特許第6228051号(P6228051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6228051
(24)【登録日】2017年10月20日
(45)【発行日】2017年11月8日
(54)【発明の名称】車両用暖房装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20171030BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20171030BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20171030BHJP
【FI】
   B60H1/22 611B
   B60H1/03 C
   B60R1/06 D
   B60R1/06 M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-59779(P2014-59779)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182546(P2015-182546A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(74)【代理人】
【識別番号】100114122
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086841
【弁理士】
【氏名又は名称】脇 篤夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】田村 芳規
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−23533(JP,A)
【文献】 特開2009−234476(JP,A)
【文献】 特開2007−001355(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108197(WO,A1)
【文献】 特開2001−191848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部に配置され、車両外部側から少なくとも車両のウインドウに向かう方向に赤外線輻射を行う赤外線輻射部と、
車両走行中に、前記赤外線輻射部による赤外線輻射を実行させる制御部と、
を備えた車両用暖房装置。
【請求項2】
前記赤外線輻射部は、車両の運転席側又は助手席側のドアミラー内に配置されている
請求項1に記載の車両用暖房装置。
【請求項3】
前記赤外線輻射部は、車両の運転席側ドアミラー内と、助手席側ドアミラー内にそれぞれ配置されており、
前記制御部は、助手席側ドアミラー内の赤外線輻射部については、助手席の乗員を検出した場合に赤外線輻射を実行させる
請求項1又は請求項2に記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
前記制御部は、外気温が所定温度未満の場合に、車両走行中に前記赤外線輻射部による赤外線輻射を実行させる
請求項1又は請求項2に記載の車両用暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線輻射を用いた車両用暖房装置についての技術分野に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−23533号公報
【特許文献2】特開2009−234476号公報
【背景技術】
【0003】
車両用の暖房装置として各種技術が提案されている。
上記特許文献1には、サンバイザーのフロントウインドに対向する面側に面状発熱体とを備え、サンバイザーを退避位置近傍に位置させることで着座者を面上発熱体の表面からの赤外線により、着座者の前頭部や、首後部または後頭部を温める技術が記載されている。
上記特許文献2には、フロントガラスの曇り止めの電熱線への通電を停止したとき極低温であると着座者は冷たさを感じることがあるため、これ防止するためフロントガラスの透明導電膜に通電し、フロントガラスからの冷輻射を抑制する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エネルギー効率に優れる暖房手段として、炭素繊維に通電することで赤外線を放射させ、その輻射熱により暖房効果を得るカーボンヒーターが存在する。カーボンヒーターは暖房の熱源として使えるパワーユニットの廃熱が少ない電動車両において、限られたエネルギーの中で暖房性能を確保する手段として有望である。
しかし、自動車の暖房装置として車室内にカーボンヒーターを設置した場合、車室内の可燃物との接触による発火や、人体との接触による火傷が懸念される。
そこで本発明は、赤外線輻射による暖房を、安全でかつ有効な状態で車両に適用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1に、本発明に係る車両用暖房装置は、車両外部に配置され、車両外部側から少なくとも車両のウインドウに向かう方向に赤外線輻射を行う赤外線輻射部と、車両走行中に、前記赤外線輻射部による赤外線輻射を実行させる制御部とを備えるものである。
赤外線輻射熱を利用することで、車室の外側に設置しても暖房装置として機能する。車室外に設置する事で、乗員や車室内の可燃物との接触が生じない。また走行中に赤外線輻射を実行させることで、発熱した状態で人体と接触する機会は生じない。
【0006】
第2に、上記した本発明に係る車両用暖房装置においては、前記赤外線輻射部は、車両の運転席側又は助手席側のドアミラー内に配置されていることが望ましい。
車外から乗員に向けて赤外線輻射を行うには、乗員の方向を向くよう位置が調整されているドアミラーが好適である。
【0007】
第3に、上記した本発明に係る車両用暖房装置においては、前記赤外線輻射部は、車両の運転席側ドアミラー内と、助手席側ドアミラー内にそれぞれ配置されており、前記制御部は、助手席側ドアミラー内の赤外線輻射部については、助手席の乗員を検出した場合に赤外線輻射を実行させることが望ましい。
乗員に応じて赤外線輻射部を機能させることで適切なエネルギー消費で有効な暖房を行う。
【0008】
第4に、上記した本発明に係る車両用暖房装置においては、前記制御部は、外気温が所定温度未満の場合に、車両走行中に前記赤外線輻射部による赤外線輻射を実行させることが望ましい。
即ち外気温が高い状態で赤外線輻射部による無用な暖房を実行させない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エネルギー効率に優れる赤外線輻射暖房を、安全かつ暖房効果の高い状態で車両に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態のカーボンヒーターの配置例の説明図である。
図2】実施の形態のカーボンヒーターによる赤外線輻射の説明図である。
図3】実施の形態の車両用暖房装置のブロック図である。
図4】実施の形態のカーボンヒーター制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態の車両用暖房装置を説明する。実施の形態の車両用暖房装置は、赤外線輻射部としてのカーボンヒーターをドアミラー内に配置したものとしている。
図1Aはドアミラー2に配置されたカーボンヒーター10を示している。図1B図1Aのa−a線の断面を簡易的に示したものである(ドアミラー2の内部構造は省略)。
【0012】
図1A図1Bに示すように、カーボンヒーター10がドアミラー2における鏡面部11の外縁に沿うように取り付けられている。
カーボンヒーター10は、例えば不活性ガス中に炭素繊維を封入した石英管を用いる構造であり、公知の通り、既存のニクロム線発熱体やハロゲンランプを応用したハロゲンヒーターよりも多くのエネルギーが赤外線領域に放射されるという特性がある。
【0013】
図1Bに示すようにカーボンヒーター10の側面から背面(ドアミラー筐体の内側)には反射板12が設けられている。これによりカーボンヒーター10からの赤外線輻射が鏡面部11の正面方向に集中するようにされ、またドアミラー筐体内部が無用に加熱されないようにしている。
【0014】
このようにカーボンヒーター10が装着されたドアミラー2が車両に装着される。
図2Aの車両1は電気自動車やハイブリッド自動車を想定しているが、もちろんガソリンエンジン車でもよい。この車両1の運転席側ドアと助手席側ドアにはドアミラー2,2が取り付けられており、各ドアミラー2、2には図1のようにカーボンヒーター10A、10Bが装着されている。
【0015】
このカーボンヒーター10A、10Bによる赤外線輻射の様子を図2A図2Bに模式的に示している。
図2Aに示すように、運転席側のドアミラー2に取り付けられたカーボンヒーター10Aは、破線で示すように車両外部から運転席側のウインドウ5に向かって赤外線輻射を行う。この熱線は、一部はウインドウ5に吸収又は反射されるが、多くは透過し、運転席3に座った乗員(運転者)に達する。運転者は熱線を受けることで輻射熱が発生し、運転者に直接温感を与える暖房機能が実現される。
同様に助手席側のドアミラー2に取り付けられたカーボンヒーター10Bは、破線で示すように車両外部から助手席側のウインドウ6に向かって赤外線輻射を行う。この熱線は、一部はウインドウ6に吸収又は反射されるが、多くは透過し、助手席4に座った乗員を直接暖めることになる。
【0016】
またドアミラー2は、運転者が後方を確認するためのものであるため鏡面部11の正面側は常に運転者の方向を向いている。従ってカーボンヒーター10Aも運転者の方向に向かって赤外線輻射を行う。
このとき、図2Bに示すように赤外線輻射による熱線は、ウインドウ5の大部分を通して車室内側に向かう。このため赤外線輻射による熱線は、ウインドウ5の大部分を暖めるとともに、運転席3に座った運転者Hの上半身に到達する。
カーボンヒーター10B側もほぼ同様で、カーボンヒーター10Bの赤外線輻射による熱線は、ウインドウ6の大部分を暖めるとともに、助手席4に座った乗員の上半身に到達する。
【0017】
図3に実施の形態の車両用暖房装置の構成を示す。車両用暖房装置はカーボンヒーター10A、10Bの駆動に関連する構成として、制御部21、電源部22、スイッチ23A、23B、ヒーター駆動回路24A、24B、温度センサ25、着座センサ26、車速センサ27を備える。
【0018】
制御部21は例えばECU(electronic control unit)として車体内に設けられるマイクロコンピュータ等により形成され、この図1ではカーボンヒーター10の制御を行う制御部として示している。
制御部21は、カーボンヒーター10A、10Bの駆動に関し、スイッチ23A、23Bのオン/オフ制御、ヒーター駆動回路24A、24Bの制御を行う。
【0019】
電源部22は、バッテリやバッテリの周辺回路(リレースイッチ、DC/DCコンバータ、インバータ、充電回路等)を含み、車両のモータや電装品への電力供給を行う。本実施の形態に関しては図示のように電源部22は、カーボンヒーター10A、10Bの駆動のための駆動電圧Vhを出力する。
駆動電圧Vhはスイッチ23Aを介してヒーター駆動回路24Aに与えられる。ヒーター駆動回路24Aはカーボンヒーター10Aに駆動電流を与える。
また駆動電圧Vhはスイッチ23Bを介してヒーター駆動回路24Bに与えられる。ヒーター駆動回路24Bはカーボンヒーター10Bに駆動電流を与える。
ヒーター駆動回路24A、24Bは制御部21の制御によりカーボンヒーター10A、10Bの出力(ワット数)を切り換えることができる。
【0020】
温度センサ25は車両1の外気温を検出し、外気温情報を制御部21に供給する。
着座センサ26は助手席4に乗員が存在するか否かを検出し、検出情報を制御部21に供給する。後述するが、制御部21はカーボンヒーター駆動のための制御として、助手席4に乗員が存在するか否かを確認する。
この着座センサ26は例えば助手席4に設けられた重量センサとしてもよいし、車室内を撮像する撮像装置を設ける場合、撮像画像解析で乗員を確認するものであってもよい。
また一般的には、運転席3側にも着座センサが装備されることが多いが、本実施の形態のカーボンヒーター10A、10Bの駆動は走行中に行うものであって必ず運転者が存在することが前提となるため、カーボンヒーター駆動制御の用途に限っては、運転席側の着座センサによる検出は不要である。
【0021】
車速センサ27は車両1の走行速度を検出し、車速情報を制御部21に供給する。車速センサ27は、走行速度を検出するものであればよく、その形態は多様である。また、少なくとも走行中か停車中であるかを検出できるものでもよい。
【0022】
このような構成において制御部21は、スイッチ23A、23Bの制御によりカーボンヒーター10A、10Bをオン/オフさせるが、その制御を例えば図4のように行う。図4は例えばイグニッションオンの期間に制御部21が行うカーボンヒーター10A、10Bの制御処理としている。
【0023】
ステップS101で制御部21は温度センサ25から取得した外気温情報を所定の閾値温度th1と比較する。閾値温度は例えば0℃とする。もちろん5℃、−5℃、−10℃など閾値温度設定は各種考えられ、カーボンヒーター10の能力や、車内エアコンディショナーとの暖房連携に応じて設定すればよい。カーボンヒーター10を機能させる温度としてユーザが閾値温度th1を選択設定できるようにしてもよい。
またステップS102で制御部21は、現在車両1が走行中であるか否かを判断する。例えば車速センサ27からの車速情報から判断できる。
このステップS101,S102で外気温が閾値温度th1以上である場合や、或いは車両1が停止している場合は、制御部21はカーボンヒーター10A、10Bをオンとはしない。
【0024】
外気温が閾値温度th1未満であるときは、車両走行中と判断されることに応じて制御部21はステップS103に進み、まず着座センサ26により助手席4に乗員が居るか否かを確認する。そして助手席4に乗員が居ればステップS104で、カーボンヒーター10A、10Bの両方をオンに制御する。即ちスイッチ23A、23Bをオンとしてヒーター駆動回路24A、24Bに電源を供給させる。電源供給によりヒーター駆動回路24A、24Bがカーボンヒーター10A、10Bに通電し、カーボンヒーター10A、10Bによる暖房を開始させる。
一方、助手席4に乗員が居ない場合は、制御部21はステップS105で、運転席側のカーボンヒーター10Aのみをオンにする。即ちスイッチ23Aをオンとしてヒーター駆動回路24Aに電源を供給させ、カーボンヒーター10Aに通電し、カーボンヒーター10Aによる暖房を開始させる。
【0025】
カーボンヒーター10A、10Bの両方又は一方をオンとした後は、制御部21はステップS106で車速に応じた出力調整を行う。例えば制御部21は車速センサ27からの車速情報から、20km/h未満、20以上〜40km/h未満、40以上〜80km/h未満、80km以上などを判定し、それに応じてカーボンヒーター10の出力を切り換えるように制御する。具体的には制御部21は、速度が速くなるほどヒーター駆動回路24A、24Bに出力を高くさせる指示を行い、これにより高速走行時ほど高い暖房能力が得られるようにする。
【0026】
またカーボンヒーター10A、10Bの両方又は一方をオンとした後は、制御部21はステップS107,S108の監視処理を行う。まずステップS107では例えば車速情報が0km/hになったか否かの監視などにより、停車したか否かを監視する。またステップS108では外気温が閾値温度th1以上となったか否かを監視する。走行中であって外気温が閾値温度th1未満の場合は、ステップS106に戻る。
車両1が停止した場合、或いは外気温が閾値温度th1以上となった場合は、制御部21はステップS109に進み、スイッチ23A、23Bをオフとしてカーボンヒーター10A、10Bの両方又は一方による暖房をオフとする。そしてステップS101に戻る。以降、再び外気温が閾値温度th1未満で走行状態となったら、カーボンヒーター10A、10Bの一方又は両方をオンとする。
制御部21は以上のような処理でカーボンヒーター10A、10Bのオン/オフや出力レベルを制御する。
【0027】
以上の実施の形態により次のような効果が得られる。
実施の形態の車両用暖房装置は、車両外部に配置され、車両外部側から車両のウインドウ5,6に向かって赤外線輻射を行うカーボンヒーター10A、10B(赤外線輻射部)と、車両走行中にカーボンヒーター10A、10Bによる赤外線輻射を実行させる制御部21とを備える。
このように赤外線輻射熱を利用することで、車室の外側に設置しても暖房装置として機能し、乗員を輻射熱により直接暖めることが可能である。
またウインドウ5,6による冷輻射も緩和できる。例えば寒冷地での氷点下以下の外気温での走行中は、車両1のウインドウ5,6は風によって著しく冷却される。ドアや車体には断熱材を装填することができるが、ウインドウ部分には断熱材を入れることはできない。ウインドウ5,6が冷却されると、冷却されたウインドウに近接している乗員の体温が冷輻射により奪われ、乗員は寒さを感じる。また車室内の空気が冷える。これに対しカーボンヒーター10A、10Bによる赤外線輻射は図2で説明したようにウインドウ5,6に向かう方向に行われるため、ウインドウ5,6の冷却が緩和され、ウインドウ5,6による冷輻射も緩和できることで暖房機能を高めることができる。
そしてこれらのことから、エネルギー効率の良い暖房を実現できることにもなる。
また電気自動車、ハイブリッド自動車などの、暖房の熱源として利用できる廃熱が少ない電動車両において、限られたエネルギーの中で暖房性能の確保を図る事ができる。
またウインドウ5,6への赤外線輻射により、ウインドウ5,6の曇り防止効果も得られる。
【0028】
またカーボンヒーター10A、10Bを車外に設置する事、及び走行中のみに機能させることで、安全性も確保できる。仮にカーボンヒーター10A、10Bを車室内に設置すると、乗員が触れてやけどの危険があったり、或いは埃などの可燃物が付着して発煙、発火が生じる恐れがあるが、本実施の形態の場合、そのようなことは生じない。またカーボンヒーター10A、10Bを走行中にオンとし、停止に応じてオフとすることで、停車中に車両の外に居る人がカーボンヒーター10A、10Bに触れてやけどをするということもない。
【0029】
なお、カーボンヒーター10A、10Bを閾値温度th1未満という寒冷状態でのみオンとしているため、停車時にオフとすると、カーボンヒーター10A、10B自体は急速に冷えるため、オフした後の余熱でカーボンヒーター10A、10Bに触れた人がやけどをするということはない。カーボンヒーター10A、10Bが停止直後にやけどを生じない温度まで低下させるためには、カーボンヒーター10A、10Bの表面の発熱量やオン/オフ条件での設定を適切に行えば良い。場合によっては停車したらオフにするのではなく、車速が低速(例えば15km/h未満)となったら、停止の可能性ありと判断してあらかじめカーボンヒーター10A、10Bをオフするようにし、停車時にはより確実に触れてもやけどが生じない温度となるようにしてもよいし、また、カーボンヒーター10A、10Bをオン/オフとする外気温の閾値温度th1を、オフ後に速やかに安全温度に低下する程度の低温に設定しても良い。例えば閾値温度th1=−10℃などとしてもよい。
【0030】
また実施の形態では、カーボンヒーター10A、10Bをドアミラー2、2内に配置している。車外から乗員に向けて赤外線輻射を行うためには、カーボンヒーター10A、10Bを、常に乗員の方向を向くよう位置が調整されるドアミラー2内に配置することが好適である。またドアミラー2に配置することで、外部配置のために特別な専用ユニットを設けなくてもよい。
さらにドアミラー2、2において鏡面部11の外縁など、鏡面部11に近接してカーボンヒーター10A、10Bが配置されることになるため、その熱により鏡面部11の曇り防止効果も得られる。
なお、もちろんカーボンヒーター10の配置例はドアミラー2以外にも考えられる。ドアミラー2以外の専用ユニットを車室外に取り付けてカーボンヒーター10A,10Bを配置してもよいし、フェンダーミラー等を利用しても良い。
また、カーボンヒーター10の配置は、運転席側、助手席側の一方でもよい。またカーボンヒーター10を、フロントウインドウを介して乗員に赤外線輻射が行われるように配置しても良い。さらには後部座席側のウインドウを介して後部座席の乗員にも赤外線輻射が行われるように専用ユニット等で配置してもよい。
【0031】
また実施の形態では、助手席側ドアミラー2内のカーボンヒーター10Bについては、助手席の乗員を検出した場合に赤外線輻射を実行させ、乗員が居ない場合はオンとしていない(ステップS103、S104,S105)。これにより乗員に応じた適切なエネルギー消費で有効な暖房を行い、消費電力の低減にも有効である。
但し、助手席に乗員が居ない場合でも、助手席側のカーボンヒーター10Bをオンにするようにしてもよい。つまりステップS103の判断を行わずに、ステップS104で両カーボンヒーター10A、10Bをオンとしても良い。乗員が居なくても、ウインドウ6による冷輻射の緩和や車室内を暖める効果は得られるためである。
【0032】
また実施の形態では、制御部21は、外気温が所定の閾値温度th1未満の場合に、車両走行中にカーボンヒーター10A、10Bによる赤外線輻射を実行させるようにしている。これにより外気温が高い状態で無用な赤外線輻射を実行させないものとなり効率的な暖房を実現する。また上述したが、外気温が高い状態では停車時にカーボンヒーター10自体が急速に冷えない場合があり、人が触れた場合のやけどの防止が確実ではなくなる。その意味でも外気温が低い場合にのみカーボンヒーター10を駆動することが適切である。
なお、ステップS101、S108で外気温を閾値温度th1と比較するようにしたが、ステップSで閾値温度th1と比較し、ステップS108で異なる閾値温度th2と比較するようにしてもよい。即ち気温状況と暖房効果、安全性を鑑みてカーボンヒーター10のオン/オフに関する閾値温度が適切に設定できればよい。
【0033】
実施の形態ではステップS106で車速に応じたカーボンヒーター10A、10Bの出力調整を行うようにしている。これにより走行状況に応じた効率的な暖房を実現できる。
なお、車速ではなく、外気温に応じて出力調整をしても良いし、車速と外気温の複合的な条件に応じて出力調整を行うようにしても、状況に応じた効率的な暖房を実現できる。
一方で、処理や構成の簡易化のためには、ヒーター駆動回路24A、24Bに出力調整機能を設けないことや、制御部21としてステップS106の処理を行わない例も考えられる。
【0034】
以上実施の形態を説明したが、本発明の構成や処理例は図1図4で説明したものに限られず多様に考えられる。構成としては少なくとも車両外部に赤外線輻射部が設けられ、制御部21の処理としては、少なくとも走行中に赤外線輻射が実行されるようにすればよい。
また、本構成の赤外線輻射部による暖房と、他の車内暖房(車内空調やシートヒーター等)との連携を考慮して、赤外線輻射部がオン/オフされたり出力調整されることも考えられる。
【符号の説明】
【0035】
1…車両、2…ドアミラー、10…カーボンヒーター、11…鏡面部、12…反射板、21…制御部、22…電源部、23A,23B…スイッチ、24A,24B…ヒーター駆動回路
図1
図2
図3
図4