響を受けることがなく概ね下降方向のラミナーフロー(層流)となり、確実に乱流を防止でき、安全キャビネット本体51の前面開口部66から作業空間53に取り込まれるため、作業空間53内の試料に接触した空気が、前記安全キャビネット本体51の前面開口部66から安全キャビネット51の外に漏れ出すのを確実に防止することができる。
なお、図9において、安全キャビネット本体51と、その上部に位置する排気還流ユニット1との合算高さは、クリーンルーム70の天井72にまで届いていない表現となっているが、もちろん安全キャビネット本体51と排気還流ユニット1との合算高さが、天井72の天井高いっぱいまであっても良い。
【0015】
〔実施例3〕
図7に本発明の排気の循環利用型安全キャビネットの第3実施例の構造説明斜視図を、図8図7に示す排気の循環利用型安全キャビネットを構成する排気還流ユニットの構造図を示す。なお、図7(a)は左側面図、同(b)は上面図である。
この排気の循環利用型安全キャビネットの第3実施例で用いられている排気還流ユニット1は、図6及び図7に示されているようにダクトチャンバ型の排気還流ユニットである。
図6、7において、31は排気還流ユニット、32は排気還流ユニットの筐体、33は該排気還流ユニットの筐体を構成する上板、34は同下板、35、36、37、38は同側板であり、39は前記下板34に設けられた排気取込口で、前記安全キャビネット本体51の空気排出路64に対向し、前記安全キャビネット本体51の空気排出路64から排出される空気を取込んでいる。
40は前記下板34に設けられた排気吹出口で、前記排気取込口39から取り込まれた空気を排気還流ユニット31から下方に向けて吹き出す。
41は前記排気吹出口40に設けられた整流板で、前記排気吹出口40から吹き出される空気の流れを均一に整えるとともに風速を抑えている。
なお、本実施の形態においても、整流板41として開口率10%のパンチングパネルを用いているがこれに限定されるものでない。
42は前記排気還流ユニット31をクリーンルーム等の天井に取り付ける場合に使用するL字型の取付金具、43は前記側板36に穿設された点検口、44は点検扉で、前記排気還流ユニット31の筐体32内に設けられた整流板41の清掃や交換を行うときに使用する。
【0016】
本実施の態様において前記点検扉44は、ステンレス製の鋼板で構成されているがこれに限定されるものではない。例えば、透明のアクリル板を使用すれば前記排気還流ユニット31中の状況を目視で確認することができる。
45、46は排気還流ユニット31の筐体32内を流れる空気をガイドする空気ガイド板である。本実施の形態においては2枚の空気ガイド板45、46を個別に設けているが、これらを一体とした1枚の空気ガイド板としてもよい。また、空気ガイド板45、46とも、ガイドベーンとして同心円状に板を複数設置しても良い。
なお、本実施の形態においては空気ガイド板をステンレス板で構成しているがこれに限定されるものではない。
なお、図8においては図2と同様に、排気還流ユニット31の筐体32内の構造が分かるよう透明な部材として表しているが、空気ガイド板45、46は省略してある。
【0017】
上記本発明の第3の実施形態においては、排気還流ユニット31の筐体32内を流れる空気が空気ガイド板45、46に沿って前記排気還流ユニット31の下板34に設けられた排気吹出口40までガイドされるので流れがより均一に整えられ、安全キャビネット本体51の上方から着座作業エリア76に向けて吹き出される。
また、上記第1、第2の実施形態と比較して、排気還流ユニット31から着座作業エリア76に吹き出される空気の風速が速いため、安全キャビネット本体51の前面開口部66から作業空間53に取り込まれるバリア空気A2の風速も速くなり、作業空間53内の試料に接触した空気が、前記安全キャビネット本体51の前面開口部66から安全キャビネット本体51外に漏出するのをより確実に防止することができる。
したがって、本発明の第3の実施形態の排気の循環利用型安全キャビネットにあっては、クリーンルームに限らず、通常の実験室で使用する場合においても前記排気還流ユニット31の排気吹出口40から前記安全キャビネット本体51の上方から下方に向けて排気される空気をバリア空気A2として安全キャビネット本体51の前面開口部66から作業空間53内に取り込むことができるので、実験室内の清浄度の低い空気が作業空間53に吸引・導入されるおそれはなく、安全に使用できる。
【符号の説明】
【0018】
1:排気還流ユニット
2:排気還流ユニットの筐体
3:上板
4:下板
5〜8:側板
9:排気取込口
10:排気吹出口
11:整流板
21〜24:支持脚
25、26:間仕切り
31:排気還流ユニット
32:排気還流ユニットの筐体
33:上板
34:下板
35〜38:側板
39:排気取込口
40:排気吹出口
41:整流板
42:取付金具
43:点検口
44:点検扉
45、46:空気ガイド板
50:排気循環型安全キャビネット
51:安全ャビネット本体
52:シャッター
53:作業空間
54:給気用HEPAフィルタ
55:排気用HEPAフィルタ
56:送風機
57:作業台
58:前面吸込み孔
59:背面吸込み孔
60:安全キャビネット本体の底板
61:作業空間を構成する背面板
62:安全キャビネット本体の背面板
63:空気連通路
64:空気排出路
65:整流板
66:前面開口部
67:吐出プレナム
70:クリーンルーム
71:給気ユニット
72:天井
73:給気分岐ダクト
74:天井給気HEPAフィルタ
75:還気口
76:着座作業エリア
A1:清浄空気
A2:バリア空気
a1:清浄給気
a2:試料に接触した空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10